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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第36話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:da7c297e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/14 12:10
SIDE 一方通行

ふぁー、と俺は欠伸をした。
相変わらずの麻帆良の晴天には少し飽きてきている今日この頃である。
見事な夕日は飽きないのだが、たまには曇りや雨の日も欲しいものだ。
こうギラギラしていたら逆に疲れる。
ダルいのは少し早い五月病か。
俺はくだらないことを思いながら、今日も平和な麻帆良を歩いていた。
現在は放課後の時間帯のため、学生の姿が多い。
各々ゲームやら趣味やらの話で盛り上がっている。
中には桜通りの件を噂している奴もいて、噂はなかなか周囲に浸透しているんだな、と思う。
その事を考えていたからかもしれないが、噂の吸血鬼が前方からやってきた。
「よォ」
「ああ」
もう知り合って長いので、道路で会うとこんな軽い感じだ。
後ろにいる茶々丸は会釈してくる。
「こんにちは、アクセラレータさん。ミサカさんは一緒ではないのですか?」
「テメェ等の仲が良いのは知ってるが、いつも一緒ってわけじゃァねェンでな」
「そうですか……なら、明日にまた談議をするとします」

談議か。

コイツらの話にはあまり興味はないが、なかなかこの二人は趣味が合うようで。
マスコット関連での話が盛り上がるらしく、茶々丸とミサカでヒヨコとネコのどちらがマスコットに相応しいかで論議したことがあるらしい。
こういうのはどちらも平行線をたどることが多いため、延々と決着はついていないみたいだが。
若干ガンドルフィーニたちの議論と似ていなくもない。
今度はアイツら、また三馬鹿で何か熱い論議をしているらしいしな……知りたくもない。
俺としては俺を巻き込まないのなら好き勝手やっててくれて結構だ。

本当に巻き込まないで欲しい……疲れるから。

それからなんとなく二人と並んで歩いていると、エヴァが話しかけてきた。
それはその事を知りたいと言うよりは、ただ黙って歩いているのが気まずいと思ったような話の振り方だった。
「一方ミサカの方はどうだ? 桜咲刹那に勝ったということは聞いたが、詳しい状況は聞いていないんだ」
「あンな模擬戦は参考にならねェよ。刹那もミサカの実力を感じたかったンだろォが油断しすぎだしよォ。ま、テメェやチャチャゼロは一言で切り捨てるような模擬戦だったってことだ」
「力を見せつける戦闘なのだから、多少の加減はしょうがないのだろう。殺してしまっては流石の貴様も一方ミサカを守りきれまい?」
「その場合は責任を取らせる。その辺りはジジイと約束してるからな」
と、ここでエヴァは目を光らせる。
「意外だな。誤魔化し通すのか、力押しで黙らせるのかと思っていたぞ」
「バァカ。流石にそこまでは面倒見切れねェよ」
「親っぷりが板についてきたな。当初の貴様とはまた違う。今はすっかり枯れてしまってつまらんがな」
「あの頃の俺と比べてもらっちゃ困る。それにまだ俺は枯れてねェぞ。十代で枯れてたまるか」
こうして世間話をしているということは、俺もエヴァと話すということは悪くないと思っている事だろうな。
今更ではあるが、からかわずに普通に話すというのも時には悪くないもんだ、と思う。
そういうのもこの春の陽気がもたらす暢気な空気故だろうか。
そのままダラダラと歩き続け、やがて前方からタカミチがやってくる。
「おーい、エヴァ。学園長が呼んでるぞ。一人で来いってさ」
「なに?」
そこで訝しげな顔をしたエヴァだったが、すぐに力を抜いた顔に戻り、ため息をつく。
「―――わかった。茶々丸、必ず人目のある所を歩けよ。……コイツに頼んでも信用ならんからな。途中で放り出しかねない」
「悪かったな」
それはエヴァなりの冗談だったのか、安い悪者っぽい高笑いをしていた。
タカミチが俺の方に向いて、少し困ったように言う。
「そろそろ貸していたDVDを返してくれないかな? もう一カ月くらい借りてるだろ?」
「どォせ返しても押し入れに逆戻りなンだからケチケチすンなよ」
「酷いなぁ。確かにそうだけど、なければないで気になるんだよ」
「……一応借りた奴は全部見たから、明日の暇な時間にでもポストに入れとくぜ」
「ああ、頼むよ」
借りっぱなしは確かに俺が悪い。
だからと言って返してタカミチの押し入れの中に逆戻りっていうのも惜しいんだがなあ。
まぁ、所詮は俺の身勝手か。
エヴァとタカミチが去っていくと、この場には茶々丸と俺が残された。
茶々丸とエヴァはだいたいセットなので、そういえばこの組み合わせは珍しいかもしれない。


……前に一度あったか?


