2000年・5月25日――― 「うわあぁぁ…これが武御雷・羽鷲かぁ…。」「あと、この不知火・改も凄いです…。」今日初めて帝都城に入るタマと晴子今日は鈍った戦術機の腕を取り戻すべく、訪れていた。本来ならば、タケル達と再会した日にでも、したかったのだが、訓練学校の方で重要なテスト(座学・実技)があった為、日にちをずらしていた。「ヤッホー☆白銀君、相も変わらず女の子にモテモテだねぇ~♪」「誤解を招く一言はやめて下さい、結城さん。」するとのほほんと、爆弾発言を放ちながら登場する結城勿論、乙女達の鋭い視線(晴子以外)をタケルに向けるが、勿論タケル自身、おっきい汗をダラダラと流しながらスルーする。「その子達が夕呼の『特殊任務を受けた子達』なのかい?確か、様々な特別な任務を受ける為に育て上げてるとか…。」「ハイ、そうです。先生から聞いてるとはおもいますけど、内密でお願いします。」『わかってるよ~♪』と呑気な声で返す結城実は千鶴達は夕呼の特殊任務を受ける存在として、タケルから育成をされていると聞いていた。「やぁ~~っと、吹雪の改良機が出来たよ…。ふぁあぁぁ…やっと眠れるよ…。」「完成しましたかっ!?」「まーね、まあ元々の吹雪をちょっといぢくるだけだからね。不知火・改等の対策を考慮した改良機だから、機動性能は格段と上がったよ。」「ちなみに機体名は?」「00式戦術歩行戦闘機『吹雪・改』まあ…そのまんまなんだけど、変な名前に決めるよりは妥当だからねぇ。」新たな改良機・『吹雪・改』の機体名を聞き、『まんまですねぇ…』と呟くタケルと結城。ちょっとビミョーな気持ちにはなるが、新たな機体に期待がこみ上がる。「ちなみに吹雪・改は何処に?」「今は20番ハンガーにあるよ。見てみるかい?」「是非とも。」「ぢゃ、付いて来て~☆」結城の案内に付いて行くタケル達そして20番ハンガーに辿り着くと…新たに生まれ変わった吹雪・改が納められていた。「ふえぇ…これが吹雪・改…。」「見た感じは不知火・改に似てるけど…」「そりゃ当たり前だよ。元々吹雪は不知火の量産試験機として生産された機体だからね。ならば、不知火・改をモデルとして、吹雪・改を造れてもおかしくはないんだよ?」威風堂々と姿を見せる吹雪・改に圧巻される美琴機体が不知火・改に似ていた為、素直な感想を漏らす晴子だが、その理由を説明する結城の言葉を聞いて『あ、そっかぁ~。』と納得する。「不知火・改に装備されている肩部スラスターユニットと二連式跳躍ユニットを搭載。これが無きゃ意味無いからね。性能は不知火・改には劣るけど、不知火には勝ってるから充分実戦で戦える。そして訓練機だから安全性を重視した為性能が劣る分、稼働時間・生産性・整備性のアップに成功。そういう意味じゃ、訓練機でありながら即戦力になる為、不知火・改とのツートップで活躍も期待出来る機体でもあるんだ。」結城の説明を関心しながら聞くタケル達すると、結城がニコニコしながらタケルに近寄る。「白銀君、これでいつでも訓練兵達に『総戦技演習』出来るよ。」「え、ええ…」「今回の総戦技演習は随分と訓練兵達にイジメかけるよね~☆『戦術機による退却戦』だなんて…流石は夕呼だよ♪」「「「「「「ハイッ?」」」」」」結城の口から今期の総戦技演習の作戦内容が告げられると、タケルを除いた女性陣6人から、唖然とした声があがる。「あ、あの…それは一体…?」「詳しい話は知らないけど、なんか今回の総戦技演習は戦術機を使った演習だって聞いているよ?『退却戦を想定した訓練』で、仮想敵部隊に追われた状態でありながら、ゴール地点まで退却する事が目的らしいよ。