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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第54話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:c8ecccd8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/04 21:57
SIDE 一方通行

「本当に同行するつもりなのですか……どう考えても女子中学生の団体を尾行する怪しげな男としか一般の人には見えないというのに、とミサカは想像しやすいアクセラレータの未来にぷぷーっと笑います」
「一ミリたりとも笑ってねェのはどォいうことだ」
そう言いながらも、俺はミサカの言っていることを否定するつもりはなかった。
ため息をつきながら、自分の恰好を見下ろす。
俺の今の恰好は、背広にスラックスと、どこにでもいるような社会人の恰好をしている。
目には黒いカラーコンタクトを入れ、黒いヅラを被っている。
どこぞの漫画のように、突然の突風で吹き飛ばされはしない。
なにせ反射があるからな。
まあ、よっぽどのことがなければ何かの拍子に外れる、なんてことはないだろう。
思考とミサカの相手を両立しながら、俺は駅に向かって歩いている。
今日は修学旅行の初日。
ガキどもがテンション上げて駅で待ち構えていることだろう。
それに同行するのが最善の手段であるとわかりながらも、これからの苦労を思ってため息をつかざるを得ない。
ジジイから近衛このかの護衛や親書について言われた時は快く承諾したわけだが、少し短慮だったかもしれない。
厄介な仕事を押し付けられたサラリーマンのようにため息をついていると、ミサカは何が楽しいのか話題を振ってくる。
「ミサカは最初からアクセラレータだと知っていたわけですが、それでも本人かどうか疑ってしまいます、とミサカは黒髪にするだけでこうも印象が変わるものかと感心します」
「眉毛とか髭を剃るだけで印象変わるとか言われてンだから、それより面積でかい髪を染めたら印象も変わるだろォよ」
応じながら、ミサカはミサカなりに浮かれているのかと思った。
修学旅行なんて、学園都市にいた頃はまず味わえないもんだろうし。
そう思うと、ハシャいでるミサカが微笑ましく思えてくる。
間違っても俺は笑ったりしないが、とりあえず付き合ってやろうとは思う。
駅で電車に乗り、俺たちは大宮駅へ向かう。
あまり混んでいないことは幸いだった。
「ミサカ。確認するが、俺が修学旅行についていくことは他の誰にも言ってないな?」
「その理由についての説明は受けましたが、ミサカは納得したわけではありません、とミサカはそっぽを向きます」

ジジイに連絡を受けた後、ミサカにそのことは話したわけだが、ミサカは納得しなかった。

俺が修学旅行にいくのなら、俺が護衛も親書もなんとかしてやればいいじゃないか、と。
もっともな意見だが、これにも一応理由がある。
ジジイは関西呪術協会に対して魔法先生は二人いると話しており、その二人の素性とかのデータも全部送っているらしい。
その二人とはネギと瀬流彦であり、もちろん俺は入っていない。
俺はあくまで魔法使いではなく、陰陽師でもなく、気の使い手でもない、ただの指導員として同行することになっているのだ。
とはいってもアクセラレータというネームバリューは凄まじいものがあり、本人が行くということが広く伝われば、間違いなく関西呪術協会は渋ってくる。
むしろ、俺の実力を知っているだけにすぐ拒否して来そうだ。
だからアクセラレータという存在を隠蔽し、秘密裏に送り込む。
ジジイ曰く、関西呪術協会の長からは了承を得たらしい。
トップ同士の密約というやつである。
その密約とやらのおかげで、向こうの過激派によって問題が起き、生徒たちが危険に陥った、またはそういう事態になったという連絡を受けた場合、俺は問答無用で出撃することが許可されている。
その時からアクセラレータだということがバレても問題ないため、そこからは変装しないつもりだが。
それに、本来の指導員としての役割も果たせる。
流石の3-Aも俺がいることが判明している段階で悪ふざけはしないだろう。
無論、何も問題が起きなければ俺は一般人である『二方通義(フタカタミチヨシ)』として修学旅行を終えることになる。

安易なネーミングに涙が出そうになった。

ジジイ年代のネーミングセンスはどうにかならないものだろうか。
これがジェネレーションギャップってやつか、と思いながら、俺は列車に揺られる。
裏の方の事情から同行することになった俺だが、じゃあ表向きの理由で俺が同行するのは何故なのか。
魔法先生が集まり、一般の先生には極秘で行う特別な『職員会議』の方で異議がでたそうだが、女子中等部でも問題児の集まりである3-Aが問題を起こさない確率は非常に低く、新田だけでは対応しきれない事態になる可能性があるとして、俺が同行するのは問題ないという結論に落ち着いた。
事後承諾として、一般の先生にはそう伝えられている。
また、俺が別人を名乗る理由については、『だってその方が面白そうじゃろ?』という学園長のゴリ押しによってなんとかなったらしい。

いい年こいて『だって』はねえよ。

学園長のゴリ押しについては前々から何度もあったことなので、先生方は苦笑しながらも悪ふざけとして処理したようだが。
さて、俺という存在が修学旅行にいるということがバレた場合、色々と大変なことになるため、情報が漏れる可能性が高いネギにこの情報は伝えていない。
タカミチから聞いたところ、このごろ失敗は減ってきているようだが、まだ安心できないからだ。
まだまだお子様だし、ちょっとばかり『上から信頼されている満足感』を与えられてもいいだろう。
ネギにとって、これがもっともらしい初めての任務だろうし。
もしも俺が出張る事態に発展した場合、こういうやり方もあるのかと学習するだろう。
あのジジイはそのあたりも考えているのかどうなのか……深く考えすぎなのかもしれないが。
さて、俺の正体であるが、スペックが非常に高い3-Aの誰かが気づきそうな気がしてならない。
危険が高いのは超やハカセ、茶々丸の科学組や、古や神楽坂といった直感組だろうか。
特に茶々丸はヤバそうだ……まあ、エヴァに付き合って今回は来ないだろうから、その心配はいらないか。
他の連中にバレても何とかして口止めすればいいだろう。
女子中学生の噂の広がり方は凄まじいらしいから、あまり意味はないのかもしれないが。
しばらく電車に揺られると、俺たちは大宮駅に到着した。
ミサカとはここで一旦別れ、若干遅れて動き出す。
流石に一緒にいったら悟られてしまう可能性が高いだろうからな。
そう思って集合場所に行ったら、俺は少し驚くことになった。