なんだか思い出せないな。
えらく昔のような気がする。
俺が記憶の引き出しを開けて中をあさっていると、茶々丸が声をかけてきた。
「アクセラレータさん、それでは私はここで失礼します」
「あ、あァ」
戸惑ってしまったのは、少し不意打ちだったからだろう。
考えに没頭していると周りが見えなくなるな……集中のし過ぎだ。
茶々丸が向こうに歩いて行くのを見送った後、俺は家に向かって歩き出した。


その途中で、俺はこの二日間でのミサカの様子を思い浮かべる。


帰ってくるなり『修行がしたいのでエヴァンジェリンさんの家の別荘を借りたいです、とミサカは強く希望します』と言ってきた事はかなり印象に残っている。
刹那に勝ったので天狗になっていることも危惧したのだが、むしろミサカはあの戦闘で欠点を見つけ、それを改善することで更なる高みを目指す方針のようだった。
どうやらその欠点とは瞬動らしいが……欠点としているということは、刹那との戦いで見せたあの瞬動はまぐれだったということになる。
ミサカの瞬動成功率は低いわけではないが高いわけでもない、つまりは五分だ。
実戦のここぞという時に使うには少々リスクが高い。
ミサカの防御力が低い以上、やはり速度を向上させるしかないと思うし、瞬動の技能を向上させようとしているミサカの行動は正しい。
また、色々と戦闘に関しての能力の応用も考えているらしく、ノートに書き込んでイメージトレーニングなどをしているようだ。
ノートを覗きこもうとすると隠されたが、どうも絵を描いて考察しているらしい。
ちらりと見えたが、まあ上手いとは言えない絵だった。

神楽坂にでも教えてもらえば良いのに。

まぁ、そうやって修行などに没頭しているせいか、俺と会話をすることも少なくなった。
もともと少なかった会話が更に少なくなったため、この二日間ではあまり話した気はしない。
ミサカが楽しんでいるんならいいんだがな。
その一方で負けた刹那はというと、どうやら修学旅行に向けて猛特訓をしている最中らしい。
夜に見回っていると雷鳴剣と思しき光が森の方から見えたので、だいたいそれであっていると思う。
生真面目な刀子センセーのことだ、刹那にとってはつらい修行をさせていることだろう。
この敗北……模擬戦で刹那も様子見が長かったので敗北とは言えないかもしれないが、とにかく今回の事で刹那も更に腕を向上させてくれると修学旅行でのことも楽になると思う。
その分月詠がマジになってくるかもしれないが……その時はその時だ。
安っぽい錆びた階段を上り、廊下の一番奥にある俺の家の扉を開ける。
そうして靴を脱ごうとして―――



突如、眩暈に襲われた。



平衡感覚がなくなり、思わず膝を突く。
それでも倒れそうになり、俺は壁に手を突いた。
「ちィ……俺が眩暈だと?」
反射で風邪菌を寄せ付けないせいか、俺は体調を崩した事はほとんどない。
睡眠不足などで体がダルくなったことはあるが、こういう風に眩暈で疲れが出るのは初めてだった。

俺も疲れてんのかな。

睡眠時間は以前とさほど変わっていないはずなんだが……停電時に備えて夜の見回りは自重することにするか。
眩暈はしばらくして治まり、立ち上がって奥に向かう。
台所でコップ一杯の水を飲んでから、襖を開け、ベッドに転がって目を閉じた。
夜の見回りというのは関西呪術協会の襲撃に対してのものではなく、単なる不審者対策である。
関西呪術協会も停電に向けて戦力を蓄えている最中だし、襲撃してくる事はないだろうからだ。
敢えてフェイントで停電前に襲いかかってくる可能性もあるが、その時は俺とタカミチで真正面から叩き潰すだけだ。
少しくらいでなくても問題はないだろう。
「いや、タカミチに頼んでおくか。夜とか暇だろうしな」
目を閉じると、すぐに睡魔が襲いかかってくる。
いつも寝不足な俺は、ベッドに寝転がるとものの数秒で眠りについてしまう。
昼寝だから、3,4時間もすれば目が覚めるだろう。
ぼんやりとした思考の中、そう思いながら俺は眠りに落ちた。






SIDE ネギ・スプリングフィールド

僕は今、エヴァンジェリンさんと茶々丸さんを尾行している。
隣にいるのはアスナさん、そしてカモ君だ。
カモ君、というのは僕がウェールズにいたころ、罠にかかっていたのを助けてあげたオコジョ妖精で、今は僕のペットだ。
僕なんかよりも口が達者で、そう言う所は凄いと思う。
ただ……と、僕はさっきの会話を思い出す。


『ネギの兄貴と姐さんがサクッと仮契約を交わして、相手の片一方を二人がかりでボコっちまうんだよ!』


正直、卑怯だと思う。
僕がエヴァンジェリンさんと茶々丸さんに負けたのだって、僕がちゃんとした知識を持っていなかったからだし、つまりは勉強不足だ。
僕が2対1でやられたのと、僕とアスナさんで茶々丸さんを倒すのは意味が違うような気がする。
『兄貴だって二人がかりでやれたんだろ!? やられたらやり返す!! 漢の戦いは非情さ!!』
カモ君はそう言っていたけど、やっぱり納得はできない。
でも、僕の中にある冷静な思考はカモ君の意見に賛成している。


エヴァンジェリンさんは真祖の吸血鬼。


その力の大半が封印されているみたいで、その力が開放されるのならともかく、封印状態のエヴァンジェリンさんと1対1ならまだやりようはあると思うんだ。
ただ、そこに茶々丸さんが加わると話が違ってくる。

