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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第1話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:11f779aa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/04 00:26
トラックに轢かれたら転生した。
二次小説の世界にだけある者だと思っていたら本当にあるんだな。
……いや、何故こんなにも冷静なんだ俺。
流れ的に言ったら普通取り乱す所だろう。
……とりあえず、現状を確認しておこう。
周りを見まわす。

木と、木と、木と、木。

森である。
林なのかもしれないが、些細な違いだ。
上空を除き、前後左右が森だった。
遠くに文明の明かりが見えるのでどうやら遠い山の中とかではないようだが、それにしても転生して山の中とは、俺は捨て子なのか?

ばぶー。

……いかん、俺の脳はかなり限界を向かえているらしい。
どうやら自分でも気付かない内にパニックに陥っていたようだ。
つまり、最高にハイって奴だ。
脳内でボケると痛烈な寒さを感じるので一旦何も考えずに呆然と寝転んだまま空を見上げる事にする。

空は綺麗だ。

雲一つないが、文明の明かりに邪魔されて星が全く見えない。
十八年間都会の中で生きてきて見なれた夜空だ。
むしろ、こちらの方が綺麗に見える。
山に囲まれたおかげでマイナスイオンでも発生しているのだろうか。
思考が全く関係ない方向に傾き、最終的に『昨日、隣の佐々木さん家ってカレーだったんだよな』という思考に辿り着き、ようやく冷静になったと判断した。

何で判断できたのかは秘密だ。

さて、転生したばっかりなので動かせるはずもない体を動かしてみよう。
なんとかして這ってでも文明の明かりに辿りつかなければ。
そう思い、俺はずるずると赤ん坊なりに這おうとするが、ここでとんでもない事に気付く。
自分の身体は幼児ではなくフツーに高校生か中学生くらいの体つきだったのだ。
気付くの遅くね?と思うかもしれないが、これは実際に転生した奴にしかわからない感覚だろう。
だいたい一瞬前までトラックと全面衝突してたんだぞ。
それから一気にこの場面になったんだから、混乱していても仕方ないのだ。
そう納得しなければ虚しくなる。
それはともかく、俺は自分の身体を動かして見る事にした。

体つきはかなり細い。

そっとズボンの中に手を突っ込んで確認してみると男だったので安心する。
TSは見てて滑稽かもしれないが、実際になったほうからすればかなり切実な問題だからだ。

……前より小さいか。

あまり自己主張をしない息子を放っておいて、次は自分の手を見て驚いた。
白い。
驚くほど白い。
どこぞのコマーシャルの美肌宣伝に出れるほどだ。
ボー○ドとか。
……アレは漂白剤だったか。
ダメだ、非現実的な美肌を自分が持っていることにまた脳が混乱しているらしい。
着ている服は、まあ普通の長袖長ズボン。
ちょっとイカした模様が入っているのが特徴だ。
長ズボンは真っ黒であるが。
俺はあまり着飾る性格ではないので、そこらへんは楽に許容する事ができた。
なんだかこの服をどこかで見たような気がするが、どこだったか。
ぼんやりと思い浮かぶんだが、どうにも先から出てこない。
どこぞの10万3000冊とは違うのだ。
あそこまで俺の脳は良くできていない。
まぁ、思い出せないものは仕方がない。
別に、服ごときどうでもいい。
とりあえずどうしたもんだか。
都市に下りて警察の助けを請うのが一番だろうが、転生した上に更に他の人物に憑依している場合、十中八九厄介事のど真ん中に出現するのがセオリーだ。

正直に言うと、戦いは御免だ。

どこぞのヒーローっぽく恋人やら親やら友達を護るのならともかく、厄介事に首を突っ込むつもりはさらさらない。
だからそういう現場に遭遇したら逃げる。
まず心の鉄則その一だ。
逃げれなかったらおそらくオーバーキルであります軍曹殿。
いきなり転生して殺されるのは勘弁だ。
俺の身体が何やら超能力や宇宙の不思議パワーが目覚めているとしても、その自覚もないままに操れるものとは到底思えない。
ウルトラ○ンも変身しなければただの人であるからして。
ま、近くで爆音でも響かない限り大丈夫だろう。


ドォオオン!!


