「…孝之、そっちはどうだ?」「こっちは異常無し、訓練兵の姿は無し。」孝之と慎二がエレメントを組み、お互いの距離を少し離れ、慎重に周囲を警戒しながら進む。 既にみちるが三人撃破の報を受けるが、意外にも冷静な二人だった。 「慎二…お前、ご褒美狙ってる割には、消極的だな?」「別にご褒美は狙ってないさ。あくまでも『ついで』だよ。今回は孝之に譲るよ。」「サンキュー、慎二」意外にも無欲を示した慎二に少し驚く孝之親友である孝之の為にサポートに回る。 「ツンツンツ~ン♪」「うん?」背中をつつかれ、振り向く慎二、すると--- 「ボディッ!!」「グハッ!?」突如、慎二のボディに激しい衝撃が入り、後方に吹っ飛ぶ!! 「慎二!?」「今だっ!!」「ハアァァッ!!」孝之が慎二の方を意識を向けた瞬間、左右からまりか・佳織がナイフで突撃する!! 「しまっ…!?」即座に回避行動を取る孝之、すかさず反撃をするが、攻撃を回避された瞬間に孝之の反撃に備えて回避行動をとるまりかと佳織「このっ!!このっ!!」「喰らってたまるかよッ!?」まりかの狙撃を回避し、横に飛び込みながらデザートイーグルで反撃する孝之 しかし、運動神経バツグンのまりかは、孝之の反撃を避け、樹木に隠れながら迎撃する 「慎二、大丈夫かっ!?」「グオッ!?」「慎二!!」慎二を心配して声をかけると、草むらから慎二の身体ごと吹っ飛んで来る!! 「なんてパワーだよ…強化装備を着てこのダメージなんて…」両手でガードした為、致命的ダメージは防げた慎二だが、その威力に腕の感覚が麻痺する「もらったよっ!!」慎二が吹っ飛んで来た草むらから、猛突進してきた純夏が拳を振り下ろす!! 「させるかぁッ!!」慎二に襲い掛かる純夏に孝之がナイフで反撃する!!純夏は飛び込んでる為、孝之の攻撃を回避出来ないでいたが---- 「鑑さんッ!!」「グアッ!?」横から飛び込んで来た佳織が孝之にタックルを仕掛ける!!「邪魔するなっ!!」「キャアッ!?」刃を潰したナイフで佳織の頭を軽く叩き、失格判定を与える孝之 「雨宮さんに、なにするかァァァァッ!!」「グハッ!!」態勢を直す純夏が攻撃対象を孝之に変え、怒りの拳を孝之の胸元に叩きつける!! 吹っ飛んだ孝之は、樹木に叩きつけられ、呼吸が少し乱れる。「ゼェ…ゼェ…なんて威力だ…」「トドメッ!!」立てない孝之に、突撃する純夏だが----「させるかよっ!!」「キャアッ!?」背後から慎二に肩を掴まれ、純夏を押し倒す 「これでお終い……えっ?」「あう…あうあうあう…」トドメを刺そうとした慎二だが、突然純夏の瞳が涙で滲み出す そして、ふと気づけば----純夏を抑えつけていた手が、純夏の『胸』に慎二の親指が思いっきり触れていた。「バァカァァァァッ!!」「へぶっ!?」「痛ッ!!」思わず寝た態勢からのアッパーで、慎二の顎にヒットし、再び吹っ飛ぶ慎二その際、孝之の所に吹っ飛んだ為、重なるような形になる。 「貴ィィィ様ァァァァ…よくも…よくも私の胸を…!!」ジャケットの上からとはいえ、胸を触られた事に怒りゲージがMAXになる純夏『ゴゴゴ…!!』と暗黒のオーラを放ちながら、ジョ○ョのような立ちポーズを取る。 「タケルちゃんにだって…まだ…触らせてないのに………ッ!!」ズシン…ズシン…と大地を踏み抜くように歩きだし、孝之と慎二の下に近づく。 そして----両手を握り締め、拳にして、ピーカーブースタイルの構えを取り、テンプシーな動きをしながら、ジワジワと回転のスピードが増していく。 「し、慎二、退けろッ!!アレはマズイッ!!」孝之は悟る。アレは自分の良く知る『モノ』と同じな事を--- 自分に好意を抱いてくれている女性・速瀬水月が時折放つ怒りの鉄拳に良く似たモノだと---「どりる……みるきぃぃぃぃっ!!」純夏の『右』が凄まじいスピードと威力をのせて----- 「ぱぁぁぁんちッ!!!」「「ぶろはっ!!!」」必殺の一撃が今、孝之と慎二をまとめて樹木をブチ抜き、天に飛び、星と化す。 「ううぅ…胸を触られたよぉぉ~…」「か、鑑さん…泣かないで…」落ち込む純夏を抱いて慰めるまりか失格になった佳織も、一緒に純夏を慰めていた… ちょっと時を戻して--- 「博士、只今戻りました。」「お疲れ様、伊隅とりあえず伊隅は少し休憩しなさい。」「ありがとうございます。」