「タケル、即障害物に隠れるぞっ!!」「わかった。イグニス10から各機へ敵の攻撃に備え、即座に障害物へ隠れるぞっ!!」「「「りょ、了解!!」」」真耶の進言に従い、各自建物等に移動すると―――文字通りの『弾幕』が襲いかかって来る。ある者は機体の所々を掠め、ある者はマウントに装備している突撃砲を壊されるしかし、機体自身は奇跡的にも数機掠めた程度で済んだ。「あっぶねぇ…。イグニス10から各機へ。全機無事か報告せよ。」「イグニス12(真耶)からイグニス10へ此方は37(唯依)・38(佳織)共に生存を確認」「こちらイグニス39(正樹)40(まりか)と共に無事です。」 「こちらA20701(千鶴)全機異常は無し。」「こちら20701(ナスターシャ)全機生存、異常は無し。」「…そうか、良かった。」全機生存の報告を受け、安堵するタケルしかし、現状は変わらず、未だに敵の弾幕に身動きが出来ないでいた。「真耶大尉、サンダーボルトⅡってどんな機体なんでしょうか?」唯依が真耶にサンダーボルトⅡの事を聞き出す。「サンダーボルトⅡは『戦車級駆逐機』タンクキラーの異名もあってな。36mmガトリングモーターカノンである『GAU‐8・アベンジャー』が両肩に装着され、更に従来の防御力も上げた事により、重火力・重装甲を得る事が出来た機体だ。F‐4を極限にまで改良した機体故に、機動力は犠牲にしたが、こと戦車級に対しては絶大な成果を出す故に『戦車級駆逐機』タンクキラーという異名まで付いたのだ。」「…という事は、こと面制圧に関しては適した機体…という事ですか…。」「そうだ。故にあの機体を敵にした場面、正面からの突撃は自殺行為と同意だという事だ。」真耶の説明を聞き、ゴクリと息を飲む一同そしてその脅威が正に迫ってる最中だという事を体験しているのだ。「これを攻略する方法は…?」「重装甲というは、動きが鈍いという事しかし、だからといって横からの攻撃ではダメだならば――――」「上からの攻撃………しかないな…。」上からの強襲。それ以外現段階では方法が無い。確かに、サンダーボルトⅡのガトリングの攻撃範囲を考えれば、横より縦の方が『死角』がある。例え突撃砲等による攻撃で死角を消されても、ガトリングに比べれば、突撃砲の方がまだマシなのかもしれない。だが――――― 「なら、俺が――」「無茶ですっ!!」「いくら白銀大尉とて、無茶ですっ!!」タケルが強襲役を受けようとすると、唯依や佳織が反対する。「…では篁と雨宮、他に何か案があるか?」「それは……」「援軍を待つ案は…?」「無理だな。確かに援軍が間に合えば理想的だが、援軍到着時間と、盾にしている障害物の耐久力の限界、先にどちらがやって来ると思う?」「そ、それは…」タケルの質問に答えられない佳織答えがわからない訳ではない。わかるが故に、答えられないのだ。「オレの身を案じてくれるのは嬉しいが、現状この案しか残されてないし、この案を成功出来るのは……残念だけどこの機体しかないんだ。」「しかしッ!!」悲痛な声と表情でタケルを止めようとする唯依それは、佳織・正樹・まりかは勿論、ナスターシャ達訓練兵も同じ想いだった。そんな時に――――――― 「白銀大尉、私は何をすれば良いのかしら?」千鶴が突然口にした言葉。余りにも自然で、余りにも当然のように出た言葉に呆気に取られる。「うーん……委員長から『白銀大尉』なんて呼ばれると違和感が…。」「あのねぇ…こんな時に…。私だって違和感あるけど、今は作戦中でしょう?」「……それはわかってるんだけどなぁ…。」しかも、この絶体絶命の時に、呑気な会話をする事に硬直し、呆気に取られる。そんな姿を見てか、真耶が堪えながら笑いだす。「クック…このような時に…相変わらずというか…。」「サラリと酷い事言ってません、真耶さん?」「……白銀だから仕方ない。」「更に酷ッ!?」「タケルはボクと一緒だから、仕方ないよ~♪」「美琴と一緒にされたっ!!」「タケルさんだから仕方ないよ~♪」「さりげなく、一番酷い事言ってませんか、タマ?」「大丈夫だって☆白銀はまだ女性をゲットするまでは死ねないから♪」「こんな時に誤解を招く一言言うなッ!!」「まだ私はタケルの子を宿してないぞ?姉上だけではズルいぞ。」「冥夜までこんな時にッ!?」