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No.2104の一覧
[0] マブラヴ~鎮魂歌~[うり坊](2006/09/19 12:40)
[1] Re:マブラヴ~鎮魂歌~プロローグ[うり坊](2007/01/11 20:40)
[2] Re[2]:マブラヴ~鎮魂歌~第一話[うり坊](2007/03/23 21:10)
[3] Re[3]:マブラヴ~鎮魂歌~第二話[うり坊](2007/01/11 20:42)
[4] Re:マブラヴ~鎮魂歌~社霞の考察[うり坊](2006/09/19 12:51)
[5] Re[2]:マブラヴ~鎮魂歌~社霞の考察[うり坊](2006/09/19 12:51)
[6] Re[4]:マブラヴ~鎮魂歌~第三話[うり坊](2007/01/11 20:43)
[7] Re[5]:マブラヴ~鎮魂歌~第四話[うり坊](2007/03/23 21:17)
[8] Re[6]:マブラヴ~鎮魂歌~第五話[うり坊](2007/03/23 21:21)
[9] Re[7]:マブラヴ~鎮魂歌~第六話[うり坊](2007/01/11 21:38)
[10] Re[8]:マブラヴ~鎮魂歌~第七話『BETA上陸』[うり坊](2007/03/23 21:23)
[11] Re[9]:マブラヴ~鎮魂歌~第八話『BETA上陸』[うり坊](2007/03/23 21:25)
[12] Re[10]:マブラヴ~鎮魂歌~第九話[うり坊](2007/01/11 21:41)
[13] Re[11]:マブラヴ~鎮魂歌~第十話『南国サバイバル編』[うり坊](2007/03/23 21:29)
[14] Re[12]:マブラヴ~鎮魂歌~第十一話『南国サバイバル編』[うり坊](2007/03/23 21:32)
[15] Re[13]:マブラヴ~鎮魂歌~第十二話『南国サバイバル編』[うり坊](2007/01/23 17:04)
[16] Re[14]:マブラヴ~鎮魂歌~第十三話『南国サバイバル編』[うり坊](2007/01/23 17:07)
[17] Re[15]:マブラヴ~鎮魂歌~第十四話『南国休暇編』[うり坊](2007/02/02 15:58)
[18] Re[16]:マブラヴ~鎮魂歌~第十五話[うり坊](2007/03/21 05:55)
[19] Re[17]:マブラヴ~鎮魂歌~第十六話[うり坊](2007/03/26 10:55)
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[2104] Re[11]:マブラヴ~鎮魂歌~第十話『南国サバイバル編』
Name: うり坊 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/03/23 21:29
総合戦闘技術評価演習、一日目

AM4:00

暗いです。
本当に真っ暗闇なんですよ……しかも狭いので身動きすら取れない

簡潔に今の状況を説明するならば『筒』に詰め込まれています。

ガコンッ……!
コポッコポッ…………

筒の外では『水』が注水されていく音がする。
―ああ、やだな……『コレ』………
誰だって『コレ』は嫌である。
何が嫌か?

魚雷発射管に潜水装備と一緒に詰め込まれているのが嫌なのだ。

―『回天』を思い出すな……
・回天……旧日本軍の特攻兵器、小型潜水艇に大量の爆薬を詰め込んで敵艦に突撃する
今の白銀状況からして、回天とあまり変わらない……いや、これこそまさに『人間魚雷』であろう

バシュッ!!

―ッ……!
体に強いGが襲い掛かり、『筒』を激しく振動させると同時に体中の骨々が軋む
しばらくして揺れも納まると『筒』が割れ、目の前が青く染まる。
―この人間魚雷にはやっぱり慣れないな……
特に射出される瞬間の振動と圧力
「ぷはッ……!」
水面から顔を出し、口の潜水装備を外して久々の空気を存分に吸い込む
「全員いる?」
委員長が点呼をとる。
辺りは暗いが仲間の姿を確認する。
「島に上陸するから着いてきて」
前方には目的の島が見える。
―『二度目』の総合戦闘技術評価演習か…………


