「うっ、ううん…何…何なのコレ…?」月詠家別邸から帰ってきた千鶴しばらくしてから眠りにつくが、寝苦しさ故に眠りから起き上がる。息切れをし、頭を抱える程、頭痛が襲う。「何なの…この『記憶』…?私は知らない…ううん…違う…」頭痛の原因---突如千鶴の頭の中に流れ込んで来る、見知らぬ『記憶』そして--- 「コレは…白銀…?御剣…に…彩峰…鎧衣…珠瀬…茜…?」そしてタケルや、未だに逢ってない冥夜達の名前を口にする千鶴 そして--- 『行くわよ、彩峰!!』『『ハアァァアァァッ!!』』自分と彩峰が共に自決をする瞬間が流れ込み---頭痛が止まる。「わ……私は一体…ううん…」頭痛は止むが、突然の事に混乱する… そして、彼女は---とんでもない事を口にする。 「えっ…?ここは…私の部屋…?いや…確か仙台の…別邸の部屋…?」記憶が混乱してる為か、今居る場所すら把握する事すら出来なかった千鶴…そして、しばらく落ち着き、息を整えると---「私…なんで『生きている』の…?確か『桜花作戦』で彩峰と死んだ筈じゃ…?」なんと『二度目の世界の榊千鶴』がループして来た…「私…どうしたのかしら…確か彩峰と一緒にS11で自決…した筈なのに…?」少しずつ記憶を整理する千鶴…すると、変化が見えて来る。 「…違う…私は戦術機に乗った事なんて無い…けど…乗った事が有る…。」少しずつ『この世界の榊千鶴』も戻って来て、徐々に混乱が収まりつつある。 「ううん…違う…私…『過去』に戻って来た…の…?」そしてとある『答え』に導く 「……つまり…『過去』に戻って、過去の自分と融合した……?ハッ、なんて非現実的な妄想かしら…私らしくないわ…」非現実的な答えに否定するが、それを否定するように表情を変える。 そしてそれは、今否定までした『非現実的な答え』を『現実』と判断する自分が居た為、言葉を失う「……今は答えが欲しいわ…例え非現実的な答えでも、情報が欲しいわ…」やっと冷静に戻った千鶴自分らしく、冷静な分析をする。 「……とはいえ、前回の記憶とかなり違うわ…。光州作戦が原因で亡くなる筈の彩峰のお父さんが健在している事…本土侵攻戦で四国・京都が防衛に成功した事…明星作戦でG弾が使われなかった事…何これ…まるで『都合が良いように』歴史が違うじゃない…」『前回の世界の歴史』と違い、良い方向に向かってる事に疑問視する千鶴そして記憶の整理を再び続ける事にする 「白銀…まさかこんなに早く出会えるとは思わなかったわ……けど…既に既婚……してるのよね…複数と…」次にタケルの事を思い出す千鶴最初は『既婚者』だという事にショックを受けるが、『嫁が複数』という現実に、そのショックすら打ち消す程頭痛が襲って来る。 まぁ…嫉妬で手がプルプルと拳に握り締め、是親の時以上にドス黒いオーラを放つ「…けど…あの白銀がハーレム作る甲斐性なんて無いし…大方、香月副司令のイタズラか何かでなったのかしら…?」ほぼ正解に近い答えを出す千鶴しかし、この時とある疑問が浮かび上がる「…白銀が斯衛に所属…?香月副司令との関係は有っても不思議じゃないにしても…何故斯衛軍に所属してるの…?」色々と浮かび上がる謎…それに戸惑いながらも、少しずつ整理する。 何故斯衛軍に所属してるのか---何故現役の大尉が自分達訓練兵の中に入るのか---すると、とある事を思い出す。 「そういえば白銀…おかしな事を言ってたわね…」数時間前の事を思い出す…『以前話したよな…『委員長』ってあだ名の話…』『その『委員長』…以前居た部隊の仲間でもあるんだ。』『とある戦場で…自分を守る為…その命を散らしたんだ…』「……なによこれ…?まるで『私』の事じゃない…!?」タケルの言葉を思い出し、身体を震わせる千鶴…本来ならば知っている筈の無い『未来』をタケルが知っていた事に戸惑いを隠せないでいた。