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No.21743の一覧
[0] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!【現実転生→林トモアキ作品・第二部】IFEND UP[VISP](2012/01/10 16:44)
[1] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!嘘予告[VISP](2011/09/07 13:41)
[2] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第一話[VISP](2011/09/07 13:41)
[3] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第二話[VISP](2011/09/07 13:42)
[4] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第三話[VISP](2011/09/07 13:42)
[6] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第四話 改訂版[VISP](2011/09/07 13:42)
[7] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第五話[VISP](2011/09/07 13:42)
[8] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第六話[VISP](2011/09/07 13:42)
[9] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!番外編プロローグ[VISP](2011/09/07 13:42)
[10] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第七話[VISP](2011/09/07 13:43)
[11] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第八話 一部修正[VISP](2011/09/07 13:43)
[12] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第九話[VISP](2011/09/07 13:43)
[13] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十話[VISP](2011/09/07 13:43)
[14] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十一話[VISP](2011/09/07 13:43)
[15] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十二話[VISP](2011/09/07 13:43)
[16] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十三話 修正[VISP](2011/09/07 13:44)
[17] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十四話[VISP](2011/09/07 13:45)
[18] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十五話[VISP](2011/09/19 21:25)
[19] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十六話[VISP](2011/09/24 12:25)
[20] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十七話[VISP](2011/09/25 21:19)
[22] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十八話[VISP](2011/12/31 21:39)
[24] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十九話[VISP](2012/01/01 00:30)
[25] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第二十話[VISP](2012/01/08 23:12)
[26] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第二十一話UP[VISP](2012/01/10 16:05)
[27] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!特別編IFEND UP[VISP](2012/01/10 16:06)
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[21743] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第二話
Name: VISP◆cab053a6 ID:b5aa4df9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/07 13:42
 第二話 トラウマとの遭遇



 今から2000年近く前、魔王制が廃止される前の話だ。
 
 当時、オレは旧魔王城で日々を魔法の研究で過ごしていた。
 とは言っても、あくまで趣味のものでしかない。
家族や母の部下に比べれば魔力が低い事もあり、その内容は基本的に生活の中に生かすような形のものが主だった。
 この頃はまだ魔王だとか魔族・魔人の統治だとか、神経を磨り減らすような事も少なかった………ある一点を除いて。
 
 唐突だが、オレには兄妹がいる。
 魔界にいるという兄には会った事が無いが、オレとその後に生まれた妹はこの世界に生まれたため、この世界以外の事は情報以上では知らない(前世の事は除く)。
 そのため、オレは母の次に妹との接点が多いのだが………この妹が難物だった。
 幾つか例を挙げるとしよう。
 
 「お兄様。」
 「何だい、エルシア?」
 「魔法の勉強教えて。」
 「母上ではダメなのかい?」
 「今お仕事してる。」
 「ふーん……ちょっと使ってみてくれないか。」

 直後、地から天へと閃光が走り、激震と共に城が半壊した。
 復旧には3カ月かかった。
 オレがベッドと別れを告げるのには半年かかった。
 強い光に対するトラウマは消えなかった。

 「お兄様。」
 「何だい、エルシア。」
 「何してるの?」
 「魔法の研究だよ。」
 「…これ、私がやっても良いかしら?」
 「待った。それはまだ試作品d

 直後、2人のいた図書館を木端微塵にする様な爆発が起こった。
 図書館は立て直し、蔵書は灰も残らなった。
 オレの意識が戻ったのは3カ月後だった。
 明確に芽生えた妹へのトラウマは消えなかった。


 妹は美しい。
 母に似た背の中程まである銀髪、涼やかな目元、ゴシック風の黒いドレス。
 美の女神の様な母に似て、天使の様な美しさを持つ彼女。
 その性格はやや種族主義的な所もあるし、生粋の箱入りお嬢様そのものだが、何事にも冷めている自分を厭うなどの悩みも持っている。
 端的に言って、我儘が目立つが可愛い妹だ。
 可愛い妹だが、母譲りの魔導力を「めんどくさい」の一言で制御を手放す惰性、そして、何事にも挑戦したがる好奇心により、彼女の周囲では常に大規模災害が付き纏う。
 しかも、何故か母はオレとエルシアを引き合わせようとするため(単純に家族だからだろうが)、オレが彼女の被害を受ける回数も増える。
 それに比例し、オレのトラウマも増えていく。
 
