第5話
災難は忘れた頃にやってくる
「……知らない天井……。」
お約束な発言をしながら、起床した。
体内時計では大体7時半頃といった具合だろうか?
『あ、起きましたねマスター。』
布団から起き上がると、電源が繋がれたノートパソコンのディスプレイからウィル子が声をかけてきた。
「今は何時だ?」
『現在7時37分20秒なのですよー。』
正確な体内時計に感謝しつつ、布団から抜け出し、台所に行って蛇口を捻って水を出し、頭を覚まさせようと顔を洗う。
(先ずは食糧の確保。次に情報と一応得物だな。)
顔を洗いながら、はっきりし始めた思考で今日の予定を立てるヒデオだった。
大佐との勝負の後、ひでおとウィル子は最寄りのアパートを住居と定めた。
大家とは会ったのだが、まだ日の出前の深夜とも言える時間帯であったため、挨拶と簡単に手続きだけにして、正式な手続きは明日にする事にしたのだ。
そして、ウィル子のPCのプラグを繋いで、備え付けの布団を出して寝たのだ。
「ウィル子。オレは一先ず最寄りのコンビニにでも行って来るが、君は予定はあるか?」
「私ですか?う~ん…特に予定も無いので、マスターとご一緒します。」
「そうか、なら行くぞ。」
「はーい。」
そして、身支度を整え、さぁ出かけようか、という時にノックが鳴った。
「…KYですね。」
「…仕方あるまい。」
『ヒデオさーん、大家なのですニャ~。』
コンコンコン、と再度ドアがノックされる。
その声と話す内容から、昨夜会った猫耳の可愛い大家さん、ミッシェル嬢だろう。
仕方無い、と気を入れ直し、ひでおは扉を開けた。
「おはようございますなのニャ。やっぱりもう起きてましたかニャ。」
「おはようございます、大家さん。」
機嫌の良さそうな声で朝の挨拶をするミッシェル嬢と、一応アパートを借りている身なので敬語を使うひでお。
二度目ではマルホランドのレストランでウェイトレスをしていた彼女だが、猫の獣人ワーキャットであり、意外とその戦闘力は高かったりする。
要人も参加するパーティー等では、耳と尻尾を偽装して給仕の姿となって警備に就く事もある程だ。
なお、料理の腕もかなりのもので、二度目のマルホランド内女性ランキングでは必ずTOP5にランクインする……主に家庭的な所とその猫耳・尻尾と幼い容姿の御蔭で大きなお友達の心を鷲掴みにしているため。
そんな彼女だが、今回は運営側としてこのアパートの大家としてこの都市にいるらしい。
(恐らくバーチェスからの監視…否、スカウト目的か?)
まぁ、大体そんな所だろうと当たりを付けている。
とは言え、普段は優しい大家さんを演じるらしいので、そこは甘えておくとしよう。
「あ、そう言えば昨夜お隣に入った人達がご挨拶したいそうですニャ。」
そう言って、彼女はドアから一歩退いて、脇にいてひでおの視界に入っていなかった2人を前に出した。
そして、ひでおはその2人の人影に挨拶しようと顔を向けて……
「うふふ、クスクス♡…初めまして、ヒデオ♪」
「初めまして、ヒデオさん。」
素早くドアを閉めた。
次瞬、数秒で錠・チェーンを閉めて、靴をはいて逃走の準備をする。
その間、向こう側から怒りと執着を示す様にドンドンドン!ドンドンドン!と激しくドアが叩かれる……と言うより、殴られていた。
「ウィル子、脱出だ!!」
「へ?な、何がどうな……」
疑問は後とばかりに、ひでおは何かを話す途中のウィル子を俵の様に肩に担ぎつつ、全力で窓へダッシュした。
PCは置いてきぼりだ。
後で新品を買うなり、他のPCをクラッキングしてしまえば良い。
一先ず、今は逃走する事こそが肝要だと、全力で身体を動かす。
きっと、今の彼なら世界新記録を達成してくれる事だろう。
そんな惚れ惚れする程に見事なスタートダッシュだった。
ドバギャッッ!!!!
