―9月1日、8時30分頃、アリアドネー魔法騎士団候補学校―
昨日の夜ネギ君がアリアドネーの総長さんと話をしてきた結果を皆で聞かせて貰った。
指名手配解除ができないのはまぁ仕方ないかって感じだな。
ネギ君が調べたいっていう論文は高畑先生にも連絡してメガロメセンブリアでも調べてもらえるようすぐ頼んでたし、貰ってきたコピーも昨日の夜早速全部読んでた。
そんでヘラス帝国の首都に行くって言うから今日ドネットさんと茶々丸がアリアドネーの入国管理局で色々事務手続きをして皆の書類作成と、アリアドネーでの長期滞在許可証の発行で大体丸1日潰れるって事になって今どうなってるかっつーと……。
アリアドネー魔法騎士団候補学校の授業の見学会スよ。
参加メンバーは高音さん、愛衣ちゃん、ココネと私と……てか残り全員。
いやー、一応最初から指名手配関係なかった純粋魔法生徒の私達がいるのは交流だとかそういうのでなんとなくわかるんだけどさ。
変装に認識阻害メガネもかけてるからいいっちゃいいだろうけどもうねー。
ネギ君って昨日の件はともかく女子校に入っていいのか?
あれか、麻帆良でも女子中等部だったしアリか、アリ……か。
まあこれ決定したのは突然今日の朝セラス総長から宿に連絡が来て「よかったら魔法騎士団候補学校の授業を見に来ないかしら?」と言う誘いを受けたからなんだけどね。
昨日のアリアドネー巡りでもゆえ吉とこのかのクラスメイト3人とも知り合いになったし、魔法世界のガチな学校がどんなもんなのかは気になるっちゃ気になるのは確か。
それより今の状況スよ。
3-Cの教室の一番後ろにズラっと私達8人がパイプ椅子を用意してもらって並んでんのさ。
エミリィいいんちょとベアトリクスさんが割と前の方の席でゆえ吉とコレットさんが真ん中一番後ろから2番目の列の3人掛けの3人机の席のうちの2つ、でもってこのかが更にその後ろに一人でいる感じ。
4人机あってもいいかもしれないけど、皆スゲー何冊も本机に積んでるから狭いしって事なんだろうけど、羽ペンの動く速度が速すぎるしやべースよ。
どこの受験予備校だっつーの。
いや、シャーペンじゃ無いの?とか思うけど魔法世界の学生が使うペンはこれが普通らしいし、インク瓶必要なくずっと書けるみたいなんだから良いんだろうけど。
これ3-Aが見たら引くわードン引くわー。
ネギ君何か授業風景に超驚いてショック受けてるし。
……まーなんつーかゆえ吉とこのかの授業参観っぽいわー!!
で、アレじゃん、私達端末持ってるからベラベラ授業中でも喋れる訳よ。
このかとゆえ吉には繋いでないけどね!!
《あの……僕の授業ってもしかしてダメでしたか?教室の雰囲気も含めて……》
言うと思ったよー!!
《ネギ坊主、こんなむつかしい話で緊張した中授業されても私わからないアルよ》
いや、くーちゃん今結構面白いだろ。
何か丁度地球の話しててちょっと笑えるし。
つかアレだよ、緊張した雰囲気の方が集中力増して覚えられる筈スよ。
《ネギ坊主、ネギ坊主はネギ坊主でいいでござるよ》
因みに今日の楓は謎の幼児形態じゃなくて普通の変装と認識阻害メガネ付きだから身長に声の高さは元通り。
《ネギ先生、自信を持ってください》
《ネギ君、校風って奴だからさ。気にしなくていいと思うよ》
《私も麻帆良の中等部は中等部で良いところがあると思います》
《皆さん……》
ここまでフォローが入ったんだけど……。
《皆さん何をおっしゃっているんですか。やはり学校とはこう規律あるべきです》
高音さんの反撃来たわー。
《た、高音さん……。僕……麻帆良に戻ったらもう少ししっかりとした授業します!》
《お分かり頂けたようで嬉しいですわ》
《ネギ坊主、今まで通りでいーアルよー!》
あーだめだこりゃ。
でも3-Aをこんな空気にするなら命の危険でも迫らせない限り無理だな、うん。
……流石のエリート養成学校でもクラスの人達が結構こっちチラチラ見てくるねー、しかもネギ君の方に集中して。
まー何の説明もなく、「見学の方です、いつも通りの授業態度を心がけるように」とかで一蹴されてもナギに似てるかどうかは認識阻害がかかってるからはっきり分からんだろうけど、それを別にしても男子がいるんだから無理な話だな。
「つい一世紀前まで民衆の間では伝説かお伽話と思われていたこの『旧世界』ですが、ある面では我々より遥かに進んだ社会形態を持ちながらも、他面ではより深刻な病理を抱えた世界ともいえ数千年にわたって全く異なった道を歩んできました。この二つの世界はまるで鏡のようにお互いを……」
おとぎばなしー?
