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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第18話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:11f779aa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/31 22:41
SIDE 一方通行

麻帆良祭も無事終了し、夏休みに入った。
と言ってもコレと言ってやることはなく、俺は普通の夏休みライフを満喫していた―――というわけではない。
エヴァの別荘からいろいろと本を取り出し、魔法についての勉強を始めたのである。
どうせヒマだし、詰めこんでおいて損はあるまい。
プラクテなんたらも試したのであるが、ベクトル操作という超能力を持つ俺と魔法は相性が最悪らしく、タカミチと同じで呪文詠唱ができないという欠陥があった。
魔術と魔法は違うらしく、身体がブッ壊れるようなことはなかった。
危ないとは思ったが、血流操作もできるので死にはしないだろうと思ってためしたのだが、何の影響もなくて良かった。
しかし、流石にこのチートボディでもできないことはあったようだった。
まあ、俺の場合このベクトル操作だけで反則的に強いのだが。
この事実を知られたとき、タカミチがやけに嬉しそうに『いやぁ、そうか、あっはっは!君にもそういう欠点があったのか!!』と自爆的なことを言っていた。

チッ、どうせ気とか咸卦法なんてさっぱりできねェよ。

気の操作の修行はやっているが、まだ気の運用は可能になっていない。
気というものを戦闘に応用するには基礎が大切らしく、その基礎の途中である。
硬気功とか覚えて反射を破られた時の保険にしたいんだが、その道はまだ険しく、遠い。
武術についてであるが、これもまだ基本。
達人から見ればもう殴り放題らしいが、俺の能力は反射。
文字通りカウンターを決める事ができる。
隙だらけのように見えて攻めれば鬼門。

反則である。

俺は反射があればたいていの敵は勝てるし無限縮地もあれば時空断烈剣的な空間その物をどうにかする必殺技を食らう事はほとんどないだろう。
しかし、プラクテなんたらができなかったときはショックだったな。
初めてエヴァにバカにされて言い返せなかった。
ま、その詠唱魔法とかがなくても俺にはベクトル操作で大気を操る力があるからあまり問題ないわけだが。
その気になれば数百メートルクラスのプラズマを作り上げることだって可能だし、詠唱時間を考えれば千の雷に匹敵する力を持つのは間違いない。
数キロ単位になるともはや戦略核クラスの規模になるので一分間くらい息を止めなければならなくなる。
そのおかげで鍛えた肺活量には自信がある。
所詮、一般人に毛が生えた程度でしかないのは確かだが。
さて、この夏休みで変わったことと言えば、ズバリ俺の知名度である。

『デスメガネ』タカミチ・T・高畑と匹敵するくらいに『ホワイトデビル』一方通行の名前は有名になったのだ。

そのおかげで古菲のように喧嘩を売られるわ売られるわ。
叩き潰される事が目的なマゾ野郎に興味はないため、再び向かって来る事がないように念入りにボコっておいた。
おかげで『デスメガネ』よりも容赦がない広域指導員として君臨する事になった。
その結果、麻帆良の治安は更に良くなり、商店街の皆様は喜んでいらっしゃられる。
恐怖政治のようなそのやり方が気に食わないものの、実際に成果は出ているので高音は文句を言えないようだった。

そう、そういえばその高音だ。

ガンドルフィーニ、高音、愛衣のチームに俺は編入されていたわけだが、この度刀子がヒゲグラと組んで出張が多くなってしまったため、俺は戦力の均等化のため刹那・龍宮チームに急遽編入される事になった。
裏事情として刀子が出会いを探しにいくため、という噂があるが、定かではない。
ちなみにこれ、龍宮は普段金で雇われる傭兵ゴルゴなので、三回に二回ほどは俺と刹那での出撃となる。
龍宮が出張らない時はとある事情によって最近見回りに出ることができなかった魔法先生が龍宮分の働きをするらしい。
とは言っても別のグループでの話だし、俺自身バランスブレイカーだから龍宮は別の班に所属しても良いんだけどな。
刹那と二人きりと言う機会を経て急接近……的な展開はなく、刹那はひたすら真面目に学園長から任された任務や仕事を行っていたため、俺はその真面目っぷりに呆れる事もしばしばあり、空気が悪くなった事も多々あった。
まだこのかと和解せずに尖っている頃の刹那なのであまり深くからかってはすぐにキレてしまうのだ。

