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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第21話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:11f779aa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/04 17:48
SIDE 絡繰茶々丸

このごろ、マスターの御機嫌がよろしくありません。
ブツブツと『出番がないではないか……』『というより奴め、このごろ夕食を食べに来ないのはどう言う事だ……』『いや、その場合は私よりも茶々丸の出番が……』と呟いている事が多いのです。
すみません、マスター、今は私の出番です。

そういえば、私もここ二週間ほどアクセラレータさんの姿を見ていません。

夏休みは毎日のように来られたというのに。
彼も忙しいのでしょうか。
普段の彼を見ていればとてもではありませんがそうとは思えないのですが。
私はそう思いながら一階で掃除をしていると、呼び鈴が鳴りました。
お客様を出迎えるのは私の仕事なので、扉の前に向かいます。
それにしても、遅い時間ですね。
私の体内時計は七時四分を示しています。
そろそろ夕飯の時間です。

アクセラレータさんでしょうか?

でしたら、マスターの機嫌がすぐに直るのでとても良いのですが。
一縷の望みを持って扉を開けると、そこにいたのは超とハカセでした。
二人とも、何故か徹夜で宿題をやり遂げたかのような達成感のある疲れた笑みを浮かべています。
大方予想はできますが、何があったんでしょうか。
「やっほー、茶々丸。遊びに来たよー」
「お邪魔するヨ、エヴァンジェリン」
二人を見たマスターは落胆したような表情を浮かべました。
いつもの通り腕を組んだ姿勢のままソファーに座り、二人を不機嫌そうに睨みます。
「貴様等か……茶々丸の調整か?」
そんな不機嫌そうなマスターを見て、超は何故かにんまりとした笑みを浮かべました。
むふふ、という声が聞こえてきそうです。
個人的な意見を言わせてもらいますと、とてもムカつく顔で。
「愛しのアクセラレータさんじゃなくて悪かったネ。学校でもイライラしているようだったケド、彼が原因かナ?」
「ふん、そんなわけないだろう。あれはタカミチの奴がな―――」
「―――と言い訳をしつつも赤面しているマスター乙です」
「ちゃ、茶々丸ぅーッ!?おいハカセ、すぐにこいつをバラせ!ていうかこのごろ最近おかしな言動ばかり言うんだが、どうにかならんのか!?」
む、おかしなとは納得できませんよマスター。
こういう言葉のほとんどはアクセラレータさんから学習したものです。

ちなみに今の台詞は『とりあえずエヴァが赤面したら言っとく台詞』の頂点に来る言葉です。

他にも色々とバリエーションがあります。
アクセラレータさんが言うには、それぞれの台詞でマスターの赤面の仕方が違う、とのことです。
そのデータを集めるために、今回も盗撮をします。
ハカセがアクセラレータさんの台詞を真似しているだけと説明すると、マスターは憎憎しげにうなりました。
「ぐっ、奴がいなくても私は奴に振りまわされるというわけか……」
そんなマスターを見た超は何を今更とばかりに肩を竦めます。
「彼に目をつけられた以上、その辺りは諦めるしかないネ」
実際、超も何度か週1で開く超包子に突撃してきたアクセラレータさんにからかわれているようで、学校に行くと妙に疲れている顔が見受けられるようになりました。
年齢制限なんて記憶喪失には関係ないとばかりに酒も飲みまくるため、よく高畑先生やガンドルフィーニ先生が犠牲になっているとか。

最近ではガンドルフィーニ先生が同じ魔法先生の瀬流彦先生を連れてきてスケープゴートにするのだとかいう話を聞きました。

絡む相手がいるとしても超には絡むらしく、それだけは勘弁して欲しいネ、と言っていました。
しかし、四葉さんには一回も絡んだ事がないとも言っていました。
その時の超の表情は今のマスターにとても似ていると思います。
超とハカセはリビングの方に行くとテーブルにつきました。
どうやら、今日はここで夕食を食べていくようです。
マスターもそれがわかったらしく、意外そうに呟きました。
「それにしても、貴様等がここに来て飯を食っていくのは珍しいな。どうしたんだ?」
「いやー、それがようやく鬼神兵の方の調整が終わりましてねー。いつもの寮というのも味気ないので、エヴァンジェリンさんの家でパーっとやろうかと思いまして」
「勝手に人の家を宴会場にするな!ったく……」
「御主人、実ハ照レテンダゼ?」
「この従者どもは私をからかうことしかせんのか!?スクラップにしてやるぞチャチャゼロ!?」
「ああ、マスターがあんなに楽しそうに……」
「貴様のその台詞は聞き飽きたわーッ!!」

