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No.21054の一覧
[0] 本が読みたい【完結】【再投稿】[ミケ](2010/08/12 00:16)
[1] 「本が読みたい。皆紙を用意しろ!」[ミケ](2010/08/11 23:24)
[2] 「本が読みたい。本の存在広めるか」[ミケ](2010/08/11 23:29)
[3] 外伝 バークの回想[ミケ](2010/08/11 23:32)
[4] 「本が読みたい。字を覚えてくれ」[ミケ](2010/08/11 23:36)
[5] 「本が読みたい。お前ら字を覚えろ。本を書け」[ミケ](2010/08/11 23:39)
[6] 外伝 クレアの回想[ミケ](2010/08/11 23:45)
[7] 「本が読みたい。家へ帰せ」[ミケ](2010/08/11 23:50)
[8] 「本が読みたい」[ミケ](2010/08/11 23:56)
[9] 「蛇足」[ミケ](2010/08/11 23:59)
[10] 外伝 父の回想[ミケ](2010/08/12 00:03)
[11] IF 文字の普及を先にしていたら【前編】[ミケ](2010/08/12 00:13)
[12] IF 文字の普及を先にしていたら【後編】[ミケ](2010/08/12 00:16)
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[21054] IF 文字の普及を先にしていたら【前編】
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:e453b056 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/12 00:13

「本が読みたい」

俺、アーク・ラグ・ヴォルファイアは心の底から呟いた。
中世?に転生して早1年。国名とか聞き覚えないし時代とかわからんし、それはまあ些細な問題だ。
問題は本が無い事。
活字中毒だった俺には本が無い事が苦痛で苦痛でしょうがない。
衛生面は我慢する。食事もまあ我慢しよう。服装もこれなんて羞恥プレイとか思ったけど我慢。
だが。本が無い事だけは我慢できん。
書類が粘土板って…。ありえんよ。
えーと火事にも水にも強く大変便利です…だっけ。
書類としてはそうかもしれんが本にはとても使えない。
小さい子向けの遊びもあったし、幼児化してる身にはそれなりに楽しかったけどな。
そろそろ限界だ。
それに、何故だか俺の頭の片隅から、「識字率90%越え」の言葉が離れないのだ。
本当はもっとゆっくり進めようかと思ったが、この言葉に押されるように俺は動き出した。
という事で、俺、アーク・ラグ・ヴォルファイア。
この領地に図書革命を起こすぞ!

というわけで、まずは権限を駆使して寺子屋から始める。
父上…立派な上着にタイツという恥ずかしい服装の、立派な口ひげの生えた父上に、俺は上申しに言った。
上半身だけ威厳たっぷりで、下半身は恥ずかしい。
俺は未だにこれになれない。

「父上、寺子屋という物を作りたいのですが…」

緊急時の伝達等、必死でどれだけ文字が読めたら助かるか説得する。

「アーク、民にはとてもそのような余裕はないのだ」

父上は重々しく言った。食べるだけでも精一杯なのだという。
それに、字なんて役に立つかわからない。
今までだって字なしでやってきたのだ。
粘土板を置く倉庫だって、用意せねばならないのだぞ。

「お願いです、父上。それが私の使命なのです!!」

言われて、父は困ったように考えた。
10日ほど待たされて、父は俺の考えに従ってくれた。



俺の評判は悪い。紙の試行錯誤をさせ、無理やり勉強をさせた。
皆、食べるものも食べずに農作業や内職をしているのだ。
当たり前だといえた。
俺にも罪悪感が募る。だけど、本が読みたいのだ。
紙を探索中、日本で見つけた作物を見つけた。
それの料理法を説明したが、敬遠される。
普段の罪悪感もあってお腹をすかせた人たちをなんとかしたくて、無理やり食べさせてしまった。
それはなんとか、本当にどうしようもない場合、食べる野草に収まった。



「魔女…」

「魔女が…」



俺の評判が悪いのは仕方ない。
父上はお前は神の子だと庇ってくれている。
重大な文書は全て粘土板だが、それ以外では手軽な紙が使われるようになった。
不作の年が出たので、輪作に切り替えた。
小麦が食べれなくなり、不満はさらに出た。父上は、俺を庇ってくれた。

