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No.2104の一覧
[0] マブラヴ~鎮魂歌~[うり坊](2006/09/19 12:40)
[1] Re:マブラヴ~鎮魂歌~プロローグ[うり坊](2007/01/11 20:40)
[2] Re[2]:マブラヴ~鎮魂歌~第一話[うり坊](2007/03/23 21:10)
[3] Re[3]:マブラヴ~鎮魂歌~第二話[うり坊](2007/01/11 20:42)
[4] Re:マブラヴ~鎮魂歌~社霞の考察[うり坊](2006/09/19 12:51)
[5] Re[2]:マブラヴ~鎮魂歌~社霞の考察[うり坊](2006/09/19 12:51)
[6] Re[4]:マブラヴ~鎮魂歌~第三話[うり坊](2007/01/11 20:43)
[7] Re[5]:マブラヴ~鎮魂歌~第四話[うり坊](2007/03/23 21:17)
[8] Re[6]:マブラヴ~鎮魂歌~第五話[うり坊](2007/03/23 21:21)
[9] Re[7]:マブラヴ~鎮魂歌~第六話[うり坊](2007/01/11 21:38)
[10] Re[8]:マブラヴ~鎮魂歌~第七話『BETA上陸』[うり坊](2007/03/23 21:23)
[11] Re[9]:マブラヴ~鎮魂歌~第八話『BETA上陸』[うり坊](2007/03/23 21:25)
[12] Re[10]:マブラヴ~鎮魂歌~第九話[うり坊](2007/01/11 21:41)
[13] Re[11]:マブラヴ~鎮魂歌~第十話『南国サバイバル編』[うり坊](2007/03/23 21:29)
[14] Re[12]:マブラヴ~鎮魂歌~第十一話『南国サバイバル編』[うり坊](2007/03/23 21:32)
[15] Re[13]:マブラヴ~鎮魂歌~第十二話『南国サバイバル編』[うり坊](2007/01/23 17:04)
[16] Re[14]:マブラヴ~鎮魂歌~第十三話『南国サバイバル編』[うり坊](2007/01/23 17:07)
[17] Re[15]:マブラヴ~鎮魂歌~第十四話『南国休暇編』[うり坊](2007/02/02 15:58)
[18] Re[16]:マブラヴ~鎮魂歌~第十五話[うり坊](2007/03/21 05:55)
[19] Re[17]:マブラヴ~鎮魂歌~第十六話[うり坊](2007/03/26 10:55)
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[2104] Re[15]:マブラヴ~鎮魂歌~第十四話『南国休暇編』
Name: うり坊 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/02/02 15:58


白銀side



う~みは~ひろいな~♪お~おき~いな~~~~♪


見渡す限り、水平線、見えるのは蒼一色
遠くではカモメらしき鳥が飛んでいる


そして…………………楽しく漂流中です。


時間は数時間前に遡る

・・
・・・
・・・・
・・・
・・


『うらっ!』


速瀬の細い腕からは想像も出来ないほどの威力が炸裂する剛速球
唯のビニール製の球が砲弾と化し、白銀武を狙う


『せいッ!!』


受け止めるが威力が凄まじい、衝撃で己の骨がミシミシと軋む
しかい、ここで倒れるわけにはいかないのだ。
彼は全身をバネの様にし、剛速球を上へと打ち上げる


『はぁあああッ!!!』


そのタイミングを見計らって、冥夜が大きく飛び上がり、クルクルと回転し続ける球へと右手に渾身の一撃を叩き込む
叩き込まれた衝撃で加速する球は空気を切り裂きながら突き進む


『甘いッ!!』


あと少しで砂地へと衝突する瞬間、伊隅がそれを払い上げる
『今だッ!殺れッ!!』
その声に反応するかのごとく、払い上げられた球は再び速瀬が打ち込む
そして延々とラリーが繰り広げられるのである。


