『ベルフェゴールの呪縛』
コウサカ家といえば、読モをやってると自称している妹とマスケラの漆黒にそっくりなうらやましい兄が、日々陰鬱な家庭内冷戦を行っていることで、この地方に知られている。
冷戦のあと、兄のキョウスケは風呂場に現れ、普段着をパジャマに着替えて寝る。
ぱんつは、激しい冷戦でドロドロボロボロになるから、使い捨てで、ゴミとして出される。
妹・キリノはいつもそれが狙いだ。
捨てられているぱんつ、できるだけ陰険な冷戦後の汚れてる日のをこっそりさらって部屋に持ち帰る。
そして、深夜、キリノ一人の祭が始まる。
俺はもう一度汚れたぱんつのみ身に付け、部屋中にかっさらってきたぱんつをばら撒き、ウォーッと叫びながら、キョウスケのぱんつの海の中を転げ回る。
汚れたぱんつは、雄の臭いがムンムン強烈で、俺の性感を刺激する。
ぱんつの中に顔を埋める。臭ぇ。
汗臭、アンモニア臭や、股ぐら独特の酸っぱい臭を、胸一杯に吸い込む。溜まんねえ。
臭ぇぜ、ワッショイ! 雄野郎ワッショイ! と叫びながら、嗅ぎ比べ、一番雄臭がキツイやつを主食に選ぶ。
そのぱんつには、我慢汁の染みまでくっきりとあり、ツーンと臭って臭って堪らない。
そのぱんつを締めてたキョウスケは、一番テンションがあがっていた、マスケラの漆黒にコスプレしてたときのキョウスケだろうと勝手に想像して、鼻と口に一番臭い部分を押し当て思いきり嗅ぎながら、ガチムチ野郎臭ぇぜ! 俺が行かせてやるぜ! と絶叫し、他のぱんつはミイラのように頭や身体に巻き付け、ガチムチのぱんつを口に銜えながら、ウオッ! ウオッ! と唸る。
そろそろ限界だ。
俺は、キョウスケのぱんつの中に、思いっきりオシッコゆーれいする。
どうだ! 気持良いか!俺も良いぜ!と叫びながら発射し続ける。オシッコを。
本当にガチムチキョウスケを犯してる気分で、ムチャクチャ気持ち良い。
ガチムチキョウスケのぱんつは、俺の雌汁でベトベトに汚される。
キョウスケ、貴様はもう俺のもんだぜ!
俺の祭が済んだあと、他のぱんつとまとめて、ビニール袋に入れ押し入れにしまい込む。
また近々、喧嘩でぱんつを手に入れるまで、オカズに使う。
押し入れにはそんなビニール袋がいくつも仕舞ってあるんだぜ。
《つづく》
わたしときょうちゃんは、また「ベルフェゴールの呪縛」を読まされ、感想を求められている。しかも今度は、赤城さんから。
……というか前にこれにそっくりな文章、どこかで見たことがあるような気がするなぁ。
「き、筋肉モリモリなのに桐乃ちゃんだって分かるところがすごいね、きょうちゃん!」
わたしはいいところを探してみる。イラストは結構上手かな。
今回はお尻にのところに『肉便器』という刺青がしてある筋肉モリモリのきょうちゃんと、同じようにいかめしい顔で筋肉モリモリの桐乃ちゃんのイラスト付きになっている。
「なんで俺も桐乃もガチムチのおっさんになってるんだよ赤城! オマエも俺のことマスケラの漆黒に似てるって書いてくれてるんじゃないのか」
マスケラ? 漆黒? ……もしかして、きょうちゃんに似た人が出てくる、ロックがよく見てたテレビまんがのこと?