AM4:21

「着替えたら直ぐに装備を埋めるわよ」
星々が煌く暗闇の中、ザクッザクッと砂浜に『穴』を開け、潜水装備を埋める。
―チョビット・ハブ……元の世界に帰ったら絶対、お前に無理な操作をさせないぞ……
今ならSOCKS・HOUNDの隊員になれると思う……
今ならチョビット・ハブみたいにエネルギアを倒せる自信が…………………………流石にそれは無理か…………
この島は赤道付近にある無人島だ。
今は夜明け前なのでそんなに暑くないが、日が出始めたら気温も上がる。
更に付け加えて言うならばこのジャングルは湿度も高く、スコールが降る。
それで『以前』は散々な目にあった。
―川の増水でロープを回収するかどうかで揉めたな……
―『二回目』の演習か……まあ、大丈夫だろうけど…………
『前回』は不甲斐ない場面を何度も仲間に曝け出してしまった。
だが今回は違う。演習内容も……無人砲台が狙ってくる事も知っている自分なら大丈夫である。
「よし……終わった。」
「こっちも終わったわ……夜明け前に集合ポイントまで移動、作戦命令を受け取る」
委員長が海岸線に沿って駆け足で目的地へ行く
―次って……たしか…………
AM6:00

夜明けと共に目的地に到着
そこにいるのは無論、横浜基地の副司令である香月夕呼である。
「あら、やっと到着?待ったわよ~、それじゃ、始めましょうかしら?」
左のテーブルにはトロピカルジュース、右のテーブルにはグラスとトンペリらしきモノが置かれている。
―相変わらず、違和感ありまくりだな…………
無論、白銀が彼女にとってこれが『ガス抜き』であることは承知している。
―霞も連れて来れば良かったのに…………

演習前日……
~『何か、土産を持ってくるよ、期待しててくれよな』~
~『期待します』~
~『んじゃ、おやすみ』~
~『おやすみなさい』~
おみやげ……なににしよう……


「はい、これ今回の任務よ」
「命令書受領致しました!」
「さっそくだけど中身を確認しなさい」
「?」
―はて……?前はこんな事したか?
「………………これは一体?」
委員長の様子がおかしい……?
―なんだ?何が書いているんだ?
ここからでは命令書の内容は見えない
「書かれている通りよ」
「博士?何を書いたのですか……?」
さすがのまりもちゃんもこの様子を怪しんでいる。
「ひ・み・つ♪」
―……………怪しい……
この場にいた全員がそう思ったのは間違いない
「…………榊、悪いがその命令書を見せてくれないか?」
委員長から命令書を見せてもらい中身をジッと見る。
しばらくして肩をプルプル震わせると……

「………………博士ッ!」

いきなりの怒声
―な、何が書いているんだ?
まりもちゃんが怒るのだ。どんな内容が書いてあるのだろうか?
たぶん、凄い無茶な内容なんだろう……
「うるさいわね……何よ?」
「何よじゃありません!何ですか!この内容は!?」
「だから紙に書かれている通りよ。」
「試験はベイルアウト後の戦闘区域から脱出なのでは!?」
―そうだよな……『前』も今回と同じでは……?
「そうだったわね。でもそんな陳腐な内容じゃ、つまらないでしょう?」

―…………What?

「だから…………内容を変更したわ」
―な、なんですと~~?!内容変更!?
流石の白銀もこの状況には焦る。
―何を考えているんだ……?
確かに、演習内容を知っている白銀ならば確実に合格できた筈である。
だが状況は一変、演習の内容の変更である。彼にとっては未知の演習となる。
しかし……この演習の合否が後のオルタネイティヴⅣの結果を大きく左右するのは彼女がよく知っている筈である。
なのに演習内容を変えて何をするつもりなのだ?
「博士!」
「まりもは無視して、演習を開始するわよ。え~と、時計合わせ、57、58、59、作戦開始」
皆は慌てて、時計合わせをする。
―大丈夫なのか……?俺………………
少し、先が心配になってきた…………

とりあえず、全員が集合して装備を受け取る。
装備って言ってもボロボロのベルトキットであるが……途中、ツタなどで修理すればいいか…………
「委員長、なんて書かれているんだ?」
「これよ…………」
渡される一枚の紙、そこにかいてある文章に皆が眉を顰める。
「…………なんだこりゃ?」

―島に潜伏中の部隊を倒せ―

たった、その一文だけである。具体的な詳細すらも書かれていない
「潜伏中の部隊って事は……仮想敵がいるって事だよな…………」
「…………どうする?」
「集団で動くのは危険だから二人一組で行動するしかないわね」
「うむ」
確かに集団で動いて奇襲で全滅…………なんて事になったらシャレにならない
「グループ分けはどうする?」
『以前』は美琴と組んだが…………今回は状況が状況なだけに誰と組めばいいのか…………




