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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第47話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:da7c297e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/05 13:38

SIDE 一方ミサカ

刹那さんと別れて、ミサカはそのまま家に向かいました。
改めて自分の体の状態を確認すると、やはり疲れていたからです。
これだけ超能力を使用したのはエヴァンジェリンさんとの訓練以来ですし。
重くなる足と肩を動かして歩いていくと、ようやく家が見えてきます。
なんだか道のりが長く感じます。
疲れているからでしょうか。
その疑問に答えが出ないまま、ミサカは自分の部屋の前を通り過ぎてアクセラレータの部屋の前にやってきました。
ドアノブに手をかけます。
鍵が掛かっていないドアを開け、電気をつけました。
途端、外とは違う部屋のにおいがします。
新品のボンドくさいにおいではなく、明らかに生活感のある人間のにおい。
それがどことなく記憶にあるアクセラレータが顔を近づけてきたときにした髪のにおいに似ていたような気がして、慌ててその妄想を振り払いました。

ですが、妄想は止まりません。

ぼんやりとしか思い出せませんが、白い顔が赤くなっていたことや、暖かい何かが唇を覆った感触は覚えています。
もっと明確に思いだすのは、ベッドの中での爆音。
あの時の心臓の音だけは忘れられません。
どうしてあのような気持ちになったのか、いまだに理解はできていませんが、思いだすと暖かな気持ちになるのがわかっています。
欠点としては、急激に顔が赤くなっていってしまうことでしょうか。
その気持ちが心を飽和させてしまうのか、ミサカの思考がぼんやりと呆けたものになっていきます。
途端、眼前で軽く放電してしまい、ミサカは慌てて気持ちを落ち着けていきました。
未だに思考が曖昧になると能力の制御が拙くなるのはどうにかならないものでしょうか。
少し前までは、そんな問題なんてありませんでした。
寝ぼけた時くらいだったのに。
ため息をついて、頭を振ります。
刹那さんが仮契約のことなんて聞くからです。

そうに決まってます。

決めつけることにして、ミサカは周囲を軽く見回しました。
とりあえず、ここは玄関でしたので、ミサカの軽い放電による被害はなかったようでした。
あまり電子機器のない場所だったということに感謝することにしましょう。
ミサカはリビングにやってくると、ソファーの上に座って時計を見ました。
いつの間にか午後11時を過ぎていて、夜遅い時間なのだという事がわかります。
少し眠い頭を洗面所で顔を洗う事で覚まし、アクセラレータを待つことにしました。
彼はやってきたら、まず何を言うんでしょうか。
ミサカに対しての謝罪。
これはありえません、却下します。
即座にミサカに事情の説明に入る。
これはありえそうですが、あの面倒くさがりのアクセラレータの事です、おそらく『眠い』とかそういった理由で煙に巻こうとする可能性もあります。
約束しましたから、話してくれるとは思いますが。
ミサカがソファーに腰掛けてそれらのことについて考えていると、ドアノブが回る錆ついた音が聞こえてきました。
ドアが控えめに開き、アクセラレータがのそのそと戻ってきました。

その顔は、やっぱり眠そうでした。

アクセラレータはミサカを見るだけで、深いため息をつきます。
「眠いから明日でいいか?」
「ダメです、とミサカは安易な道に逃れようとするアクセラレータを制止します」
あっさりと説明をせずに寝室に直行しようとするアクセラレータを止め、進路を遮りながらソファーに座らせます。
予想通りなのも困りものです。
ですが、彼の反射を使えばミサカなんてあっさりとどけることができるでしょうから、おそらく『できれば』という薄い希望に縋りついたのでしょう。
実際、アクセラレータは疲れた表情をしていますし、強引に説明させると要点が抜けそうな気がして怖いのですが、約束は約束です。
きちんと果たしてもらいます。
ミサカは対面のソファーに座り、アクセラレータを見つめました。
アクセラレータは膝の上に頬杖をついて、もう一度だけため息をつきました。
「テメェに秘密にしていたこと全部暴露しろって事だろ? 何を企んでいたのか、とか」
「そうです、包み隠さず全部話してください、とミサカは説明を要求します」
更にミサカが言うと、ようやくアクセラレータは観念したようです。
眠そうに俯けていた視線を、ミサカの方に向けてきました。
いつもはダルそうな雰囲気を醸し出している赤色の瞳が、じろりとミサカの目を見てきます。
それは先ほどの死んだ魚みたいな目とは違い、はっきりとした強い意志のようなものを感じさせるものでした。
そんな風に言えるほどミサカは経験を積んでいないのですが、いつものやる気のない姿とは違う事がわかります。
ミサカはアクセラレータの雰囲気に緊張して、体を硬くしました。
未知に対する興奮、とでも言うのでしょうか。
ずっと思っていた疑問が一気に解決されるかと思うと、身構えてしまったのです。
どんな事実があるのか、とミサカはアクセラレータの目を見つめ返しました。
「長くなるが、寝るなよ。テメェが寝たら俺も寝るからな」
「わかっています、とミサカは答えます」
それからアクセラレータの説明が始まりました。
しかし、アクセラレータが裏で動いていた事を説明するためには、この学園の勢力図を把握しなければならないそうで、まずはそれの説明から始まりました。


