「ハァ~…やっとこ終わったよ…。」基地内に入る為、身体検査やら、講習を受けたりして、一時間程かかり、疲れる純夏。心の中でタケルは『オレの時よりは短いから、まだ良い方だ』と呟く。「それにしても…タケルちゃん…。背…伸びた?」純夏の口から、恐れていた事を呟き、内心ビビるタケル。 今、純夏と出逢って恐るべき事は、『この世界のタケル』と『元の世界から来たタケル』の外見的特徴の違い。この頃14・5才の純夏やこの世界のタケルに比べれば、今のタケルは10センチ程違いが有る。 顔も多少幼さが消えた事により、純夏に怪しまれる危険性があった為、すぐに純夏に会う事が出来なかった。 「そ、そうか?訓練とかしてるから、多少は背が伸びたかもな~…。」冷や汗ダラダラと滝のように流すタケルだが、懸命に純夏を誤魔化す事に専念する。 「でも、それ以上に、その服装…タケルちゃんには似合わないよ…。」「…言うな…純夏…。それは、オレが一番わかってる事だ…。」突然の致命的な一言で、グサリと心を抉られる気分のタケル。純夏もすぐにフォローを入れるが、後の祭りだった。 「そういや、オヤジ達に何の用だったんだ?」「おじさん達に、タケルちゃんの事聞こうとしたの。あと、おばさんの頼まれ事を済ませたから、その報告だよ。」「頼まれ事?」「電気代やら水道代の支払い。食料の補充に、掃除洗濯…。本当なら、タケルちゃんの仕事が殆どなんだからね~!!」「す、すまねぇ…。」少し怒ってる純夏にビビるタケル。いつ、あの恐怖の『どりるみるきぃぱんち』が飛んでくるか、ビクビクしていた。「あと、香月夕呼博士って人に用事があったんだ。」「先生に?」「まだ早いけど、『国連軍に入らない~?』ってお誘いが有ったの。入れば、時々だけど、タケルちゃんに会える機会が増えるって、言ってたよ?」(先生…手打つの早いな~…。)香月博士の早さに少し驚くタケル。しかし、この事に関しては、タケルにとっても好都合だった。まずは、BETAが本土上陸した際、この白陵基地にハイヴを建設されるまで、純夏の安全を確保をする必要があった。それでなければ、先生のせっかくの『人間の状態で00ユニット化』する研究が無駄になる。そしてタケル自身も、純夏に再びBETAに捕まる事だけは、絶対阻止するべき事だった。それに、純夏を衛士にするにしても、そう簡単に戦場へは出さないだろうし、出しても必ず何らかの理由を付けて、護衛を付けるだろう。 それ故、今回の国連軍への誘いは都合の良い手段だった。「そうか、それで純夏はどうするんだ?」「受けるよ。けどその前に、基本的な勉強とかしないといけないから、訓練兵になるのは、次の編成の時だって。」(次の訓練兵の編成って…確か宗像中尉が居たよな…?)宗像美冴中尉を思い出し、少々不安になるタケル…。『純夏が宗像中尉のように成長しませんように…』…と切実に願っていた。 「そういえば、タケルちゃん。おじさん達はどうしたの?それになんで、タケルちゃんが迎えに来たの?」「オヤジ達は、訓練で具合悪くして、医務室で休んでたんだよ。オレは代理として面会者に説明して、機密情報とかじゃなかったら、待って貰うか、オレから伝えておくって言うつもりだったんだよ。そしたら面会者が純夏だったからビックリしてたんだよ。」「そっかぁ…おじさん達大丈夫…?」「ああ、さっき連絡したら、面会ぐらいなら大丈夫だって、言ってたぞ。」「そっかぁ…良かったぁ…。」影行達の安否を聞いてホッとする純夏そして、影行達の待ち合わせ場所として、PXに到着する。 飲み物を飲みながら、談話をしてると、影行と楓・真耶と霞がやって来た。「遅くなってゴメンね、純夏ちゃん。」「おじさんとおばさん…大丈夫ですか…?」「大丈夫よ。…少しまだ残ってるけどね…。」