まず、魔法の詠唱ができない。

魔法使いの僕にとって魔法の詠唱ができない事は致命的だ。
茶々丸さんがいる限り、真正面から戦えば前のように組み伏せられるのがオチだ。
だから茶々丸さんをなんとかすれば、僕にもまだ勝機はある。
だからアスナさんと二人で茶々丸さんを倒す……理屈はわかるんだけど、やっぱり気が進まない。
でも、このまま何もしないんじゃ僕は倒されるだけだ。
何もしないまま殺されるなんて嫌だ。
そう思って拳を握りしめると、エヴァンジェリンさんたちはアクセラレータさんと合流した。
なんだか親しげな様子で話をしていた。
え、エヴァンジェリンさんとアクセラレータさん……両方とも僕はあんまり知らないけど、とても仲良く喋るような人たちには思えないんだけど……。
僕が不審げにそれを見ていると、二人を見たアスナさんは『う……』と声を漏らしていた。
僕たちの雰囲気の変化に気づいたんだろう、カモ君が訊ねてくる。
「兄貴? あの男がどうかしたんスか?」
「うーん……エヴァンジェリンさんの横にいる人なんだけど、あの人はちょっと苦手なんだ。アクセラレータさんって言うんだけど」
「アクセラレータ? 偽名みたいスね」
「あだ名みたいなもんよ。アクセラレータの本名を知ってる人の方が極端に少ないわよ……っていうかどうするのよネギ。このままじゃどうしようもなくなると思うんだけど」
「アクセラレータさんがいる間は手出しなんてできませんよ~~……」


怖いし……。


それに、ものすごく強いらしいし。
カモ君は知らないから良いだろうけど、あの人たちに気づかれたらと思うとドキドキする。
その場合は全速力で逃げるしかないだろう。

……追いつかれると思うけど。

三人が話していると、向こうの方からタカミチがやってきた。
どうもエヴァンジェリンさんに用があるみたいで、そのままタカミチと一緒にどこかに去っていった。
アクセラレータさんも茶々丸さんに別れを告げてどこかに行ったので、茶々丸さんは一人になる。
桜が咲いている通りをテクテクと歩いていく。
エヴァンジェリンさんたちが戻ってこないのを確認して、カモ君が叫んだ。
「よし、エヴァンジェリンも戻ってこないし、チャンスだぜ兄貴! 一気にボコっちまおう!!」
「ま、まだダメだよ。こんな所じゃ人目につくし、もう少し様子を見てからにしようよ」

ここはドブ川の近くで、遠くからもよく見え、目立つ場所だ。

こんなところで魔法を使えば、誰が見ているかわかったもんじゃない。
「(何か辻斬りみたいで嫌ね……しかもクラスメイトだし)」
アスナさんがボソボソ呟いてたけど、何て言っているのかは聞こえなかった。
そのまま茶々丸さんは僕たちに気づくことなく歩いていく。
「……でもまあ、あんたやまきちゃんを襲った悪い奴らなんだしね。何とかしなくちゃ」
アスナさんがそう言った時、泣き声が聞こえてきた。
慌ててその声の方を見ると、僕よりも年下の女の子が泣いていた。
様子を見ると、風船を誤って離してしまったらしい。
茶々丸さんがその女の子に近づいていって、しゃがみ込む。
「どうしたんですか?」
女の子は茶々丸さんに気づいて、嗚咽をあげながら木の上を指さす。
そこには赤い風船があった。
とてもじゃないけど、普通の人の手は届きそうにない。
僕みたいに空が飛べたら別だけど、茶々丸さんは魔法使いじゃなさそうだし―――そう思った瞬間、


バシャッ!!と茶々丸さんの背中が開いた。


目の前の事象に僕が茫然としていると、茶々丸さんの背中から火が吹いて、飛んだ。
そのまま上昇して、枝に引っかかっていた風船を取る。
降りて来て、女の子に風船を渡した。
「お姉ちゃん、ありがとー!」
「……どういたしまして」
そう言って手を振る女の子に手を振り返し、茶々丸さんは歩きはじめた。
僕たちはその様子をぽかーんと眺めていた。
いや、なんというか、もうぽかーんとしかできなかった。
僕は思った疑問をそのまま口に出す。
「そ、そういえば、茶々丸さんってどんな人なんですか?」
「えーと……あんまり知らないんだけど」
「いや、だからロボだろ? さすが日本だよなー。ロボが学校通ってるなんてよう」

え?