……着ました。
いや違う、来ました。
そちらの方に目をやってみると、木々が舞っていた。
いや、ホントね、空気読みなさいよね。
慌ててそこから飛び退くと、一瞬前まで寝転んでいた所に木が激突した。
墓標のように突き立つその木を見て、俺は違和感を感じた。
突き刺さっている個所が、まるで鋭利な刃物に切り裂かれたような滑らかな切り口をしているのである。
何かに切り飛ばされた感じ。
で、俺が後ろを振り向くと何かいる、と。


「おお、なんやまた人間がおったで」


ビンゴーッ!?
俺の後ろには身長2メートルを超える筋骨隆々な方々がいた。
ていうか、関西弁!?
その筋骨隆々な方々は見るからに人間ではない顔つきをしている。
額に角があり、あるいは一つ目の者もいる。

化物。

鬼だ。
俺がその怪物の群れに呆然としていると、彼等はどこか見た目に反してフレンドリーな仕草で会話を始めた。
「えらい派手な見た目しとる坊主やな」
「魔力も気も感じられへんな……ただの雑魚か、つまらんなぁ」
「ま、ワシらを見たからには生かしておけんのや。悪いが兄ちゃん、死んでもらうで」
死亡フラグを通り越してまんま死亡直結フラグキターーーーッ!?
目の前で一つ目の鬼が巨大な棍棒を振り上げる。
ここに来て何故か震えない立派な足を総動員してそこから退避しようと走り出す。
だが、鬼の身体能力は凄まじい。
俺より更に速い速度で一瞬にして間を詰めると、既に振り上げていた棍棒を振り下ろした。
俺はそれをどこか冷めた感じで、『二度目の人生って短かったなあ……』と感慨にふけながら見るのであった。






私、桜咲刹那は師匠である葛葉刀子さんと共に陰陽術師が召喚した鬼達と戦っていた。

「斬岩剣!!」

いつ見ても我が師匠、刀子さんの剣は強力の一言に尽きる。
このごろの悩みは出張が多いせいで恋人ができないということらしいが、彼女は同性の私から見ても美しいと思える外見をしている。
私の美的感覚が一般人と違うのなら刀子さんはモテないのだろうが、一応彼女の評判は良い。
影ながらファンクラブまで設立されているとの話だ。
……今ここで話す事ではないだろうが。

「百烈桜華斬!!」

私も負けじと奥義を使い、鬼達を吹き飛ばす。
この鬼達、情報で聞いていたよりも数が非常に少ない。
刀子さんが出てくるまでもなく、私だけでやれる仕事だった。
最後の一体を片付けると、辺りを警戒しつつ、私と刀子さんは言葉を交わした。
「終わったようですね」
「はい。残党は……どうやらいないようですね」
辺りに荒ぶる鬼の気配はなかった。
私はそれに安堵しながら夕凪を鞘に収めようとすると―――突如背後に殺気が膨れ上がる。
「ッ!?」
ゴッ!!と迫って来る棍棒を、瞬時に刹那の横に出現した刀子の刀が横に弾き飛ばす。
出現したのは鬼。
その後ろから、ぞろぞろと他の鬼達がやって来る。
「新手か……!?」
「いえ、違います」
私の疑問を刀子さんは短く否定した。
「そこのねーちゃんは察しが良いみたいやな」
現れた鬼はそれぞれ身体に張りつけていた札を剥がした。
すると、それまで遮断されていた鬼の気配が溢れ出す。
「ワシらの主がくれたもんでな。気配を遮断しちまう優れもんや」
「奇襲は失敗してもうたが、ただじゃやられへんで」
同時に襲いかかって来る鬼ども。
私達はそれを真正面から迎え撃つ。
神鳴流はいわゆる剛の構えだ。
相手が化物で在る事を前提とした一撃必殺の剣こそが神鳴流の境地。
真正面で衝突し、力ずくでねじ伏せる。
それの原初こそが、この剣。

「「斬岩剣!!」」

化物相手に一歩も引かぬ、化物を超えるために手にした超人の奥義。
それこそが斬岩剣だ。
私の斬岩剣では鬼を一体しか断ち切ることができないが、刀子さんは一撃で二体もの鬼を軽々と葬る威力を出す。
いつか私も刀子さんのような強い剣士になりたいと思う。
今の彼女は剣よりも色気らしいが。
それにしても、今回の鬼は少々手ごわい。
鬼以外にも烏族がいる事が大きいだろう。
鬼と同等の腕力を持ちながら、彼等を上回る瞬発力を持つ烏族。
彼等は独自の高度な剣術を持っており、熟練の烏族は刀子さんクラスの実力を誇る。

