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No.2178の一覧
[0] イチのタバサ(ゼロの使い魔)[気運](2006/11/18 23:58)
[1] 落ち込みサイト[気運](2006/11/19 09:54)
[2] 中年二人[気運](2006/11/20 18:56)
[3] 初めての接触[気運](2006/11/21 17:42)
[4] はちうるい[気運](2006/11/22 20:49)
[5] 扉の前でモンモン[気運](2006/11/25 20:34)
[6] 空飛ぶるーるる[気運](2006/11/25 20:42)
[7] 家捜しファラウェイ[気運](2006/11/26 16:34)
[8] メガネの過去[気運](2006/11/26 17:04)
[9] ブラックメガネ[気運](2006/11/28 21:42)
[10] 風竜の 正体見たり 枯れ尾花 [気運](2006/11/30 03:42)
[11] イオ[気運](2006/12/08 18:12)
[12] 初期装備[気運](2006/12/19 21:05)
[13] タイミングずれ[気運](2006/12/20 22:13)
[14] どらっぐ おん どらぐーん[気運](2006/12/21 20:24)
[15] 落ちる[気運](2006/12/27 11:46)
[16] としゅくうけん[気運](2006/12/29 12:01)
[17] 堂々巡り[気運](2007/01/13 18:27)
[18] なんとなく空回り[気運](2007/06/18 22:45)
[19] 君が泣くまで[気運](2009/11/14 23:09)
[20] 殴るのを[気運](2009/11/14 23:23)
[21] やめないっ![気運](2009/11/14 23:23)
[22] 第二十三話『こんなッ、こんなカスみたいなヤツにッ!』[気運](2010/01/05 14:25)
[23] 第二十四話『メイドナースの生態観察』[気運](2010/01/05 14:24)
[24] 第二十五話『丸東』[気運](2009/11/14 23:10)
[25] 第二十六話『スシが変わる』[気運](2009/11/14 23:10)
[26] 第二十七話 『題名ナシ』[気運](2009/11/10 00:16)
[27] 第二十八話 『腰砕けポケモン』[気運](2009/11/10 00:17)
[28] 第二十九話『至福の1セント』[気運](2009/11/14 23:15)
[29] 第三十話『指をさして笑うな』[気運](2009/11/30 07:49)
[30] 第三十一話『虹色コンピテントセル』[気運](2010/01/05 14:24)
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[2178] はちうるい
Name: 気運 前を表示する / 次を表示する
Date: 2006/11/22 20:49
「あのー、すんません」

 才人はそれから半時間もの間、広い寮の廊下を彷徨い続けていた。
 流石に自力で現状を打開することは不可能だと思い、才人は遂に助力を求めた。
 たまたま出会ったのは、赤い髪をした、褐色の肌の女の子。
 この子も生徒の制服を着ているが、その胸元は、中身がはち切れんばかりに膨らんでいた。

「何かしら」
「えっと、道に迷っちゃいまして、ちょっと聞きたいんですけど」
「あなた、確か、あのゼロのタバサがサモン・サーヴァントで喚びだした平民?」
「そうっす。そのゼロのタバサの部屋に行きたいんですけど……」

 才人は胸に視線を行かせるのを止めることができなかった。
 反則気味というべきか、才人が呼びかけた女の子は、先ほどの桃色の髪の子に並ぶとも劣らぬ容姿をしていた。
 特に意識して声をかけたのではない。
 が、やはり胸に視線が行ってしまう。

 あまりじろじろ見ていると、相手に悪い印象を与えかねないと思い、才人は努めて他のものを見ようとした。

「きゅるきゅる」

 そしてその『他のもの』は色々とインパクトのあるものだった。

「うわぁ! 真っ赤な何か!」

 床には巨大な赤いトカゲがいた。
 『サラマンダー』だ。
 赤い髪の子の背後からにゅうっと顔を出し、才人の足下にするすると歩いていた。

「あなた、火トカゲを見るの初めて?」
「え、ええ、まあ……」

 才人は直ぐに心拍数を戻そうと試みた。
 今までに、元の世界には絶対いないと思われる生き物を何度か廊下で見たが、ここまで巨大なものは初めてだった。
 全長は大体人の身長ほどの、燃えるような……実際一部体が燃えている、巨大トカゲだ。

 突然、足下に現れたため、思わず驚いてしまったが、見慣れてしまえばどうというものではない。
 恐ろしい生き物であれど、使い魔なら、主人が命令しない限り無差別に襲ったりしないのは、コルベールから聞いていた。

「……ふむ、よく見てみるとかっこいいな」

 才人も男の子である。
 燃えているトカゲは、恐ろしくあれど、しかし同時にかっこよくも思えた。

「火、吹いたりするの?」
「吹くわよ。それはもう情熱のような真っ赤な火を吹くわ」
「へー、触っても、いい?」
「いいけど、尻尾の方は火傷がしたくなかったらやめといた方がいいわよ」
「わかった」

 才人はおずおずとした手つきで巨大な爬虫類に手を伸ばした。
 頭の赤い皮膚に触れると、熱を感じる。

「あったかいな。爬虫類って変温動物だけど、こいつは日光とかあんまり必要なさそうだな」
「まあね、あんまり寒いところに行かせちゃうと体調を崩しちゃうけど、自ら熱を発しているから普通の寒さは耐えられるわね」

 才人は段々大胆になり、ただ触れるだけではなく、頭を撫でてやった。
 サラマンダーは気持ちよさそうに、きゅるきゅると喉を鳴らし、目を細める。
 猫みたいだな、と才人は思った。

