「全機突撃せよっ!!奴等の背後から刻み付けてやれっ!!」「「「了解ッ!!」」」全速力で匍匐飛行をするタケル達その少し離れた位置にツェルベルス大隊がピッタリとくっついて来る。一番最後尾である要塞級に突撃前衛達が切り込む。「邪魔だっ!!」「フンッ!!」まず最初に要塞級を撃破したのはタケルとアイヒベルガー少佐タケルは頭部に滑空砲を放ち、アイヒベルガーは首筋にフリューゲルベルデで両断し、撃破する。「調子は良いみたいですね。」「カスミのお陰だ。まさかここまで動き易くなったのは予想外だった。」「言ったじゃないですか、霞は『天才』だって。」「フッ、そうだったな。」霞が誉められ、自分の事のように嬉しいタケルすると、背後から冥夜・慧・ジークリンデがタケル達の頭上を飛び越え、前方にいた要塞級2体を撃破する。「少佐、私を置いて戦うなんて酷いですね。」「済まない、中尉。」「今度無断で単独行動をしたら……ジャガイモ料理お預けです。」「ぬぅっ!?……それだけは勘弁して欲しい。」密かに置いてけぼりをされて怒ってるのか、ジークリンデはアイヒベルガー少佐の大好物のジャガイモ料理を『お預け』を宣告すると、本気で深刻そうに『勘弁して下さい、お願い致します。』と謝るアイヒベルガー少佐その姿を見てか、タケルは親近感を持ちながら『…アイヒベルガー少佐も大変なんだなぁ…。』などと小さな声で呟く。「冥夜、彩峰俺達は要塞級だけを撃破する事を専念するぞ。但し、光線級の出現やイレギュラーな事態が起きた場合はそちらを優先する、いいな?」「「了解」」タケルの指示に従い要塞級のみを狙う冥夜と慧三機一体となり、要塞級を一体づつ撃破していく。タケル・冥夜が噴射跳躍で頭部や間接部まで飛び込み、長刀で斬り込むその後ろでは慧が滑空砲で援護射撃し、時折迫り来る触角を長刀で切り落したりと二人を援護する。「済まぬ彩峰、援護助かる。」「…任せて、二人には傷つけさせない。」慧の援護に感謝の言葉を告げる冥夜――しかし、慧の気持ちを知ってか、それ以上は言えなかった。(…彩峰…無理しよって…。)そう―――本来彩峰慧という人物は攻撃的なタイプ。決して味方の後ろで援護するタイプではない。無論、援護自体は彼女とてやる。しかし、彼女の本来の戦闘は前線で接近戦で戦うタイプだ。勿論彼女の現在の実力ならば通常ならば充分通用する実力だが―――(……今は我慢……もっと…もっと強くなって…追い付いてやる…。)しかし、追う背中はタケルと冥夜――現在のタケルの実力は、流石に日本国内で五指…とまでではないが、それでもかなりの上位クラスには居る。エレメントの冥夜も、接近戦に関してはタケル以上の実力しかし、機動力等についてはまだ劣るが、それでも日本が誇るエース級以上な衛士である事は間違いない。低い階級で有りながら、そこまでの実力を持つ最大の理由は…皮肉にも『ループによる経験の継続』というチートな理由だった。無論、この2年間戦いたい続けたという時間も有るが、それでも僅か数年でその実力に登り上がった二人の才能も理由の一つでもあった。故に―――彼女は静かに闘志を燃やす。苦難が高ければ高い程挑む性格でもあるし、何より―――――(必ず――追い付く。そして…追い抜いてやる。)想う人と並ぶ為にも――そして、共に戦う戦友達の為にも―――僅かに笑みを浮かべながら、挑む高みへと一歩一歩歩み進む。―――――――――――――――――――――――――――――――――(彩峰…無茶やってないかしら…。)真耶の小隊に臨時で配置されてる千鶴と晴子タケル達とは違い、真耶達は要撃級や戦車級を掃討していた。そんな激戦の中、千鶴は慧の心配をする。幾ら喧嘩する仲とはいえ、彼女も大切な友。慧が無茶してないか心配そうに時折チラチラと慧の居る方角とレーダーを見る。「やれやれ…。彩峰なら大丈夫だよ、榊さん。」「柏木…。」「白銀達が居るから大丈夫だよ。もし、そんなに心配なら、この辺のBETA達を早く片付けなきゃ。」「わ、私は別に彩峰の事なんか…。」「どもってるどもってる☆」晴子に指摘され、少し慌てる千鶴しかもトドメと言わんばかりに『彩峰の事心配なんでしょ~?』と言われてしまい、あわあわと顔を赤くしながら慌てだす。「――けどさ、榊だけが心配してる訳じゃないんだよ。私だって白銀とか皆とか心配してるんだから。――でも、だからといって今自分の位置を棄てる訳にはいかないし、身勝手な事も許されない。ならば、一秒でも早くBETAを片付けて仲間の所へ駆けつける事が最善の方法だと思うよ。」