総合戦闘技術評価演習、四日目
白銀side
地図を見る。
冥夜が撃たれた方向から考えて相手はこの場所にいると思う
示すのは、この島から切り離された様に存在する『離島』
『離島』と言ってもそれほど大きな場所ではない
「橋を渡ろうとすると狙われるな…………」
向こうに行くには『島』と『島』を繋げる目の前の鉄橋を渡るしかない…………だが、鉄橋の上は遮蔽物もなく、見晴らしが良い
つまりは………絶好の『的』である。
―泳いで行くか？
その思案はすぐに消えた。無謀だ。
この島の形は少し複雑で『海流』が生まれている。
上陸する際は潜水具のヒレなどがあったから良かったものの………今はそんものはない。下手すれば流されてしまう
襲撃する事を考えると離島の裏まで回らないといけない
一体、何Ｋｍ泳がないといけないのだ？陸地で歩くのと違って海で泳ぐのは体力の消費は凄まじい
海から行くには船でもない限り無理だろう
「武器は………べレッタと砲丸ぐらいか………」
泳ぐにしても今、持っているベレッタは自動型拳銃だ。海水で動作不良を起こす可能性は高い
ビニール袋でもあればそれを包む事ができるだろうが、そんな便利なものはない
そして砲丸らしき物体は謎のまま………投げて倒せと？
「あとは………回収したネットと水筒ぐらい・・」
これだけでどうしろと……？向こうは狙撃が可能、他にも武器があるかもしれないのだ。
―………そうだ！ネットに葉や蔓を巻きつければ簡易的な迷彩装備になるぞ！
―橋は鉄橋です―
「………駄目だな」
鉄橋の上で不自然な物体があれば狙撃される。
時間制限は聞いていないが、このまま時間を浪費する訳にはいかない
自分にはやらなければならない事があるのだ。
「………そうだ。『アレ』があった筈だ。」
思い出すのは『アレ』だ。
もし………『この世界』あれば………勝てる。
伊隅side
「………持久戦か………………」
向こうに動きはない
だが、既に残ったのは二人だけ
どの道、演習を終了させるにはどちらかが倒れるしかない
向こうは私を倒す為に此方に来なければならないのだ。
こちらに来るにはこの一本だけの橋を渡らなければならない
その時こそ、私の勝ちが決まる。
「手を上げてゆっくりとこっちを向いください。」
カチャリと撃鉄が引かれる音と共に『ヤツ』が真後ろにいた。
神経を前に向かせていたのがいけなかったのだろう………まさか後ろから来るとは想像もしていなかった。
「………どうやってこちらに来た？ずっと監視していたが橋を渡っていない筈だ。」
スコープから目を離していなかったのだ。
橋は見晴らしもよく、コソコソ渡れるものではない
「ええ、橋なんて渡っていませんよ。」
「なに？」
―橋を渡っていない？まさか泳いで………？
だけど、相手の体に濡れている部分はない、泳いできたのなら体が濡れていなければならないのだ。
「この島に隠されていたボートでこちらに来たんですよ。」
少し時間が遡る。
白銀は『前の世界』でヘリポートの近くに止まっていたゴムボードを思い出した。
以前は燃料がなかったから動かせずにいたが………今回は空の水筒というアイテムがあるから燃料が手に入った。
だけどそれまでが大変だった。
ガソリンを手に入れる為に密林の中を行ったり来たり・・・道中、誰かが仕掛けた『巧妙な罠』のせいで時間を喰ったりした。
極めつけはヘリポートの自動砲台が『稼動』していた事である。
おかげで死に掛けた。スイッチを切り忘れたのかそれとも故意なのか？
「………なるほど」
「降参………してくれますか？」
「訓練兵、お前はそんな事を聞く甘ちゃんなのか？」
「女性の顔にペイント弾はどうかと………」
―ペイント弾って取れにくいんだよな………
「………その甘さが命取りになる事を教えてやろう！」
姿勢を低くし、足払いをする
「とッ！？」
それで無様に転げることはなかったが、それでも体勢が崩れる
「貰った！」
白銀は手を蹴り上げられ、その拍子に手から銃が草むらに落ちた。
「しまったッ！」
その隙に伊隅は狙撃ライフルに手を伸ばそうとするが………
「なんてね」
白銀が不適な笑みを零していた。
彼の右手には黒い球体があるだけ………
「砲丸？」
―まさか、それで私を倒すつもりか？
当たれば強力だろう、だが当たったらの話である。
避けられる自信はある。避けたら全力で反撃するまでだ。
そして黒くて丸い砲丸を投げた。
「ん？」
しかし投げつけた方向は自分でなく、『地面』である。
―投球ミス？
そう思っていたが………砲丸が地面にぶつかると同時に閃光が眼を焼く
「ぐぅッ！？閃光弾か！！？」
迂闊だった。
この演習で武器の用意したのはあの香月夕呼なのだ。唯の鉄球なんて用意するはずがない
ライフルを手にしたが眼が見えなくては意味がない
「今度こそ終わりです。」
取り押さえられた上に、背中に硬いモノを押し当てられる
おそらくは銃口だろう
「………………降参だ。」
「ふぅ………」
―終わった
その思いで一杯だった。
もし、これで抵抗なんてされたら………………
「ん？なんだソレは？」
「見ての通り、枯れ木です。」
手に持っているのは少し太い枯れ木である。
「なんだと？」
「武器はさっきの閃光弾で最後だったんです。」
最初に持っていた拳銃は草むらへ落ちて、探すにしても時間がなかったから適当に落ちていた物を手にした。
「は、ははははははははッ！！私を騙すとは中々、面白いな！」
伊隅が大笑いする。
