「天乃宮様…?今日は一体、どのような事で…?」「いえ、別に特別な事ではありません。お忍びで雷電の下に会いに来ただけですよ。」「お忍び…ですか?」「ええ、雷電や紅蓮・神野は昔からの知人です。たまには一緒に茶会でもしようと忍んだのです。」悠陽の質問に答える、日本皇帝・天乃宮珠代雷電等と茶会しようとお忍びで来たようだが……三人の表情が何故かげっそりしていた。「……珠代様はな、昔っっっっから、こうやってお忍びしてな…我々三人を困らせてるのだよ。」「若い頃から仕えてきたんじゃが…『超』が付く程『じゃじゃ馬』でな…我々三人の苦労の八割はこの方が原因なのじゃ。」「勝手に飛び出して、バイクや装甲車を操縦して暴走するし…強化装備勝手に持ち出して、撃震を操縦してハシャギまわるわ…しまいには、HSSTを危うく操縦しそうになるわで…ワシ等の胃にどれだけ穴が出来、精神科に通わされたか…。」「ちなみに…この苦労は……現在進行中ぢゃ。」雷電達の苦労話を聞き、全員が同情する。『皇帝として、このはっちゃけよう…まずくね?』と心の中で全員が呟く。三人が悠陽のはっちゃけに耐えられるのも、ぶっちゃけこの人のせいである。「まあ、とりあえず話題を戻しましょう。」ホホホ…と笑顔で誤魔化しながら話題を変える珠代。「話は聞きました。此度は大変な目にあいましたね。」「いえ、恐れ入ります。」珠代からの慰めの言葉を貰い、頭を下げるラトロワ。しかし珠代は跪くラトロワの前で正座する。「へ、陛下!?」「気になさる事ではありません。人と話す際は、同じ視線の高さで話す事にしてるのです。」「ですが…」「良いのですよ☆」珠代の行動に絶句するラトロワ雷電達も「やはりやりよった…」と頭を悩ます。「此度の件、私も力をお貸し致します。紅蓮、すみませんが五摂家現当主を全て集めなさい。彼等にも協力して貰いましょう。」「ハッ!!」すぐさま紅蓮は退室し、五摂家現当主達に連絡を入れる。そして30分後ーーー「皆さん、忙しい中集まって頂き、感謝致します。」「いえ、此方こそ陛下に謁見出来、至極幸せで御座います。」「アラアラ、嬉しい事言ってくれますね、兼嗣さん。なら、今度一緒に戦術『お断り致します。』アラ、イケずですねぇ…。」口を尖らせて拗ねる珠代。兼嗣も彼女の犠牲者故に拒否反応が即座に出てくる。「珠代様、相変わらずお元気ですね。」「勿論ですよ、由佳里さん。元気は最強ですよ☆それより由佳里さん、まだ若いんだから再婚しないのですか?」「私は元泰さん一筋ですので、お断り致しますわ。」「むぅ、残念ですね…お見合いならば、私が用意してあげようとしたのに……500人程。」「……多すぎです。」ちょっと残念がる珠代しかしお見合いの相手を500人は多すぎる為、流石の由佳里も冷や汗を流す。「まあ、世間話は此処までにして…。皆さんに頼みがあります。」「頼み…ですか?」いささか不安感が漂う兼嗣達だったが、話を聞くと真面目な話だった為、内心ホッとする。「……用件はわかりました。しかし、このままだと反対派の反応が気になりますね。」「一夫多婦制の件等で色々と頭の固い連中が五月蝿いですからねぇ…」「確かに陛下や殿下の一言があれば即座に出来るでしょう。ですが、同時に良からぬ誤解等を受けられる可能性もありますので、他にも案を用意する必要があります。」「我々だけではなく、名のある者や政界等の協力者が必要になりますね。」兼嗣・由佳里・隼人の進言を聞いて『フム…どうしたモノか…。』と考えると… 「陛下、それならば白銀武大尉に任せて大丈夫かと。」「タケル君が?」すると、香月博士の進言を聞き、珠代の頭にクエスチョンマークを浮かべる。「白銀武大尉の人間関係には、かなりの名のある人物と関係を持っています。現に五摂家は勿論、内閣総理大臣の榊是親殿や『伝説のテストパイロット』で知られてる巌谷榮二中佐等と関係を持っています。それ等の人脈を活用すれば、良い結果が出てくると思います。」「成る程!確かにそれほどの名高い方達との人脈があるのなら、大丈夫ですね。タケル君、その任を受けてくれますか?」「勿論です。オレが役立てる事が出来るなら、力をお貸しします。」「流石タケル君ですね☆」タケルの人脈を活用する事に決まった……のだが、違う疑問点が浮かんでくる。「陛下…ずいぶんと白銀大尉と親しいのですね…?」「正月に謁見してたのは聞いてましたが…」「ああ、それですか?」タケルにずいぶんと親しく接していた珠代に疑問を持ち、質問する兼嗣と由佳里するとーーー 「そりゃ親しくなりますよ。