私は地球生まれ地球育ちだからなー、寧ろ魔法世界の事を親から聞かされた時の方が私にしてみりゃどこのファンタジーって感じだったスよ。
《高音さんと愛衣ちゃんは魔法世界生まれなんスよね?》
《そうですわ》
《はい、私は物心ついた頃にはアメリカのジョンソン魔法学校にいたんですけど》
5、6歳ってとこか。
《地球の事ってやっぱり小さい頃はお伽話とか思ったんスか?》
《ゲートポートの事は教えられていましたからね。このアリアドネーのような説明をされたことはありませんでしたが、初めて麻帆良に来た時には魔法無しで科学が発達していたのには驚きましたわ》
いやー、麻帆良は科学のレベルもどっかおかしいから。
特に最近は超りんとハカセのせいでヤベーよ。
《育った環境って大きいんスねー》
《僕も日本に来た時には驚きました。……今まで聞いてなかったですけど高音さんはどうして麻帆良で魔法生徒を?》
《ネギ先生と同じく修行の一貫ですわ。私は実家から魔法世界だけでなく旧世界でも見聞を広げて来いと言われたのが発端です。私の年齢から丁度受け入れ先に麻帆良学園を紹介されたのですわ》
堅すぎたり偉大なる魔法使い系の発言は根本が魔法世界の感覚だからかー。
でもまーグッドマン家が子供の教育に熱心なのは分かった気がする。
《そうだったんですか》
アリアドネーだから何なのか知らんスけど数千年って言ってるのは何か変じゃね?
《高音さん、より深刻な病理っていうのは地球の現状の事だと思うんスけど、中国とかはアレにしても数千年って言うほど地球の歴史って長くないんじゃ?科学が一気に発達したのはここ数百年が殆どッスし》
5千とか6千とかだったらそれらしいとは思うよ。
《2000年もあれば一応数千年だとは思いますが……》
《それは……タカミチが言っていた時間の流れが違うっていうのが関係しているのかもしれませんね》
《あーなるほど。って事はもしかしたら魔法世界って地球に比べて凄く長い時間が経過してるかもしれないって訳か。例えば4倍ぐらい?》
《……春日さん、その疑問は良いですね》
《え?何?》
《この世界の謎について仮定とは言え新たな情報ですから》
《あー、なんだか分かるようで分からないけどネギ君の役に立ったなら良かったスよ》
もー先生っていうより世界の謎を解き明かす!とか学者っぽいな。
プロフェッサー的な。
でー、何のかんの話が流れていって……。
「……以上のように北の古き民と南の新しき民は古くから様々な確執をもっていた訳ではありますが、20年前の『大分裂戦争』時点においても全面戦争に至るほどの理由はどこにもなかったのであります」
戦争の話になったー。
「この戦争には世界を欺き両者を裏から操って至福を肥やそうとした悪党達の姿があったのです。この彼等こそかの悪名高き秘密結社完全なる世界です」
《完全なる世界……》
《有名ですわね》
「この組織と王都オスティアの犠牲を持って大戦は終りを告げます。そして大戦末期全ての真相を暴き世界を滅亡の危機から救った英雄とまで言われるのが皆さんもよくご存知のナギ・スプリングフィールドと紅き翼なのです」
「「ブハッ!!」」
不意打ちすぎる!
もろ紅き翼の映像出てんじゃん!
超似た人すぐここにいるから我慢できん!!
認識阻害半端ねー!
《春日さん、古菲さん、何を吹き出しているのですか!》
《す、すんませーん!》
《ごめんアル!》
「見学の方どうされましたか?」
「いえ、授業を中断させてしまってすいません。何でもありません。どうぞ授業を続けて下さい……」
《映像のナギにそっくりな姿してるネギ君が近くにいるからつい条件反射で……》
《私もアル……》
《私も春日先輩に釣られて吹き出しそうになりましたよ……》
愛衣ちゃんもか!
《愛衣……》
《あはは、認識阻害メガネしてて良かったです。こうして父さんが魔法世界の授業の映像にまで出てると本当に英雄だったんだなってわかりますね》
《歴史の教科書に載っているぐらいですから》
《僕はそれどころか指名手配犯ですけど……》
重っ!
《ネギ先生のせいではありませんわ》
《ネギ坊主、そうでござるよ》
《ネギ先生、元気だして下さい》
《ネギ君の責任じゃないからさ》
《はぁ……ありがとうございます……》
「……さて大戦末期の巨大な魔法災害によって廃都とも呼ばれるようになったオスティアですが、環境は復活してきています」
《この魔法災害って広域魔力消失現象の事なんですよね?》
《そうですわ、ネギ先生。この後崩落したオスティアを中心とする直径50km圏内はメガロメセンブリアの試算で以後20年間にわたり魔法も使えない地域となったそうです。今説明があったとおり環境は復活しており丁度今年で20年が経ちますから魔法も徐々に使えるようになってきているでしょう》
《丁度20年魔法が使えなかった……ですか……。そうするともう壊されているかもしれませんが例の廃棄されたゲートが稼働する可能性もありそうですが……一度行ってみたいですね》
《しかし侵入許可を取るのはなかなか難しいでしょう……》
《そう……ですよね。麻帆良に戻れるとしたらそこしか無いように思うんですが……》
《確かにそうなりますわね……》
まーたネギ君悩み始めたな。
「来月には戦後20年を期に大祭典が開かれる予定です。このお祭りではこのナギの名を冠した拳闘大会が行われる予定です」
《来月となると高畑先生の言うとおりならば丁度麻帆良は8月の末ぐらいですね》
《夏休みが終わるでござるなぁ……》
全くだなー、まー気にすんな。
《オスティア記念式典にナギ・スプリングフィールド杯、廃都オスティア、色々イベントが詰まってるスね》
《帰れないにしても皆でオスティアのお祭り行ってみたいです、お姉様》
《そうですわね、愛衣》
《ま、どーせなら悩んでるより楽しんだほうが得スね》
《麻帆良祭みたいなら面白そうアル》
《…………僕もコタローとは拳闘大会には出てみたいですから行きたいです》
ちょい考えごとしてたと思ったらネギ君復活したか。
《ネギ坊主とコタローのコンビは厄介でござるからな。良い試合になると思うでござるよ》
《ありがとうございます、楓さん》
《コタロのあの咸卦法はズルいアルよ》
小太郎君も咸卦法使えるっていうのは北極脱出の時に聞いたんだけど……。
《くーちゃん、あの咸卦法って?》
《春日さん、それは僕が説明しますね。コタローのアーティファクトは僕が契約執行するとコタローが自動的に咸卦法の状態になる上、契約執行の魔力供給次第で出力が変わるんです。しかも効率は常に無駄がない状態です》
なんだそれー!?