だって、本当に楽しそうですから。

マスターではありませんが、私も二人のこのごろの行動は少し意外に思っています。
超とハカセは社交的ではありますが、マスターと積極的にかかわりを持とうとは思わない人でした。
超は自分の計画のために邁進する性格ですし、ハカセも人との関係よりも実験や研究を優先するタイプですので。
しかし、このごろ……麻帆良祭を過ぎてからでしょうか、二人がごく稀にこの家で食事を取るようになったのです。
マスターも文句は言うのですが断ったことは一度もありませんし、やはり楽しそうです。
姉さんは……マスターをからかって喜ぶタイプの人ですので、マスターの口数が多くなる来客の時は必ず何か一言を言って場を混乱させます。
それが姉さんなりの素直じゃない会話であることを知っている私は、その後にいつも楽しそうなマスターを見てぽつりと楽しそうだとつぶやいてしまうのです。

私、マスター、姉さんの三人だとあまり会話も弾みませんし、私が言うのもなんですがしーんとしています。

そしてそれは、私がこの家に来て、アクセラレータさんが麻帆良にやってくるまでは毎日の事でした。
それに比べれば、この家がどれほど賑やかになったのかわかるというものです。
私はマスターの怒鳴り声を背にさっさとキッチンに向かい、夕食の準備を始めようとしましたが、ニンジンを切り始めた時にポツリとマスターがとあることを言ったのに反応してしまいました。
「……そろそろ奴がやってきて一年になるな」
それを聞いて、私も気付きました。

アクセラレータさんがやってきたのは十一月八日と記憶しています。

現在は十一月一日なので、ちょうど一週間後です。
しかしマスター、よくその事を覚えていましたね。
「そういえばそうネ。すっかり忘れていたヨ」
「……あまり出会いは思い出したくないがな」
羞恥からか、すこしマスターは顔を赤らめました。
顔だけは悔しそうに歪んでいましたが。

マスターの出会い……それはアクセラレータさんへの謝罪の事でしょう。

マスターがどこかどんよりとした表情で帰ってきて、終始落ち着きがなくそわそわして、終いには『茶々丸、ついて来い!』と私に怒鳴りつけて外に出ていかれてしまったあの日の事を、私は忘れる事ができないでしょう。
魔法界でも『不死の魔法使い』『人形使い』『闇の福音』と呼ばれ恐れられ、人一倍プライドの高いマスターが頭を下げるということは、私でも信じられませんでした。
盗聴行為を行っていたマスターが事情を話してくれないので、その事情は良く知りません。
しかし……マスターがあそこまで言って頭を下げると言う事はよほどのことをやったのでしょう。
ただ、マスターが頭を下げるほどのことをやってしまったと言うのにあっさりとそれを許したアクセラレータさんは、本当は懐が広い人なのではと思います。

マスターが紅茶のコップを持ってその中身を見つめている前で、超は静かにその口に挑戦的な笑みを浮かべていました。

超とアクセラレータさんの出会いは、とにかく強烈なものだった、とハカセが言っていました。
ハカセはアクセラレータさんの殺気に当てられて震えているだけだった、と言います。
それでもアクセラレータさんは全く本気ではなかったとも言っていました。
それも仕方がありません。
ハカセは戦闘になど出た事はありませんし、武器は開発しますが鬼や悪魔と戦ったりはしません。
本当の戦場というものをくぐり抜けてきたというアクセラレータさんの殺気をまともに受けてしまっては、意識を保っているだけで精一杯なのでしょう。
アクセラレータさんが本気で不機嫌になった時は、ガイノイドである私ですらまわりの空気が重くなったように錯覚するほどなのですから。

