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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第32話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:da7c297e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/30 00:28
SIDE 一方通行

超が俺の家に来て色々と御馳走してくれてからしばらく経過した。
現在、俺はエヴァの別荘に来ている。
もちろん研究もあるのだが、今はそれよりもミサカの修行が主な理由だ。
前方ではエヴァに頼んで組み手をやってもらっている。
対価は特にいらないらしい。
ミサカも俺以上に薬漬けだということを話すと、もう吸う気も起きないようだった。
となると、珍しいミサカの戦闘方法などを経験したいのだろう、と思う。
吸血行動なしで魔法を行使するのは疲れるだろうから、その辺りには感謝しなければならない。
「はははははははッ!! 一方ミサカ、それが貴様の実力か!? それ茶々丸、右に追い込め!!」
「了解しました、マスター」
「くっ……ミサカは負けません、とミサカは少年誌ばりの熱血で対抗します!!」
今はこんな風に安っぽい熱血戦闘を行っている。
実際行っているのは雷と氷と拳が飛び交う戦場ではあるのだが。
だが、どうやら魔法障壁がある分エヴァが優勢のようだ。
流石に魔法障壁をブチ破るには雷撃などでは埒が明かないらしく、色々とミサカも経験になっている様子。
俺はスクワットをしながらその光景を眺めていた。

ミサカが強化されているのが目立っているが、一応俺も進歩はしている。

とは言っても、失敗と成功の繰り返しだ。
肉弾戦の強化について今現在力を入れているのは『ジェット・パンチ』を応用した超高速戦闘である。
『ジェット・パンチ』は茶々丸のように疑似的なブーストを行って威力を増幅させる攻撃方法だが、これを全身に応用し、行動一つ一つを『ジェット・パンチ』並みに加速させることはできないだろうかと考えた。
前にもそれは言ったかもしれないが、それについての進展を報告すると、最高で11連撃。
これは俺の細かい動作にいちいち『ジェット・パンチ』と同じ演算をやっていると演算が追いついてこないのだ、ということを意味している。
なんとかこの限界を突破できないだろうかと考えているが、最高速での連続攻撃は11発が限界だったのだ。
もちろん、合間に僅かな休憩があればまるで連続で繰り出しているかのようなことができるが、プロはその隙を見逃したりしないだろう。
まあ、反射があるのでカウンターされるのがオチだろうが。

近接戦についてはこの超高速戦闘を主軸に据えることにし、遠距離戦についてはどうするか、ということを考えた。

どんな遠距離にいようが疑似的な虚空瞬動などで瞬時に間をつめたりすることで接近戦に持ち込むことはできるが、俺には一つ足りないものがある。
それは千の雷のような広範囲攻撃だ。
高電離気体でもなんとかなるが、やはりそれ以外に何かないか考えなければならない、と思って考えているのだが、やはり思いつかない。
せいぜい思いついたのは太陽の光を収束させて極太ビームを撃つか、広範囲の重力をかき集めてクウネルのような重力魔法を放つくらいしか思いつかない。
ナ○シコのように重力波レールガンとかも考えたのだが、あれも扱いを間違えるとものすごいことになりそうだからなぁ。
無論、龍宮の羅漢銭方式でただのレールガンのようなものを撃つこともできるが、あれは広範囲攻撃とは言い難いし。
簡易的な遠距離攻撃方法としては、やはり大多数に対しては高電離気体でブッ潰すのが一番手っ取り早いんじゃないかと思うのだ。
もっとも、そこら中で雷の暴風とか撃たれたら風の制御を誤るかもしれないので、安定性を考えると重力なのかと思ってしまう。
たいていの相手は近接攻撃で仕留めてしまうので、現在は空気を収束させて集団のいる中央でそれを開放して爆風を吹かせ、それで接近する隙を作る、と言う風に活用することで遠距離攻撃の意義を見出している。
と言っても、これは広範囲攻撃じゃないし、やはり根本的な解決には至っていない。

もっとアイディアが欲しい、と思う。

しかし、いくらアイディアがあっても時間がなければできないし、場所がなければ尚更できないのが現状だ。
やはり派手なそれは別荘でブチかますに限るし、俺は良いがミサカの場合は屋外では流れ弾がどこかに当たる可能性だってあるからな。
好き勝手できる場所と言うのは、やはり別荘だ。
利用回数から考えると、おそらく俺はそろそろ別荘内にいる時間は1年くらいになると思うし、ミサカは数カ月くらいだ。
そう考えると、俺って案外のんびりしてたということがわかる。
1時間で1日なら、1日入っていれば24日だからな。
その気になればすぐに一年なんぞ経ってしまう。
俺も無暗には使用してないからかな。
俺がスクワットをしている隣で、チャチャゼロが酒をあおりながらつまらなそうに短剣をジャグリングしていた。
「オウ、アイツ、俺ニモ戦ラセロヤ」
「また今度な。俺で我慢しろ」
「オマエトヤンノハオモシロクネーナ。全部通ジネーカラヤリガイガネーヨ」
そりゃそうだ。
チャチャゼロには俺の反射を破ることはできず、自分の体をバラバラにされて終わるのが常である。
最初にここで戦闘した時、実際にそうなってしまい、それ以降は別荘でエヴァ秘蔵の酒をちょくちょく持ち出して来ては俺に勧めに来ている。
彼女だか彼だか知らんが、どうもコイツ的にタカミチは人間的に面白くなかったらしく、タカミチと考えが違う俺の話が面白いらしい。

