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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第2話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:11f779aa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/04 00:28
SIDE 一方通行

そこからタカミチに先導されて、俺は暗い街中を通り、漫画などで見覚えがある中学校へ向かう階段を上っていた。
後ろからの視線と殺気が痛い。
ポケットの中を探り、何故か入っていたガムを取り出す時は非常に緊迫した空気になったことを覚えている。
いくらなんでも警戒し過ぎだと思うのだが。
特に、今にも夕凪を抜こうとしているそこのサイドテール。
いくらこのちゃんが大好きだからといって何もかも排除するのはやめなさい。

ていうか、今気付いたんだが、俺がこうやって思っていることと俺の肉体の喋り方が全く違う事に疑問を持った。

勝手に脳内変換されているのだろうか。
これはこれで便利だが、一方通行って敬語とか使うのか?
初対面の相手にいきなりタメ口はまずかった。
おそらくあそこでオドオドして見せればこんな対応は取られなかったんだろうが―――いや、鬼を吹き飛ばした段階で既に言い訳は不可能か。
実際に、この三人もそれを警戒しているんだろうし。
タカミチも笑顔を見せてはいるが、その両手は油断なくポケットに突っ込まれているのがその証拠だろう。

……なんだかなぁ。

そんでもって、知らず知らずの内にこの状況に笑みを浮かべている自分がいる。
どうやら、まだ色濃く以前の一方通行の表情や感情などが残っているようだ。
だから鬼を殺すのも躊躇しなかったのだろう。
殺すという行動自体は俺はした事がなかったが、一方通行は腐るほどある。
人とは違う異形であるが、その異形を躊躇なく葬り去った自分の容赦のなさに、少しだけ恐怖した。
もしかしたら今考えているこの考えも、一方通行と交じり合っているのかもしれない。

今の自分が自分ではない気がした。

だが、その考えは学園長室の前に来ると心の中にしまった。
今考えるべきはあの学園長対策だ。
あのぬらりひょんは言葉巧みにこちらを向こうの都合の良いような思惑に乗せようとしてくる。
断るべきことはしっかり断らなければならない。
もちろん、一方通行がこちらに戸籍なんてないのだから、その辺は学園長に頼らなければならない。
警備員になるくらいなら良いだろう。
住居はできるだけ森の近くが良い。
のんびりできるからだ。
そんな事を思っていると、タカミチがドアをノックして扉を開いた。
「失礼します、学園長。先ほど連絡した彼をお連れしました」
その中に入ると……いるわいるわ、見覚えのある魔法先生や魔法生徒がずらり。

