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No.2139の一覧
[0] 紅蓮の修羅(ガンダム種運命)[しゅり。](2006/06/13 22:04)
[1] 2話目。 続いてしまったよ…[しゅり。](2006/05/25 22:53)
[2] 3話目。 ちょっとピッチ早いかな。[しゅり。](2006/05/25 22:56)
[3] 4話目。 ステラ完結編らしきもの。[しゅり。](2006/05/27 21:34)
[4] 番外編の1話。 まさか彼が!?[しゅり。](2006/05/27 21:36)
[5] 5話目。 ぼちぼち頑張ってま。[しゅり。](2006/05/29 20:41)
[6] 番外編の2話。 問題の彼女。[しゅり。](2006/05/30 19:49)
[7] 6話目。 第1回ルナ祭り。(次回未定)[しゅり。](2006/06/03 21:30)
[8] 7話目。 ライオン娘。[しゅり。](2006/06/03 21:35)
[9] 8話目。 デコッパチ。 別名アスカガ完結もどき。[しゅり。](2006/06/08 19:43)
[10] 9話目。 コメディにあるまじきシリアス色。 ここさえ乗り越えれば…[しゅり。](2006/06/09 19:42)
[11] 10話目。 そろそろ方向性を定めねば…[しゅり。](2006/06/16 22:02)
[12] 11話目。 おしおき、コンプリートゥッ![しゅり。](2006/06/16 22:06)
[13] 12話目。 種主人公、なんとなく登場[しゅり。](2006/06/19 21:32)
[14] 13話目。 3歩進んで2歩下がる的な進行速度[しゅり。](2006/06/29 22:48)
[15] 番外編の4話。 抜き打ち!第1回ステラカーニバル (前編)[しゅり。](2006/07/01 20:19)
[16] 番外編の4話。 抜き打ち!第1回ステラカーニバル (後編)[しゅり。](2006/07/01 20:39)
[17] 14話目。 相変わらず進まない[しゅり。](2006/07/12 21:26)
[18] 15話目。 カガリ暗躍。[しゅり。](2006/08/08 21:59)
[19] 16話目。 まだ生きてますw[しゅり。](2006/08/11 21:39)
[20] 17話目。 結婚式イベントも無視するなんて…[しゅり。](2006/08/08 22:11)
[21] 番外編の5話。 徒然なるままに、ミーア・キャンベル。[しゅり。](2006/08/11 22:44)
[22] 18話目。 オーブ編はこれでおしまい。[しゅり。](2006/08/27 17:38)
[23] 19話目。 ラクシズもひとまずおしまい。[しゅり。](2006/09/09 00:25)
[24] 20話目。 踊れ!ニーラゴンゴのリズムに乗って♪[しゅり。](2006/09/27 20:17)
[25] 番外編の6話。 その頃のステラさん。[しゅり。](2006/11/04 15:06)
[26] 番外編の3話。 本編では出番が無いのだ。[しゅり。](2006/11/04 16:02)
[27] 21話目。 信じる事さ必ず最後に愛は勝つ(意味不明)[しゅり。](2006/11/04 16:34)
[28] 22話目。 危うし主人公の座、みたいな。[しゅり。](2006/11/16 23:21)
[29] 番外編の7話。 本編が煮詰まったから番外編に逃げただなんて言わないで。[しゅり。](2007/01/18 21:00)
[30] 23話目。 ガルナハンって名前のMSが有ったら強そうだなぁ…[しゅり。](2007/02/17 00:52)
[31] 24話目。 実はこのお話って何時の間にか長期連載のカテゴリに入ってたりする!?[しゅり。](2007/03/24 01:27)
[32] 番外編の8話。 連載当初は隔日連載だった筈なのに、気が付けば季刊連載に… orz[しゅり。](2007/06/08 21:45)
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[2139] 24話目。 実はこのお話って何時の間にか長期連載のカテゴリに入ってたりする!?
Name: しゅり。 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/03/24 01:27
<タリア・グラディス>