今、白銀達は…………『親睦会』という名目で、ピーチバレーをしている。


『楽しそうね』
『そうだね』
のほほんと砂場で棒倒しをする遥と美琴の二名
だが、これは見た目とは裏腹に精神の駆け引きでもある。
傍目からはとてもそうは見えないが、お互い幾つモノの策を巡らせている
まあ、そんな彼女達は一先ず置いておいて…………他の者達というと…………


『あはははははっ、えいッ!えいッ!』
浮き輪装備の珠瀬が彩峰に向かってバタ足を繰り出し、彼女の全身に海水が降り注ぐ
『…………えい、おかえし』
おかえし……と言っても珠瀬にではなく……
『きゃっ!!?ちょっと綾峰ッ!?』
榊の顔におもいっきり海水を被せる
『ふっ…………』
勝ち誇った笑みを浮かべる
まさに人魚とで言うのか………美しき乙女達は海と戯れている。


『皆、無邪気もんだな…………』
宗像はサンサンと照らす太陽に身を焦がしながら、トロピカルジュース(合成品)を口に含む
『そうですね』
同じく、風間も彼女の横に座りながら皆を眺めている

『アナタ達は参加しないの?』

黄色の水着を纏う神宮寺まりもがかつての教え子に聞く
『私は軍曹と共にいられば幸いです。』
『同じく…………』
『あらあら…………』
―甘えん坊ね
皆にとってまりもは母であり、姉のような存在である。




『お腹空いたわね……』
時間はそろそろ1お昼時、人間といしての欲求が速瀬に訴えかけてくる

『そうだ。ボートと網がありますから、沖で魚でも捕ってきましょうか?』
『名案よ!訓練兵!』


それがいけなかった。


沖まで来て、網で魚を捕獲する事には成功した。
さて、帰ろうとした時、『ガス欠』である。
予備のガソリンなんて無く、ボートにはオールなどの漕ぐものは無い
一言で言えば…………


『漂流』である。



・・
・・・
・・

白銀side


「世界って広いな…………」
既に島を見失ってしまい、戻るのは不可能、いい感じに海流に乗っているようである。
明日には太平洋のど真ん中か?BAD END?


「そんなの嫌だ~!!」


叫んでも助けはこない
冥夜達が気付く頃には、白銀は広大な海を彷徨っているだろう
太平洋で、こんな小さなボートを探すのは砂漠に針を落とすようなものだ。
やがて日は傾き始める
後はあっという間だった。周囲は暗くなり、どこを見渡しても光が見えない闇に包まれてしまう
やはりBAD ENDか?
絶望が白銀を襲う
まさかこんなところで野垂れ死にするとは思いもよらなかった

ドンッ!!

「うわッ!!?」
危うく、ボートから落ちそうになった。
ボートが『何か』と接触したのだ。
―この海で接触?何と?
衝突したであろうモノを確かめるが周囲は暗闇で何も見えない
いや、『見えないだけでそこには何か』ある
手探りで虚空に手を伸ばすとヒンヤリと硬いものに触れた
「これって…?」
―船なのか……?
だけど助かった。船があるということは乗員がいるはずである。
「誰かいませんか~!!」
その声に反応して、甲板に女性が出てきて此方にライトをい向ける


「白銀訓練兵?」


「へっ………?」
―オレの名を知っている?
「どうして貴方がこんな場所に…………?」
とくよく見れば服は……国連軍が採用している服装である。
しばらくすると梯子が下ろされ、船に上がった。




救助されて、今は船内に設けられている食堂にいる。
「落ち着いた?」
「はい………」
冷えた体に温かいコーヒー(合成品)が沁みる
「島の方には連絡しておきました。」
「皆、貴方の事を心配していたわ」
「そ、そうですか…………」
帰ってきたら心配させた罰として鉄拳制裁をうけるかも………
「それと神宮寺軍曹が帰ってきたら説教ですって……」
「うっ…………」
教官室でみっちり、こってりとお説教されるのが目に浮かぶ
「聞いていた話と少し違うわね…………」
「えっ………?」
―聞いていた話……?
何の事かわからない
「自己紹介がまだだったわね?私はイリーナ・ピアティフ中尉、香月夕呼博士の秘書兼オペレーターをしているわ」
「先生の……?それって、つまり…………」