麻帆良には派閥と呼ばれる勢力があります。


小さく分けるといくつかあるらしいですが、大きく分けると穏健派、過激派、異端派と別れるそうです。
穏健派は学園長が所属しており、外部から襲撃してくる関西呪術協会と仲を良くしようと動いている勢力です。
過激派はそれとは反対で、向こうが武力で侵略してくるのならこちらも武力で反撃し、過激なものになると逆に進行してやろうと言う考えの持ち主たちの集まりのようです。
異端派はミサカやアクセラレータのように身元の怪しい魔法関係者とか、エヴァンジェリンさんのような特殊な事情で麻帆良にとどまっている高位の魔物などをまとめた勢力のことを言います。
あまり深く解説はされませんでしたが、それだけ覚えていれば今からの話は理解できる、とのことです。
「俺が裏で動き始めたのは今回の事が最初じゃねェ。とりあえずは今回の事件から説明する」
今回の事件とは、つまりミサカが襲われた事件のことです。
それについてはミサカもすごく聞きたい所です。
あの魔法先生たちがアクセラレータに何を伝えたかったのか、何がどうしてああなったのか、筋道を立てて説明してくればければ納得がいかなかったからです。
アクセラレータは腕を組んで説明を続けます。
「今回の事件の起源は、一月前半。テメェがやってきた頃だ」
そんなに早くからなのですか、とミサカは驚きながら、その説明を聞きます。
ミサカがやってきた一月前半、その頃からすでに過激派と呼ばれる人たちは学園長に抗議しに行く人たちもいたそうです。

なぜなら、ミサカがアクセラレータの隣に住んでいたからです。

身元不明の怪しい人間が、もともと過激派からよく思われていないアクセラレータの隣に住む。
何か企んでいるんじゃないか、と過激派の人たちは疑ったそうです。
何も考えていないのですが、そういう事を言っても言い訳にしかなりません。
ミサカはアクセラレータの親戚であることにしたので、親戚同士なら、という認識で落ち着いたそうですが。
そのような理由がなければ、やはり何かあるのかと勘ぐられてしまうでしょう。
転校手続きや戸籍の事に関してはアクセラレータや学園長に任せっぱなしだったことは自覚していましたが、そういう騒動があって、それに何も気づかなかったということにミサカはショックを受けました。

ですが、この程度の恥は想定内です。

やはり、ミサカはアクセラレータに頼っていた以上、未熟な点を露呈されるのはしょうがないことです。
それも受け止めて前に進まないと、対等になんてなれないからです。
密かに口の奥で歯を噛み締めました。
「その頃から、俺はもとより、ジジイと過激派の仲が悪くなってきてな。過激派が暴走しないようにジジイが舵をとって、俺が出向いて色々と条件をつけられたりしたモンだ。その頃から過激派から多少の警告は受けてたンだがな」
その条件の一つとして、ミサカの実力公開である刹那さんとの模擬戦闘、そして停電時での鬼退治が挙げられました。
どうしてそれが条件になるのかわからなかったので尋ねてみると、アクセラレータは押し黙りました。
何か言いづらい事でもあるのでしょうか。
首をかしげながら待っていると、アクセラレータは舌打ちをしました。
「俺がテメェの情報を隠蔽してたからだ」
「どうしてですか、とミサカは問いかけます」
すると、またアクセラレータは沈黙しました。
真っ直ぐになっていた瞳が微妙に揺らいでいて、何やら必死に言い訳を考えているように見えます。
それがミサカの言う『隠している事全て話す』という条件に反していると思えたので、ミサカはアクセラレータを睨んで詰め寄りました。
「隠していることを話すという約束だったはずです、とミサカは真剣に言います」
アクセラレータはその言葉を聞いて、片手で頭を抱え、左右に振りました。
どうやら正直に話すのがそれほど嫌なようです。
いくら詰問しても無意味なことに気づいたミサカは、そのままじーっとアクセラレータを睨み続けることにします。
焦ったら癇癪を起こす可能性だってあるのです。
辛抱強く待つに限ります。
そうしてじっと待っていると、アクセラレータはようやくぼそっと呟きました。
「情報を公開すると、テメェが危険になりそうだったからだ」
おそらく、それはアクセラレータが何千通りもある台詞の中から一番無難な台詞を選びだしたんだと思いますが、その裏にある真意はバレバレです。