「どういう事…!?白銀も私と同じように『記憶』があるの…!?」そして---もうひとつの答えに導く。 「……香月副司令も…同じ…?」そう、元はとはいえ、この話のきっかけは香月博士から始まった事という事は、香月博士も『知っている』という事すると、先程の謎が次々と導かれ、繋がっていく。 「これだけ歴史が違うのは…白銀と香月博士が私と同じ存在で…『歴史を変えた』から…?無理よ、そんな事…けど…そうだとすると…歴史の変化も納得する。」なんせ先の未来を知っているのだ。白銀には無理でも、香月副司令ならば、今の時代でも、かなりの権力があるから可能…だと判断する。 政治的な事や開発に関しては香月副司令に任せればいい白銀は戦場で奮戦して、重要な所を抑えれば、歴史の変更にも繋がる。 例えば『甲21号作戦』あの時、凄乃皇弐型が謎の原因で機能停止し、結果伊隅みちる大尉と柏木晴子少尉が殉職した。 だが、凄乃皇弐型の機能停止の原因を取り除けるとしたら…?万が一なったとしても、二人の『死の変更』が可能な方法があるのでは…?確かにそれならば歴史の変更は可能だ。『未来』を知ってれば、違う歴史に辿る事も出来よう。「……頭が痛くなる展開ね…。けど…確かにこれならば歴史を変更出来る…。」恩師である神宮司軍曹…尊敬せし先任である伊隅大尉・速瀬中尉・涼宮中尉…そして同期であり、共に訓練兵時代を過ごした柏木・彩峰…そして、自分がA-01に所属した頃には既に亡くなった築地・高原・麻倉…そして…自分自身…御剣・珠瀬・鎧衣の三人は知らない…しかし、白銀の話によれば…自分と同じ運命を辿ったのだろう… 「…なら、やる事はひとつね…」決意を固め、これからのプランを計画していく。「そうね…朝電話連絡してから白銀の家に行こう…運良ければ、香月副司令に会えるかも知れないし…」ド直球に攻める事にする千鶴とはいえ、これ以外に方法が無い為、仕方ないとも言える。 「…そうと決まったら…寝ましょう。」今はまだ日付が変わったばかりの時間帯今からアレコレとやっても仕方ない。 「……待っててね…白銀…」想い人の名前を呟きながら、眠りにつく千鶴… そして---朝になり--- 「ん?白銀君ならば、今日は居ないぞ?」「え゛っ?」開始数時間で躓く千鶴…朝の食卓で、父・是親と会話してた際、今日の予定の内容になった。勿論父との関係も改善したい為、午前中にタケルと会う事を考えていた。しかし、意外な所でその予定を粉砕させられる。千鶴にしてみれば、スタートラインで『位置について』の『位置』で転倒したような物だ。「な…何故?」「いや、昨日言ったよね?今日は皇帝陛下の所に行って、新年の挨拶をすると…」「え、ええ…」確かに昨日の朝に父が言っていた事を思い出す。「私が行くという事は、殿下も行くという事だ。そして殿下の夫になった白銀君も皇帝陛下に新年の挨拶に行くのだ。」「何故!?」「今回改正した法案『一夫多妻制』は千鶴も知っているだろう?アレはね…実は皇帝陛下のお力も有って改正したのだよ。」「ええっ!?」意外な事実を知り、驚く千鶴…しかし、父のターンはまだ続く。 「何故かは…知らんのだが、皇帝陛下も白銀君に興味を示してね…まあ…あの方の考える事は、未だに分からん。」「確か…皇帝陛下って『女性』よね…?」「ああ、女性初めての『皇帝』に着いた御方だ。しかし…あの御方はなかなかどうして……悪く言えば『じゃじゃ馬』なのだよ。」父・是親の苦々しい表情に『…そんな人が皇帝なの…?』とツッコム千鶴苦々しい表情をする是親も、かなり被害に合ってるようだ。 「まあ、そんな訳で今日1日は居ないだろう…。あの方がそう簡単に済ませる訳無いからな…。」