まず正面に座るのは言わずと知れたぬらりひょん、近衛近右衛門。

麻帆良最強の魔法使いらしい。
魔法を使ったところは一回も見た事がないが。

その右手にいるあの黒人タラコ唇はガンドルフィーニだろう。

その隣にいるのは高音・D・グッドマンと佐倉愛衣。

他にも原作では見た事がない人達もいた。
皆、俺を警戒した目で見ている。
特にガンドルフィーニや高音の視線は刹那に匹敵する鋭さを持っていた。
タカミチと刀子が学園長の左手につき、後ろでは刹那が扉を閉めた。
四方を囲まれる形になる。
このまま脱出するには学園長、ガンドルフィーニ、タカミチという三大防壁がある目の前の窓からは無理だし、後ろから行くとしても何か行動を起こしたらタカミチの居合拳が飛んで来る。
怯んだ瞬間を刹那やガンドルフィーニが見逃すはずがない。
まあ、もちろん正面突破は可能だし、その気になればさっきのプラズマをここに召喚して阿鼻叫喚の地獄絵図を再現してやってもいいが。
……待て、今の思考はかなり一方通行よりだったぞ。
やっぱり混ざってんのかなあ……。
そんな事を思っていると、学園長がバル○ン笑いをして話しかけてきた。
「早速じゃが、ワシはこの麻帆良の学園長を務めておる近衛近右衛門じゃ。気軽に学園長と呼んでくれい」
それに俺は辺りを見回しながら、
「……気軽に発言できる状況じゃねェな。いくらなンでも雁首揃えすぎてンじゃねェのか?」
実際、タカミチやガンドルフィーニはともかく刀子や刹那、高音までいるのは異常としかいいようがない。
タカミチ、ガンドルフィーニの二人がかりならば俺のようにひょろっとした青年などイチコロだろうに。
それほど俺の実力を買っているという事か。
俺の発言に学園長はフォフォと苦笑する。
「それもそうじゃな。じゃが、怪しむ理由くらいはわかっておるんじゃろう?」
「まァ、化物を倒しておいて記憶喪失だなんて都合が良いにもほどがあるからな。……で、本当にここはどこなんだ?麻帆良ってのは地名か?」
というわけで、俺は学園長からこの世界の常識などを教えられた。
まず、ここは麻帆良という学園都市だという事。
日本でも最大規模の学園都市で、その裏は関東魔法協会と呼ばれる魔法組織の総本山でもある。
ここにいる人物は全て魔法関係者であるが、魔法は秘匿される情報なので我々が魔法使いである事は極秘である事。
あの化物については、関東魔法協会と昔から仲が悪い関西呪術協会から送られてくる刺客で、この麻帆良のどこからでも見える世界樹と呼ばれる大きな木の情報を知るため、あるいは関東魔法協会の戦力を削ぐために鬼や悪魔を使役して襲撃をしてくるらしい。
今回はそれの迎撃をしていたのだが、そこに突然俺が現れたという事。
そして、一般人にはとてもではないが倒せない鬼を無傷で倒すなど常識では考えられないので俺をここに呼んだ、とのことだ。
「で、ワシにも聞きたい事があるんじゃが、いいかの?」
「あァ」
「君は鬼の一撃を食らっても平然としていた……それに、呪文詠唱を行なわずにアレほどの破壊を巻き起こしてのけた。一体どうやったのじゃ?」
それについては、俺は白を通すことにしていた。
「さァ?」
その瞬間、俺の横から怒声が響いた。

「ッ、私達をおちょくってるんですか、あなた!?」

噛みついたのは高音だった。
まあ、そろそろ誰かが噛みついて来る頃だと思ってたがな。
俺はそっちにジロリと目を向けた。
「俺は学園長と話してンだ。口出すンじゃねェよ」
「ぐっ、だからって―――」
「よすんだ、高音君。彼の言っている事は正しい」
横にいるガンドルフィーニの言葉によって、高音はこちらを睨みつけながらも引き下がったようだ。
そう、それが賢明って奴さ。
俺は視線を学園長に戻す。
「アンタ達魔法使いってのは、魔法を使うときにムニャムニャ呪文を唱えなきゃならねェのか?」
「その通りじゃ。佐倉君、少し見せてやりなさい」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
いきなりのご指名に佐倉はびっくりしたようだった。
その狙いも何もない純真ないじめられっこ体質の佐倉を見て、思わず俺は笑ってしまった。
それに釣られてか、タカミチからも苦笑が漏れる。
もちろん、ガンドルフィーニや高音は良い顔をしなかったが。
「ぷ、プラクテ・ビギ・ナル。火よ灯れ」
佐倉が掲げた小さな杖から、ポッ、と小さな火が出た。
それを見て俺はふーんと呟いた。