真耶・慧・美琴・壬姫・晴子・冥夜の順でタケルをいぢる一言を言い放つ。その様子を見る唯依達にしてみれば、信じられない光景だが――それは―――タケルを信頼している故の会話だった。「こ、このような時に何を「…白銀を信じられないの…?」――ッ!?」唯依が口にすると、遮る形で慧が答える。「……篁中尉達や訓練兵達は…白銀の教え子なのに……白銀の事信じられないの?」「そ…そんな事は…「なら…信じれば良い…。」」慧の一言が鋭利な刃物で抉られるように突き刺さる。拒絶の一言を言い切る前に、強い眼差しでタケルを『信じる』と語っていた。「…白銀、囮役やっても良いよ…。」「私も志願する。何、無理をするつもりはないから安心するが良い。」「ならこの『トラップウェポン』使ってみる?本当は総戦技演習中に使う予定だったんだよね~。」「なら、私と珠瀬さんは援護射撃をするよ。」「援護は任せて下さいっ!!」タケルに寄せる、彼女達の絶大な信頼―――その光景が、唯依達には羨ましい程に輝いて映っていた。(なんて信頼の強さだ……。だというのに…我々は…。)(畜生…情けねぇ…。大尉の教え子の俺達が信じないでどうするっ!!)冥夜や千鶴達の姿を見て、歯を喰いしばる唯依達。恩師を信じきれなかった自分達の不甲斐なさに、悔やんでいた。「気にすんな、篁、正樹」「えっ?」「大尉…」そんな様子を見たタケルは、教え子達に声をかける。「仲間を心配する事は当たり前だ。もし、まだ気にするんなら――後でオレを信じられなかった罰を与えてやるから期待して待ってろ。」『罰』という帰る約束をしてイタズラっぽく笑顔で告げるタケルその様子を見て唯依達は少し笑顔を取り戻し、『了解』と返事を返す。『やれやれ…無茶ばっかりするよね~…。けど、未だに音速機動の強制解除が解けない今、残された手段は一つだけ…。勿論、それが狙いで使うんだよね?』「本当にスミマセン。」結城が再び通信を繋ぎ、意味有りな言葉を呟く。そしてタケルも今回ばかりは流石に結城には頭が上がらず、謝罪の言葉を口にする。『まったく…。僕にとって、神威は我が子同然なんだよ?それが壊れて帰って来る事は悲しい事なんだよ?』拗ねたような顔で怒る結城そして諦めたかのように、溜め息を漏らし、真剣な表情で告げる。『30秒―――それが限界だよ。それ以上使えば―――神威は大破して…白銀君は確実に『死ぬ』よ。』「「「えっ!?」」」「了解、必ず神威と共に無事で帰還してみせます。」『死ぬよ』と告げる結城その一言に驚愕する冥夜達だったが、覚悟を持った表情で帰る約束をするタケルそして―――― 「それじゃあ…行ってくる。」みんなに言葉を告げ、操縦捍を強く握る。「―――XM3・EXTRA『解放状態』…発動!!」すると神威の跳躍ユニットから、通常では考えられない程の出力が放出され、再び飛び立つ!! その機動は、先程の音速機動と同等以上の速さで飛翔する。スピードだけではない。その機動時の鋭さや細かな動きまで、通常時とは比べ物にならない程の上昇だった。敵達も神威の機動に反応するが、反応してから反撃する為、全て後手になる。「ググッ…喰らい…やがれぇぇぇっ!!」解放状態を発動した為、フィードバックで保護出来るGを超えてしまい、タケルの全身に重圧が襲いかかる。しかし、今までの訓練と根性で耐えながら、敵の攻撃を回避しつつ、着地と同時に抜刀で一機撃破し、奇襲攻撃を成功させる。突然の奇襲攻撃を仕掛けられるが、無人機故に冷静に、そして迷いの無い動きで突撃砲を放つ。しかし、今の神威は最速の機体撃たれる前に回避し、同士討ちを狙いつつ、また一機と撃破する。そんなタケルの姿を見て、訓練兵―――巽・雪乃・美凪の三人に変化があった。「………グッ…」歯を喰いしばり、顔を下に向ける巽達訓練兵の自分達は、安全な所で自身の身を守り、尊敬する恩師は、いま正に死地で戦い続ける。―――自分は一体何の為に衛士になるのだ?―――自分達は今、一体何をやっている?―――ただ、命の奪い合いに脅えるだけなのか?そう自分に問いただした瞬間――爆発した。「アアアァァアァァッ!!!」「巽っ!?……って、美凪、雪乃までっ!?」動き出したのは、巽突然の行動に流石のナスターシャも驚愕し、反応を遅らせる。その一瞬の隙を突かれてか、残ってた美凪・雪乃も飛び出す。