 遠く離れていても伝わってくる耳を劈く様な轟音と共に、敵ローエングリン砲台から光の帯が迸る。
 敵攻撃目標は私達ミネルバを初めとするZAFT軍の地上艦隊。
 もしこのまま敵の攻撃に晒されてしまったのなら、私達は壊滅に近い被害を被る事になるでしょう。

 けれど。

 敵攻撃目標圏内にあるミネルバ艦内で、今現在その様な未来予想図を脳裏に描いている人間は、私を含めて唯の1人も存在しない。
 何故なら、既にその2点を結ぶ光線の射線上には金色に輝くMSが立ち塞がっているのだから。

 ORB-01 アカツキ。
 雷と見紛わんばかりの光線を前にして、夜明けを意味する名を持つその機体は―――











 次の瞬間、まるで道を譲るかの様な気安さで射線上からその身を退けた。


■■■


 シンがラドル司令に新しい作戦を立案した時に、私がシンの作戦を支持したのには理由が存在する。
 とは言っても、それは別に珍しく饒舌だった『シンの演説に感動したから』と言った様なセンチメンタルな理由じゃ無くて、 …ただ、シンがアスランの事を、自分以外の誰かの事を頼った事実を、私は尊重しなければならない、と、そう考えたからなのだ。

 予てより、ミネルバが戦闘を重ねる度に、私はシンの戦闘内容に対してある1つの危惧を深めていた。
 と言うのも、シンの戦闘内容が個人技に偏りすぎているのではないか? と、最近頓に感じるのだ。
 思い返してみてほしい。 アーモリー、ユニウス7、オーブ近海、そしてインド洋沖での戦闘を。
 結果として個人技に頼らざるを得ないケースが多々有った事もまた事実だけれど、だけど全部が全部そんなケースばかりだったと言う訳じゃ無かった筈なのだ。
 にも関わらず、アーモリーではレイとルナマリアの両名と合流した後も、シンはガイアとの1対1での戦闘に拘っているし、ボギー1から奇襲を受けた際にはレイと2機で迎撃にあたると言う選択肢を蹴って、わざわざ単機で敵指揮官機と思われる戦闘機の迎撃に向かっている。
 更にユニウス7では周囲に味方機が沢山居たにも関わらず、気が付けば敵首謀者の駆るMSと単機で戦場に留まり続けていたし、オーブ近海の戦闘に至っては敢えてミネルバと同行せずに単機で敵勢力圏内に潜伏までする始末。
 そして、極めつけが先のインド洋沖での戦闘だ。
 敵からの攻撃を受けた所為で片腕を損傷してしまったにも関わらず、いくら建設中で攻略が容易だったからとは言え、単機で敵基地の制圧に向かった行為は暴挙と評してもなんら過言では無いだろう。

 …艦長として、シンを監督する身としては、シンの行動をこのままにしてはおけないと切に思う。
 結果だけを見たのならば、確かに今迄はそれが最善の行動だったのかもしれない。
 けれど、この先も今迄と同じ様に良い結果ばかりを得られると言う保障なんて何処にも無いのだ。
 だから!
 回を重ねる毎に個人技に傾いていくとしか思えない、まるで生き急いでいる様な、戦闘に魅入られてしまったかの様なシンの行動にブレーキを掛けるのには、今が絶好の、そして最後の機会じゃないかしら?
 まだシンが自身の発想で、自分以外の誰かを頼ろうとしている、今が!

 …だから、今回、私はシンの作戦を支持する事を決めた。
 孤独に敵を切り裂くだけの、まるで『剣』の様な生とは、今がまさに別れの時なのだ。
 シンにはこれから続く先の長い人生を、出来れば仲間と互いに支え合いながら生きて行って欲しいから。
 時には仲間に助けられ、時には仲間を助ける『盾』となる。
 そんな生き方をシンが選べる事を切に願って。