「百円ライターの方が速ェんじゃねェの?」

「身も蓋もないのう、お主……」
この『プラクテ・ピギ・ナル。火よ灯れ』は初心者が魔法を使うために行うものであり、これを行うにもそれなりの練習がいる。
それを百円ライターで済むんじゃね?といわれれば、学園長としても頬を引きつらせる事しかできなかった。
まあ、一般人の感覚なんてこんなもんだ、と思って欲しい。
「他にもいろいろと呪文のバリエーションはあるんじゃ。使う者によっては山も軽々と吹き飛ばす呪文を唱えられる者もおる」
「山を?すっげェな」
実際、漫画ではナギの雷の暴風が山を吹き飛ばしていた。
千の雷辺りを使えばものすごい事になっていただろう。
俺が正直に感心したので、ライター発言に不機嫌な顔をしていた高音の顔が少し緩んだ。
緩んだとは言ってもまだ厳しい表情をしていたが。
「……話を戻すけどよ、呪文詠唱がどうのこうのなンざ、俺ァ知らねェ。アレは風を操っただけだ」
「風を?どうやったんじゃ?」
「なんつーんだ、あァー……こう、ぐるっ、て感じ?そんな感じでやったらできたンだよ」 
呪文を必要とせず、ただイメージするだけで風を操れる、と学園長達は思っただろう。
本来は頭で膨大な演算をしているのだが、別にそこは明かすべき事柄ではない。
「刀子君。彼は魔力や気を使ってなかったと言うが、本当かね?」
「はい。彼は一切魔力や気を使っていませんでした。これは私の考えですが、我々とは違う系統の魔法使いなのかと思われます」
「ふむ、我々も認知できない未知の力による魔法か……」
まあ、そう捉えてもらって構わないだろう。
どうして超能力が発動するのか、明確な原理そのものはとある魔術の禁書目録の作中では明記されなかった事だし。
AIM拡散力場が関係しているのかもしれないが、あれはそもそも能力者が作り出す力場だ。

脳内にある幻想を現実に呼び起こす。

それこそが能力の発動原理だと俺は思っているが、それなら一方通行は常時脳内に自分の周りのベクトルを反射するように意識しているというのだろうか。
しかも、無意識に。
意識しているのに無意識とは、これまた意味不明な事だ。
……まあ、考えても無駄なことだ。
ネギま!でも詠唱して魔力を込めるという行為自体自己暗示のようなものだろうし……とある炎の魔術師、ステイル・マグヌスは詠唱や殺し名を名乗るようにしていた。
あれも自己暗示だとすれば、究極的には能力者と同じような考えにいきつく。
出鱈目だろうが、脳内の妄想を現実に引きずり出す、と言う認識でいいだろう。
こんな自論を今ここで発表する事もないので、俺は黙っておく事にした。
「鬼の攻撃に耐えられたっていうのは、俺もよくわかんねェ。夢中だったし、俺のこの風を操る力が無意識に発動したのかもしれねェ」
「君は記憶がないと言っていたね?どうしてその風を操る力とやらがわかったんだ?」
ガンドルフィーニが話しかけてきた。
あァ、とダルげに答えながら、俺はガンドルフィーニに説明してやる事にした。
「アンタ、脳医学ってのは習ったコトあるか?」
「脳医学?いや、私はあまり詳しくないが・・・」
「人の頭ってのァ便利にできててな。頭が混乱したり、パンクしねェようにいくつか担当する記憶が別れてンだよ。言葉や知識を司る意味記憶。運動の慣れを司る手続記憶。そして思い出を司るエピソード記憶って感じにな。記憶喪失ってのァよく本とかに出てくる話だが、ソイツがいきなり言葉を忘れたり、鉛筆の持ち方がわからなくなったりすることはねェだろ?俺はその内、エピソード記憶を忘れちまったみてェだから、知識として俺の能力の扱い方は覚えてンだよ。経験は全くねェけどな」
その流暢な説明に、その場の全員が驚いたようだった。
「……ンだよ。気味悪ィぞ」
「君、歳はいくつなんだ?そんな知識は普通の学校では習わないはずだが……」
「知るか。記憶喪失だっつってンだろ?」