 だから、オレは妹であるエルシアが苦手となった。
 魔王制廃止後は、殆ど会う事も無かった。
 否、寧ろ意図的に避けていたと言った方が正しい。
 イスカリオテ機関という確固とした拠点を持つと、幾度か母と共に尋ねて来る事もあったが、その度にオレは然して重要でもない施設の視察に行ったり、側近A・Bに2人の世話を押し付けたりした。
 ……機関に甚大な被害が出る事もあったが、止むを得ない。
 ……その余波で仕事量がオーバーキルになる事もあるが、止むを得ない。
 ……回を重ねる毎に被害が増えていったが、止むを得ない。
 
 だって、怖いし。

 オレの人生におけるトラウマの8割は妹に関するものだ。
 次点でマリーチに関するものだが、そこら辺は流石精神干渉の大家、仕事に差し障りの無いものばかりだった。
 ……その力をカウンセラーとして振るってもらいたいと思ったのは、オレだけだろうか?

 さておき

 オレにとって、エルシアという魔族の姫君は存在そのものがトラウマであるという事だけは事実だった。
 そして今、そんな彼女が目の前にいる。
 理性では何とかやり過ごせばよいと言うが、本能の部分がこの場からの逃走を声高に主張している。
 あぁ、自分はどうすれば良いのだろうか?
 

 「マスター!大丈夫なのですか、しっかりしてください!」
 「ッは!?」

 どうやら内面に引っ込み過ぎていたらしい。
 ウィル子が涙目で肩を前後に揺さぶって、何とか意識を戻そうとしている。
 今はもうしっかりと現世に意識が戻ってきているが、何でか視線が痛い。
 その視線はやはりエルシアな訳で………。

 「マスター!?また意識が飛んでます!」
 「っは!?」

 いかんいかん。
 頭を左右に振って意識をはっきりさせる。
 これ以上意識を飛ばしていたら、会場入りに間に合わなくなってしまう。
 しかし……。

 「あの子、こっち見てますね。」

 ……エルシアさんがジッとこっちを見てるんです、はい。
 



 視点 エルシア


 どうかしたのだろうか?
 さっきからこちらを見た事も無い鋭い目つきで観察してくる人間の男。
 一見すると何の力も感じられないし、している事もただこちらを見るだけ。
 だというのに、私は確かにこちらに向けられるその『目』に言い知れぬ違和感を感じた。
 その鋭い目つきの中に秘められた言い知れぬ感情。
 それが何なのか全く解らない。
 
(……?)

 …追求なら後でもできる。
 今はそれよりもさっさと小五月蠅い人間の女を黙らせる事が優先だ。
 
「鬱陶しいわね………リョータ、殺してしまいなさい。」
 「おいおいエルシア、そーゆう訳にもいかんだろ。まぁ、見てろ。こーいう生意気な女は…。」
 「じゃぁ、私がやる。」

 膨大な魔導力の内、砂粒一つ程度のものを魔道書に注ぎ込み、魔法を発動する。
 この魔道書は神器、「666」、「獣の書」とも言われる母上から頂いた大事なものだ。
 魔導力の制御が面倒と言ったら円卓の葉月の雫に作ってもらったらしいが、詳しい事は知らない。
 兎も角、この魔道書のおかげで私は本来ならめんどくさい魔法を簡単に行使する事ができるのだ。
 一応手加減はするから、あの女も少なくとも死ぬ事は無いだろう。