契約執行が咸卦法!?
《随分変わったアーティファクトッスね……》
《コンビネーションも良くなりますからね。私も相手をした時は大変でした》
《大体はコタローが僕に合わせてくれるんですけどね》
ネギ君との仮契約で授与されるアーティファクトがおかしい事はよく分かった。
愛衣ちゃんのアーティファクトは魔法世界の騎士団で正式採用されている物と同型のモノだっつー話だし、主の資質次第ってマジだな……。
まーアーティファクトが出るだけでも全然マシな訳だけど。
短距離走は自分の足で走るのが当たり前だけど、それに見合ったのが出てるし私も恵まれてる方スね。
1時間目の歴史の授業が終わったーと思ったら次はラテン語と古代ギリシャ語の解釈……3時間目は魔法の術式構成の授業……数学とか普通に混じってるからマジ眠い。
ルートにルートそれに更にルートとか付けんな!!
くーちゃんと楓は速攻ダウンしたし。
桜咲さんは……このかガン見してるな。
どんだけー。
ネギ君はふんふん聞いてるんスけど流石天才。
ま、高音さんと愛衣ちゃんも余裕っぽいし、ゆえ吉とこのか含めたクラスの人達も全員真剣そのもの。
4時間目は魔法薬の調合の授業で……わざわざ私達の分の調合材料も手配してくれたっ!
妙に待遇いいな。
「皆さん、ちょっとやってみますね」
とネギ君が代表でやってくれることになった。
クラスの人達は2人一組なんだけど流石に私達に4組分用意する必要は無いスからね。
ネギ君が手早く、指定の材料を正しく調合して呪文詠唱。
―いざ、生ぜん、癒しの薬よ!―
「はい、できました」
「流石ネギ先生ですわね」
手際良過ぎでクラスの誰よりも早く完成したもんだから授業の先生が近づいて来たわ。
「見学の方、非常に慣れていらっしゃるようですね。良ければ生徒の為にもう一度教壇で実演してもらえませんか?」
こーいう時先生がやれば?って思うのはナシなのか?
「あ……はい、僕で良ければ勿論です」
「ではこちらにどうぞ」
ササーッとクラスの視線がネギ君に集中した。
認識阻害は大丈夫か?
「ネギ君目立つなー」
「流れるような手際でしたから、実演は確かに良いと思いますわ」
高音さんと愛衣ちゃん感心して見てたもんな。
「ネギ坊主は修行の休憩中によく練習していたでござるからなぁ」
「楓……休憩中に練習してたらそれ休憩って言わないんじゃ?」
「激しい運動はしてないアルよ」
「そ、そーかそうかー」
ネギ君達の常識のラインが高すぎてついていけねー。
エヴァンジェリンさん相当スパルタだろ……。
「皆さん、見学の方が良い手本を見せて下さいます。一旦作業を中断して……大丈夫ですね。ではお願いします」
全員既に作業中断してるスね。
「はい。それでは魔法鎮痛薬の調合を行わせて頂きます。まずはウスバサイシンの根と弟切草の葉をすり潰し……」
解説付きで3分調合的な何か始まったー!
「皆さん、しっかり参考になるところを見ておくように」
「「「「「はいっ!!」」」」」
良い返事スねー。
もう一度見るけどすり潰す際の道具の使い方めっちゃ上手くてしかも早っ!
途中からスピードアップして右手ですり潰しながら左手は計量、試験管に入れて分離とか……スゲー。
「……最後に魔法詠唱で完了です」
―いざ、生ぜん、癒しの薬よ!―
音も一切発生せずにドーナツ型の煙だけがゆっくり一つ上がって終わり。
ホントに一切無駄が無いな。
普通はここまで来ても爆発したりするんだけどねー。
「はい、以上で終わりです」
「素晴らしい手際です。皆さん見学者の方に拍手を」
緊張が解けたかのように3-Cの人達が一斉に拍手しだした。
あちこち「すごいわー」とか「ステキ……」だとか「流石ネギ様……」「お嬢様それは」って聞こえるんだけどエミリィ委員長かいっ!
ネギ君は「あはは……どうも」って言いながら戻ってきたけど実体は私達よりも背の低い子供なんスよねー。
「いつも通りやったつもりなんですが……どうもやりすぎだったみたいです……」
今更遅いよー。
高音さんが「やりすぎという事はありませんわ」ってフォローしたけどアレはやりすぎも何も凄すぎるだけスよ。
この4時間目も無事終わったら昼休みになるのは当然で、予想はしてたけど大量にクラスの人達がネギ君に押しかけていった。
「あの、先ほどは素晴らしかったです。お名前はなんとおっしゃるのですか?」
「是非教えてくださいませ!」
「見学というのは講師になられるのですか?」
人気出たー!