一応ベイルアウトを想定した退却も考えてるから、即死亡判定に繋がるような攻撃を受けない限りは失格にはならないみたいだよ。合格条件も『一人でも脱出に成功する事』で、失格の条件は全滅みたいだし、中々面白い設定だよね~♪」「一人でも脱出成功すれば合格って…随分緩い設定ですね…何があるんですか…?」結城から今回の総戦技演習の内容を教えてもらい、流石に『怪しい』と疑う冥夜達。まあ……タケルはなんとなくわかっていた為、苦笑いをしていた。「……今回はどんな『イベント』があるんですか?」「イベント?それは本当に知らないよ。ちなみに前回の総戦技演習のイベントはなんだったの?」「………狂犬になったまりもちゃん投入……です。まあ……狂犬に関しては、先生も予想外でしたけど…。」「…………鬼畜ぢゃね?つーか良く前回の訓練兵…合格したね…?」狂犬になったまりもの恐怖を良く知る結城前回のイベントがそれと知ると、全身を小さくガタガタブルブルと震わせていた。やっぱり彼も犠牲者である。「結城~ぃ?いたいた……って、アンタ達も居たの?」「先生?」「夕呼ぢゃん、どうしたん?」すると、香月博士が結城を訪ねに来る。その際、そばには純夏と霞・ナスターシャが同行していた。その際、純夏とタマが久し振りの再会に喜び、抱き合う。「珠瀬さん、久し振り……で良いんだよね?」「私の場合は『暫くぶり』ですけど、また会えて嬉しいです。」「うんっ♪私もまた会えて嬉しいよ☆」再会を歓喜する二人をそばで見守る香月博士が『まったく…まっ、仕方ないか…。』と苦笑いをしながら見守る。そして気持ちを切り替えて、結城に要件を話す。「ホラ、結城例の頼まれたモノよ。」「ありがとさん☆いやぁ~…これでFX‐01の問題が解決するよ~♪」香月博士から書類を受けとると、喜ぶように感謝する結城「先生、それは?」「重力制御装置の設計図よ。FX‐01の問題点だった『操縦者にかかるGの付加の削減』従来の強化装備のフィールドバックシステムだけじゃ、音速機動のGの負加をこれ以上削減するのは時間がかかると判断したの。そこで凄乃皇に使ってる重力制御装置を戦術機に搭載出来るサイズまで縮小化したの。勿論、性能は格段と下がるけど、音速に耐えるだけならば充分過ぎるモノよ。」「はあぁ~…♪これでやっっっと先に進めるよ…☆」嬉しそうに書類を頬づりする結城苦笑いをしながら視線をずらすと、吹雪・改の存在に気付く。「そう、それは良かったわ………って、もしかして吹雪・改完成したの?」「さっきね~☆これで総戦技演習に使えるよ。」「そう。なら、『明日』にでも総戦技演習をするとしましょう。」「「「……………………………ハイ?」」」さりげなく呟く香月博士の爆弾発言に、唖然とするタケル達流石の結城も突然の爆弾発言についていけなかった。「ん~……夕呼…。ちょっと嬉しさで聞き間違えたようだから聞き直すけど……。総戦技演習……いつやるって?」「明日よ。」「………はっ?」再確認してみるが、やはり同じ返答が返ってくる結果になる。深呼吸を一度してから、ニコニコしながら香月博士に近寄る結城「夕呼…駄目だよ。無理し過ぎでおかしくなっちゃったみたいだね…。ホラ、其所に仮眠室が有るから、少し寝た方が良いよ。」「別に寝不足でも体調不良でも…」「駄目ですよ、博士忙しいのはわかりますけど、無茶は駄目ですよ?」「ナスターシャ、私は別に…」ナスターシャも笑顔で香月博士を仮眠室まで連行する。似たような事を幾度となく餌食になったタケルは哀れそうに、見捨てるように見送る。「先生…そういう無茶ばっかりするから、そういう目に遭うんですよ…。」「いいぢゃない、別にっ!!明日だろうと、明後日だろうと同じ事よ。」