コポコポッ……

液体をグラスに注ぎ、それを一気に飲み干す
『この世界』ではもっとも高価な酒であろうソレを何の惜しみなく飲む
そのグラス一杯だけでもおそらくは帝国国民の平均的月収ぐらいはするだろう
「流石はトンペリ…………格別ね」
合成品ではなく、『本物』のトンペリである。
経費は…………オルタネイティヴ計画持ちなのか彼女のポケットマネーかは不明である……
「博士~!」
「もう、さっきからうるさいわね……飲む?」
グラスをまりもに差し出す。
「いりませんッ!どうしていつも勝手な事をばかりするのッ!」
「良いじゃない」
「良くないわよッ!」
「はぁ~、頑固ね~」
「それと!仮想敵ってまさか彼女達ですか!?」
「あら?よく分かったわね?」
オルタネイティヴⅣ計画に参加している者なら簡単に思いつく
香月夕呼が自由に動かせるオルタネイティヴⅣ計画直属部隊は一つしかない

『A-01』

つい最近、新潟にBETA上陸した際には裏で暗躍した彼女の直属部隊である。
操縦技術だけでなく、総合的評価でも一般の衛士より上
「彼女達はプロですよ!?特に速瀬は白兵戦のスペシャリストなんですから!」
柏木や涼宮茜、築地らの新米は参加してはいないだろうが…………
それよりも問題なのは『彼女』らが参加している事である。
全員、まりもの教え子であり、優秀な人材ばかりなのだ。

「そんなの関係ないわ」

まりもの言い分を一言で一蹴する。
「それに…………これは顔合わせでもあるのよ?どうせ任官してから顔を合わせるよりも今、合わせた方が面白いじゃない」
「………………」
彼女が無意味な事をする筈がないのはまりも自身がよく知っている。
その行動全ては、緻密に計算されている事なのである。
「まあ、見ていなさい。」
207が簡単に負けてしまうのならば、こんな馬鹿な真似はしない
絶対の自信が彼女にあるからである。

『博士、準備が整いました。』

テーブルに置いてあった無線機から通信が入る。
「異常は無いわね?」
『はい、α1からα11の観測装置全て異常ありません』
「こっちの端末にデータを送り続けなさい」

―データ?一体なにをするつもりなの………?

「何を企んでいるの……?」
「まりも………残念だけど機密保持の為に教えられないわ」
「………………」
彼女がそんな風に言う事は…………おそらく、オルタネイティヴⅣ計画に『深部』に関す事なのだろう…………
まりもはオルタネイティヴⅣ計画に属しているが教えられる情報には限度がある。
「そんな恐い顔しないでよ…………私はあの子達の『生き残る確率』を引き上げる為にしているのよ」
「…………そうね」
全て…………あの子達を思ってしている事なのは確かである。
「一杯、貰うわ…………」
グラスを手に取り、喉に流し込む
合成品とは違う喉越し感、それに深い味わい
まさに最高の一品
「もう一杯…………頂戴」
久しぶりの酒なのか、酌が進む
二杯、三杯と……
「そ、それぐらいにしたら……?」
さすがの夕呼も空になりそうなので止めようとするが………

目が据わっている。

後に香月夕呼は後悔する。
彼女に…………神宮寺まりもに『酒』を飲ませた事を…………
彼女の……酒癖の悪さを忘れていたことに………



演習が行われている無人島から約2km離れた海上に高速船が停まっていた。
それは演習が終了した武達を日本へ送る為の高速船であるが…………それは偽装である。
この船は見た目こそ、普通の高速船であるが…………『中』が違う。
中は多くの高性能コンピューター置かれている。
そしてそれを『並列』に繋げていた。
簡易版であるが『並列処理回路』でもある。
『異常は無いわね?』
「はい、α1からα11の観測装置全て異常ありません。」
『データはこちらの端末に逐一送信よ』
「了解」
そんな大掛かりな装置を使用して『観測』とは……?
知っているのはこの場にいるクルーと香月夕呼だけである。
『特に…………α11のデータには目を光らせなさい。』
画面に映し出されるα11のデータ、そこには脈拍、脳波等の波形などが表示されている。

α11:シロガネ・タケル



白銀&御剣ペアside

「はぁ…………」
「ん?どうしたタケル?」
憂鬱な俺の表情に心配したのか冥夜が声をかける。
『今回』は彼女とペアを組む事にした。

何故、冥夜と?