普通に茶々丸がいるのである。


おかしいな、俺の記憶違いだろうか。
それともエヴァの奴が自力で来たか?
まさかそんなことはありえないだろうが。
目線だけで辺りを見回し、あの小さな金髪が見当たらないことを確認する。
茶々丸が一人で来たのか?
意外といえば意外だが……そのあたりの詮索は後にする。
どうせ、聞かなければわからないことなんだろうし。
俺は一足先に新田と瀬流彦の方に向かう。
二人がこちらに気づくと、俺は片手を挙げた。
「今日からよろしく頼むぜ、二人とも」
「ああ、その声はアクセ―――んんっ、二方君か。君が学園長のおふざけに協力するなんて意外だな」
ずいぶんと前にも話したが、新田とは広域指導員絡みでちょっとした知り合いである。
俺みたいな性格をしていても、きちんと仕事をこなした上で治安を良くしているわけだから、新田に俺は高く評価されているらしい。
超包子で話したことも一度や二度ではない。
敬語を話すのは苦手だ、というと、別にかまわないと言ってくれた心の広いお方である。
「そンだけジジイは今回の修学旅行を心配してるンだろ。これで先方から拒否されることになったら目も当てられねェからな」
「実際、私も心配だ。悪い子たちではないんだが、羽目を外しすぎるからな。旅館に迷惑はかけられん」
俺たち広域指導員は生徒に嫌われるのが仕事みたいなもんだから、案外話が合う。
それに対して、そこそこ生徒に人気がある瀬流彦の方に顔を向ける。

「『準備』はできてンのか? 荷物は少なそォだが」

「粗方旅館の方に送っておいたよ。まあ、君がいるなら僕の出番はなさそうだけどね」
俺の言う『準備』とは、魔法関係のことだ。
瀬流彦は戦力としてはぶっちゃけ役に立たない。
自分で言っていたから、間違いないだろう。
実際、体術もさほどできないようだし、魔法については自身の魔力量が一般的だからか、後方戦力としても火力が心もとない。
だが、長所として知識はあるようなので、今回は結界や連絡係など、直接戦闘とは関係ない場所で活動してもらうことになっている。
要するに脇役や後始末係である。
俺も面倒は嫌なので、そういうことは全部瀬流彦に任せようかと思っている。
色々問題があった原作の修学旅行にも同行してるんだし、そういうことは得意分野なんだろう。
「瀬流彦君、私や二方君に頼ってばかりではいかんぞ。確かに生徒を厳しく取り締まるのは私と彼の役目ではあるがね」
「まァ、いいじゃねェか。瀬流彦には瀬流彦なりの役目があるンだからよ」
「生徒たちに好かれる立場の先生が必要なのはわかる。しかしだな……」
新田はどうやら勘違いしたようだが、その方がありがたい。
俺は二人と軽く雑談しながら、生徒たちが集合してくるのを待つことにした。






SIDE ネギ・スプリングフィールド

一昨日から準備が万端だった僕は、先生なのでアスナさんたちよりも早く出発し、大宮駅にやってきた。
相変わらず日本の駅は慌ただしいなあ、と思いながら、僕は3-Aの皆さんを見つけた。
いつも朝連がある運動部の皆さんや、真面目な図書館探検部の人たちが早起きに慣れていたのか、もうここにいることに驚いた。
挨拶してきたしずな先生に挨拶を返した後、生徒の皆さんと挨拶をして、最後に他の先生方に挨拶しに回る。
ホントは先生方から先に挨拶しに行かないといけないんだろうけど、ちょっと浮かれてて忘れてた。
いつも厳しい新田先生は、瀬流彦先生ともう一人の先生と雑談しているようだった。
あの先生は見かけたことがないなあ……誰なんだろう。
そう思った僕は、とりあえず挨拶に行くことにした。
「おはようございます、新田先生、瀬流彦先生」
お二人とも、にこやかにあいさつを返してくれる。
新田先生は怒らないと優しい先生なんだけどなあ。
「えーっと、そちらの方は?」
僕が見覚えのない先生の方を見ながら尋ねると、それには瀬流彦先生が答えてくれた。
「こちらは新田先生の知り合いで、二方先生だよ。正確には広域指導員なんだけどね」
「よろしく」
短い挨拶で二方先生は手を差し出してきたので、僕はそれを握る。
笑顔で挨拶を返しながら、この人はどこかで見たような気がした。
なんだかとても怖そうな雰囲気。
典型的な日本人にしては白人みたいに顔が白いのが特徴的だけど、それ以外は特に普通の先生と変わりない。
どこだっただろうか……思い出せない。
街中で通り過ぎたか、廊下ですれ違った時に見たんだろうか。
声にも聞き覚えがあるんだけど。
「二方君は3-Aの指導員としてついてもらう予定です。あそこの子たちは何かと元気ですからな。ネギ先生としずな先生だけではいささか御しきれない所もあるかと思いまして、応援を頼んだわけですよ」
「うう……面目ないです」
「なあに、ネギ君は勉強中なんだから気にすることないよ」
瀬流彦先生のフォローがありがたかった。
他の先生方にも挨拶をして回り、最後に物影に立っていた桜咲さんに声をかけた。
桜咲さんは近づいてくる僕の気配に気づいたらしく、会釈で返してくる。
「今日からよろしくお願いします、桜咲さん」
「いえ、私こそ。お嬢様の近辺はネギ先生や神楽坂さんが警護してくれるとなれば、私も意識を外に向けやすくなりますから」
僕とアスナさんはこのかさんの周囲でこのかさんをばっちりガード。
刹那さんはその外周で敵を察知して、事前に攻撃を防ぐ。