正樹を連れて、みちるがタケル達の下に帰還する。 「スミマセン…白銀中尉…」「捕まったモンは仕方ない帰ったらしごいてやるから、覚悟すれよお前達!!」「「「ハッ!!」」」失格になった正樹含めた三人がタケルに返答を返しながら敬礼する。 『ドガァァァァン!!!』「ハッ?」突然、タケルの前方から轟音と共に、森林から『とある物体』が、凄まじいスピードで空高く飛び、星と化す。 「な、何今の!?」「なにやら空高くに飛んで行ったようですが…」「………………………………………ハァ……誰が犠牲になったんだ…?」自分達の遥か上空に飛んでいった『物体』に注目する香月博士達唯一、タケルだけは『何なのか』は気付いていた。 「まりもちゃん…追跡者で誰かロストしてませんか…?」「ハア?『撃破』じゃなくて『ロスト』?」「なんでまた…?」「………誰かが純夏の『どりるみるきぃぱんち』の餌食になったからですよ…」『ああ…なる程…』と納得する香月博士とまりも。そして、タケルに言われた通りに、追跡者を調べると… 「ビンゴ…鳴海少尉と平少尉よ…」「やっぱり…?」大体予想していたタケルその五分後---無事にタケル達の下に着地(落下)した孝之と慎二飛ばされた理由を聞いたタケルは、慎二を笑顔で『腕立て伏せ200回×3セット逝ってみようか~(怒)』とお仕置きをする「ハァ…雨宮さんに悪い事したなぁ…」「大丈夫だよ、純夏さん合格すれば、失格者も合格になるんだから。」「うん…そだね。」佳織を失い、落ち込む純夏を励ますまりか 現在の時刻、既に夜の7時を回り、野宿の支度を考えていた 「純夏さん、これ以上の進行はあまりお勧めはしないから、もう少しだけ進んだら野宿にしよう。」「ほえっ?此処じゃ駄目なの?」「此処は少し目立つから、もう少し先に行ってからの方がいいね。」「そっか、ならもう少し先に進もう。」まりかの案に賛同し、周囲を警戒しながら、もう少しだけ進行をする。「……この辺なら大丈夫かな…?」「周りに罠らしきモノも無いし…此処ならとりあえず一安心だね。」周囲を良く調べ、罠が無いかを確かめる純夏とまりか罠が無いのを確認し、とりあえず携帯していたレーションを取り出そうと、ベルトキットから取り出す。「ん…?物音がする…」「嘘っ!?」即座に隠れ、物音がする方を警戒する。 すると---- 「ん…?誰か居たようだな…?」茂みの中から美冴とイーニァが現れる。 「宗像さん♪」「おや?鑑に伊隅じゃないか。」「スミカ~~~♪」美冴とイーニァと知ると、姿を現す純夏とまりかするとイーニァが元気一杯に純夏の胸に飛び込み、抱きつく。 「イーニァちゃん、大丈夫だった?」「ウン、ミサエのおかげでだいじょうぶだよ。」母親のようにイーニァの頭を優しく撫でる純夏イーニァは満足そうに笑顔で答える。 「一応近くに仲間が居ないか確認の為に通信を入れてみよう。」「ウン、じゃ…連絡入れるね。…こちらB20503から各隊員へ応答せよ。」『こちらC20501(唯依)、無事で何よりだ』『こちらA20503(クリスカ)、C20501と一緒に居る』まりかが他の隊員に通信を入れる「無事で良かった。今私の他にA小隊三人がそばに居るんだ、色々と情報が欲しいから、一旦合流しない?」『なる程、わかった今マップのマーキングも更新されたから、そちらに向かう。』「ウンわかった、気をつけてね。」通信を終えると、純夏達に説明するまりかそして、唯依達の到着を待つように、周囲を警戒しながら待つ事十分… 「待たせたな、みんな」「クリスカッ!!」「イーニァ…無事で良かった…」唯依・クリスカ組と合流をする純夏達そして、お互いの情報を交換しあう 「まずは私達から…」最初に美冴・イーニァ組からの報告では、B20504とC20503が水月にやられたとの報告だった。 夕方頃、イーニァが偶然(リーディングで)発見し、隠れながら望遠機能で覗くと、猛獣の如くに攻める水月に手も足も出ず、失格になったとの事だった。 「まさに獣の如く…だな。最初に倒した失格者を盾にして突撃間合いを詰めたら、盾にしてた失格者を投げ、相手の隙を作り上げ、その隙に『拳』で顔面にヒットしてノックアウト。訓練兵相手とはいえ…まさかの瞬殺だったよ…」「ぬぅ…流石は白銀中尉や神宮司軍曹に鍛えられた御方…要注意人物だな…」美冴の話を聞いて、再び水月の怖さを再確認する唯依そして、次は純夏・まりか組の話を始める。