そこで、バヂィッ!!とミサカの電撃が迸る。

それに照らされ、一瞬世界がモノクロになった。
「派手にやってンな。ミサカも溜まってたのか?」
「俺ニ聞クナヨ。マー、アノ調子ジャ楽シンデンジャネーカ? 俺ニハイキイキシテルヨウニ見エルゼ」
俺はミサカの方を見やった。
ミサカは今、制服から着替えてジャージ姿になっている。
初めは体操服だったが、ボロボロになってしまってからジャージにしたのである。
エヴァと茶々丸と一緒にドンパチしている様を肴に、ポテトチップスをバリバリと貪る。
口の中にあるそれを飲み込みながら、俺は再び思考に戻る。

この間の超とミサカがモメた件だが、結局俺はほとんど手出しをしなかった。

やはり本人同士の問題に介入するつもりはないし、それぞれで解決してほしいと思う。
何か困ったことがあればアドバイスはするつもりだが、何やらこのごろ超とうまくいっているようなのでそれも必要ないようで。
なんだか少し寂しかったりする。
……なんだろうか、この感覚。
娘が親離れした時の父親の気持ちってこんな感じなんだろうか。
微妙だ。
手間がかからないので嬉しいのもあるが、やっぱり何か頼ってほしい所もある。
微妙と言うか、複雑と言った方が正しいか。
……話を変えよう、なんか鬱になってくる。
そういえば、時期的にそろそろ『桜通りの吸血鬼事件』が有名になり始める起こる頃である。
原作にもう入っている事だし、ミサカも修学旅行までにできる限り強化しておかなければならないと思う。
いつ巻き込まれるかわからんからなあ……強化しておくことに越したことはない。
今のままでも十分強いが、弱点がなくなったわけじゃないしな。

さて、これまでのミサカの成長具合を比較してみよう。

まず、ミサカは超能力者であるが、どうやら向こうの訓練では電力、磁力の制御に重きをおいていたようで、能力を戦闘に応用して対人で使った事はあまりなかったようだ。
体術については組み手をやっていたようだが、あくまでそれは向こうの世界の話であり、こちらのトンデモ肉弾戦には対抗しきれない。
素では古菲どころか超にも勝てないらしい。
まあ、軍用強化服とかを着ていたとはいえ、原作ではあのネギを苦戦させた人間だ、勝てと言うのがそもそも無茶か。
というわけで、ミサカには肉弾戦などの経験についてはそこそこあるが、能力を併用した戦闘はあまり経験がないのだ。
更に魔法使いとの実戦のカンというものが養われていないから、相手の攻撃の予測ができない。
つまり、後手に回ってしまうと言う事だ。
先制攻撃をされれば防御力、機動力の低さから勝利することは難しくなる。
先読み、という技術はミサカには必要なものであった。

そのために、俺はミサカに戦闘を経験させることにした。

目の前ではさっきも言ったようにエヴァと茶々丸VSミサカという戦闘が行われている。
一週間前から導入された実戦による能力の成長を促すという方法を取ると、瞬く間にミサカの能力制御技能は向上していった。
まずミサカの主兵装となる雷の槍はエヴァに言わせると、一撃一撃が魔法の射手よりも遥かに上の威力を誇るらしい。
実際エヴァと魔法の射手で打ち合うと楽々と魔法の射手を打ち消していたし。
今もそうだ。
「魔法の射手・氷の24矢!!」
ドビュ!!と飛び出すエヴァの魔法の射手。
氷の矢をミサカは瞬時に察知して弾道を予測、雷の一撃で最大限その数を削り取る。
更に茶々丸に電撃を放って牽制し、残る4つの矢を素早く避ける。
ドスドスと突き刺さるそれに目もくれず、接近してきた茶々丸を迎え撃つ。

さて、今までの思考に戻ろう。

超電磁砲は言うまでもなく、雷の暴風以上の威力を誇る遠距離砲撃方法だとエヴァが言っていた。
つまり、ミサカのポジションは魔法使い寄り。
究極的には砲台と言える魔法使いに相応しい火力を備えているのである。
更に、ミサカは実戦でいろいろと応用方法を学んでいた。
雷撃、超電磁砲だけではなく、拳による肉弾戦も交えて拳や雷撃をフェイントにするという武術を編み出した。
拳を避けて油断している間に雷撃を叩きこむ。

その逆も然り。

雷撃というのは特に手や指から発射する、という限定条件があるわけでも無い。
その気になれば足の裏からも発射できるので、背後から来た時も振り向くことなく迎撃することだって可能なのだ。
その気配に気づかなければならない、という条件が付くが。
しかし、近距離であの雷撃は俺の意識加速を使った状態でも完璧に避ける事はできないだろう。
何しろ光った瞬間食らっているのだから洒落にならない。
防御方法は障壁で受けとめるかゴムにでもなるしかない。
近距離での雷撃も脅威だが、ミサカの武器は雷撃などの電気系統だけではない。
磁力を使って砂鉄を操ることもできるのだ。
砂鉄は時に盾となり、時に矛にもなる便利な代物だ。
遠距離からの防御には砂鉄の盾を使い、近、中距離での迎撃は雷撃か砂鉄の槍を使う。
砂鉄自身が高速震動していて、鉄すら容易にたたっ斬る。
柱を一つ簡単になます切りにした時は俺も頬を引きつらせたもんだ。
こう言うタイプの奴が原作にいたような気がする。
カゲタロウとかいう奴だったか。
影の槍を想像してくれれば良い。
あんな感じだ。
もっとも、あまり操れる数は多くないけどな。
ミサカが言うには雷撃と砂鉄を同時運用することはどうも不可能のようだが、それでも十分に脅威な能力である。
改めて学園都市『第三位』の能力のトンデモなさを実感した瞬間だった。