「シン、貴方がアスランの盾になりなさい」

 最後にそう言葉を贈った。


■■■


「何が有ったって言うの!? アスランッ!!」

 怒号にも似た叫び声が私の口から突いて出る。
 敵ローエングリンゲート攻略作戦の初っ端に起こった異常事態を前に、思考が激しく乱れる。
 だって、まさかアカツキが、アスランがローエングリンから逃げ出すだなんて!
 幸いにしてその後直にローエングリンの射線上にアカツキが舞い戻った為、ZAFT艦隊に被害は発生せず、と同時にアスランの裏切りと言う可能性は低くなった訳だけれど、それでも、いや、それだからこそアスランの行動の意図が解らない。
 何故アカツキはローエングリンの射線上から逃げ出したのか?
 いざローエングリンを前にして、先の大戦の英雄様も流石に恐怖を催したとでも言うのだろうか?
 或いは、所詮過去に1度ZAFTを裏切った人間は、私達の信頼に応え得る器では無かったと言う事なのだろうか?

 …実際はその後直にアカツキは再びローエングリンの射線上に舞い戻っている。
 経緯は兎も角、結果としてアスランは己の責任を全うし、ZAFT艦隊に被害は発生しなかったのだ。
 けれど、だからそれで良いとは言えない。 言う訳にはいかない。
 ローエングリンの光の帯はこの先も何度と無く降り注ぐのだから、現場の責任者として不安要素は直ちに取り除かなくてはならない。

『…申し訳有りません、グラディス艦長』

「謝罪はいいわ。 我軍に被害は無かった訳だし。
 それよりもアスラン、不可解な行動を取った原因を直ちに説明して!」

 アカツキから届いたアスランの謝罪の声を、即座に切って捨てて私はアスランに説明を促す。
 なんせアスランの報告内容如何によっては、事態は一刻を争う事になるやもしれないのだ。

『了解しました。 実は…』

 歴戦の戦士であるアスランも即座にそれを理解したのだろう。
 それ以上は余計な言葉を一切紡がずに、簡潔に原因を述べ始めた。

『アカツキが私からコントロールを奪い、勝手に回避行動に出たんです。
 まるで予めそうプログラミングされていたみたいに』

 と。

「!? …なんですってぇっ!!」

 それは私が全く予期せぬ、限りなく最悪に近い内容だった。
 敵ビーム兵器を敢えて避けない事で性能を発揮するMSが、自ら敵ビーム兵器から退くプログラムを積んでいる?
 何の冗談よ?
 そんなハードウェアとソフトウェアに矛盾を孕んだMSを、オーブは設計したとでも言うの?

 そんな私の内心の葛藤を余所に、

『今回は幸いな事にコントロールが戻り次第、即座に射線上に戻る事に間に合いました。
 しかし次も同じ事が適うかは分かりかねます』

 そう、淡々と事実を告げる。

 …なんてこと。

 これじゃとてもじゃないけど、作戦の続行は無理だわ。
 完全に守れる保障の無い盾を頼りに、死地に留まり続けるのは愚の骨頂だ。

「…該当のプログラムを無効化する事は出来ないの?」

 一縷の望みを込めて放った質問は、

『現状では該当プログラムがどれなのか、特定すら出来ていません』

 無情にもばっさりと切って捨てられた。


■■■


 撤退。
 その2文字が脳裏に過ぎる。
 いや、最早『過ぎる』と言う段階ですらなく、それしか私達の前に選択肢は有り得ないのだ。
 このまま不安を抱えたアカツキを要に据えての作戦の遂行は、現実的に考えて限りなく不可能に近い。
 断腸の思いで決断を下そうとしたまさにその瞬間、

「…誠に遺憾だけど、直ちに全軍撤『待ってください! 艦長!』 …シン?」

 突然シンが通信へと割り込んできたのだ。
 もちろんシンの発言はそれだけに止まらず、

「どうしたのシン!?」

 と、咄嗟に応答してしまった私に対して、シンは何時に無く改まった口調で

『決断を下される前に1つだけ試したい事が有るんです。
 お願いします、俺に時間を下さい!』

 そう、申し出てきたのだった。

「この緊急事態に何を馬鹿な事を言って… いえ、分かったわ。
 けれど聞いていたのなら承知の通り、あまり時間に余裕は無いわ。
 シン、貴方に与える猶予は1分だけよ。
 何をするにせよ、その間に何らかの事態の好転を見ない限り、私は責任者として撤退の決断を下すわ」