「えっと……名前はネギと言います。見学は本当にただの見学です」
スプリングフィールドを名乗らなければいいっちゃ良いのか。
「ネギ様ですって!」
「わーネギ様ですかー!それでは家名はなんとおっしゃるのですか?」
「それは……えっと……」
「皆さん!ネギ様が困ってらっしゃいますわ!少し離れなさい、はしたないですわよ!」
「委員長だってネギ様に興味あるでしょ!」
「そ、それは……そうですけれど」
認めたーっ!
……もーネギ君は助からんな。
昼休みなのを良い事にネギ君はグイグイ食堂に連れてかれてった。
メガネ外れないように気をつけるんスよー。
ゆえ吉とコレットさんも行っちゃったし。
結局3-Aとあんま変わらなかったな。
「せっちゃん達も一緒に食堂行こ?」
「はい、お嬢様」
人の居なくなった教室は静かだ……。
見学っていつまですんのかと思ったら一日中何スね。
「このか、次は何の授業?」
「魔法の実技訓練、その次が体術の訓練で終わりや。違う時は箒で100km飛行訓練なんかもするんやけどね」
こっちも結構スパルタだなー。
「魔法の実技訓練っていうとやっぱり魔法の射手とか?」
「そうや、的に向かってやけどね」
「なーるほど」
「お嬢様、頑張ってください」
「うん、せっちゃんに良いとこ見せるえ!」
皆で3学年が使う超広い食堂で食事したけど、ネギ君がいるところだけガンガン人口密集地帯になっていったよ。
途中からポロポロ「凄いイケメンがいるんだってー!」とかそんなのが聞こえてきたけど完全に野次馬スね。
5時間目の時間が近くなってそれぞれ用意に移ってやっと解放されてからネギ君は「何か色々勧められて食べ過ぎました……」って言ってた。
どうも「これ美味しいですわよ!お食べになってください!」「それよりこちらの方が!」とかそんな感じだったらしい。
異常にモテるっていうのも考えもんだな……。
そんでいよいよ5時間目、闘技場なんかにもある魔法障壁が張ってある施設での実技訓練スね。
ギリシャ語と古代ギリシャ語の解釈の授業の時にも杖持って詠唱したりするんだけどこっちの方が実践的だな。
「皆さん凄いですね」
「魔法の射手だけではなくその上の魔法も使っていますわね」
各種武装解除も使ってたりするなー。
「あ、あれ、私も使える紅き焔です!」
愛衣ちゃん紅き焔使えるんスねー。
まほら武道会の時は詠唱禁止だから使えなかったけど。
ここ数日の飛空艇で移動中暇だったから色々調べてたんだけど、連合艦の一般的な艦載砲にはその紅き焔が搭載されてるらしい。
それより凄いのは精霊砲、要するに魔力ビームとかになるとか。
ゆえ吉とこのかが普通に白き雷使ってるのが結構馴染んでて違和感無いのがアレだな。
30分ぐらいやって一旦休憩になったんだけどその際にまーたネギ君に白羽の矢が立った。
どうも実技の先生が魔法薬の先生から話を聞いてたらしい。
だから先生がやれば?って思ったんだけど「同年代の方がやった方が励みになります」との事。
ネギ君も断るのも悪いしってことで「わかりました、具体的に何が良いでしょうか?」って実技の先生とごちゃごちゃ話し始めて、割とすぐまとまった……みたい。
「それでは休憩中の間ネギさんが皆さんに魔法の実演をして下さいます。よく見ておくように」
今回は一度もまだ魔法使ってる所見せてないんだけどよく見ておくようにってどうよ?
「それでは、いくつか魔法を実演させて頂きます」
「「「「「キャー!!」」」」
いきなり盛り上がる盛り上がる。
障壁から20mぐらい離れた所に書いてある白いラインの側に立ってネギ君の実演開始。
魔法発動媒体は指輪……か。
私もこんだけ近くで、しかも生で見るのは初めてだな。
―雷の47矢!!―光の47矢!!―風の47矢!!―
っておーい!!
一瞬で光球がババーっと出たと思ったら3連続無詠唱かい!
まほら武道会の時よりも成長してるってマジかー。
皆それを見て固まった瞬間ネギ君はそのまま次の魔法に……。
―ラス・テル・マ・スキル・マギステル―
―来れ 虚空の雷 薙ぎ払え 雷の斧!!―
―白き雷!!―
―ラス・テル・マ・スキル・マギステル―
―影の地 統ぶる者スカサハの 我が手に授けん 三十の棘もつ 霊しき槍を―
―雷の投擲!!―
―ラス・テル・マ・スキル・マギステル―
―来れ雷精 風の精!! 雷を纏いて 吹きすさべ 南洋の嵐―
―雷の暴風!!―
え?
何今の?
詠唱速すぎて何使ったか良く解らんわ!
