2000年・4月7日京都・帝都城シミュレータールーム「…なあ…タケル」「…なんですか、孝志さん。」「あれ…鬼畜だよな…」「……………鬼畜ですねぇ。」同情の念を抱きながら、南無~…と合掌するタケルと孝志 今日は横浜のA-01のヴァルキリーズ・オーディン隊が帝都城に来て、タケル達第17大隊とシミュレーターでの模擬戦をしていた。 現在はヴァルキリーズ対第四中隊しかし、今回はタケルは『不参加』だった。 勿論、ヴァルキリーズや第四中隊の面々は困惑と苛立ち等を見せたが--- 『…………戦ってみれば、よーーくわかりますよ…。』なんか、哀れみタップリの表情で告げるタケルその姿を見た面々は『あれ…?なんかフラグ立った…?』と不安感バリバリ感じまくる。 そして--- 『牧村機、動力部大破機能停止。』『ウソォォッ!?今、何があったの!?』撃破される牧村機撃破された牧村中尉も一体何が起きたのか分からず混乱する。 『大尉っ!?コレは一体…!?』『分からん…。だがしかし、『これ』が白銀が言っていた意味なのだろう…!!』戸惑う美冴の声に冷静な態度で答えるみちる。だがしかし、内心みちるも焦りで『謎の敵』に困惑していた。 現在ヴァルキリーズは12名隊員が居るその内、水月と遙は複座をしている為、戦術機の数は11機 今回の対戦も『11対7』という変則的な対戦しかもタケル抜きという条件付き。 誰もが、数の差でヴァルキリーズ優勢と考えるだろう。だがしかし--現状は違った。 『遠坂機、機関部大破。機能停止。』『な…何なのよ、一体…!?』そしてまた一機撃墜される。 そして、ヴァルキリーズの残りは---三機。 『し、白銀ッ!!コレは一体どういう事だっ!!?』流石のみちるも限界が来て、タケルを呼び出す。 「ご愁傷様です、伊隅大尉…。」『縁起でもない事言うなっ!!』素直な感想を言うタケルに怒鳴るみちる。タケルの後ろで碓氷大尉が『南無~…』と合掌する姿を見て、『碓氷、貴様覚えてろよっ!!』と吠える。 「ええと…ですね…実は…今ヴァルキリーズの相手しているのは…………『一機』だけなんです。」『なんだとっ!?』「他の機体は………開始地点から動いてません。」『な、なにぃぃぃっ!?』 更なる驚愕の事実。ヴァルキリーズを追い込んでいる謎は『一機のみ』の仕業と知り、驚愕するみちる ちなみに第四中隊の他のメンバーは--- 『……ねぇ、真耶大尉…』『なんだ?』『……私達って……………要らない存在?』『………言うな。』開始地点から一歩も動いていない第四中隊のメンバー まりかが真耶と通信をやりとりし、『私達…要らない子?』とビミョーな気持ちで通信をする。そして--- 『ウフフ~☆全く…この程度でやられるなんて……OSHIOKIかしら☆』『『『『!!!!!?』』』』わかってしまった。不吉過ぎるこのセリフを聞いてしまったみちる・水月・遙・美冴見覚えが有るってもんじゃない。有る種トラウマをゴリゴリと刻み込んだ人物だ…間違いであって欲しいと願う四人。 『さぁて、伊隅・速瀬・涼宮・宗像…私をガッカリさせないでね?』『『『『ヤッパリィィィッ!!』』』』ユラユラと現れた一機の戦術機…つい先日、一部公開したばかりの機体・YF-23J改・天狼……そして搭乗者は、我等が『狂犬』白銀まりもだった。 しかも機嫌が良い為か、天狼からルンルン気分で鼻歌を歌うまりもの声がオープンチャンネルで聞こえ、みちる達からすれば、その鼻歌も鎮魂歌に聞こえてしまうぐらい、絶望感タップリだった。 『速瀬・涼宮・宗像…良く此処まで育ってくれたわね…私は嬉しいわ♪』『ここここ…光栄ですっ!!』『全て白銀大尉とまりも大尉のおかげですっ!!』『み…右に同じく…!!』ビクビクしながら敬礼しながら感謝の言葉を贈る水月・遙・美冴本来ならば喜ばしい事だが、今はそれどころではなかった。『伊隅、貴女や碓氷は私の教え子として最古参になったわ。この子達を良く此処まで成長させてくれて感謝するわ。『親』としても嬉しい限りよ。』『こここ…、光栄の極みですっ!!』みちるでさえ、今のまりもに恐怖して、戦術機ごと震えていた。 別に怒りで黒いオーラを出してる訳でも無いのだが、その纏う雰囲気にビビりまくっている。 『何で貴女達の前に現れたかわかる?』『『『『いえ、わかりません!!』』』』『ンフフ~☆しょうがないわね~♪』まりもの問いに即答で『わからない』と否定する四人だが、そんな答えが返って来ても上機嫌なまりもは---ある意味、みちる達にとって『死の宣告』に等しい言葉を告げる。 『貴女達が『強い』からよ。