魔物が現れるたびに、それを抑える為に減って行く仲間。
結局魔王の元に辿りついたのは、俺と、ラピスと、ラーデスと、兄貴だった。
「リキは補助と回復をお願い! 絶対に守るから!」
魔王を前に、震えながらラピスが言う。
「ふはははは! 断罪! 断罪! 魔王も、何もかも、吹き飛ばしてやる!」
ラーデスが魔術を放つ。
「もう! どーにでもなーれ!」
兄貴が鞭を振る。
チャンスは一瞬。その一瞬を、絶対に逃しちゃ駄目だ。
じりじりと、じりじりと削って行く。兄貴の合図を、狂おしい程に待っている。
時がたつごとに、仲間達が死んで次の体に移り、牢に入れられていく。
けれど、次の体に移る装置を壊されなかっただけでも有難い。
遠くから、鬨の声が聞こえる。軍団が勝ったんだ。すぐに、ここにあいつらが押し寄せてくるだろう。
『リキ……今しかありません! 行きなさい!』
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
俺は飛び出して、渾身の力を込めて爪で引き裂く。
大量のルビスタルが、溢れ出た。俺の首輪が光り、物凄い音を立ててルビスタルを吸収して行く。
『あー、良くやった良くやった。では、今まで行った所ならどこでも扉を開ける呪文、ゲートオープンを授けよう。これ作るの結構大変だったんじゃぞ。感謝せい』
「リキ、首尾は」
緊張した顔で、兄貴が問う。俺はぐっと親指を立てた。
『では、まず牢屋に繋いでください。急いで』
『わかった』
「ゲートオープン!」
ラピスが、ラーデスが驚いた顔をする。
「何をしている!?」
大きな扉から、仲間達がほっとした顔で駆けだしてくる。それを確認して、兵士が追いかけてくる前に扉を閉める。
「ごめんな、ラピス。俺、行くよ。ゲートオープン!」
強く心に思い描くのは、我が家。帰りたかった。とても。
そして、俺達は俺の部屋へとなだれ込み……。
「私も行く! 行ったはずだ、ツトム。貴様の行く所、どこにでもついていくとな!」
「リキ! あんた、あたしを独りぼっちにするくらいなら、初めから口説かないでよ!」
そう言って、扉の中に飛び込んできた。受け止める俺達。閉まる扉。
「な、なんなの!? きゃあっ化け物――――――!!」
お袋が絶叫して、俺は耳を塞いだ。
「リキ……私達は今混血なのだから、研究所に出ればいい物を」
「ごめん、兄貴」
「おばさん、どうしました!?」
気絶してしまったお袋を抱きとめた所で、真っ黒な服を着た小杉が現れる。やれやれ、本当に今日は忙しいな。兄貴が、小杉の服を見て呻く。
「遅かったですか……」
小杉は、目を丸くして、何度も俺達を見回して、これまた絶叫した。
落ち着いた小杉が話してくれた事は、受け入れがたい事だった。
まず、小杉は俺と連絡がとれなくなった時点で迷わず警察に連絡したらしい。
家宅捜索が入り、俺達の死体を発見。
急いで逮捕状を出すも、関係者は雲隠れ。その後、俺達の葬式が出されたらしい。
「ぼ、僕、僕が小坂井君達をころ……」
小杉はぶるぶると震える。
「まあ、それは仕方ないですから、いいとして……これから、どうします? 二回も絶叫が上がれば、そろそろ警察が来てもおかしくない頃ですが」
「あー……。ありのままを話すしか無いだろ」
「就職、どうしよっか」
「教祖でも自衛隊でも警察でも好きな所に就職すればいいじゃないですか」
「研究所の就職とか、お手軽そうだよな」
「そこは全員、確実に一回は入れられるので意義は感じないかな―」
「やっぱり?」
ぐだぐだと話していると、玄関のチャイムが鳴る。
「すいませーん。警察ですが、悲鳴が聞こえたとの事で参りました。こちらのドアを開けて頂けますか?」
「はーい」
呆れるほど簡単に、兄貴は返事をしていた。
ミケ、戦闘シーン苦手ってレベルじゃないorz後エピローグあります。12時までに間に合うかな?