佳織が失った事は痛手だったが、追跡者を2人撃破した情報は、嬉しい情報だった。 「流石は鑑殿だな…追跡者2人を撃破するとは…」「うぅ…けど…胸触られちゃったよ…」「……その追跡者2人…逝ったな…」追跡者2人を『どりるみるきぃぱんち』で撃破した事に感心する唯依だが、美冴は違う意味で『お気の毒に…』と小さな声で呟く。勿論、どりるみるきぃぱんちに飛ばされた2人にだ。「最後に私達だが…前島殿がやられた。」「正樹がっ!?」「…恐らくは大尉クラスの追跡者だ。音も立てずに、我々の後ろに居たマサキに近づいて、始末したようだ…」唯依・クリスカの話を聞いて驚くまりか美冴はその会話を聞いて、何やら考える。「なあ、伊隅…もしかすると、その大尉クラスの人物って…お前の『姉』とやらじゃないのか?」「お、お姉ちゃんがっ!?」「ほら、以前速瀬少尉が教室に忘れ物をした時言ってたじゃないか?『伊隅大尉に…』って…そして今回の追跡者には速瀬少尉が参加してる…それはつまり、今回の追跡者は、『教導隊の先任達』だと予測出来るし、恐らくは上官の伊隅大尉も参加してる事も予想出来る。」「あっ…!!」 追跡者にみちるが参加してる事を見事予想する美冴そして、その予想は的中する。 「なる程…流石は伊隅殿の姉上だ…我々に気配を悟られずに隠密をしながら、前島殿を失格者にする腕前…速瀬少尉とは違う意味で要注意人物だな…」「…確かにお姉ちゃんが追跡者なら…正樹を狙う事は間違いないと思う…」みちるも要注意人物と判断する唯依そして、美冴の説明を聞いて、納得するまりか「そういえば…先程、此処に向かう最中に、建物を発見したぞ」「えっ?」クリスカの一言に全員が注目する。 「それは本当か?」「間違いない、私も見た。…ちょっと待ってくれ、地図を取り出す。」ベルトキットから、地図を取り出す唯依そして、現在地に印を付け、話に出た建物の場所にも○印を付ける。 「現在地から8時方向におそよ300の距離に、先程話に出た建物がある場所だ。建物は二階建てで、近くに小さな鉄塔がある為、通信関連の建物だと予測する。」「唯依、中には入ったのか?」「いや、まだだ万が一追跡者が居る事を想定して、中には入らなかった。」「…確かに、2人だけなら危険だからな」唯依の説明を聞いた後に、美冴が『中に入ったのか』と質問するが、『中には入らなかった』と答えられるそして、その答えを聞いた後に美冴の出した判断は--- 「ヨシ、今から行かないか?」「えっ?今からだと危ないんじゃないの?」美冴の出した決断、それは『建物に進行する事』だった。それについて疑問に思い、質問する純夏だが、ニヤリと笑いながら答える。「勿論だが、今回は逆にそれを利用する。」「利用?」「通常、日が遅くなって、暗くなった時は進行を停止するのが常識だ。しかも、今回の任務は脱出。下手に動いて罠にかかる危険がある為、通常は明るくなるまで動かないのが、常識だ。だからこそ裏をかいて、夜間の内に侵入する」「それは危険なのでは…?」美冴の考えに異議を申す唯依しかし、それについても説明する。 「勿論危険性は否定しない。だが、相手は三人、要注意人物が2人も居るから油断は出来ないが、逆に建物を使って罠を仕掛けて倒す手も考えられる。勿論、それをするには、建物を良く調べてからではあるがな」「逆に建物内で待ち伏せをされていた場合は…?」「それは無いだろう。今回の追跡者は、我々がスタートしてから出撃すると白銀中尉が出撃の際に言ってただろう?そして、寄るかも解らない建物に、1人2人と待ち伏せする事自体有り得ない。しかも今は夜、昼間に待ち伏せならば解るが、夜に待ち伏せは、むしろ向こうも危険性が高まる事になる。それならば、外で焚き火等の灯り等を探して夜襲をした方がマシだ。」美冴の考えを聞いても不安が募る唯依「あくまでも今回の建物の侵入は調査だけだ。用を済ませば、すぐに建物から出る。勿論、罠を仕掛けてからだけどな」ニヤニヤしながら語る美冴を見て、みんなの頭には『この人…速瀬少尉を狩る気だ…』とよぎる結局は建物に行く事になった純夏達先程唯依とクリスカが通った道を通り、建物が見える所から慎重に周囲を警戒し、罠が無いか調べながら、建物に侵入する。