「オルタネイティヴⅣ計画の関係者よ」

「ここで話してもいいですか……?」
周囲には数名の仕官がいる。
オルタネイティヴ計画の機密がどれほど高いかは知らないが、こんな場所で簡単に出して良い単語ではないと思う
「大丈夫よ。この船にいるのはオルタネイティヴⅣ計画の関係者ばかりよ、安心した?」
彼女の言葉に頷く
そういえば、基地でオルタネイティヴⅣ計画の関係者は先生と霞ぐらいしか知らなかった。
考えてみれば、先生が『天才』と言っても一人で全てが出来る訳じゃないのだ。
となると、彼女が先生の『秘書』ならばオレの存在を知っていておかしくはない



「けっこう沖だから…………島の皆と合流するのは明日になると思います。今日はこの部屋で休んでいてください」
「他の部屋は立ち入ってはいけません。命の保障はしませんよ?」
「…………はい」
この船が何の目的でここにいるのか不明だ。
たぶん、自分には想像もできないことをしていたのだろう
「あれ?この部屋って中尉が使用しているんですか?」
部屋には女性の物らしき櫛や小物がある。
「ええ、そうです。他の部屋に入れ訳にはいけませんので………副司令からは、私の部屋に泊めるように聞いています。」
「………中尉はどうするんですか?」
自分がここで寝るとして、彼女はどこで寝るのだ?
「私はまだ仕事があるから休めません」
「はぁ……そうですか…………」



数時間後……


ガチャッ

「ん…………?」
部屋の扉が開く音に目を覚ます
―中尉かな……?


ガサガサ・・・・


「?」
―何の音だ……?
衣擦れの音だろうか……暗くてよくわからない


ドサッ!!


その瞬間、ベッドのスプリングが大きく軋む
「ん??」
『大きく軋む』……つまりは人間一人がベッドに寝転がった故に軋んだのだ。
「!???!?!」
―中尉ッ!!?
目の前には下着姿で既に寝ているピアティフ中尉がいた



数分前

・・
・・・
・・


ピアティフside


「今日は…………この辺で切り上げます…………各自、解散………してください…………」
やっと仕事が一段落ついた。
採取したデーターの整理、調査、計算etc…………
副司令からの仕事は過酷だ。オーバーワークだ。人権無視の仕事っぷりだ。
誰からも返事はない、唯の屍の様だ。
皆の意識は既に昇天している。
ある者は真っ白に燃え尽き、遠くを見つめている。またある者は口から魂魄が出掛かっている。
そんな自分も長くは意識を保てない、油断すれば皆と同じ有様になるだろう
でも、自分は伊達に香月夕呼の秘書をしていない、この程度で意識をなくすわけにはいかない
だけど瞼は重く、千鳥足……それでも自室へと戻る


―『早く寝たい』―


人としての欲求が脳へと訴えかけてくる
部屋へ辿り着き、中へと入る。
窮屈な仕官服を脱ぎ捨て、いつものように下着姿になる。
そのまま、ベッドに…………
と思ったが、ベッドには『先客』がいたのだ。
―………男なら床に寝なさいよ

―ここで休めと言った張本人が言いますか?―

自分が床に寝るか?
だけど床は鉄板、冷たいし、硬いのでパス
他の部屋へ行くか?
もう限界、今すぐに寝たいのでパス
―大人の一人や二人は入れるわね…………
もう、ちゃんとした思考はできないご様子である。
うら若き乙女、イリーナ・ピアティフは無謀にも男のベッドへと潜り込む
そして彼に被さっている毛布を剥ぎ取り、自分に被せると意識が一気に落ちた。