答えは………………ペアを決めるのに『何故』か皆が揉めたのだ。
よって公平にあみだクジでペアを決めた。
その結果、俺と冥夜がペアになった。
「いや……なんでもない…………」
―まさか演習内容が変更するなんて………
これは大誤算である。
―いくら先生でも……これは酷いぞ………
「気を緩めるではない。周囲に敵がいないとは限らんぞ。」
「そうだな」
「むっ…………」
突然、冥夜が立ち止まる。
「どうした?」
―敵か?
「あそこにぶら下がっているのはなんだと思う?」
目の前には…………

木からぶら下げられている『袋』があった。

「…………………分からん」
中に入っている『物体』が長いのか、袋に突起が出来ている。
「罠………?」
にしてはあからさまに怪しい
「ちょっと待っていろ」
周囲を調べるが罠はない、念に石を袋に投げつけるが反応はない
「……………………大丈夫だ。罠は無い」
「そなたはトラップなども熟知しているのだ。」
「ほ、本で読んだ程度だぞ」
「それで中身は?」
「模擬刀?それにライフル…………」
訓練で使用される模擬刀…………それとライフルは国連軍が正式仕様している軍用ライフルである。
ライフルの弾倉を確かめると中にはペイント弾が入っている。
「袋の中に手紙がある…………」
「どれどれ…………」
さっそく手紙を開く

『この島のいたるところに武器を置いたので自由に使って相手チームを殲滅しなさい。尚、相手も条件は同じく、武器は探して得るので注意』
ルール1、演習期限はどちらかが全滅するまで、終了の合図は花火を打ち上げるので確認する事
ルール2、ペイント弾に当たると即失格、速やかに浜辺のベースキャンプに帰還
ルール3、格闘戦の場合の勝敗は相手が再起不能になるか、気絶するかのどちらかである。
ルール4、降伏は認めるが…………それは相手次第による。
ルール5、死なない程度に頑張りなさい

「マジ…………?」
―殲滅せよ…………また随分と過激な内容だな………
それに何だ?この無茶苦茶なルールは?バ○ルロワイヤルか……?
「私はその模擬刀を持つ。タケルはライフルを持つがいい」
「ああ、そうする。」
自分が模擬刀を持つより、冥夜が持つのがいい
刀は彼女がもっとも得意とする獲物なのだ。

しばらく歩くと…………

「ここにもあるぞ」

また、木からぶら下がっている。
念には念を押して周囲を確かめ、安全を確認したら袋の中を確かめる
「空の水筒と…………砲丸か?」
空の水筒は水を汲むのに役立つとして…………この砲丸らしき物体はなんだ?
「ふむ・・・どこかで見た事があるのだがな…………」
「相手に投げつけるのか?」
当たれば強力だろう…………もっとも『当たれば』の話であるが…………

「…………爆弾?」

「げっ!?」
あやうく落としそうになる。
確かに………爆弾にも見えない事はない
導火線は見当たらないが…………この黒い球体、ボン○ーマンの爆弾か?!
「落とすではない。本当に爆弾だったら我等が危ないぞ」
「そ、そうだったな…………」
もし、こんな至近距離で爆発したら俺らが危ない
「だが…………流石に演習で爆弾を使用する筈がないとは思うが…………」
「この演習を考えたのは夕呼先生だぞ………」

「………………………………」

否定できないのが悲しい
彼女が『唯』の砲丸を仕掛ける筈が無い、コレが爆弾の可能性が大いにあるのだ。
「棄てるか……?」
「………危ないだろ……一応、棄てるなら安全な場所にでも・・・」
確かに、こんなジャングルに正体不明の物体を棄てるのも危ない
川や海にでも棄てたら大丈夫だろう
「まあ、とりあえず………これらはベルトキットに入れてと…………」

ブチッ

ベルトキットの紐が切れて地面に落ちる。
「あっ…………」
―そうだ。このベルトキットボロボロで補修しないといけないんだ。
落としたベルトキットを拾う為に身を屈めると…………

ビシャッ!