小さい声だったのもあるけど始動キーすら一切聞き取れなかったんスけど……。
とりあえず、最初に斧で最後が雷の暴風で凄い音がしたのだけは理解できた。
「えーっと魔法使うの久しぶりだったんですけど……これでどうでしょうか?」
どうでしょうか?って……ねぇ……。
「み……皆さん、ネギさんに拍手を」
このかが一番最初にマイペースに拍手し始めてそこからエミリィさんも起動して拍手が広がり始めたんだけどかなーりまばらな拍手で、ゆえ吉に至っては唖然としたまま完全に石になってるし。
ネギ君はそのままこっち戻ってきて「少し詠唱の方は鈍っちゃいました」とあれで鈍ってたの!?って思ったら
「ネギ坊主、いつも通りでござるよ」
「うむ、ウォーミングアップには丁度良かったアルね」
「ネギ先生、大丈夫ですよ」
って武道三天王はだーめだー……。
ゆえ吉も多分記憶が無くなってなければ普通の反応したんだろうな。
「あーネギ君、さっきの連続魔法解説してもらって良い?」
「はい、春日さん、もちろんです。最初が各3種魔法の射手47矢から雷の斧、無詠唱白き雷、雷の投擲、雷の暴風までです」
47って……。
あの僅かな時間で141矢も撃ったのか。
「はーそりゃ凄いわ。詠唱も速いし」
「ええ、本当に速いですわね……」
「あの、ネギ先生っていつもどんな修行してたんですか?」
愛衣ちゃん……それ聞くと色々ぶっとんだ事いわれると思うスよ……。
「どんな修行っていうと色々やりましたけど、今ので言えば毎日の訓練の終りには魔力が残らないように使い切る事はやってましたね。さっきのものがそれの雷系で固めたものの一つです」
そ、壮絶だ……。
毎日使い切ってたから契約執行もあんな長時間耐えてられてたのかもな。
「す、凄いですね。私も頑張らないと!」
愛衣ちゃん、頑張れ!
内輪でもこんな感じでネギ君の魔法実演の反応が終わった丁度ぐらいに
「「「「ネギ様!私達に魔法の指導をして頂けませんか!!?」」」」
って10人ぐらいようやく正気取り戻してネギ君に殺到して来たわ。
「え?あ、はい。僕で良かったら」
「「「「キャーッ!!」」」」
「では是非こちらへっ!」
「そ、そんなに引っ張らなくても大丈夫ですよ」
昼休みと同じ状況になった。
ネギ君が魔法の射手について詳しい解説した上で実演。
生徒さん達がそれを見てとりあえずやってみて、一人ずつ改善点を述べるもんだから本当に指導し始めて実技の先生がマジ空気。
解説中は超静かに生徒さん達が皆聞いてるから魔法の射手の話は私にもよく聞こえたんだけど、多弾頭と収束の違いやら、魔力効率の上げ方、1矢自体のバリエーション、例えば、1矢自体の魔力量を増やして極太レーザーみたいにするだとか、螺旋回転を加えたり、先端部分を流線型にして威力を上げるなんていう変化法とかそんなの知らんかったわ。
確かにまほら武道会でやたらギュインギュイン言う感じの魔法の射手乱射してたのは覚えてるんだけどあれってそういう変化加えてたのか……。
収束からそのまま撃つのとか、それを拳に乗せるネギ君の奴とかも説明してたけど、まー生徒さん達もそんなすぐ出来る訳ないから結局光球状態での滞空法から始まって、それを変化させるコツを延々とアドバイスし続けてたら30分なんてあっと言う間に終わった。
何だかんだ実技の先生もネギ君に詳しく色々聞いてたから相当興味あったみたい。
ネギ君に何聞かれたのか後で聞いたら魔法の射手の体系立った練習法についてだったらしい。
愛衣ちゃん曰く普通魔法の射手は、的に当てるコントロール、本数を増やす事、魔力の運用効率を上げる事、そんで無詠唱ができるようにひたすらやるものなんだとさ。
まー普通はそれで精一杯だわな。
常識として、魔法の射手1矢なんて障壁張られてれば簡単に弾かれるから突破するために何発も撃つんだし。
それもエヴァンジェリンさんに教わったの?って聞いたらそれは学園長らしい。
なんでも学園長の魔法の射手は貫通力が異常で風盾なんて1矢で余裕に突き抜けるわ、一瞬の防御力の高さならかなりのものを誇る風花風障壁も2、3発で貫通してくるらしい。
じじい強えーな。
寧ろネギ君と学園長がそんなやりとりした事あったのが驚きだわ。
5時間目が終わってそのまま6時間目が体術の訓練だから体操着に着替えなきゃいけないからって事で流石に休み時間に、ネギ君は一瞬解放された。
でも、拳に乗せる魔法の射手見せた時点で体術出来る事バレてたから今度は生徒さん達から体術の先生に「ネギさんに実演して頂きたいです!!」って皆言うもんだから先生も「ネギさん、生徒達はこう言っていますがお願いできますか?」とまたしても寧ろ歓迎な反応だったよ。
ネギ君は「ええ、構いませんが……組み手の相手はくーふぇさんお願いします!」って妥当な所が来て「ネギ坊主、良いアルよ!」とアリアドネー式体術というより、中国拳法の実演になったわ。
くーちゃんもまほら武道会で結構やらかしてたけどあの時よりも更にキレが増してて二人とも目にも留まらぬ速さって感じだった。
当然生徒さん達からは黄色い歓声が上がってもうこれで何度目って感じ。
で、終わりかと思えば「中国拳法だけでなく他の体術もお見せたした方がいいですよね。楓さんお願いできますか?」と楓にパスが来て「ネギ坊主、久しぶりでござるな。良いでござるよ」と組み手が始まった……んだけどねー。
ネギ君っていつの間に分身できるようになったし?