超電磁砲による遠距離攻撃。

雷撃、砂鉄の槍による中距離攻撃。

雷撃を混合した武術による近距離攻撃。

地形で限定されるが、砂鉄による防御方法まで持っている。


どの距離で対抗しても厄介な相手だった。
ある意味、タメが長い超電磁砲と向き合う方が無難かと思う。
中、近距離はかなり厄介だから。
だが、だからと言って600年生きている真祖の吸血鬼は伊達ではなく、茶々丸との連携攻撃でミサカを追い詰めている。
なまはげの名は伊達じゃない。
「フッ」
しかし、ミサカは一人で魔法の射手を迎撃しながら格闘ができる人間だ。
茶々丸がブーストを使い瞬時に横に移動し、それと同時にミサカの真正面から魔法の射手が迫る。
ミサカはそれを雷撃で迎撃し、同時にしゃがんで茶々丸に足払いをかけた。
急激な目標の上下移動に魔法の射手の追尾機能がミサカを追いきれず、迎撃しきれなかった僅かな魔法の射手がその頭上を通り過ぎていく。
茶々丸は足払いを垂直に飛んで避けながら、空中でくるりと回転し踵落とし。
ミサカは膝を曲げて受け止め、その衝撃を受け流しながら、バチリと放電。
「ッ!?」

バヂィッ!!と雷撃の槍が茶々丸に直撃する。

だが、タカミチに放ったそれよりもかなり威力が小さいことはわかる。
まあ、フル出力のそれだったら茶々丸が壊れてしまうからだろう。
茶々丸は体術ではミサカの上を行くが、能力を交えた戦闘能力では遥かにミサカの下だ。
茶々丸が崩れ落ちると、エヴァが氷爆を唱えた。
氷結すると同時、砕け散る氷。
ミサカは電撃を放ってその電熱で氷を蒸発させてそれを防ぐ。
しかし、その衝撃波は受け流せずに更にエヴァから突き放されてしまった。
ミサカはそこから電撃を放つが、エヴァの障壁に弾かれる。
それはずっと前から見ていた。
エヴァの障壁が堅牢だと言うのは前々からミサカも知っているだろうし、それが牽制であることがわかる。
本命は、もっと絶大な威力の攻撃。
その手に握りこんでいるのは例のコインだろう。
だが、ただ遠距離で撃ってもあたりはしない。
スピードが普通の人間の常識を超えるこの世界において、効果範囲の狭い攻撃は非常に当てづらい。
だから、ミサカはアレを体得する必要があった。
ミサカはエヴァの氷爆を雷撃で相殺しながら、ガッ、と足を前後に開く。
素早く、エヴァに詠唱される前に。
そして、ミサカの姿がそこから消えた。
ほぼ同時に、エヴァの背後でギュギュギュ!!と車がドリフトするかのような音。


瞬動である。


タカミチから気の制御について教えてもらうと、その持前の勤勉さを発揮し、自己解釈などもして気の制御の勉強などを行っていたのだ。
まあ、だからと言ってこんなに早く体得するのは才能だと思う。
実際、気による身体強化もそこそこで瞬動を体得するのは難しいだろうに、それっぽいのをミサカは体得したのだから。
そして、俺が『それっぽい』と表現するように、それはまだ未完成であった。

「……行きすぎたようだな」

エヴァの言う通り、エヴァの背後に出現していたはいいものの、ミサカはエヴァと背中合わせになってしまっていた。
ミサカはハッとして振り向くが、もう遅い。
エヴァの魔力を纏った拳が振り下ろされ、衝撃波が吹き荒れた。
吹き飛ばされ、柱に背中から叩きつけられるミサカ。
俺とチャチャゼロはその突風を反射し、またそよ風のようにやり過ごしながらミサカがずるずると柱の下にへばっていくのを眺めていた。
それを見たエヴァがにやりと笑いながらミサカを見て、それから俺の方にやってきた。
ミサカは放置だが、いつものことなのでスルーする。
「どォだった?」
「かなり上達のスピードが速いな。それに筋もいい。このまま鍛えていけばいずれ対人戦闘に関してはかなりの実力になると思ってもらって良い。実際、茶々丸を倒しているからな」
茶々丸はダウンしていたシステムが復旧したのか、ぎこちない動きで立ち上がりながらこちらに向かってきていた。
それを一瞥し、俺は意外そうに言った。
「へェ? そこまで絶賛するのかよ」
エヴァがここまで誉めるのは珍しいことだ。
ふん、とエヴァは照れ隠しに鼻を鳴らす。
「欠点とすれば瞬動の制御が自由に利かないことと、超電磁砲の使い勝手が悪いこと。そして奴自身の防御力が凄まじく低いことだな。気である程度防御力は上がっているとはいえ、柱に叩きつけられた程度で気絶していては話にならん。やはり近接戦に持ち込むのは無謀だろう」
「で、長所は?」
「あの雷撃による弾幕を張られれば並みの魔法使いでは耐えきれまい。光もあるし、雷撃氷爆と相殺させて目潰しに使ってから瞬動に入るプロセスも悪くはなかった。まあ、強力な前衛がいればその有能っぷりを発揮することができるだろうな」
「なァるほど。ま、テメェのお墨付きが貰えりゃ確実だな」
俺がそう頷いていると、エヴァが意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「そう余裕をこいていていいのか? 能力を使わない体術だけなら一方ミサカは貴様の上を行くかもしれんぞ」
そんなもん、もうはっきりしてるだろうが。