・・
・・・
・・

まあ、そんな訳で…………色々とピンチです。
俺と中尉の顔がすごく至近距離で………さらに、毛布から僅かに見える谷間と太股が見えるわけですよ
しかも、中尉の汗などの匂いが脳髄を刺激してくる
―あ~……ヤヴァイ…………どうするべきだ?
1番:寝たふり
2番:部屋を脱出
3番:イタダキマス
―いやいや、なんだよ?3番って?イタダキマス?何を美味しく頂くんだ?
そんな馬鹿な事を考えているよりも、どうにかこの状況を打破しないといけない
―このまま寝たら……朝は…………地獄だな……………………
ならば答えは決まっている。
白銀は彼女を起こさない様にゆっくりと身を起こす
このまま、部屋を出ればいい、他の部屋に入るなと言われたから甲板にでも出ようと思う
そして静かに息を潜め、ベッドから降りようとしたが…………


ギュッ


―ギュッ………?
恐る恐る、後ろを振り向くと…………白くて細い腕が、俺のシャツをしっかりと握っている。
―マジですか!?
離させようと力を込めるが、ビクともしない


―あれ……?前にも…………こんな事があったような……?


だけど、詳しくは思い出せない
最近、自分の記憶にないことばかりが何かの切欠で頭に過ぎる
それよりも、この危機的状況をどう脱出するかだ。
掴まれているのはシャツだ。そのまま、脱げばいい
その案を実行に移そうと…………


ドタンッ!!


「ッ!!?」
背中をおもいっきり強打する。
何が起こったのだ?と周囲を見ると………ベッドに戻っている。
―な、なんで………?
原因は言わずとも分かるように、ピアティフである。
彼女はこともあろうか・・・白銀のシャツを握ったまま投げ飛ばした。
いや、投げ飛ばしたというよりも、引き込んだと言うべきだ。
だけど、文官出身の彼女の細い腕から、男一人を投げ飛ばすのは信じられない
と油断していると首に腕を回し、足を絡めてきた
さらに腕には凄く柔らかい感触が…………プニプニ?
しかし・・・男の浪漫もすぐに地獄へと変貌する。


ギュッ


本日二度目のギュッ
ただし……世の中には幸せなギュッと………痛いギュッがある。
今度は首に回していた腕が絞まるギュッである。
それも頚動脈にギュッだ。
「ぐッ………!!?」


―し、絞まっている…!


「ち、中尉……!」
彼女に呼びかけるが、眠りは深く、起きる気配はない
その間にも、どんどん頚動脈が絞まっていく
「…………!!」
もう、叫びすらあげたれない絶体絶命の状況
必死にタップするが反応はない


ギリギリ…………


女性とは思えない力で白銀は男の本懐を果たしかけている。
―果たしたら駄目だろ!!?
だけど、彼の意思とは裏腹に瞼が自然に重くなり、意識がゆっくりと手放されていく
―マジで……BAD・ENDなのかよ…………?
そう頭に過ぎると意識が途切れた。

・・
・・・
・・・・
・・・
・・



PPPPPPPPPッ!!!バキッ!


タイマーをこれでもかというぐらいに憎しみを篭めて壁へ叩きつけた。
意識はまだ霞が掛かったような朧状態である。
「ふぁ~~…………………」
あまり、寝た気がしない
壁へ叩きつけられた時計(スーパーカーボン製)を見ると、寝てから3時間しか経っていない
ここ最近は徹夜の毎日、美容と健康の為にちゃんとした睡眠を取りたいところである。
徒党を組んで直訴するべきか?


「ピアティフ中尉、仕事の件で……………………」


入ってきたのは彼女の後輩の女性仕官である。
だけど、彼女は…………この部屋に入ると同時に絶対零度に晒されたごとく、体が固まる
「…………?」
そんな後輩の様子に訝しげに見るがわからない
―あっ……そうだ。今、下着姿なんだっけ…………
でも、男ならいざ知らず、彼女は女のだ。別に女の下着姿で動揺する筈が無い
ならば、彼女が固まる理由は別にあるのでは…………?