タケルの正論とも言える一言に、口を尖らせながら拗ねる香月博士…その側で被害者になるナスターシャが頭を抱えてこんでいた。結果、『せめて三日は待て』と説得され、仕方無しに折れる香月博士。「夕呼~…幾ら完成したからと言ったって、訓練兵達に慣熟させなきゃ意味無いでしょーに。不慣れな戦術機で訓練兵達が合格出来る程優しい内容じゃないでしょーが。」「そりゃ…そうだけど…。」「それにこれから準備するにしたって、時間がかかるんだよ?休み無しで『やれ』って命令したら、流石に俺も黙ってはいないよ~…。」黒い結城を見て、『ヤバい』と悟る香月博士そう…彼も香月博士がある意味恐れるはっちゃけ野郎だと思い出す。「………おばさんにチクろうかな~…。」「―――ッ!!わかったわよっ!!だから…母さんにだけは…。」「すげぇ…先生があんなに怯える姿……初めて見た…。」結城が『おばさんにチクるよ?』と呟くと、今までに無いぐらい怯え、霞の背後に隠れる香月博士その恐怖度は、狂犬になったまりもの比ではなかった…。「先生…?」「な…なによ…。」未だ母親の恐怖が抜けきらないでいる香月博士に質問をするタケル「ちなみに『仮想敵』って誰やるんですか?…流石にA‐01とかウチの第17大隊とかだったら、ナスターシャ以外は相手になんないんですけど…。」そう―――今回の総戦技演習合格の鍵は仮想敵役にあった。訓練兵達の成長はみるみると成長している為、問題は無い。しかし、問題は仮想敵部隊のメンバーによっては一方的になってしまう為、仮想敵は慎重に選ぶ必要があった。そして、香月博士が明かしたメンバーは―――― 「それならば、とっくに決まってるわ。」「誰ですか?」「そこにいるメンバーよ。」「……………………ハイ?」香月博士が指差す先には……冥夜達が居た。「冥夜・榊・彩峰・鎧衣・珠瀬・柏木の6人…このメンバーが今回の仮想敵役のメンバーよ。」「「「「「ハアァァァァッ!?」」」」」明かされたメンバーに驚愕する一同唯一結城だけはわからない為、『?』と不思議そうな表情を見せる。「まあ、冥夜は現役バリバリの衛士だけど、榊・珠瀬・柏木は久しく実戦してないし、鎧衣・彩峰に関してはまた実戦経験は無いわ。そういう意味でもこの子達の『訓練』になるから丁度良いわよ。」「けど先生…?それにしたって、訓練兵達の方がかなり不利っスよ?それに委員長や彩峰やタマはマズイですよ…。」「安心なさい。榊・彩峰・珠瀬の親御さん達には既に連絡は入れてるわよ。『来年の為に3日程特別教育致しますので、お借り致します。』って言って許可貰ったわよ。」「早っ!!随分と早い段取りですね…。」「まあ、日時はまだ伝えて無いから、これからするんだけどね。メンバーの人選だって、A‐01とか使うよりはまだマシよ。それに格上の相手ぶつけるなんて当たり前じゃない。格下の奴らぶつけて合格したって何の意味も無いわよ。」「そりゃ…そうですけど…。」香月博士の説明を聞き、納得する部分がある為、反論が出来ないでいた。「なら、せめてシミュレーター訓練ぐらいさせてください。少なくとも、柏木とタマは戦術機を久しく操ってないんですから。」「別にそれぐらいは良いわよ。むしろやって欲しいぐらいだから大歓迎よ。」なんとかタマ・晴子の訓練の許可を得たタケルすると―――やはり只では終わらせるつもりは無いらしい。「なら、ステージはこちらが設定して良いかしら?その代わり、社と純夏・ナスターシャも一緒に参加させて良いからさ。」「随分と羽振りが良い――――って、ま さ か ……!?」嫌な予感がバリバリするタケル香月博士が用意するステージが何処か理解してしまい、『アンタって人は…。』