それを畏怖する事はありません。

確かに怖いかもしれませんが、彼が私達に害を与える存在でない以上、恐れる事はないのですから。
しばらく妙な沈黙が続いた後に、ハカセが口を開きました。
「……それじゃあ、アクセラレータさん麻帆良にやってきて一周年おめでとうパーティでもやりませんか?」
「はあ?」
真っ先に難色を示したのはやはりマスターでした。
マスターはやめておけとばかりに手を振ります。
「いくら奴が騒ぐのが好きだと言ってもそういうのは好かんだろう。奴が帰ってしまったら我々が馬鹿みたいではないか。貴様ならともかく私や超では何があるのかと勘ぐられる可能性だってあるぞ?」
「学園祭や満月の時ならともかく、この時期に何か起こそうなんて誰も思いませんよー。それに、これは前々から超さんが言ってた事でもあるんですよねー」
「は、ハカセ!余計な事は言わなくてもいいヨ!」
珍しく焦って小声で言う超を見てそれは事実だと思ったらしく、マスターはにやりと悪い笑みを浮かべました。
「……まあ、そう言う事情なら私も止めはせん。恥をかくのは貴様らだけだからな。で、肝心の奴を誘う人物は誰にするんだ?言っておくが私は絶対にやらんからな」
「期待してないヨ。それに、この中でこの家の外で動き回れて唯一アクセラレータに変に思われない人物がいるネ」
マスターの視線が超、ハカセから私に移りました。
そこで納得の表情を浮かべるマスター。

……あの、もしかして。

「私、ですか?」
「そう!本当なら私でもいいんですけど、私だと超さんの差金みたいに思われるかもしれないので茶々丸に行ってもらうことにしましたー!」
その強引な決定に驚きました。
もちろん不服と言うわけではありません。
ただ、研究以外の事で強引な決定をするハカセというのは初めて見たものですから。
マスターは『ふむ』と腕を組みながら呟きます。
「確かに、茶々丸なら違和感はない。私や貴様らが言うよりも絶対に奴は茶々丸の言う事を信用するだろうからな。いいな、茶々丸?」
「はい、わかりました。日時はどういたしましょうか?」
「アクセラレータの日常には予定がこれでもかというほど入ってないネ。いつもヒマを持て余してると思うヨ」
確かにその通りです。
普段から広域指導員として活動していると思われるアクセラレータさんですが、その見まわる時間は非常に不定期だと聞いています。

つまり、きっちりと予定を組むほど予定がないと言う事です。

ヒマはほとんどがゴロ寝してるかトレーニングしてるか本屋で立ち読みするかの三択しかないと言われた時には驚いた物です。
私はこれまでのデータからアクセラレータさんが最も暇な時間を特定すると、八日当日にパーティを行う事を伝える事にしました。
そういうのは直前に言って驚かせるに限るネ、とは超の談です。






それから一週間が過ぎました。
時が経つというのは非常に早いものですね。
この一週間、やけに超の機嫌が良かったりマスターがたまににやけていたりしていました。

何かヤバげなものでも食べたのでしょうか?

食卓に毒物を混入したりはしないので、おそらく可能性があるとしたら拾い食いですが、この麻帆良で拾い食いするほど落ちぶれていない二人ならそんなことはないでしょう。
その事を尋ねると、ハカセは何やら『ムフフ』と面白そうに笑うだけで何も明確に答えてくれませんでした。
やはり、よくわかりません。
機嫌が悪い、調子が良くないという害ある症状ではないので放置しておくことにしました。
さて、私は毎日の義務のようになった猫への餌をやっています。
マスターの家の掃除が終わろうが終わるまいが何よりも猫が大切ですから、たとえ掃除が途中でも道具はほったらかしたままです。
片付け?

猫が待っているというのに一分一秒も遅れてはいけません。

片付けをしている間に猫が飢え死にでもしてしまった場合は後悔の念のあまり暴走してしまうかもしれません。
ガイノイドの私に念があるのかは不明ですが、その場合はご都合主義がうまく働くのでしょう。
私の知った事ではありません。
目の前に『こらうまい!こらうまい!』とばかりに猫たちは野生の本能丸出しで猫缶に食らいついています。
生存本能というのは野生に必須なのですね。
私は生物の宿命や心理などを考えながら空になってしまった猫缶をビニール袋に片付けます。
猫は『くれー、もっとくれー』とばかりにニャーニャー鳴いていますが、本日はこれでサービスは締めきりです。
食べてしまった物はしょうがないので、他で補充してください。
え?かわいがってるわりには冷たいですって?