そう、例えば………彼女の隣に見える『男』など…………


「失礼しましたッ!!」
慌てて退室する後輩、そして………隣の存在に気づいた中尉


―ああ、なるほど…………


頭の中でわかった。


―私は……彼と『寝た』と思われているのね…………


そこで意識がはっきりと目覚めた。いや、目覚める他なかったのだ。


―部屋を出た後輩を口封じしておかなければならない―


女性の『噂』の伝達は速いのだ…………明日にでも基地中に『噂』が充満するだろう
ベッドが飛び出て、後輩を追いかけようとするが、下着姿である。
このまま追いかける訳にはいかないので、服を素早く着替えたが既に足音は遠くへ行ってしまった。
「そんな…………」
そのまま、床にへたり込む
矢放たれた、もう止まることはなく………この船に『噂』は充満し、やがては横浜基地を覆いつくほどに膨れ上がるだろう
そして、一番知られたくない人物の耳に入るのは確実である。


『香月夕呼』


その人に知られては何をされるのか想像もできない
彼女の全身から血の気が引いていく
どうするべきか?
既に『噂』が囁かれているかもしれない
ならば…………この船を沈めるか?
どうやって?爆弾でもあれば可能だろうが、そんな物騒なモノはない
そもそも………この隣で寝ている男が原因なのでは?

『原因の消滅は結果の消滅に繋がる』

以前、副司令がそう言っていたのを思い出す
つまり、『原因』=『白銀武』の消滅は『結果』=『噂』の消滅である。
―そうに違いないわ!!

エリート士官であるイリーナ・ピアティフは…………もう、まともな思考が出来ずにいる。
そして………これが悲劇の幕開となるのである。


白銀side


ゆっくりと意識が覚醒するとそこは知らない天井

―ああ、生きているって素晴らしい…………

白銀は心の底から思った。
昨日、あのままあの世へ行くなんてごめんである
「ッ!!首が痛い………」
―痣になっているかも……


「おはようございます……白銀訓練兵…………」


その言葉に肩がビクッと震え上がる
「お、おはようございます………」
警戒するが、どうやら正気のようである。
―昨日のは夢だ!悪い夢と書いて悪夢を見たんだ!!
「あ、あの………?」
様子が変である。
こう……何かオーラっぽいモノが漂っているような…………


カチャッ………


問:見間違えでなければ、その手に持つのは拳銃に見えますが?
ピアティフの手には銃が握られている、それが偽物だとは到底思えない
「な、何の冗談ですか!?」
銃口はしっかり白銀に狙いを定めている。
「ふ、うふふふふふふふふふふふふふふふッ!!!!!」
「ち、中尉……?」
その妖しい笑いに身が引く
だけど、直ぐに笑いを止め、いつものキリッとした表情に戻る
銃を構えたまま…………


「死んでください」


―いや、死んでくださいって…………マジDEATHか?


パンッ!!


ベッドに小さな『孔』が穿たれる
「ひぃいッ!!?」
―本気で撃った!!?
―まさか……あのまま寝た件か!!?
そのまさかだ。
「外れてしまいました…………文官であっても、ちゃんと射撃訓練はしておかないといけませんね」
ゴリッ!!
「これなら…………外れませんよね?」
額に銃口を押し付けられる。
―熱いッ!?撃った直後だから砲身が熱いってば!
「は、話し合いませんか……?」
「いやです」
交渉の余地なし
ピアティフは引き金に指を掛けた。
今の彼女の指は羽よりも軽いと断言できる。
「今度こそ………」


ガクン・・・


突如として、船体が僅かに揺れた。おそらくは船体が波に揉まれたのだろう
その僅かな揺れで彼女はバランスを崩してしまう
「今だッ!」
チャンスとばかりに、白銀は中尉の手から拳銃を奪う


「とったぞ~~~~~!!」


「か、返しなさいッ!!」
取られた銃を取り返そうと来るが、こちらは衛士なのだ。文官に後れを取るはずがない(昨夜の事は不問とする)
「中尉ッ!話を聞いてください!!」
「嫌ですッ!!」

その後、説得に小一時間……そして状況説明に小一時間を費やした。

「す、すみません!!」
全て、自分に非があったことに深く詫びる
まあ、当然だろう。勘違いで白銀を抹殺しようとしたのだ。
「この話はここまでにしませんか?それよりも………」
先程からヒシヒシと己に突き刺さる視線が痛い

