回想――――『あれっ?ここは…?』目覚めると、懐かしい光景を目にする私けど、幾つかの見慣れないモノはあるが、ここはかつてあった『自分の部屋』『ねーちゃん、いい加減起きろよっ!!学校遅刻するぞ。』『学校…?って太一!?』すると部屋に我が弟・太一が呆れ顔で私を起こしに来る。『これは…一体…?』私は佐渡島で要塞級の触角に貫かれた。多分、溶解液か爆発で死んだ…と思うんだけど…。『……なんともない…あれぇ~…?』頭を傾げながら起きだし洋服タンスを開けると――― 『これ……訓練兵の頃の制服!?って…あれ、これ…。』肩に付いてるエンブレムが『伊隅ヴァルキリーズ』のエンブレムではなく『白陵大付属柊学園』と書かれたエンブレムが貼られていた。『………とりあえず着てみるか。』先程太一も『学校』という言葉を使っていた。多分コレを着ても大丈夫だろう。 『晴子~迎えに来たよ~!!』(この声は…茜?)朝ご飯を食べ終わると、玄関辺りから茜の声が聞こえる。鞄を持って、玄関に向かうと、茜と『築地多恵』がいた。 『おそいよ~。いつもなら外で待ってるのにどうしたの?』『ごめんごめん。ちょっと寝坊しちゃってさ。』『珍しいね~。柏木さん、いつも早起きなのに。』『アハハッ☆そりゃ~私だって偶には寝坊するよ~。』『もう~。晴子はバスケ部だからハードなのはわかるけど、余り無茶しちゃ駄目だよ?』『りょ~かい♪(バスケ部……私が…?)』茜の言葉に疑問を抱きながら、三人で一緒に『学校』に向かう事にする。勿論、『学校』の場所などわからない為、茜や多恵について行く形で向かう。(けど---これは一体どういう事なの…?)『本土防衛戦』でBETAに横浜を侵略され、『明星作戦』では米国に『G弾』を二発使われ、この光景を奪われ二度と見られない筈の故郷が、今此処にある。自分自身、幾度か家の有った場所を訪れ、哀愁感を味わった筈なのに--- (参ったね…ワケわかんないや…。とりあえず、怪しまれないように『演技』するしかないっか…。)なんせ、普段当然やる事やわかる事が『わからない』のだ。例えば、『学校』に行っても、『教室は何処か?』とか……『使ってる机は何処か?』とか……問題は山積みだ。 (あれ……このルートは……。)見覚えのある道を歩んでる事に気づく。この先は『横浜基地』があるルート……なんとなくだけど、制服を見た時から、行き場はわかってたのかもしれない。 そして到着すると、案の定だった。しかし、其処は『横浜基地』ではなく『白陵大付属柊学園』だった。 いつも正門に居た守衛も居ない。基地の屋上にあったアンテナも無い。建物自体、全然違っていた。 本当に…此処は『学校』なんだ…… 『さて、此処で晴子とはお別れだね。』『うん、それじゃ。』茜や多恵と別れて教室まで辿り着く。下駄箱では幸運な事に名札があった為大丈夫だったが、教室はわからないから『教室まで案内して下さい、涼宮様☆』…なんて冗談混じりで案内して貰った。まあ……茜には呆れた顔されたけどね。 『おはよー♪』『アラ、おはよう柏木さん。』教室に入ると、榊が居たから、挨拶をする。すると、教室の中の造りが訓練兵の頃の教室と同じ為か、なんとなく席がわかった。 (多分…此処だ。)訓練兵時代、この席で様々な事を学んだ。机を調べると、確かに私の席で合っていた。 (中身は…体操服か…なんか懐かしいかも。)かつて通ってた訓練学校で着た事のある体操服今もこれを着るとなると…ちょっと恥ずかしいかもしれない。まあ…訓練兵時代の強化装備よりはマシか…。 しばらくすると、見慣れたみんなが集まって来る。 彩峰…珠瀬…鎧衣…御剣…そして白銀その後ろには、社と白銀の幼なじみの鑑純夏さんが……って…!? 『で、殿下!?』小さな声だが、思わず漏らしてしまう。