人間社会には予算というものがあるのです。

いま現在の私の予算ではこれだけの量の猫缶が限界なのです。
それを悟った私は猫達には野生で逞しく生きて欲しいと思うようになりました。
お腹一杯になるためには猫缶だけではなく川で岩魚を取って食べなければならないと。
しかし、思っただけで結局猫缶はあげています。
まあ、つまりアレです。

厳しい現実社会の壁という奴です。

アクセラレータさんに出会ってからというもの、社会とは厳しいというのを学びました。
それは野生の社会であっても変わりはないという事も知ったのです。
厳しい社会を生き抜いてこそ本当の野良猫なのです。
哲学的に語ってはみても、結局は私の予算不足なのですが。
私はニャーニャーと鳴く猫達に別れを告げ、ゴミをきちんと分別して捨てた後、道に在るゴミを拾い、小学生達に挨拶し、道に迷ったおじいさんを駅まで案内していると、何時の間にかかなり時間が経ってしまいました。
現在時刻、五時二十二分。
パーティ開始時刻が六時とのことでしたので、そろそろアクセラレータさんの家に行かなければ遅れてしまう事になります。
超やマスターに折檻されるのは嫌なので、私は大人しく彼の家へ向かうことにしました。
アクセラレータさんの家はお世辞にも綺麗なアパートとは言い難く、どちらかというと綺麗でない……ぶっちゃけていえばボロい風体のアパートです。
しかし、その外見とは裏腹に内部は非常に広くて充実しており、見てくれを重視しない人達にとっては十分過ぎる住まいなのだとか。

ログ調を好みとするマスターには到底耐えられないと思いますが。

短い階段をコツコツ上がり、二階にやってきました。
この階の住居者はアクセラレータさん以外いないようで、一階に比べてガランとした風景が続きます。
その中で唯一申し訳程度にビニール傘が刺してある傘立てがある家こそアクセラレータさんの自宅なのです。
私はその扉の前にやって来ると、インターホンを押します。
五秒ほどの間があってから、扉がガチャリと開きました。

「……おォ、珍しい客じゃねェか」

アクセラレータさんです。
彼の顔を見る限り、どうやら今日は機嫌が良さそうです。
何か、良い事でもあったのでしょうか?
その事については後で尋ねる事として、私は頭を下げて挨拶します。
「こんにちは、アクセラレータさん。今日はご招待に上がりました」
私の言葉を聞いて、アクセラレータさんは眉をひそめました。
「ご招待ィ?怪しげなニオイがするンだが」
「そうでしょうか?一応、整備や洗濯は欠かしていないのですが」
「テメェのニオイじゃねェよ」
はあ。
では何のニオイなんでしょうか?
私がそう尋ねる前に、その台詞をさえぎるようにしてアクセラレータさんが言いました。
どこか疲れた様子で。
「で、ご招待ってのは何の用なンだ?」
「それは教えられません」
「ハァ?」
アクセラレータさんは素っ頓狂な声をあげましたが、一瞬だけ真剣な顔をするとすぐ元のやる気なさげな顔に戻り、しょーがないといったように頷きました。

これぞ超直伝のスーパーテクです。

アクセラレータさんは世界の裏にずっと浸かっていた、少し前のマスターのような方でした。
そんな方だから、思わせぶりな口調で強引に『とにかく来い』と言うと、アクセラレータさんは深読みして『これは何かある』と勘違いする確率が非常に高いそうです。
案の定、アクセラレータさんは引っかかってしまったようで。
「面倒くせェ事ならやンねェぞ」
「面倒くさくはないと思います」

多分。

私がそう思っていると、後ろからひょこっと誰かが廊下の隅から顔を覗かせました。
アクセラレータさんと私の背はほぼ同じなので、肩から少しその方の顔が見えてしまいました。
特徴的なサイドテールから、同じクラスの桜咲刹那さんということが判明しました。
私と目があった瞬間から明らかに動揺しており、心拍数が何故か急上昇しています。
慌てているようにも見えます。
私の視線で気付いたのか、アクセラレータさんが後ろを振り向きました。
「刹那、悪ィが今日のだべりは終わりだ。用事が入っちまった」
「お仕事ですか?」
アクセラレータさんの視線を受けて強引に冷静になったつもりの桜咲さん。

