2000年・7月10日「そろそろだな、タケル」「ハイ。」「任務とはいえ、海外へ行くのは初めて故に少し緊張するな。」 仲の良い孝志・タケル・政弘の三人が初めての海外に期待を膨らませる。今回は以前から話にあった『欧州』に行く事になったタケル達第17大隊が向かう事になり、現在は光線級に注意しながら輸送機で移動していた。海と空を経由して、細心の注意をしながら欧州へと向かっていた。そして、更に――――「うわぁ~…☆海が綺麗だねぇ~♪いやぁ~…海外だなんて、父さんに強引に拉致られて、幾度となく逃げ回った時以来だよ。」「………………ずいぶんと特殊な環境だね…。」「……流石は鎧衣家族そろって只者じゃない。」「……呆れるしかないわよ。」機内ではしゃぐ美琴そして突拍子も無い発言に晴子・千鶴が呆れる(慧に関しては多少慣れた。)そう――今回の欧州への任務は、千鶴・慧・壬姫・美琴・晴子の五人も参加。そして他に、結城・霞がXM3や戦術機等の技術者としてやってきた。霞は今回タケルの武御雷改・羽鷲に搭載したXM3‐EXTRAの調整やバグを取り除く作業等もする為、同行する事になった。そして、千鶴達の親御さん達には『来年度の為の特別教育』と説明する。ただし、晴子は一般の家系な為・美琴は元々左近が承知な為、問題は無かった。それ以外の親御さんには『白銀大尉やまりも大尉も一緒ですから、身の上の安全や教育は大丈夫。上手くいけば白銀とイイ雰囲気になるかもしれませんけどね~♪』…等と香月博士が発言した所、娘の花嫁姿と初孫がイメージしたせいか、即答で了承を得る事が出来た。……流石は日本が誇る親バカ達である。因みに欧州には『香月博士の特別な部隊の隊員で、今回は白銀大尉の部隊に一時的に配属する』…という名目である。「ねぇ、白銀…。私のポジションは…何処?」「ん?ああ、まだ委員長達のポジション説明はまだだったな。」慧が自分の配置をタケルに聞き出す。まるで子犬のように、ワクワクしながら待ち望む。「彩峰は俺や冥夜と一緒に突撃前衛委員長・柏木は真耶さんの小隊で強襲掃討と砲撃支援美琴とタマはまりもちゃんの小隊で制圧支援と砲撃支援だ。真耶さんとまりもちゃんの小隊は人員が多くなるけど、今回は特例な処置だから、打ち合わせとかを忘れるなよ。」「「「「了解。」」」」「…了解(グッ)」タケルからポジションや部隊配置を聞き、返答をする千鶴達その中、慧は望むポジションに配置され、少し笑みを浮かべて内心でガッツポーズを取る。そんな慧の姿を見たタケルは『本当に嬉しそうだなぁ…。』と小声で呟く。「良いなぁ…私も突撃前衛に憧れてたんだよなぁ~。」「篁さんもタイプ的には突撃前衛か迎撃後衛だよね。」「そうだが…だが、今の私では白銀大尉や冥夜様の足下にも及ばない。今だって、雨宮とエレメントを組んでるから真耶大尉に御迷惑をかける事は少ないが、あのお二人に着いて行く事はまだ無理だ。」「そ、そんな事は無いよっ!?」「けど…白銀大尉は勿論だけど、冥夜様も機動力高いからねぇ…気持ちわかるわ。」突撃前衛に着いた慧を羨ましく見る佳織唯依も本音では佳織と同じなのだが、自分の力量を考え、少し落胆するそんな唯依にまりかがフォローするが、佳織の一言でぶち壊れる。「違いますよ、篁中尉彩峰の場合、その実力を発揮出来るのが突撃前衛で、それ以外のポジションは不向きなんですよ。」「えっ?」すると千鶴が唯依達に説明をする。「彩峰はタイプ的に格闘タイプで、射撃とかは不向きなんです。勿論下手って訳ではありませんし、むしろ中の上ぐらいの射撃技術はあります。……けど、性格が災いしてか、接近戦闘を重視するんですよ。」少し苦笑いをする千鶴後頭部にでっかい汗が流れる辺り、やはり悩みの種らしい。「他に着けるポジションを挙げるとすれば、強襲前衛か……強襲掃討も出来なくは…ないと思いますけど……短刀で接近戦ばかりするかも…。他のポジションは彩峰の戦闘タイプじゃないから、無理ですね。迎撃後衛も、出来なくはないですけど…指示を出すタイプじゃないので…。」「……つまり、接近戦闘タイプ以外は戦力低下になるから、突撃前衛になったと…。」