自分でもびっくりだ。

この身体、流石に学園都市最高の優等生だけあってブレインの方はかなり優秀らしい。
すらすらと言葉が出てきた。
自分で言っててなんだが、自分が気味悪い。
平凡かつ平凡かつ平凡の俺は説明するのに向いていないし、頭もあまり良くはなかった。
やはりここはチート肉体に感謝しなければならないだろう。
「で、結局俺って何者なんだ?」
まずはそこだ。
自分が何者か、それを確立しなければ話にならない。
一応事情を聞くにしても俺が何者なのかはっきりしないと進展も望めないのだ。
「まあ待ちなさい。既に魔法で君の顔写真のようなものを作って調べさせておるよ」
「慣れてンだな?」
「記憶喪失というケースも麻帆良じゃ少なくないからの。対応にも慣れるというもんじゃよ……おっ、噂をすれば」 
ドンピシャ。
プルル、と鳴る受話器を取り、学園長が何事か話し、受話器を置いた。
こんなに近くにいるというのに、俺には全くその内容がわからなかった。
声そのものは聞こえるのだが、内容がわからない。
今思いだそうとしても無理なのだから、いくらなんでもおかしい。
これも魔法と言う奴なのだろうか。
そう思っていると、学園長が済まなさそうに言ってきた。
「……ちょっと困った事になったのじゃが」
「俺の住所がわからねェのか?」
「言いにくいが、その通りじゃ」
学園長が言うには、俺のようなケースの……自分の名前を知らない人間でも個人情報はきちんと存在するので元いた所にちゃんと戻せるようだが、いかんせん俺は異世界人だ。
この世界に戸籍が存在している事がおかしい。
「ってことは、彼は正体不明の人間と言うことになりますね……」
タカミチが言うと、周りの警戒心は一気に高まった。
バラバラにはされないが、このままでは戦闘になりかねない。
そうなれば原作はパーだし、戦闘は極力避けたいし、人殺しなんてしたくない。

プラズマに吹き飛ばされたスプラッタ死体なんざ見たくもない。

「まあ待ちなさい。彼が正体不明の人間であろうとなかろうと、敵でない事は明らかじゃろうて」
「どうしてそう言えるんですか、学園長!?」
ガンドルフィーニが叫ぶが、重みのある声で学園長は言った。
「彼がその気になれば、我々など瞬く間に殺されてしまうからじゃ」
「……誤解を招く言い方はやめて欲しいンだが」
こいつは思考を読めるのか、と冷や汗を流した。
「一応、俺はアンタらと敵対する気はねェ。戸籍もねェ、金もねェじゃ生きていけねェからな」
そう言うと、学園長は悩んだようだった。
どうやら、こちらの意図に気付いたらしい。
戸籍がないんなら、学園長が作れば良い。
金がないんなら、学園長が働き手を見つければ良い。
俺は現在戦力不足であるあの仕事にはうってつけの実力を持っている。
そして、俺に恩を売っておけば後々頼み事も……とか思っているんだろうが、俺はそこまでお人よしじゃない。
好きに動かされると思うなよ。
そう思っていると、学園長は諦めたようなため息をついて呟いた。
「……わかった。君の戸籍を作り、雇い先として君を警備員として雇おう」
「学園長!?」
俺が学園長の言葉にしてやったりとばかりに笑みを浮かべると、ガンドルフィーニが過剰に反応した。
やはり、彼は正体不明な存在、悪と定義される存在に排他的だった。
ガンドルフィーニが納得しきれないと思ったのか、学園長は『ただし』と一つだけ条件を付け加えた。
「君を一ヶ月間、監視させてもらう」
「あァ?」
俺が不満げな声を上げるが、こればかりは譲れないと学園長は強い目でこちらを見やった。
おそらく、それが学園長の最大限の譲歩なのだろう。
それが学園長が俺を信頼してくれた証拠なのかはわからないが、学園長がこちらに敵意を抱いているのではないと言う事が確信できた。
……いや、こちらが見抜けないほどの演技なのかもしれないが。
しかし、ここで断れば麻帆良に俺の居場所はない。
戸籍もない状態で日本で生きて行けるわけがないので、俺はこの提案を了承するしかなかった。
「シャワールームとか覗くんじゃねェぞ?」
それは事実上、了承の言葉だった。
「無論じゃ。ただ、部屋の中は覗かせてもらうぞい?」
「構わねェ。別に、俺は寝てるだけだと思うしよォ」
とりあえず首輪のような物がついたことにホッとしたのか、学園長がこう問い掛けてきた。
「で、君の名前はどうするんじゃ?田中太郎にでもしておくかの?」
「ブッ殺すぞ」
そう言って少し殺気を放ってやる。
すると、魔法先生たちの顔色が変わった。
ガンドルフィーニは即座にナイフを取りだし、刀子は刀を抜き、タカミチは重圧のこもった目でこちらを睨んでいた。
正直に言うとチビりそうに怖い。
俺がもし元の姿なら、この場で土下座して『調子こいてマジすんませんしたーッ!!』と謝っていることだろう。
だが、俺は一方通行。
俺の肉体は恐ろしい事にこれくらいの殺気ではびくともしないようだった。
それどころか、彼等の動きを捉えて感想まで述べる余裕があった。
「反応が遅ェぞ。もォ少し速く行動できねェのか?」
高音や佐倉に至っては俺の殺気に当てられて動けないようだ。