私のカメラアイで見ても顔が赤いのは丸わかりですよ。

それに気付いているのかいないのか、アクセラレータさんは肩を竦めました。
「さァな。あのガキはここで告げることもできねェような用件っつってるが、どォせロクでもねェことだろ。なァ、茶々丸」
「二度目ですが、お話する事はできません」
「っつーわけで、出かけることになったってわけだ」
桜咲さんはそれを聞くと、手馴れた様子で部屋の電気を消してこちらにやってきました。
まるで何度もやったことがあるような仕草です。
桜咲さんが部屋を出て、アクセラレータさんが部屋の鍵を閉めると、彼はすたすたと先に行ってしまいました。
先導するのは私の役目なのですが、彼はそうさせてくれないようです。
彼の後ろにつく事になるのですが、そうすると必然的に桜咲さんが隣に来ることになります。
視界の隅に入ったのですが、その時桜咲さんの顔が少し残念そうに見えました。
こう言う時、私のような者を『お邪魔虫』というのでしょう。

以前ハカセに習いました。

アクセラレータさんが二言三言からかい気味に桜咲さんに別れを告げると、私も一礼して桜咲さんと別れました。
それから歩いて二十分ほどでしょうか。
実際もっとかもしれませんが、とにかくマスターの家に到着しました。
時刻は五時五十八分。
少し早いですが、ほぼぴったりですね。
アクセラレータさんは扉を開けるのが面倒なのか、ポケットに手を突っ込んだまま私に顎をしゃくって開けろと意志表示しました。
それは非常にまずい事態です。
どうしてかというと、普通、こういうのはアクセラレータさんから入るものであり、私が先に入ってしまうのはどうも……。
ここで断っては非常に怪しまれるため、気が進まないながらも私はドアを開けることにしました。

そして中に入ると、そこには扉の両側に待機している超とハカセがいました。

どうやら危うくクラッカーの紐を引っ張る所のようでした。
マスターも私の姿を見て『なんだ、茶々丸か』と呟いていました。
小さな声でしたがその程度の音声なら拾えるのですよ、マスター。
そう思っていると、私の後ろからアクセラレータさんが入ってきました。

途端に響く軽い炸裂音。

パァン、という音と共に飛び出したビニールが驚いた表情のアクセラレータさんの頭にかかり、不自然なほどなめらかにそこから落ちました。
すると、扉の両側から超とハカセが言いました。
「フフ、驚いたカ?驚いたネ?」
「アクセラレータさん一周年記念おめでとうございまーす!」
今のアクセラレータさんの姿は今までみた事がないくらいに間抜けな姿でした。
ぽかーん、という感じでしょう。
今の私でも、動揺しているアクセラレータさんの視線は容易に読む事ができます。
まず声を発した超、ハカセ。
次に私を見て、マスター、そして机の上に並べられた料理を見やり、最後にデカデカと『アクセラレータさんの麻帆良来訪一周年記念パーティ!!』と描かれている垂れ幕を見ました。
もう一度その順で皆の顔を見回した後、アクセラレータさんは口の端をひきつかせながら呟きました。

「……オイ、どこのドッキリだ?」

「ドッキリじゃないヨ、大真面目ネ」
超がそう言うとアクセラレータさんの背中に回り、ぐいぐい押します。
相変わらずアクセラレータさんはビクともしませんが、一つため息をついてソファーに座りました。
彼はまだドッキリじゃないのかと辺りを探ってカメラがないか探しているようですが、この家にその類の記録機械はありません。
強いて言えば、私のカメラアイくらいでしょうか。
その私のカメラアイを彼は睨んできました。
「茶々丸……テメェ俺をハメやがったな」
「私はご招待と言っただけですが」
アクセラレータさんの記憶でも現状況に対して私が間違った事を言っていなかったことを確認したようです。
やはり顔が引きつっていました。