私の可愛らしい『孫』なんですから☆」「「「「はっ?」」」」この瞬間ーーー珠代からの一言に全員が硬直する。唯一タケル・悠陽・雷電だけは頭を抱えこんでいた。「「「「はぁぁぁぁぁぁっ!!!?」」」」「どどど…どういう事よ、白銀!?」「説明するから落ち着いて下さいっ!!」「これが落ち着いていられるかぁぁぁっ!!」吼える香月博士。ガァァァァッ!!と吼えながら暴れる香月博士を羽交い締めにしながら鎮圧するタケル 「以前、正月に謁見したのはさっき言いましたよね?」「ええ。」「その際会った瞬間に『ばあちゃん?』って呟いたっけ、飛び付いて来たんですよ。」「あの時は嬉しくて涙を滲ませましたよ…初めて対面した孫から『ばあちゃん』って言われて…感涙モノでしたわ。思わず飛び付いてしまいましたよ。」顔を真っ赤に染めながら出会いのシーンを説明する珠代実際には、タケルが祖母の顔を見て、ウッカリ呟いた結果だったりする。「親父が以前『皇帝陛下直属部隊』に所属してたのは知ってますね?」「ええ、以前シミュレーター訓練での会話を聞いたわ。確か『とある理由』で部隊を離れて帝国軍に移ったのよね?」「ハイ、実はその話なんですけど……実は親父、母さんと『駆け落ち』したんですよ。」 「駆け落ち?なんでまた……ってまさかっ!?」「ハイ、先生の想像通りです。実は母さん…『皇帝陛下の娘』なんです。まあ、駆け落ちしちゃったから、縁は切れてますけどね…。」流石に全員が唖然とするしかなかった。その代わり、珠代が語りだす。「影行君は、私のお気に入りの一人でしてね。良く私が飛び出した際は、彼が良く見つけて連れ戻す役だったんですよ。」「影行殿が離れた際は、我々三人がどれだけ嘆いたか…彼が居た期間は、我等に安心感を与えてくれたのだ…その損失は大きい…。」「親父……苦労したんだなぁ…。」思い出話をしてウフフ…とエピソードを語る珠代だが、影行の損失に雷電・紅蓮・神野の三人が嘆きだす。「影行君って昔から女性にモテましてね~、楓も必死に奮闘した結果、影行君をゲットしたんですよ。」「ちなみに…決め手は?」「既成事実作って『責任取ってよね?』と婚姻届に記入☆いやぁ~…あの時の楓の手際の良さは見事でした…。」「親父もかよ…」悠陽の質問に答える珠代だが、タケルは自分の父親も自分と同じような理由で結婚したと聞き、跪づく。ちなみにラトロワや香月博士達女性陣は『成る程…。』と頷いていた。「結果的には結ばれはしましたが、家柄の問題もあり、そう簡単に結婚は認められませんでした。私個人としては賛成でしたけど、その頃は頭の固い連中が多かった為、どうしたものかと悩んでいたら、影行君ったら私に『楓と一緒に駆け落ちする事をお許し下さい。』と土下座してまで楓を貰いに来たのよ。あの時は驚いたけど、同時に嬉しくも思いました。私の娘の為に、身分や家柄・立場を捨てたのです。楓もあの時は感涙して、影行君と一緒に土下座して駆け落ちしたのそして楓は天乃宮家とは縁を切る事にはなりましたけど、親子としての絆や血までは切ったつもりはありません。」珠代の言葉を聞いて、親子としての絆の強さを知り、少し羨ましそうになるナスターシャとジャール大隊の隊員達。「その際に雷電だけに教え、影行君の配属場所や身分を与えるように頼んだの。それで影行君は帝国軍に配属されたんだけど…まさか楓まで帝国軍に入ったと聞いた時は驚いたわ。まあ、ジッとする子じゃないから、影行君の部隊に入ったんでしょうけど。」「今や部隊のエース級衛士になってますよ。」「アラ、当たり前よタケル君影行君と一緒に戦場に出るんなら、それぐらいにならなきゃ足引っ張るだけよ?それに私の娘よ?その程度の困難を乗り越えられなきゃ私の娘は名乗れ無いのよ?」「随分とハードですね…」影行の過去の話を聞き、ちょっと誇らしげに喜ぶタケル「タケル君が生まれたと聞いた時は会いたくて飛び出したわ。けど、生憎雷電達や影行君に阻止されて会う事は出来ず、写真だけで我慢したわ…」「あの時は大変だったぞ…いままでに無いはっちゃけようだったから、阻止出来た事自体奇跡だった…」「…もしかしてアレか?用意周到に様々な囮を使って飛び出したアレか?」「…ああ…撃震を自動操縦にして囮にし、歩兵部隊に変装して飛び出した件だ…。」「「「「そんな事したのっ!?」」」」「幸い、偶々遭遇した影行殿のおかげで、阻止する事が出来たのぢゃ…。」「親父すげぇよ…。」