あれほどうるさかった奴が顔を真っ青にして黙ると言うのは思いがけないほど爽快だった。

俺の言葉に周りは更に緊張した空気に陥るが、頃合を見て俺は肩を竦める仕草をした。
「ジョーダンだよ、ジョーダン」
くくっ、と笑いながら告げる。
これで彼等の警戒指数は上がっただろうが、しょうがない。
思わずぶっ殺すと言ったこの身体が悪いのだ。
どうやら、アクセラレータに冗談は通じないらしい。
内心でため息をつきながら、俺は少し虚空を見つめた。

名前のことを考える必要があったからだ。

生前の名前でもいいが、魂だけの存在に名は不用だろう。
ならば、この肉体の主の名前を借りるべきだと思う。
「俺の名前は一方通行だ」
「アクセラレータ?」
「あァ。ポッと頭に思い浮かんで来やがった。もしかしたら、俺はそんな風に呼ばれてたのかもしれねェと思ってな」
「……しかし、戸籍にそんな名前を書くわけにはいかんの」
「なら、漢字で一方通行(ひとかた みちゆき)って書いてくれねェか?日本人っぽい名前にはなるだろ」
これで、俺の名前は一方通行に決まった。
みちゆきでもひとかたでもいいが、できればアクセラレータと呼んで欲しい。
多分、この一方通行の肉体がアクセラレータ以外の呼び名を拒絶するだろうから。






SIDE 近衛近右衛門

いや、あのような目をする若者と言うのは実に久しぶりじゃのう。
そう思いながら、ワシは彼の細い背中を見送っていた。
刀子君、そして付き添いとして刹那君の案内によってとある空き部屋へ案内される事になっておる。
流石に野宿はかわいそうじゃからの。
刀子君、刹那君、そして彼が学園長室から去ると、ガンドルフィーニ君が険しい表情でワシを睨んできた。
「あんな未知数な者を麻帆良の中に招き入れるとは、どういうことですか、学園長」
「どうもこうも、これ以外に方法はなかったじゃろうて」
彼のオーラというべき気配は、裏の匂いしかしなかった。
時折表の気配も混ざるが、おそらくそれは記憶喪失しているからなのだろう。
彼の背後に見える大きな闇。
彼の抱えるそれがどれほど大きいのか、それがわかっているのはおそらくワシとタカミチ君以外におらんじゃろう。
ガンドルフィーニ君もそれをわかっていない大多数のものに入る。
どうも、ガンドルフィーニ君は頭が硬いのじゃよ。
「彼……アクセラレータ君を今外に放ってしまうのはあまりにも危険じゃ。下手をすればあの能力を使われて強盗や殺人まがいの事を起こすかもしれん。魔力や気を察知できん力を使うのじゃから、全世界に飛びまわられたら厄介じゃ。それを防ぐためにも麻帆良に閉じ込め、彼が生きることができる環境を整えてやらなければならないのじゃよ。そうすれば、少なくとも麻帆良を攻撃する事はあるまいて」
「……しかし、彼は危険です」
その深刻そうな表情を見て、ガンドルフィーニ君は彼なりの感覚でアクセラレータ君の闇を捉えたようじゃった。
ただ、どうやらその大きさを掴んでいるようではなさそうじゃな。