この人は、やっぱりミサカを守ろうとしてくれていたのです。


アクセラレータの言葉の中に含まれた意味を分析します。
情報を公開、というのはさっき話した刹那さんとの戦いなどのことから、おそらく能力や出身についての情報かと思われます。
それについての公開を迫られていた、という事でしょうか。
出身はともかく、ミサカは発電能力者ですので、やはりその属性に見合った弱点は存在します。
この世界にも電気を操る魔法があるので、おそらく電気や磁力を無効化する魔法も存在するのではないでしょうか。
実際、ミサカの電撃はあの時戦った魔法先生には通じていませんでしたし。
そういう対策をとられてミサカが危険になるのを避けるために、アクセラレータは色々と裏で動いていたのではないでしょうか。
そう思うと、胸が暖かくなるのを感じます。
暖かなそれが全身にくまなく行き届いて、なんだかポカポカします。
アクセラレータはミサカの表情を見て、頭を掻きむしっていました。
苛立っている……というより、これはアクセラレータなりに恥ずかしがっているのでしょうか。
だとすると、ミサカはものすごい貴重な光景を見ている気がします。
アクセラレータの醜態を目に焼き付けようと視線を上げると、アクセラレータはその視線に気づいたのか、一気に表情を硬化させました。
「続けるぞ」
いきなりシリアスに戻られてもちょっと困ります。
そう突っ込もうとしましたが、真剣な話なのですし、茶化すのはやめにしました。

アクセラレータの説明は、そこからネギ先生がやってきた2月前半のことに移ります。

ここからアクセラレータは、学園長と若干敵対する立場になってしまった、と言いました。
アクセラレータは赤の他人であるネギ先生よりも、ミサカを優先しています。
そのことについてはとても嬉しいのですが、とりあえずそれは置いといて。
学園長は、どうやらサウザンドマスターと呼ばれる伝説の男の息子であるネギ先生を優先しているようです。
それらの考えの違いから、二人の間には亀裂が生まれたそうでした。
それが決定的になるのはもう少し先の話……つまり、桜通りの吸血鬼が本格的に噂になってきた4月上旬になるそうです。
ミサカとネギ先生が騒動を起こした、アクセラレータが『茶々丸襲撃事件』と説明した事件の事です。
あの時はアクセラレータに対応を任せっぱなしでした。
それについて詳しく聞けると思い、ミサカは先ほどよりも真剣な目でアクセラレータを見ました。
「茶々丸襲撃事件が起きた翌日、俺、エヴァ、ジジイで会議が開かれた。それくらいアレはややこしい事件だったンだ。今思い出しただけで疲れてくる」
それについて説明するためには桜通りの吸血鬼事件の本当の事情を話す必要がある、といってアクセラレータは説明を始めました。

ぶっちゃけてしまえば、桜通りの吸血鬼事件はエヴァンジェリンさんを使ってネギ先生の戦闘経験値を上げるためのものでした。

これからネギ先生にはさまざまな苦難がある。
だから、今の内に戦闘というものを経験させる必要がある、と。
しかし、そこでミサカが関わってしまいました。
そのせいで、話がややこしいものに発展します。
学園長はネギ先生を成長させるエヴァンジェリンさんとの戦いまでの道のりをシナリオと呼んでいたそうですが、茶々丸さんを襲撃した事件がそのシナリオを揺るがしたそうです。