ドゴン!ドゴン!と先程よりも派手に叩かれていたドアが遂に派手な破砕音と共に突破され、ドアノブだけをそのまま残して、砕けかねない勢いで開いた。
そして、ドアの向こうから姿を現したのは、十字教のシスター姿の女性だ。
ボブカットの輝く金髪、キリッとした知的な美貌、スレンダーな体格をした如何にもできそうな女性。
その何処か見覚えのある容姿に、脳内警報が最大級の警鐘を鳴らし、その勢いのままに窓ガラスにタックル、空中へ身を投げた。
だが、ひでおは即座にその判断を後悔した。
悲しい事に、彼の追手は常識の外の中でも更に非常識な者達、アウターとそれに対抗できる数少ない存在のコンビだった。
「はぁい、Welcome♪」
2階の窓の向こうにある空中。
そこには回り込んできたであろうにっこり笑顔の少女(凡そ小学生程度)が背に片翼を生やして浮かんでいた。
白ローブ、白杖、襟元の鐘、閉じた瞼に芸術品の様な美貌と、やはり非常に見覚えのある少女だった。
その白尽くめの少女に対し、既にひでおの身は空中にあり、魔法も使えぬ彼では方向転換も急ブレーキも加速もできない。
不意に展開した並列思考の一つが、妙な事を考えた。
「知らねぇのか?魔王からは逃げられないんだぜ、っはっはっはっは!!」
「もう諦めるしかないんですー。」
何故か脳裏にかクーガーが酒を飲み、セリアーナが酌をしながら稲荷寿司を食べるというアレな光景が広がった。
あぁ、うん。
確かにその通りだけどさ、もっとマシな事言えなかったのかよ友よ。
その思考を最後に、次の瞬間、ひでおの意識はブラックアウトした。
「全く!再会早々逃げ出すとか何を考えているんですか!?」
「真に申し訳ございません。」
十分後、オレは先程脱出しようとしていたアパートの一室で畳の上で正座させられ、教皇もといマリアに説教されていた。
あれから捕えられたひでおは元の部屋に戻され、ウィル子は「身内での話し合いがある」と無理を言ってミッシェルの部屋に預かってもらっている。
一応PCも一緒なので、巻き込まれる事も無い……と思いたい。
なお、2人がこのアパートに入居しているのはひでお達を広場から追ってきたからだ。
…本当はもっと豪華な所に行くつもりだったが、全部埋まっていたからという身も蓋も無い理由もある。
「クスクス♪そろそろ許してあげたら?ヒデオも本当に反省してる様だし♪」
「まぁ、確かに…って、何でヒデオさんの膝の上に乗ってるんですか!?」
「うふふ、クスクス!身体が小さいって便利ねぇ?」
そして、何故か幼くなっている預言者マリーチことマリーは、現在オレの膝の上を独占していた。
…と言うか、2人ともそんなに仲良かったっけ?
「うふふ…あの時から和解したのよ。また2人で争ってあなたに何かあったらと思うと…ね……。」
「ですね……あの後は苦労しました…。」
しみじみと頷く2人といい加減に膝が痺れてきたオレ。
如何に小学生サイズと言えど、人一人分の重さを膝の上に乗せ続けるのはきついものがある。
「えい☆」
からろん♪
「ごはぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!?!?」
ある種懐かしさすら感じる痛みに、ひでおは当然の如く悶絶し、畳の上を転げ回った。
…ちなみに、マリーは既に中空に退避している。
「うふふ、クスクス!…乙女の体重の事を考えるなんて、ダメよ?」
「…ヒデオさん、もう少し女性に対して紳士的にしないとダメですよ。」
全く、といった雰囲気で叱る2人と叱られるオレ。
…理不尽だ、とは思わない。
確かに女性の体重に関して追求する事はマナー違反だと思うが………せめて、せめて内心で考える位は許してほしいものである。
「ダメです。ひでおさんは私達2人の事だけを考えてれば良いんです。」
「クスクス♪…とは言っても、そうはいかないのがあなたなのよねぇ。」
はっきりと自身の欲望を告げるマリアと現実を告げるマリー。
オレはと言うと、正直困っているが…まぁ、良いか、と割と直ぐに諦めた。
「さて、いい加減君達の境遇を説明してくれないか?そちらはマリーチがいるからこちらの事は調べ済みだろう?…それに、あの世界はどうなったんだ?」
「うふふ、クスクス♪せっかちはいけないわよ?」
「ですが、ここで説明しておくべきではありますね。」
私達にとっては今から7年前の事です、とマリアが前置きしてから語り始めた。