「………柏木」かくいう晴子も仲間達の安否を心配していた。今までこんな風にバラバラに配置される事が少なかった事が原因かは知らないが、チリチリに配置された仲間達の安否を心配していた。(まいったね……今までこんな風に不安になった事はなかったのに…。)『まだまだ未熟だねぇ…』と心の中で呟き、狙いを定めてBETAを撃ち抜く。そんな二人をモニターで確認していた真耶が会話に参加する。「やれやれ、不安なのはわかるが、今はこの場の事だけに集中するがいい。」「スミマセン」「りょーかい。」真耶に指摘され、『うっ…。』と苦い表情になる千鶴晴子は相変わらずの態度だが、内心では千鶴と同じ心境だったりする。「…とはいえ、二人共流石だな。確かにタケルや冥夜様が言った通りの実力を持ってる。」「いえ、まだまだ未熟です。」「右に同じく。」謙遜する二人を見て『…やれやれ』とため息を漏らす真耶そして二人を思ってか、真耶は二人に忠告をする。「謙遜もいいが、少しは強気になって貰わねばならぬぞ?そうでなければ上に上がる事も出来ないし、部下を持った時に示しがつかん。」真耶の忠告を受け、苦い表情をしながらも『了解』と呟く千鶴と晴子そんな話が終わると、CPから通信が入る。『――これより極東国連軍横浜基地から発射されたHSSTが軌道降下部隊を投下してくる。それに備え――――』CPの通信により、更に苦々しい表情になる千鶴と晴子流石の真耶も色々な意味で不安そうな表情を浮かべる。「………援護……向かった方が良いんでしょうか?」千鶴の質問に対し、真耶は………… 「………………………………立場上、向かうのが当たり前なのだが……。あの御三方には必要あるまい…。」「………むしろ、巻き込まれそうだよねぇ…。」流石の真耶も、これから来る援軍に対し『援護は無用』と判断する。晴子の一言に千鶴・真耶も賛同する。なんせ、相手は複数の重光線級のレーザー照射にすら生身で耐えそうな人物だ…。そう思われても仕方ない……と思う。―――――――――――――――――――――――――――――――――『ガッハッハッ!!この光景を見るのは二度目だが、相変わらず美しい光景よっ!!』『ヌウゥゥ…!!こうして美しき地球を見ると、我々の存在も小さく見えますな。』『そうだのぅ…だからこそ我々人類が礎となって、支え…守らねばならん。』そして遥か宇宙では、『とある三人』が蒼く美しき地球を眺めながら待機していた。その光景に感動し、涙を滝のように流しながら様々な感想を呟く。『CPから『ジェネラル』へこれより、第二プランとして軌道降下を始める。』『ジェネラル1了解っ!!―――さあっ!!我等三人の力を欧州の地に見せつけよっ!!』『『了解っ!!』』CPからの通信を受け、軌道降下を開始する。僅か三人のみの突入に彼等は『恐怖』という感情は無く、高鳴る『歓喜』が高々と響く。『久々の三人での戦場じゃぁぁっ!!此度は手加減一切無し、大盤振る舞いで暴れようではないかっ!!』『『オウッ!!』』超音速での突入から生まれる凄まじいGすら、今の彼等にはそよ風の風圧程度にしか感じないだろう。―――――今、欧州の大地に『鬼神』達が降臨する。―――――――――――――――――――――――――――――――――「見えましたっ!!」「っていうか…あの軌道…………BETA群のど真ん中!?」軌道降下部隊を発見するルナテレジアしかし、イルフリーテがその降下するルートを調べると、BETA群のど真ん中に到着するのを見て、絶句する。「全機、軌道降下部隊を救「あ~…救出しなくても大丈夫ッスよ。」……どういう事だ、シロガネ大尉…?」アイヒベルガー少佐がツェルベルス大隊全機を使い、軌道降下部隊を救出する指示を出そうとすると、タケルが割り込み『救出いらないですよ』と爆弾発言をする。「いやね………むしろ救出する軌道降下部隊の攻撃で巻き添えを喰らう危険性が高いから………止めた方が無難ですよ?」「………どういう事だ?」「…………見た方が早いですよ。」苦笑いしながら答えるタケルの返答に困惑の表情を見せるアイヒベルガー少佐そして、上空数百メートルからの場所から『三機』が舞い降りて来る。再突入殻が分離され、轟音と同時に土煙の柱が数本立つ。そして、その土煙の中央には――――三色の異なる戦術機が立ち構えていた。「ガーハッハッハッハッ!!待たせたな、タケルよっ!!」「儂等が来たからには大丈夫じゃっ!!」「婿殿(タケル)、そして冥夜よ、我等の事は心配せんで良い。