 一刻を争う緊急事態に措いて、本来であれば1パイロット視点での進言を聞いている暇など無いのだけれど。
 シンの言葉を即座に切って捨てようとした私は、すんでの所でそれを思い止まった。
 今回の作戦に限っては、作戦の立案者でもあるシンを『1パイロット』と分類するのは不相応じゃないか? と、そう考えたからだ。
 作戦立案者が作戦遂行に拘るあまり被害を拡大する事は往々にして多々有る事なので、判断に迷う所では有るのだけれど、その作戦立案者が他ならぬシン・アスカである事が引っ掛かる。
 今迄シンは困難な戦場に置いて何度と無く事態を好転させる閃きを見せてきた。
 或いはシンなら今回も? と言う考えが私の中に有ったのは否定の出来ない事実だから。

『ありがとうございます! …アスラン、協力してくれ!』

『話は聞いていた。 了解だ。
 シン、俺はどうしたら良い?』

『俺を信じてくれるか?』

『…ああ』

『なら動かないでくれ』

 そう言い放ったシンの駆るインパルスは、次の瞬間アカツキに銃口を向け―――

「シンッ!?」

 私の叫びも空しく、その引鉄を引いた。

『なっ!? …またっ!』

 次の瞬間、アカツキが光線を回避する。
 シンの指示通りアカツキを動かそうとしなかったのだろう、アカツキが光線の軌道上に戻る事は無く、光線は何も無い宙を薙いで行った。

『よし、ならアスラン、次はアカツキの外部モニタを切るんだ!』

『なっ!?』

『時間が無いんだ。 …信じてくれるんだろう!?』

『…ああ、信じるさ!』

 なんなの? この正気の沙汰とは思えない会話は。
 戦場で味方機を撃って、その次は味方機の視界を奪わせる!?
 馬鹿げてるわ。

 …そんな私の葛藤を余所に、インパルスからまたもアカツキに射撃が行われる。

 が。
 外部に向けての視界を失ったアカツキは回避行動を取ろうとはせず、アカツキの装甲に吸収される様に消えた光線は、間を置かず射撃元であるインパルスの元へと跳ね返る。

『…よし!』

 それを予め構えていた盾で受け止めたインパルスの機内で、シンは満足気にそう呟き、

『艦長、実験の結果アカツキの外部モニタをオフにした場合、緊急回避プログラムは作動しません』

 そんな報告が上げられる。
 けれど

「それがどうしたって言うの!?」

 そもそも外部モニタをオフにしたアカツキはローエングリンを防ぐ事は愚か戦闘で一切の役に立たない。
 いや、寧ろお荷物ですら有るのだ。

 にも関わらず、シンは自信たっぷりの口調で

『インパルスがアカツキを盾にしてローエングリンを防ぎます。
 フォースモジュールの機動力なら問題有りません。
 作戦を続行させて下さい!』

 そんな仰天物の対策をぶちまけた。


■■■


 今戦闘でアカツキと言う切札を晒した結果、もし仮に撤退したとしても再戦の際には同じ作戦は取る事は出来ない。
 再戦迄の間、敵軍にはアカツキ対策の時間を与えてしまう事になるからだ。
 だからシンの対策案で当初の作戦を遂行出来るのであれば、遂行すべきなのかもしれないけど…

 …ただ、問題が無い訳じゃない。
 視界の利かない状態で盾に使われるアカツキのパイロット、アスランに対する人道的な問題もそうだけど…
 なにより問題なのが、そのアスランがオーブに所属していると言う事実だ。
 その問題に対して私は

「…私の手に余るわ」

 と、あっさりと思考を放棄する事にした。
 こんな大事な問題、現場でどうこう言えるレベルじゃないのだから。
 オーブの代表が近くに居るそうだし、きっとギルがどうにかしてくれる筈よね?
 そうとでも考えないと、とてもじゃ無いけれどやってられないわ。
 …どの道、このままアスラン盾を使わずに撤退しようとした処で被害を被ってしまうのだ。
 であれば、此処は前進有るのみ、ね。