「あら? フレイムがこんなに懐くなんて」
「フレイム?」
「この子の名前よ、似合ってるでしょ」
「そうだな、真っ赤だし、暖かいし」

 使い魔同士、妙なシンパシーでも働いたのか、サラマンダー=フレイムは才人に顔をすり寄せた。
 自ら体をなすりつけたり、喉を鳴らしたりして、撫でられるのを懇願したりしている。
 口を開いて舌で才人の頬をなで上げる。

「うぉぁちっ!」

 サラマンダーの唾液は高温である。
 それを頬に塗りたくられた才人は、もんどりをうって転げた。

「あっはははは」

 赤い髪の子は、そんな才人の様子を見て腹を抱えて笑った。
 フレイムは倒れた才人にのしかかり、更に舌で顔を舐めまくる。

「熱いッ! 熱い、やめ、熱いってやめろ、この、フレイム! ほんとマジ火傷するから!」

 才人は本気で抵抗していたが、フレイムは止まるところを知らない。
 圧倒的な重量で才人を地面に押しつけて、身動きを取れなくさせ、腕で防ぐことすらできない無防備な顔を舐めていく。
 その横で、赤い髪の子は腹を抱えて、大笑いをしている。

「ちょ、ちょっと、笑ってないで助けてくださいって……あつっ!」
「くくくくく、ごめんごめん、こら、フレイムやめなさい」

 赤い髪の子がフレイムの頭を軽く叩くと、フレイムはきゅるきゅると悲しげに鳴いて、才人の体から離れた。
 余程熱かったのか顔を真っ赤にし、べたべたをパーカーの袖でぬぐいながら、才人は起きあがった。

「ごめんなさい、でもあんまりおかしかったものだから……」

 赤い髪の子は口元を手で押さえて、今も少し息を詰まらせていた。
 顔をぬぐっている才人がジト目で見つめていることに気が付くと、わざとらしく咳払いして笑いを止める。

「私、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプトー、キュルケって呼んで頂戴。あなたは?」
「え? あ、お、俺は平賀才人。才人でいいよ」
「ヒラガ・サイト? 変わった名前ね」
「そらまあ……」

 才人は、あんたのやたら長い名前よりかはマシだよ、と思った。
 心の中のことなどおくびも出さずに、愛想笑いを浮かべる。

「中々変わった人ね、あなた」
「そうかな?」
「そうよ。平民なのに使い魔だったり、そんな見たこともない服装。
 おまけにうちのフレイムをあっというまに魅了しちゃってるのに、変わってないって言うつもり?」
「ふっ、服装はところ変われば品変わるって言うだろ。俺のいたとこではこれが普通なの!」
「郷に入りては郷に従え、とも言うわよ」
「今日突然連れてこられたばかりなんだから、着替えなんてなかったの」
「あらそう」

 とはいえ、才人は着替えがあったとしても着替える気はなかった。
 まだこの異世界に来てから一日も経っていない。
 ごく短時間で彼の価値観に多大な影響を与えたといえど、服装まで魔法使いの格好を真似する気にはなれなかった。
 もっとも、彼は平民であるから、そのような格好をさせられることはないのだが、才人はまだそれに気付いていない。

「それで、タバサの部屋を知りたいんでしょ?
 この塔じゃないわ、向こうの塔」

 赤い髪の子=キュルケは窓から見える塔を指さした。
 日が暮れたこともあり、塔のあちらこちらから光が漏れている。

「あの塔の、確か五階だったわね。わざわざ違う塔のこんなところまで登ってきてご苦労様」

 キュルケは才人の肩をポンと叩いた。
 結構な数の階段を上り下りして、足に疲労を溜めていた才人は、その勢いもあってかがっくりと肩を落とした。
 もうそろそろ到着するころかと思ってたのに……と、才人は涙する。

「早く行った方がいいわよ。
 ここの塔には、やたらがなりたてる桃色の髪の子がいるから、見つかったら大変なのよ」

 桃色の髪の子、才人はさっきの子を思い出す。
 確かにがなりたてていた。
 結局、真っ赤な顔して逃げていってしまったけれど。

「ああ、はい、わかりました……」
「じゃねー、タバサによろしく。まあ、私はあの子嫌いなんだけどね、何考えているのかわからないし、無視するし」
「はあ、すんません……」

 才人は、なんとなく頭を下げた。
 この世界に来て才人の会った人達は、大なり小なりキュルケと同じ感想を抱いている。
(マルトー親父は例外で桃色の髪の子はそもそも無視していた)

「別にあなたが謝ることじゃないわよ。むしろお気の毒様、と言わせて貰うわ」

 キュルケは少し困ったような笑みを浮かべ、才人の肩を二度軽く叩いた。
 そのまま踵を返し、足下のフレイムに声をかけて、才人から離れていく。
 フレイムは興味深げに、落胆している才人を見つめていたが、少し遅れてキュルケの後を追っていく。

「じゃねー」

 途中、キュルケは振り返り、才人に向かって軽く手を振った。
 才人も少し引きつった笑みで手を振り返す。

「貴族にも色々いるんだなぁ……っつっても、数人しか知らないけど」

 才人は手に持っていた地図を丸め、ポケットにつっこんだ。
 くしゃり、という音が寂しく聞こえる。
 キュルケの後ろ姿が見えなくなったところで、才人も元来た道を引き返していった。


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