<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.21005の一覧
[0] 【完結】あれ? 俺ら騙されてるんじゃね?(VRMMOもの)  二部開始[ミケ](2019/07/05 22:37)
[1] 一話 ゲームスタート[ミケ](2010/08/10 07:21)
[2] 二話 マルゴー爺[ミケ](2010/08/10 21:20)
[3] 三話 そして冒険は始まる[ミケ](2010/08/11 20:06)
[4] 四話 ギルド[ミケ](2010/08/12 07:34)
[5] 五話 救出[ミケ](2010/08/13 06:11)
[6] 六話 初めての冒険[ミケ](2010/10/06 23:57)
[7] 七話 冒険報告[ミケ](2011/01/24 00:16)
[8] 八話 贈り物[ミケ](2011/01/24 22:48)
[9] 九話 愛こそ全て[ミケ](2011/04/30 21:51)
[10] 十話 体のゆうこう的な使用法[ミケ](2011/05/01 16:08)
[11] 十一話 因果応報[ミケ](2011/05/02 20:39)
[12] 十二話 肉万歳[ミケ](2011/05/04 20:34)
[13] 十三話 拠点陥落[ミケ](2011/05/04 21:42)
[14] 十四話 敗者の足掻き[ミケ](2011/05/04 22:52)
[15] 最終話[ミケ](2011/05/04 23:30)
[16] エピローグ[ミケ](2011/05/04 23:57)
[17] 【改訂版】プロローグ[ミケ](2019/06/29 21:35)
[18] 一話 ログイン[ミケ](2019/07/01 12:45)
[19] 二話 マルゴー爺[ミケ](2019/07/01 12:46)
[20] 三話 そして冒険は始まる(ここまで同じ)[ミケ](2019/07/01 12:46)
[21] 四話 ラピスとバルガス[ミケ](2019/07/01 12:47)
[22] 五話 不穏な世界[ミケ](2019/07/01 12:47)
[23] 六話 ブルータス、私もだ[ミケ](2019/07/01 12:48)
[24] 七話 若き領主(仮)[ミケ](2019/07/01 13:33)
[25] 八話 必殺技の習得[ミケ](2019/07/01 20:28)
[26] 二部(プロローグ)[ミケ](2019/07/05 22:37)
[27] 一話 夏目と勉を生け贄に捧げ! 日本観光召喚![ミケ](2019/07/06 13:06)
[28] 二話 掲示板1[ミケ](2019/07/06 18:22)
[29] 三話 誰だ神様にヒーロー映画なんて見せた奴は[ミケ](2019/07/10 07:54)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[21005] 三話 そして冒険は始まる(ここまで同じ)
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:8a3a10d3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2019/07/01 12:46
 向こうの体が持たん……向こうの体が持たん……その言葉は俺の頭の中をぐるぐると廻っていた。

「どうしましたか? リキ。何も飲み食いしなければ体が持たないのは当たり前でしょう」

 にこりと笑って兄貴が言う。何か、圧力を感じるような気がするのは気のせいだろうか。でも俺は、そんな些細な違和感よりも疑問が溶けた安堵の方が大きかった。

「ああ、そうか! そうだよなぁ。一週間飲み食いしなければ、そうなるよなぁ。って事は、早く帰った方が良いのか?」
「そのあたりは問題ないのじゃ。この世界の7日が、向こうの1日になるように調整しておる」
「そっか。でも、1日食べないってのも問題だよな。そういうことか。で、入信って?」
「職業に就くのと同じようなものです。重要なのは、これをしないと貢献度が得られず、レベルアップ出来ないという事。神様を思い出すとして見て下さい」

 俺はじっくり思い出す。しかし、情報が膨大すぎてわからない。

「どの神様を信じればいい?」

 途方に暮れて俺が聞くと、兄貴はいくつかの神の名前をあげた。

「戦闘職関連の神様に限定して思い出しました。この中から、リキがピンと来た神様を選んでくれればいいですよ。僕もちょっと考えます」

 俺はしばらく悩んだ後、名前が覚えやすそうだったドリステン様について思い出す。
 使える技。パッション。育つ力。パッション。くれるご褒美。パッション。教義。パッション。貢献度の得方。パッション。