烏族が三体に鬼が十二体。

なかなかに厳しい布陣だ。
早速刀子さんがかかってきた二人の烏族の内一人を切り伏せた。
私はもう一人の烏族を相手にしている。
「そらそら、どうした神鳴流のお嬢ちゃん!!」
そしてこの私が相手にしている烏族、なかなかの実力者だ。
叩きつけられる剣の重みは凄まじく、更に速い。
神鳴流は奥義を出す隙が大きいことにあり、はずれた時のリスクも非常に大きいのが弱点である。
烏族のような動きの速いうえに人外の腕力を持つ彼等は神鳴流とは相性が悪い相手だ。

だが、それがどうした。

相性が悪かろうが、たたっ切るのが神鳴流剣士だ。
刹那は気で強化した足を使い、剣を振り下ろした烏族の横に回ると、驚愕(しているのかどうかは顔ではわからない)の表情をした烏族を、
「百烈桜華斬!!」
背後にいた鬼もろとも切り刻む。
ボッ!!という風切り音と共にカマイタチが発生し、まさしく百回切りつけられたかのように細切れにされた烏族と鬼が消え去っていく。
「ぐわあああああ!?」
その頃には刀子さんは既にもう一人の烏族を倒し、鬼の殲滅にかかっていた。
流石だ。
私も慌ててそれに加わった。
しばらくすると、烏族を先に倒した事もあり、簡単に殲滅作戦は終了した。
一息つく私達だったが、他にどんな奇襲が待っているかわかったものではない。
今度は気を抜かずに刀子さんに話しかける。
「まだいると思いますか?」
刀子さんも警戒を怠らずに辺りを見まわした。
「おそらくいるでしょう……高度な気配の隠蔽の札をあれほど作る術者です。あの程度の烏族たちが親玉とは思えません」
あの程度、と軽く言う刀子さんだが、アレは結構強かったと思う。
アレで親玉ではないというのだから、親玉は私が相手できるものではないだろう。
「増援を頼みますか?」
「高畑先生が近くにいるはずですから、一応連絡しておきましょう。もしかしたら取りこぼした鬼たちがいるかもしれませんからね」
あえて戦力増加ではなく、取りこぼした鬼達の撃破に向かわせる、か。
そういう組織的対応術は私も学んだ方が良いのかもしれない。
私は高畑先生に連絡した後、油断せず前を睨みつけて歩く刀子さんの後ろを歩きながらそう思っていると……私の人外としての鋭敏な感覚が鬼気を捉えた。
「刀子さん!向こうに鬼がいます!」
私が飛び出すと、刀子さんも私の跡を追って来る。
私の人外に対する察知能力は自慢じゃないが刀子さん以上。
察知するだけなら高畑先生や学園長以外の魔法使いに負ける気はしないほど自信がある。
それがわかっているから刀子さんも私の後ろについてきてくれるのだ。
私達が全速力で鬼達のほうに向かうと、驚いた事にその近くに人間の気配が感じられた。
微弱だ。
鬼を前にしているというのに、魔力も気も感じられない。
一般人!?
「何故、こんな所に……!?」
「刹那、私は先にいきますよ!!」
私なんかよりも遥かに速い速度を出す事ができる刀子さんが先導して先に進む。
刀子さんも人間の気配を捕らえたらしい。
しかも、酷く無防備な。
私の目に見えてきた光景は、巨大な鬼が棍棒を振りかぶり、逃げようとしている青年を今まさにその棍棒で押し潰す所だった。
「やめ―――!!」