まさか、そんな子供騙しの手に自分が掛かった事に笑いが堪えられないのだ。
「それにしても………まさか負けるとは思わなかったよ」
「………こっちも合否が掛かっていますから」
失格になれば、衛士ではなく………ただの歩兵となってしまう
それだけは避けたい
「合否？何の話だ？」
「えっ？」
「これは総合戦闘技術評価演習じゃないぞ」
「………へっ？」
―総合戦闘技術評価演習じゃない………？
聞き間違いか？自分の耳は膿んでいるのか？
「ああ、そうか………何も聞かされていないのだな？」
「？？？」
「くくっ、副司令らしいな………」
含まれていた単語に嫌な予感がした。
「貴様達、訓練兵が全員失格になろうがなるまいが、大切な戦力を削ぎ落とす訳にはいかないだろ？今のご時世、戦術機の数は余るほど存在するが、衛士はそうでもない」
戦術機は新しく製造すればいい、でも衛士はそうもいかないのだ。
それに関係してどの国でも大規模な作戦を実行に移せないのは現実である。
「それは表の話だがな………」
伊隅はそれを独り言のように言う
「とにかくだ………貴様は明日から晴れて衛士だ。まあ、まだ訓練兵だけどな………」
しかし、白銀は上の空である。これまでの苦労が無駄だと知ったのは堪えたようである。
「………ベースキャンプまで走って戻るぞ、遅れたら貴様は島に取り残す」
「いっ！？」
さすがに今の言葉で正気に戻る。戻るが………既に伊隅は走っている。
その後を全力で追う白銀
夕呼side
結果が出たようだ。
勝敗は………２０７
意外であった。確率的に言えばA－０１が勝つ可能性が高かったのだ。
「未来を曲げる力でもあるのかしら………」
意外と的を獲ているかもしれない
『白銀武』という存在は『特別』なのだから………
「まりも、後はよろしく」
水着の上から白衣を着て、親友にあの子達の面倒を任せる
「・………どこいくの？」
「アメリカに行くのよ、その為に近くの基地にＨＳＳＴを準備させているわ」
「………わかったわ、ここは私が面倒見るわ」
まりもは夕呼に何も追求しない
言っても彼女が本当の事を話してくれる筈がないのだ。
でも、一つだけ………『大切な事』だけは聞きたい
「ねぇ、夕呼………」
「なに？」
「本当にあの子達の為よね？」
「当たり前でしょう？私は………彼女達が死ぬとこなんて見たくないのよ………」
その言葉に嘘偽りはない
Ａ―０１がＢＥＴＡ捕獲作戦で死亡した二人に対して桜木の丘で何度も謝っているのをまりもは知っている。
「………そうよね、夕呼はいつも周りの心配をしているもの」
伊達に長く親友をやっていないのだ。
「それを他に喋ったら怒るわよ？」
本当は優しいなんて事が部下に………特に、どこかの『馬鹿』に知られるのは嫌である。
「はいはい」
軽く返事し、まりもは夕呼に微笑む
～to be Continued～
後書き
・自問自答・
質問その１―普通、レーザーサイトの有効範囲は短いのでは？―
答え：・・・・・そこは見なかった事にしてください(ご都合主義)
質問その２―なんで黒い球体が閃光弾(球)なの？―
答え：最近、見たジ○リ映画の風の○のナ○シカでおじいさん達が戦車を乗っ取る際に黒い球体(閃光弾)を使用していたのでマネしました。
質問その３―作中でポイントＤ－４やらＥ－５などと言っていますが・・・なんなのですか？―
答え：アレは全てオルタに出てきた無人島の地図を紙に写して、線引きし、マスを書きました。縦10cm、横16,5cmの地図（画面サイズ50％）で縦を１から６に分けて、横をAからJまで分けました。（暇な方はどうぞ真似してみてください）もう、こうでもしないと皆がどこにいるのかさっぱりです。
質問その４―伊隅大尉はどこから狙撃したのか？―
答え：質問その３を参考にしてくれると解かり易いのですが・・・D－３です。
この場所を選んだ理由は二点、『川の付近』(AL本編で白銀達がロープ回収か銃温存で揉めた川)、地形が特徴的の二点です。
少し(かなり)説明不足かもしれませんが地図を見たら納得するかもしれません
質問その５―双眼鏡ごときで島の全域を監視できるのか？―
答え：無理です。島は密林もあり、岩山も存在するのです。
ＥＳＰ能力者でもない限り、把握は無理だと思います。
これは・・・・もう勝手なご都合主義って奴にお任せするしかorz
近日中にも更新予定のHSST事件や１２・５事件の編集に追われ、最終話までのプロットモドキを完成させたりと・・・・色々ありましたよ。
上の自問自答に関して知り合いに読んでも貰って指摘された部分です。(苦笑)
思い返せば・・・無茶苦茶なルールですね・・・・（汗
そして無茶な武器設定、実際にこんな風になる訳ありません！（ミリタリー系素人）
失礼・・・今回、サバゲー風演習にしたのにも実は訳があります。（現状では秘密）
今回の為に色々なミリタリー雑誌やネットで検索は疲れましたよ。
無現鬼道流の技は全て、サプリから抜粋(技の詳細は不明なので勝手な解釈をしました。)しています。
『月の輪』は冥夜のオリジナル技らしんですけど・・・技って自分で作っていくのだろうか？進化？
そうなると・・・まるで某週刊誌で連載しているリ○ーンの登場人物、雨の○護者さんみたいな剣術なんでしょうかな？
トータルイクリプスのお陰でネタがどんどん増えてきましたｗ
隙在らば、この登場人物達をもクロスさせようと考えています。(チラッとしか出ないと思います)