「ネギ坊主、修行の時間が取れていなかった割には分身の密度が上がっているようでござるな」
「南極の一件で少し魔力の効率が上がったみたいなんです。でもまだまだです。楓さんもやっぱり大樹林で成長したようですね」
「そうでござるか。なるほど、お互い生き抜く上で自然に強くなったようでござるな」
「はいっ!」
会話してるのはいいんだけど、二人とも分身3体ずつで計6人がそれぞれ組んでたと思えば、臨機応変に2体1だとかに変わったりもするし体術から逸れてどちらかっていうと東洋の神秘披露会だから。
分身した時点で先生含め生徒さん達は目が点になったし、体術って言ってんのに虚空瞬動余裕で使うのは場違いスよ。
生徒さん達は揃って「A級以上の達人!?」ってリアクションしたし。
まあ虚空瞬動抜きにしても達人スよ。
どっちが勝つとかじゃないからそこそこで組み手は終わったら今度はくーちゃんと楓にも人気が出た。
因みに桜咲さんはちゃっかり手とり足取りこのかの相手してた。
ネギ君が3人、楓が16人でクラス半分の相手ができるっていうのはカオス。
てか5時間目に最初からネギ君分身してたら楽だったんじゃ?
生徒さん達の実力はっていうとコレットさんとベアトリクスさんが結構強くて、特にベアトリクスさんの方は明らかに何か武術やってる感があったな。
そんな中エミリィ委員長はネギ君に相手してもらったら「あぁ……私もう……」って蕩けて倒れたもんだからそのままネギ君がベアトリクスさんの案内で保健室に運ぶなんて事になって更に症状が悪化、蕩けるどころか、今にも溶けそうだったわ。
幸せだろうから心配する必要はないけど……。
6時間目はこんな感じでこれまたあっと言う間に終わってようやくネギ君に分身の事を聞いた。
「ネギ君分身って忍術も覚えたの?」
「あー、いえ、あれは術式を組んだ上で純粋な魔力で分身体を形成したものなんです。実際にはそんなに使い勝手が良くなくて、分身は時間が経てばどんどん魔力を消耗していく上、分身に割いた分の魔力は本体から分身を解除しないと還元されないので、分身が消滅すれば無駄が多くなり実戦に使うには適していません。なのでまだまだ改良の余地があります」
丁寧に問題点の説明してくれるけど、それより、よくまぁ術式を組んだってあっさり言うな。
「はー、魔力で分身ってできるんスね」
「楓さんやコタローの分身は気で行ってますし魔力でもできるだろうと思って考えました。それに理論は風精召喚の類を流用しているので」
まー詳しい話は良くわからないけど要するに精霊の力を借りないって事なんだろーな。
ホームルームも終わったから帰るかーと思えばクラスに丁度良く「セラス総長!?」って私は初めて見るセラス総長さんがやってきてネギ君にちょっと話があるからって連れてったわ。
一日見学会がネギ君の披露会みたいな感じになった気がするんだけど気にしたら負けだな……。
実際生徒さん達にとっては良い効果あったのは間違いないし。
放課後ネギ君から連絡があるまでゆえ吉達に学校内を案内してもらったり、箒の練習を見せてもらいつつ時間を潰し、ネギ君が戻ってきたらこのかとゆえ吉達に挨拶してホテルに帰還した。
そんでセラス総長にネギ君が呼ばれた理由は
「放課後になったらきっと困るだろうって配慮してセラス総長は僕を呼んで下さったようです。それと今日の授業を遠見の魔法で見ていたらしく、その話を少ししてました」
って事なんだとさ。
まあ確かにあのままネギ君が教室に放課後いたら色々終わってたのは簡単に想像できるわな。
話としちゃ、きっと生徒に良い刺激になって良かったとかそういうことだろ。
夕食を食べにホテルに戻って愛衣ちゃん達と今日の感想を話してたら丁度ドネットさんと茶々丸が帰ってきてヘラス行きの準備が整ったとのこと。
「僕は明日からしばらくヘラス帝国に行ってきます。それで楓さんと茶々丸さんに同行をお願いしたいんですが良いですか?」
「ネギ先生、私は構いません」
「拙者も構わないが、ネギ坊主は仕方ないにしても指名手配中の拙者を連れて行く理由は何でござるかな?」
「アスナさんの護衛をお願いしたいんです」
「アスナ殿でござるか?」
「はい、今回のゲートポートの事件、指名手配の件、そして修学旅行の件からするとアスナさんが狙われる可能性が高いと思うんです」
飛空艇にいる時に修学旅行の事詳しく聞いたんだけど、アスナは例の白髪の少年に攫われそうになったらしい。
「あの白髪の少年、フェイト・アーウェルンクスと言ったでござるか……」
「はい」
「……あい分かった。確かにあの者ならば城の中と言えど並の警備では簡単に侵入してきそうでござるからな。心してアスナ殿の護衛を致そう」
「ありがとうございます。僕も近くにいるように気をつけますが、目を放した隙に転移でアスナさんを攫ってくるかもしれないのでよろしくお願いします」
「任せるでござる」
「ネギ坊主、私は行っては駄目アルか?」
「……できるだけ皆さんには指名手配が解除されているアリアドネーにいて欲しいので、くーふぇさんすいません……」
「……うむ……私は楓のように警護は得意では無いアルからね。分かったアルよ、ネギ坊主」
くーちゃんも行きたがったけどまー仕方ないな。