あの日、オレが2人の喧嘩に巻き込まれて死んだ後、勿論の事ながら大騒ぎになった。
結局、法王庁ならびにイスカリオテ上層部によって表向きは爆破テロとして処理されたが、この事件は加害者2人にとって、新たなトラウマを刻みつけて余りあった。
結果、2人は半ば呆然自失としながら日々を過ごした。
しかし、幸いにも2人ともえるしおんの影響か、呆然としながらも仕事はきっちりとこなしていた。
だが、内心で2人はどうにかしてえるしおんを蘇えらせられないかを検討していた。
そして、えるしおんが死んでから半年後、『天』にて聖四天筆頭のマリアクレセルに相談する事となった。
だが、帰ってきた言葉は無情なものだった。
既にえるしおんの魂は世界に溶け、輪廻しており、他の世界にあり、器しか用意できない、と。
これを知った2人は愕然としたが、此処でめげる程諦めの良い2人ではなかった。
2人は綿密に話し合いを重ね、今後はえるしおんの事で争う事を止め、えるしおんの魂を追いかける事を決定した。
本来なら輪廻する魂を追うなど不可能なのだが、その辺りは流石億千万の眼、無限に近い並行世界の中から2年掛かったものの、見事にえるしおんの魂を捕捉した。
その間、教皇は自らの後任の選定と育成・今の世界情勢の変化に備えて、法王庁とイスカリオテの体勢を整えていた。
法王庁は兎も角、イスカリオテに関しては反発があったが、側近A・B両名を引き込む事で辛うじて対処した。
元々やろうとしていた事がえるしおんの目指したものと近かったため、協力を取り付ける事が出来た。
そして、今度は秘密裏に魔殺商会のドクターこと葉月の雫も引き込んで、学術都市と技術提携しつつ、世界間移動の研究を開始させた。
それから更に3年後、鈴蘭達新生ゼピルム一派ならび魔殺商会に「これから『天』は新しい世界の仕組みを実行する。止めたければ攻めて来い」と宣戦布告。
結果、最終的には双方の総力戦となり、ほぼ史実どおりに決着(違いはマリーチが最終的に降伏した事)、鈴蘭は力を失い聖魔王となった…………同時に、魔王すら殺しかねない程の仕事に忙殺される事となったが。
2人は負けたのと後釜が十分に育った事を理由にあっさりと表舞台から退場し、後釜を後任の教皇とショーペンハウアーに譲った(押し付けたとも言う)。
その後、世界が鈴蘭の元に安定化した事を確認すると、完成した次元移動装置に乗り込んでこの世界に来たのだそうな。
ここまでで凡そ7年の月日が経ち、元教皇は21歳になっていた。
なお、2人だけでやっていれば、この三倍近い日数が掛かったらしいが、予め優秀な人材がスカウト・教育されていたため、意外と早くに終わったらしい。
…それに関しては嘗て大いに尽力していたであろうひでおからすれば、実に微妙な気分になったが…。
「ちなみに、マリーが姿を変えているのは『矛盾』を起こさないためです。下手に普段の姿で来ると、この世界のマリーチと統合されるか対消滅してしまうかもしれませんから…。」
「うふふ、クスクス♪でも、この恰好も中々楽しいものよ♪」
「…満喫しているようだな。」
ちなみに、マリアに関しては年齢も異なる上に両親も存命だそうで無問題らしい。
「…それで、今後の活動方針とかはあるのか?オレは一応ウィル子が神になる後押しをしようと思うんだが……君達はどうなんだ?」
「私達も聖魔杯には参加しようと思います。…まぁ、ひでおさん程ではありませんが、鈴蘭さんに言いたい事位はありますし…。」
「うふふ、クスクス♪私は楽しそうだから♪」
個々の性格はやはり以前と同じらしかった。
…まぁ、余程の事が無い限り、7年かそこらで劇的に変わるとは思えないが…。
「君達の言いたい事は解ったが……その、非常に言い難いんだが…色恋沙汰に関してはどうなんだ?」
これがひでおが最も懸念する事だった。
2人が協力関係にあるため、以前の様にこの二人に諍いに巻き込まれる事は無いだろうが、その他の人物の行動や立場に殺意を抱かないとは限らない………主にウィル子とかウィル子とかウィル子とか。
「その事なんですが…非常に、非っ常に不満なんですが……。」
「可能な限り周囲に被害を出さないように…普通に誘惑する事にしたの。」
その言葉に、ひでおは表情筋麻痺が疑われる顔を大いに引き攣らせた。
現在の容姿は以前見慣れていたそれとは大きく異なるものの、どちらも美人である事には変わらない。
そんな2人が誘惑してくるとなると、一体自分の理性は何処まで保つのだろうか?