彼の闇そのものを捉えられたのなら、手元において監視した方が良いとわかるじゃろうに。

「あれほどの殺気、常人が放てるものとは思えません。おそらく相当数の修羅場を潜って来た者かと思われます。あの見た目では驚きですが……それにしても、中学生や高校生レベルの年齢の者ができる真似ではありません。もしかしたら彼も『闇の福音』のように見た目では判断ができない年齢なのかもしれません。そして人外ならば、魔力でも気でもない力を使う魔法の行使も可能かと思われます」
「それらは全て推測に過ぎんのじゃよ、ガンドルフィーニ君」
そう、全ては推測じゃ。
ガンドルフィーニ君が言っている事は、確かにもっともな事じゃろう。
彼は危険じゃ。
それに間違いはない。
だが、だからと言ってこの麻帆良から追い出すというのは限りない下策だ。
「彼を恐れるのはわかる。彼が何かしでかさんと言う保証もない。じゃが……彼は何か我々にとって重大な事件を起こしたりするとは思えんのじゃよ」
「根拠はあるのですか?」
「カンじゃ」
ワシは取り繕ったりせず、スッパリサッパリそう言った。
そう、彼を疑ったりせん理由は他の何でもない。

カン。

それだけじゃ。
「ワシの長年のカンは彼が危険じゃないと訴えおるんじゃよ。大きな力は確かに正義と悪に二分されやすい。悪の力は確かに我々魔法使いが討滅すべき存在なのかもしれん。じゃが、彼が扱うのは莫大な力その物であって、決して悪ではないと思うのじゃよ。莫大な力はそれだけでは決して危険ではない。彼も口調は悪いようじゃったが、頭の中はどうやら利口な青年のようじゃからな。この一年間で一切問題を起こさなかったら、ワシは彼を危険視する事はやめるつもりじゃ」
「僕も同意見ですね」
今までずっと黙っていたタカミチ君がワシに同意した。
やはり、タカミチ君はわかっとるようじゃな。
「彼の殺気は、僕は意識的ではなく無自覚にやったものだと思うんです。あれがただムカついただけで放たれる殺気なら、明確な殺すという意志で放たれた殺気は凄まじい物になりますが……彼はそういう『裏の力』と言うべき純粋な能力ではない力の制御ができないのではないかと思います。だからさっきはあのような状況になってしまったのだと思います。おそらく、記憶を失う前は裏社会を幼い頃からくぐり抜けてきたのでしょう。それに……彼の目には理性がありました。彼の事を良く知らないのに否定するのはよくないことですしね」
「……なら、この麻帆良に突如として出現した理由はどう説明されるのですか?」
「それは僕にも……」
「ワシにもわからん。転移魔法か何かで麻帆良にやってきたと考えるのが妥当じゃろうが、それが彼の意志なのかどうかは誰にもわからん」
ワシらがイマイチ彼を信用できない理由、それがどうしてあそこに彼がいたのかわからないからじゃ。
ワシの見立てによるとおそらく彼は何らかの事故に巻きこまれ、転移魔法を食らってしまった。
その過程で記憶を消失してしまい、転移魔法で結界を突き破って麻帆良へやってきた。
どうして麻帆良なのか、というのは偶然の一言で片付けられるレベルの事柄である。
まあ、それもこれも彼が記憶を取り戻してからの話になりそうじゃわい。
兎にも角にも、いざとなればワシが全ての責任を負って決着をつける。
彼が良からぬことを企む輩であるのならば、
このかや生徒達を危険な目にあわす悪党なのだとしたら、
迷わず、私の杖で貫いてやる。