「…作戦を続行します」

 心の中で想い人にそっと手を合わせ、決断を下した。


■■■


 ローエングリンの攻撃に止まらず、敵MSからの銃撃に対してもシンは実に効果的にアスランを盾として活用していた様に思う。
 少なくとも、素人目に見てそこにアスランに対する一切の遠慮を見出す事は出来なかった。

 …その甲斐も有ってか、ローエングリンゲートの攻略には成功したのだけれど。

「…結局、まっさかさまになっちゃったわね」

 戦前はシンにアスランの盾になれ、って言ってた筈なのに。
 実際はシンがアスランを盾にしてしまっていた。

 …シン、あの時私が望んでいたのは、こんな結末じゃなかった筈なのよ?




機動戦士ガンダム SEED DESTANY 異聞

紅蓮の修羅





 それは油断だったんだろう。
 ローエングリンの攻撃の際にはアカツキの後方に逃げ込む、と言う基本コンセプトを胸に、俺は特等席であるアカツキの真後ろへとそそくさと逃げ込んでいた。
 愚かにも、そこが一番の安全席だと心から信じて。

 …んがっ!!

 いざローエングリン砲台の銃口がロックオンされたと思った瞬間、目の前で銃口から俺を遮ってくれる筈のアカツキの姿が見当たらない。
 そんでもって何故かローエングリン砲台の銃口と目が合っちゃう始末。
 ええ、遠く離れてる筈なのにバッチリと合っちゃったさ、そりゃあもう。

「って、なにぃっ!?」

 バリアは!? 俺の無敵のバリアはいずこに!?

 そんな感じで突然の事態を前に、良い具合に俺がテンパッちゃってる間にも時は無情にも流れて行く。
 何時の間にやらローエングリン砲台の銃口にはおっそろし気な光が収束していって…
 何故か左斜め下に退避していたアカツキの姿を見付けた。

 その瞬間、俺は全てを理解したね。 ええ。

 不覚っ! 儂とした事が抜かったわぁっ!!
 間違いない、この仕打ちこそがアスとレイの謀だったのだ!!
 おのれアスとレイめ、俺を亡き者にしようと言う心積かぁっ!!

 あぁすぅらぁんんめぇーーー!!



 ゴメン!
 謝るからっ!
 今迄の事、いろいろ謝るから!!
 頼むから助けてちょーだい!!
 びっくりしちゃった所為で完全に逃げそこなっちまったってばよぉ!!

 轟っ!! と言うおっかない音を聞きながら、俺は目を閉じて来世は金持ちの家の次男坊に生まれたい、等とささやかな希望を胸に浮かべて十字を切った。


■■■


「………」

「………」

「………」

「あれ?」

 生きてますよ、俺。
 うっすらと目を開いてみると、其処にはアカツキの背中が…

「…アスラン」

 そもそもアスランが逃げ出した事が発端だって事も忘れて、思わず惚れちまいそうだよアニキ!
 今なら抱かれても良い! …いや、どうせ5分後にはやっぱり抱かれたくない、って考え改めるとは思うけど。

 けどアスランも人が悪いぜ!
 まさかこんな方法で俺に対するリベンジを行うなんてな。
 やっぱり一言くらいは文句を言ってやらねば気がすまん! と回線をオープンにすると…

『アカツキが私からコントロールを奪い、勝手に回避行動に出たんです。
 まるで予めそうプログラミングされていたみたいに』

『!? …なんですってぇっ!!』

 非常にデンジャラスな会話が飛び込んで来た。

 ………

 ……

 …

 滝汗

 え、えーとぉ…
 なんだか非常に身に覚えが有るって言うかぁ…
 そのプログラム、インストールしたのって、ぶっちゃけ俺って感じ?

 ………

 ……

 …

 わ、わざとじゃないじょ!?
 アスランをデスティニープランに使おう!って決めた時に、だったら簡単にアスランに死なれちゃ困るな、とばかりに『ロックオンされたのに回避の意思が見られない時は勝手に回避しちゃえ1号』をインストールしたのは俺だけど。
 その事も今の今迄きれいさっぱり忘れてたんだけど、確かあの時の俺はアスランに良かれと思ってやった筈なんだよ。
 それがまさか、こんな事態を招いちまうなんて… ハードラックと踊ってやがるぜ!