「ふふーん、どう? 五更さん。わたしの添削してあげた『ベルフェゴールの呪縛』は」
「『どう? 五更さん』って……そもそもベルフェゴールがまったく出てきていないじゃない。っていうかなんで妹のキリノの一人称が『俺』になるのかしら」
「妹さんの性別を聞いてなかったからですゥ~」
女の子以外の妹って、いるんだ。まあ中学生までなら男子でも全員妹だって人もいるらしいね。
「それ以前の問題だろ、この文章」
「……そうね、キリノは読モだって書いてなかったかしら?」
「いえいえ、最近は実は男でしたって読モが結構いますから~」
いくらなんでも、そんなにはいないと思うな。
「……それ以前にどうして俺と麻奈実まで、この高坂家に対する誹謗中傷以外のなにものでもない文章を読まされてるんだ?」
きょうちゃんは、今度は企画書になった『ベルフェゴールの呪縛』を赤城さんに突き返す。
「なん……ですって! わたしの芸術が、誹謗中傷?!」
「……ほらごらんなさい。まあ大したことじゃないわ、今度のゲー研の新作タイトルが『ベルフェゴールの呪縛』に決まっただけよ」
「人んちへのネガティブキャンペーンがゲーム化! ほかに対案はなかったのかよ!」
「……対案は『滅義怒羅怨ブラックレーベル』か『強欲の迷宮2-漢(をとこ)の謝肉祭(カーニバル)-』しかなかったわ」
めぎどらおん? ごうよくのめいきゅう? 難しそうなゲームを作るんだねえ。
「まあ五更さんだけに任せると、独りよがりの暗黒邪気眼百合設定になるのは明白ですから、まともにするべくこの赤城瀬菜が協力をしようということになりました!」
赤城さんは元気に宣言する。
「部長はまだ百合をガチホモで中和できると思ってるのか……まあ設定練り直すなら、せめてベルフェゴールが出てくるところまでは頑張れよな。そもそも桐乃は『妹はオシッコゆーれい』なんて暗黒物質、持ってたか?」
「……ええ。ただ誰かさんみたいにあんまり隠してる性癖を追求しすぎて居直りカミングアウトされても怖いから、敢えて追求しなかっただけよ」
「その話を設定に反映させてみました!」
「させてみるなよ! ってゆーかおまえの中で俺の妹はどういう存在になってるんだ!」
「えーと、『エル・シャダイ』に出てく……」
「わかったもういい」
「言葉の意味はよく分からないけど、とにかくすごいイメージだね、きょうちゃん」
「……で、ジャンルは?」
「ファンタジーワールドガチホモシミュレーターです!」
「「……はい?」」
わたしときょうちゃんは、聞き返す。
「……『ゲームシステムは』強欲の迷宮2のシステムがベースになるわ。もうあるから」
黒猫さんが、代わりに説明してくれた。
「今回はiOSやAndroidのような開発環境がオープンなハイパワー携帯機をターゲットに開発していますが、『強欲エンジン』上で稼動する世界に存在するアイテムや登場人物、モンスターといった物体はすべて干渉可能です! いちおう俯瞰型のリアルタイム2Dですが、全ての物体は物理エンジンとAIを通して並列的に扱われます。もちろんガチホモです」
わたしゲームに詳しくないから、赤城さんがなにを言ってるのか分からないよ。
「オーケー赤城の世界観からは、妹も男という世界だってのだけは分かってるから。それより強欲エンジンっていったいなんだ」
「わたしが独りでチマチマ拡張してたゲームエンジンで、出来は部長のお墨付きです」
赤城さんはすごい胸を張ったが、すごかった。日本語として破綻してるけど、そのぐらいすごい。
「……わたしにもまだ全貌が把握しきれないのだけれど、たとえば畑からジャガイモを拾うことから肉とたまねぎを集めてカレーを作って、それを一緒に冒険中の彼氏にふるまって好感度を上げることまで可能よ……自分は男だけれど」
「きょうちゃん、なんだか凄そうだね」
黒猫さんも、認めているみたい。ゲームでカレーを作るのって、難しいの?
「ああ、俺もよくわからんぐらいに凄いらしい」
きょうちゃんも、なんだか分かってないみたい。そんなわたしたちを見た赤城さんが、白くてテカテカした携帯を取り出した。
「なにを隠そう、わたしが書いたプロローグもゲーム内で再現可能です! ほらこのとおり!」
画面の上では、顔に男もののぱんつを装備した筋肉モリモリのキリノちゃんがゴロゴロ転がりまわっている場面が、ポケモンみたいな感じの画面で再現されていた。
「もうあいほんで動いてるよ、きょうちゃん!」
「残念! iOSは開発者登録が面倒なので、とりあえずAndroidにしました!」
「どうでもいいよ、そもそもそんな自由度はいらない!」
きょうちゃんは呆れている。ゲームって難しいんだなぁ。
「……このシステムにシナリオを実装していくから、デバッグを手伝ってちょうだい」
黒猫さんはそう言いながらかわいい黒猫のキーホルダーをきょうちゃんに渡した。
「なんだこれ?」
「……USBメモリよ。デバッグのためのパソコン用Androidエミュレータとゲームのアルファ版が入ってるわ。バグ報告はパスワード付きの専用Blogを用意するから、そこで報告して頂戴」
「げっ、マジかよ……まあいい、あんまり多くは手伝えないし、ロープレはあんまやったことないけどいいか?」
きょうちゃんは、渋々ながらも引き受けた。
「きょうちゃん頑張って!」
きょうちゃんを応援しているわたしにも、同じキーホルダーが渡される。
「……こっちは田村先輩のぶんです」
「ご協力よろしくお願いしまーす!」
赤城さんが元気よくキーホルダーを押し付けてくる。
え? ええ? わたしも?!
「……ま、出来る範囲でいいから手伝ってやってくれ。俺からも頼むわ」
わたしは無言で、例の3年がかりで会得した笑顔でうなずいた。