能力を使わないのなら、瞬動やら気の強化が使えるミサカに俺が勝てるわけないだろう。

あくまで俺の無限瞬動やらは能力があってのものだし、それがなければ俺は普通の一般人の身体能力しか持っていないのだ。
「そこはゆっくりとやンだよ。俺も万能じゃねェ、やれることとやれねェことの区別くらいついてる」
「まあ、反射を使う貴様なら近距離戦に対してはほぼ無敵だがな」
「さァてな」
ここで言葉を濁したのは反射についての弱点をエヴァに知られたくないからであり、それを知られていたのなら『無敵』ではなく『最強クラス』と答えておいただろう。
俺はポテチをバリバリ噛み砕きながら、能力についての話を変えるためにエヴァに尋ねた。
「ネギ・スプリングフィールドに対してのことはどうなンだ? 桜通りの吸血鬼についてはそこそこ噂は広まってるみたいだが」
「それは順調だ。計画通りにやるさ」
エヴァの計画については少し前に聞かされた。
登校地獄のこともかなり前から聞いているし、それから解放されるためにネギの血を頂くとのことだ。
ジジイもエヴァを踏み台にさせるつもりだが、エヴァがそんな奴だとは絶対に思っていないはずだ。
おそらく、ネギに負けを経験させ、それで成長してほしいとでも思っているんだろう、とエヴァは言っていた。
常識的に考えてエヴァがただジジイに従うなんてことはありえないし、ジジイもそこら辺は覚悟しているんじゃないかと思う。

ネギからすればたまったもんじゃないだろうが。

一か月前に計画についての話をされた時は正直遅いと思ったが、俺がそういうことに首を突っ込みにいくような人間じゃない事を見抜いての事だろうと思う。
邪魔されたくないんだろうし、俺も邪魔するつもりはない。
何のために邪魔するんだってことだ。
ミサカにもそのことはエヴァから伝えられたため、桜通りの吸血鬼事件についてはスルーの方向でお願いしている。
今回はこちらは干渉する気なんてない。
むしろ停電にミサカが出撃する方が俺たちのメインだ。
魔法と魔法のぶつかり合いを見たい、という欲求がないわけではないが、面倒な事にはなりたくないしな。
エヴァは俺の眼前でニヤリと笑う。
「何パターンかシミュレーションはした。抜かりはない」
「抜かり、ねェ」
くくっ、と俺は笑った。
「せいぜい脱がされねェよォに気をつけるこったな。子供教師は十歳じゃなけりゃ犯罪まがいの事を何件も起こしてやがるらしいし」
「私のクラスの事だ、それくらいは知ってるさ。それより聞き捨てならんぞ。私が奴に脱がされるような失態をすると思っているのか?」
「言っとくが、下着姿でもアウトだからな」
「全裸がアウトだ。下着姿如きでぎゃーぎゃー言う歳でもないのでな」
「ここぞとばかりにババア宣言か。言ってて悲しくならねェのか?」
「ほざいてろ。成熟したと言え」
「テメェのボディほど成熟したっつー言葉に似合わねェモンはねェよ」
ニヤニヤと笑う俺。
それに対し、自分のボディのことを言われたエヴァがぐぬぬぬと顔を赤くする。
力ずくという選択肢はないので自然と舌戦になっているが、舌戦で俺に勝てないことを知れ、エヴァよ。


キレた方が負けだ。


「ぐぬぁあああああッ!! 私の体形の事については言うな!! 貴様こそアルビノではないか!!」
「アルビノかロリボディか、どちらの需要が多いかと言えば微妙な所なンだがなァ。やっぱロリか?」
「ロリ言うな!!」
エヴァが無詠唱魔法の射手を放って来るが、そんなものはどこ吹く風。
反射するのはかわいそうな気もするので、四方八方にベクトルを向ける。
もちろん天井に当たると崩壊するので隙間から射手を外に出すだけだが。
その様子を見てエヴァが地団太を踏む。
「ええい、その反射とかいうのは反則だ!! それ無しで勝負しろ!!」
「やなこった。お、チャチャゼロ新しいのあけたな。俺にもよこせ」
「ってあああああッ!? チャチャゼロ貴様それは私の秘蔵の―――」
「別ニイイジャネーカ御主人。客人ナンザ滅多ニコネーンダカラヨ」
「そういう問題じゃないだろうが!! 貴様も飲むな!!」
「客人が滅多にこねェのか……寂しい奴なンだな、テメェは」
「うがァああああああああああッ!!」
寂しい奴発言と憐みの目で最早我慢の限界だったらしく、俺に向けて氷神の戦鎚が出現する。
圧倒的な圧迫感でこのテーブルごと粉砕しようと迫る氷の塊。
俺は立ち上がると、拳を構えた。


『ジェット・パンチ』


ドゴォン!!という轟音と共に氷神の戦鎚にヒビが入り、粉砕される。
爆風を起こして残骸を別荘の海の方に吹き飛ばした。
悔しげにこちらを睨みつけるエヴァの視線をさらりと流しながら、俺は左手に持っていた酒をあおった。
思いのほかアルコールが強かったので、咳き込んだ。