タケルに会う為だけに、凄まじいはっちゃける珠代の過去話を聞き『日本…大丈夫…なのか?』と不安感タップリに襲われるタケル達。「それから幾年経ち、例の一夫多婦制の件で『白銀武』という名前を聞いてタケル君の事だとピンと来ました。一応雷電に確認を取らしてみれば、『間違いない』と知り、即刻でアノ手ソノ手…など様々な手段を使いました。」「……なんか不安な言葉が出てきたんですけど…」「まあ、そういう事で悠陽さんに一夫多婦制を認める代わりに、タケル君を一度会わせるように仕向けたのです。けど、私も忙しい身ですから、今年の正月に会う事になった…という事です。ウキウキして大晦日の夜は眠れませんでしたよ?しまいには、会った瞬間にタケル君に『ばあちゃん?』と言われた瞬間嬉しさ爆発しちゃって、その日も眠れませんでしたよ。」(うわぁ……遠足前の子供かよ…)ウフフ…☆と笑みを浮かべる珠代を見て、タケルは『遠足前の子供』と見る。だが内心では、自分に会うためにそこまでしてくれる事には嬉しさがあった。「……という事は、いずれは白銀大尉も皇帝に?」「それは現時点ではあり得ませんね。」ナスターシャがポツリと呟くと、即答で珠代が否定する。「先程も言いましたが、楓とは縁を切りました。つまり現時点ではタケル君は『天乃宮家とは縁が切れてる状態』ですから、皇帝になる事はありません。それに跡継ぎとして、楓の姉の『千恵』がいますので、千恵が亡くなり、跡継ぎがいない状態でなければタケル君や楓が跡継ぎ候補として選ばれる事はありません。」「つ~か、オレ自身なるつもりは無い。今の暮らしで十分だ。」「嫁は増える一方だけどね。」「グハァッ!?」タケルの跡継ぎの話は否定するタケルと珠代タケル自身は今の生活で充分と語るが、香月博士の鋭いツッコミを喰らい、ダメージを負う。勿論みんな爆笑する。「さて、話が大分逸れましたが、とりあえず正式な配属は後程決めます。それまでは悠陽さんが責任持って預かって貰います。良いですね、悠陽さん。」「勿論です、珠代様。」とりあえずジャール大隊の件は一時的に悠陽が預かる事に決まる。そして、ホッと一安心したのは、小さな溜め息を漏らすとーーー「香月博士、此処に居ました…………へっ?」「あら、影行君じゃない。久し振りですねぇ~。」香月博士を探していた影行が入室すると、義母・珠代の姿を見て時が止まる。「アナタ、香月博士が見つかっ……………母様?」「楓……久し振りですねぇ…。」先程の影行との対応とは違い、黒いオーラを放つ珠代母の姿を見て、ビクビクする楓の姿を見ながら、安全地帯まで避難するタケル達。「楓……何故タケル君を会わせてくれなかったのかしら…?私、とてもとても寂しい思いをしたんですよ…?」「いえ、その…タケルが立派に成長してからと思いまして…。」「十数年も経ってもですか?」「いや、ちょっとタケルもまだ未熟者でしたので…」「子供が未熟なのは当たり前です…。……私はそんな言い訳聞きたいのではありませんッッ!!駆け落ちしてから一度たりとも会いに来ないとはどういう事ですかっ!!影行君だって、数度は会って下さってるにも関わらず、貴女って子は…!!」吼えた。怒り大爆発した珠代が楓に説教をする。楓も正座してガミガミと叱られる姿は、何時もの厳しい母の姿はこれっぽっちも無かった。そして、楓の襟首を掴み、平手状態の右手を高々とあげ、力を溜める。「すぷらっしゅ~……」 「母様ッ!!それだけは---」怯える楓母・珠代の必殺技が炸裂する事を悟り説得するが………無駄である。「ふぁんとむ~~~ッ!!」「アブ、アブブブッ!!」凄まじい速さの往復ビンタ一秒間20連発はしてそうな速さで、楓の頬を叩く。「セイッ!!」「グハァッ!!」最後に顔面に強烈なコークスクリュー・ビンタ(張り手?)が炸裂し、気を失いながら吹っ飛ぶ。勿論それを見た皆さんは恐怖でガクガクブルブルと震えてます。後にジャール大隊の隊員達は語る……『日本の母に逆らってはいけない…。』そう…心に刻みつけたのだった…。あとがき-----しばらくぶりです、騎士王です。ケータイが一時止まってたので、プリペイトケータイを購入し、書いた話をパソコンにメールしてコピーする作業・・・めんどっ!!今回はオリキャラの珠代登場の話です。タケルの祖母であり、皇帝陛下という設定・・・以前謁見したシーンを書いた時から出す事を決めていました。紅蓮達ですら恐れる珠代のはっちゃけ孫イベントの際は活躍(?)してもらいましょう。