と呟きながらへこむ。「結城さん…今度是非ともチクって下さい。」「……白銀君…その一言で何処のステージかわかったよ…。あと、夕呼………リハビリにそのステージって……鬼畜ぢゃね?」「うっ、五月蝿いわねっ!こっちだって、ちゃんと理由が有るのよっ!」タケルと結城に白い目で見られしまい、ちょっと動揺しながらも反論する香月博士だが… 勿論、冥夜達は被害者になる為、怯えながら問う。「タケル…その…博士の言うステージとは…何処なのだ?」「………………甲1号。」「博士っ!!どういう理由か説明して下さい!!」ステージがオリジナルハイヴと知り、流石にちょっとキレ気味に質問するナスターシャ他のメンバーは………真っ白になってますが、何か?「説明するから、落ち着きなさい、ナスターシャ。……実はね、凄乃皇のシミュレーター用のデータが完成したから、そのテストプレイとしてオリジナルハイヴを選んだのよ。仮にも『対ハイヴ用』に創られてるんだから、それなりのデータが無いと実戦に出せないでしょう?」「だからって、このメンバーじゃ…「このメンバーだからやるのよ。」……ハイ?」説明を聞き、一応は理解したが、流石にオリジナルハイヴはやり過ぎと思い、結城が反論するが、香月博士の意味アリの言葉に『何故?』と疑問に思う。 「とりあえずやればわかるわよ。ホラ、アンタ達も用意なさい。」ちょっと強引に終らせる香月博士未だに理由がわからない結城やナスターシャそして準備が整い、シミュレーター訓練を開始する。機体は、凄乃皇に純夏と霞武御雷・羽鷲にはタケル・冥夜不知火・改には千鶴・慧・美琴・タマ・晴子・ナスターシャが搭乗していた。初めは、慣れてない機体という事もあり、最初はぎこちない動きを見せるタマと晴子だが、次第に慣れ始め、問題無い程度にまで動きを良くする。『何よ…これ…?』『冗談…じゃないんだよね…?』だが、しかし―――初めてオリジナルハイヴを体験するナスターシャと晴子にとって、『未知の地獄』であった。万単位のBETA群相手に戸惑う晴子とナスターシャ。万単位のBETAと戦う事はあっても、此処はBETAどもの本拠地。ましてハイヴ内攻略なんぞ未体験な為、其処は未知の世界だった。『彩峰、落ち着いて。無闇に突出したらヤられるわよ!!鎧衣も無駄弾は控えて、落ち着いて確実に仕留めて。まだ始まったばかりなんだから、冷静に戦って。』『了解…ッ!!』『了…了解!!』記憶の継承はしてるとはいえ、実戦経験の無い慧と美琴だが、それをカバーするように千鶴が入って指示を出す。『ナスターシャさん、援護は私と柏木さんがしますから、安心して前線で戦って下さい。』『了解!!(これが…壬姫の狙撃…!?針の穴を通すような正確な一撃…これで少尉だとは、悪い冗談じゃない…!!)』(とは~…相変わらずズゴイ正確さだよ…『極東一のスナイパー』ってのも、納得出来るよ…)タマの正確無比な狙撃に驚愕するナスターシャ前の世界では少尉だったとは思えない程の正確な一撃に息を呑む晴子も暫くぶりにタマの狙撃を見て、『極東一のスナイパー』の呼び名に納得してしまう。『純夏、余り時間をかけたらこちらが不利になっちまう。電磁投射砲で蹴散らしちまえっ!!』『りょ~かいっ!!みんな、当たらないように気をつけてねっ!!』『任せるがよいっ!!心置無く放つがよいっ!!』『いっっくよ~~!!……発射ぁぁっ!!』タケルの指示に従い、120mm・2700mm電磁投射砲を放つ純夏幾多の青光の帯が輝き、万単位のBETA群が、肉片を飛び散らしながら死滅していく。その破壊力に唖然とする冥夜達いや、タケルですら、その破壊力に言葉を失う。(すげぇ…ははっ…マジですげぇよ…。