楓なら身体操術とか自力の変装技術やらまだ隠してる謎の忍術とかありそうだし。
特に分身は警備向きだもんな。
こうして合流すると魔法生徒4人の私達はあんましなきゃいけない事が無いんだけど、学術都市ってだけあって魔法の勉強とかはいくらでもできるのは事実だし環境も整ってるから高音さんと愛衣ちゃんは魔法騎士団候補学校を見学したのもあるのか結構やる気あるみたいスしね。
私もココネと適度に生活するかな。
メガロまで戻るにしても特に今と生活は大して変わらないし、今から戻るとまた10日ぐらい普通にかかるし、どうせならオスティアの祭りの時に行けば無駄も少ないスよ。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
―9月5日、7時頃、ヘラス帝国首都ヘラス―
ネギ達3人がヘラス帝国行きの飛空艇に載っている間にはいくつか動きがあった。
まず葛葉刀子がようやく9月4日にアリアドネーに到着し、ドネット達と合流できた。
勿論目的は近衛木乃香の護衛であるが、それによって春日美空の生活態度が多少規律あるものになったのは言うまでもない。
古菲はヘラス帝国について行かなかったが、アリアドネーでの生活で特に問題は無く、修行をしたり、魔法騎士団候補学校での体術を指導した一件から桜咲刹那と共に放課後に呼ばれたりする事もあった。
場所を移せば、しばらくの間トレジャーハンターとして精力的に活動していた宮崎のどかは探して求めていた魔法具「鬼神の童謡」を見事見つける事に成功していた。
未だアーティファクト、いどのえにっきを手元に回収していないが「アナタノオナマエナンデスカ」と唱えなければ真名が分からないというリスクを負うものの二つを組み合わせれば強力なコンボとなるのは間違いない。
宮崎のどかの心理の根底にはネギ・スプリングフィールドの役に立ちたいという想いがやはりあり、読心術によって自分が被る危険性をはっきり理解していないのは問題であるかもしれない。
かといって理解しようにも実際に狙われなければそんな事はどこまで行っても想像でしか補う事ができないので何ともし難い話ではあるが……。
次に宮崎のどかは「読み上げ耳」という、書いてある文字を自動的に読み上げるという魔法具を探すつもりであったのだが、その事をトレジャーハンターの4人に伝えた所、「視覚障害者の為に魔法具店ではある程度の値段で普通に販売している物なのでわざわざ遺跡探索で探す必要もない」と言われたのだった。
そのため、宮崎のどかの目的はほぼ達成されてしまったのだが今しばらくトレジャーハンターを続ける予定のようである。
「鬼神の童謡」は直接相手に問いかけなければ効果を発現しないが、実は伝説的なレア魔法具に「死神の健康診断」という生物なら人間に限らず対象を見るだけでその名前と老衰までの時間が秒数刻みでわかるという、別に違うノートが一緒にあったら非常に怖いモノが存在するという噂があるらしいが、その存在の真偽の程は定かではない。
仮に存在したとしたら医者にしてみればかなり便利ではないだろうか。
しかしながら、いどのえにっきは半径7.4mにいなければ使えない上、詳しい思考を聞くためには結局対面して問いかけなければいけないのであまり意味はないかもしれない。
一方高畑・T・タカミチは、といえばジャック・ラカンと連絡を取ることに成功し、メガロメセンブリアに出てきているどころか自由交易都市グラニクスの郊外に存在する遺跡でまだ隠遁していたというのが発覚して
「お願いしますよ、ジャック!」
「がははは、ま、無事だったんだろ?いーじゃねーか!で、ネギってのはどこにいんだ?」
「ヘラス帝国の首都に向かう予定ですよ」
「何?」
「テオドラ皇女殿下と面会するんです」
「あのじゃじゃ馬皇女とかぁ?どうしてそうなった?」
「それは話すと少々長くなるんですが……」
とやりとりがあったそうだ。
一応その結果、ジャック・ラカンは重い腰を上げ、ヘラス帝国に割と渋々「仕方ねーか」とグラニクスからヘラス帝国まで飛ぶことになったのだった。
その事を高畑・T・タカミチは神楽坂明日菜の端末からテオドラ皇女殿下に報告し「でかしたぞ!タカミチ!」と褒められたようだ。
また挨拶回りに寄った佐倉家は普通の魔法世界の家庭であったが、グッドマン家は屋敷に招き入れられた所、その壁には様々な仮面がズラりと飾ってあり、当主と面会してみれば頭全体にスッポリ仮面を被っていたのだった。
その際高畑は夕食もご馳走になったが、直前まで家の人達は仮面を外さず、食べる時になってようやく仮面に手をかけゆっくりと外し、それぞれ使用人に預けるという光景が見れたそうだ。
因みに全員金髪の美男美女で揃っていたらしい。
ともすると影使い一族であるにも関わらず髪の毛の色が明るいためそれを隠すためというのが仮面を付ける風習に繋がったのかもしれない。
この晩餐中の会話で高音・D・グッドマンの父親の弟、風太郎・D・グッドマンという人物が前大戦以降長い事まさに風のようにどこかを常に放浪しているのでもし会ったら一度連絡を寄こすように高畑に頼んだらしいのだがその放蕩者に果たして会う事はあるのだろうか。