これがこの前の『補習授業』で決めた僕たちの役割だ。

これから関西呪術協会の刺客と戦うかもしれないから、気を引き締めなければならない。
浮かれていた頭をほんの少し冷静にさせる。
「僕もいつもこのかさんについているわけにはいきませんから、おそらく常時ガードできるのはアスナさんと刹那さんになると思います。先生としての役割と、親書を届ける役割があるので……」
「わかっています。もともと護衛は私の任務なのですから先生が悔やむ必要はありません。それに、もしも大ごとになっても龍宮や……ミサカさんもいますし」
「でも、あまり無理はしないでくださいね」
刹那さんの性格上言っても無駄なんだろうなあ、と思っていても、僕はそう口にするしかない。
きっと僕でも無理するだろうから、人のこと言えないだろうしね。
あまり長居すると他の人が集まってきてしまうので、僕は桜咲さんと別れ、枕談義をしている生徒さんたちの話に混ざった。
テンピュールがいいとか、いやいや普通の安物で十分だとか、むしろない方が良いとか、色々な話が出てくる。
僕は正直適度な値段の枕であればなんでもいいので、妙なこだわりを持つ人たちを珍しがっていた。
枕が変わると寝れないなんて、そんな人がいるとは思わなかったから。
その談義とは少し離れている生徒さん達の方をちらりと見ると、ミサカさんは茶々丸さんと話をしているようだった。
そっちに耳を傾けてみると、相変わらずマスコットについての話が盛り上がっているようで、今回は宮崎さんが持っている枕について話していた。
「寝具にぬいぐるみ系統のマスコットを用いるとは……流石は図書館探検部、ミサカの発想にない所をついてきますね、とミサカはあのチャックの口が開くのかどうか試してみたくてうずうずします。あれの中身でポイントが恐ろしく上下します、とミサカはふかふかの綿を期待してみます」
「それは同感です。しかも普通の人間に対しては猛獣と認識されている熊をああしてかわいくデフォルメすることで『ギャップ萌え』を引き起こしています。ただ単にかわいいものだけがかわいいという認識は視野を狭くしますね。私はまだまだ知識が足りないようです」
相変わらず真剣な表情で変わった会話をするなあ、と思った。
しばらくするとアスナさんたちもやってきて、大宮駅での点呼が始まった。
やっぱり集合時間に遅れてくる人はいるみたいだけど、3-Aは一人として遅刻者はいなかった。
エヴァンジェリンさんは呪いのせいで来れないみたいで、欠席扱いだけど。
そういえば、7班が通るときに桜咲さんとミサカさんの顔が強張ってたみたいだったけど……一体なんだったんだろうか。
何かトラブルでも起きてるんだったら、ちょっと首を突っ込むべきかなあ、僕は教師だし。
でも、今はちょっとこのかさんのこととか親書のこととかでいっぱいいっぱいだから、これ以上抱え込んでしまうとパンクするかもしれない。
そう考えると手を出せなくなってしまう。
申し訳ないし気になるけど、そのことは一旦心の中にしまうことにしよう。


『JR新幹線あさま506号―――まもなく発車いたします』


そして、いよいよ修学旅行が始まる。






SIDE 絡操茶々丸

新幹線に揺られて、私は外の景色をじっと眺めていました。
最初にネギ先生が修学旅行が始まることについての挨拶をしていましたが、今の私はそれよりも外の景色の方が重要でした。
要するに先生の話を聞かないダメな生徒なのですが、模範的な生徒でいる意味はありませんので。
私の隣にはミサカさんが座っていて、やはり外の景色を眺めていました。
聞くところによると、新幹線に乗るのは初めてだとか。
モノレールとかそういう交通手段なら使ったことがあるらしいのですが、こういう高速で運用される車両に乗るのは初めてだということです。

あっという間に過ぎ去っていく景色。

建物ばかりが立ち並ぶ灰色のそれらを見ていても、やはり飽きることがないのはおかしいことなのでしょうか。
ミサカさんもじーっと見ているので、特におかしいことではないように思いますが。
『車内販売のご案内をいたします。これから皆様のお席に―――』
機械的なアナウンスが流れるのを聞きながら、私は麻帆良でマスターの家を出る時のことを思い出します。
私は本来マスターの従者であるのですから、呪いで麻帆良の外に出ることができないマスターと一緒に麻帆良に残ろうと考えていました。
友人と一緒に旅行するというのは魅力的でしたが、それ以前にマスターを置いて自分だけ楽しむなんてことはできません。
論外だとすら考えていたのですが、マスターは昨日の内ににやにやとしながらこう切り出してきたのです。
「なあ、茶々丸。お前は修学旅行に行かなくていいのか? 行きたいんだろ?」
何故私に『行く』と言わせたいのか尋ねようかと思いましたが、私は首を振りました。
先ほども説明したように、マスターを置いて修学旅行に行くなど論外だったからです。
その答えは予想していたのでしょう、マスターは動じずに言葉を続けます。
「私のことを考えているのなら別にいい。所詮ガキどもの旅行だ。個人で行く旅行ならともかく、あんなやかましい連中と一緒に寝泊まりするなんぞ不可能だ。あの木造建築の素晴らしさが分かる人間もおらんだろうしな」
未練たらたらに京都へのガイドブックを読みながらどの口がほざくのか、私は問い詰めてみたい気分になりました。


