1998年・『12月16日』仙台・第二帝都市街地周辺---「うぅ…寒っ!!」防寒着を着ながら車から降りるタケル今日は『12月16日』---自分の誕生日であり、冥夜・悠陽の誕生日でもある。タケルは今日休日を貰い、午前中は冥夜と悠陽のプレゼントを買いに来たのだ。例の如く、『人形』のプレゼントは用意してはいるが、タケル自身『このままじゃ駄目だ』と、やっと気づき、プレゼントを選ぶ為、休日を取ったのだ。「洋服…も良いけど、今回は止めとこう…買ったら、純夏辺りが五月蝿く騒ぐからな…」洋服を買う事を諦めるタケル。『来年はみんなに買えるように努力しよう…』と決意する。 「出来るならば、二人して仲良く使えるようなプレゼントが良いな…」店を入って色々と探すが、やはり中々見つからず、困り果てる。 「おや?白銀中尉ではないか…」「巌谷中佐に…唯依さん?」すると、タケルの目の前には、巌谷中佐が買い物袋を両手に持ちながら、唯依と一緒に買い物をしていた。「奇遇だね、こんな所で会うとは。」「ハイ、今日は休日を貰って買い物をしてたんですよ。」「買い物…?何もお持ちでは無いようですが…?」「探してる最中ですので…」『ハハハ…』と苦笑いをするタケル唯依はタケルから事情を聞くと、『なる程…』と納得する。 「難しいね…。殿下と冥夜様のプレゼントとなると…」「二人が仲良く使えるようなプレゼントを探してるんです。」「確かに、それならばお二人にとって、良いプレゼントになりますね」「ハイ、けど…何をプレゼントをしようかと…悩んでる最中なんです。」『ふむぅ…』と腕を組み、悩むタケルと巌谷中佐すると--- 「あら叔父様、マフラーが落ちそうですよ?」「ん…ああ、済まない。」巌谷中佐の首元に巻いているマフラーが緩んでた為、落ちそうになってた所、唯依が見つけ、巻き直す。 「マフラーか…オレも欲しい…か…な……----ッ!!」その時、タケルの頭に『ある物』が浮かび上がってくる!! 「唯依さん、ちょっと聞きたいんだけど…」「何でしょうか…?」タケルは唯依から『ある物』を何処かで見てないかと質問する。「それならば…向こうに『東友』というデパートで見かけましたよ?」「サンキュー!!ありがとう、『唯依ちゃん』!!」「唯依ちゃん!?」タケルから『唯依ちゃん』と呼ばれて、真っ赤になる唯依その際、赤くなった唯依を見て、巌谷中佐は『ふむ…それも有りか…』と何やら良からぬ考えをする。当のタケルは『東友』に向かい、全力疾走で走り去っていく…そして陽が落ち、月詠別邸では、『タケル&悠陽殿下&冥夜様の誕生日パーティー』の準備を着々と進められていた。 本来ならば、悠陽殿下は帝都城などでパーティーが始める予定だったが、今回の本土侵攻戦で、そのような余裕はなかったので、今年は断念していた。しかし、それを聞いたタケルが、『お忍びでウチで誕生日パーティーしようぜ!!』と発言し、悠陽殿下と冥夜の好感度はキュンキュンと上昇しまくった。そして、紅蓮大将や他の高官達も、『日頃の激務で頑張ってるのだから、今日ぐらいは羽目を外してもいい』と考え、今回の誕生日パーティーに参加する事が決定された。(というより、勝手にお忍びされて、慌てる羽目になるぐらいならば、公認で行って貰った方がまだマシだから)今回の誕生日パーティーには、様々な人達が参加をする事になり、大人数のパーティーになった。その為、パーティーのご馳走を作る為、やちるや他の使用人達は、朝から大忙しだった。 「タケル~、来てやったぞ~☆」すると、玄関には孝志を始め、政弘・椿・沙耶・駿・第17大隊のみんながやって来た。「打ち上げは道場でやりますから、庭から入って下さい。」「わかった、みんな~、庭の道場に移動するぞ~!!」何故か孝志が指揮をとり、みんなを案内する。するとタケルは、冥夜と真那・真耶が居ない事に気付く。 「沙耶さん、冥夜と真那さん・真耶さんは?」「冥夜様と真那はプレゼントを買う為、別行動を取りました。時間までには来るそうですよあと真耶は殿下や紅蓮大将・あと第16大隊の伊織様や隼人様と一緒に来るそうです。」『そっか』と納得するタケルすると、今度は香月博士達がやって来る。 「誕生日おめでとう~♪来てやったからには感謝しなさいよ~?」「タケルちゃん、誕生日おめでとう♪」「…おめでとうございます。」香月博士・純夏・霞の順にタケルを祝ってくれる。その後ろでは、クリスカ&イーニァ・まりも・伊隅・白銀影行夫妻・速瀬達率いる訓練兵達までもがやって来た。 「タケル、たんじょうびおめでとう♪」「お…おめでとう」「白銀教官、誕生日おめでとうございます。コレは私達のプレゼントです。」「あ…ありがとう…みんな…!!」ジーン…と感動するタケルクリスカ達はまだしも、日頃厳しくしごいていた訓練兵達からも誕生日プレゼントを貰い、嬉しさが溢れだす。 「ホラホラ、お客様を案内しなさいよ、白銀。」「ハイハイ、こちらですよ。」「お邪魔しま~す♪」香月博士達を連れて、道場まで案内するタケルと沙耶。