「こ、これは失礼しました、中尉殿。」「い、いえ、お互い様ですから、そんな畏まらなくても…。」先程の反応に非があると思い、陳謝するまりもだが。尊敬する恩師に頭を下げられる事を困惑し、謝る必要は無いと、下手になりながら、タケルもペコペコと謝る。 「さて、まりも。さっきの『賭け』は私の勝ちね。」「あのねぇ…夕…香月博士。『賭け』と言っても、博士の一方的に決めた事じゃないですか。」「それでも賭けは賭けよ。安心なさい、そんな『大した事』じゃないから。」「……怪しいものだわ。」タケルとの戦いの前に、香月博士の一方的な『賭け』に参加させられるまりも。その時、タケルの脳裏には『この世界のまりもちゃんも、先生に苦労されてるんだなぁ…』と、深く同情する。 「…それで、私にどんな罰ゲームを与えるのですか…?」既に諦めて罰ゲームを受け入れるまりも。近くにいた、タケルや真耶はまりもの事をひたすら『お気の毒に…』と、心の中で合掌する。そして、香月博士の出す『罰ゲーム』とは---- 「今からまりもは、白銀に『まりもちゃん』と呼ばれる事よ。他の部隊とか居る時の呼び方は、白銀に任せるけど、私達や速瀬達の前では『まりもちゃん』と呼ばれても怒らない事。…どう?大した事じゃ無いでしょう?」「「な゛っ!?」」罰ゲームが『まりもちゃん』と呼ばれる事になってしまい、驚愕するタケルとまりも。その様子を見て幸せそうな表情をする香月博士を見て、真耶達は『キツいな…それ…』と自分がされてるのを想像する。「さあ白銀、遠慮無くまりもを『まりもちゃん』と呼びなさい。呼ばなかったら、無い事を有る事にして、噂バラまくわよ。」「アンタ…鬼や…。」最早退路を断たれたタケル。重い口を開けて呟く。 「す、スミマセン…まりもちゃん…。先生には逆らえないモノで…。」「はぅ~…。もう諦めてるから良いです…。」恩師に『まりもちゃん』と呼ぶ事を詫びるタケルだが、既に諦めてるまりもの発言を聴いて『スミマセン…』と心の中で謝る。「フフッ…。罰ゲームを見た事だし、本題に入るわ」面白い場面を見て満足する香月博士。其処から本題に移り出す。「今回のまりもとの対戦は、まりもにXM3の性能を体験して貰う為よ。そして同時にまりもにも、XM3の開発に参加して貰うわ。」「ちょ、ちょっと待って下さい、博士。何ですか…そのXM3とは…?」香月博士は、まりもにXM3の事を詳しく教える。それを聞いたまりもは、驚愕と同時に期待感を高める。 「そして、まりもがXM3をモノにする事が出来たならば、まりもは速瀬達に…そして、後々の訓練兵にXM3の慣熟訓練の教官になって貰うわ。それが今回、まりもに『仮想敵』アグレッサーを頼んだ理由よ。」「な、なる程…。それならば、今回の件は納得出来るわ」やっと納得の出来る理由を聴いて少し安心するまりも。 「XM3の開発には、国連軍は白銀影行大尉を始めとして、白銀楓中尉・まりも・クリスカとイーニァよ。帝国軍は、白銀武中尉を始めとして、其方に居る月詠真耶中尉・五摂家の九條椿少佐と九條沙耶大尉。あとは、九條椿少佐の第1中隊よ。」「えっ…五摂家の九條…様…?」香月博士の一言で硬直し、ギギギ…と鈍い動きをしながら椿と沙耶を見るまりも。そして、椿達が自分達の自己紹介をすると、大爆発するように驚愕し、土下座しながら陳謝する「ススススス…スミマセンでしたッ!!ままま…まさか九條様方が居るとは知らなかったとはいえ、数々の無礼を…お許し下さいッ!!」「い、いえ、頭を上げて下さい、神宮司軍曹。別に貴女を責めたりはしてません。」ゴリゴリと、床に頭をこすりつけるまりもを止める椿。その姿を見てプルプルと笑うのをこらえる香月博士を見て『悪魔だよ、この人…』と心をひとつにして思うタケル達だった…。「ハァ…疲れたよ…。」あの後、XM3の開発の為、まずはみんなの慣熟訓練から開始する。ズッコケる人は居なかったが、やはり跪いたり、よろめいたりするの事を、タケルを除いた全員が体験する事となる。『この動きをケロッとこなすアイツって、何者?』と全員が思い、香月博士がタケルの機動を『変態機動』と呟くと、全員が同意する。その後、香月博士の提案で、シミュレーターでの複座で、タケルの変態機動を体験して、慣熟訓練の進行を早めようと提案する。そして、タケルは香月博士から『全力機動』を許可されてヤル気満々になり、賛同する。 最初の同乗者(犠牲者?)はまりもタケルの変態機動を、モノにしようと意気込みながら搭乗し、スタートする。五分後----- 『う゛う゛ぅ…ウプッ!?』『だ、大丈夫ですか、まりもちゃん…?』『『『『!!!!!?』』』』出て来たタケル達を見て驚愕する一同。その理由は様々だが、一番の理由は、タケルがまりもを『お姫様抱っこ』をしながら出て来た事。主に真耶・沙耶・霞・クリスカが注目する。勿論これも香月博士のイタズラだったのだが、流石に親友の様子を見て『ゴメン…まりも…』と心の中で謝る。しかし、乙女である彼女達の注目は、あくまでも『お姫様抱っこ』である。気分を悪くし、歩けない状態になり、タケルにお姫様抱っこをしてもらう…。…そんな可愛らしい考えをする彼女達。すぐさま次の同乗に挙手する彼女達だが、結果は半分幸せ、半分後悔という結果だった。因みに霞は、乗れない事に激しく落ち込むと同時に、無様な自分を見せないでホッとする結果になった。 こんな事もあり、全員がグロッキー状態になり、午後の訓練は中止になる。そして、このタケルの全力機動が、後の訓練兵達に恐れられる『恐怖の全力変態機動』を戦術機適性検査で体験する事はまだ誰も知らない。『あの…白銀中尉…ですよね?』「ん…貴女は…?」すると、タケルの背後から帝国軍の少尉が話しかけて来る。『私は白銀大尉の部下の金田早紀少尉です。スミマセンが、白銀大尉はどちらに…?』「オヤジ達は訓練中に…気分悪くして…今は医務室で休んでるよ。」『えっ…どうしようかしら…』影行と楓が体調不良で、医務室で休んでると知ると、困った顔になる金田少尉 『スミマセンが…白銀中尉、白銀大尉の代わりに『面会者』にあって貰えませんか?今、正門前で待ってるようなんです』「面会者?わかりました、オレが代わりに会って伝えておきます。」「ありがとうございます、中尉」影行の代わりに、面会者に会う事になったタケル。そして、正門前に辿り着くと----- 「す、純夏?」「タ、タケルちゃん!?」幼なじみの鑑純夏との『再会』をするタケルだった…。