僕はカモ君の意見に一瞬茫然とした後、悲鳴を上げた。
「えええええっ!? じゃあ、茶々丸さんって人間じゃないの!?」
「へ、変な耳飾りとは思ってたけど、マジでロボットなの!?」
「うおおおぉい!? 見りゃわかんだろぉ!? 今までなんだと思ってたんだよ!?」
「い、いやー、ほら、私ってメカとか苦手だし」
「僕も実は機械は……」
「そんな問題じゃねえって!?」
カモ君って物知りなんだなあ、と思った瞬間だった。
とりあえずその場で気を落ち着かせて、僕たちは茶々丸さんの追跡を再開する。
なんだか僕より年下の男の子たちが茶々丸さんに話しかけていた。

人気とかあるのかな。

すごい親しげに見える。
そして、茶々丸さんは歩道橋の階段を苦しそうに上っているおばあさんを助けた。
ちゃんと上るだけじゃなくて下りも背負ってあげている。
おばあさんはいつもありがとうと言っていたから、いつもああいうことをしているんだろうか。
さっきの道路に戻って川沿いに歩いていると、今度は川の方で何か騒いでいるのが見えた。
どうやら、川に子猫が流されているらしい。
その光景を見た茶々丸さんは、ぼそりと呟く。
「子猫を川に流すなど、人の風上どころか風下にも置けない人間です。日本はネコを保護する法律を作るべきです」
「茶々丸、ほーりつって何?」
「偉い人が決めた決まりのことです」
簡潔に茶々丸さんがそう答えると、そのまま柵を越えてザブザブと川の中に入っていってしまった。
そのまま子猫を救出した。
それに対して様子を見守っていた人たちが歓声をあげる。
どれもが茶々丸さんの行動を称えるもので、それも嫌みには感じない。
なんというか、文句のつけようがないほど良い人だった。
「メチャクチャいい奴じゃないのーッ!? しかも街の人気者だし!?」
「い、いや、油断させる罠かも……」
「でも、あそこのおじいさんとかは『また』って言ってたよ? いつもやってるんじゃないかなぁ」
だとすると、ものすごく偉い。

無条件でテストに100点つけたくなるほど偉いと思う。

なんでこんな良い人がエヴァンジェリンさんの従者をやっているのかわからない。
エヴァンジェリンさんは悪い魔法使いじゃないのだろうか。
自分で悪い魔法使いみたいなことを言ってたから間違いじゃないとは思うんだけど。
僕が確信を得られないまま悩んでいても、茶々丸さんは子猫を頭の上に乗せてそのまま進んでいく。
僕たちは戸惑いながらそれを追いかけていくと、いつの間にか夕日が出ていることに気づいた。
茶々丸さんは真っ赤なそれが照らす公園にいる。
広場の中央の辺りに行って、そのまま座る。
袋の中から何かを取り出しているのが見えた。
「何、あれ?」
思わずアスナさんが疑問に思ったようだった。
見た所、取りだしたのは何かの缶みたいだった。
それを栓ぬきを取り出してギコギコと開けていく。
その行動が不可解で様子を窺っていると……柱の陰からネコが出てきた。


一匹、二匹、三匹……何匹かのネコが出てきたのだ。


それぞれ『にゃー』と鳴きながら茶々丸さんに近寄っていき、缶の中に入っていた餌を食べ始める。
そこに丁度鳥たちもやってきた。
美しい夕日の光が辺りを照らし、それはまるで絵画の中の世界のようだった。
鳥と猫が戯れる姿は獲物に襲いかかっている肉食的なそれにとても見えず、文字で表すなら平和の二文字がしっくりとくる。
思わずその光景に見とれてしまい、心が和んでいくのを感じていた。
僕とアスナさんは壁に隠れてその光景を見ていたが、ゆっくりと壁の陰に戻ると、
「……いい人ね」
「……いい人だ」
「ちょっ!! 待ってください二人とも!! ネギの兄貴は命を狙われたんでしょ!? しっかりしてくださいよう!!」
それはそうだけど、やっぱり茶々丸さんは悪い人には見えない。
様子を見てきたけど、ますます攻撃し辛くなった。
「と、とにかく、人目のない今がチャンスっス! 心を鬼にして、一丁ボカーッとお願いします!!」
僕がアスナさんを見ると、アスナさんは『しょーがないわね』と言った。
カモ君の方を一度だけ見た後、僕は壁から茶々丸さんの前に姿を見せた。
「茶々丸さん」






SIDE 絡繰茶々丸

正直、私は驚いていました。
最初はどこの誰が私の癒しタイムを邪魔したのかと思いましたが、やけに聞いた声だったので振り向いたところ、そこにはネギ先生と神楽坂さんがいたのです。
驚きと同時に素早く現状の把握を行います。
現状、ネギ先生はマスターと敵対しているので私のことは敵、と向こうは認識しているはずですが。
こういう風に話しかけてくると言う事は何か裏があると言う事でしょうか。
そう考えた時、私の頭にマスターの言葉が浮かんできました。


『ネギ・スプリングフィールドに助言者がついた可能性がある。しばらく私の傍を離れるなよ』


その意味が、ネギ先生が私個人を攻撃してくるという事ですか。
確かに、戦術上このやり方は当然且つ順当です。
敵が自分の勝てない強大な力を持っているのならば、その戦力を削る事で少しでも自分の勝率を上げるしかありません。
ネギ先生にとって強大な敵とはマスターで、戦力は私です。
なら、私を倒しにくる事には何の疑問もありませんが……潔白に見えたネギ先生がこのような卑怯とも言える行動を取って来たのは意外でした。
いえ、むしろそれを想定していなかった私やマスターが甘いと言わざるを得ないのでしょう。
後日、それをマスターと共に反省する事を誓いながら、私はとりあえずお二人を刺激しないように無難な挨拶をすることにしました。
「こんにちは、ネギ先生、神楽坂さん」
改めて二人を見て、猫と戯れているせいで警戒を怠った自分が愚かしく思います。
偶然ばったり出会ったなんていうことはありえないでしょう。
おそらく、少し前から尾行してきたはずです。