「…………多分。」千鶴の説明を聞き、先程の羨ましい気持ちはキレイサッパリ消えてしまう唯依達。「ホラ、お前達。そろそろ着陸するから、席に座ってシートベルト装着しろよ。」「「了解」」(うーん……なんか『向こうの世界』のまりもちゃんの気持ちがわかったかも…。)さわぐ部下達を静め、着陸に備えさせるタケル『向こうの世界』のまりもの気持ちがちょっとわかった気がした。そして無事着陸すると、タケル達を待っていたのは―――――「えっ…?」「………なんですと?」最初に部隊長である椿、続いて孝志と輸送機から降りると、予想外にも大人数が迎えに来ていた。「ようこそ、国連地中海方面第1軍ドーバ基地へ。私は西ドイツ陸軍第44戦術機甲大隊『ツェルベルス大隊』の大隊長のヴィルフリート・アイヒベルガー少佐です。そして此方の者達は我が大隊の隊員達です。」アイヒベルガー少佐を含めたツェルベルス大隊の隊員達が、椿達第17大隊に対し、敬礼しながら迎えていた。「帝国斯衛軍第17斯衛大隊の大隊長を勤める九條椿少佐です。これだけの大人数での迎え、恐縮です。」「いえ…本来ならば今回の迎えは数名でしたが、先日日本に送った我が国の戦術機が襲撃に利用されたと聞きます。本来ならば、その責任は我が国にもある所を、寛大な処置として軽い責任で済ませたと聞きます。」「そうでしたか…。ならば貴方達のお気持ち、有り難く受け取ります。今回の采配は、我が国の政威大将軍・煌武院悠陽殿下の下した事です。我々も貴方達を責める事はしないので、ご安心下さい。」「有難う御座います。」前回の襲撃事件の事で謝罪するアイヒベルガー少佐その謝罪の姿勢に椿が『責めたりはしません』と語り、謝罪の気持ちを受け止める。「白銀大尉・まりも大尉、こちらへ。」「「ハッ」」椿に呼ばれ、前に出るタケルとまりも「この二人が今回の新OS・XM3の教導員となります白銀武大尉と白銀まりも臨時大尉です。白銀武大尉に関しては、このXM3の発案者でして、XM3に関しては彼が一番操る事が出来ます。そしてまりも大尉ですが、彼に次いでXM3や様々な機体のテストパイロットをこなしてる者です。また、この二人は我が国の訓練兵の教導員もこなしていますので、教える事に関しては一番適した者達です。」「訓練兵の教官を?」「ハイ、自分は時間の許す限りですが、まりも大尉に関しては、元々訓練兵を鍛える教官ですので、その時以外は『臨時大尉』なんです。」「成る程、そうでしたか。」椿とタケルの説明を聞き、理解するアイヒベルガー少佐そしてタケルに近寄り、話しかけてくる。「君があのXM3を発案者か。私も渡された映像を見るまでは半信半疑であったが、あの映像が事実ならば、戦力が飛躍的向上し、BETAから故郷を取り戻す事が可能になる。」「勿論XM3が有るからBETAに勝てる…という訳ではありません。あくまでもXM3はBETAと戦う有効な手札の一つと考えて貰えると良いと思います。」「成る程、油断大敵か。その慢心しない心構え、見習わせて貰う。」「恐れ入ります。」英雄・黒き狼王と呼ばれるアイヒベルガー少佐との初めての会話に少し緊張するタケル何時ものプライベートの喋りをしないように言葉を選びながら語る。無論、内心まりもや椿達は『いつもみたいな喋り方…しないよね?』……などとヒヤヒヤしながら見守っていた。「さて、基地内を案内しましょう。皆さん、着いて来てください。」「有難う御座います。」アイヒベルガー少佐の後に着いて行き、基地内を案内される。そして、基地内を案内が終わり、広めな部屋へと案内されると、そこで各自自己紹介をする。「シロガネ大尉」「えっと…貴方は確か…。ララーシュタイン大尉?」「ウム、そうだ。私の名前を覚えて貰えて光栄だよ。」ダンディーな雰囲気を漂わせる紳士・ララーシュタイン大尉一見、何処かの貴族の執事みたいな顔立ちをしているが………なんか妙なポーズ取ったりする事に関して、ツッコミはしないようにするタケル……多分、気にしたら負けだ。「送られて来た例の映像で君の戦術機の機動を見させて貰ったよ。あのような機動を操る君とは一度手合わせしたい物だよ。」