遅れて来た事に謝る影行。具合悪そうな影行達を見て心配する純夏だが、少し強がる楓。けど、やっぱり気分は悪い。そして、純夏は楓に用件を伝えて、電気代等のお釣りを返す。 すると、未だに気分の悪い真耶がタケルのそばに着く。 「…大丈夫ですか、月詠さん。」「少し…な…。流石に先程は…強がり過ぎた。」例の『お姫様抱っこ』の件で、真耶は少し強がりながら、タケルの全力変態機動に耐えてたのだか。『お姫様抱っこ』されるのは嬉しいが、この悪酔いの凄まじさに少し後悔していた。 「…タケルちゃん、その人は?」乙女センサー(アホ毛)がビンビン反応する純夏。『コイツは強敵だ!!』と本能で悟る。 「月詠真耶中尉だよ。オレを『保護してくれた人』であり、現在月詠さんの家に同居…ていうか、居候としてお世話になってるんだ。…一応言っておくが、同居の件は全て先生の仕業だからな…。」「え゛え゛ぇぇぇっ!!どどどど…同居!?」『同居』という言葉に驚愕する純夏。『コレは乙女のぴんちだっ!!』と本能で悟り、警報を鳴らす。 「………月詠真耶だ、宜しくな、鑑純夏殿。」「………宜しくお願いします、月詠さん。」バチバチと凄まじい火花を散らす純夏と真耶。恋のバトルに感づいた影行はテーブルの下に避難しながらブルブルと震え、楓もその光景を見て、『昔の私を思い出すわ…』と影行を巡る恋のバトルを思い出していた。 一方、タケルは---- 「………(ガクガクブルブル…!!)」激戦地の特等席に居る為、恐怖をモロに受けていた。 そして、PXの入り口付近では---- 「フフフッ…鑑を中に入れて正解ね…!!それにしても、白銀のヤツ…恋愛原子核が絶好調のようね。」「…出遅れた」「むぅ…」入り口付近で隠れながらタケル達を覗き見していた、香月博士と、椿・沙耶・クリスカ・イーニァだった…。「コワいよ…コワいよ…」「タ…タケルちゃん…ゴメンね…。」「済まない…白銀。」恐怖の特等席で、ずっと脅えていたタケル。途中から入ってきた香月博士達の登場のおかげで、解放される。「ヨシヨシ…」「な、泣くな…白銀中尉…」余りの恐怖に、PXの隅っこで、しゃがみながら泣くタケルを、霞・沙耶・クリスカが慰めるしばらくして---やっとタケルが元気を取り戻して、香月博士と共に来た椿達を純夏に紹介する。 (タケルちゃん…随分と女の人に囲まれてるよぅ…。)紹介する人全てが女性とあって、流石の純夏も危機感を感じるすると、香月博士が純夏の考えを察し、純夏の耳元で呟く。 (安心なさい、鑑。今、殿下が白銀のハーレム…ぢゃなくて、幸せを与える為に動きがあるのよ。)(ハ、ハーレムゥゥゥッ!?)『ハーレム』と言う言葉を聞いて戸惑う純夏。香月博士も面白がって、更にとんでもない爆弾発言を口にする。 (今、法律を改正して、一夫多妻制にする動きがあるのよ…。そうしたら、みんなで白銀を仲良く好きになれるのよ?)(仲良くするのは良いけど…なんか複雑だよぅ…。)(良いぢゃない、一夫一妻制だったら、下手したら鑑が結ばれない可能性があるのよ?それに比べたら、確実に結ばれる方を選んだ方が得よ?)(う゛っ…確かに…。)香月博士の甘言に段々と洗脳されていく純夏。香月博士も『あと一歩ね』と更に追い討ちをかける。 (さっきの月詠中尉も、白銀の『第一婦人』を狙ってて、さっき鑑に対抗心ぶつけてたのよ~。)(そっ、そうだったんだ…)すっかり洗脳完了されてしまい、香月博士の話を信じきってしまう。 「…なんか嫌な予感が…。」「何故だろう…さっきから、私をチラチラと見てるのは…。」香月博士がまた何かを吹き込んでる事に不安になるタケルと真耶この事が知るのは少し先だったりする。 「先生…いい加減純夏に変な事、吹き込まないで下さい。」「何よ白銀~。