とある幼女くらい沸点が低いのである。

……それはさておき。
俺がこれまで恐れていたのはそろそろ俺以外の転生キャラが原作キャラにちょっかいをかけてこないかということだったが、今の所そういうキャラはいない、はず。
だって全員を把握しているワケじゃないし、少なくとも俺の周りにいる原作キャラに対しての動きはない。
なんというか、俺の世界の人とか超来てほしくない。
筆頭は垣根提督やアレイスター。
神の右席の連中も勘弁。
前者はまず縮地でフルボッコできるしAIM拡散力場もないからアレイスターもとある計画を実行できないので俺と戦う意味もないからまだいい。
神の右席とかでフィアンマやテッラが来たらヤバい。
まだ話せそうなウィリアム・オルウェルやヴェントならまだ許せるが。
サーシャも嫌だな。
なんか天使の力を宿してるっぽいから暴発する危険性もある。
なんとか許容できるのが上条陣営の面々。
10万3000冊を始め超電磁砲や欠陥電気、ルーン使いやねーちんもまだいい。
青髪ピアスも土御門元春も……いい、のか?

モブキャラとかだったらもっと良い。

頭に花を乗せてる奴とか、記憶消されてる錬金術師とか。
その中で一番嫌なのはなんと言っても幻想殺しである。
あいつ、裏の事情とか知らずにフラグ乱立しまくる体質だし。
なんの自覚もなしに麻帆良大結界を破壊したりエヴァの呪いを破壊したりリョウメンスクナノカミを一撃で無に還すとかトンデモ行為を平然とやってのける腕を持つ、俺とは一味違ったチート存在だからな。
しかもタチの悪いことに恋愛フラグだけでなく死亡フラグまで乱立するもんだから手におえない。
復活フラグもあるから問題は無いんだが。
そんな奴だからこっちの事情を敢えて知らせておかないと場を滅茶苦茶に掻き回す可能性もある。

ま、聖人設定でもなきゃまず俺は負けたりしないけどな。

俺の無限縮地についてこれる奴はウィリアムとねーちんとミーシャ=クロイツェフくらいだし。
余計な事をしてくれなければそれで良い。
さて、そんな事を思っている俺は現在エヴァの別荘の書庫をあさっているわけだが、ここに打撃用の気の運用法などが書かれた書物が出てきた。
エヴァはどうやらある時期戦える力は全部つけると詰めこんだ時期があったようだ。
それを証拠に、咸卦法について書かれていたページは古ぼけていたり破けかけたりしていた。
挑戦して無理だったのかもしれない。
まあ、エヴァほどの実力者なら咸卦法もいらないのかもしれないが。
俺にとっては咸卦法はそれほど必要というものではない。
俺が今欲しているのは純粋な威力でも、移動力でも、防御力でもない。

速度だ。

ベクトル操作をすれば無限縮地も可能なのであるが、あくまで無限縮地は移動動作に過ぎない。
俺の攻撃速度は通常と同じかそれより速いくらいでしかないので、例え無限縮地で誤魔化しても気配で察知される可能性がある。
そんなことないだろって?
『紅き翼』とかいうバケモノ連中がいる以上、強くなるということはデメリットは全くない上にメリットはある。
それに、何と言ってもヒマだしな。
で、だ。