「兄貴、パッションってなんだ?」
「激情、情熱って意味ですよ」

 情熱かぁ。うん、俺みたいな脳筋にはこれくらい単純な神様が良いのかもしれない。
 マルゴー爺の所に向かうと、神の名を告げる。俺が一番最初だった。

「ドリステン様じゃと!? 随分変わった神を選ぶのぅ。よし、洗礼を受けさせるから、この衣装を着てドリステン様の紋章を刻印したマラカスを思い切り振るのじゃ。そしてドリステン様に祈るのじゃ。その祈りが届くまで!」

 俺はマスカラを振った。振りまくった。激情と情熱を掛けて振りまくった。

「ドリステン様、おいでませ!」

 リズミカルなマラカスの音と俺の叫びと共に、俺の頭の中に声が響き渡る。

『な、なんだこの感覚は!? メリールゥ、メリールゥ! 頭の中で声が……ぶふぅっわしに入信者だと!? ……何を考えているのだ!?』

 急に頭に響く声。なんて偉大なる存在なんだ。だが、ドリステン様が俺に降りてくる感覚は現れない。まだか、まだ俺の祈りは届かないのか!俺はひたすらマラカスを振った。

「ドリステン様、おいでませ!」
『落ちつけ、よく考えるんだ。家族に相談はしたのか? 入信は人生で一度しか出来ぬのだぞ。というかあの馬鹿らしい洗礼の儀を本当にやったのか!? 笑うな、メリールゥ!』
「ドリステン様、おいでませ!」

 祈れ、祈るんだ!

『ぎゃあああ! いつの間に皆、集まってきた!? その入信コールをやめろ! 主神様、入信許可命令は卑怯です!』

 主神様の命令だと!? あと一息だ!

「ドリステン様、おいでませ!」
『くぅ……仕方ない、そなたの入信を許可しよう。こうなったら徹底的に苛めぬいて……そ、そんな、主神様! 無理です! ……くぅ、仕方ない。覚えてろよ!?』

 俺の首に何か異物感がする。これが入信の証なのか? 凄まじいやり遂げた感とわき上がる力!

「やったぁぁぁぁぁぁ! ありがとうございます!」

 俺は大声をあげて喜びを表した。

 「おお、入信の証のルビスタルボックスが……! って、犬の首輪……かの、これは……。とにかく、おめでとう!」

 マルゴー爺が褒めてくれる。入信って大変なんだな。しかし、兄貴の助けなしで入信できたのは我ながら偉い。

「で、入信が済んだら、どうすればいいんだ?」
「後は魔物と戦うだけじゃよ。出口はあちらじゃ。結界の外には出ないようにの。準備が済んだら来るが良い。ランダムに町に飛ばすからの」

 俺は指示されたドアを通る。長い長い廊下を抜けると、頑丈な扉があった。
それを開けて進むとまた扉。一枚、二枚、三枚もの扉を抜けると、眩しい光が俺の目を刺した。
 一面の草原に、丸い不思議な生き物が点々と辺りをうろついている。
 緑の草が、さわやかな音を奏でる。
 風が気持ちよく俺の毛皮を撫でていった。何か、無性に走りたくなってきた。
 俺は走った。初めは上手く体を操れず、転びながらだった。でも、段々感覚が慣れて行く。不思議な生き物の傍を通った時、不思議な生き物が牙をむいた。足に噛みつかれそうになった所を、すんでの所で避ける。

「はは……はははっ」

 俺は、いつのまにか笑っていた。なんだか気分が良い。
 思い切り駆ける。駆ける。駆ける。なにやら、後ろから不思議な生き物がついてくるが、それも気にならなかった。
 気の済むまで駆けると、俺は笑顔のまま後ろを振り返る。そうして俺は呻いた。
 まるっこい不可思議な生き物が、大挙して俺を追いかけていた。

「おいおい……俺、いきなり死にそう……」

 棍を握りしめ、振るう。重い衝撃と共に、一体の魔物が張り倒された。
 張り倒された魔物が青いクリスタルに変わる。その時、頭の中に声が響く。

『あー、うるさいうるさい。やればいいのだろう、初めて魔物を倒した祝いを! ほれ! いたっ叩くな……何!? お前もか、メリールゥ! やーいやーい。わしの苦しみ思い知れー』

 その時、大きめのマラカスが天から落ちてきた。俺は思わず棍を取り落とし、それを受け止める。次の魔物が襲ってきて、俺はとっさにマラカスで殴りつけた。しっくりと手になじむ感覚。さっきよりは軽い衝撃。
 またも魔物は青いクリスタルに変わった。