 視点 北大路美奈子

 
 聖魔杯に参加するため、相棒の岡丸と共に参加受付に来たのですが……そこで早速犯罪者を発見しました。
 何と法治国家日本の中で、堂々と文字通りの銃刀法違反を犯す青年を見つけたのです。
 警察官(会計課勤務)として、これは見逃せません。
 早速逮捕するために岡丸を抜いたのですが、相手はかなりの手練の様でして、苦戦中です。
 近接戦に限れば互角程度なのですが、相手は銃も持っています。
 このままでは距離を取られて負けるでしょう。
 しかも、相方と思われる少女がこちらを攻撃しようとしています。
 ですが、それを止めようと青年が後ろを振り向きました。
 隙あり、と私は空かさず岡丸を振るおうと間合いを詰めようとしましたが、不意に襟首の辺りが後ろにグイッと引かれて体勢を崩してしまいました。
 瞬間、私の目の前をかなりの高温を伴った炎が通り過ぎて行きました。
 もし、あのまま距離を詰めていたら、炎が命中、少なくとも重傷は免れなかったでしょう。
 意識しないまま冷や汗をかきながら、お礼を言おうと私は後ろで襟首を掴んでいるだろう人の方で振り向き………そして、後悔しました。
 その人が明らかに堅気の人間に見えなかったからです。
 剃刀よりも切れそうな気配を放つ眼光、襟首を掴む手から伝わる力強さ、隙の無い立ち居振る舞い。
 明らかに……その道のプロの風格でした。







 (危なかった……。)

 ひでおはエルシアが魔法の行使を始めた瞬間、数m先にいた婦警の襟首を掴み、渾身の力で何とか射線軸上からずらした。
 そのため、何とかエルシアの魔法が当たる事は無かったが……もし当たったと思うとゾッとする。
 何せ、放たれた魔法が着弾した辺りはドゴンッ!という轟音と共に草木が灰となり、土がごっそりと抉られていたからだ。
 もし、これが婦警に命中していたと思うと、相当な重傷か、運が悪いと死んでいた事だろう。
 
 「マスター、別に無理して助けなくても……。」

 やれやれという風に肩を竦めながら、ウィル子が言う。

 「…とは言って、年若い娘が傷ものになるのもアレだろう。」

 本当は殆ど反射的に身体が動いただけなのだが、そこら辺は言わずとも良いだろう。

 「あー……なんだ?一先ず助かった。」
 「いや、礼はいい。」
 「ッハ!?」

 不意に未だに襟首を掴まれていた婦警が動き出し、脱出、距離を置いた。
 
 「よ、よくも本官の邪魔をッ!公務執行妨害で逮捕しますっ!」
 
 何だかテンパッた様子でビシッとこちらを指さしてくる婦警。
 その様子に溜息と共に僅かな苛立ちが湧いてくる。
 三度目の生、以前の二度目に比べれば遥かに平和と言えるものだったが、一つだけ不満があった。
 それはこの目付きの悪さだった。
 どこのG13だ、と言いたくなる程の鋭い目つき、これは最早凶器とも言える。
 現に今までの20年、補導や職務質問された回数は両手に余る程だ。
 無論、自分の目付きの悪さは承知しているし、警察はそうやって治安を守る事こそ至上の任務であるため、抗議する事もできない。
 しかし、しかしだ。
 理性では解っていても、感情までは納得できん。

 「あの、マスター?何だかすんごい悪いオーラが出てます…よ?」

 ウィル子が何か言っているが、スルーで。

 「公務も良いが、警察官たる者が助けられて感謝の言葉も無し、か……フッ…。」
 「うッ!」

 正論を言われ、やや婦警は怯むが、しかし、十手を正眼に構え、ひでおを前に一歩も退く事は無い。

 「だ、だからと言ってあなたの行いを許すつもりはありません!」
 『美奈子殿、そこまででござるよ。』

 不意に誰かが美奈子を制する言葉を発した。
 しかし、声はあっても姿は無く、ひでお、リュータ、ウィル子、エルシアは揃って首を傾げた。

 『あの御仁、只者ではござらん。それに先の若者も相当の手練の御様子。ここは素直に退いて、大会に参加してから決着をつけてはどうでござろうか?』

 姿の見えぬ声、それはどうも婦警の握る十手から発せられているらしかった。

 「成程、パートナーが見えないと思ったら……。」
 「あの憑依武器がパートナーなのね。私も初めて見るわ。」
 「インテリジェンスウェポン……付喪神、ではなく憑依霊の類か。」