マリーとマリアからすれば、これもかなり大きな譲歩なのだが、ひでおには十二分に刺激的過ぎた。
2人とも自分の美貌には自信があるし、ひでおを満足させられる(ナニをどうとは言わないが)という確信もある。
しかし、彼を過度に拘束するのは本意ではない……同時に、ひでおには自分達だけを見てほしいという乙女心もあるため、この様な形に落ち着いたのだ。
「…それだと、君ら二人が負ける可能性もある訳なのだが…。」
「あぁ、その事ですけど……」
あくまで可能性の話だが、ひでおとしては未だに嘗ての立場と面影と合わせて2人を見ているため、どうにも違和感が拭えなかったのだ。
そんなひでおの懸念に対するマリアの返答を、マリーが引き継いで答えた。
「浮気は勿論の事、つまらない女に騙されたなら……相手を殺して、ヒデオを監禁しちゃうから♪……うふふふふ、クスクスクスクスクスクスクスクスクスクス!!」
ゾワリ、と極僅かながらマリーの身体から濃密な魔導力が吹き出た。
並の人外なら泣いて命乞いをするような殺意を乗せたそれを至近距離から喰らったひでおは、類稀な精神力で辛うじて悲鳴を抑え込み……次いで、叱責した。
「馬鹿者、影響を受ける者が出るかもしれんぞ。」
「うふふ、クスクス!大丈夫、この部屋の外には漏らしてないわ。」
そう言って優雅に、しかし、妖艶に微笑むマリーにひでおは溜息をついた。
対面に座るマリアも呆れた様な表情をしているが、こちらはいつもの事と注意する気力も無いらしい。
「まぁ、それはそれとして……。」
ポスン、とマリーがまたひでおの膝の上に座り直し、それに倣ったのかマリアもひでおの後ろに回り、ぴっとり、とひでおの背中に甘える様に抱きついた。
ひでおはそんな2人を咎めようとし……
「…うおい、2人とも……。」
「7年も離れてたんです。これ位は多めに見てください、先生。」
「ふふふ……こんな良い女に囲まれて、嫌とは言わせないわよ?」
「………全く、オレを困らせる所は全然変わっていないな、君達は……。」
しかし、甘えてくる2人に身を任せた。
単純に自分を慕ってくれた事もそうだが……事故とは言え、自分が途中で手放してしまった世界との繋がりとその現状を確認できた事から来る安心感が、今のひでおの無防備さを生み出していた。
この世界に来てから、ひでおは何処か無理をしながら過ごしていた。
あの二度目の世界はどうなったんだろうか?
そんな疑問が脳裏にちらつく中、それに無理にでも蓋をして楽しげに過ごしてきた………もう終わった事だ、と自分に無理矢理言い聞かせながら。
だが、心の片隅でいつも思っていた。
あの世界は、あちらの人々は、自分の仲間や部下達は、今どうしているのだろうか?
それが気になって、しかし、無理に封じ込めながらひでおは20年を過ごしてきた。
だが、やはり何処かで集中し切れていなかったのだろう。
学生時代、ひでおは男女交際の経験こそあるものの、半年も経たずに別れる事が多かった。
別れ話を切り出すのは常に彼女の方で、ひでおもそれを止めないためにあっさりと別れる。
思えば、そこで何かリアクションを起こせば良かったのだろうが、根本的に善人で真面目なひでおには本気じゃない相手と無理に付き合い続けるのは不可能だった。
だから、旅の間も友人は多かったが、恋人になった人間はいなかった………一夜の付き合いは少なからずあったが。
そこに形はどうあれ間違いなく自分を慕ってくれる女性が2人も来たのだから、色々と気が抜けてしまっていた。
だが、ひでおはまだ気付かない。
2人にとって、これは大きなチャンスだと言う事を。
(ふっふっふ…先生は身内には本当に甘いですねぇ…。)
(うふふ、クスクス!暴力は使わないと言ったけど…女にはそれ以外もあるのよ?)
ひでおの膝と背で、ヤンデレラ達が邪な考えを抱いていた。
そして、マリアは後ろから色々と(ナニがとry)豊かになった肢体を、マリーは色々と縮んだ(ナニがry)ものの愛らしさを増した容姿で甘え、ひでおの理性を溶かそうとした。
((既成事実さえ出来れば……ッ!!))