どうやったら攻撃の速度を加速させられるか。

原作のネギは闇の魔法で自身を雷化させて意識と身体能力も加速させた『雷速瞬動』を行っていたが、あれも瞬動や縮地の延長でしかない。
どう足掻いても移動術は実戦において攻撃術とはなりえないのだ。
その気になれば身体ごと地面に落下して隕石が直撃したような衝撃を与える事もできるが、隙が多過ぎる上に動きが直線的になるのでまず当たらないだろう。
ネギも雷化して同じような事やってたけどな。
だからと言って、俺の身体能力を底上げするにしても常人の身体では限度がある。
サウザンドマスターやラカンもあれは膨大な魔力や気で身体能力を異常なまでに上げているのだ。
もともとの身体能力が屑の肉体にそれを求めるな、と言う所だ。
そして、自慢にもならないが俺は体術ができない。
よって、上条戦のように体術(とはいえない稚拙なもの)でも防がれると歯が立たない場合がある。
だから、相手の認識速度を超える超速度での一撃必殺、あるいは短期決戦こそが俺の理想とする攻撃の型だ。
すぐ攻撃して俺がどんな攻撃も通用しないチート存在と思わせている内に倒す。
いやらしいが効果的だ。
最近では『ホワイトデビル』の特殊障壁は障壁じゃないのではという理論も出始めているらしいし、いつまでも反射に頼りきって生きていくわけにもいかないし。
ま、そうそう俺の明確な『天敵』が現れることはないだろうが。
だが現れないとも限らないので、こうやって地道に俺の戦闘手段を手に入れることにしているのだ。

ちなみに、今見ているのはこれ。

体から放出する気弾……原作でもやっていた『烈空掌』『漢魂』などといった基本的な気の運用方法の修行である。
それを見ていると、ふと思いついた。
茶々丸のように、身体の各所からブースターのようにジェットを噴出すことで体を強引に加速させれば、超速度を得ることができないだろうか。
普通なら脱臼したり加速に耐えきれずに骨が折れたりするだろうが、俺はその辺りの運動エネルギーの向きを自在に扱える能力者だ。
その心配はない。
俺に必要なのは速度のみ。
となると、これは案外必須ではないだろうか。
ならばと俺は席を立った。
思い立ったが吉日である。






SIDE エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル

アクセラレータが別荘の存在を知り、私の書庫を勝手にあさり始めた。
まあ、別に不快ではない。
どーーーしても私の溢れる知識が必要だとぬかすのだから、ちょっとは見せても良いかと思ったのだ。

対価?

最初は血を要求していたのだが、奴の血が異常なまでに不味くてな……。
学園都市とやらは確か薬やら暗示やらで能力を覚醒させる機関だったらしいから、その薬が血液に溶け込んでいるのだろうか。
とにかく不味かった。
不味いもんを好んで飲むほど私はモノ好きではないため、どうせならと奴の研究成果を引き換えにして別荘の使用許可を出した。
アイツの頭脳は折り紙つき、どうせなら成果を期待するべきだろう。
もう一つ、あまりに夕食をたかりに来るため夕食代を置いて行け、という条件をつけたが。
ジジイからの……正確には雪広コンツェルンの報酬でちょっとは懐が暖かくなったようだが、ケチな事に変わりはなく、かなり渋々と了承していた。
奴も魔法に対して興味がある、と思っていたのだが、それ以上に奴はこの世界に適応する戦闘方法の研究に入っていた。
これ以上強くなってどうすると一度問いかけた事があるが、
「上には上がいるって言うだろ?いざその上が来た時、勝てなきゃ終わっちまうだろ」
魔法がたいてい物理的攻撃である以上、奴の反射が破られることはまずないと思うのだが……。
そういえば、以前レベル0に負けたとか言っていたな。
それで過敏になっているのだろうか?
……まあ、奴の強さに対する探究心はどうでもいいか。
人間が強さを求めるのに理由なんぞ必要ないだろうし。