 ふーん、と納得した様に頷く3人と、疑問符を上げてやや置いてきぼりなウィル子。

 『ぬぅ、拙者の声を聞いても全く動じぬとは……美奈子殿、こ奴、相当な場数を踏んでおるぞ。』

 そりゃ億千万の目と顔を合わせるのが日常茶飯事だったひでおにとって、喋るだけの十手なんぞ驚く価値も無い。
 ただ便利だなー、と思う位だった。

 『美奈子殿、奴が何かしてくるか解らぬ。ここは一端退くべきでござろう。』
 「っく…こ、今回は本官にちょっとだけ本官に落ち度があると認めます……次は見逃しません!覚えておきなさい!」

 そう言って、素早く山肌にある洞窟へと掛けていく美奈子と岡丸ペア。
 恐らくあの洞窟が大会会場への入り口で、2人は既に参加受付を終わらせていたのだろう。
 あの速さなら今からでも追撃は可能だが……。

 『拙者、今回悪いは美奈子殿の方だと思うのだが……その早とちりさえ無ければ美奈子殿は。』
 「うぅ!………う、うるさいうるさい!」

 向こうから僅かに聞こえてきた小さな会話に、警戒を緩めた。
 ここは自重すべきだろう。
 一応嘗ての得物の特性上、杖術位は収めているが、実戦経験が殆ど無い身で彼女程の手練を相手にするには危険過ぎるだろうし、そろそろ時間が迫っている。

 「はっはっはっは!こいつはいいや!あんた、助かったぜ!あのアマ、こっちの話をてんで聞こうとしなくてな!」

 実に愉快そうに笑うリュータとその脇に無言で佇むエルシア。
 …意外と良いコンビなのかもしれない。
 まさか『あの』エルシアが赤の他人に興味を持つとは……明日はロンギヌスが降りそうだな。

 「…いや、偶然だよ。」
 「謙遜しなくてもいいって。あんたらも参加者なんだろう?オレはリュータ、こっちはエルシアだ。」
 「…川村ヒデオと。」
 「ウィル子なのです!」
 「おう!会場入りするまでは戦わねぇから安心しな!」

 お互いに自己紹介し、その場に和やかな雰囲気が漂うが、生憎とそうしていられる暇も無い。

 「…一先ず、受付を終わらせよう。参加どころか遅刻で失格など、笑い話にもならん。」
 「確かにな。んじゃ、さっさと済ませようぜ。」

 

 「にしても、マスターの目は既に凶器ですね。さっきの婦警、相当ビビってました!」
 「人が気にしている事を……。」

 


 「ようそこ、聖魔杯へ。私は受付係のラティです。大会中は役員として会場に入るので、よろしくお願いします。」
 
 ログハウスにいた受付係、それはイスカリオテでの嘗ての部下にして優秀な技術士官、ラトゼリカだった。

 (まさか、エルシアに続いていきなり元部下に遭遇とは……。)

 内心で溜息をつきつつ、ひでおはさっさと受付を済ませようとする。
 自分は一先ず鈴蘭に一つ説教かませば気が済むし、ウィル子に関しても電子関係の信仰を一手に得られればそれで目的は完了するため、無理してこの都市で頑張る必要も無い。
 負ければ即座に見切りを付けて、とっとと戻って信仰宗教を立ち上げるとしよう。

 「それでは受付を開始しますので、お一人ずつ名前と種族をどうぞ。」
 「それじゃオレからだな。名前はリュータ・サリンジャー、種族は人間だ。」
 「パートナーのエルシア、種族は…魔人よ。」
 (本当は魔族だがな…。)

 内心で真実を呟くが、口に出す事はしない。
 ラトゼリカなら理解できるだろうが、本人が秘匿しているのだから外野が茶々を入れる事も無いだろう。
 …もし言ってしまって、吹っ飛ばされるのが怖いからというのもあるが。

 「…川村ヒデオ、人間だ。」
 「ウィル子はウィル子、ウイルスなのですー。」
 「はい、ありがとうございます。魔人さんとウイルスさんをお連れの方々ですね。参加資格を満たしていますので、皆さん参加許可です………………って」