「そ、そう…」スタートから盛大な躓きを見せる千鶴その後、食事を終わらせて、是親の出勤の見送りを済ませると、大きな溜め息を吐く。「ふぅ…ヤッパリ居なかったか…」父が出勤してから準備をして向かった先は月詠家別邸一応電話連絡は入れたのだが、通じず(やちるが忙しかった為、取れなかった)、仕方なく自分の足で月詠家別邸まで訪ねた。しかし、残念ながら香月博士は朝方基地に帰り、会うことは出来なかった。 「どうしたものかしら…」続けて躓いていた千鶴少し落胆しながら歩いていると---とある異変に気付く。 (----ハア…新年早々忙しいわね…)店の前を歩いていると、店のガラス越しに写る不振な影…千鶴はそれが『何か』を悟り、警戒心を高める。 (恐らくは父さんの反対組織か、何処かの国の諜報員ね…)偶然とはいえ、不振な影の正体を悟る千鶴---以前、小さい頃に誘拐未遂事件があった。その時は、父の部下のおかげで未遂で済んだそれ以来、その頃から普段から護衛を付けていた。 しかし、母親が亡くなり、父・是親に反発した際、護衛を外すように啖呵を切り、訓練学校に通う際は寮生活で自分の身を守っていた(千鶴は知らないが、学校の周りや講師に変装した護衛が潜んでいた)(多分、父さんなら護衛を付けてるんだろうけど…)現在は親子関係が少しずつ改善されて来てる為、家に居る時は、離れた位置で護衛する条件で護衛を付ける事を許可した千鶴是親も、娘の生活に支障が無い程度ならばという事で話は纏まる何かあれば彼等が守ってくれる筈だったが…様子がおかしかった。 (…ヤッパリ様子がおかしいわ護衛の人達が来ないわ…)少し不安になり、ポケットに入っていた小さいスイッチを押す。 そのスイッチは、護衛の者達に知らせる発信機で、万が一身に危険が迫ってる時に知らせる為の装置しかし、その装置を押しても動きが無い。その異変を感じた千鶴はある『答え』に導く。 (…拙いわね。発信機を押しても護衛の人達が現れないという事は…既に『始末』されたという事…!!)既に自分が孤立した事を悟る千鶴今は人混みがある程度ある為、向こうも迂闊には出れないが、逆を言えば---自分が誘拐される危険性が高まるという事だ。 (…何処かでタクシーでも捕まえて、第二帝都城に逃げ込むしか無いわね…)残った手段は、第二帝都城まで逃げ延びる事。それが唯一助かる術だと考える。 自然に気付かない振りをしながら歩く千鶴今の自分では刺客を倒す術は無い。 『前の世界』の身体能力が継承されてる事を知った千鶴だが、あくまでもその能力は少尉程度仲間だった御剣・彩峰・鎧衣の三人ならば話は別だが、自分の身体能力はそれ程ずば抜けてる訳ではない為、単独による反撃は止めた方がいいと悟る。緊張感が高まる千鶴…心拍数を上げながら歩いていると--- 「----ッ!?」途中あった道を曲がると、突然口を塞がれながら拉致られる千鶴(しまった…油断したわ…!!)絶体絶命の危機に陥ったと判断する千鶴しかし、視線を向けると---「シ~…静かにして、千鶴さん。ボクは敵じゃないよ。」(よ…鎧衣…ッ!?)なんと千鶴を拉致ったのは美琴だった。 「千鶴さん…コッチに来て…」黙って美琴に着いて行く千鶴予想だにしない美琴の登場に戸惑いながらも美琴の指示に従う。 「……ふう、なんとか一旦は追っ手を撒いたようだね。」「…ありがとう、助けてくれて」「礼を言う事でも無いよ~♪千鶴さんを助けるのは当然の事だしね~♪」(あ、相変わらずね…鎧衣…)美琴の雰囲気に少し圧倒される千鶴しかし、この時違和感に気付く。 (今、鎧衣…なんて言ったの…?私の事…『千鶴さん』って呼んだ!?)そう---この頃はまだ美琴とは出逢って居ない筈なのに、何故自分を知っているのか?そして『そんな莫迦な!?』