「ブッ、ふははははっ!!くっ、くく……ぶふ、ははははははははははははっ!!」


そんな彼の様子を見てたまらなくなったのか、ついにマスターが大爆笑を始めました。
カッ、と顔を真っ赤にしてアクセラレータさんが叫びます。
「何笑ってやがるクソガキ!?」
「いやいや、貴様の呆然とした表情なんて初めて見たのでな……こういうのは決まると存外楽しいものだな!!見ててスカッとする。あー、貴様と私が出会って今が一番爽快な気分だよ、アクセラレータ」
「どンな鬼畜野郎だテメェは!?……ってテメェ等も笑うんじゃねェ!!フザけてンのか!?」
「あはははは、アクセラレータさんもこういう想定外な事態には弱いみたいネ?今度はこの路線から攻めてみようカ?」
「そうですねー。それにしてもアクセラレータさんも動揺したり照れたりするんですねー。今までそんな顔なんて見た事ないからわかりませんでしたよー」
「間抜けた声でヌカしてンじゃねェクソガキ共!!そこの金髪も呼吸困難に陥るほど笑ってンじゃねェ!!」
「ああ、アクセラレータさんがあんなに楽しそうに……」
「そりゃ目の前のクソガキに対してだけの台詞だろうがァあああああああああああああッ!!」
ハカセの言う通り、こんなに動揺したアクセラレータさんは初めて見ます。
案外この照れ隠しはマスターと共通する部分があるようですね。

だから、でしょうか。

今の私の台詞にほとんど違和感を感じなかったのは。






SIDE 一方通行

酷い目にあった。
アクセラレータに転生して初めてだ、あんな醜態をさらしたのは。
俺はエヴァの家から帰る途中、夜道を歩きながら深いため息をついて頭を抱えていた。
茶々丸が呼びに来るから時期的に例の『桜通りの吸血鬼事件』に対しての事かと思ったら、まさか俺を歓迎するパーティだとは。
今でも信じられない。

こんな俺を歓迎してくれる連中がいるなんて思わなかったから。

そこまで人間不審になっているのは『一方通行』の影響だろう。
超や茶々丸が作ってくれた料理を口にして、不意に馬鹿正直に『美味い』と言ってしまったのが今でも悔やまれる。
何で俺があんな正直なことを言わなければならんのだ。
そこらへんはアクセラレータの影響を受けずに本心で言ったもんだから、辺りを非常に変な空気にさせてしまった。
超は誉められた事が気恥ずかしいのかやけに大声を張り上げていたし、茶々丸は俺と超を見比べてオロオロしていた。
相変わらずエヴァは笑いをこらえているようだったし、ハカセはハカセで『ムフフ』と変な含み笑いをしていた。
居心地が悪い、と言えば嘘になるが、良いとも言い難い空間だった。
まあ、それでも二時間以上入り浸っていたのだから、居心地が悪いわけでは決してなかったのだろう。
実際、俺も疲労感を感じながら妙にむず痒い感情が溢れて来るのがわかる。

俺は……アクセラレータは、嬉しいのだろう。

自分の気持ちに『だろう』なんてつけるのはおかしいかもしれないが、一方通行は自分に対してもかなりひねくれているらしく、自分の気持ちさえも掴ませてくれない。
今、ふと思う。

『俺』ではなく、『一方通行』がこの世界に降臨していたら、今ごろ麻帆良はどうなっていたんだろう、と。

俺が思うに、そう今と変わらない状況が作られていたのではないかと思う。
対人関係うんぬんは少し違ってきたかもしれないが。
一方通行がこうやって歓迎パーティをされていたかもしれない。
そう思うと、やはり笑いがこみ上げて来る。
客観的に見て、原作と同じ性格のアクセラレータが歓迎パーティをされて呆然としている所は爆笑モノ以外の何者でもないからだ。
アクセラレータから見ればまったく面白くないだろうが、もっと素直になればまた別の結果が生み出されていたかもしれない。
俺が一方通行に引きずられずにもっと素直で一般人的な行動をしていたら、おそらく超もエヴァも見向きもしなかっただろう。
俺は単なる異邦人としてどこぞの男子寮にでも住まわせられる事になったに違い無い。
もしかしたら俺が女で、2-Aに編入されている、と言う可能性もある。

未来というのはただ一点が変わるだけで無限の可能性がある。

未来を選択し、他の未来を切り捨て、無限から一つの可能性を手に取るのが現在進行というものだ。
もっと素直になっていれば、また彼女達とも別の関係を築けたかもしれない。
更に親密な、パーティを開いてくれていても俺が驚かないくらいに。