「へっ?」
すぐ横の木に赤いペイントが付着する
―い、今の拾わなかったらアウトだったぞ!?
ベルトキットを忘れずに拾い、物陰に隠れ様子を伺う
「冥夜!無事か!?」
「ああ、こちらは無事だ。」
「どうする、二手に分かれるか?」
このままでは埒が開かない
ここは二手に分かれて相手を混乱させるのが手だ。
「…………うむ、合流地点はポイントF-3だ。」
「分かった」
これは事前に決めていた合流地点の仮称である。
もしも、バラバラになる事があった場合に役立つと決めてのだ。
「では私は行くぞ」
冥夜は匍匐前進で体を隠しながら移動する。
二手に分かれると言ったものの…………こちらはまだ狙われている可能性がある。
―上から…………狙える訳がないな………
現在地はジャングルの中だ。上からだと枝や葉などが邪魔で此方を正確に捉えるのは難しい
なら、残されたのは水平、木々の隙間から撃った?だが…………そうだとしても、このジャングルのどこからか狙撃したのだろうか?
それが分からない以上、迂闊に顔を出せない
―そういえば………冥夜を狙われなかったな…………
すぐ近くには冥夜がいたが狙われなかった。それに匍匐全身でこの場を離れるときも狙われなかったのだ。
となると射撃範囲は狭い、その範囲外に動けばいいのだ。
―普通は木から出たらアウトだが…………
隠れた場所が『木』だから良かった。

「よっと!」

木に登り、移動をする。
ここはジャングルなのだ。木々が茂っていて移動には困らない
これなら安全に移動が出来る。


風間&宗像ペアside

「外れたな…………」
双眼鏡で様子を確認する。

彼女は宗像美冴
特殊部隊『A-01』の№,3にあたる。

彼女の役割は『観測手』である。
狙撃ライフルは狙撃に特化するあまり、拡大率が高い為、視界が狭いのが難点である。
それを補うのは視野が広く、双眼鏡で戦況を把握できる観測する者が必要となる。
「やっぱり、水代大尉みたいに上手くはいきませんね…………」
レンズから目を逸らさずに言う

風間梼子、彼女も宗像と同じく特殊部隊『A-01』に所属している。

今、彼女が使用している狙撃ライフルはM24『Sniper Weapon Systm』
口径:7.62mm×51、全長:1092mm、ボルト・アクション式、最大射程:800~900m、アメリカ陸軍では一般部隊から特殊部隊まで幅広く支給されており、スナイパー射撃手には絶大な信頼を得ている狙撃ライフルである。
「木々が邪魔して狙われないと思っているでしょうけど…………甘いわよ」

白銀の『読み』は外れた。

水平から狙われているのでなく、『上』から狙われているのだ
確かに普通ならば木々で狙いが定められないのであろうが…………今回は『条件』が違う
狙撃ライフルは普通である。だがスコープが『特殊』なのだ。
スコープは熱感知器………『サーモグラフィー』である。それも最新式の感知器である。
まさか演習にそんな代物が用意されているとは彼も想定していないだろう
だが、この演習を計画したのは『香月夕呼』なのだ。
それと誤算だったのは標的が『白銀』に一人に絞られていたことである。
先ほど、冥夜は狙撃可能だったがここはあえて撃たなかった。
彼を油断させるのが目的だからである。
「ごめんなさいね………」
スコープを覗く、写るのは猿みたいに木を渡っていく『熱源』
最初の狙撃は威嚇、当たらなくても構わなかったのだ。相手が移動して、『上』から狙撃が出きる場所に出てきたらいいのだ。
狙いを定め、トリガーを指に掛ける。
後は最高のタイミングで撃つだけだ。
そしてタイミングを訪れる。
障害物がなくなり、完全にこちらから相手の姿を確認できるポイントに出た。
―これで…………

ピシャッ!「きゃっ!?」

突如、彼女のわき腹に赤い塗料が花を咲く
「梼子ッ!?」
ペイント弾の付着の仕方から方角を割り出す。
見えるのはジャングルだ。
―下からか!?
違う、下から『コノ』場所を狙える筈がない
此処は岩の起伏が激しく、下から上を見上げてもこちらの姿を確認できない

ならばどこだ?