今、奴が現在求めているのは戦闘においての速度。

あらゆる反応速度を上回る速度での一撃必殺が理想らしい。
もちろん速度だけでは勝てんと言ったのだが、だから今は加速して攻撃できる手を考えていると言って書庫に入り浸っている。
正直に言うと奴を素直にここに入れているのは、奴の実験が楽しみだからでもある。
主に茶々丸やチャチャゼロを使って体術の訓練をしたり、その際に書庫でひらめいた新技を使ったりして私達を驚かせてくれる。
異世界の人間だからか、私達魔法使いの常識をとことん覆す発想をするのだ。
例えば、無詠唱の竜巻きが五つも六つも背中に取りついて巨大な竜巻きとなり、それをブースター代わりにしたことがある。
無謀だがそんなことをするやつがいないわけでもないのでOKとしよう。
ナギの奴なら雷の暴風を推進力にすることなんてやってのけそうだからな。
太陽光の向きを変え、それを収束させることで灼熱のレーザーとか撃ったこともある。
……まあ、それもいい。
しかし、更に体内に流れている脳が筋肉に命令を伝達する体内電気の速度までを加速させて自分の身体の動きに脳がついていけるようにしているのは驚いた。
それは魔法ではなく生物分野の話だからだ。
よりコンパクトに。
より無駄がなく。
より効率的に。
奴の数学的考えは非常に理解しづらい所もあるが、その独自理論によって実際に『えんざんはんい』とやらの無駄をなくしているようだ。
つまり、奴の戦い方は『極限の無難』なのだ。
堅実に戦い方を研究し、長所を伸ばすよりも短所を消す事を重視して行う。
発展を行わず、ひたすら基礎を見つめ直して新たな発見をしていく奴の姿は、本当に興味深い物がある。
既に最強と言われる力を持つ連中にやる事は、もう短所を埋めることくらいしか残っていないのかもしれないが。
まあ、それに興味があるのは私の隣にいるコイツも同じらしい。

「いやー、前時代の神秘の実験を実際にこの目で見れると言うのはマッドサイエンティストとして見逃せないものネ。アクセラレータはまだカ?」

超鈴音である。
時間跳躍をしてきてとある理想を驀進中のコイツにとって、別荘に入って歳を取るというのはあまり興味をひかない話題らしい。
たまにアクセラレータにくっついてやってきては勝手に飲み食いして軽く談議して去っていく。
密かに書庫に潜りこんでいるらしいが、私には興味がない事だ。
「知らんのか?奴はたまに一日中書庫にいたりもするんだぞ?」
「研究熱心な奴ネ」
「お前に言われたくないと思うんだが」

実際、『気が散る』と追い出されながらもきっちりと私の書庫の魔道書を持ってきている超鈴音が言える台詞ではない。

ここでアイスサワーを飲みながらたまに『ぷはぁー、極楽ネ。ずっとここにいたいヨ』というニート宣言をほざくだけだから、まだかわいい方だが。
茶々丸には久々に模擬戦を行わせている。
この別荘にいる茶々丸の姉にあたる人形たちの戦闘力もチャチャゼロには及ばないがかなりのものなので、そいつ等を適当に選んで茶々丸の戦闘訓練を積ませている。
ロボも修行をすると学習するらしく、ハカセによるとだんだんと反応速度などが全体的に向上してきているらしい。
たまにこうして戦わせないと腕が落ちる、というのもデータで取得済みだ。
まあ、このごろは姉たちとの戦いよりも、