これがミサカさんの言っていた『釣り』なのでしょうか。


所謂突っ込み待ちだと判断したのですが、たまにマスターはこうやって天然な所がありますので、とりあえず『マスターうっかり集』というファイルに現状を保存しておきました。
そうしてから、私は反論を開始します。
「私はマスターの従者です。従者がマスターの傍から離れて娯楽に走ることはあってはなりません」
「相変わらず硬い奴だ。そう言うところだけは以前から変わらんな」
くつくつとマスターは笑います。
私としては以前と変わったという実感はないのですが、マスターが言うには私は変わっているようです。
しばらく笑ったマスターは、そんなにやけた表情のまま私の方を見つめてきます。
「実は昨日、アクセラレータからちょっとした話を聞き出してな」
ここで、マスターは長々と個人の感情が入り混じった説明を始めました。
それを要約すると、どうやら関西の方に存在する魔法結社がネギ先生が持っている『あるもの』を奪うために暗躍している、といった情報を手に入れたようです。
あのアクセラレータさんが口を割るなんて普通はあり得ませんが、何をして情報を引き出したんでしょうか。
私の疑問がわかったのか、マスターは鼻を鳴らします。
「一方ミサカがいなくて寂しくなるな、とかいってからかうとすぐに口を割った。どうせ奴は私が修学旅行に行けないのだから、別に話してもかまわないと思ったんだろう。真意はわからんが……奴のことだ、ただの気まぐれかもしれん」
要するに、マスターにもわからないということですね。
アクセラレータさんがどうしてそんな情報を漏らしたのかはわかりませんが、それをマスターはどうしてこうも得意げに話すのかがわかりません。
一体何が言いたいのかわかりませんでした。
そんな私の疑問をよそに、マスターは続けます。
「お前は、確か一方ミサカに借りがあったな」
いきなり話を変えてきましたが、それに対応して『借り』についてのことを思い出します。
それは、ちょっと前の話。

今思えば数週間前の話になるのですが、あのネギ先生と神楽坂さんが私に勝負を挑んできた時のことです。

あの時ミサカさんに助けられたということはマスターにも報告していました。
おそらく、その時のことを『借り』というのでしょう。
そう判断した私は、短く頷きました。
それを見たマスターは更に笑みを深くして、
「借りを返すには、いい機会じゃないのか?」
マスターはたまに意味深な言葉を使います。
以前の私であればわからなかったその意味を、今回はなんとなく理解することができました。
流石に数カ月もの時間をミサカさんと過ごしていると、彼女の性格を把握することができます。
ミサカさんは、無表情で他人に関心がないように見えて、実は超絶なお人よしなのです。
友人どころか他人が困っている所を見ると、迷わず助けに入るような、そんな人です。
ネギ先生も神楽坂さんなどを補習に招いていましたが、これはもしかして協力を仰ぐ会議へのお誘いだったのでは、と推測できます。
事情を知ったミサカさんが、ネギ先生を助けないわけがありません。
あの人は、何度も言いますが冷たいように見えてお人よしですから。
マスターの言ったことを含めてそれらの情報を統合すると、私はミサカさんに作った借りをこの修学旅行中に返せ、ということになります。
ミサカさんが頭を突っ込んだ厄介事に、私も突っ込めということですね。
マスターの方を見ます。
マスターは私の言うことが分かっているのでしょうか、にやにやしていました。


そしてその12時間後が今なのですが、私が修学旅行に参加した動機はそんな感じです。


厄介事に首を突っ込んでいるミサカさんの手助けをする。
借りを返す、という形で。
どうやらマスターの言うことを更に聞いてみると、自分の従者がアクセラレータの従者に借りを作っているのはなんだか腹が立つそうです。
むしろ借りを作ってくる勢いでやってこい、と言われました。
ぶっちゃけると無茶ブリですが、マスターはどうやら私をどうしても修学旅行に行かせたいようなので、こうして来てしまったわけです。
もう来てしまったのなら来てしまったなりに楽しむつもりです。
横で流れ行く景色を眺めているミサカさんをちらりと見てから、そう思いました。
「ミサカさんミサカさん、肉まん食べるカ?」
そこでにゅっと横から出てきたのは超でした。
運動部の方々を中心に盛り上がっている所からちょうど離れてきたところで、あっちの方から僅かに肉まんの香りが漂ってくるのをセンサーが感知しました。
ミサカさんは外の景色から超さんの方に視線を向けつつ、肉まんを指差します。
「在庫処理ですか、とミサカは大量の肉まんを眺めながら呟きます」
「ハハハ、それなら古にやらせるヨ。何しろ幾ら食べても壊れない鋼鉄の胃袋だからネ」
お金を払いながら肉まんを受け取るミサカさんの独特の返しに、超は笑います。
超のことですから色々と計算してその分量にしたのでしょうが、予想が外れたといったところでしょうか。
少し困った顔をしているということは、余っていることは事実なのでしょうし。
「ところでミサカさん、『アレ』の調子はどうかナ?」
「まずまずといったところです、とミサカは近況報告します。やはりサポート目的のものである以上、それを使いこなすのはミサカですから練習は必要ですね、とミサカは感想を述べます」
「なるほどネ。まあ、改良点があったら言ってくれ。全力で改造するヨ」
「むしろ言ってね! 絶対言ってね!」
「……まあ、言うでしょうが、とミサカはハカセさんの剣幕にドン引きします」
わいわいがやがやと騒いでいる三人を見て、私は少し楽しくなりました。
ミサカさんは何が理由なのか、このごろ少し暗くなることが多かったのですが、今では純粋に楽しんでいるように見えて何よりです。
そう楽しく思えてきた時に、突然車内で悲鳴が起こったのが分かりました。