ゴゴン!!という轟音が聞こえた。

私はその光景に絶句した。
私は今まで人が死んだ光景と言う物を目にしたことがなかった。
しかし、今、目の前で鬼が棍棒で一般人を押し潰した。
絶対に死んでいる。
言うまでもなく、即死だ。
「あ、……」
私の口から何故かそんな情けない声が漏れた。
目の前で一般人が鬼に殺された。
それが、何故かひどく私の心を揺るがせたのだ。
昔、お嬢様を助けられなかった私の姿と、今の私の姿が被る。
やはり、私は人を守る事ができないのか?
危機が迫っていた一般人を助ける事もできない私が、どうしてお嬢様を護れるんだ?
刀子さんは既にギリリと音がなるほど歯を食いしばり、鬼達へ殺気を向けている。
人の死と向き合うのが一度や二度じゃないからだろう。
私も刀子さんのその覇気を見て、気合を入れなおした。
弔い合戦だ。
私が夕凪に気を込め、一般人を殺した鬼に向けて斬岩剣を放とうとしたその時。

グシャア、という硬い物を握りつぶすような音が聞こえた。

「なっ……!?」
私と刀子さん、おそらくその場にいた鬼までもが驚愕する。
その音は、振り下ろされた棍棒から響いていた。
鬼が慌てて身を引くと、その手には根元から折れている棍棒があった。
おそらく今の音は遅まきながら叩きつけられた衝撃に負けて棍棒が折れた音なのだろう。
私はそう思ったが、どうやら違ったらしい。

「そうか……そうだよなァ」

どこかダルげなくぐもった口調が聞こえた。
「どっかで見た服装だと思ってたンだ。まさかチート設定満載の身体とはよォ」
ドガン!!と陥没していた地面にめり込んでいた超重量の棍棒が吹き飛んだ。
人間には到底弾き飛ばせないそれが、まるで木の棒のようにくるくると回転して飛んでいく。
陥没した地面から起きあがったのは、白。
真っ白な、銀髪というよりは色素が抜け落ちた無気味な白色の髪。
美白というよりは病的なまでの白さを持つ肌。
そして、ギョロリと鬼達を睨みつける赤い瞳。
ひょろっとしたその身体のどこから棍棒を跳ね飛ばすほどの力が出るのか……いや、そもそもどうして今の攻撃をまともにくらって無傷でいられるのか。
だいたい、彼は見た事もない人間だ。
これほど印象的な容姿で鬼の一撃を真っ向から受けとめられる人物を、私が知らないはずがないのだが……魔法生徒なのだろうか。
白い彼は、私達の驚愕も露知らずに立ち上がった。
挑戦的に鬼達を睨みつけながら、その口元に鬼達に勝るとも劣らない邪悪な笑みを浮かべる。

「来いよ、三下」

その兆発に上等だとばかりに吼えた鬼達は、それぞれの得物を振りかぶって青年に殺到した。






攻撃が直撃した俺は、俺自身に何の衝撃も痛みもない事に気付いた。
ダイビングするように伏せて、それでも食らった、という事実はわかっている。
なのに、全くダメージがない。
目を恐々と開けてみると、そこにはヒビが入ってボロボロな鬼の棍棒が見えた。
俺はハッとして自分の髪を抜いた。
そこには色素が抜け落ちたかのような不健康そうな白い髪があった。
これを見て、確信する。
「そうか……そうだよなァ」
そのまま俺は自覚する事によって得た能力を発動し、俺の上に乗っかっていた鉄の固まりを吹き飛ばす。
夜空の上でヒュンヒュン回っている棍棒の残骸が見えた。
そこまで吹き飛ぶもんなんだな、と思いつつ、俺はむっくりと起きあがった。
前方には己の得物を砕かれたからか呆然とする鬼と、そのほかにもまともにあの一撃を食らって生きているとは思っていなかった鬼達が呆けた顔をしていた。
くっく、と俺は笑う。
「どっかで見た服装だと思ってたンだ。まさかチート設定満載の身体とはよォ」
俺はそのまま、パンッ、という軽い音と共に、バネ仕掛けの人形のように跳ね起きた。
どうにも奇妙な感じだが、これであの能力が使えることは証明された。
こいつ等程度なら楽勝で倒す事ができる。
俺の顔には知らず知らずの内に笑みが浮かんでいた。
「来いよ、三下」
前方の鬼達が咆哮する。
この程度の小坊主に、と怒り狂っているのだろう。
怒りに吼える鬼たちが怖くないといえば嘘になる。