「茶々丸!手ェ貸せ!」

アクセラレータの体術の実験台になることが多いのだが。
茶々丸もいつも快くそれを了承している。
姉たちとの肉弾戦闘訓練をやめて即座にアクセラレータの言う事に従っていた。
茶々丸はとてもではないがアクセラレータと渡り合える性能ではないが、アクセラレータの技を食らって速度に慣れる事ができる。
とてつもない速度に慣れると言う事は、他の速度が遅く感じると言う事。
これはつまり、他の戦闘にも非常に有効な修行方法だといえる。
アクセラレータもちゃんと茶々丸を傷つけないように配慮しているしな。
壊したりなんかしたら絶対に許さないが。
「おっ、始まるネ。今日はどんな実験カナ?」
「……実験と聞くと異様にキラキラするその目は矯正したほうが良いと思うぞ」
分析分析と早速メモ帳を取り出す超鈴音にため息をつきながら、私はアクセラレータと茶々丸の方に向いた。
すると、何故かアクセラレータがこちらに向かって言った。
「エヴァも来てくれねェか?手伝って欲しいことがあンだよ」
何十メートルも離れているはずなのにすぐ傍にいるように聞こえるのは、奴が拡散する音のベクトルを一直線に束ねているかららしい。
まったく、出鱈目にも程があるぞ、あの能力。
「また障壁か?このごろ障壁の技能ばかり使う羽目になってるんだが」
「そう言うな。威力を試してェンだよ」
威力を試すにしても俺の攻撃力じゃ茶々丸をブッ壊しちまうからな、とアクセラレータは言った。
確かにそうなのだ。
予備動作無しでいきなり最高速度に達することができるアクセラレータは理論上拳と身体の間に1ミリでも隙間があればとてつもない速度での一撃を叩き込む事が可能なのである。
そんな奴は、トーン、と十メートルほどバックステップして距離を取っている。
おそらく、何かとんでもないことをやるつもりだ。
私は念入りに呪文詠唱し、三重の防御術式を茶々丸の前に展開する。
まあ、千の雷ならともかく雷の暴風程度なら防ぐことができる程度の防御術式だ。
まだ展開する事はできるが、そこまで出す必要はないと思った。

だって疲れるし。

アクセラレータは確かめるように腕を握ったり開いたりし、拳を何度か突き出すと構えた。
「行くぜ。チャチな障壁を展開してンじゃねェぞ」
「たわけ。真祖の障壁をナメるな。全力でぶつかって来い」
「私も危なくなったら避けますので、ご安心を」
茶々丸は受けとめるためではなく、いつでも避けられるように身構えた。
その様子にアクセラレータはにやりと笑うと、合図も無しにいきなり加速した。

数ヶ月前の奴と比べると月とスッポンだ。

ベクトル操作による身体能力強化、更には進むベクトル操作の効率化により瞬動の速度が向上している。
この地味な精度の調整がアクセラレータを強化している一因と言えるだろう。
そして奴は大きく一歩踏み出し、ゴンッ!!とその足を地面にめり込ませて陥没させる。
その足から生まれるパワーが拳に注がれ―――そこで私は驚愕した。
いきなり奴の肘の辺りに風が集中し、瞬時にして爆発したようにして後方に霧散したのだ。
それはまるで茶々丸の肘の関節部からのブースト加速によってパンチの速度と威力を上げる動作のようだった。

ゴギュ!!と加速する奴の拳。

もはや目で見ることは不可能な強力な一撃。
その拳が障壁に激突すると、易々と一枚目が撃破された。
背中にも先ほどと同じように風が収束して後方へ風を噴出させ、拳を放った状態のまま衰えない威力で前方に突き進む。
二枚目も撃破され、最後の障壁も撃破されかけて、障壁にヒビを入れて止まった。
茶々丸は破られると思ったのか、既に横に飛び退いていた。
「……思いつきにしちゃなかなか良い手みてェだな」
茶々丸の前で拳を握ったり開いたりしている奴に、今のはどうやったと詰め寄ろうとする前に、何故か私より先に超鈴音が奴に詰め寄っていた。
「今のはどうやったカ!?理論武装してかかってくるヨロシ!!」
「ぶわァ!?テメェ唾飛ばすんじゃねェ汚ェだろうが!!」
だがきっちり反射しているのでかかったりしていない。