もちろんそれは願望に過ぎない。

そして今こうやって願望として考えている以上、俺の中にも彼女達と仲良くしたいと言う意志が芽生え始めているのだろう。
一方通行の理念に反することだ。
彼が誰よりも最強の力を求めたのは自分の中途半端な力によって誰も傷つけたくなかったからだ。
無敵になって孤高になれば、誰も傷つかなくて良い。
誰かが傷つく事は止められないが、少なくとも俺の犠牲になる奴等はいなくなる。
偽善、自己満足といえばそれまでだが、一方通行にとってそれが最善だった。
俺が今でも力を求め続けているのはそういった一方通行の考えが俺に影響を及ぼしているからかもしれない。
俺と一方通行の意識は中途半端に融合してしまっており、自分の意思かどうかわからない時がある。
少なくとも俺がこの身体に憑依している時とその前の人格は別物だ。
だから、そう思うのもアクセラレータ個人の意志ではないのかもしれない。

今現在、俺が求めている力……絶対の力を手に入れることができたら、俺の性格はどう変わってしまうのだろうか。

俺自身、変わってしまったら変わったその時に考える、と気楽に考えているからその辺りはあまり考えなくて良いのかもしれない。
何せ、漫画の世界に来て小説のチートキャラに憑依しても平然といられた俺の現地即時対応精神ならば、その場その場で生き方を変えていく事もできるはずだから。
俺の性格が難点だが、こんな世界だ、裏の仕事なんて掃いて捨てるほどあるだろう。
もうそろそろフェイトもこっちで動き出すことだろうしな。
そんな事を言えば、これから動乱の時期が始まる。


ネギ・スプリングフィールドの麻帆良教師就任。
バカレンジャー+αお勉強会IN図書館島地下。
『桜通りの吸血鬼事件』。
京都修学旅行。
麻帆良祭。
魔法世界での動乱。


来年の夏休みを含めてのビッグイベントといえばこれくらいのもんだろう。
俺、エヴァ、超、刹那。
おそらくこの四人は関わらないわけには行かないだろう。
登校地獄が解除されるアテがないため、エヴァは修学旅行には行けない……のだが、どうにも腑に落ちないことがある。

エヴァはこの世界では最強クラスの魔法使いのはずだ。

修学旅行も学業として行くことができるくらいのことはやってのけるような気がしてならない。
もしかしたら足掻いて試して失敗してもう疲れたのかもしれないが、色々と予感がするので可能性が無いと断言できない。
大きく変わる点としてはそれくらいだろう。
流石にエヴァが魔法世界にいくわけにもいかないしな。

二ヶ月後、冬休みが終われば原作が始まる。

その原作で俺が何をしたいのかというと、ズバリ魔法無効化能力者の攻撃が俺に効くのかどうか、だ。
それが効く効かないで俺の対応が違ってくる。
効くのなら俺の能力は魔法などを無効化する攻撃に対しては無力と言う事だ。
原作でもあった『斬魔剣・弐の太刀』などといった障壁貫通の斬激を反射できるかどうか、俺にはわからん。
だが、俺のチート能力がそれすらも反射すると言うのなら、もうこの世界で俺を倒せる奴はほとんど存在しない。
生物である以上一撃で殺せる技を持ち、遠距離攻撃ならば強力であれば強力な分相手の脅威になる能力を持つ。

ま、ゲーデルみたいな奴を一泡吹かすのも面白いかもしれないな。

もちろん、それだと俺が魔法世界へいくのが前提となるわけだが……まあ、なるようになるよな。
そう思いながらとあるコンビニの横を通ると、またザジ・レイニーデイと出会った。
何やらこっちをじーっと見てくるが、無視無視。
ザジ・レイニーデイなんて正体不明な奴と馴れ合いたく無い。
いつもなら『何メンチ切ってンだコラァ』とか言うのだが、この場合は無視するに限る。
ザジの視線を避けながら、俺は自宅に戻った。
肌寒い自室の温度を感じて、そろそろコタツの時期だな、と呟いた。






~あとがき~

超包子ですけど、週1で開かせることにしました。
不定期ですが。

さて、アクセラレータなりに今後の自分の身の振り方やその後の展開を考えています。
ですが、少し投げやりな所もあり、中途半端です。
それはアクセラレータがなんとかなるだろうと思っているからですが、このままダラダラしてくと到底私のシナリオ通りに進んでくれそうにないので、イベントを起こします。


次回は大晦日です。
いつものメンバーがやってきてほのぼのします。
……もうマンネリですよね……あんまり語る事がないです。


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