これが凄乃皇の本来の力かよっ!!)その破壊力に思わず笑顔を浮かべるタケルそして直ぐに気を引き締め直し、再び指示を出す。『これより前方600に二手に別れる分岐点がある。残存するBETAを倒しつつ右側の通路を渡り、なるべくBETAとの戦闘を避けるように行動する。万が一にも母艦級の奇襲があるかもしれない、一瞬たりとも油断するなよっ!!』『『『『了解!!』』』』タケルの指示に従い、残存していたBETAを殲滅し、二手に別れる分岐点を右側に進み出す。―――――――――――――――――――――――――――――――――「ご…ゴメンね……みんな…。」「気を落とさないで、純夏。」「あれは…みんなが予想外だったもの……未然に察知しろと言う方が無理に近いわ。」シミュレーター訓練が終了したんだ、へこむ純夏一応今回の任務の『門級の内部に凄乃皇到達』に成功はするが……実は『大広間』で母艦級の奇襲を受けてしまい、凄乃皇に多大なダメージを負う結果となった。大広間に到達した時点では、凄乃皇の他にはタケル・冥夜の武御雷・羽鷲と、千鶴・ナスターシャの不知火・改のみが生存していた。これは、『桜花作戦』の経験者という事もあり、タケル・冥夜・千鶴は生還出来ていた。また、ナスターシャも前の世界での激戦の経験やタケル・冥夜と共に前線で戦ってた事もあり、生還出来ていた。勿論、凄乃皇の『ラザフォード場』のおかげもあり、タケル達は生存出来ていた。しかし、タマや晴子は暫く戦場から離れていたせいもあり、途中で撃墜される。慧や美琴も撃墜されるが、上手くベイルアウトで脱出した事もあり、生存だけはした(後に凄乃皇に無事に送った。)そして大広間にてタケル・冥夜・千鶴・ナスターシャは門級の開閉作業に入り、順調良く先程していた。しかし問題が発生した。前回の世界で香月博士の作戦を実施してBETAを一掃したまでは良かったのだが、タケル達が離れて開閉作業を行ってる最中に母艦級が奇襲を仕掛けてきたのだ。通常の奇襲ならば対応出来たのだが、流石に凄乃皇の『真下』からの奇襲には対応出来なかったのだ。なんとか前進する事で直撃は避けたものの、後方のバウ(脚部)が破損し、飛行・ラザフォード場には影響はなかったものの、36mmチェーンガンや120mm電磁投射砲は破損してしまい、後方に対する攻撃手段が無くなってしまったのだ。結果、救助に向かったタケル達だが、冥夜・ナスターシャを失いつつも、辛うじて救出に成功し、任務を成功させる。 「泣くな、今回は別に純夏だけの責任じゃねーよ。責任って意味なら、全員にあるんだからよ。」「ふぇっ?全員?」予想外なタケルの返答に驚く純夏その説明をタケル達が返答する。「そうだ。確かに今回の凄乃皇の損害は純夏にも責任はある。けど、それを言ったら同乗していた霞にもあるし、開閉作業に集中し過ぎたオレ達にもある。」「そうだよ、純夏さん。ボク達だって途中で撃墜されちゃったんだから、その責任はあるんだよ?」「…私達が撃墜されなければ、凄乃皇に護衛に着く事が出来た…。」「それに純夏は何度も私達をラザフォード場で守ってくれたでしょう?つまり、守られた回数だけ私達はまだ未熟なんだよ。」タケル・美琴・慧・ナスターシャの説明を聞き、冥夜達も今回の反省点を思い浮かべ、悔やむ表情を浮かべる。「こんな所で悔やむ時間があるなら、実戦で悔やまないように訓練をしろっ!!そこで訓練した分だけ実戦に影響するるんだ。」「うんっ!!」タケルから気合いを入れられて、先程まで落ち込んでいた純夏だが、今は気合いを入れ直していつもの純夏に戻る。そして冥夜達も今回の失態を教訓にし、次は必ず生還すると心に誓う。