答えは簡単だ。この場所を見る事が出来るのは同じ標高か、それ以上の場所である。
その条件に該当するのは一箇所
真っ直ぐ…………遠くに見える岩山からである。

「まさかッ……!あの場所から狙ったのか!?」

あそこならばここを『真っ直ぐ』に狙える
しかし…………この場所から狙撃した思われる岩山までどれぐらいの距離がある?
1200mか?それとも1300m?いや、もっとだ。1500mはあってもいいと思う
だが銃の性能が良くてもこの距離を狙うのは容易ではない

「美冴さんッ!避けて!」

「ッ!?」
僅かに体をずらすと『何か』が破裂した音と同時にすぐ後ろの岩肌が赤く染まる
―今のは梼子の声がなかったらアウトだった。
背中に冷や汗を掻く
もし、彼女の注意がなかったら…………ゾッとする。
私は岩陰に身を潜め、様子を伺う
どうやら向こうの狙いかは逃れたようだ。
―あれだけの距離を正確に狙うとは…………

それが恐ろしい

距離はもちろん、風の影響や空気抵抗を完全に計算して狙った。
しかも狙いは『ほぼ』正確
その証拠に一発目は梼子にヒット、二発目は直前で動いた事により狙いが逸れたが、動いていなかったらヒットしていただろう
「ごめんなさい…………」
「いや、梼子の注意がなかったら私も危なかった…………」
「そういえば向こうには………極東国連軍で狙撃成績が№1の子がいたわよね・・?」
「そうだったな…………訓練兵だと甘くみていたが………まさか、これほどの腕とは思わなかった。」
所詮は訓練兵、そう高をくくっていたのが敗因だ。
どんなに銃やスコープの性能が良くても撃つのは人間、僅かなブレでも狙いが大きくそれてしまうのだ。
―狙撃の腕も恐ろしいが……その精神力が恐ろしいな………



珠瀬&彩峰ペアside

「逃げられた………」
「でも一人は仕留めましたね」
「うん」
スコープから目を離し、一息する。
珠瀬が使用した狙撃ライフルは銃器メーカ、DAKOTA社製の大口径ハイパワースナイパーライフル、T-76『Longbow Tactical』、全長:1270mm/1321mm(最大)、口径:8.6×70mm、ボルト・アクション式で有効射程1400m、最大射程1600mという驚きの銃である。
ライフルの性能が良くても扱う人間次第である。
しかし、彼女は最大射程である1600mギリギリで目標に当てた。流石は極東一のスナイパー、その精密射撃は驚愕に値する。
ついでにこの銃一丁の最低価格4250ドルという値段である。
「タケルさんは?」
「無事、でも御剣とは離れてしまった」
「そうですか…………」
「移動するよ。今の音で気づかれたと思う。」
「そうですね」

「はい、そこまで」

知らない女性の声
そして太陽を背にしているのだろうか、目の前に影が写る。
その影の『形』には見覚えがない

つまり……………………『敵』である。

「えっ………?」
「ふッ!」
珠瀬が後ろを振り向くより早く、彩峰は回し蹴りをする。
「威勢がいいわねッ!」
だが………彩峰の脚は相手に絡め取られている。
「でもッ!私と格闘なんていい度胸よッ!」
相手が僅かに動く
―関節技が決まってしまう………!
そう判断した彩峰は絡め取られた方のブーツを脱ぎ捨て、相手から脱出する。
「あら、良い判断じゃない」
あのままだったら彩峰の脚に関節技をされていただろう
ブーツを彩峰に投げる。
だが彼女はそれを取ろうとはしない
「履かないの?待ってあげるわよ?」
「その隙に仕掛けるつもり?」
「…………やっぱり、引っ掛からないわね」
僅かに口元を歪める。
やはり何か仕掛けるつもりだったらしい
「まあ、いいわ……さっさと始めましょう…………」
珠瀬は彩峰の後ろへと下がる。
彼女も格闘戦は出来るだろうが、目の前にいる者達と比べるとレベルが違う
参戦しても彩峰の足を引っ張ってしまう可能性がある。
彼女がもっとも活かせる分野は狙撃である。
―援護射撃したいけど…………
ライフルの弾倉はわずか二発しかなかったのだ。
その二発は先程、使い果たした。
彼女に出来るのは見守ることぐらいだろう
ベースキャンプ
失格者組

「一番乗りは…………風間か」
「すみません」
「どうだった?今回の訓練兵は?」
「中々見所あります。」
それを聞いて笑う
まあ、確かに色々な『意味』で見所があるかもしれない
「ペアは…………宗像か?」
「はい、私だけが失格になって…………」