「きゃーっ!?」
「か、カエルーッ!?」


いきなり車内のあちこちにカエルがわき出てきました。
私の常識で考えるとこんなことはありえないので、おそらく魔法か何かなのでしょうが、いきなりこんな事態が起こるのは考えづらいです。
ネギ先生が何か起こしたのでしょうか。
その割にはネギ先生から魔法を行使した残滓などは確認できません。
あたふたしているだけで。
それについての追及は後回しにし、私は跳ねまわるカエルの回収に回ろうとして―――。



「ゲコ太じゃないリアルなカエルは在庫処理です、とミサカは大量生産物の末路は焼却処分だと断言します」



尋常じゃない目でカエルを睨みつけていたミサカさんがいましたので、そっちの制止に回ることにしました。
「ミサカさん、落ち着いてください。ゲコ太というのが新たなマスコットグッズなのはわかりましたが、かといってその基礎となった生物を一方的に否定するのはどうかと思います」
「しかしこれはっ、ミサカたちに対する冒涜なのですっ、とミサカは結論付けました! これは世界がミサカに喧嘩を売っているとしか考えられませんっ、とミサカは拳を振りおろせないミサカ自身にイラつきます! カエルより、カエルなんかよりヒヨコの方がかわいいはずですッッッ!!」
何やら過去にカエルに何かされたのかと思うほどの過剰反応を見せるミサカさん。
屋外ならともかく、こんな車内で放電されたらとんでもないことになるので、とりあえず羽交い絞めにして抑え込みます。
ばたばた暴れるミサカさんの背中から、超とアイコンタクト。
頷いた超はすぐさまカエルの撤去を開始しました。
ミサカさんの突発的な放電はとても怖いということを身をもって知っている者の一人ですからね。
電撃一発で電子機器もろもろが根こそぎ吹っ飛ぶわけですから、超やハカセといった科学組に対しては恐ろしい脅威でしょう。
私は最近になって超よりグレードアップされた機体に耐電処置を施してありますので、ミサカさんの突発的放電程度なら平気で稼働することができます。
それはともかく。
108匹いたらしいカエルはすべて回収し終わり、ミサカさんがぶーぶー言いながら席に腰を降ろし、


突然、超の腰にあった特殊警棒を握り抜き、空中に飛んでいた物体を叩き落としました。


鈍い音と共に叩き落とされたそれは、既にひしゃげている紙きれでした。
鳥のように見えなくもないですが、紙を『叩き落とした』にしては、やけに鈍い音がしたように思えます。
ひらひらと落ちてくる、こちらは手紙のような紙を受け取っています。
「ふっ、ミサカの『電波領域』(サーチライト)をくぐり抜けるなんて百年早いのです、とミサカはアクセラレータばりの笑みを浮かべます」
「明らかに憂さ晴らしのような気がしないでもないのだが……というより私の警棒返してくれないカ?」
ミサカさんが掴んだ手紙を、私はひそかにカメラに収めます。
あの手紙を封しているシールは麻帆良学園のもの。
それも、よほど重要なものだと判断します。
その後、ミサカさんがネギ先生にそれを手渡していましたので、これはマスターが言っていたネギ先生の『あるもの』なのでしょう。
ミサカさんが何やら訳知り顔でネギ先生に応対しているということは、つまりネギ先生の事情に既に協力しているということ。
完全に出遅れている感が満載です。
「……純粋に楽しむためには、やはりちょっとした無茶をしなければならないということですか」
「茶々丸さん、何か言いましたか、とミサカは首をかしげます」
「特に何も。独り言です」
そんなことを言うなんて、なぜだか私が私でないような気がします。
結局、私はマスターの言うとおり、借りを返さなければならない道のりを歩いてきてしまったようです。
現状をうまく把握しきれていないまま、私はあいまいな情報を統合して、そういう予想を導いていました。






SIDE 一方ミサカ

「ここが清水寺の本堂。所謂『清水の舞台』ですね。本来は本尊の観音様に能や踊りを楽しんでもらうための装置であり、国宝に指定されています。有名な『清水の舞台から飛び降りたつもりで……』の言葉通り、江戸時代実際に234件もの飛び降り事件が記録されていますが、生存率は85%と意外に高く―――」
綾瀬さんの解説を聞きながら、ミサカは清水寺から見える景色を眺めていました。
ぽつぽつと見える黒い屋根と、それらを覆い尽くす緑の葉。
紅葉している時に来ると素晴らしい眺めになるそうですが、今は春も若干過ぎ去った初夏ともいえる時期なので、緑の葉しか拝めませんでした。
しかし、コンクリートジャングルで過ごしてきたミサカからすると、この木造建築物も、そこから見える景色も非常に新鮮でした。
涼やかな風がミサカの頬を撫で、前髪がさわさわと揺れます。
京都というのはじめじめしているという噂でしたが、実際に来てみるとそういう不快感は感じられませんでした。
屋外だから、天気が良いから、季節が違うからというのもあるでしょうが、前評判というのはだいたい当てにならないというのがちょっとわかった気がします。
先入観というのは邪魔ですね、と結論付けた時、どうやら皆さんが移動を始めたようでした。
もうちょっとのんびりしていこうと思ったのですが、団体行動をしなければならないので仕方がありません。
ほぼ最後尾について移動を始めた後、ミサカはミサカの周りに人がほとんどいないことを確認してため息をつきます。


結局、刹那さんの誤解を解くために話しかけることができませんでした。


刹那さんがのらりくらりと逃げるもありますが、根本的な原因として、ミサカが避けているのです。
ミサカとアクセラレータが付き合っていると刹那さんが考えているのがわかってから、決断する時間はいくらでもあったのに。
石でできている階段を降りながら、ローファが返す乾いた音を聞きます。
落ち込みながらも周囲の警戒は怠っていないつもりですが、気分はだだ下がりです。
何度か刹那さんと視線も合ったのですが、その瞬間に目をそらされてしまう始末。
少し勇気を出してさりげなく近づこうと思ったら、もう既にそこにはいなかったり。
かと言って真正面からいけるわけでもなく。
ミサカは結局、途方に暮れていたのです。
いえ、真正面から強引にいけばなし崩し的に事実を言えるんだろうなあ、ということくらいはわかります。