だが、足は震えなかった。

どうせ一度死んだ身だ。
もう一つの生がすぐに終わっても未練は無い。
ドコォン!!と俺の背後にさっきの棍棒の残骸が突き刺さるのを合図とするように、鬼達は我先にと俺に殺到してきた。
俺は圧倒的な鬼気を巻き散らす鬼達に向かってノーアクションで立ち尽くす。
ビビったわけではない。
まさか、チビって動けないわけでもない。
俺の能力を信頼しての賭けだ。
鬼達は何のアクションも起こしてこない俺に疑問を持ったようだが、怒り狂った彼等の何人かはそのまま俺に得物を振り下ろしてきた。
斬撃。打撃。衝撃。
俺に大剣や棍棒などが叩きつけられた。
だが、俺は生きている。
それどころか、鬼達の腕や得物から粉砕音が聞こえた。
痛みと意味不明な反撃による混乱からか、鬼達は悲鳴のような咆哮をあげる。
眼前で無防備に腕を抑える鬼達は俺にとって格好の獲物である訳で。
そのまま俺は、無造作に右腕を振りぬいた。






私と刀子さんはありえない光景を眺めていた。
それは一方的な虐殺だった。
最初に白髪の青年に武器を叩きつけた鬼達が、逆に自分を傷つけ、更に獲物が粉砕した後に青年の反撃が始まった。
どうして自分を傷つけたのか、獲物を粉砕したのかはわけがわからなかったが、青年は更に素人のような構えで拳を振りぬいた。


ドゴンッ!!


全く威力が乗っていないはずの喧嘩拳が、ミサイルの如き威力を発揮する。
霞んで見えなかった青年の拳は鬼に直撃し、思いっきり肋骨を圧砕した。
殴られて吹き飛ばされた鬼は後ろにいる鬼も巻きこんで倒れ、空気に解けるようにして消えていく。
青年は追撃を行った。
隙だらけとしか思えない跳躍を行うと、消え行く鬼ごとその下敷きにされている鬼達を拳でぶち抜いた。


ゴゴンッ!!


なんの気も魔力も込められていないその一撃で、地面が割れた。
鬼の上に着地した青年を狙って鬼が四方から武器を振り下ろすが、それは青年に当たると砕け散り、鬼達は自身の手首を圧し折って苦痛にうめく。
「おォおおおおおおッ!!」
青年が吼える。
両手を上に掲げると、いきなりそこに風の渦が生まれた。
西洋魔法……ではない、かと言って陰陽術でもない!
だいたい魔力も気も使われていない。
無防備になった彼に向けて鬼達が拳を放つ。
もしかしたら武器に対してだけ絶対の防御力を持つと考えたのだろうが、青年は全ての物理攻撃を無効化するどころか、鬼達の拳そのものを粉砕した。
蹲る鬼達に、青年は容赦しない。
青年が両手を掲げた上空には、何か鉄の溶接作業を思い浮かべるような眩い白光が生まれる。
最初は一メートルほどだったそれは、ギュゴッ!!と空気が渦巻いたと思うと一気に直径十メートルに膨れ上がる。
それは上空に存在しているはずなのに、こちらにもビリビリと肌を焦がすような痛みを植え付けて来る。

あれは、なんだ?

「刹那!!」
呆けている私を叱責し、その手を掴んでこの場を離れようとする刀子さん。
あれがなんなのか、わかったのだろうか。
十メートルのそれは更に二十メートルの巨大な火球と化した。
青年が何事か叫んだ気がした。
それと共に、その火球が地面に急降下した。


ズッ ゴォオオオオオオオオオンッ!!


獣の咆哮のような生々しい轟音が聞こえた。
私は思わず後ろを振りかえると、そこはまさしく炎の渦だった。
巨大火球が落下したそこは、獄炎地獄と化していた。
為す術もなく範囲内にいた鬼はすべて焼け死に―――いや、焼ける以前に吹き飛び、跡形も残さずに消滅した。
木々はバラバラに吹き飛び、散弾のようになって破片が飛んで来るが、私がそれを迎撃した。
もはや巨大な爆弾としか思えないその威力。
詠唱などを必要としない上にたった五秒程度立ち止まるだけで爆弾が作られる。
しかも、それを自分に向けて直撃させるなんて正気の沙汰ではない。
その爆弾の衝撃波が収まると、私達は青年の存在を確かめに向かった。
気配を殺しながらそっと彼を覗いてみると、