「ははっ……いいなこれ。サンキュ、ドリステン様」

 俺はドリステン様に礼を言って、魔物と戦う。しかし、叩いても叩いても大挙して押し寄せるプルプルした不思議な生き物。

「うわっツトムさん! リキさんが魔物の大群に囲まれていますよ」
「大丈夫か、リキ!」

 何人かのプレイヤーが武器を手に走ってきた。その動きは走り始めた時の俺と同じで、どことなくぎこちない。
 それぞれが思い思いに魔物を攻撃する。兄貴はうっすらと笑みを浮かべて魔物に短剣を突き立てた! その一撃で魔物は消え、天から二枚の扇が降ってくる。
 兄貴は短剣を腰に差し、その扇を手に取ると、扇で魔物を切り裂いた。まるで、踊るように。
 他のプレイヤーは……駄目だ、腰が引けてる。剣が掠って魔物が痛そうな声を上げるたびに、顔を歪める。そうだよな、他の生き物を傷つけるなんて普通できないよな……俺は喧嘩で慣れてるけど。むしろ兄貴がそういう事が出来るのに驚くべきか。喧嘩なんて縁がないはずなのに、随分簡単に、しかも躊躇なく剣を突き立てた。俺だって、生き物に刃物を向けるのは躊躇する。
 よそ見をしたからか、魔物に噛まれた。いてぇ! 俺は腕を思い切り振って振り払う。

「今助けるぞ!」

 プレイヤーが扉から続々と出て来て加勢する。
 終わった頃には、皆ボロボロでへたり込んでいた。

「これで一番弱い魔物かよ」

 獣人の言った言葉に、兄貴は反論する。

「弱いですよ。全力で攻撃すれば僕でも殺せましたから。……ルビスタルは、全員に分配しませんか? 始めですし。これで一旦レベルアップしに戻りましょう。僕も呪文を覚えたいですし」

 そう言って兄貴は足を思い切り捲った。何かと思えば、太ももに赤く光る宝石が並んで嵌めてあるガーターリングが嵌めてあり、それが光ってルビスタルを吸い込んだ。
 あれってどうやるんだろうと思うと、俺の首の違和感のする場所にルビスタルが吸い込まれていく。
 他のプレイヤーは皆、腕輪や指輪タイプになっていて、それぞれルビスタルを吸い込む。兄貴に視線が行くのはわかるが、俺にまで視線が行くのはどういう事だ。
 とにかく、兄貴の言葉に皆が頷き、部屋へと戻る。そこでは、数人のプレイヤーがあるいは悩み、あるいはモンスター退治に出る勇気がなかったらしく、こちらを伺っていた。

「どうだった?」

 エルフが、包帯を持ってきて聞く。純血っぽいのが多いんだな。

「ありがとうございます。魔物はそれほど怖くありませんでした。怪我はしましたけど、死ぬほどではありません。初めに準備運動をしていった方がいいですね。体が違うと感覚も違うし、出来たばかりの体ですから慣れるまでに時間が掛かるようです。良かったら、このルビスタル使って下さい。呪文を覚えてからの方が戦いやすいでしょうし」

 兄貴は包帯を受け取り、俺の噛まれた腕に巻いてくれる。
 他のプレイヤーも、次々と包帯を取って治療をする。
 ハーフエルフは何度もお礼を良い、ルビスタルを持って何事か呪文を唱えた。
 ルビスタルが宙に消えて、ハーフエルフがギュッと拳を握った。

「これで戦いに行ってみます」

 そしてエルフが扉へと消えて行く。

「まず、レベルアップは……と。良かった。出来ますね」

 そして兄貴は扇を使って舞を踊りだした。
一体何を……と言いかけて気づく。そっか。レベルアップの儀式か。俺はレベルアップの儀式を思い出す。そうそう、洗礼と同じだったな。
俺はマラカスをリズミカルに振った。

「メリールゥ様、お願いします!」
「ドリステン様、おいでませ!」

 俺達の声が重なった。え? メリールゥって……。

『レベルアップか? あー面倒くさい。どう育ちたいと思ってわしを選んだのだ?』

 頭の中で声が響いたので、俺は答えた。

「俺は兄貴を守れるくらい強い戦士になりたい」
『ガルギルディンに入信しとけ! 後獣人なら……獣人? 竜人? 人間? なんだお主……随分妙な奴だな……なに、これは……よし! モルモット的な意味でわしに仕える事を許す!』