「お前は、神の子なのだ。使命を果たすための家として選ばれたのは幸運なことだ」

「父上…」

申し訳なくてしょうがない。それでも、俺は止まれない。 
魔女と恐れられて、交易が、出来なくなった。
交易が途絶え気味になるということは、ここは隔離されてしまったという事だ。
珍しい物を狙った商人は来るようになったが、それ以外に人は来ない。
この領地だけでやっていかなくてはならなくなってしまった。
俺は、あらゆる知識を搾り出した。
この領地を少しでも発展させる為に。
異端と認識されてしまった領地が攻撃されても押し返せるように。
それを助けてくれたのが、バークとクレアだった。
製紙業は軌道に乗り、領内で頻繁に使われるようになった。
村々に、絵本を置いた小屋が出来た。
絵本に書かれた服装が徐々に採用されるようになり、領地は徐々に異空間と化していた。



俺は8歳となった。
簡単な教養が村の隅々まで行き渡り、食事に事欠かないようになった。
皆、俺に感謝するのではなく、魔女の領地になったからと納得したようだった。
事件は、その時起きた。 
他の領地からの難民が、食べ物を求めてやってきたのだ。
領民達は驚き、食物庫から食事を分け与えた。
閉じられた場所で積極的に発展しているため、慢性的な人手不足ということもあり、その難民にはすぐに職を得た。
難民達を追ってきた兵士は、幸せそうに働き食事を得る難民を目撃し、報告した。
王軍が、来た。
父上は必死に庇ってくれたが、俺は捕らえられてしまった。
屋敷は全て調べられ、俺の領地の食料庫は全て空にさせられた。
俺は魔女として知られていたからか、手荒なまねはされなかった。
座敷牢に閉じ込められる。
3年が、たった。外の情報は一切もらえなかった。
紙だけはもらえたから、狂ったように書き続けた。
領地への手紙。バークへの手紙。クレアへの手紙。
童話。小説。それでも足りない時は歌ってすごした。
誰も俺と話してくれない。狂いそうだった。
誰か、誰か。俺は呼び続けた。
俺は狂人となっていたのだろう。いつしか、声が聞こえてくるようになってきた。
俺は、長い長い戦記物の小説を書いていた。







そうして、ようやく俺は外へ出された。
王の御前だった。

「おお、悪かったな。お前のやっていた事を全て調べるのに、3年もかかってしまった」

「私はどうなるのですか」

「お前の使命は、識字率を上げることだったな」

「はい、そうです」

「領地の発展はその褒美か?」

「最終目的は神の兵を作って魔王を撃退する事です。今のままでは、字が読めても民が勉強する余裕がありません」

「魔王とはまさか、あの…?魔王が現れるというのか?」

「神の国では神と魔王が戦っておられます。この国の人々は、内に強い力を宿しているので、力を借りたがっているのです。しかし、書物を読み、理解する事が出来ないものに神の力は習得できません」

「戦わねばどうなる?」

「わかりません」

「戦えば何か益が?」

「宝石と神の力を」

「ふむ、おもしろい。その為にまずは民が勉強できるほど発展させろというのだな?」

「私は、その為に生まれました」

「さて、それは狂人の言か神の言葉か。牢の中で書いた小説を見たぞ。神々の戦いとはあのようなのか」

「恐らく」

王は、笑った。

「面白い!面白いぞ!とりあえず途中までは協力してやろう。この国を発展させるのは悪い事ではない。民でも片手間に勉強できるような強国にしてやろうではないか」

ひとしきり笑った後、王は言った。

「ああ、お前の領地、今はないぞ。直轄地にして他のものに任せたのだが、勝手がだいぶ違ってな。一年で駄目にしおった。仕方ないので解体して全員引き抜いた」

「引き抜いた!?どういうことですか!!」

「そのままの意味だ、平民でも文官が務まるほどに成長していたからな。輪作の実験地など重要な場所は残したが」

「父上は!バークとクレアは!!」

「王都での執政を任せた。暗殺されないよう、せいぜい祈るがいい」

「そんな!急な変革は……」

「大飢饉でこの国は未曾有の危機を迎えているのだ。未だその傷はいえない。隣国に蹂躙される前に、どうにかせねばならない。お前は神の子として、常に余の傍に控えろ。いいな」

そして、俺の新しい生活が始まったのだった。


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