ちゃっかりした奴だ。

超鈴音が鼻息を荒くしながら奴にぐぐいっと顔を近づけると、奴は嫌そうにその顔をぐいぐい押しのけながら説明を始めた。
「単純に言えば茶々丸のパンチの機構を再現しただけだ。肘の後ろからブースターを使ってパンチを加速させてるだろ?あれの真似をして、風邪を肘の後ろに収束、そして一方に開放して推進力にしたンだ」
「待て。そんなことをしたら肩が外れるんじゃないのか?」
「反動を打ち消すことなんざ俺には造作もねェことだぜ?」
そうだった。
肩が外れるのは無理な力がかかるからだ。
その無理な力の向きを調整してしまえば、脱臼はしないと言う事か。
トコトン理系だな、こいつの頭は。
……ん?ちょっと待て。
「おい、それだけなら茶々丸はいらなかったんじゃないのか?」
「……目標がないとやる気が起こらねェンだよ。威力調査もしたかったしな」
でかい氷の塊なら用意してやったというのに。
さっきの威力ならそんなもの軽々と粉砕できるだろうがな。
そう思っていると、超鈴音が残念そうに肩を落としているのが見えた。
「じゃあその技はアクセラレータ専用ということカ?あーあ、軍用強化服に少し強引な改造を加えようと思ったけど、残念ネ」
「あァそォかい。っつか俺の動きは物理法則ほとんど無視すっから参考にゃならねェと何度も言ってるつもりなんだが?」
「いいじゃないカ。新たなインスピレーションが沸いて来るヨ。働け私のイマジネーション!!」
「テンション上がるのは結構だが上がりすぎて脳内で血管が破裂しねェよォにな」
ちなみに、まだ超鈴音にはアクセラレータがベクトル操作能力者だということは知られていない。
麻帆良最強頭脳と呼ばれているだけあり何か妙な力が働いていると考えているようだが、まさかあらゆる運動量のベクトルを操作しているなどとは思いつかないだろう。

とりあえず物理法則は無視する、とだけ覚えているらしい。

無視するだけではあの威力は説明不能のはずだが……だからこそ超鈴音はアクセラレータに興味を抱いたのかもしれない。
このごろは興味以上のものを感じるがな。
「何か言ったカ?」
「何も」
ふん、カンは鋭いようだな。
ま、超鈴音ごときがアクセラレータに興味を抱こうとも跳ね返されるのがオチだが。 

私にはわかる。

超鈴音は裏の人物で、それなりに世界の裏を見て来た経験者でもあるが……アクセラレータはそれは比べ物にならない地獄を見て来たと言う。
ただ、出会った当初はそう思っていたのだが、どうにもこのごろは不自然なことがある。
色濃い闇を体現する存在だったはずのアクセラレータであるが、この頃そういう闇が現れていないのだ。
というのも、コイツが麻帆良に慣れてしまって丸くなったのか、それとも何らかの心境の変化があったのか……少なくとも、私に説教垂れたあの時と今のコイツは別物かと思えるほど雰囲気が違う事がこの頃わかってきた。
あれはコイツがキレたのだというくらいわかるが、それにしてはこの頃のコイツの雰囲気は違うと思う。
私の考えすぎかもしれないが、そのせいで少々張り合いがなくなったのは確かだ。
ただ単に丸くなってしまったのならつまらんが。
そのアクセラレータであるが、コイツ自身が本気で惚れたりしなければ、コイツの隣にい続ける事は不可能だろう、と私は考えている。
何故かアクセラレータは他人と一定距離を置くようにしているのがわかる。
ある程度親しくなれば、決してその先の線に踏み込めないように、奴独特の強引な話術で誤魔化している。