 ガルギルディンについて思い出して、その情報量に目が回していた俺は我に却って答えた。
「モルモットってなんだ?」
『可愛がってやるという意味だ』
「ありがとうございます!」
『……馬鹿だな? お主。まあよい。戦士系の補助神として登録したのはわしだしな。あんなの一番上が戦士系だけだっただけなのだが。適当に力でも増やしておけばよかろう。む。不味いな。呪文を考えてなかった。戦士系だから特技か。ワシは呪文の方が得意じゃから呪文で良いかの。名前は適当にパッションで……呪文もパッションで……振りつけは洗礼と同じで……効果は……む、補助神になる時にランダムで貰った回復呪文の素が一つか。やれやれ、後で補充しないとならんのか、面倒な。じゃあ回復で。相場が分からんが……とりあえず、ルビスタルを千貰おうか……ってメリールゥ、抱きつくな! 一体どうしたんだ。何? 信者が怖い? 知るか。モルモット、さっさとルビスタルを寄こせ』

 俺は持っている全てのルビスタルを差し出した。ルビスタルが砕けて消える。

『全然足りんな。レベルアップの処理だけしてやろう……それも足らんな』
「わかりました。兄貴ー、俺、ルビスタルが足りないから魔物狩ってくる」

 俺が振りかえると、兄貴も神と会話しているらしく、何事か呟いていた。

「入信の許可をしたのは貴方様です、諦めて下さい。そしていつか魔王を倒し、巫女アリスを嫁にする僕が有名になるのは確実。きっと大勢の人に崇められる事になりますよ、邪神としてね。ククク……ハーッハッハ……おや? リキ、どうしました? 今、悪役ごっこをしていた所なのですよ。ねぇ、メリールゥ様」

 あ、悪役ごっこ……? 悪役ごっこなのか、そうか、良かった。俺、一瞬本気にしてしまったじゃないか。兄貴もたまにはふざけるんだな。

「俺、ルビスタルが足りないから狩ってくる」
「ちょうど僕も、もっとルビスタルを欲しいと思っていた所なのですよ。一緒に行きましょう」

 俺達は真っ暗になるまでルビスタルを集めた。その頃には皆、入信が終わってルビスタルをせっせと集めていた。そろそろ冒険に行こうという者は一人もいない。どころか、一週間はここにいようか、と言い出す者までいた。俺と兄貴は話しあって、翌日から町に向かってみる事にした。
 その日の夕食、皆を集めてマルゴー爺が言った。

「言い忘れておったが、転送にはルビスタルを百使う。それに、この研究所にもルビスタルや貨幣や研究材料を提供して欲しいんじゃ。食料は自給自足できるから良いが……この研究所はわしの私財を投げ打って作った物。国の援助はない。どころか、隠れていなければならん存在じゃ。よいか、くれぐれもこの研究所の事も仲間の事も言ってはならん。素性は出来るだけ隠すんじゃ。心配せずとも、冒険者に素性を聞くのは禁忌じゃ。異端審問官にはくれぐれも気をつけるんじゃぞ。魔王の出現で気が立っておる、些細な事で火あぶりにされかねん。もう駄目じゃと思ったら、リセット機能を使うが良い。ただし、それを使うとそのヒーロードールは死んで、二度と使えん。このゲームはリアルじゃから、RPとやらを忘れずに。それが長生きのコツじゃとキリシマからの伝言じゃ。……この世界を頼んだぞ、わしの愛しい子供達」

 食事を終えると、俺は早々に部屋へと向かい、眠りについた。色々あって、疲れきっていた。ルビスタルは兄貴のアドバイスのお礼にと皆が寄付してくれた分もあったが、千個にはとても足りない。転送用が精一杯だ。
 次の日の朝、部屋を出ると兄貴を起こし、顔を洗って朝食を食べる。
 兄貴がルビスタルボックスを出しやすいよう、片足だけ短パンにして腰布にスリットを入れるのを待ってから、俺達はマルゴー爺の所に行った。

「全体チャットで様子を知らせてくれよ」

 エルフが言い、俺と兄貴は頷いた。

「では、町へ送るぞ」

 マルゴー爺が呪文を唱える。
 そして俺の視界は光で覆われる。
 俺はとっさに目を庇い、そろそろと開く。すると、そこは荒野だった。
 一瞬前までは研究所の中にいたのに。自分の目が信じられない。
 遠くに、小さく町と、それを囲むように立つ物見櫓と小さな神殿がある。
 町の周囲に配置した神殿で町を守る結界を維持しているのだと思いだせた。

「行きますよ、リキ」

 兄貴に促され、俺達は町へと歩き出した。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.036853790283203