 あ、ちなみに『ロックオンされたのに回(以下略』は当然インパルスにもインストールしてある。
 もちろん無断で、だ。
 オーブでエリカさんに会った時に貰ったプログラムなんだけど、流石にモルゲンレーテの職員に貰ったプログラムをインストールするのがZAFTの誰かに知られたら不味いからね。
 でも生存確率がUPするって言うのにインストールしない訳にはいかない。
 苦渋の決断だった、とだけ言っておこう。

 更に言うと今回インパルスの『ロックオンさ(以下略』が発動しなかったのは、オプション設定をOFFにしてたからだったりする。
 今回の作戦はアカツキの影に隠れるのが前提だったからね。
 ほら、間違ってONにしてて馬鹿みたいにアカツキの影から飛び出して死んだら死ぬに死にきれないからね。

 …いや、見事に裏目りそうになったけど。

 ま、そんな訳でオーブ製のプログラムはオーブ製のMSと相性抜群だったんだけど…
 今考えると何故アカツキに『ロックオ(以下略』がプリインストールされてなかったか、もっと考えるべきだったよな。
 いやぁ、反省反省。


■■■


 …待てよ。

 反省だけなら猿でも出来る。
 此処はひとつ人間様として、もひとつ先の事態を考えてみるべきじゃないだろうか?

 アカツキが使い物にならない今、きっとこのまま作戦の実行は不可能な筈だよな。
 となると撤退?
 ローエングリンの砲台に晒されながら?

 …まぢで?

 ま、まあ待て。
 ここは仮に無事に撤退に成功したとしよう。
 俺ってば悪運が強い筈だから生き残れる筈だよな? きっと。
 そうなると次に待ってるのは何だ?

 敗因の究明だ。
 それも同じ轍を踏まない為に、きっと徹底的に行われるに違いない。
 って事は、つまり『ロ(以下略』の存在が明るみに出る、と言う訳だ。
 当然、アスランはそんなプログラムの存在は身に覚えが無い。
 となると持ち上がるのはミネルバ搭載後に行われたであろう不正インストールの事実。
 苛烈な犯人の洗い出し。
 何故かインパルスにも同様のプログラムが!
 そんでもって俺の私物からインストールCDが!
 俺様、A級戦犯!
 死刑、確定!
 長い間、ご愛読ありがとうございました。

 ………

 ……

 …

「NOーーーっ!!」

 なんて悲惨な未来予想図。
 全米は泣きそうにないけど間違いなく俺は泣く。

 …止めねば。
 なんとしてでも阻止せねばぁっ!!

 って考えてる間にもグラディス艦長は決断を下す模様で、

『…誠に遺憾だけど、直ちに全軍撤「待ってください! 艦長!」 …シン?』

 結論を述べきる前に、強引ながら『ちょっと待ったコール』を発動させた。
 我ながら往年の合コン番組を彷彿とさせる、見事なタイミングだ。
 対する艦長は

『どうしたのシン!?』

 って当然聞いてくる訳なんだけど、実を言うと勢いで止めただけで全くのノーアイデア。
 いや、どうにかして作戦の続行、もしくは証拠の隠滅を図らなくちゃいけないんだけど。
 目的だけは明確なのに、手段がさっぱり思い付かない。
 ここはせめて時間だけでも稼がねば、と藁にも縋る思いで言葉を紡ぐ。

「決断を下される前に1つだけ試したい事が有るんです。
 お願いします、俺に時間を下さい!」

 あわよくば、その1つだけ試したい事がなんなのか考える時間も下さい!

『この緊急事態に何を馬鹿な事を言って… いえ、分かったわ。
 けれど聞いていたのなら承知の通り、あまり時間に余裕は無いわ。
 シン、貴方に与える猶予は1分だけよ。
 何をするにせよ、その間に何らかの事態の好転を見ない限り、私は責任者として撤退の決断を下すわ』

 よ、よーし!
 なんとか首の皮一枚繋がった。
 今こそ考えるんだ俺! 働け! 働くんだ俺の灰色の脳細胞達よ!