SIDE 一方通行

刀子に案内された場所は小さなアパートだった。
事情を聞くと、何やら事情のある子たちや寮の人間になじめない子たちがこういう所に住んでいるらしい。
クラスに一人くらいは不登校の奴がいると思っていたが、この麻帆良でも例外じゃないみたいだな。
その中には、俺のようなわけありの人物もいるらしい。
まあ、別に係わり合いになる訳じゃないからわりとどーでも良い話ではあるが。
「ここがあなたに割り当てられた部屋です」
どこか作業的な声で刀子が言う。
おそらく、殺気を放ったり未知の力を使う俺を恐れているのだろう。
あるいは、敵とみなしているのだろうか。
どちらでも良い。

来る敵は拒まずに叩き潰すまでだ。

そう思っていると、刀子から携帯が投げ渡された。
「この携帯で、明日学園長から呼び出しがかかると思います。十時ごろといっていましたから、それまでに起きていてください」
「わァーったよ。それにしてもホントに用意がいいな」
「これだけ大きい学園都市だと、それだけ問題が起こるんです」
「……それにゃ同意するな」
実際、一方通行のいた学園都市なんてひっくり返せば血と肉の渦のようなもんだったからな。
麻帆良はまだ平和なのか、それとも学園都市が異常なのか。
……またどうでもいい話だ。
「で、俺ァもう寝てもいいのか?」
その言葉に刀子は少し面食らったような顔をした。
「別に何をしようがあなたの勝手ですが……まだ七時ですけど」
「……なンか眠くてたまんねェんだよ。別にいいだろ俺の就寝時間が速くてもよォ」
そう言いつつ、俺はその部屋のドアノブに手をかけた。
そこで、何かを思い出したかのように振り向く。
「あァ、悪ィな、案内させちまって。じゃあな、オヤスミ」
ひらひらと手を振って、俺はドアを閉めた。
ドアの隙間から見えた彼女達の表情は、実に滑稽だった。
刹那もそうだが、刀子のぽかんと呆けた顔というのはレアだ。
やはり、生真面目な人間ほどからかうのは面白いらしい。
あの二人はどうやら俺が礼を言うなんて思わなかったようだ。
俺はそう思ってこみ上げて来る笑いを噛み殺しながら、靴を脱ぎ、真っ直ぐ廊下を歩いてそのままベッドに寝そべる。
しかし、改めてこういう場所に隔離されると、俺がこの世界に一人で取り残されたのだと実感してしまう。
クラスでは友達もおらず、極平凡の成績で標準的な生活を送ることで目立たなかったおかげで話せる相手はほとんどいなかったが、それでも失って初めてわかる我が家の大切さと言う物を実感する事ができた。

今からは一人で生きていかなければならない。

俺の武器は最強のチート肉体と負けず嫌いな根性だけだ。
この武器を持って、これから現実に戦いを挑まなければならなくなる。
俺の頭脳は原作知識を元に凄まじい勢いで大雑把なこれからの計画を立てていく。
たいていの人物像は掴んでいるので、明日は麻帆良を探索するという計画となった。
あのジジイのせいで狂うかもしれないが。
今回わかった事だが、あのジジイは基本的に善人だ。
お気楽でもないが、お人よしだ。
巨大な麻帆良という組織をまとめるのなら、ガンドルフィーニの方が適任だと俺は思う。
だが、ジジイが学園長でやりやすいのは確かだ。
せいぜい足掻かせてもらうよ。
俺はずるずると硬い枕を抱くように移動し、そのまま寝入った。
この世界に出現した最強の超能力者の最初の一日の終わりだった。






SIDE 桜咲刹那

私が同行を申し出たのは、決して刀子さんの腕を侮っているわけではない。
私は私でこの男を見極めたかったのだ。
おそらく、見た目からして年上の、一方通行と名乗るこの男。
こいつがお嬢様を狙う刺客じゃないと言う保証はないからだ。