しかし、どうやらミサカは言いたくないっぽいのです。

ミサカの深層心理がどうなっているのかよくわかりませんが、刹那さんに事実を言うのがとてもためらわれるのです。
ただ恥ずかしいと思うだけでは、ミサカの経験上、ミサカは止まらないはずです。
なのにどうしてミサカは言えないのでしょうか。
理由が分からなくて、ミサカは嫌になってしまいます。
ただ言えばいいのに、言いたくないというこのモヤモヤ感。
正直に言うと、即決できていないミサカ自身に腹が立ちます。
そして、ミサカはまたため息をつきます。
結論として、どうなのでしょうか、と。
ミサカ自身のことなのですからミサカが結論を出さなければならないのですが、それがどうしてもわからないのが現状です。
もう一足踏み込めばわかりそうな予感がするのに、その先のビジョンが思い浮かびません。
言わなければならないのに、どうして言いたくないのか。
たった一言なのに、どうしてこんなに難しいのか。
そしてわからない。
ループに陥っていく。
わからないことは閃きで解決するものですが、その閃きも来ません。
こういう時、相談できる相手がアクセラレータなのですが、この話題についてはミサカたちで解決すると決まってしまっている以上、相談はできません。
というより、相談なんてできません。
やっぱりこれはミサカ自身が解決して、勇気をもって宣言するしかないのでしょうか。
結局そうなる気がして、ミサカは単純に出てきた『最もミサカが嫌がっている答え』に呆れるしかないのでした。

そのまま進むと、ネギ先生たちがざわざわ騒いでいるのが見えました。

何か問題が起こったのかと近づいてみると、どうやら見覚えのある約二名が落とし穴に落ちたようでした。
落とし穴の中にカエルがいたというので、電車の中の一件と結び付けて考えてみますと、とりあえず『敵』の妨害工作か何かだということがわかりました。
何とも甘っちょろくふざけた嫌がらせですが、だからこそ相手の神経を逆なでするには効果的。
ここから離れるわけにもいかないために追撃できない苛立ちが、ミサカの眼を鋭くさせます。
ミサカは最初、敵の目的はネギ先生が持っている親書、あるいはこのかさんの身柄だと予想していました。
実際に新幹線内ではネギ先生の親書が奪われかけましたし、親書を狙っていることは間違いないでしょう。
そして、この嫌がらせ。
ネギ先生を油断させて親書を奪ってしまおうという新幹線内でも見せたやり口なのかもしれませんが、同じ失敗は二度もしないというネギ先生の宣言通り、落とし穴に驚きながらも辺りを警戒しているのがわかります。
別の狙いとして、ネギ先生とこのかさんを分断させることによりこのかさんに対する守りを薄くするという目的もあるかもしれません。
このかさんの件についてですが、本格的にこの件に関わる以上、アクセラレータからきちんと情報は引き出しています。
アクセラレータは基本尋ねないと何も言ってくれませんが、尋ねれば素直に答えてくれる人なのです。
それによると、どうやらこのかさんは関西呪術協会のお偉いさんの娘であって、何やら身柄を狙われているらしい、ということ。
それには理由があり、このかさん自身が膨大な魔力を保有していることが原因のようです。
どうやらあのサウザンドマスターを上回っているらしい潜在魔力は、アクセラレータ曰く『貯蔵庫』だそうです。
起爆剤を持たない火薬庫のようなもの、というとわかりやすいのですが、とりあえずこのかさんが内包する魔力のせいで、『敵』に狙われているということは知っていました。
なんでも魔法を使えない一般人でありながら、それだけ膨大な魔力を内包しているという事実はとても危険なようで、学園都市でも似たような事例があるようです。
その時のアクセラレータのセリフを思い出してみると、
『別に、学園都市じゃァ人体実験なンて日常的だしなァ。あのメルヘン野郎も能力を吐きだすだけの装置になってるみてェだし』
そのメルヘン野郎とかいう奴が誰かは知りませんが、要するに魔力を吐きだすだけの装置とされる可能性を示唆しているものとミサカは受け止めました。
この世界のこと、特に裏の方のこととなるとまったくもって知識も経験もないミサカは役に立ちませんが、やっぱりそういうことはあるのでしょうし。
そうなると、やっぱり膨大な魔力を目的として『敵』に狙われるということはありえる話です。
それ以外にも、お金持ちのお嬢様を誘拐して身代金とか、そういう理由も考えたのですが、それだったらさっき落とし穴に落ちていた雪広グループのお嬢様を攫うでしょう。
魔法関係で狙われているようですし、やっぱり魔力狙いなのでしょうか。
ごちゃごちゃ考えても敵の目的はわからないのですし、とりあえず狙われている事実だけ覚えておくとしましょう。
それで、このかさんの件についてミサカも加勢しようかと思ったのですが、このかさんの周りには常に神楽坂さんがべったりとマークしており、その外周を刹那さんが油断なく警戒することで、超長距離からの狙撃でもなければこのかさんに触れることすら許されない鉄壁の守りを作り上げています。
どうも連携を取っているようなので、ミサカが無理に割り込む必要もないかと思い、こうして個人的な警戒にとどめているわけですが。
そして、あれらカエル軍団の罠はその守りを突破するための揺さぶり、としての役目もあるのかもしれませんが……あまりにその目的が見えてこないために、ミサカの頭の中でいくつもの目的が予想され、ミサカが守るべき最優先目標を指定することができませんでした。
結局、いくつか推測しておきながらも、ミサカは結論に至ることができず、燻っているだけです。
そんなミサカがまた嫌になってきて、ミサカはもう何度目かわからなくなるほどのため息をつきました。