何故か『ぜーはー』と苦しそうに息をする彼がいた。

「…………」
「…………」
明らかに青いあの顔はどう考えても酸素不足。
酸欠である。
あの火球をモロに食らって火傷一つ……というか塵一つついていないその体にはもはや何も言えない。
爆撃された地に花瓶が無傷で残っているような、そんな違和感を感じさせる。
何せ、焼け焦げた大地に真っ白な青年がいるのである。
これで違和感を感じなかったらどんな感性なのか疑う所であった。
「(……刀子さん、どうしましょうか……)」
「(鬼の一撃をまともに受けても平然としている人です、我々では太刀打ちできません。おそらく特殊な障壁なのでしょうが……鬼の得物を粉砕するなど奇妙な点が多過ぎます)」
「(放っておくのですか!?)」
「(そうは言っていないでしょう?……あなたはここにいなさい。私が彼の前に出ます。もうすぐ高畑先生も来るでしょうから、その時に指示を仰ぎなさい)」
そう言い残し、刀子さんは気配を現して立ちあがり、茂みから青年の前に進み出ていった。






ミスったーーーッ!!
いやぁ、ここまで見てくれた君ならわかるだろうが、俺の能力はぶっちゃけ一方通行(アクセラレータ)だ。
知らない人はググれ。
知らないだろうから、お母さんには聞いちゃダメだ。
まあ、つまりその能力―――自分の肌に触れたベクトルを全て操作するという能力を使い、早速件の不幸少年とビリビリ少女を死の縁に追いやった技を再現してみたのであるが、まさか酸素が全て持っていかれて窒息寸前になるとは。
そういえば粉塵爆発のど真ん中にいた一方通行さんは死ぬかと思ったと言ってたし、咄嗟に口閉じてなかったら危なかったかもしれない。
調子に乗った罰だという事か。
焼け焦げた大地の上で酸素を求めて息をしていた俺だったが、その前にとある人が現れた。

美人だ。

流れるような長髪だが、残念ながら黒ではないので大和撫子ではない。
しかしそのキツめの顔やかなり良いと言えるスタイルは問答無用で美人と断言できるそれであり、腰にはそんな凛とした美人に何故かマッチする長大な刀があった。
あるぇー、もしかして聖人さんですか?
天草式の聖人さんですか?

イメチェンしたな。

そう思っていた俺だったが、いくらなんでも例の堕天使エロメイドの聖人さんではないことに気付いた。
七天七刀はもっと長いように見えたからだ。
それに、いつものエロい格好じゃないし。

ぶっちゃけ、全然エロくないし。

論点はそこなのか、という突っ込みは認めない。
なんとか息を整えて立ちあがり、俺はその美人さんを見た。
美人さんは何故かめちゃくちゃ緊張したように顔をこわばらせ、こちらに敵意のようなものをバリバリ向けながらこう尋ねてきた。
「……あなたは何者ですか?」
漠然としすぎてるのだが。
ていうかどうしよう。
転生者と言っても信じてくれるかくれないかではまちがいなくNOだ。
言ったが最後、間違いなく頭の病院に連行されるからだ。
ならばどうするか。
敵対したくないのだが、そのためには何と言えば一番良いのか……。
俺はじっと悩んだ。
悩んで悩んで……名案を思いついた。
「何者かって、俺が聞きてェくらいだ。俺ァ誰なんだ?」
記憶喪失を装う、だった。
「は?」
案の定、向こうは呆然としている。
俺はいかにも周りの状況がわかんねえですよー、とばかりに頭を掻いて辺りを見まわす。
「つーか、さっきのデケェ化物はなんだったんだ?思わず迎撃しちまったが、倒して良かったのか?」
これは本音だ。
もしも今倒した鬼達がこの世界に置いての天然記念物とかだったらヤバいからだ。
まあ、ここは転生体である一方通行が存在するとある魔術の禁書目録の世界に間違いない。
いくらなんでも、こんなファンタジックな存在がいるわけないだろう。
よってこれは何らかの実験と見た。
一方通行に最新の生体兵器を向かわせ、迎撃させたという所だろう。
そして目の前の美女はおそらく連絡員だ。
学園都市にいるはずなのになんででっけー刀を持ってるのかはわからんが。
「は……はい、あれは倒して良い物でした。それにしても……あなたは自分が誰なのか、全くわからないのですか?」
そう疑問に思うのも当然だ。