 不意にラトゼリカが何かに気付いた様にウィル子を見つめると、ウィル子はニタリ……と邪悪な笑みを浮かべた。
 
 「「ウイルスーーーーーーーッッッ!?!!?」」

 ズザザァァッ!!とラトゼリカとリュータがウィル子から離れ、エルシアも2人程ではないがススス……っと距離を取った。
 
 「にひひっ!ウイルスと言えば、普通はこーいう反応をするものですよ、マスター。」

 ニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべるウィル子だったが、オレは既に感染済みなので、最早諦観の域だ。
 
 「え、えーと……私、色んな種族の方を見てきましたが…ウイルスさんというのは一体…?」

 ラトゼリカの言葉に、リュータとエルシアの2人も頷くが、それもそうだろうな、とひでおは納得する。
 何せ、つい最近生まれたばかりなのだ。
 誰も知らなくても不思議ではないだろう。

 「…っは!?まさか!」

 そして、またもラトゼリカが何かに気付いたように声をあげる。
 彼女の視線の先には、受付用のPCに対し、涎を垂らしながら獲物を見る目を向けるウィル子の姿があった。

 「にひひ♪侵入―――」
 「ダメです!感染しないでください!不許可ですーー!!」
 「…そこまでにしておけ。」

 受付のPCを守る様に抱え込むラトゼリカと、今にもそれに襲い掛かろうとするウィル子。
 既にウィル子の目は明らかに獲物を見る肉食獣のそれであった。
 しかし、流石に受付のPCをクラッキングさせる訳にもいかない。
 先程美奈子にやった様に、ひでおは襟元を掴んで抑え込んだ。
 
 「…失格になったらどうする。」
 「うーーー………。」

 不満たらたらです、といった表情をするウィル子だったが、失格になったら困るのは彼女であるため、案外と素直に止めた。
 …イジメラレテ涙目になったラトゼリカにちょっと萌えたのは秘密だ。

 「はぁぁ~~…成程、電子ウイルスさんですね。非常に珍しいですが…解りました、参加許可です。」

 気を取り直したラトゼリカはあっさりと手続きを終え、参加許可を出した。
 そして、ごそごそと何やら棚を漁ってから、ドン!と机の上に冊子の様なものが二冊置かれ、それぞれのペアに渡された。
 …意外と厚いな。

「それではこちらがマニュアルになります。」 
 
 題名は「会場内の歩き方」………表紙がデフォルメされたラトゼリカなのが謎だ。
 後でしっかりと目を通しておくとしよう。
 ルールの隙間を突く奴は何処にでもいるからな、備えておく事に越した事は無いだろう。

 「日付変更と同時に大会開幕です、皆さん頑張ってください!」



 後は入場するだけとなり、今は先程美奈子・岡丸ペアが入っていった洞窟の前にいた。

 「さぁて、会場内で次会う時は敵同士だな、ヒデオ!」
 
 洞窟の前、まるで悪ガキの様な笑みを浮かべながら、敵対宣言するリュータ。
 ここで協力宣言するなり、一時的休戦するなりもあると思うのだが、そこら辺に関しては正直者らしい。
 見た時から長谷部翔希程ではないが熱血の気があると思っていたが、やはり予想は当たっていたらしい。
 
 「決勝戦で戦うのを楽しみにしてるぜ!」
 「望む所なのですよー!」

 ウィル子が元気に拳を振り上げ、受けて立つ事を宣言しているのが彼女の容姿も相まって何処か微笑ましい。
 一先ず、苦戦が予想される相手と直ぐにやり合う事は無いようだ。

 「その時は、手加減無しの魔法を見せてあげる。」

 いや、それはマジ勘弁。
 エルシアの言葉に冷や汗と共に戦慄するひでおだった。

 「マスター、ウィル子達も行くのですよー。」
 「ウィル子、その前に確認しておく事がある。」
 「?何なのですか?」
 
 リュータ・エルシアの背を見送った後、ひでおは洞窟の暗闇に目を向けながら口を開いた。

 「君もオレも正面からやり合えば、殆どの場合、先ず勝てないだろう。」
 「うー…それは、確かにそうですが…。」

 苦い顔になったウィル子。
 しかし、自分達の立場を理解しておく事は重要だ。
 自分に出来る事を理解しておいてこそ、相手の戦力の分析も出来るのだから。

 「だから、相手をこちらの土俵に引き摺りこむ必要がある。幸いにも決着をつける方法は明記されていない。なら、色々と出来る事が見えてくる。」
 「!成程、私ならハッキングとか機械関係で!」
 「具体的立ち回りはオレが引き受けるが、フォローの方は頼んだぞ。」
 「はい!お任せなのです!」