「ん?」

一人……いや二人がジャングルから姿を現す
「次は彩峰と珠瀬か」
「あの教官……救急セットありますか……?」
「テントにある」
礼を言い珠瀬はテントへ向かって駆ける。
「彩峰………ずいぶんと派手にやられたようだな?」
彩峰の体の所々に擦り傷やアザがある。
「…………はい」
彩峰の格闘センスは白銀や御剣と互角、その彼女を倒すとなると…………『相手』は限定されてくる。
「相手の特徴は青髪でポニーテイルだったか?」
教官の答えに彼女は目を丸くする。
確かに自分がやられた相手の容姿はそんなのだった。
「そうです。教官は知っているのですか……?」
「ああ、キサマ達の先輩にあたる人物だ。」
「207出身……?」
「そうだ。彼女は白兵戦のプロだからな」
「慧さん、これ」
「ありがとう」
珠瀬が彩峰に救急セットを渡す
彩峰は自分で怪我を治し始める。
珠瀬はふと浜辺を見ると、波打ち際に一人の女性が佇んでいた。
―知らない人だ……仮想敵だった人かな?

「あっ………」

よく見ると服に付着した赤い塗料に注目する。
無論、それには見覚えがある。
その視線に気付いた風間は珠瀬に声を掛ける。
「どうしたの?」
「その…………弾を当てた場所は大丈夫でしょうか?」
いくらペイント弾って言っても付着する瞬間の衝撃はある。
狙撃銃の弾速を考えると、おそらくはアザになっているかもしれない
「当てたって……貴女が撃ったの?」
「はい」
「凄いわね………そういえば、貴方達のお名前は?」
「珠瀬壬姫訓練兵です」
「彩峰慧訓練兵です。」
珠瀬と彩峰の二人が敬礼する。
「私は風間梼子中尉よ」
二人は中尉と聞き、更に背筋を伸ばし敬礼する。
「敬礼はいらないわよ。私の部隊の規則っていうよりも上司の人が嫌いなのよ」
「えっ………しかし…………」
軍隊で敬礼は規則、珠瀬はその規則を破るのに抵抗がある。
「上官命令よ」
風間は二人に優しく微笑みかける。
「「はい」」
―良い人だ…………
「少しお話でもしましょうか?」
「はい」

その光景を遠巻きにまりもは見ていた。
「夕呼の言う通りね…………」
演習での顔合わせは正解だった。
今後、彼女達が任官してA-01に配属した場合、その絆は深まるだろ




榊&鎧衣side

「全然、仮想敵と遭遇しないね」
まったく敵とも味方にも遭遇せずに現在にいたる。
鎧衣は道中、トラップを仕掛けたりしているが・・・・トラップの存在を味方は知らないのでは?
「そうね、でも油断は禁物よ」
「うん、そうだね」
日は沈みかけて辺りは薄暗くなっている。
下手に夜のジャングルを行動するのは危険なのでここらで野宿だろう

「あっ……袋だ」

山の斜面………っていうよりも崖の下に袋が一つあった。
「今度は何かしらね」
「待って………罠だよ、袋の下を見て…………」
草が覆い茂って見えにくいがロープがある。
もし、近づいたから宙吊りだろう
「…………古典的な手ね」
こんな罠があるという事は……敵がいるという事だ。
「周囲に敵は?」
「わからない…………隠れているかもしれない」
場が張り詰める。
榊は途中で手に入れたべレッタM92Fを抜いて銃の安全装置を解除し、周囲の様子を伺う

ガサッ!

茂みが僅かに動く
「そこッ!」
体を捻り、西部劇のガンマンみたいな早撃ち

「ッ!!?」

命中した。
姿は見えないが反応からして当たったのは間違いない
「そこにいる人ッ!出てきなさい!」
「でも…………今のが味方だったらどうするの?」

「……………………えっ?」
その言葉と共にピシリッと世界に亀裂が入った。

「だって……相手を確認せずに撃っちゃったし…………」
もしも仲間だったら………『味方誤射』である。
「…………と、とりあえず…………出てくるのを待ちましょう」
しばらくして相手が出て来た。
自分達の知らない女性………仮想敵だった人だ。
それに内心、ホッとする榊である。
「せめて相手を確認してから発砲して欲しいものだな……味方誤射だったら笑えないぞ?」
宗像の服には赤いペイントが付着している。
「良かったね、味方じゃなくって」
「まさか一日目で失格になるとはな…………思ってもみなった。」
やれやれと肩をおろし、降参のポーズをする。
「頑張った君達に褒美として情報をあげよう」

「情報?」

「そうだ。有益な情報だ。」
「…………私達を混乱させるつもりですか?」
「まさか…………本当の事を話すよ」
「ひとまず聞こうよ」
「そうね」
「上には注意しろ」
「「えっ?」」