――むしろ、近寄って巻き込まれても責任は持たんぞ?」 現れたのは、紅・深緑・そして紫のカラーを持つ不知火・改しかも、更にハイスペックな改造をした特別機であり、彼等の専用機。下手をすれば、タケル機の武御雷改・鷲羽をも上回る機体なのだ。そんな機体を搭乗するのは、彼等以外にはいない。日本が誇る『最強の三人』である紅蓮醍三郎・神野志虞摩・そして…煌武院雷電である。「フハハハッ!!『不知火改・紫電』の初の実戦ぢゃっ!!その性能を戦場で見せつけてやろう。」「雷電殿、儂とて、『不知火改・疾風』の初実戦。心が猛々しく踊る気分じゃ。」「さて…丁度側にはBETAがたんまりおります。腕試しといこうではありませぬかっ!!」近寄って来るBETA群に対し、お互いの背を合わせ、老兵達は互いの持つ『武』を振る舞う。彼等の武装は主に接近武器一応87式突撃砲を一丁装備しているが、余程の事でない限り使う事は無い。接近戦のみの戦闘一見自殺行為に見えるが、あくまでもそれは『一般論』彼等にそんな『一般論』なんぞ通用はしない。「ぶるあぁぁぁぁぁっ!!」先制を放ったのは紅の不知火改・烈火お馴染みの素手でのアッパーで突撃級を吹っ飛ばす。こう……地面を抉るようにして放つアッパーは硬い装甲殻の下に吸い込まれるように戦術機の拳が入り。アッパーカットする。「「「ええぇぇぇっ!!?」」」「突撃級を………素手で撃破した…?」初めて見たツェルベルス大隊の隊員達が驚愕の声を響かせる。唯一ジークリンデだけがポツリと一言だけ呟く。…当たり前である、常識的に考えたって、突撃級をアッパーで吹っ飛ばす事なんて…無理である。まあ……とある赤いアホ毛の少女の放つ幻の左なら……生身でも突撃級ぐらいは吹っ飛ばす事は可能……のような気はするが、彼等とてタケル以上のチートな御方達。やっぱり非常識な塊みたいな存在なんで、そこんところは……考えたら負けである。「ぬぅんっ!!」「はっ!!」紅蓮とは違い、お互いの専用武器で蹴散らす神野と雷電神野は薙刀・雷電は鎚の付いた長柄タイプの戦斧で攻撃する。要撃級を一刀両断する神野の薙刀要撃級の前腕による攻撃を華麗に捌き、流麗の動作で一気に懐に入り、一閃する。背後・側面から他の要撃級が複数迫るが、神野は恐れる事無く、狂喜たる笑みを浮かべながら、歓喜の声と共に横薙ぎの一閃で攻撃もろとも切り払う。対して雷電は戦斧で要撃級を切り裂き、突撃級を鎚による打撃で叩き潰す。特に鎚による攻撃は、あの硬い外殻をも粉砕し、その下にある脆弱な本体を叩き潰し、肉片を飛び散らせる。一応上段からの長刀の攻撃でも突撃級の外殻は切り裂く事は可能だが、あくまでも可能な話。あの獰猛な突撃をする前に正面から斬り込む事など自殺行為である。しかし雷電はその獰猛な突撃すら臆する事無く、正面から外殻を粉砕する。迫り来るBETA群の猛攻しかしそれ以上に老兵達の攻撃は激しさを増し、肉片と化したBETAの死骸が積み重なってくる。「雷電殿、久し振りに我等の秘奥義を見せてやろうではないですかっ!!」「おおっ!!名案だ、紅蓮よ。フッフッフッ…久方ぶりの三位一体の業…胸が高鳴るわっ!!」「では見よ、BETA共!!これが我等三人の秘奥義……!!」すると、紅蓮・神野・雷電の機体が集まり、怪しげなポーズをキメる。そして何故か彼等の周りには、輝かしいオーラが現れ、渦巻くように動く。「「「我等三位一体の秘奥義ッ!!!」」」きゅぴーんと三人の機体の眼光が赤く光るそして…………。「「「真・噴射気流殺ゥゥゥゥゥゥッ!!!」」」全力の水平噴射跳躍を竜巻のように螺旋状に跳躍する三人。巻き込まれるBETAを殲滅し、最後はお約束と言わんばかりに三人の背後で大爆発。そしてポーズを決める辺り、抜かりは無い。「「「フッ、決まった☆」」」キラーン☆と歯を光らせ笑みを浮かべる三人久方ぶりの秘奥義使用に満足する。「――――援護いるように見えます?」「……………………………………………いらんな…。」全力で暴走っぷりを見せる三人を見て、絶句するアイヒベルガー少佐思わず頭痛がしてしまう程のチート能力に言葉が出てこない。タケルの言葉を漸く理解し、やっとの思いで本音の一言を呟く。「………まあ、あの辺のBETAはあの三人に任せて他を当たりましょう。」「了解した…。」タケルの提案に従い、この場は紅蓮達に任せる事にしたアイヒベルガー少佐彼等の心に『ヤマトダマシイ…恐るべし。』と誤った認識を刻み付けたのであった…。