と否定しながらも『ある答え』に辿る。 「…アナタ…鎧衣…よね?」恐る恐る口にする千鶴美琴だと知っていても、確認しなければならなかった。 「そうだよ~☆でもアレ?なんで千鶴さんがボクの事知っているの~?」「……それはこっちの台詞よ…」能天気な美琴の態度に頭を抱え込む千鶴『私の知ってる鎧衣だわ…』と答えに導く。「それにしても、驚いたよ~…。道を歩いてたら、建物の間から『血の匂い』がするから調べてみたら、『死体』があるからビックリしたよ~…。辺りを警戒して調べたら、千鶴さんが居て、更にその後ろに怪しい奴らが8人ぐらい隠れてたから、千鶴さんが危ないって思って助けに来たんだ。」「さ、流石は鎧衣ね…。所でさっきの質問だけど…」相変わらずの美琴のぺースに戸惑う千鶴だが、その後お互いの事を話し合い、結論を出す「……そっかぁ~…千鶴さんもループしたんだ…」「ループ?」「うん、実はね…」美琴から詳しい説明を受ける千鶴信じられない事実に衝撃を受けていた。 「そう…全く信じられない状況だけど、信じるしかないわね…ちなみに鎧衣…そのループって、他には誰が居るの?」「うん、タケルと冥夜さんと香月博士だよ。慧さんは記憶だけ継承して、純夏さんは『前の世界の純夏さん』と憑依してるんだ。」「………………………………………………なによそれ…」余りのデタラメさに更に頭を痛める千鶴…美琴が能天気に『大丈夫~?千鶴さ~ん?』と声をかける「ヤッパリ白銀や香月副司令もそうだったんだ…」「うん…けど、タケルに関しては今回で三回目なんだって。」「嘘ッ!?……そう…だから白銀は『特別』だったのね…」『前の世界』で言われてた『特別な存在』という言葉を思い出す。三回---その数字にどれだけ意味があるのだろう… 自分には分からない苦しみや悲しみを体験したにも関わらず、前に進むタケルを尊敬し---同時に自分の無力さを感じる「--けど千鶴さん。今悔やんでも何も出来ないよ。」「えっ?」「悔やむんなら、前に進まなきゃ駄目だよ。ボクも今のままじゃ、足手まといになる…だから千鶴さん…ボクと一緒に強くなろう…!!」「---ッ!!」強い決意の眼差し自分よりまだ未熟な筈の美琴から強い決意を感じ、その想いの強さを知る。 それに対して自分はどうだ?自分の白銀に対する想いはその程度か?---違う白銀に対する想いだけは、誰にも負けない----!!今、再びタケルに対する恋の炎が燃焼し、強い決意を作り出す。 「勿論よ、鎧衣私は必ず強くなってみせる。誰よりも---そして白銀を守れるぐらいにッ!!」「ウンッ!!」千鶴のタケルを想う強さを感じた美琴は笑顔で返事を返す。そして、今やることは一つ。 「鎧衣、第二帝都城に向かうわよ。其処まで逃げ延びれば、私達の勝ちよ。」「任せて!!千鶴さんは必ず守ってみせるよっ!!」互いに握手をして力を合わせる二人今、彼女達のミッションが始まる…。あとがき---- しばらくぶりです、騎士王です。今回も千鶴を中心に話を書いてみました。 本来ならば、今回のお話はループ関連だけの予定でしたが、急遽オリジナルシナリオを追加しました。次話は今回の続きを予定してますもしかすると第六十話まで伸びるかも…?本当ならば、第五十八話は20日辺りに更新予定してました(実は18日頃には第五十八話は完成していた)が、第五十九話も20日頃には八割程出来上がっていたんですが、少々第五十八話を変更する事にした為、急遽20日の更新を止めました。 まあ、読者様も今回の話はループ関連だろうと予想していただろうし、何が+αを追加してやろうと、読者様の予想外のシナリオを追加しました最近千鶴関連の話ばかりになっていますが、この話が終われば次はお引っ越しの話か新しい訓練兵関連になる予定です