「この状況をどうにしかして欲しいです。」

周囲には207とA-01の皆が集結している
あれだけ時間があったのだ。とっくに島へ到着していてもおかしくない
さて、これから彼女達を心配させた『礼』と今の状況をもう一度説明しなければならない

「…………………弁護人の保障は?」

「「「「「「「「「「「「ない」」」」」」」」」」」」

素晴らしい笑顔で皆が揃って言ってくれる
本気で泣きたいと内心思う白銀武
「まずは……心配させた『礼』をしないとね?」
何故か、物凄く嬉しそうな速瀬中尉
―Sだよ!鬼畜がここにいるよッ!!

合唱

終わった頃に、白銀の顔はアン○ンマン並に膨れ上がった?


アメリカ
某研究所

夕呼side

真っ白な部屋に男二人と女一人が座っていた。
それぞれの共通点として、『白衣』を着ていた。
女は横浜基地副指令兼オルタネイティヴⅣ計画の責任者である香月夕呼

「…………これは冗談かしら?」

テーブルに冊子の束を投げつける。
その言葉に数名の研究員の肩が震える
「我々として提供したいのは山々なのですが…………」
研究員の一人が弁明をし始める
「別にそっちが造ったデカブツに興味はないわ………欲しいのは材料と基礎理論だけよ」
「しかし・・・これは国家機密クラスに該当する事です。」
「私がコレを旨く使うのが拙いの?」
「い、いえ・・・そんな事はありません」
だが、彼らの内心は面白くないだろう
彼らだけじゃない・・・この国の上層部も気に入らないだろう
「それに………私はウィリアム博士とお話がしたいって言った筈だけど?」
「博士は………多忙なお方で………………」

「あら?そうなの…………今日の予定はないと聞いていたけど?」

「「ッ!?」」
完全にバレている。
どうやって情報は知りえたかは知らないが、彼女の目的とする人物には本日の予定なんて無いのだ。
「…………あまり、私を怒らせないで欲しいわね」
その言葉で研究員達は怯え、縮こまる
世界でも五本の指に入る『天才』を怒らせてしまったのだ。
―腹が立つわね・・・此処のメインコンピューターにウィルスを入れてやろうかしら……?
などと、本気で物騒な事を考えていらっしゃる。


「それぐらいにしてくれんか?」


一人の老人が部屋に入ってくる
「「は、博士ッ!?」」
老人の助手である研究員達が驚きの顔を隠せない
なにせ、彼らは香月夕呼と博士との接触を避ける為に監禁する訳にはいかないが、自宅で待機しているよう工作したりしたのだ。
「やっと本人のお出ましね」
「初めまして、ミス・香月………アナタの噂はよく聞いていますよ」
老人は右手をさし伸ばす
「嬉しいわね、博士のようなお方に知られているなんて光栄です。」
それを答える様、彼女も老人の手を握る
しかし、研究員達はあまり良い目で見ていない
先程からの彼らの態度の原因は劣等感などから来るものである。
香月夕呼は若い、まだ20代なのに世界が認める『天才』なのだ。
それを妬ましく思う人間は少なくない
もっとも、この場にいる研究員はそれだけの『理由』で彼女を嫌っているのではない
「少し、席を外してくれんか?」
「はい…………」
その言葉に渋々従う研究員達である
「申し訳ない・・・・彼らも純粋に研究しているのだが、立場が立場なだけに………」
「お気遣い結構、承知しています。」
「用件は………コレでしたかな?」
「はい」
机に置かれた厚い冊子の内容を確認した。
それは自分が欲していたものである
「それと『材料』の件もありますが…………それ相応の対価は提示できるのですか?」
当然だ。
無条件でこれ等を渡す訳にはいかないのだ。
この冊子一つや『材料』だけでも値が付けられないほどの代物である。