まず、アクセラレータとの関係の悪化。

これは茶々丸さんを襲撃したネギ先生の罪を表に出さないようにすることで彼の負担を軽減すると言った学園長に、アクセラレータが反発したそうです。
これもアクセラレータが発言を渋りましたけど、鉄骨という証拠を残してしまったミサカに疑いがかかってしまったからだそうです。
どうも、過激派側にはミサカが戦闘を起こし、ネギ先生に何らかの怪我をさせたとかいう間違った情報が出回ったらしく、もともとアクセラレータによって情報が隠蔽されていたミサカに非難が集中したわけです。
証拠らしきものがある上に、ずっと疑われていたらしいミサカが怪しまれるのは当然ですね。
その誤解を解消するためには、その事件の詳細を明かすのが手っ取り早いのですが、学園長はそれを拒否。
そうなれば、学園長自身がシナリオを進めていたということを公開してしまう事になります。
ネギ先生にそれが伝わると、せっかくエヴァンジェリンさんとの戦いで成長させようとしていたのにその企みがバレてしまいます。
そうなると、ネギ先生もそれに反発するでしょう。
だからこそ学園長はそれを拒否したのでしょうけど、それはネギ先生を成長させるためにミサカに罪を被せるのと同じ意味です。

当の本人からしてみると、面白くありません。

更に、ネギ先生が茶々丸さんを襲撃した件も、やはりエヴァンジェリンさんが怖がらせ過ぎたというのも一因のようです。
そのようなややこしい理由から、誰が悪いのか決めつけることはできませんでした。
そして、そこで茶々丸さん襲撃事件の真相を明かさなかったから、過激派はミサカに注目することになりました。
そこで更によくなかったのが、学園長の対応でした。
どうやら学園長はアクセラレータをこれ以上刺激して欲しくなかったようで、過剰なほどのアクセラレータ宅防衛と、実力行使に出ようとする疑いのある過激派を捕えていったそうです。
文句を言おうにも、力で抑えつけられた状態にあります。
それらの事情を踏まえると、ようやくあの時の魔法先生の言う事がわかった気がします。
あの魔法先生たちも、好きで実力行使に出たわけではなく、そうせざるをえない状況にあったからこそああいう手をとったのだと思います。
ミサカにとって非常に好ましくないことではありますが、そういう結論になったことは認めましょう。
彼らが言っていた事を思い出すと、納得できることも少しはあります。
大部分は理解できませんけど。
それらの事情を聞いて、ミサカは天井を仰ぎ見ました。
結局、アクセラレータが大人の話し合いとかで動いていたのはミサカのための行動。
ミサカを守るために、アクセラレータが学園長と牽制しあい、周囲を敵に回す事態になっていました。

それは、心苦しい話です。

ミサカが未熟であるがゆえに、ミサカは何もできない。
アクセラレータがそれを負担してミサカを引っ張ってくれているということを実感しました。
その上、過激派という連中の恨みがアクセラレータに向かっているような気さえします。
ミサカを襲った連中を叩き潰したのはアクセラレータですし、学園長と色々話しあっていたのは彼なのですから。
直接的で圧倒的な力がアクセラレータになかったら、それこそ過激派の矛先は彼に向かっていたでしょうし。
結局、アクセラレータに比べて実力的に劣るミサカに矛先を向けてきていることになっていて、彼はその対応に四苦八苦しています。
ミサカのせいで彼に迷惑をかけていることが、ミサカにとっての重圧になりました。
それはミサカが何も知らない子供であったことを再認識させるものであり、そんなことにも気付かなかった不甲斐なさを悔やむものです。
さっきは刹那さんに愚痴を言っていましたけど、そんな事を言っていたミサカが小さく思えてきました。
アクセラレータは説明を終えると、頬杖をついていた腕を右腕に変えました。
「今回、テメェが襲撃された件についてはこれくらいだ。次は―――」


「もういいです、とミサカは呟きます」


「あァ?」
アクセラレータは疑問に思ったようですが、ミサカはこれで満足しているのです。
本来の目的である、アクセラレータが何を企んでいるかどうか、というのをはっきりとさせたから。
納得もできましたし、隠し事をしていたのはしょうがないことにしておきましょう。
ミサカを守ってくれていたみたいですし。
ミサカの力が足りない事を自覚して苦しくなりながらも、その事実に心が温かくなるのを感じます。
心のもやもやが大きくなって、口を開こうとして、強引に閉じさせられてしまいました。
もごもごして、何も言えない感じ。
でも、嫌じゃありません。
そう思いながら、ミサカは強引に拘束を振り切り、口を開きました。
「アクセラレータはミサカのために動いていました。それがわかっただけでミサカは十分なのです、とミサカは事情聴取の結果を報告します」
そう言うと、アクセラレータはミサカの顔を一瞥してそっぽを向いてしまいました。