―――自分達は戦う為に此処に居るのだ。日本の為、未来の主の為、大切な人々の為に未熟な身を叩いて鍛練しているのだ―――!! それを我が身の可愛さで安全な場所で身を守る為ではない。尊敬する恩師が今、戦っている戦場に身を投じ、守護者となる事が我等の使命なのだ。恩師と肩を並ぶ事など今は出来ない――だか、その背中を追う事は出来る。いつかその背中に追いつき、認めて貰えるその時まで―――ちっぽけな勇気を振り絞って、戦場を駆け抜けるまで―――!! 「着剣ッ!突撃せよっ!!」「「了解!!」」長刀に装備し、突撃する巽達途中、巽達の存在に気付いた敵機五機が巽達に標的を変えるが、それに反応した美凪が、ガンマウントを使い、突撃砲で一機撃破する 他の敵の四機は回避したものの、巽・雪乃の倒立反転中からの長刀と横旋回の噴射地表面滑走からの長刀による攻撃で二機が一閃される。しかし―――残った二機が巽達をロックオンし、ガトリングが火を吹く瞬間――ガトリングが切断され、その後すぐに二機が大破される。「えっ……?」「馬鹿者ッ!!突然突撃するとは何事かっ!!」「その命を蔑ろにするでないっ!!」巽達の危機を救ったのは、冥夜機と真耶機の二機 三人を救うと同時に怒りの咆哮が飛び出す。「コラッ!!何イキナリ突撃してるっ!!あと戦場に立ったんなら、敵に集中しろっ!!」一足遅くナスターシャが到達する。モニター画面に映るその顔は、怒りの形相で角まで見えそうなぐらいキレていた。「やれやれ…無茶するからこうなるのだ…。」その様子を見ていた冥夜が少し呆れながらも、三人を守るように剣を構え、次々と撃破していく。「神代・戎・巴先程の行動は誉めれる事ではない。場合によっては、足を引っ張り、仲間を失う結果に繋がる事にもなる。」冥夜から指摘を受け、一気に落ち込む巽達崇拝する冥夜に怒られる事自体、彼女等にすれば、失恋時と同じぐらいツラい事である「だが、しかし―――先程の連携と突撃、中々良い攻撃であった。次は使う所を間違えるでないぞ?」「「「は…ハイッ!!」」」最後に誉め言葉を貰い、一気に立ち直る巽達その様子を見て、少し笑みを浮かべた後、狙いを定めてくる敵機に長刀を振るおうとすると―――「させる――何?」「エヘヘ…驚いた?」突然敵数機が電撃のようなモノを受け、動きを止める。すると美琴が冥夜の隣に並び、ネタを教える。「鎧衣、これは…?」「これがさっき言っていた『トラップウェポン』だよ。発射型のセンサータイプの地雷でね、半径内に入ると特殊な電流を放出して、戦術機や戦車とか機械で出来てる乗り物を停止させるトラップなんだ。これを使えば、殺さずに敵を捕まえたりする事も可能なんだ。」「成る程、鎧衣らしいウェポンだな。」「エルヴィンさんに作って貰ったんだ。やっぱり対人戦とかを想定すると、こういったトラップが有効だと思うんだ。戦術機の戦いって、戦術とかあっても、トラップとかって全然使わないでしょう?だから心理的にも有効かな~ってエルヴィンさんに言ってみたら、喜んで作ってくれたんだ。」トラップウェポンの誕生秘話を語る美琴そんな会話をしつつも、停止した戦術機の手足を破壊し、行動不能にする。「今が好機だっ!!全機、今までの鬱憤を晴らすように総攻撃をかけろっ」「「「了解ッ!!」」」タケルの号令と共に総攻撃をかける唯依達梼子達訓練兵も参加し、一気に畳み掛ける最早混戦になってしまい、サンダーボルトⅡに攻撃をほぼする事すら出来なくなっていた。これがまだ有人によるモノならば、強引にいったりするのだが、無人―――つまりコンピューターによる思考では、賭のような行動をしない為、一度崩れてしまうと脆くなってしまう。例えるならば、今の状況。敵が隊形中に侵入した場合、同士討ちの可能性が出た場合、『フレンドリーファイヤの危険性が高い為、攻撃不可』と判断されてしまう。これが不知火や撃震のような接近戦闘が可能な機体が居れば、話は別だが、機体はサンダーボルトⅡつまり―――中・遠距離専用の機体しかも、短刀以外は全て『銃火器』なのだ。マトモな接近戦が出来る筈が無い。つまり、『教科書通りの行動しか出来ない』のだ。突発的な発想・極めて低い可能性でも行動する発想・一か八かの選択それらをする事の出来ないのがコンピューターの『弱点』でもあるのだ。