「ありがとうございます! …アスラン、協力してくれ!」

 働いた。
 「ありがとうございます!」と「アスラン、協力してくれ!」の間の「…」の間にいっぱい働いた。
 そして閃いた。

 避けるなら 殺してしまえ ホトトギス

 ありがとう織田信長!
 貴方の生様を模した俳句からばっちり閃いちゃったよ、俺!
 お礼に今度から貴方の子孫のアイススケーターの応援だってするよ!

 …そう、そうなのだ。
 アカツキが勝手に避けるのが悪いんだから、避けないようにしてしまえば良いのだ。
 俺の記憶が確かなら、仕様書には「外部モニタから得た情報を元に回避行動を~」と言う一文が有った筈。
 つまりアカツキの外部モニタさえ殺してしまえば無問題なのだ。

 と、言う訳で。

『話は聞いていた。 了解だ。
 シン、俺はどうしたら良い?』

「俺を信じてくれるか?」

『…ああ』

『なら動かないでくれ』

 ってな感じにアスランと漢臭い会話を交わした後、

『シンッ!?』

 ってなグラディス艦長の叫びも何処吹く風で(殆ど結果が分かりきってる)実験をば開始。
 一応の確認と、後はアリバイ作りみたいなもんだと思ってくれればOKだ。
 そんでもって

「よし、ならアスラン、次はアカツキの外部モニタを切るんだ!」

『なっ!?』

「時間が無いんだ。 …信じてくれるんだろう!?」

『…ああ、信じるさ!』

「…よし!」

 ってな感じで漢会話を継続しつつ実験は無事に終了した。
 オーケイベイベェ、仕様書に間違いは無いようだな。
 流石エリカさん、愛してるよぉー!

 行ける!
 俺はまだ飛べる!

「艦長、実験の結果アカツキの外部モニタをオフにした場合、緊急回避プログラムは作動しません」

 と自信満々に報告を上げ、

『それがどうしたって言うの!?』

 ってな艦長の非難交じり(仮にも仲間を撃ったんだから当然なんだけど)の声に

「インパルスがアカツキを盾にしてローエングリンを防ぎます。
 フォースモジュールの機動力なら問題有りません。
 作戦を続行させて下さい!」

 と、さっき思い付いた作戦を告げたのだった。
 この際、あわよくばアカツキと接触してる際に『お肌の触れ合い回線』から問題のプログラムを削除出来れば尚良し!だな。

『…作戦を続行します』

 艦長の言葉を聞きながら、最初の賭けに勝利した喜びをじっと噛み締めた。
 けど、本番はこれからなんだぜいっ!!


■■■


 …世の中って甘くないよな。
 なんだよ『お肌の触れ合い回線』って!
 そんなもんC.E.の世界に無いっちゅーの!!
 いや、ひょっとしたら有るような気がしないでもないけど、そもそもそんな回線からプログラムのアンインストールが出来る程、オーブ製MSのセキュリティは甘くないっちゅーの!!
 それ以前にMSを抱えて戦争しながら設定弄る様な真似、文型・理系以前に体育会系の俺には無理だっちゅーの!!

 …そんな訳で、だ。
 ローエングリンゲート戦の勝利とは別に、新たな地雷をアカツキの中に秘めたまま戦闘は幕を閉じた。
 はぁ… この先どうしよう…(涙



 つづく(御代は見てのお帰り。 …一度使ってみたかった台詞なだけで、当然冗談ですがw)

==================================================

<後書きみたいなもの>

 前回、アカツキの動力源に付いて聞いておきながら、今回、全然活かせていない件について。
 申し訳ござりませぬぅーー!!(切腹
 …いや、皆さんの情報を元に構想を練り直したら無くなっちゃいました、テヘッ♪
 ひょっとしたらこれから先の話で使うかもしれないんで御容赦を。

 P.S.
 感想掲示板に嬉しい?お知らせが有ったりするかも。


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