その時、ミサカの肩が叩かれました。

反射的にそちらを見上げると、そこには龍宮さんがミサカを見下ろしていました。
「どうした、ミサカ。君らしくない」
少し厳しい顔でした。
相変わらずの頼れる年上オーラに何でもかんでもぶちまけようと思ってしまいましたが、ここでは誰が聞き耳を立てているかわかりません。
特に、あの朝倉さんとかに聞かれれば関係の破綻に直結します。
だからミサカは、なんとか誤魔化すことにしました。
「長距離の旅行は初めてなので、少し環境の変化に戸惑っているのです、とミサカは―――」
「そう隠すなよ。刹那のことだろう?」
ミサカは常にポーカーフェイスを保っているはずですが、一体ミサカのどこを見てそう判断したのでしょう。
そう思ったミサカの心理さえ、龍宮さんは見抜いている気がしました。
ふっ、と龍宮さんは笑います。
「カマをかけてみたが、どうやら当たりらしいな」
なんというか、ミサカは肩を落とすのを隠しきれませんでした。
図星に反応してしまったためにバレてしまったことを即座に頭の中でメモりながら、次はこんな失態をしないように心掛けることにします。
この明らかに外見的には年長者である龍宮さんの前では、ミサカの子供のような心なんて赤子の手を捻るようなものなのでしょう。
龍宮さんは、にやにやしているのかにこにこしているのか判別しづらい顔で続けます。
「刹那の気持ちというか、心情には気づいているか?」
「一昨日辺りに、とミサカは正直な返答をします」
「君にしては上出来だ。もしも気づいていないんだったらゴム弾をブチ込む所だったよ」
普段はあまり話しかけてこない龍宮さんが話しかけてくるということは、よっぽどのことだったのでしょうか。
というより、この流れだと龍宮さんも刹那さんの気持ちに気づいている様子。
同室なのは刹那さんに聞いていましたが、そのせいでしょうか。
この人の場合、どこにいても何かを隠し通せる気がしないのですが。
「正直に言うと、そろそろ刹那を楽にしてやって欲しい。刹那ははっきりしてない現状にストレスを抱えているんだ、いざはっきりさせれば好転くらいするだろう」
「返答はもう決まっています、とミサカは答えます。ただ、今はちょっと言いづらいのです、とミサカは心情を吐露します」
そう言うと、龍宮さんは頷いて、
「まあ、この状況だと当然だな。朝倉辺りに聞かれると困るだろう?」
ミサカと同じような思考にたどり着いたようで、ミサカは首肯します。
ですが、ミサカが話しづらい理由はそれではないのです、と同時に否定しました。
朝倉さんはただの理由づけに過ぎません。
そもそも、話しづらい原因がなんなのかわからないので、ミサカには何も言う権利などないのですが。
龍宮さんはスカートの絶対領域から銃を取り出し、くるくるっ、と軽く構えました。
「君がわかっているんなら、これ以上私は手出ししない。後は君と刹那で、なんとか解決してくれ」
サイレンサーでも搭載されているんでしょうか、ほとんど音がしなかったのに、確かに銃口からは銃弾が飛び出て、『音羽の滝』の屋根の上にあった酒樽を撃ち抜きました。
おおよそ銃弾とは思えない威力を発揮し、酒樽は砕け散って、屋根から酒の滝が参拝客に襲い掛かります。
幸運なことは麻帆良の生徒ではなかった、ということでしょう。
酒を被ってしまった不幸な誰かさんにはご愁傷さまと言うしかありませんが。
ざわざわと珍事に周りがざわめく中、ミサカは先ほど龍宮さんが使用していた銃弾に興味を惹かれました。

おそらく魔法などで強化している銃弾だと思います。

学園都市でも、通常の銃弾はあんなに威力はないでしょうし。
既に銃を消している龍宮さんは、硝煙の香りすら残さずに、雑踏の中に紛れて行きました。
相変わらずカッコいいと思ってしまいます。
ああいうぶっきらぼうだけど優しい所は、ほんの少しですがアクセラレータに似ている気がします。
そんな戯言を思うくらいには、ミサカは変なのでしょう。
なんだかあの日からミサカは変なままです。
変な病気にでもかかってしまったのでしょうか。
憂鬱な気持ちをなんとかして吐き出そうと努力しながら、ミサカはため息をつきました。





SIDE 天ヶ崎千草

夕暮れが過ぎる風が、ウチの長い髪を撫でる。
あんま強風が過ぎることもない京都でも、ちょっとばかり風通しが良い場所のせいやろうか。
ぴしゃり、と扇子を畳み、ウチは周りを眺める。
それは外の景色やなく、ここに集まっている面々を見ただけや。
それだけで会話を始める空気になったということがわかったんか、その面々の一人、フェイトとかいう新入りが話し始める。

「意外と彼らの周りは固めいているようだね。少し警戒させすぎてしまったんじゃないかな?」

日本語はムカつくホストにでも習ったのか、やけに言葉だけ見ると優しい口調なように感じる。
やけどそれは間違いで、別に自分は興味ない、という薄い口調で語っているのが分かる。
その上から目線な所がムカつくんやけど、使える連中を集めてきたのはコイツとその取り巻きの人脈のおかげやから、多少は大目に見てやらなあかん。
どうもコイツは関西呪術教会のお偉いさんの従弟かなんからしい。
明らかに外人なんやけど、なんかそこはうまくはぐらかされた気がする。
ぶっちゃけ怪しい。
それでも、上の命令やから従わなあかん。
内心にそのムカつきを押し込みながら、ウチは返答する。
「確かに、あのガキやお嬢様に四人の護衛がついとったっちゅうのは予想外やった。その内の一人は裏切り者っちゅうてもれっきとした神鳴流の剣士やし、もう一人は裏で名の知れた傭兵。他の二人はどっちも学生やっちゅう話やけど、裏を洗ってみれば片方は真っ黒なわけやろ? 麻帆良にあんなんおるなんて聞いてへんよ」
若干、弱気になるのも仕方ないやろ、とウチは自分に言い訳する。
手紙を届けに来るのがスプリングフィールドであることくらいは調べて知っとった。
あのカエル地獄や他のトラップは、そのスプリングフィールドの実力を測るもんと同時に、その協力者が何人おるんか調べるもんや。
まあだいたいおって二人くらいやろうな、っちゅう感じやったんやけど、四人もおる。
人数で上回ればなんとかなると思ってたけど、こいつはちょっとヤバいかもしれん。
かと言って、もう中断することはできんわけやけど。