照れているのでしょう。

それはそうです、ミサカが同じ立場だと仮定してもそういうことを言うのは恥ずかしいです。
ミサカが内心で頷いていると、アクセラレータが急に立ち上がりました。
舌打ちでもしそうな勢いで。
なんだかそのままいなくなってしまうのが怖くなって、ミサカは慌てて呼びとめます。
「どこに行くのですか、とミサカは問いかけます」
「シャワー浴びに行くンだよ。説明も終わったし、テメェもさっさと帰れよ」
そう言って、アクセラレータはバスルームに向かいました。
アクセラレータ自身は埃や汚れも反射で吹き飛ばせるので本来は必要ない行為なのですが、本人曰く『気分が悪い』だそうです。
どうも、浴びる必要がないのと浴びたいという気持ちは別のようでした。

静まる部屋。

沈黙を続けるその場に、バスルームから服を脱ぐ乱雑な音が聞こえてきます。
音がありませんでしたから、ミサカの耳は自然とそれを聞くことになります。
ですが、聞いてて気まずくなりましたので、自然とミサカはそわそわしてしまいました。
落ちつきません。
手はリモコンに伸び、いつの間にかテレビをつけていました。
まず映るのは、いつも通りのニュース番組のチャンネルです。
すっかり覚えてしまったニュースキャスターの顔をなんとなく眺め、機械的に流れて行く声をただ流し聞きしていました。
時計を見ると、もう日付が変わっています。
なんとなく、ある程度の下ネタも許される深夜バラエティにチャンネルを変え、シャワー音をできるだけ耳にいれないようにして、ミサカはただただ目の前の映像を眺めました。
テレビとシャワーの音が合成されて耳の中に滑りこんでいき、そのまま抜けていきます。
音に対して非常に緩慢になりつつあり、ミサカの意識はまどろんでいきました。
ぼーっとテレビを見て、ただただ過ごしている人間の気持ちというのはこんな感じでしょうか。
つまらなくもない、面白くもない、ただ時間が過ぎるだけ。
それも、たったの10分くらいでした。
ミサカの時間が動きだしたのは、彼がバスルームから出てきてからでした。
アクセラレータはミサカを見た途端、ぎょっとした顔をしてミサカを凝視します。
「まだいやがったのか。とっとと帰って寝ろ。テメェは明日も学校だろォが」
それだけ言って、アクセラレータは冷蔵庫から水を取り出し、コップに注いで飲み干していました。
ミサカはその台詞よりも、アクセラレータの姿が気になりました。

おそらく、ミサカがいるとは思っていなかったのでしょう、アクセラレータはラフな姿でした。

安物の黒のジャージ、もちろん長ズボンです。
白いラインが二つ入っています。
まあ、そこは別に気にする部分ではありません。
気にしてしまうのは、上の方です。
アクセラレータはミサカに背中を向けていますから、必然とミサカはアクセラレータの背中を見ることになります。
彼が着ていたのはランニングシャツでした。
あの枯れ木のようだった腕などはきちんとした青年のようになっています。
むしろ、青年の平均を上回った筋肉がついているのは確かのようです。
コップを持っている手が上がると、肩の筋肉が強調されます。
肩とか首筋を見ていると、やっぱりゴツゴツとしていてミサカとは違う事がわかります。
ミサカもそこそこ筋肉質ですが、女性特有の丸みというのは消えてくれません。
別に外見的な変化を求めているわけではありませんが、アクセラレータが自分を鍛えていたのは自分の姿が変わるのが楽しかったからだと思うのです。
ミサカは気を扱えるようになってからも目立って変わる事はありませんでした。
アクセラレータがあんなに変わったのは外見での成長があったからなのか、と勝手な想像をします。
一気に水を4杯ほど飲み干すと、アクセラレータは冷えた水の入ったペットボトルを冷蔵庫に戻し、コップを台所の流し台に置きました。
ミサカがそれら一連の行動を見ていたことに気づいたのでしょう、アクセラレータは訝しげな顔でこちらを見てきました。
「なンだよ」
「いえ、改めて見るとアクセラレータの体格は以前と比べて大幅に変わっていたのですね、とミサカは脳内の枯れ木少年と目の前の青年を比べてみます」
「そりゃァな。っつか、変わってねェなンて言われたらショックこの上ねェよ」
どンだけ苦労したと思ってンだ、とぶつくさ言ってアクセラレータはソファーに座りました。
ミサカがこんな事を言うのも、アクセラレータが薄着でいるのを見たのが初めてだったからです。