……つまり、私はそれにも気付けないほど油断していたと言う事です。

ネコのせいにするわけでは決してありませんが、そちらに気をとられすぎていました。
思考を素早く戦闘モードに移行させます。
「油断しました。でも、お相手はします」
ここで逃げればマスターの名前に傷がつきます。
闇の福音、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの従者は子供の攻撃に逃げ帰るほど弱いのだと。
私が罵られるのは構いませんが、マスターがそう言われるのは我慢なりません。
マスターの名前に傷がつくと言う事は絶対に避けなければならないのです。
ネギ先生は申し訳なさそうに私に向けて話しかけてきます。
「茶々丸さん、あの……僕を狙うのはやめていただけませんか?」
やめれば、それはマスターの意思を否定すると言う事になります。
裏切ることはできません。
「申し訳ありません、ネギ先生。私にとってマスターの命令は絶対ですので」
私はマスターのために戦います。
降伏は絶対に認められません。
「ネギ先生がこうして抵抗するなら、迎え撃つのが私の使命です」
「ううっ、仕方ないです……」
その台詞の直後、ひそひそ話を聞き取りました。
この程度の距離のヒソヒソ話なら聞き取ることは簡単です。
その会話を聞きとってみると、
「アスナさん、さっき言った通りに……」
「うまく出来るかわかんないよ」
何やら作戦が在る様子。
私は会話の内容からはその作戦の内容は判断できなかったので、攻めるよりも何が来るのか備える事にしました。
「……では、茶々丸さん」
「ごめんね」
「はい」
どこか申し訳なさそうな二人に、私は淡々と構えて戦闘開始の意を告げました。
「神楽坂明日菜さんですか……いいパートナーを見つけましたね」
ぼそり、と呟いたその一言は聞き取られなかったようです。
ネギ先生は杖を構えると叫びました。


「行きます! 契約執行十秒間! ネギの従者『神楽坂明日菜』!!」


ドンッ!と神楽坂さんが飛び出して来ます。

速い。

常人とは思えない速度。
慌てて神楽坂さんの動きに合わせてカウンターを繰り出そうとしましたが、その腕が内側から払われます。
それを冷静に把握した私はその勢いを殺さずに、むしろそれを利用して回転。
身を翻す。
体重を乗せた回転蹴りを神楽坂さんに当てようとしますが、神楽坂さんはやはり恐ろしい反射神経でそれを避けました。

バウッ!!と私の蹴りが空を切ります。

その隙を狙って神楽坂さんが踏み込んできますが、所詮は素人の間合い、腕を突き出してくるのは見えています。
アクセラレータさん、ミサカさんとの戦闘の蓄積データがあれば、その程度の攻撃を見切るのはたやすいことです。
その腕を払いのけながら体当たり。
ほぼゼロ距離での突進攻撃に神楽坂さんが吹き飛びます。
一応人間に似せられている私ですが、人間とは違う素材でできているので、私が身体自体でぶつかることは普通の人間がぶつかるよりもかなりの威力となります。
その結果も当然でした。
「きゃあああっ!?」
「うわあっ、アスナさん!?」
吹き飛んでいった先にはネギ先生が。
アスナさんを受け止めましたが、その勢いを受け止めきれずにごろごろと転がっていきます。

チャンスです。

一網打尽にしてくれます。
バシュッ、と私は肘にあるブーストの調子を確かめ、ブーストパンチの準備を行います。
神楽坂さんならともかく、ネギ先生は魔法使い。
障壁も持っているでしょうし、多少殴っても平気でしょう。
殴り殺すことはできませんし、ボコボコにして戦意を喪失させた隙を狙って逃げ出すことにします。
それなら負けではありませんので。
そのまま私はブーストを起動して突っ込んでいく。
「やばい、兄貴! ちょっと向こうむいててくれ!」
すると、私の目の前に何か小動物が飛び出てきました。
この動物は……おこじょ、でしょうか?
マスコット化したら良さそうですね、と今の状況とは全く関係ない事が頭によぎった瞬間、目の前のオコジョが何かを取り出しました。
あれは……マグネシウム?



「こんなこともあろうかと!! 必殺、オコジョフラーーーッシュ!!」



ビカァ!!と私の視界が光に染まりました。
その強烈な光に私の視界が利かなくなり、思わずよろけます。
「目潰し……こんな手が」
神楽坂さんからの追撃から逃れるために、私は後ろに跳びます。
ビュン、と何かが過ぎた音。
おそらく神楽坂さんの一撃でしょう。
「惜しい!」
さっきは視界が利かなくなってパニックになりましたが、私には探索機能があります。
カメラが故障してもまだ戦えます。
目を閉じたまま、突っ込んでくる神楽坂さんを迎え撃ちます。
「ええっ、め、目を閉じたまま!?」
気絶させるつもりで神楽坂さんにストレートを放ちますが、神楽坂さんはやはり反応して避けます。
持ち前の反射神経は称賛に値します。
まるでミサカさんと戦っているような気がします。
ミサカさんも最初から反射神経は優れていました。
このように避けられてしまう事が多く、当初は悩んだものでした。
その悩みをマスターに相談したところ、それを解決してくれる言葉をかけてくれました。
『避けるのは、それだけ攻撃が届く時間に余裕があるからだ。見切るだけの余裕を与えないようにすればいい。つまり―――』


