「ただいま」―――ただいま。言わされた言葉と共に、本当の“ただいま”を言う。相変わらず汚い。何でこんなになっても片付けないのか理解できないが、これは人と人とが理解し合うことはできないという事なのかもしれない。そういうことなんですね、加持さん?無駄に壮大な問題に挿げ替えてもこの夢の島と葛城さんの嫁ぎ先がどうにかなるわけでもないと諦めて荷物を置く。同居人の歓迎会にツマミばかりというのもどうかと思うが、カレーでないだけマシだろう。人は日々妥協して生きていく。「くぅ~っ、仕事の後のこの一杯のために生きてるのよねぇ」(ミサトさん、今日仕事してないでしょ)よくは知らないが、恐らく間違っていないだろう感想を抱く。ついでに日向さんに黙祷。これも恐らく予想として間違っていない。「ほらほらシンちゃん、遠慮しないで食べなさい!今日は私の奢りよ~ん♪」レトルトばかりでは奢りもクソもあったもんじゃないが。言葉と共にビーフジャーキーや焼き鳥の缶詰を押し付けられる。「――――ぅ…」脳裏に走った光景と目の前の肉の臭いに思わず口と鼻を押さえる。「え、何。何か苦手なものあった?」「ぁ、いえ。その―――肉…嫌いなので」「そうなの?駄目よぉ、好き嫌いしちゃ。大きくなれないわよん」「すいません…」仕方ない、と押し付けたものを取り下げられる。隅っこにあったサラダを引き寄せてモソモソと食べる。ツマミばかりじゃまずいと紛れ込ませておいて良かったと心底思う。それと共に、食べながら思い浮かんだ嫌な映像を振り払う。―――アスカ。白いエヴァにくわえられて空を舞う赤の残骸を思い出す。抉られた眼窩から零れ落ちる眼球と黄色い液体。ダラリと垂れ落ちるロープのようなピンク色の内臓。赤黒い血。噛み千切られた脚に未練がましくこびり付く肉と、筋。―――綾波。薄ら笑いを浮かべる沢山の顔。グズグズに崩れ溶けていく人の形をしたナニカ。見た覚えはないのに思い浮かぶ、首から血を噴出して壊れていく羽の生えたアヤナミレイ。「――――…っ」(綾波も肉、嫌いだって言ってたっけ…)妙なところで共通点が出来てしまった。かなり嬉しくない経過を経て、だが。湧き上がる吐き気をポテトサラダと一緒に飲み下す。飲み物はビールしかないので断念した。その日の夕食は随分と苦い味だった。―――トクンプログナイフを握り締める。今まで適当だったし、大抵は使徒が攻めてくるのになんとなくで対応してただけだから構え方はよくわからない。なのでうろ覚えでアスカの真似をする。するのだが、本当にこれでいいのかと。むしろ前よりやり辛いような気もする。スピーカーから葛城さんが囃し立ててくるけれど、反応する暇はない。使徒の両眼が光る。咄嗟にしゃがんで、そのまま使徒に突っ込む。コアの直ぐ下あたりに組み付いてビルに押し付ける。これで少しでも体勢を崩せれば…!―――ッゴ!背後から爆発音と熱が届く。高シンクロのせいか僅かに背中が熱いと感じる。けれど――――――身体の中の方が熱い。―――トクン「はぁああああああ―――!」右手のプログナイフを下から思い切り振りぬく。狙うのは使徒の左腕。紫の血が眼前に飛び散る。高シンクロのお陰か、プログナイフの性能か、使徒の腕が半ばから斬り飛ばされる。「――――次っ!」組みついていた左腕を上へと滑らせて、使徒の傷の無い方の顔を顎?から掴む。そのまま背負い投げるように孤を描き、地面へと叩きつける。――――ッズ、ゴォン!「ぁぁあああああっ!!」右腕のナイフは既に振りかぶっている。後はそれをコアに向かって真っ直ぐに―――――振り落とす!「うぉおおおおっ!」何度も、何度も。コアに皹が入り、ナイフが突き刺さり、輝きを止めるまで――――――「ぁ」嫌な予感。そして思い出す。使徒の身体が液体のように溶けるとエヴァの顔に向かって収束。上半身が取り込まれるように包まれて、目の前に迫ったコアが光る。まずい。今のシンクロ率で頭を吹き飛ばされたら…っ!―――トクン「AT…フィールド、全――開っ!!」閃光。(あ、トウジの妹…)意識が途切れる前に、一番忘れてはいけないことを思い出した。―後書き―まずはご感想ありがとうございました。冒頭部分のみの投稿だったために不満点や違和感を余り感じられなかったようで、身勝手ながら幾許かの安心を感じました。文章構成の拙さを指摘されることは今のところ無く、褒められていると解釈してお礼申し上げます。作品傾向としてはご覧の通り、ありきたりとされる「逆行」となっております。「主人公最強」かどうかは戦闘描写自体が中途半端、拙い、などの理由から少なめなためにそういった印象は薄れるかもしれませんが、分類するのならば「主人公最強」と思われるかもしれません。そう感じた場合の意見を頂ければ少なくとも今後の描写に不快感を抱く可能性だけは削ることが出来ると思われます。一応のメインとしては人との関わり合いと碇シンジの思考として絞っておりますが。最後に、申し訳ありません、書きたいという感情と勢いのみで綴っているため、おぼろげな記憶だけで原作の流れを終わらせてしまいました。今回投稿分が作品として崩れていると思われるかもしれません。平にご容赦を。批判だけは誠意を持って読ませて頂きます。