これからが良い所なんだから~。」「純夏、先生に言われた事で、変な内容は全て記憶から消去しろ。」「えっ?え゛っ?」少し混乱する純夏の為に、話題を変える事にする 「純夏クン…キミに特殊任務を授けようではないか。」「特殊任務~?」突然タケルの言う事に先程の混乱が吹き飛んでしまう純夏。「任務は簡単だ…其処に居る霞・クリスカ・イーニァの『友達』になる事が任務だっ!!!」グワッとした表情で任務内容を公開するタケルすると、純夏がポカーンとした表情でタケルを見る。 「友達になる事が任務~?」「そうだ、三人には友達が少なくてな…ちょっと寂しいのだよ。其処で、純夏クンの持ち前の明るさで彼女達をハッピーにしたまえっ!!」ふざけながら純夏に霞達の『友達』になる事を頼むタケルこうする事で、三人が表情豊かになって、元気になると考え、純夏を選んだ。すると、純夏は霞をジロジロと見る… 「----可愛いいよぅ~♪」「…えっ?」突然霞を抱き締める純夏。すっかり霞を気に入ったようで、安心する 「霞ちゃんって言うんだ?こんな可愛い子なら、タケルちゃんの頼みじゃなくても、友達になるよ~☆むしろ、妹にしたいぐらいだよ。」「か…可愛い…!?」純夏の猛烈なアタックに霞が真っ赤になるのを見て、ウンウンと見守る白銀親子 「ええ…と、どっちがクリスカさんで、どっちがイーニァさんかな?」「わ、私がクリスカ・ビャーチェノワだが…?」「イーニァはわたしだよ、スミカ」「そっか、私は鑑純夏って言うんだ。これから宜しくね♪」二人の手を掴み、握手をする純夏に戸惑うクリスカすると、イーニァの表情が明るくなる。「あったかいいろ…。タケルより、あったかいいろが、いっぱい…。イーニァやクリスカやカスミまで、あったかくなる…。」 純夏に抱きついてくるイーニァを優しく頭を撫でる純夏。クリスカも一緒に抱き寄せて一緒に頭を撫でる 「なっ…!?」「私に任せなさい!!みんな纏めて友達にしちゃうんだから♪」戸惑うクリスカだが、純夏の好意に嫌な感じは無く、むしろイーニァと同じ気持ちで接している自分に驚いていた。「--凄いな…彼女は…」「コレが純夏の一番の取り柄ですよ。」霞達と同じESP発言体の沙耶も純夏の存在に驚いてしまう。此処まで母性愛や包容力を持つ人物に始めて出会い、孤独だった霞達の心を解放する純夏の力。無邪気でこの場の空気すら一変してしまう程の存在感に驚愕する。 そして、それを一番知っているタケルが行った一手は、彼女達の心を開くには、まさに最良の手段だった。しかし---此処で予想外な出来事が起こってしまう 「スミカもタケルに『おひめさまだっこ』してもらった?」「お、お姫様抱っこっ!!?」「ウン、クリスカもイーニァも…みんなだっこされた。スミカはだっこされた?」この瞬間---PXの周辺に圧倒的な殺気が充満する!! 「タケルちゃん…。私が寂しい思いしてる時に、そんな事してたんだぁ…?」「ちょ…ちょっと待って純夏!?コレにはちゃんとした理由が…!!」幽鬼のようにユラユラと歩きながら、紅い眼光を発しながら、歩いて来る純夏を必死で説得するタケルだが、既に遅し。両拳を顎の下に構えながら、テンプシーロールを描き出す。「ちょっ…待て---」「どりるみるきぃ~~~~ぱ~んちッ!!!」 「ぶへらっ!!」必殺の右を放ち、タケルを天高く飛ばす!! 「「「え゛え゛ぇぇぇっ!!!!?」」」その光景を始めて見た真耶達。白銀夫妻は『飛んだわねぇ…』『飛んだなぁ…』と何時ものように眺めていた。香月博士も、大爆笑しながら転がっていたりする。 後に電離層まで到達し、落下し、無事で帰還するタケルを『やっぱり…超人?』と見たり、そのタケルを電離層まで飛ばした純夏の事も『…BETAも飛ばせるのでは…?』と思ったりするのだった…。