ドンッ!!と私は神楽坂さんの懐に、低い姿勢で踏み込みました。


つまり、超接近戦。
ボクシングで言えばインファイト。
確かにこの距離でも避けるプロはいますが、ストレートなどという避けやすい攻撃よりも、こちらの方が格段に避けづらくなります。
手数でかく乱して隙を見ての一撃で勝負。
それに、と私はネギ先生の方を窺います。
魔法の呪文を唱えているようですが、ネギ先生と私の間には神楽坂さんがいます。
下手に魔法を使えば神楽坂さんにも当たる可能性がある以上、ネギ先生は封じたも同然です。
ビュッ!と神楽坂さんの手が私の横を過ぎます。

構えは拳ではなくデコピン。

殴るのは抵抗があるからだと思いますが、その程度で私を止められるとは思わない事です。
突き出された神楽坂さんの腕の内側に腕を刺しこみ、内側から腕力に任せてその腕を弾き飛ばし、体制を崩させます。
よろめいた所で脚を払い、一歩踏み込んでその体を少し押しました。
それだけで神楽坂さんはぐるんと脚を振り上げて回転することになります。
「きゃっ!?」
ばたり、と倒れる神楽坂さん。
これくらい受け身を取れると思ったのですが。
そう思っていると、あのオコジョと思しき声が聞こえました。
「しまった、契約執行が切れた! だから中途半端なのはダメだっつったのに!!」
契約執行……もしかして魔力供給のことでしょうか。
それについての考察は後にすることにして、私はネギ先生を無力化するために接近します。
既に詠唱が完了しているネギ先生は、こちらをまっすぐに見ながら杖を振り下ろしました。


「魔法の射手・連弾・光の11矢!!」


魔法の矢が風を切って私に迫ってきます。
私は自分の頭の中にあるコンピュータで計算を始めました。
「(追尾型魔法至近弾多数……)」
ガシュッ!!と背中のブースターを展開。
そこにエネルギーを溜めていき、加速の用意。
魔法の射手は目標に追尾していきますが、逆方向に切り返して追尾することはできません。
追尾性能はなかなか良い魔法ですが、どこまでも相手を追ってくるわけではありません。
ただ、今このまま待ちかまえていれば魔法の射手は前方から私を覆うように展開して逃げ場をなくすでしょう。
ならば、


魔法の射手の弾幕に隙がある内に、その間を突っ切ります!!


ブースター出力全開。
一気に加速して魔法の射手の間をすり抜けます。
ギュキュギュギュ!!と私の髪、服、肌を掠って後方に抜けていく魔法の射手。

一発、直撃。

左の肩……大したことはありません。
無理矢理に加速して突き進む。
魔法の射手の弾幕を抜け、唖然としているネギ先生に肉薄します。
右の拳を握ります。
アクセラレータさんには及びませんが、せめて本家の実力を示します。
これが元祖です。



「『ジェット・パンチ』」



ゴンッ!!とネギ先生の障壁に私の拳が激突します。
拳を押し返してくる障壁の存在が鬱陶しい。
それごと叩き潰す勢いで、私は拳を振り抜きました。
ネギ先生が私の拳に吹き飛ばされるのが見えます。
そのまま転がっていきました。
「あ、兄貴ーッ!!」
「ネギ!!」
木に叩きつけられるネギ先生。
殴った拳に異常がないか確かめてから、肩の損傷具合を確認します。
自分で修理は可能な程度の損傷ですが、無理は禁物ですね。
転がったネギ先生に駆け寄る神楽坂さんとオコジョ。
ネギ先生は立ち上がりながら、口についた血を袖で拭います。
「大丈夫です。まだやれます……!」
立ち上がったネギ先生にホッとして、神楽坂さんとオコジョが胸をなでおろしていました。
「しかし何てヤロウだ。魔法の射手の弾幕を真正面から突破するなんてな……」
「どうするの、ネギ?」
神楽坂さんがネギ先生の前に立ちました。
パートナーとして、主の前に出るのは素晴らしいと思います。
二人と一匹がいる前で、私は言い放ちました。
「これで終わりなら、引いてください。今度は加減ができないかもしれません」
そう言って手袋を引っ張って威圧します。

これは正直に言うと、嘘です。

ネギ先生の障壁は予想以上に頑丈で、今のパンチを何度か当てないと抜けそうにありませんでした。
ここでハッタリをかけておかないと、ジリジリと持久戦になりそうですし。
そうなれば負傷している私が不利です。
このままネギ先生が引き揚げてくれれば良いのですが……。
そう思っていましたが、ここでオコジョが。
「兄貴、向こうはそう言ってるが、左腕を怪我してるんだぜ? 畳みかけるんなら今しかねえ!」