カランッ………

『何か』が転がる音がした。
二人は落ちてきた物体を確かめた。落ちてきたのは何の変哲もないただの『石』である。
「注意って………落石?」
確かに危ないから注意しないといけないだろう…………
「ち、違うよ!上!」
何かに気付いた鎧衣が慌てて上を指す

「なっ!?」

そこには『崖』を駆け下りてくる人影があった。
「こんな場所を!?」
信じられない光景であった。
ロープなどで降りてくるのならわかる。
だが、そんな装備もしていない様子だし、なにより…………『崖』を駆け下りてくるのは信じ難いものである。
千鶴は慌てて銃を構えるが遅い

パシャッ!!

「あっ!?」
彼女の服に赤い塗料が滲み渡る
「そんな…………」
あまりの事態に唖然とする。

「次は……アンタよ!」

銃を捨て、間合いを詰め込む
―接近してきた!?
鎧衣はベルトキットに差し込んでいた模擬刀(サバイバルナイフ)を引き抜き、構える
自分は冥夜や彩峰みたいに白兵戦は得意ではないが、そこそこ自信はある。
相手は背中に手を回し、何かを取り出した
「あ、あれって・・・」
次の瞬間には目の前がブラックアウトしてしまった。

簡単に言えば・・・『気絶』だ。

鎧衣が目を覚ますと、周囲は少し薄暗くなり始めていた。
どれぐらい気絶していたのか・・?
「気づいた?」
「千鶴さん・・・・そっか、ボク・・負けたんだね・・・」
前回の総合評価演習の件もある
彼女はその件を少し引き摺っていた。
「あなたは頑張ったわ・・私なんてあっという間に失格よ」
自分の服に付いた塗料を鎧衣に見せる
「まあ、なんだ・・・運が悪かったな…………」
宗像は二人の肩を叩きながら慰める。

「宗~像~ッ!アンタ!人が隠れている場所をバラすじゃないわよ!」

「ハンデだ。そもそも訓練兵相手にそこまでするか?」
「私は勝負には負けるのは大ッ嫌いなのよ」
「お前は子供か………」

「あ、あの…………」

「ん?」
すっかり蚊帳の外である二人に気付く
「ああ、悪かったな……こんな非常識なヤツにやられたのはさぞ悔しいだろう」
「そ、そんな事はありません!私達が未熟だったので………」
「いやいや、速瀬は非常識なんだよ」
「あのね!」
「おっと…自己紹介をしないとな…………コイツは速瀬水月で私は宗像美冴、二人とも階級は中尉だ。」
「敬礼ッ!」
やはり軍人の階級は絶対のようである。
「そんなに固まる必要はない、もっとリラックスしてくれたらいいぞ」
「は、はい・・・」
と言われても真面目な彼女には少し難しい気もする。
「さて、日が暮れる前にベースキャンプに戻るとしよう」
「…………速瀬、寂しいなら一緒に来るか?」
つまりは失格者になれという意味である
「殴るわよ?」
「冗談だよ」
そう言い、キャンプへ向かって歩き出す。
「これで四人…………少なくともあと二人ね」
彼女もまた、行動を開始する。
次の獲物を狙って…………



ベースキャンプ
失格者組

日が沈み、やがて暗闇の中から人影が現れる。
「今度は鎧衣に榊…………宗像か」
まだ一日目だというのに既に六人が失格となった。
残った人数を考えるとA-01は三人それに対して207訓練部隊は二人だけである。
数は訓練兵が不利である。いや、実戦経験も訓練兵が不利である。
「やっぱり速瀬は強いわね…………」
かつての教官として彼女の事を誇りに思うが…………少しは手加減をしてもいいのではと思う


PM0:00
総合戦闘技術評価演習、一日目終了

失格者
一人目:風間梼(A-01)
二人目:彩峰慧(207訓練部隊)
三人目:珠瀬壬姫(207訓練部隊)
四人目:宗像美冴(A-01)
五人目:榊千鶴(207訓練部隊)
六人目:鎧衣美琴(207訓練部隊)


生存者
一人目:伊隅みちる(A-01)
二人目:速瀬水月(A-01)
三人目:涼宮遥(A-01)
四人目:御剣冥夜(207訓練部隊)
五人目:白銀武(207訓練部隊)


~to be Continued~


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