ニタリ、とひでおの死角にある2人の顔が歪んだ。
2人の眼はどう控えめに見ても、狩人の、捕食者の笑みだった。
と言う風に、2人はかなり邪な事を考えていた。
……ちなみに、マリーが精神干渉しないのは「それじゃつまらない」から。
もし彼女が遠慮なくそんな事をすれば、全てが上手くいくだろうが、それでは意味が無い。
自分の魅力で口説いてこそ、初めて意味があるのだ……ちょっと正直になってもらう事はあるが。
そして、獲物(と書いてひでおと読む)の方もまたマズイ、と油汗をかいていた。
(ぬぅ……これは、早まったか?)
先程から背中と膝にある感触に、ひでおは表面上こそ平静を保っていたが、内心では赤くなったり青くなったりしていた。
(もしここでトチ狂った真似をしたら即BADEND…ッ!しかし、それなら正解は何処!?)
ちょっと混乱しているひでおだった。
考えてもみてほしい。
背中には元教え子が抱きつき、以前からは考えられない程に成長した夢の膨らみを柔らかく押し付けている。
膝に可愛らしくなった同盟者が愛らしさ全開で甘えてくるのだ。
男として嬉しい限りの状況だったが、その2人とも戦闘能力だけを見れば、現在の自分よりも遥かに高いため、迂闊な事は即座に死に繋がる。
だが、そうと解っていても、雄として色々とこの状況は辛かった(ナnry)。
(色即是空空即是色煩悩退散煩悩退散…ッ!何か、何か無いか…この状況を打破する手立ては!)
並列思考まで使って対応策を考える。
しかし、茹った頭で然したるものが思い浮かぶ訳もない。
「っはっはっは、諦めちまえって!据え膳喰わねばってよく言うじゃねぇか!」
「もう逃げられないんですー。さっさと覚悟完了した方がいいんですー。」
うっさいぞ、脳内友にその相方。
自身の並列思考に突っ込みを入れつつ、ひでおは2人を振り払って活動を開始する覚悟を決めようとして……
「マスター、どんだけウィル子を待たせるんですか!いい加減にしないと、幾らマスターと言え、ど………。」
ドバン!と部屋のドアが開いて、ウィル子が現れた。
しかし、ドアを開けて部屋の中を確認すると同時に停止した。
「うぃ、ウィル子さん待って下さいニャ!ヒデオさん達はまだ取り込み中、って……。」
その背後にいたミッシェルも、ウィル子と同様に部屋の中を覗き込んでフリーズした。
「ウィル子さん、どうかしまし、た……?」
『これは、また…すごい状況でござるな…。』
そこに、今までミッシェルとウィル子と共にお茶を飲んでいた美奈子と岡丸も加わり、同じようにフリーズした。
室内の3人も見られた事に固まり、双方共にフリーズし、ギシリ、と嫌な沈黙と硬直が漂った。
ひでおは盛大に顔を引き攣らせ、マリアは見られた事に恥ずかしそうに頬を染め、マリーは頬に手を当て、あらあら♪と困った様に微笑んでいる。
そんな三人の様子を見て、徐々に徐々に、ウィル子の怒りのボルテージが上昇していく。
更に、ミッシェルは実に楽しそうにニヤニヤと笑い始める。
その笑みは実にSっ気に溢れたものであり、そこら辺はやはり猫らしいと言うべきだろうか?
極め付けに、美奈子が岡丸を引き抜き、怒りで顔を赤くしつつ、振りかぶった。
「ぬわぁんにをやっているのですか、この色惚けマスタァァァァァァッ!?!」
「み、未成年淫行容疑で逮捕ですーーー!!」
しかし、そんな攻撃を許す程、元教皇は甘くない。
先程の甘えた様子から一変、ギラリ、とマリアの瞳が物騒に輝き、瞬時に胸元の十字架が起動、神器を召喚し、美奈子へ迎撃を開始する。
ズドゴゴガギンッッ!!!
轟音と衝撃に、アパートは根本から激しく揺れ動いた。
ども、最近風邪気味なVISPです。
この急に寒くなり始めた時期、皆さんも風邪には気を付けてくださいね。
間違っても腹出して扇風機を動かしながら寝ないようにしましょう。
さて、第5話です。
先の第4話ではかなりの混乱を出してしまったようなのですが、いや本当にすみません(汗。
じゃんけんネタが思いついたのが、投稿した後に気分転換にゴル○13の某話を見たからだったもので、こんな形になってしまいました。
第5話に関してですが、今回は多めに独自展開が含まれています。
この後は大した違いこそありませんが、それでもひでおらしく潜り抜けていく予定ですので、どうかご安心を。
それでは、次は第6話でお会いしましょう。