……ネギ先生よりも姑息な分、厄介ですね。

ネギ先生の方を見ると、どうも攻めてくるようです。
なんだか、目がそう言っている気がします。
「……アスナさん」
「わかったわよ……やればいいんでしょ」
短く応じる神楽坂さん。
そっけないですが、それでも応じるのは従者として優秀だと思います。
私が構えると、ネギ先生は呪文を唱えました。


「契約執行二十秒間!! ネギの従者『神楽坂明日菜』!!」


先ほどよりも十秒長い。
さっきよりも長い詠唱を必要とする魔法でしょうか。
しかも、先ほどよりも詠唱が速い。
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!」
そして、今度は覚悟を決めたのか神楽坂さんが踏み込んできました。
その手はグーに握られています。
雪広さんと喧嘩している時の体術のレベルは相当なものなので、その気になった神楽坂さんは用心する必要がありそうです。
「茶々丸さん、結構マジで行くよ」
「なら、そのつもりでお相手します」

ドガン!!と拳と拳がそれぞれの腕により防がれます。

しかし、それだけでは終わりません。
私には人間にはない特徴、ブーストがあります。
組み合ったまま、それを起動して無理矢理に神楽坂さんの腕を弾き飛ばしました。
持ちこたえようとする神楽坂さんですが、その時に絶大な隙ができます。
今ならネギ先生の魔力による防御もありますから、さほど心配をする必要はないと思い、『ジェット・パンチ』を繰り出します。
神楽坂さんは腕をクロスさせてガードしましたが、それで受け流せるほど私の拳は甘くありません。
そのまま吹き飛ばしました。


「風精召喚! 剣を執る戦友!! 敵を撃て!!」


あれは、マスターを無力化させる直前に使った精霊召喚魔法。
分身を召喚する魔法ですか。
なるほど、多数に頼ると言うわけですね。
それで呪文の詠唱時間を稼ごうと言うことか、それとも私にダメージを与えるつもりか。
どちらにしろ、まずこの風精を倒すことから始まりますが。

迫りくる風精は五体。

それぞれ槍や剣を持っていますが、神楽坂さんよりも動きは遅いのでカウンターをすることは簡単です。
まっすぐ突っ込んでくる風精の槍を避け、踏み込んで顔面に一撃。
粉砕します。
ぐにゃりと不自然な仕草で右に回ってくる風精に向かって、ロケットアームを繰り出して吹き飛ばします。
左腕を巻き取りながら、背後から迫る剣の攻撃を右に移動して避け、その隙を狙ってきたもう一体を右腕のロケットアームで吹き飛ばす。
両腕を巻き取って、前から迫ってくる風精の攻撃をさっきと同じように避けて蹴りを加え、粉砕します。
最後の一体は、四体目を囮にするようにして突っ込んできましたが、私の敵ではありません。
一体目とおなじようにカウンターで粉砕し、ネギ先生の方に向きます。
「つ、強ぇ……兄貴、早く!」
「闇夜切り裂く一条の光! 我が手に宿りて敵を食らえ!!」
バヂバヂ!!とネギ先生の手が放電しています。
雷系統魔法……魔法の射手よりもかなり上位の魔法ですか!
突っ込むことは得策ではないと判断し、ネギ先生の仕草から直前に避けようと試みますが、後頭部に衝撃。
がくんっ、と顔が下を向きます。
慌てて後ろを向くと、そこには神楽坂さんが『してやったり』とでもいうような笑みを浮かべていました。


「今よ、ネギ!!」


神楽坂さんが横に跳びます。
その神楽坂さんに気を取られて反応が遅れました。
私も慌てて避けようとしますが、ネギ先生の目はこちらをとらえて離れません。
非常に、まずい状況です。
なんとか逃げ出そうとしますが、完全に捕捉されています。
奔る稲妻は真っ白で、ミサカさんの電撃によく似ていますが、私がいつも手加減されて食らうそれとはワケが違う事がわかります。
私は、壊れてしまうのでしょうか……。
ネギ先生が杖を振り下ろします。
「白き雷!!」
その強烈な電撃が私を飲みこもうとした―――その瞬間。



ドゴズドズドッ!!と私の前に鉄骨が突き刺さり、それが盾になって白き雷を防ぎました。



電撃が鉄骨に流れ、私の方には電撃は届きませんでした。
しかし、鉄骨?
工事現場にしかなさそうな無骨なそれが、どうしてこんな所で、こんなタイミングで?
そう思っていると、ザッ、と誰かが公園の入口に現われました。
僅かに見える夕日を背負っているのは、私よりも小柄な姿でした。


「ネコが珍しく私に近づいてきたからおかしいと思えば、こんなことになっていたのですか、とミサカは電撃をバチバチ鳴らします」


そこにいたのはミサカさんでした。
片方の手には私とは違う銘柄の猫缶がありました。
予想外の人物の登場に、神楽坂さんが狼狽します。
「ええっ、み、ミサカさん!? どーしてミサカさんが……!?」
ミサカさんは神楽坂さんの言葉に応じることなく、無言で歩みを進めてきます。
「ぞ、増援か!? まずいぜ兄貴、ここはトンズラぶっこくに限る―――」
「少し黙っていてください」