「ありがとうございます。ですが、手合わせする際はXM3を操れるようになってからでお願いします。出来れば、同じ条件で戦いたいので…。」「成る程、しかしその前に旧OSで一度手合わせして良いかな?新旧の差をこの身で体感したいのでね。」「それは構いません。その時は宜しくお願いします。」ララーシュタイン大尉に頭を下げるタケルララーシュタインも『同じ大尉なのだ、そう畏まる事はないぞ。』と言葉をかける。「おっと、早速手を出すとは、流石は『音速の男爵』ちぇ、俺が一番先に倒そうと思ったのに…。」「ん?ブラウアー少尉もシロガネ大尉狙いかね?」「勿論。けどララーシュタイン大尉の獲物を横取りをするとなると…後が怖いからねぇ…。」新たにタケルの前に現れるブラウアー少尉貴族出身なわりには、言葉使いが荒い事にちょっと好感を持つ。「シロガネ大尉もさ、少なくとも俺の前じゃ、砕けたカンジで話して大丈「いやぁ~そう?実は固っ苦しい喋りが苦手で、ボロを出すんじゃないかと緊張してたんだよねぇ~♪」早速砕けたよっ!?」砕けた喋りを進めたブラウアー少尉だが、タケルの砕けた早さにちょっと驚く。ララーシュタイン大尉も馴れ馴れしいタケルの姿にちょっと驚き、その後直ぐに笑いだす。「アッハッハッハッ♪そちらの姿が本来の姿か。いや、私も別に構わんよ。但し、あくまでも休憩中やプライベートの時だけだぞ?仕事中は気をつけたまえよ。」「ハイ、ありがとうございます。」ララーシュタイン大尉から許可を貰うと、孝志を呼び出すタケルそして、ブラウアー少尉と打ち解け、すっかり何時もの喋りに戻ってしまう。「いやぁ~…日本の貴族にもこういう喋り方する奴いるんだなぁ。」「いやいや、俺が特例なだけだよ。俺もタケルに出会って、喋り方に関しては楽になったよ。それまでは沙耶がうるさくて…厳しいの何の…。」「沙耶さん、結構厳しいですからねぇ…。」「何言ってやがる。タケルに出会ってからは、だいぶ丸くなったぞ?タケルにぞっこん惚れてから、そういう事にうるさく無くなったんだぞ。」「へぇー…知らんかった。」ワイワイと雑談に入り、盛り上がるすると、興味津々にララーシュタイン大尉が質問してくる。「ふむ、話からするに、そのサヤという女性はシロガネ大尉の恋人かね?」「恋人どころか嫁だよ。しかもタケルの奴……嫁7人も居るんだぜ。」「「なっ…………なんだって!!?」」「た、孝志さんっ!?」「しかも、まだ嫁候補が6~7人居るとか噂が…。」「「ハーレムだとっ!!?」」孝志から爆弾発言を告げられ、驚愕する二人……そりゃ…ハーレム築けば誰だって驚く。「ちょっと待て…日本って一夫多婦制だっけ?」「1~2年ぐらい前にな。まあ、日本の人口もかなり減ったから、条件付きで出来たんだ。しかもタケルが第一号だったりする。」「本当かよ……。」「因みにタケルのモテっぷりは『恋愛原子核』と呼ばれてるらしく、本人がその気が無くても、異性から寄って来るらしい。」「コンチクショーーー!!俺にもそのモテっぷり寄越しやがれっ!!」涙を滝のように流すブラウアー少尉タケルのモテっぷりに羨ましいく思い、首を絞めながらブンブンと振る。勿論タケルはピクピクと小刻みに震えている(呼吸困難による震え。)「―――実はシロガネ大尉はハーレムを築いてるらしい。」「や~め~てぇぇぇぇぇっ!!」流石は『音速の男爵』噂を流すのも速い。男性陣からは殺意を、女性陣からは呆れと好奇心の眼差しをタケルに一点集中する。「更に言えば、そこにいる前島中尉…タケルの教え子なんだが…。タケルと同じでハーレム築いててな、嫁二人・嫁候補が三人居たりする。流石はタケルの教え子…恋愛原子核も受け継ぐとは…。」「九條大尉っ!?」「お前もかぁぁっ!!」更に何故か正樹まで巻き込まれる事に。ブラウアー少尉に襟首掴まれ、ブンブンと揺さぶられる。そして、同時刻――――――「ハッ…!?今………とてもオイシイ場面を逃した気分だわ…。何かしら……このなんとも言えない残念なカンジ?」日本の横浜基地に居る香月博士が何かを感じ取ったのか、とてもとても残念そうなカンジに悔しがっていた…。