因みに、ネギから頼まれた人造異界の崩壊・存在限界の不可避性の論文の捜索も龍宮真名とのゲートポート事件関連の調査と共に目下進行中である。
さて、ヘラス帝国の城内に滞在中のアーニャ、神楽坂明日菜、そして犬上小太郎は既に2週間以上城に滞在していた。
そのうち犬上小太郎は修行を相変わらず欠かしておらず、神楽坂明日菜と練兵場を借りて咸卦法の修練に励んだり、時には帝国兵を相手に模擬戦をしたりして生活をしていたのだった。
そこへネギ達3人は2時間前にヘラス帝国首都ヘラス国際空港に到着し、その連絡をした上で城門前にやってきた。
そこで門番に名前を問われたネギは「ネギ・スプリングフィールド、長瀬楓、絡繰茶々丸です」と伝え門番はスプリングフィールドの名を聞いて驚いたものの、確認が取れ、入城を果たしそのまま案内を受けた。
ネギと神楽坂明日菜は感動の対面になるかと思われたが、年齢詐称薬をネギが服用していたため「あんたネギなの!?」というツッコミが何よりも先に入り「何その姿ちょっとやめなさいよ!戻れないの!?」と有無を言わさず幻術を解除する事になり服がブカブカになったが再会の挨拶は改めてやり直しとなった。
既に年齢詐称薬を使った状態での姿の写真は神楽坂明日菜達も送られていて見た事があったのだがやはり直接見るのとでは違うらしい。
「アスナさん!」
「ネギ!無事だってわかってたけど……本当に良かったぁ……。ねぇ、どこか身体に悪いところない?大丈夫?」
「僕も会えて良かったです、アスナさん。身体は大丈夫ですよ」
「はぁ……それなら良いわ。皆はアリアドネーで元気?」
「はい、元気です。アーニャも無事で良かった」
「フン、あんたに心配されなくても私は平気よ!」
「アーニャちゃん、折角会えたんだから……」
「う……そ、その、ネギ、南極から無事戻ってきて良かったわ」
「うん、ありがとう、アーニャ」
「ネギ、楓姉ちゃんに茶々丸姉ちゃん、久しぶりやな!」
「コタロー、久しぶり!」
「アスナ殿、アーニャ殿、コタロー、息災のようでござるな」
「アスナさん、アーニャさん、コタローさん、お久しぶりです」
しばらく再会の挨拶を交わし落ち着いた頃にタイミングを見てテオドラ第三皇女の登場である。
「良く来たな、ネギ」
「テオ様、こうしてお会いするのは初めてですね。ネギ・スプリングフィールドです。アスナさん達をありがとうございました」
「礼には及ばぬ。アーニャがここに飛ばされて来たのも何かの縁じゃからな。……積もる話もあるが、拳闘大会はどうするのじゃ?」
「はい、僕はコタローと出たいです」
「おう!俺もや!」
「そう言ってくれて嬉しいぞ。前にも伝えたがあまりナギ・スプリングフィールド杯の出場権の獲得までに時間が無いのじゃ。できるなら今日からでも2試合はこなして貰いたい。そなた達がどれぐらいの実力があるかコタロで大体分かっておる。きっと大丈夫じゃ」
「はい、分かりました」
「ネギ、普通は1日試合したら次の試合までに最低でも3日はあけるのが一般的な拳闘界の常識やけど多分2試合はいけるで」
「コタローがそう言うなら大丈夫だね。しかもこれがあるし!はい!」
「おおっ!俺の仮契約カードか!」
「アスナさんもどうぞ」
「ネギ、ありがとう!折角仮契約したのに使えなかったわねー」
「事故だったから仕方ないですよ」
「まあ、そうね。ネギ、拳闘大会出るのはいいけど、ちゃんと気をつけなさいよ。危なくなったらちゃんとリタイアするのよ?」
「アスナさん、心配してくれてありがとうございます。引き際はちゃんと分かってますから」
「そうやで、俺達なら平気や」
「大丈夫とか平気って言うのが一番心配なのよ」
「ははは、僕達を信じてください、アスナさん」
「もう、信じてるわよ」
「一応話を進めてもよいか。年齢詐称薬を使うのは最初から分かっておったからコタロの服は用意しておる。ネギももう一度例の年齢詐称薬を飲むのじゃぞ」
「はい!」
「コタロ用の服はすぐ持ってこさせるから待っておれ」
「テオドラ姫さんおおきに!」
……こうしてネギはヘラス帝国到着早々に小太郎と共に拳闘士登録をすることになり、年齢詐称薬で姿を青年に変え、テオドラ皇女殿下がネギに見合う拳闘士服を用意したのだった。
因みに小太郎の方はかねてよりの強い要望で学ランが既に用意されていた。
そして直ぐ様ヘラス帝国闘技場へ向かい、特定の拳闘士団への入団は無しに無所属でのエントリーを済ませた。
伏せられている事ではあるが、テオドラ第三皇女が後見人となった事によって後にネギと小太郎に発生するであろう権利関係について、テオドラ皇女殿下は全権を握ったことになり実はかなり色々と良い立場にある。
拳闘士名はネギの顔写真は出ていても名前までは公表されていなかったことから本名のまま「ネギ」と「小太郎」で登録している。
他の拳闘士でも本名と拳闘士名が違う事は良くあるので苗字を入れていないが別に問題は無い。
「ネギ、目指すはナギ・スプリングフィールド杯や!」
「コタロー!もちろんだよ!外部でこうして二人で共闘するのは初めてだから少しワクワクして来たよ」
「俺もや!どこまで通じるかやってやろうや!」
「うん!よし、行こう!」
「おう!」
いざ、記念すべきネギと小太郎コンビの初の拳闘試合の幕開けである。