「…………はい」


その言葉に老人はわずかに眉をあげる
「ほう………まさか噂の00ユニットかね?」
「割に合いませんよ。それを差し上げる場合、アメリカが保有する全G元素や戦術機を全て、こちらに渡すつもりならお考えします。」
「でしょうな……それにはそれぐらいの価値………それでもお釣りはくる」
なにせ、00ユニット一体で世界の全てを掌握できるのだ。
『社霞』がいた世界で、00ユニットは桜花作戦時に全世界のシステムに侵入して情報を偽装したことがある。
その気になれば、全世界のコンピューターを掌握が可能なのだ。
「こちらが提示するのはこちらです。」
渡したのは一枚のディスクと冊子である。
老人は冊子を手に取り、それを読み始めた。
「…………なんと…………これでも十分なお釣りがありますな…………」
冊子に書かれていたモノはそれほどの価値があった
詳しいことはこのディスクに入っている。
「なら、もう一つ…………頼まれていいですか?」
「内容によりますがね」

・・
・・・
・・・・ 
・・・・・
「お互い、有意義な時間になりましたな」
「そうですね」
「ではお約束のモノは期日以内にお届けしましょう。ですが、最後のお願いされたものは少々、時間が掛かるかもしれません」
「構いません。材料が届けば文句はありません」
部屋を出いく際、博士は独り言の様に呟きはじめた。


「最近、軍上層部の動きを不穏です…………お気をつけなさい」


「………存じています。」
その言葉に思い当たる節があるのは『社霞』が持ってきた情報で該当するのが二つある。
・HSST墜落
・12・5事件
米国のオルタネイティヴⅤ推進派が大きく関与している事件である。
それらの妨害工作に対しての対策案は用意している
「私は止まることは許されないのです」
そう言い残し、部屋を後にした。


研究所から出て、帰りにタクシーを拾うと………
「行き先はどちらに?」


話しかけられたのは『日本語』である


「………………なんでアンタがいるのよ?」
運転手にいたのは情報省、外務二課の課長である鎧衣左近が座っていた。
「はて……?どなたかと勘違いしておられるのでは?私はしがない唯のタクシー運転手ですが?」
そう言うが、運転席の所にSAKON・YOROIと書かれたネームプレートが取り付けられていた。仮にも諜報部の人間がそんなのでいいのか?
「あのね………………」
毎度毎度、奇妙な登場の仕方をする男であるが、ここまでするとなると頭痛がしてくる。
「それよりも……付けられていますな………」
ミラーを僅かに傾けると黒服の男がいた。
「知っているわよ………どうせ、人目の少ない場所で何かするつもりでしょう………返り討ちにするだけよ」
「いやはや……随分と勇気がありますな………」
「とりあえず、エドワーズまで行ってちょうだい」
ここからエドワーズ基地までかなりの距離だが、空港に寄る訳にはいかない
状況を考えれば、旅客機が『事故』るかもしれない
「了解」

流石は五大陸の一つ、馬鹿みたいに広く、そして周囲に人や民家に車すら滅多に見ない
まあ、簡単に言えば………襲撃し放題である。


「やはり付けてきますか………」


ミラーを見ると後方から猛スピードで来る乗用車がいた。
こちらを追い抜かすと思いきや、いきなり横へ体当たりする。
「ッ!!随分と荒っぽい手段をとるわねッ!!」
「では、こちらも少し荒っぽい運転をします」
そう言うとハンドルをおもいっきり切り、今度は逆に相手の車を押し出しはじめる。
向こうも、まさか反撃を受けた事に驚き、押し返そうとするが馬力の違いなのか、全然ビクともしない
そうこうしている内に、カーブへと差し掛かると相手の乗用車はガードレールを突き破り、木と正面衝突した。
「あらら~?派手にしたわね」
「ははは、ただの交通事故で片付けられると思いますよ」
それもそうだ。
真実を言える訳が無いのだ。『事故』として済ます他無い


プァーッ!!