ミサカがやってきたのは一月。

四月中旬の今なら、シャワーをした後でシャツ一枚でいる事は珍しいことではないでしょう。
まだ寒い日もありますけど、暖かい日もあることですし。
それに、アクセラレータは基本的にミサカがいるときはシャワーを浴びませんから。
今回は、夜遅いことが関係しているのでしょう。
アクセラレータはテレビを眺めながら、ミサカに尋ねてきました。
「まだいるってことは何か質問でもあンのか? 後々答えるのは嫌だから今の内に質問しとけよ」
別に質問があるから残っていたわけではなかったのですが、とりあえず聞きたいことがあったため質問することにしました。


「アクセラレータはミサカをどうしたいのでしょうか、とミサカは尋ねます」


それを聞いて、アクセラレータは怪訝な顔をします。
ミサカが尋ねた意味がわからないのか、そのままの顔で返してきました。
「多面的な意見に取られてわかりづれェな。逆に、テメェはどうされてェンだ?」
「ミサカは……」
そこで、ミサカは口ごもりました。
どうされたい?

ミサカは、アクセラレータにどうされたいのでしょうか?

そういえば、対等に扱ってもらいたいという漠然としたものがあるだけで、具体的にどうされたい、したいなんていう希望はありませんでした。
いえ、むしろ対等に扱って欲しいというのもちょっと怪しいです。
ミサカは今更ながら、自分の内部を再分析してみます。
ミサカがアクセラレータにあんなことを言ったのは、このごろ隠し事をしているアクセラレータが怪しかったこと。
そして、自分も事情を知りたいと思ったからです。
裏で何もかも進むのは納得がいきません。
ミサカはミサカで、自分の事はちゃんと自分で決めたかったのです。
しかし、具体的なことになるとさっぱり頭は働きません。
むしろ、具体的なことなんてあるのでしょうか、とミサカは疑問を持ちます。
そうして少し前の自分の思考を思い出し、ミサカは自分の意思と反するように、するりとその事を口にしました。
「ミサカは、アクセラレータに色々教えて欲しいです、とミサカは希望を述べました」
裏側の事情とか、その受け答えとか。
ミサカには経験がありません。

だから、もっと経験が欲しいのです。

勉強をまた見て欲しい。
学園長と渡り合えるような発想と知識が欲しい。
エヴァンジェリンさんと戦えるような実力が欲しい。
想像を実現させるような実行力が欲しい。
自分で自分のことくらいできるようになりたい。
直接教えてくれなくてもいいです。
でも、最低限その姿を見せて欲しい。
盗める技術は盗みたいですし、そのためにはアクセラレータと一緒にいて、その背中を見て学ぶのが正しいと思うのです。
こそこそミサカの見えない所でやられても、その姑息な所しか学べません。
それだと意味がありません。

ミサカは真っ直ぐに生きたいからです。

せっかくこのような機会に恵まれたのです、ならばしっかりと自分を確立させるべきでしょう。
ミサカはそのために様々な知識を得たいと思ったのですが、アクセラレータは違う受け取り方をしたようです。
困惑したように頭を掻いていました。
「今までも教えてやったじゃねェか。それはこれからも変わらねェ。俺は一応、テメェの世話くらいはするつもりだが」
「アクセラレータが教えてくれたのは世間一般の常識でした、とミサカは記憶から今までの行動を思い起こします」
ミサカは、ここにきた当初は人形に等しい存在でした。
レシートの意味すらわからなかったのです。
そんなもの、ただ意識のある人形に変わりはありません。
それに、アクセラレータは世間で普通に過ごせるくらいの常識を与えてくれました。
買い物の方法。
洗濯機の使い方。
周囲の人との付き合い方。
値段の相場。
お金の価値。
後、我慢でしょうか。
今まで教えてくれたのは、そういった世間一般の常識でした。
気などといったそれを教えてもらったのは別として。
ミサカがこれから望むのは、その気などといったことを教えてもらったことに入る部類です。
「力が欲しいです、とミサカは思います」
定義される力とは、ただただ暴力的な力ではありません。
超能力や気など、そういう力じゃないのです。
もっと目に見えない、他人には評価されづらい力。
それでいて、本人の価値に相当する力。
世の中を渡っていく力。
人間力、とでも言うのでしょうか。
ミサカはそういった、内面の力が欲しいです。
何故欲しいのか、その理由は。