「魔法使いにはパートナーになる者が必要らしいのですが、その辺りは御存知ですか?とミサカは年長者に話を伺ってみます」
「くびり殺されたいのか一方ミサカ」
自覚がないのか確信犯なのか、意識を失っていてさきほどの俺とエヴァの会話を聞いていないはずのミサカがエヴァを遠まわしに『年寄り』と言ってからこの話は始まった。
今の時刻は夕暮れ。
もうすっかり酒は抜けてしまい、鮮やかな夕焼けが向こうの海を照らしている。
夕食の時間となり、エヴァファミリーと俺とミサカがテーブルを囲んで食事をしていた。
と言っても食事できるのは三人しかいないが。
一人は酒しか飲まないし、一人はカモフラージュだし。
それはともかく、ミサカの質問である。


ミサカが魔法使いには『魔法使いの従者』と呼ばれる護衛がつくという情報を見つけたらしい。


魔法は使えないが魔法使いを相手にするかもしれないのでその特性を調べている途中に発見したらしい。
相変わらずその勤勉っぷりに感心してしまう。
まあ、俺も去年の夏休みはそんな感じだったが。
イライラしながらも頼りにされた事はわかったらしく、エヴァは従者についての説明を始めた。

何時の間にかメガネが出現していたんだが……魔法って便利だな。

「『魔法使いの従者』とは戦いのための道具だ。魔法使いとは基本的に呪文詠唱中は完全に無防備となり、攻撃を受ければ呪文は完成できない。これは知っているな?」
「戦車砲も装填する前に砲身を狙撃されれば攻撃できないと、そういうわけですね、とミサカは現代兵器に例えて解釈します」
何故わざわざ現代兵器に例えるのかわからないが、その意味は間違いではないので俺は頷いておく。
「そこを盾となり、剣となって守護するのが従者の役割だ。チャチャゼロや茶々丸は私の従者となる」
「なるほど、魔法使いの短所をカバーすることが従者の役割なのですね、とミサカは確認を取ります」
「そういうことだな。だから従者にも相性はある。後方支援の魔法使いが同じ後方支援の従者を得てもチャチャゼロのように瞬時に懐に入って来るような奴等には負けるし、かと言って近接戦ばかりだと遠距離攻撃により一方的にやられる。魔法使いの役割とはつまり砲台だから、従者は肉弾戦闘に強い者が選ばれやすい。その方が短所が少なくなるからな」
ふむふむ、とミサカは頷いている。
なんだかんだ言って自分の知識を披露し、それに満足されるのはまんざらでもないのかエヴァは得意げだ。
ミサカは暫く思案した後、顔を上げて自分を指差す。

「では、ミサカはどんな役割なのでしょうか、とミサカは首を傾げます」

ふむ、と一拍置いた後、エヴァは説明を始める。
「私と同じ魔法使い型かもしれんな。貴様の砂鉄の槍や雷撃は近接戦闘でも使えるが、貴様はまだ瞬動を完全に体得していない。接近戦に強い連中は皆、瞬動を扱う。距離を測り間違うなんて事はまずあり得ん。だから貴様は雷撃と超電磁砲による遠距離戦が主体となるだろう」
当然だ、と俺は思う。
ミサカの腕力では刹那には遠く及ばないし、移動能力もてんで格下だ。
一般の魔法使い並みに動けると言っても、それは一般の段階に過ぎない。
「ということは、突っ込んでいく近距離戦闘に特化したパートナーを連れていれば良いのですね、とミサカは確認します」
「まあ、貴様は前提条件が違うからパートナーなんぞいらんと思うがな」
そのエヴァの台詞にたいしてミサカは首を傾げたが、その疑問には俺が答えてやる。

「俺達超能力者には呪文詠唱時間がねェ。瞬時に中規模魔法クラスの攻撃を撃てる俺達にとっては近距離だろォが遠距離だろォが関係ねェ。出会い頭に一発ドカンと叩きこみゃすむことだ」

「その通りだ。一方ミサカの場合は周囲の気配を察知して攻撃すればだいたいの敵は敗れ去るだろうからな。無詠唱で雷を撃つなんて普通は考えられないんだ。一般的には無詠唱で放てる攻撃と言えば魔法の射手レベルだからな」
そう、無詠唱魔法の限界は魔法の射手クラスなのだ。
無詠唱で雷の暴風や雷の斧などを繰り出せる大魔法使いなど、そうはいない。
だというのに、ミサカは二秒くらいで雷の暴風クラスの威力がある超電磁砲を撃てるし、振り向きざまに雷撃も放てる。
俺達超能力者の利点はその速射性にあるのだ。
「それに、私やサウザンドマスターなどといった実力者になれば従者はサポート程度のことしかできないようになる。『本物』には『本物』でしか対抗できん、ということだ」
「……ではエヴァンジェリンさんにとって従者はそれほど必要ないものなのですか、とミサカは首を傾げます」