「結局、下手な策を打つよりは強襲して奪い取るんが一番やないおすか? まあ、できれば正々堂々と死合いたいもんですなー」

ゴスロリの衣装を着た、のんびりとした少女がウチの隣で殺気を振りまいとる。
こいつは月詠といって、この通りかわいらしい見た目に反して強力な戦闘力を持っとる神鳴流の剣士。
それも二刀流という、長い得物を得意とする神鳴流らしからん奴や。
その分対人に特化しとって、人を斬った数は数えきれんとか。
まあ、そういう類の殺し屋らしい。
結局のところ、神鳴流みたいな隠蔽された武術集団はこうやって戦闘狂になってく連中が多いわけや。
別に、ちょっと調べりゃこんな神鳴流なんて日本にざらにおるしな。
「冗談やない。ウチは月詠はんみたいに強ないし、無駄に戦いたくもないんや。やからこうやって策を練ろうとしとるんやないか」

「策、策と、つまらんわ。俺を呼んだんやったらさっさと戦わせてくれんか。西洋魔術師と戦ったことなんてないから、はよ戦いんや」

「(この脳筋のクソガキどもが……ただ突貫してったらやられるだけやってこと、なんもわかっとらんな)」
こっちは狗族のガキ。
かき集めた中ではそこそこ使えるガキっぽかったから雇ったんやけど、まさかここまで脳筋とは思わんかった。
土壇場で誤算に誤算が重なって、ウチの頭はパンク寸前やってのに。
「そういや、筑前はどこ行ったんや? アイツならなんとかなりそうなんやけど」
「彼ならあの男に会いに行くと言っていたよ。なんだか単純そうな男だったしね。使えるんじゃないかと言っていたよ」
「せやけどなあ……あの男は、なんか馬鹿の匂いがしたしなあ。使えるんかな、あれ」
「それは、僕にもわからないけど。彼には何か考えがあるんじゃないかな?」
新入りは曖昧に言うと、若干顔をそらした。
筑前っちゅうんは、ウチも所属しとる関西呪術協会の過激派実働隊のリーダー的存在や。
ウチはアイツに志願してこの作戦に参加させてもらっとる立場になる。
一番頭の痛い仕事やっちゅうことくらいはわかるけど。
こんな問題のあるガキ連中をまとめなあかんし、筑前の奴は厄介者をまとめたチームを作ってウチに押し付けようとしとるんやないか、っちゅう考えが頭の中を巡っとる。
悲観的に考えても、これまたしょうがないんやけど。
「―――まあ、ええか。細かい所は筑前に確認とって、他はウチらで考えて動けばええな」
「ほら、結局ゴリ押しやないか。最初っからそうしとったらええねん」
「黙っとれクソガキ。あんたはウチの言うとおりに動けばええんや!」
躾がなっとらんクソガキやな。
実力だけはそこそこあるから、ウチが躾けんのも面倒やし。
心の中でイライラだけが募っとると、携帯が鳴った。
ウチのやったんから、そのまま通話状態にする。


『天ヶ崎、首尾はどうだ?』


低い、若干ドスのきいた声。
間違いない、筑前や。
もう聞き慣れてしまった声にほっとしてしまう自分がいることを自覚しながら、ウチは現状の説明を始める。
「全然ダメやな。予定されとった前提条件をほとんど満たしとらん。ガキどもは酒飲まんかったから起きとるし、異様に動き回っとる。あの分やと夜遅くまで騒ぎそうや。それに、標的にも四人の護衛がべったり張り付いとるし、襲撃するにしてもちょっかいかけるにしても、ウチらのプラスはなさそうや」
『なるほど。それなら襲撃は良い。隙があれば襲撃するつもりだったが、無理をすることはねえ。それに、こっちにも厄介な情報が入ってきた。もうちょい人員をかき集めた方が良さそうだ』
「はぁ? 雑魚ばっか集めてもしょうがないやんか。動く部隊がでかくなったら、その分目立つと思うんやけど?」
『時間稼ぎだ。そう実力はいらねえよ』
電話の向こうでにやりと笑っているのが分かる。
雑魚を集めて何の時間稼ぎをするのかはわからんけど、まあ、筑前のやることやし、とりあえず文句は言わんとこう。
『今日は撤収しろ。明日に備えて、きっちり休め』
「了解や」
そう言って、ウチは電話を切る。
それからガキどもに今日は撤収ということを伝え、解散した。
どうせ、今日は偵察で終える予定やったわけやし、特に問題はないやろ。
襲撃も考えてはおったけど、取り返しても取り返される可能性もあるし、あの連中はまだ気を張っとる。
まあ、見とれ。
どうせその緊張感なんぞ三日と持たんやろ。
訓練された奴ならともかく、裏のことなんぞこれっぽっちも知らんガキどもに負けてたまるかいな。
襲撃をかけることなんてない、と油断させて足をすくい上げてやる。
そうすれば、ウチはあの忌々しい西洋魔法使いの連中に目にもの見せてやれるんや。
筑前が提唱する、あの計画に沿ってやれば。
その計画の名は―――





―――『暗闇の五月計画』。









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