「………」辺りを警戒しながら先へと進む純夏達。しかし、唯依は無言で不安感だけが募る。 (…本当に罠が無いのか…?余りにもあっさりし過ぎてる…)今回の演習の発案者は白銀中尉と香月博士の2人。白銀中尉なら、まだ良いが、問題は香月博士あの人が『普通』などで終わらせるつもりなど有り得ない。 この建物も、何らかの『仕掛け』があると考えた方が間違いない。「篁さん…やっぱり不安…?」「か、鑑さん?」すると、純夏が後ろから近づき、小さな声で語ってくる。 (篁さんが不安なのは、わかるよ。香月先生が、このままふつーに終わらせる訳ないからね…)(やっぱりそう思うか…?)(思うっていうか…思わない方がおかしいよ…それにクリスカやイーニァちゃんも同じ気持ちだよ。)純夏の感想も同じで、少し安心する唯依香月博士の事を良く知る純夏・クリスカ・イーニァも、自分と同じように不安に感じていた事に確信する。 ----絶対に何かあると--- (鑑さん…貴女なら、香月博士がどう仕掛けて来ると思う?)(さっき伊隅さんが見つけたピッキングツール…あれが絶対に関係してるよ…)(ピッキングツール?)(だって、こんな演習に『何で』ピッキングツールなんて有るの?今回の目的は『脱出ポイントに到着』でしょう?なのに何故『鍵を開ける必要』があるの?)(そういえば…!!)純夏の『疑問』に関してハッと気づく唯依 何故--『脱出ポイントに到着』するのに『鍵を開ける必要』があるのだ?脱出に必要なキーアイテムなのか? --いや、脱出訓練中にそんなアイテムを必ず見つけるとは限らない。この広大な演習場の敷地内にある、小さな小屋など、見つける事など至難の業だ。そんな事をすれば、脱出訓練どころでは無い小屋を探す内に追跡者にやられて、失格者になるだけだ。 ならば、何の為にピッキングツールなど、用意をする必要があるのだ? 「罠は無いね…あとは…この鍵がかかった部屋だけ。」「罠…?」様々な推測を考えてた唯依そんな時に、まりかが『鍵のかかった扉』を見つける。「鍵がかかってるのか…諦めるしか無いのか?」「こんな事もあろうかと…♪」鍵がかかってて諦める寸前の所で、まりかがピッキングツールを取り出す。 「い、伊隅さん…気をつけてね…」「……其処まで隠れて、その言い方はスッゴく不安になるんだけど…」隣の部屋の入り口から顔だけ覗きながら呟く純夏を見て、ビビるまりか純夏の後ろには、ちゃっかりとクリスカ・イーニァも隠れていたりする。「み、みんな、用心の為に隠れるぞ。伊隅殿…後は頼む。」「私だけっ!?」純夏を見て、まりか以外の全員が唯依の命令に従い隣の部屋へと避難する。「怖がらさないでよ~…」ビビりながらも、巧みにピッキングツールで扉の鍵を開ける。そして…そ~…っと、扉を開けると同時に、まりかが全速力でダッシュし、隣の部屋へと飛び込む。 その際、壁に頭をぶつけるのはお約束。 「いたたた…どう~…?罠仕掛けてある~?」「……今の所…無いな…」頭をさすりながら、罠が仕掛けてあるかを尋ねると、美冴が慎重に部屋を確認してから、侵入する。 「通信室…のようだが、めぼしい物は…見当たらないな…」「ねえ、ミサエタナにこんなのあるよ?」すると、イーニァが資料の棚の下側の引き戸の中から、何かを見つける。「…スタンガン?」警棒のような形をした、スタンガンを発見するイーニァ「…確かに、スタンガンならば、強化装備相手でも有効な武器になる。」「貰っちゃおうよ。今、一応罠が無いか調べるね。」資料棚の裏側や下側の引き戸の中を念入りに調べ、異常が無い事を確認する。 (本当に大丈夫なのか…?)不安を募らせる唯依緊張がドンドン高まる中---「伊隅さん、それ取ったら駄目ッ!!」「えっ?」純夏が突然止めるが、既に遅し。既にまりかの手には、スタンガンを取った後だった… 『ヴゥーン…!!ヴゥーン…!!』「「「----ッ!!?」」」突然鳴り響く警報通信室の画面には、『敵侵入』の文字が表示される!! 「全員この建物から脱出するんだっ!!」「「「りょ、了解!!」」」全員が一斉に建物から脱出すると---- 突然壁にペイント弾が付着する。「---ッ!!全員隠れろッ!!追跡者の狙撃だっ!!」建物から出た瞬間---「あれは…速瀬少尉!!」樹木の影から水月が狙撃する所を発見する!!