これまでアクセラレータを観察してきてようやくその事に気付いた。

奴に意図的なものを感じなかったから気づくのに時間がかかったのだが、ということは無意識的に距離を置こうとしているのが感じられる。
まだ奴には語っていない過去があるのだろうか。
夢見の魔法を使おうにも、奴は寝ているときは全てを反射してしまい、魔法も受けつけない。
それにしては夢見の魔法が私にはかからないのだが、もしかして歪曲してどこかにすっ飛んでいるのだろうか?
どちらにしろ効かないことには変わりない。
更にどうやら音まで反射しているらしく、いくら怒鳴ろうとも起きないのだ。
殴るのは言うまでもなく。
もっとも、殺気などを向ければ不機嫌な目と共に目覚めることがわかったので最近はこれで起こしている。

苦労が減って良かったと言うモノだ。

それにしても、私の障壁を二枚も砕いたあの一撃……間違いなく本気ではなかった。
もしかしたら軽く無造作に突き出した一撃だったのかもしれない。
思いきり体重を乗せた風にも見えなかったし、震脚の踏み込みも甘かった。
肘に風を集中させていたから気が散ったのかもしれないが。
しかし……なるほど、本気ならば戦闘中の私を瞬殺することも可能になったということだ。
通常攻撃をあの攻撃にすれば、私の障壁も砕く一撃を容易に放つ事ができる。

もっとも吸血鬼状態だったら死なないから千日手になるな。

流石の私も全身をグチャグチャにされてミキサーにでもかけられた挙句燃やされたら復活するのに何日もかかる。

その時に液体窒素の中に冷凍保存されて南極や北極の氷の中に埋められたら復活はできなくなるかもしれない。
やられたこともないし、やりたくもないがな。
まあ、私をそこまで追い詰める事ができるだけでもたいしたものだ。
死んでしまったサウザンドマスターやラカンもこいつには勝てるかどうか……バグキャラVSバグキャラというのは見てみたい気はする。
私もそう言う系統の存在であることは否定しないが。
「研究ってのは面白ェ。特に自分の能力に関してはな」
命名『ジェット・パンチ』を何発も繰り出して大気を震わせているアクセラレータをふと見やる。
サウザンドマスターやラカンが直接的な実力による恐ろしさを見せ付けて来るのに対して、アクセラレータはこれだけの強さを求めながらもまだ進歩する底知れない恐ろしさを見せ付けて来る。
コイツはどこまでいくのか。
限界はあるのか。
そもそも、限界という概念が存在するのか。
アクセラレータとは、なんとも的を得ている異名だと思う。
コイツはどこまでも加速していくだろう。
誰かが物理的に止めない限り。
そして、いつか私の手の届かない所に行ってしまうのかと思うと、
少しだけ、寂しかった。






~あとがき~

エヴァ回……なのでしょうか?
超回とも取れます。
今回、新たな必殺技が出ました。
その名も『ジェット・パンチ』。
え?某うっかりの人?それは言わない約束じゃないか。
超はこうしてアクセラレータの能力のデータを密かに取っています。
アクセラレータの実験もそれはそれは彼女の好奇心を満たすものですが、やはり彼自身が超にとっての興味そのものです。
また、エヴァはその超の思惑に全く気付いていなかったりします。
己の知識の欲を満たすためというのはあっていますが、アクセラレータの研究という点ではちょっと勘違いをしています。
そういう勘違いするエヴァってのも良いですよね。
彼女の『寂しい』発言についてですが、原作でラカンが逝った時にも何の感慨も得ていないような感じでしたが、個人的にはその死を惜しんでいるように見えました。
いかに年を重ねようとも、見知った者が逝くことは悲しいものです。
アクセラレータは彼女が見つけた圧倒的な闇でした。
サウザンドマスターの対極という感じですね。
そんな彼が自分の見ている前でガツガツ進化していくのを見ると、自分の時が止まっている事を自覚します。
また自分が置いて行かれるのかと思うと―――というわけです。
エヴァは素直じゃないからそこまで思考しませんけどね。


夏休み編は短いですがこれにて終了、次回は秋です。


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