しかし…目の前には、あの政威大将軍・煌武院悠陽殿下が居るのだ。 しかし、良く会話を聞いてみると、殿下を『御剣悠陽』と呼んでいる…どういう事? 益々混乱してきた……(アレ…?珠瀬さん…どうしたのかな…?)ふと気づくと、珠瀬さんの様子がおかしい。ちょっと影があるような…? (あとで聞いてみよっか。)大切な仲間だから、やはり無視は出来ない。あとで相談に乗ってあげよう。 結論----ワケわかんない。今日1日学校で過ごしてみたが、ワケがわかんない。 いや、勉強内容とかはわかる。わかるけど---何故だろう…自分自身…『余所者』の感じがする。 恐らくは、この不可思議な現象のせいだと思うが…やはり色々と違い過ぎる。 (---私は…この世界を知らない…。)まるで違う世界に来たような感覚。自分の知ってる世界とは、似て非なる世界。 そして、何より---- (BETAが…存在しない?)まるで夢のような現実。人類の敵であるBETAが存在しない。少なくとも今日調べた限りでは居ない事がわかった。 歴史の教科書を見ても、私が学んだ事とは違う事が書かれいた。それどころか、BETAの事がひとつも載っていない。 つまり、BETAが存在しないという事は、ユーラシア大陸にはハイヴは存在しないし、BETAがいないという事は、戦術機も無いという事だ。 歴史が---違い過ぎる。 『参ったね…こりゃ…。』ふぅ…と溜め息を漏らす。未知なる現象に頭を悩ましてしまう。 『…これが天国でしたってオチなら、いらないんだけどな~…。』天国---確かに私の居た世界に比べれば天国だ。しかし、どんなに酷くなっても、やはり生まれ育った場所の方が良いに決まってる。けど--- 『…これが天国なら……ヤッパリ私……死んだんだよね…。』『死んだ』という事は---『二度と自分が居た世界』には帰れないという事---!! 少し寂しさで涙を流してしまう私。帰れないと思ってしまうと、つい流してしまう。『あの…柏木さん…。』『---ッ!?あ、あれ、社じゃない。どうしたのかな~?』すると、社が後ろから声をかけて来る。慌てて涙を制服の袖でゴシゴシ拭いてから笑顔で振り向く。 『……泣いてたんですか…?』『アハハッ☆ちょっと目にゴミ入っちちゃってさ~ゴシゴシ擦ってたら、ちょっと涙出ちゃったんだよ。』『無理…しないで下さい…。』優しく制服を掴む社ハンカチを取り出して『これで拭いて下さい…。』と言ってくれる。 うーん…白銀が以前『霞は癒やし系』って言った意味、良くわかるよ…。『はい、ありがとね社』『いいえ、どう致しまして『柏木少尉』』ドクン----!! 今……なんて言ったの…?柏木……少尉……!? 『な、なんの事かな~?』動揺しながら誤魔化してみる私しかし、社は私の顔をジッと見て告げる。 『この世界の柏木さんは、私の事を『社さん』って呼びます…。柏木さんが私を『社』と呼ぶのは…『BETAが存在する世界』です…。』『----ッ!?』『そして、この世界の柏木さんなら…『柏木少尉』なんて言っても『なんでありましょうか☆』ってトボケてくれます。』『なっ…!?』激しい動揺を見せてしまう私… 今まで色々な事があったから、聞き慣れてる呼び方につい動揺を見せてしまう。『………向こうに…公園あります…。そこで話をしましょう…。』『………わかったよ。』社の後をついて行く私…それにしても、ついやっちゃったな~…。まさか名前の呼び方とは……失敗したなぁ…。 『ハイ…どうぞ…。』『ありがとう。』社からジュースを貰い、一口飲んでみる…。美味しい……ご飯食べてる時も思ったけど、この世界の食事とか色々美味しいよね…。 『ねぇ…社…』『スミマセン…ちょっと待って下さい…。もう1人…来ますので…。』