「そんなことはない」

エヴァは即座に断言した。
「戦闘だけが従者の役割じゃないさ。茶々丸はハイテクだ。コンピューターを利用した電子関連のことになると私はさっぱりだが、茶々丸なら解決できる。はっきんぐとかいう電子情報を盗むことも可能だからな。そういう場面では重宝する」
それを聞いて、ミサカは納得したように頷いた。
「つまり、従者とは魔法使い本人の足りない部分を補完するために存在するのであり、それは戦闘とは関係のない所でサポートするのにも必要なのですね、とミサカは確認を取ります」
「まあ、大方そういうことだ」
ふむふむ、と納得していたミサカだが、まだ何か納得できないことでもあったのか次第にその瞳が思考に没頭していくのがわかった。
気になるので尋ねてみる事にする。
「どォしたミサカ、なンかまだ疑問でもあンのか?」
すると、ミサカは顔を上げた。
「ミサカは遠距離攻撃をする魔法使い型だ、とミサカはエヴァンジェリンさんから聞いた言葉を復唱します。それに対してアクセラレータはミサカが思うに近接攻撃を得意としていると思います、とミサカは予想します」
確かに俺は遠距離で風をブッ放すより殴り潰す方が得意だ。
反射は近距離でも遠距離でも有効だが、どちらかといえば近距離の方が相手にとっては厄介だと思う。
それに、俺が重きを置いているのは近接の方だしな。
その予想は正しいと思ったので、俺は頷いた。
エヴァも頷いている。


「なら、ミサカとアクセラレータで魔法使いと魔法使いの従者の登録をするのが適任ではないでしょうか、とミサカは提案します」


近距離と遠距離。
なるほど、確かに理にかなっている。
かなってはいるんだが……。
その契約方法を知っている俺としては少し勘弁して欲しい所だ。
対してエヴァは何やら面白いものでも見たようににやりと笑う。
「そうだな。悪くない考えだ。おいアクセラレータ、仮契約でもしてみろ」
「馬鹿言うンじゃねェ。ンなことできるわけねェだろォが」
「うん? アクセラレータともあろう者が仮契約を嫌がるのか?」
「縛られるのは嫌いなンだよ」
俺の拒否ぶりに何かあると察したのか、ミサカはエヴァに対して更に質問をする。
「何か問題でもあるのでしょうか、というよりパクティオーとはなんでしょうか、更に付け加えるならアーティファクトというものについても教えてください、とミサカは立て続けに尋ねます」
何やらエヴァはとても楽しそうにそれの説明を始める。
「魔法使いと従者の登録の事を魔法使い用語で契約という。それの仮の契約がパクティオーだよ。普通契約は一人としかできないが、仮契約は何人とでもできる。まあ、お試しのようなものだな。そしてその際に出現するのが仮契約カードというもので、これは仮契約をした人物をサポートするマジックアイテムになるという優れものだ。それをアーティファクトという」
そこで一旦切り、ニヤニヤ顔のままエヴァは言った。


「問題というのならそうだな、契約方法がキスだということくらいか」


「……キス?」
「ああそうだ。貴様がアクセラレータと仮契約したいのなら、貴様がアクセラレータにキスをすれば良いのだ」
呆けた調子で呟いたミサカは、エヴァのその一言で急激に顔を赤らめた。
どうも女の子としての常識とかは持っていたらしい。
まあ、ネギのような子供に対してならともかく、たいして歳も離れていない俺にキスするのは恥ずかしいわな。
もじもじしているミサカというのはなかなかに貴重なので観察していると、ミサカは俺を探るように横目で見て来た。



「……あの、よろしいでしょうか、とミサカは確認します」



「……なンの確認だオイ。まさか仮契約してェなンて言い出すンじゃねェだろォな」
俺が呆れた調子で言うが、ミサカの調子は変わらずに赤くなりながらコクコク頷く。
俺はその元凶たるエヴァを睨みつけるが、エヴァはニヤニヤとしたままこちらを見るばかり。
援軍を求めるが、チャチャゼロは『ケケケ』と笑うだけで、茶々丸に至っては『録画開始準備』とかほざいているのでとりあえず風で吹き飛ばした。
「言っとくがな、ミサカ。仮契約ってのは本来キスだけじゃなくて体液交換って奴でもできるンだよ。つまり血でも―――」
「み、ミサカはキスでも構いません、とミサカは主張します」
「話は最後まで聞け。血と血の交換でも仮契約はできるンだよ。わざわざキスする必要もないだろうが」
「キスでもいいです、とミサカは再主張します」
「はァ? いや、だからキス以外でもできるって言ってンだが? 日本語通じてるか?」
「そっちこそこちらの日本語を理解できているのですか、とミサカは尋ねます」
さっきから詰め寄ってきて何なんだミサカ。
ミサカは若干赤い顔のまま、俺に尋ねてくる。
「それならその血と血の仮契約という黒魔術っぽい儀式とキスするだけの儀式ではどっちが面倒ですか、とミサカは違う方向から攻めてみます」
「そりゃァキスの方が楽だろォが……」
「ミサカは楽に、さっさと終わらせたいだけなのです、とミサカは主張します」
「…………」
何なんだろうか、この言い知れない迫力は。
ていうかこうやって討論していることがすでに面倒なのではないかと思うのだが、それは自分にも当てはまってしまう。
ミサカは何やら鋼の意思を貫くっぽいので、さてどう叩き折ってやろうか思案していると、
「茶々丸、契約陣を描いてやれ」
「はい、マスター」 
チョークのようなもので複雑な魔法陣を書き始める茶々丸。

なんだかやけにウキウキしているように見えるのは気のせいだな?