ドバン!!と雷が炸裂しました。

先ほどの白き雷よりも強力な雷。
それは白いオコジョを撃ち抜き、その毛皮を真っ黒にさせました。
ぽてっ、と地面に落ちるオコジョ。
ミサカさんのことですから恐らく死んではいないと思いますが……まぁ、しばらくは目が覚めないでしょう。
「か、カモ君!?」
「って、ええっ!? 今の、魔法!? ミサカさんも魔法使いだったの!?」
それぞれ騒いでいますが、ミサカさんは答える気がないようです。
その目はメラメラと燃えており、少し釣り目になっていました。
「制圧しましょう、とミサカは茶々丸さんに呼びかけます」
「―――はい、ミサカさん」
ミサカさんは怒っています。
チラリと私の破損した左肩を見ていたのがわかったので……自惚れかもしれませんが、私が傷ついていることに怒ってくれているのだと思います。

なんだか、それが嬉しいです。

回路が、熱い。
嬉しくて、そのまま燃えてしまいそうです。
オコジョがいきなり黒焦げにされて唖然としている神楽坂さん、ネギ先生に、私とミサカさんが踏み込みます。
ガシュッ、と私は右腕の具合を確かめ、
バヂリ、とミサカさんは火花を散らします。



「『ジェット・パンチ』」

「崩拳」



ゴシャアァッ!!とそれぞれの拳が炸裂し、食らった方はゴロゴロと地面を転がって停止しました。
そのまま動かない所を見ると、気絶したようです。
ミサカさんは私と同じ結論に達したのか、火花を散らすのをやめました。
そしてネギ先生の体を担ぎあげます。
更に砂鉄を使ってオコジョを捕まえ、それを手錠のようにくくりつけて磁力で引き寄せます。
パシッ、とボールでもキャッチするかのようにミサカさんはオコジョを握りました。
「茶々丸さん、早く撤退しましょう、とミサカは急かします」
「は……? どうしてでしょうか?」
「少し派手にやりすぎましたし、その肩も露出したままではまずいと思います、とミサカは指摘します」
確かに、機械部分を露出したまま行動するのはよくありません。
ただ、私が聞いたのはどうしてネギ先生を担ぎあげたかについてなのですが……。

……ミサカさんにも考えがある、ということでしょう。

助けられましたし、ミサカさんに従う事にします。
気絶した神楽坂さんを担ぎあげ、ミサカさんと一緒に走り始めます。
夕日も暮れ、もう暗くなり始めているので、あまり人目につかない所を猛ダッシュすれば他人に気づかれることなく目的地に向かう事ができます。
それに、もう言わなくても目的地はわかっています。
ミサカさんが困った時に向かう所は一つしかないからです。
彼に迷惑をかけてしまうのは心苦しいですが……この場合はしょうがないですか。
それよりも、と私は遅まきながらお礼を言っていないことに気づきました。
「ミサカさん。危ない所を助けていただき、ありがとうございました」
そう言われたミサカさんは驚いた顔をした後、慌てて前を向きます。


「……友達ですから、当然の事をしたまでです、とミサカは応じます」


感情表現が乏しい私にもわかります。
ミサカさんは照れています。
そういうミサカさんを見るのが珍しくて、なんだか面白く思ってしまいました。
しかしからかうのはよくないので、私は話を切り替えることにします。
「この二人を倒すのはわかりましたが、どうして持って帰るのですか?」
そう質問すると、ミサカさんは照れを隠すためか、焦ったように答えました。
「あの場に放っておいたら風邪をひいてしまうかもしれませんし、とミサカは敵に砂糖を送ってみます」
「それを言うなら塩ですよ」
「…………、とミサカは沈黙を守ります」
もう何を言ってもダメになりそうなのか、ミサカさんはそのまま黙りました。
私も面白かったのですが、これ以上からかうと危ないことになりそうなので、やめました。
前を行くミサカさんの背中を見て、ふとこのようなワードが頭の中に浮かびました。


友達とは良いものですね、と。







~あとがき~

茶々丸VSネギ&アスナ編の前半が終了、といったところでしょうか。
意外とバトル回ではこれまででこれが最長だったりします。
まさかここまで長引くとは……以前のプロットのまま行くと次で吸血鬼編終わってる予定なんですけど、とても終わりそうにないですねwww
徐々に展開を付け加えたりしているのでもう以前のそれとは別物に……迷走しないように気をつけます。
展開を進めるのが遅い作者ですが、長い目で見てくだされば幸いです。

今回、茶々丸はアクセラレータの実験台になったりミサカと戦って経験を積んだため、かなり強く設定しました。
原作の茶々丸はおそらく実戦の経験はあまりなかったのでああいう結果になったのだと思います。
アスナの突発的な動きに対応できなかった辺りとか、特にそう思います。
今回はその油断をなくし、更にネギ君もちょっと強化したおかげでバトルが派手になりました。
ネギ君が原作のままだったら茶々丸無双で終わってたと思います。
ですが、突発的な事態に弱いのはいくら強化されているとはいえ実戦経験がほとんどないネギとアスナも同じで、ミサカ登場に動揺した所をバッサリやられてしまいました。
あっさりとしすぎた感がありますが、最後くらいはさっぱり必殺技で終わりたかったんです。すみません、作者の趣味です。


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