『えっ…もう1人…?』誰だろう。色々考えてみてもわからない。 すると、遠くから見覚えのある姿がこちらに向かって走って来る。 『……………珠瀬さん?』『ハァ…ハァ…アレ…?柏木さん…?』息を切らしながら私の名前を呼ぶ珠瀬さん…。私を見て驚いているようだけど…?『これで揃いましたね……。それではお二方の疑問について説明します。』『えっ?』『私達の…疑問?』『ハイ…お二方の疑問は『同じ』ですから…。』『『ええっ!!?』』社の一言に驚き、私は珠瀬さんの方を見て驚く。『珠瀬さんも…『BETAの居る世界』から来たの…?』『ハイ…柏木さんもですか…?』コクリと珠瀬さんの質問を肯定する。そっかぁ…朝珠瀬さんの様子がおかしかったのも、私と同じ理由だったんだ…。『お二人共、同じ世界から来たようです…。確認の為に質問しますが…柏木さんは『甲21号作戦』が最期で、珠瀬さんが『桜花作戦』が最期で宜しいですね?』『な、なんで…その事をっ!?』『……私もお二人と同じ世界から来た『社霞』だからです…。』『『ええっ!?』』や、社まで私達と同じ世界から来ただなんて…流石に驚いたよ…。とりあえず冷静になり、社に質問する事にする。一番最初に聞きたい事はーーー 『ねぇ…社…。私達って…『死んだ』のかな…?やっぱり、元の世界には帰れないの…?』『……ハイ、スミマセン…。』社の表情が暗くなり、今にでも泣きそうな表情になる。『お二人共…元の世界では『KIA(戦死判定)』とされてます。柏木さんは、伊隅大尉が作業していた『凄乃皇弐型』を護衛していた際、要塞級の触角の一撃で気を失い、溶解液により死亡致しました…。珠瀬さんは、『門級』の脳の破壊作業中に突撃級の群に潰され、死亡致しました…。』『そっかぁ…やっぱりかぁ~…。』流石に自分が死亡したと聞き、暗くなる私私や珠瀬さんの家族の元には『訃報』が伝わってる筈だから、帰る場所が無い……って訳か…。勿論、基地にも帰れない。つまり、例え元の世界に帰れても、意味が無いのだ…。珠瀬さんも跪づいて泣き崩れそうになってる…。無理は無いよ……私も…限界…かな…。私が涙を流すと、珠瀬さんも釣られて涙を流しちゃった…ゴメンね…。めい一杯涙を流して、社に慰められる私と珠瀬さん…。本当に…癒されるな…社には…白銀の言ってた意味が良くわかったよ…。そして泣き止んだ私達に社はこう呟いた---『失った…時間を…未来を取り戻したくは無いですか…?』『えっ…?』『元の世界には戻ってやり直す事は出来ませんが…『限りなく似た世界』でなら…やり直す事は可能です…。』『それ、本当にっ!!』『ハイ…限り無く低い可能性ですが…出来ます。お二人なら…出来る筈です。』社の言葉に驚愕しつつも、私と珠瀬さんは『希望』が見えてきた…。『………社…それ、どうやるの…?』すっかり冷静さを取り戻し、社に質問する。珠瀬さんも私と同じ想いで社の返答を待つ。『普通ならば不可能ですが…ループして来たお二人ならば…可能です。』『その方法はっ!?』珠瀬さんが珍しく強気で質問する。『…自分のいた元の世界と…お二人が良く知る白銀さんを強くイメージして『逢いたい』と強く思ってくれれば…可能性は見えて来ます…。』『し、白銀をっ!?』元の世界をイメージするのは…わかるとしても……何故白銀を?あらら…珠瀬さんったら、茹で蛸みたいに顔を真っ赤っかにしてるよ…。『白銀さんもループを幾度となく経験して来た人です…。』『『ええぇっ!!?』』白銀が…私達と同じ体験を…?流石に予想外だよ…。『これは……白銀さんの体験した『物語』とてもちいさくて---とてもおおきくて---とてもたいせつな物語です…。』私達の知る『白銀武の物語』を語る社…それを私達は息を飲んで聞いていた…。