 ビシッと軍隊式の敬礼をするウィル子。
 如何にも様になっているが、恐らくネットの動画や画像を参考にしているのだろう。

 「じゃ、行こうか。」
 「レッツゴー、なのです!」

 そして、ひでおとウィル子も洞窟へと入っていった。
 足取りは軽く、望むものは異なれど、この時から2人は確かに相棒となった。

 参加するは聖魔杯、しかし、目指すは優勝ではない。
 方や生まれて間もない電子の精霊、方や三度目の人生を行く苦労性の男。
 そんな珍妙なコンビが、今夜、世界を律する権利を争う戦いに参加した。











 ?1「やれやれ、やっと着きましたね。」
 ラ「あ、参加者の方ですか?そろそろお時間ですから、急いで受付しますね。」
 ?1「えぇ、お願いします。急いで来たものですから、早く落ち着きたいんです。」
 ?2「うふふ、クスクス♪もう年なのかしら?大変ねぇ。」
 ?!「………。」(無言で得物を振りかぶる)
 ラ「ちょっ!?ここで物騒は厳禁ですよ!」
 ?1「……ッチ……。」
 ?2「うふふ、クスクス!」
 ラ「えぇっと、それではお名前と種族名をお願いします。」(怖い怖い怖い!助けてVZ!)ガタガタブルブル
 ?1「私はマリア・プレスティージ、種族は人間です。」
 ?2「私はマリー、種族は魔法少女です!」キラッ☆
 ラ「はい、人間と魔法少女ですね。登録完了しました、頑張ってくださいね。」
 ?1「はい、御丁寧にどうも。頑張ってきます。」
 ?2「ちょ、スルー!?2人してスルー!?どうしてそこで突っ込んでくれないの!?『彼』なら直ぐに突っ込んでくれたのに!」
 ?1「女性が突っ込むなんて言わない!そもそも、人の恩師を捕まえて何言ってんですか!?」
 ?2「何って……ナニ?」
 ?1「シネ。」

 ドタドタギャーギャー!
 ぜぇはぁひぃふぅ

 ?1「一先ず、さっさと入場しましょう。」
 ?2「そうね、ここまで来て失敗するのも馬鹿らしいものね。」
 ?1「(原因が何言ってやがる)……まぁ、良いでしょう。漸く追い付いたのです、今は目を瞑りましょう。」
 ?2「うふふ、クスクス♪本当にね……とても、長かったものね。」
 
 ?1・2「待っててね(くださいね)、エルシオン(さん)、今度こそ捕まえてあげる(ます)♪」
 




 
 ゾクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッッ!!!!!!


 ひ「い、今言い知れぬ悪寒がッ!?」
 ウ「マスター、どうしたのですか?」
 






 はい皆様こんにちは、VISPです。

 はい、追ってきましたヤンデレタッグさん達(挨拶)
 出すかどうか悩みましたが、このルートは一応BADEND編の続編に当たる代物ですんで、出しても然したる問題では無いかなーと。
 とは言っても、2人はひでおの行動を余り阻害するつもりはありません。
 あくまで惚れた相手と一緒にいたいがためにこっちに来た2人ですから。
 ……フラグ立てようものなら、鮮血ENDか監禁ENDになりそうですが。




 追記、ACE.Rですが、漸く全周して、隠し機体前部出せました。
 これからハードモード逝ってきます。
 一応ラスボス面は既にハードもやりましたけど……8割機体改造済み・パイロット全強化済みのアルファート・アーバレスト・VF-25F(A装備)でAP1000近くまで苦戦するとは思わなんだ(汗)。



 微修正 


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