それからしばらくした後、冥夜と悠陽殿下達が来て、やっと誕生日パーティーが始まる。そして何故か、香月博士が酒瓶をマイク代わりに持ちながら、司会役を演じ、武・冥夜・悠陽殿下に、みんなからのプレゼントを渡すイベントになる。 「さて、次は御剣と殿下が、お互いにプレゼントをする番。さあ~、お互いにプレゼントを交換して下さい♪」冥夜と悠陽殿下が向かい合って、お互いにプレゼントをする。そして、最初にプレゼントを開いた冥夜は--- 「これは…?」「それは、私達の母親の『形見』の髪留めで、昔母親が髪を纏める際に使ってた物です。私も幾つか持っていますので、冥夜にも…と思いまして…」「---ッ!!母上が使っていた…髪留め…!!」「冥夜は生まれてすぐに袂を別れた故に、私達の母上を知りません…しかし、母上は常に私達二人の身を案じていました…そして、命果てるその瞬間まで…冥夜…そなたの事も愛し続けておりました。ですから、その想いが籠もった形見である髪留めを渡そうと思ったのです。」「姉上…ありがとうございます。」感涙しながら、プレゼントしてくれた悠陽殿下に感謝する冥夜。そして次に、悠陽殿下が冥夜から貰ったプレゼントの包みを開けると---- 「これは…」「姉上ほど立派な物では有りませぬが、姉上に似合いそうな『洋服』を選びました。これでお忍びの際にでも、着てくださればと思いまして…」「冥夜…」ジーン…と感動する悠陽殿下しかも、冥夜が選んだ洋服という事もあり、嬉しさが倍増する。 「さて、姉妹同士のプレゼントの交換も終わった所で…メインイベントの白銀と殿下・御剣のプレゼント交換よっ!!」『おおっ!!』とみんなの声が響く中、ノリノリで進行を進める香月博士。やはりみんなはタケルが送るプレゼントに注目しているようだ。 「まずは、私達からタケル様にプレゼントを贈りますわ…」「受け取ってくれ、タケル」「二人共、ありがとう」二人に感謝しながら、プレゼントの包みを開けると… 「冥夜のは…日本刀?」「それは『飛燕神楽』という刀でな、私の持つ『皆琉神威』の『影打ち』にあたる物なのだ。それをタケルにプレゼントしようと思ったのだ。」「影打ち…?」「『影打ち』というのは、本来刀を打つ際必ず数本打ちまして、出来上がった物の中から、最も状態の良いのが『真打ち』と申します。そして、残った物が『影打ち』となるのです。」「『真打ち』は、本来護身刀として祭り上げられたりする物だが、『影打ち』は一般の者達に市販とかされたりする物なのだ。しかし、この『飛燕神楽』は、影打ちでありながら、真打ちの皆琉神威とほぼ同じ完成度の出来故に、当時はどちらを真打ちにするか悩む程の物だそうだ。」「そんなすげー物、貰って良いのか…?」「無論だ、安心して受け取るが良い。」「ありがとう…冥夜」冥夜に深く感謝するタケルそして、次に悠陽殿下のプレゼントを開くと--- 「コレは…指輪?」「それは煌武院家に伝わる指輪のレプリカでして、それ程の力は有りませぬが、少なくとも帝都城内何処でも移動出来る『程度』の力しか有りません。」「いや…それだけでも凄いから…」びみょーな気分でツッコミを入れるタケルだが、やはり自分の為に作ってくれた事に感謝する。 「さて…最後に白銀のプレゼントは…?」何故かゴクリと緊張感が高まる一同『なんでそんなに緊張するの?』と心の中でツッコミを入れる。 そして、ゆっくりと紙袋を開くと--- 「私達の姿をした…人形?」皆琉神威を持った『元の世界の服装をした冥夜』と『二度目の世界で『12・5事件』の際、着ていた服装の悠陽殿下』の人形が入っていた。 「これは一体何処で…?」「ん?俺の手作りだ。」「「えっ!?」」『タケルの手作り』と聞いた瞬間、一気に好感度が鰻登りに上昇する冥夜と悠陽殿下。それを見て、香月博士は『流石は恋愛原子核ね~♪』と呟きながら笑う 「おや…?紙袋の中にまだ入ってますね…?」ガサガサと紙袋から包みを取り出す二人すると--- 「これは…マフラー?」「随分と長いようですが…」包みの中は、長めのマフラーで、冥夜は黒、悠陽は白のカラーのやつをプレゼントする。「コレはこういう風に使うんだよ。」「タ、タケル!?」冥夜のマフラーを取り、冥夜・悠陽殿下の首元に巻いてあげる。 「これで良し。このマフラーはこういう風に使うんだよ、覚えておけよ?」「タケル様…これは一体?」タケルに質問すると--- 「『二人がずっと、仲良く一緒にいれますように』って意味で買ったんだよ。もう離れ離れにならないようにと願を掛けて選んだんだ」「「----ッ!!」」タケルの『想い』が二人に通じ、ポロポロと涙を流す『姉妹』と名乗れなかった日々がもう来ない事を願い、このマフラーを選んだ事を知り、涙する二人 『か、感動して…前が見えぬわっ!!』と紅蓮大将が滝のような涙を流すそして、他の者達も目尻に涙を溜めていた。 「タケル…本当に…本当に…心から感謝を…」「ありがとう…ございます…タケル様このマフラーは、大切に使わせて貰います…」涙を流しながらタケルに礼を言う冥夜と悠陽殿下だった…