気のせいだと思いたい。
「ていうか待てクソガキども。何勝手に契約陣書いてンだ。まだ俺は同意してねェぞ」
「その割には一方ミサカはやる気のようだが? 甲斐性がないな、貴様は」
「…………」
後ろを振り向くと、やっぱりミサカは契約陣の方を見ていた。
……退路はないのか。
そして、なし崩し的に俺とミサカは仮契約をすることになった。
俺が主で、ミサカが従者。
どうせなら俺もアーティファクトが欲しかった所だが、ミサカが従者と言う事で俺のアーティファクトはなしという方向になった。
茶々丸が契約陣を描き終わる。
「ほれ、サッサと済ましてしまえ」
「うるせェ」
俺とミサカがその契約陣の中に入ると、光が迸った。
それと同時になんともいえない感情が俺の中に入りこんで来る。
ちなみに、反射で何かややこしい事態が起きたら困るとのことで、反射は既に解除してある。
さて、原作から知っていたが、これが『ドキドキする』って奴だ。
おそらく契約陣の効果だろう。
お互いに対しての好意を増幅するという厄介な効果だ。
柄にもなく顔が赤くなってしまうのを必死に抑える。
やはり録画しようとガン見している機械人形を風で吹き飛ばし、俺はミサカに目を向ける。

「……不思議な感覚です、とミサカは簡潔に感想を述べます」

顔を赤くしてとろんとした瞳のまま、ミサカは首を傾げる。
狙ってやってるんじゃないだろうな。
そのかわいらしい仕草に思わず顔が赤くなる。
それを振り払うように、俺は頭を激しく振った。
「ほれほれどうした、サッサとやらんか。キス如きで戸惑うのか?」
「黙れ。歯と顎と舌を擦り潰されてェのか」
このままではクソガキに煽られるだけなので、早く済ませることにした。
俺は呆けた様子で俺を見上げているミサカの顎を軽く持ち上げると、その唇を重ねた。
生前も転生してからも、これが俺のファーストキスとなる。
俺のファーストキスの感想と言うと。
「(……案外柔らかいンだな)」
という赤面しかしない馬鹿正直なものだった。
契約陣が光り輝き、出てきたのはミサカの仮契約カード。
それを乱雑にバシリとキャッチし、唇を離した。
ミサカにとってこれはどうやらあっという間の出来事だったらしく、ぽかんとしている。
好都合である。
こちらも恥ずかしいのだ、覚えてもらっていない方が良い。
「ククッ、貴様が赤面する光景を見るのは初めてだよ、アクセラレータ」
「…………」

もう無視する事にした。

ミサカは『こ、これがキスと言うものですか、とミサカは先ほどの干渉を思い出してモヤモヤします』とか呟いている。

言うな、恥ずかしい。

その後、俺達はさっさと仮契約カードのアーティファクトの確認作業に移っていた。
今の光景は早く忘れたかったのだ。
エヴァは何やら俺をからかう気だったらしいが、いつまでも俺がからかわれると思うなよ。

俺はミサカのカードを覗き見る。

カードには電撃を纏わせている中学校の制服のミサカが描かれていた。
唯一元の姿と違うのは、ミサカの頭には例の軍用ゴーグルが装備されていることだ。
その軍用ゴーグルも多少ながらパワーアップしているようで、頭を覆うようなヘルメットタイプになっている。
口元だけが露出しており、何やら戦隊モノのヘルメットのようにも見えた。
他にも色々と機能がありそうで、面白そうだ。



名前は『一方ミサカ』。
称号は『人工の電撃使い』。
数字はⅩⅩⅩⅡ(32)。
色調はFlavum(黄)。
方位はoriens(東)。
星辰性はStar cluster(星団)。
徳性はsapientia(知恵)。
アーティファクト名は『透視の仮面』。



「どうも絵柄を見るにミサカのアーティファクトはこのヘルメットのようですね、とミサカはどこか見覚えのあるそれをじーっと観察します」
「まず出せよ」
カードを観察しているミサカにそう言って、ミサカにアーティファクトを出すように指示を出す。
「『来れ』」
そう言うように言うと、ミサカの手にあったカードが光を発し、絵柄にあったヘルメットに変化した。
ミサカはそれを抱え、それを上下左右に見まわした。
「軽いですね、とミサカは感想を言います」
そう言ってから、ミサカはそれを被った。
ガチャリとゴーグルを下ろし、辺りを見回す。
どうやらミサカは装着したヘルメットゴーグルを使って辺りを探索しているようで、『カチッ、カチチッ』という何かを切り替えるような音も聞こえてくる。
恐らく電子線を読み取るだけではなく他の機能も拡張されているのだろうが、何があるのだろうか。
「一方ミサカ、それの使い心地はどうだ?」
「切り替えに慣れればそう使いづらいものではありません、とミサカは答えます」
試しにミサカは軽く放電してヘルメットゴーグルの調子を確かめるが、これも問題ない様子。
一体何で作られてるんだ、アレ。

やがて始まるミサカの説明を要約すると、広域探査型、尚且つ色々と調べる情報を変化させることができる装置らしい。

こういう魔法関係独特の魔力探知から科学的な熱探知も可能であり、辺りをサーチすることもできる。
ただその距離は半径300メートルほどで途切れているようで、さほど遠くを調べることはできないようだ。
望遠機能もあるが、これも期待できるような距離を望遠できるわけではないらしい。
そこそこの距離をそこそこの探知ができるヘルメット、というわけか。
まあ、半径300メートルってだけで上出来か。
「典型的な探知系ではあるが、だからこそ高性能だな。何故ヘルメットなのかは分からないが」
「機能を積み込む場所がなかったのではないでしょうか、とミサカは首をかしげます」
頭を守るため、ってのもあるがな。
基本的に物理的な事を考えていると、やがてミサカはヘルメットをカードに戻した。
そのカードをじっと見た後、俺の方を見た。
俺と目線が合うと、慌ててそらす。
そういう仕草をされると俺も意識してしまうので困ったもんだ。
即座に踵を返す。
「どうした、どこに行く、アクセラレータ?」