「まったく…熱血してるわねぇ~♪」その様子を遠くから見る香月博士ニヤニヤしながらタケル達を見ていると……何故か表情が重い結城が近寄る。「夕呼……これは一体どういう事なんだい?」「どういう事って…何が?」「とぼけても無駄だよ。今回のシミュレーター訓練……あきらかにおかし過ぎるよ。」鋭い視線で香月博士に問う結城香月博士も冷静に結城と向き合う。「確かに今回の任務成功の要因は凄乃皇だよ。これについては絶賛するし、これを造らせた夕呼は凄いと思うよ?……けど、問題はそこじゃない…問題は……彼女達にある…!!」強い疑問を香月博士に問う結城視線を千鶴達に向ける。「白銀君や冥夜ちゃんはわかるよ?あの二人は現役の衛士でエース級以上の実力者だし、ハイヴ攻略も経験がある。純夏ちゃんも実戦経験はまだだけど、衛士の一人だし、訓練を受けてるからわかる。ナスターシャちゃんも今は訓練兵って肩書きだけど、元ソビエト軍の大尉であり衛士だ、熟練の実力者なのは聞いてる。けど…あの…榊・彩峰・鎧衣・珠瀬・柏木…って言ったっけ?彼女達はあらかさまにおかしいよ。なんで『衛士じゃない彼女達』があれ程の実力を持ってるの?」鋭い結城の質問に対し、一瞬だけ眉をぴくりと動かす。「まあ…あの彩峰・鎧衣って子達はまだ百歩譲れる。二人の実力は…そだね…『凄腕の訓練兵~新任少尉』ぐらいと、僕は見るけど、確かに数ヶ月間シミュレーター訓練を受けていれば、それぐらいの実力になれるだろう。けど、榊・珠瀬・柏木の三人はおかし過ぎる。戦術機の操作・戦場における冷静さと判断力。まるで『戦場を経験している衛士』のような動きをしていた…。これについては説明して貰えるかい?」(………ハァ。やっぱりアンタには見破られたか…。)結城に問いただされる香月博士心の中で溜め息を漏らし、結城に告げる。「済まないんだけど……その件については話せないわ。勿論理由があっての事だけど…。」いつものように無表情で語る香月博士だが、その様子を見た結城が深い溜め息を吐きながら、諦めたような表情になる。「まったく…そんな顔したら下がるしか無いじゃないか…。」「へっ?」「今、泣きそうな顔してたよ。」突然の結城の発言に唖然とする香月博士別に涙を滲ませてた訳でも悲しい顔をしていた訳でもなく、ただ無表情な顔それを『泣きそうな顔』と言われ、呆然とする。「夕呼は良く隠し事をする際、良く無表情な顔になって隠したり誤魔化したりするけどね、今の顔は僕やまりもぐらいしかわからないぐらいの表情が出てたよ。なんていうか…僕やまりもに話す事が出来ず、泣きそうななのを堪えてるような感じ…?そんな顔を僅かに出てたよ?」「べ、別に泣きそうになんてなってないわよっ!!」「夕呼は僕達三人の中で一番優しいからね。普段は態度には出さないクセに、影ではまりも以上に相手を気遣い、自分にムチ打ってでも全力で助けようとする。白銀君の言葉を使うなら『ツンデレ』って奴だよね、夕呼は。」「なっ…!?」自分を良く知る結城に『まりも以上に優しい』と言われ、動揺をしながら僅かに頬を赤らめる。「白銀君なんて、最たる例ぢゃん。彼と何があったかは知らないけど、随分と気にかけてるよね?まるで僕やまりもみたいにね。」「べ、別に良いじゃない…。」「ホント、随分と丸くなったよ、夕呼は。」照れ隠しをする夕呼を見て、苦笑しながらからかう結城同時に、質問に対し諦めた。「夕呼、今回の件は貸しひとつで勘弁してあげるよ。けど、いつかは話して貰うからね。」「……ゴメン」今回の疑問に対しての件は『貸しひとつ』という事で黙秘する事にする結城その心遣いに僅かに素直な気持ちを現す香月博士だった…。