何しろ俺は一方通行。

いきなり記憶喪失になっちまった、なんておフザけとして見られる可能性があるからな。
「あァ、ちっとは思い出せるけどな、あンまり詳しい事ァわかんねェわ。とりあえず責任者のトコに連れてけ。いるだろ、ここにも責任者みてェな奴が」
「…………」
美女がどうにも困った表情をしていた。
ありゃ、流石にアレイスターはないと思っていたが、まさか責任者がアレイスターってことはないよな?
やだよあんな逆さ人間とあうのは。
そう思っていると、草むらから更に二人、誰かがやってきた。
「あ、高畑先生……」
安堵したように、その美女はその名前を呟いた。
ナニ?
タカハタ?
まさか、高畑・T・タカミチ?
いやいやいやいや、まさかそんな。
だって俺ってば一方通行だぜ?
まさかオリキャラ来訪ではなく別世界からの来訪モノだと……!?
しかも、とある魔術の禁書目録からネギまに!?
そんな御都合展開が、あるわけ―――。

「彼がこれをやってのけたのか?」

渋いオッサンキターーーーーーッ!?
メガネをかけてポケットに手を突っ込んでるところが更にダンディさを増してるぜ、タカミチ!
ポケットに手を突っ込んでいる事から彼は臨戦体制と思っていていいだろう。
ということは、こいつは本物のタカミチだと!?
しかもその横には何やら百合疑惑がある翼がある神鳴流剣士が!?
ってことは、この野太刀……目の前の女は葛葉刀子か!?
うはぁ、いきなり原作キャラに出会っちゃったよ。

……まぁ、いいですけどね、原作。

どうせ、数ある二次小説と同じ展開になるんだろうから。
「ええ、そうです。それで……どうやら彼は記憶を失っているようなんです。本人が言っているだけですからまだ確証はありませんが」
「記憶を?それなのに、こんな破壊を生み出したのか?」
「私も信じられないのですが、実際にこの目で見てしまっては信じるしかないのです」
まあ、信じろというのが大体怪し過ぎる。
記憶もなしに森の一角を吹き飛ばす大破壊をやってのけたというのだから、怪しいにも程がある。
だが、この世界での知識がない、と言う意味ならそれは真実なのだ。
「頭ン中で今の状況を整理したから、言っていいか?」
「……どうぞ」
俺は自分の頭を人差し指でトントン叩く。
それだけで向こうは身体を強張らせるのだから、困ったものだ。
「俺にスッポリ抜け落ちてンのは思い出だけだ。金の使い方とか、日本語はどうだとか、能力の使い方ってのは覚えてンだよ。もし仲間だったら悪ィが、テメェ達は俺の仲間だったのか?」
そう聞かれると、やはりタカミチも混乱したようだった。
難しい顔をしていたが、やがてタカミチは携帯電話を取り出して応対し、しばらくしてこちらに顔を向けた。
かけたのは、おそらく学園長の携帯だろう。
「僕達も君の事は全く知らないんだ。悪いけど、君の事を調べさせてもらうよ。名前は?」
「あァー、ナマエ。名前ねェ……よく思い出せねェが、一方通行って呼ばれてた気がする」
「……アクセラレータ?偽名なのか?」
「さァな。どこぞの研究所の番号名じゃねェのか?」
つまらなそうに言った俺の言葉に、研究所?と小さく呟いてから、タカミチは電話の相手に何事か言い、ポケットに携帯をしまった。
「ついてきてくれないか?ここの事を話そうと思う」
「あァ、願ってもねェことだ。よろしく頼むぜ」
タカミチを先導、後ろに俺、その後ろに刀子、刹那と続く。
何やら刀子はともかく刹那の殺気がバンバン背中に直撃しているのだが……その辺りは気にしない方向でスルーすれば良いのだろうか。
刀子も気付いているだろうに、何気に悪い奴だな。
一応反射は展開させておく事にして、俺はタカミチの後についていくことにした。






~あとがき~

とまあ、こんな調子で進めていきます。
1話ごとの長さはこれくらいがちょうどいいんですかね?
個人的にはこれの半分くらいでもいいんじゃないかと考えてるんですが。
誤字、脱字などがあれば遠慮なく報告してください。


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