私もバカじゃない。

……いや、確かに学校の成績はちょっと悪いが、そんな意味ではなく。
直にお嬢様を狙う刺客かと聞けば早いだろうが、もしイエスだったら学園長のやった取引などはパーになる、ということだ。
学園長達は良い顔をしないだろう。
それに、彼の実力は未知数だ。
鬼の腕力を持って振り下ろされる棍棒の一撃は、私でも容易に受け止める事はできない。
それを身じろぎもせずに受けとめ、反撃さえしてのける。
私より細いんじゃないか、と錯覚させるほどひょろっとした細い腕や脚からは想像もできない威力で鬼達を殴り飛ばし、蹴り飛ばす。
おそらく、私だけでは敵わないだろう。
だが、この男が張っているのはおそらく障壁。
私の雷鳴剣と刀子さんの雷鳴剣は地形を変える威力を持つ。
まともに食らえば彼とて無事ではすまないだろう。
……まともに食らえば、と言う話ではあるのだが。
さて、私達は夜の道を歩いているわけだが、この男、緊張感の欠片もなく欠伸などをしている。 
しかも御丁寧に『ふぁーあ、眠いなァ、オイ』というおまけ付きだ。

斬ってやりたかった。

刀子さんや私がどのような気持ちで歩いているのかなんて全く知らないし、わからないのだろう。
彼の言う事を信じるとすれば、彼は記憶喪失。
人の感情を察する『エピソード記憶』が不足しているのなら、空気が読めなくなったと思ってもらっても良いだろう。
それであの殺気を放つのだから、冗談ではない。
裏の者独特の匂いもするし、記憶喪失が演技なのか、それとも本当なのかは曖昧なのだ。
学園長の気持ちがわからなくもないが、それでもこの男を麻帆良にとどめておくのが危険とは思わないのだろうか。
あの学園長の事だから、何か考えがあるのかもしれないが。
そう思っていると、アパートの前についた。
私も何回か訪れた事があるが、相変わらずボロい、古びたアパートだ。
何か幽霊でも出そうな感じだ。
とあるドアを指差した刀子さんは携帯を取り出して彼に渡し、明日に呼び出しがある事を告げた。
彼は用意がいい様子に呆れていたが、私だってそう思う。
いつの間にあの携帯電話を渡したんだろう、学園長は。
無駄なところで強者スキルを発揮したりするから困ったものだ。
そう思っていると、彼はぽつりと言った。
「で、俺ァもう寝てもいいのか?」

はぁ?

何故そんな事を許可する必要があるのだろうか。
私の困惑は刀子さんも同じだったらしく、少々戸惑いながらも答えた。
「別に何をしようがあなたの勝手ですが……まだ七時ですけど」
「……なンか眠くてたまんねェんだよ。別にいいだろ俺の就寝時間が速くてもよォ」
そう言いつつ、彼は再びその部屋のドアノブに手をかけた。
そこで、何かを思い出したかのように振り向く。
「あァ、悪ィな、案内させちまって。じゃあな、オヤスミ」
私達は思わず呆気に取られて彼を見つめてしまった。
失礼かもしれないが、とても彼は礼を言うような人間には見えなかったからだ。
粗暴な言動、不良を思わせる三白眼、身体から滲ませる『近寄るな』と警告するようなオーラ。
経験上、そんな人物はまともな奴ではないので、そんな雰囲気を漂わせている彼が素直に礼を言うなんて思えなかったのだ。
そして最後。
ドアが閉まる直前に見えた、彼の背中。
見た目にも頼りないその背中は震えていた。
笑いか、それとも悲しみか、それは私にはわからない。
だが、その姿はとても哀愁を漂わせていた。
まるで、過去の私のように。






~あとがき~

ようやく書けた……いや、書きすぎか?
ていうか、改めて見直したらぬらりひょんがカッコイイwww
なんで俺こんなにカッコよくしたんだろ?
その場のテンションって、怖いっす。


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