一応短刀で反撃をするサンダーボルトⅡだが、元々鈍重な機体な為、容易に回避され、反撃を受けるしかなかった。そんな好機をタケル達は見逃す訳がなかった。「そこっ!!」「支援、感謝する。ハアァァッ!!」梼子の視野の広さを生かし、的確な支援砲撃を放つ。その支援砲撃の下で戦う唯依や慧が接近戦で敵を撃破し、攻撃した際の隙をカバーするように千鶴と佳織が周囲の敵に狙撃し、相手の攻撃を封じ、回避させる事で唯依と慧をフォローする。「彩峰、余り大振りな攻撃は避けてちょうだい。」「大丈夫…背中は信頼してますから…。」「―――――ッ!?…だからって無茶はやめてよっ!!全部が全部フォロー出来る訳じゃないんだからねっ!!」 いつものように慧と千鶴の会話が始まる。慧の予想だにしなかった一言に驚き、照れる千鶴だが、相変わらず照れ隠しなのか、反論すると慧の表情が驚きの表情になる。「………………………………………………………………えっ?」「そこで『何故ッ!?』って表情にならないでちょうだい…。」一気にテンションが落ちる千鶴そんな事をしている時に、第17大隊が援軍でやって来た。「白銀大尉、待たせたわね。」「助かります。」「イグニス1から各機へ。残った敵機を早々に撃破しつつ、第四中隊達を守るんだっ!!」「「了解!!」」椿の号令に全員が返答を返す。それと同時に突撃前衛長が前に飛び出す。「冥夜様、ご無事で。」「うむ、済まないが月詠よ、力を貸してくれ。」「勿論で御座います、冥夜様。」「では…行くぞっ!!」冥夜と真那がエレメントを組み、背後にいる巽達を守りながら敵を撃破していき、その姿を見ていた巽達が魅了してしまう。「これが冥夜様と真那様のエレメント…。」「凄いですぅ…。」「…………私達も強くなって、あの横で戦えるようになるわよ。」改めて二人の強さを見て考えを固める巽達絶対に強くなってみせる―――そう再確認する三人だった…。―――――――――――――――――――――――――――――――――「ふう…なんとか生き残ったな。」「被害も大した事ないし、死亡者もいない。大勝利ってもんだ。」戦闘が終わり、一息つくタケル孝志も被害も少なく、死亡者がいない事に安堵する。「……白銀、どっちが勝者?」「ん…ちょっとま―――――何?」慧から勝者は誰かと確認をせがまれる。実は千鶴と撃破数を競う賭けをしていた。賭けの内容は『千鶴の奢りで一ヶ月間食べ放題』と『慧が一ヶ月間何でも言う事聞く』という内容だった。やれやれ…と苦笑いすると―――異変は起きた。「どうした、タケル?」「いや、勝負自体は同数で引き分けなんだけど……今回のサンダーボルトⅡの数か『35機』って―――」「35機?単に一機足りない状態だったんじゃないのか?」「そうなのかな?イグニス10からCP、サンダーボルトⅡの部隊の数はそちらでは何機だった?」『こちらでも35機ですが?』「そっか…気のせいか。」「一応警戒してれば問題はないだろ。」「ですね。」ピアティフに確認を取り、『35機』と聞き安堵するタケル孝志の指摘通り、警戒だけして、そのまま厚木基地へ向かう…。―――――――――――――――――――――――――――――――――『……作戦は失敗。これよりプランBに移行。何故かは知らないが、作戦が読まれていたと考える方が妥当なのかもしれない…。此処は『住み処』に移動して、時を見るしか無いな…。』タケル達の居る場所から数キロ先にある、とある場所では、静かに様子を見ていた者がいた…。『それにしても、あの機体…。もしや、あれは日本の第四世代機なのか!?』月夜の薄暗い明かりに照らされる男がっちりとした肉体を持つ『米軍』の軍服を纏う人物がモニターを見て驚愕する。『違うよ、ルーチン中佐。あれは第四世代機じゃない。いわば……特別機だ。』『……どういう意味だ、ミネルバ開発部長?』『あれはね……私の『親友』が考えた機体だよ。どうやらまだ完成していないようだけど……完成は案外近いのかもしれないね。』神威の画像を見て笑みを浮かべる女性…。まるで子供がオモチャを貰い、喜ぶような表情を見せていた。『フフ……楽しみだよ、ユウキ…。キミの創った機体と『私の創った機体』のどちらが優れているか…楽しみにしているよ…。』煙草に火を着け、一服するミネルバ笑みを浮かべながら、車の中へと消えて行った…。