「これは………少々、拙いな………」
次に現れたのは巨大なダンプカー
そして明らかに敵意を持って追いかけてくる。
ダンプカーはこのタクシーに体当たり………いや、踏み潰そうとしている。
あの重量で体当たりされたり、踏み潰されたらひとたまりも無い
「ここまで露骨にするのかしら………?」
「ですが、ご安心を………ポチッとな」
左近が運転席にあるボタンを押すと車体の後ろから何かが突き出た。
夕呼はそれを興味そうに見ているとイキナリ、炎を吐き出し始めたのである。
それに驚いたダンプカーの運転手はハンドルを横に切ってしまい、重量のあるダンプカーは横転してしまう
しばらくすると盛大な爆発音がした。おそらくはガソリンにでも引火したのだろう
「何なのこの車…?他にもミサイルで仕込んでいるの?」
まるでスパイ映画の車である。
「おや?どうしてそれを……?」
「………………………」
他にも飛んだり、潜ったりする事が可能なのでは?と疑う。
いや、この『男』の車なのだ・・・それぐらいの仕掛けの一つや二つはある。
「まあ、そんなことは置いておきましょう………それよりコレを………」
運転しながら後部座席に座っている夕呼に封書を渡す
「何かしら………?」
「お読み頂ければ、十分に理解できます」
怪訝そうに中身を確かめる。
すべてを読み終えるが、もう一度初めから読み直す
「………………内容は本物ね?」
「はい、私もこの目で確認しましたので………」
―『嘘』………じゃないわね
そもそも、こんな『嘘』を用意する必要は彼にはない
「『死人』が生きていたのね………」
「別件の捜査中にコレが『網』に引っ掛かっり、あまりにも興味深いモノで私事で調査をしていました。」
彼が言う『別件』とはおそらくは『12・5事件』の件であろう
「そう………」
封書と一緒に入っていた写真を眺めながら思い耽る




「ぐぅうっ………」
木に衝突した車体から必死に体を引き摺る
あれだけの惨事で打撲程度済んだのは奇跡である。


「間抜けもいいとこね」


まだ20代にも届いていない女性が男を見下ろしていた。
風が吹くと、ロングの水色の髪と耳のイヤリングが揺られ、より一層に美しさを際立たせる
だけど彼女の手には黒い光沢を放つ銃が握られていた
「あ、あああぁぁぁっ!!?」
「そのまま事故死してくれたら楽なのに………」
愚痴りながら銃の安全装置を解除し、狙いを定める。
「ま、待ってください!す、すぐに追いついて仕留めますッ!!」
「命乞いなんて無駄よ………成功しても、アナタは消される運命、だから諦めなさい」
女の口が僅かに歪む
なんの迷いもなく、その手に持つ銃の引き金を引いた。


パンッ!!


地面に真っ赤な華が咲き乱れる
あとの処理は買収した警察が行ってくれるだろう


後書き


南国休暇編を書いていると、気がついたらピアティフ・ルートへ進んでいた自分に気付く
あと一歩で・・・・・道を踏み間違いそうでした。
あの人は嫌いじゃありません・・・むしろ、ストライクゾーンに・・・・だって可愛いじゃないですか?
FDには是非ともピアティフ中尉を登場させて欲しいと思います。
サプリの柏木みたいに、RAにでも登場すれば・・・そしたら(以下省略)

さて、今までどれほどの伏線バラまいたことやら・・・・・回収するのにも一苦労しそうな感じですな(苦笑
今回の話(ラストの部分)は・・・後にオルタの『道』とは別の『道』を歩む為の伏線
感が良い人は今回出てきた『彼女』の正体に気づくと思います。(正体に気づいた人は本気で凄いw)

以前、よしや様が遥と美琴とのほのぼの対決が好いと言っていたのでやってみました。(六行程度ですけど)
他にも、何か御意見、御感想をお待ちしています。

次回はやっと適正テストです。長かった・・・書き始めてから7ヶ月以上、投稿開始してから既に6ヶ月は経過します。
これで全体の5分の1が消化、もっと早く書けば!もっと天啓がッ!!もっと萌えをッ!!!

ここまで読んでくれた方に、心よりの感謝を・・・・


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