「アクセラレータに、もう迷惑なんてかけたくないです」



つまり、そういうこと。
結局は、自分の力不足を痛感しているだけなのですが。
ミサカはやっぱり、守られるだけの存在として満足することができそうにありません。
真っ向から『ミサカを守っていた』と言われ、それで納得することができても、やはりこう思ってしまうのですから。
お姫様はミサカに似合っていないようです。
行動したい、そう思います。
アクセラレータはミサカの言葉を聞いて、目を伏せました。
ぼんやりと前方を見ている目は、明らかに呆けているそれではなく、高度な思考力を必要としている事を意味していることがわかります。

集中しているようでした。

ミサカはそれだけ真剣に考えてくれていることに感謝すると同時に、なんだか恥ずかしくなってきます。
普段は軽口をたたく仲なのに、こういう風に真面目なことを言うと恥ずかしいです。
でも、もう言ってしまいました。
そうした以上、結果を待つしかないでしょう。
ミサカは荒くなりそうだった息をなるべく小さくしました。
意識して息の音を消すと、それだけ心臓の音が聞こえてきます。
小さく、規則的に響く音。
時計の針が動く音と連動しているような気がして、そこまで部屋が静寂に包まれていることに気づきます。
そのまま、どれだけの時間が過ぎたでしょうか。
アクセラレータはゆっくりと顔を上げ、ミサカの方を見ました。


「関わりてェンなら、好きにしろ」


静かな部屋に、その声は予想外なほど大きく響きました。
事実上、それはミサカが歩む道を許可してくれた言葉です。
ですが、あまりにもあっさりとしていたため、ミサカは慌てて質問することになりました。
「ということは、ミサカに隠し事はしないでくれるんですか、とミサカは質問します」
「テメェが関わることについてはある程度説明するつもりだ。だが、俺個人の問題が起きた場合はテメェは関わるなよ」
「そ、それが嫌だとさっきからミサカは言ってるのです! ミサカはミサカの知らない間に迷惑をかけるのが嫌なのです、とミサカは何度言わせるのかと憤慨します!」
「なンでもかンでも教えてもらえると思ってもらっちゃ困る。話せねェことは話せねェよ」
「それでは結局変わらないじゃないですか、とミサカは―――」
「自分で気づけよ」
ミサカの言葉をさえぎって、アクセラレータは小さく愚痴を言うように呟きました。
その意味がわからずに、ミサカは首をかしげていると、その隙にアクセラレータは立ち上がりました。
立ち上がったアクセラレータの目はなんとなく呆れている目をしていて、今にもため息をつきそうでした。
「与えられる情報で満足すンな。それじゃァ、結局テメェの言う力ってのは身につかねェンじゃねェか?」

それに、ミサカはハッとします。

ミサカはアクセラレータから学ぼうとしていた事を思い出します。
学ぶ、ということはただ答えを聞くだけという行動ではありません。
答えの過程を悩むことに意味があるのです。
心の中で否定していたというのに、結局ミサカはアクセラレータに頼っている事実を知り、ミサカは愕然としてしまいました。
がっくりと項垂れるミサカの前を、アクセラレータの足が通り過ぎて行きました。
「習慣ってのは自然と出ちまう。今すぐそれと違う事をやろうと思っても無駄だろォさ。だったら、やれる範囲からやってくのが手っ取り早いと思うがな」
ミサカは顔を上げました。
そこには寝室に向かうアクセラレータの後姿が見えていました。
襖に手をかけて、アクセラレータはその動きを止めます。


「……まァ、どォしても、って言うンなら教えてやる。今みたいにな」


それだけ言い残して、アクセラレータは寝室の向こうに消えて行きました。
厳しいと思えば逃げ道を用意しているのは、楽な道に流れようとするミサカを戒めようとしているのでしょうか。
アクセラレータの考えている事はわかりませんが……でも。
言葉の裏にある意味を捉えられないミサカは、やっぱり未熟で。
だからこそ教えてもらう必要があるわけです。
ミサカは冷静になるよう、頭を振りました。
とりあえずミサカについてのことは教えてもらえるようですから、良しとします。
それに、ミサカの言いたい事は言えたのですし。
そう思うと、満足感が溢れてきます。
眠いのに、なんだか弾む心が睡魔を妨害しています。
ミサカは嬉しいのでしょう。