「寝る」

からかうようなエヴァの口調。
付き合うのは上策ではないと思い、俺はそのまま寝室へと向かった。






SIDE 一方ミサカ

アクセラレータが寝室に向かったので、ミサカももう寝ようと思いました。
目の前ではエヴァンジェリンさんがお腹を抱えて笑っています。
「ぶはははははッ!! なぁんだアイツめ、あんな表情もするのか!? 人間やめてるような能力を持っているくせに、きちんと初心な人間性は残してるじゃないか!!」
ひーひー言いながら笑っているので、これは邪魔しない方がよさそうです。
茶々丸さんは……どうやら爆笑しているエヴァンジェリンさんが珍しいのか、ガン見録画を行っています。
チャチャゼロさんは『イイゾモットヤレ』と茶々丸さんを煽っていますし……ここはもう、『エヴァンジェリンファミリー』の空間です。

なんというか、ミサカには合いません。

一言短く断りを入れて、ミサカは寝室にやってきました。
雑魚寝をするような所じゃないので、一応区切りはされています。
一つの大きくて長い部屋を壁で区切ったような部屋です。
シンプルで、寝て起きるだけの部屋、ということが伝わってきます。
こういう部屋は嫌いじゃありません。
ミサカは電気をつけずにもぞもぞと布団にもぐりこみます。
窓越しに空を見上げました。
きちんと満月が夜空に昇っているのを見て、これも魔法だというのが信じられないほど現実感溢れた景色をミサカに見せてくれます。
これが『美しい』と思う感情なのでしょう。
ゆっくりと動く満月の軌跡をなぞった後、ふらりとミサカに訪れた睡魔。
それに従って寝入ろうとして、


突如としてこの壁の一つ向こうにアクセラレータがいることに気づきました。


バクン!!とその瞬間、ミサカの心臓が跳ね上がります。
あまりの勢いに何らかの異常があるのかと思いましたが、特に何も感じられません。
ただバクバクと伝わってくる、心臓の鼓動。
痛くありません。
でも、なんだか張り裂けそうな気がします。
右手で胸を抑えながら、ミサカはそれをいつの間にか受け入れていました。
二度目ですが、痛い、というわけじゃありません。
でも、痛い気がします。

なんでしょう、この我慢できない感じ。

それを無意識的に押さえ込もうとしているのか、ミサカは更に強く胸を抑えていました。
ミサカの自由な左手が何かを掴もうとして空を薙ぎます。
もう一度手を突き出して触れたのは、白い壁。
何でできているのかはよくわからない、ただ白い壁。
ふと、それがアクセラレータの後姿に被ります。
ミサカネットワークの記憶よりも二回り大きくなったその背中。
突然その背中が近くなったかと思うと、ミサカが壁に近づいていただけでした。
同時にアクセラレータの幻影が消え、間近には白い壁が残ります。
掌をべったりとつけると、伝わってくるのは冷たい感覚とざらざらした質感だけ。
あの時のジャンパーとは程遠い感触です。
なんだかもどかしくなって、ミサカはその壁に背を向けて、シーツを被ります。

でも、何か落ちつけません。

今までこんな事はなかったのに。
バクバクとうるさい心臓を殴って黙らせようかと思っていると、ふと、ミサカの目に仮契約カードが映りました。
ヘルメットゴーグルをつけて軽く放電しているミサカの姿があります。
それに手を伸ばして、胸に抱え込みました。
目を閉じて、その瞼の裏に映るのは、一瞬だけ見えたアクセラレータの真っ赤な顔。
なんだかとても、それが『かわいく』思えてしまって、ミサカは困惑します。

あのアクセラレータをかわいいなんて。

ありえないと思いつつ、肯定する自分がいてミサカは戸惑います。
でも、その戸惑いはカードを見るだけで吹っ飛びます。
何か、このカードを見るととても嬉しい気分になります。
憂鬱なイライラや、変なもやもやを全て取っ払ってくれる特効薬。
それがこのカード。


ミサカだけの……『ヒトカタミサカ』のカード。


ミサカがミサカであることを証明してくれるこのカードは、ミサカを群衆の中のミサカではなく、自分は特別なミサカだと思わせるものです。
群衆から抜け出していく感覚。
自分はもう『ヒトカタミサカ』なのだと肯定してくれている感覚。
それがとても好ましくて、ミサカはカードを更に抱きしめました。
瞼の裏は、もう真っ暗。
キスされた時のことなんて、実際ほとんど覚えていません。
でも、ミサカの唇にはあの感覚が残っています。

ちょっと大きくて、ちょっと暖かくて、ちょっと心地良い、あの感覚。

それはミサカだけの大切な記憶。
それを自覚すると同時、ミサカは意識を夢の中へ沈めました。
次の日、珍しくミサカが寝坊したのは、余談となります。
機嫌の悪いアクセラレータは、どこか顔が赤く見えました。






~あとがき~

現実逃避気味に小説書いてたらいつのまにかこんな量になってしまいました。
課題、やらなきゃな……。

今回はアクセラレータとミサカの仮契約、そしてミサカの戦力確認です。
ミサカ、未完成とはいえ瞬動可能に。
少し唐突な感じがしたと思いますが、やはり障壁が使えない以上瞬動は使えるようにならなければいけないと思いまして。
気による身体強化もそこそこ使えます。


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