なんだかんだで、彼はミサカのことをちゃんと考えてくれていることに。

大切にされている、と自惚れて、顔を赤くしてみます。
ソファーから立ち上がりながら、ミサカは玄関に向かいます。
靴を履いて、ドアを開きました。
いつもとは違う、暖かな感情を込めて、ミサカは最後に言いました。


「おやすみなさい、アクセラレータ」






SIDE フェイト・アーウェルンクス

なるほど、あれが『ホワイトデビル』と呼ばれる男の力、か。
僕はそう思いながら、夜の街中を駆けていた。
彼は魔法でも気でもなく、ただ理不尽な破壊力でねじ伏せる。
棍棒を散弾のように打ち出した時は驚いた。
投げてもいないのに、自然と棍棒が前に出ていたし。
物理攻撃も通用していなかったようだけど、あれは障壁だったのか?
少なくとも、僕はそう思えない。
そのための術式がまったく成立していない……というより、魔力を使っていないからだ。
生まれつき非常に体が硬い人外だ、とも思ったが、それにしては物理的法則を無視した動きをし過ぎている。
風を操る力を持つ、非常に体の硬い男。
そう言う風に捉えた方が理解しやすいのかもしれない。
莫大な気を扱うジャック・ラカンとも違う、膨大な魔力を操るナギ・スプリングフィールドとも違う、また別の域にいる存在なのだろう。
そういう存在が、どうしてあんな場所にいるのか。
関西にまで轟く二つ名だから、少しは有名なのかと思えば情報はほとんどない。

わけのわからない男だ。

「アレがアクセラレータや。西洋魔術師でもないっちゅうんに、関東魔法協会に味方しとるわけのわからん奴や」
僕の隣にいる女、天ヶ崎千草が言った。
彼女の思想や主張に興味はない。
タカミチ・T・高畑を上回る存在が麻帆良にいるからとついてきたが、アレは僕よりも強いかもしれない。
ネギ・スプリングフィールドに近い存在でもある。


脅威だ。


間違いなく、あの白い男は脅威になる。
できればネギ・スプリングフィールドの力を見るつもりだったが、あの男について調べることの方が先だ。
「ったく、魔力も使わずに風を起こすなんて、どないなことをすればああなるっていうんや」
隣の愚痴については無視を決め込むことにし、僕はこの先の事について頭を回転させる。
このままのプランだと崩壊するかもしれない。
もしも彼がネギ・スプリングフィールドに同行するのであれば、こちらも相応の対策をとらなければならないだろう。
わざわざ関西の過激派についてきて偵察した意味があったというものだ。
意味もなく叩き潰されて終わるなんてありえない。


こうして行動する以上は保険をいくつかかけさせてもらうよ。


「これからどうしますか?」
「戻って作戦を練り直すで。あのアクセラレータっちゅう奴、噂以上に無茶苦茶やったからな。それに、あの裏切り者はお嬢様の護衛やし、なかなか強い。アンタの言う通り、アイツ等がお嬢様の護衛についたら手ぇ出せへんようになる。まだ一週間あるし、多少の変更は効くやろ」
そう言って、天ヶ崎千草は頭を抱えた。
疲れたように、盛大なため息をつく。
「帰ったら作戦会議か。あー、あの我の強い連中相手に作戦会議とかしんどいわ。アンタみたいに冷静やったら楽なんやけどな」
「僕もただ言いたい事を言っているだけです」
それだけ言って、僕は前を向いた。
僕たちが進む先に行くと、呪文を唱えている陰陽師が数人立っており、その横には空間の歪みが発生していた。
その中に他の陰陽師が入っていき、消えていく。


転移門。


それも、かなり高度なものだ。
呪文を唱えている陰陽師たちは転移門を開くためだけの技術に特化した存在、門番だ。
陰陽術については知識があるから、この日本独特の魔法についても覚えがある。
これは伊能忠敬の書いた地図を応用した魔法だったということを覚えている。
午前0時から5分間だけ開くゲートをくぐり、本拠地である京都へ帰還することができる。
どうやら49カ所の転移場所があるようだが、今回は京都に帰還するために使う。
流石に行きは普通に転移魔法や電車などに乗って行くが、帰りはこれを使う事が多いようだ。
そちらの方に向かうと、陰陽師の一人が天ヶ崎千草に向かって言った。
「遅えぞ、天ヶ崎」
「すんません」
その陰陽師にひきつられる形で、僕たちはその門の中に吸い込まれていった。
転移空間の闇の中、僕はこれからの事について考えていた。







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