…だから……天狼のE・MO・NO・になって☆』『『『『いやぁぁぁぁぁーーーッ!!』』』』本音をぶっちゃけやがった。みちる達を『獲物になって☆』と告げる言葉は、正に死刑宣告。きゅぴーんっ!!と怪しく光る天狼の朱い眼光に絶叫するみちる達 後に整備兵達は告げる……『天狼のメインカメラって……確か蒼いよな…?』どうやら搭乗者から、影響をかなり受けたようだ…。 「タケル、天狼の性能ってどうなんだ?昨日ある程度は聞いたけど、大ざっぱな感じだったからな。」「えっと…確か天狼は、『地上戦』を目的とした機体で、オレみたくアクロバットを重視した戦いとは違い、地上での接近戦を重視した性能です。ぶっちゃけると、突撃前衛・強襲前衛・迎撃後衛向きな機体なんです。」「けど、確かYF-23って機動砲撃戦も高いんだろ?」「ハイ、だからあらゆる意味で接近戦に強いんです。…そんな理由もあって、まりもちゃんにはピッタリな機体でもあるんです。」「成る程…鬼畜の秘密・その1だな。」タケルの説明を聞いて納得する孝志孝志の呟きを聞いた他のメンバー達も、顔を青ざめながら頷く。 「そして、不知火・改とは違って、肩部はスラスターユニットが付いてません。代わりに新開発中のサブウェポンシステム『リヴァイヴ・ボックス』を装着してます。」「『リヴァイヴ・ボックス』?なんだそれは?」タケルの口から出て来た新開発中の『リヴァイヴ・ボックス』に質問する碓氷大尉 「『リヴァイヴ・ボックス』は、簡単に言えば、『肩部型多目的装甲』で、その目的によって中身のサブウェポンを変更出来る装甲です。例えば、肩部に小型ガトリングガンが内装されてたり、レーダーや通信関連等の装備だったり、その時の戦いに適した兵装に簡単に付け替える事が出来る装甲なんです。そして、今天狼に装着してる装甲は---」 視線をまりも達が戦うモニターに向けると--- 『クッ!!』『甘いわよ、宗像☆』『なっ!?』3対1で天狼を包囲しながら戦うみちる達しかし、追い込まれてるのは、包囲しているみちる達だった。 苦戦している中、美冴機が天狼の前方から、長刀で横一閃を入れるが---その攻撃を回避するように、背後にのけぞる形で回避するそして---天狼の両側の肩部前面が開き---不吉な物体が姿を現す。『喰らいなさいっ!!』『な、なにぃぃぃっ!?』放たれた細く幾多の光の帯その正体は『小型ミサイル』その攻撃を受けた美冴機は爆殺されてしまう。『む、宗像機…大破機能停止。』CPをしていたピアティフ中尉も、口元を引きつりながら美冴機撃墜を報告する。 「……なあ、タケル…。」「………なんですか?」「何時からミサイルが接近戦として使われる事になったんだ?」「さぁ……?ちなみに、あの装備…小型のミサイルコンテナでして…今装備してるミサイルは、キャニスター弾(散弾)でして、通常120mmに使われるキャニスター弾より大型なので、要撃級クラスにも効果的な兵装なんですけど…普通…空中で炸裂させるんですけど…」「直接ぶち込んだな…」「ハイ……まあ、キャニスター弾だから、接近で使用しても、自機には被害はないんだけど……」「あれは…無いよな…。」「………………………………ハイ。」複雑な思いで孝志の一言に同意するタケル内心美冴に同情しながら合掌していた。 『むむ、宗像少尉がやられちゃったよっ!?』『おおお、落ち着いて、遙!?まだ負けた訳じゃないわ。』『…水月………………勝てる…?』『………………………………………………ゴメンね…遥…。』美冴がやられた事で、『次の獲物は私達!?』と悟る二人。慌てる遙だが、水月の言葉を聞き『勝てるの?』と瞳を暗くして言い放つと、『無理』と素直に答え、遙に謝る水月 『それじゃ…大尉…お先に失礼します。』『コラッ!?諦めるなッ!!っていうか、私を1人にするなっ!!』諦めの境地に立った水月遙もそれに賛同し、天狼に突っ込む。 さっさと玉砕に突っ込んだ水月達を引き止めるみちるだが、本音は1人でいる事が怖くて止めたりする。『ウオォオォッ!!』『良い覚悟よ、速瀬…けど---』着剣して突撃する速瀬機だが、それに対応して、腰に納刀していた『短刀』を二本抜刀し、逆手に持つ。 『まだ甘いわよ?』『な、何!?あの剣?長刀の『半分ぐらいの長さ』じゃない!?』『危ない、水月!!』『ななな…なんなのよっ!!この攻撃!?』流れるような剣戟に慌てて防御する速瀬機水月が対応出来ない所を遙が遠隔操作で背中のガンマウントを操作して、装着していた突撃砲で天狼との間合いを放す。 「タケル、あの剣は?」「あれは『試作00式特殊近接戦闘短刀』でして、通常の65式や武御雷の00式とは違って、『通常の短刀より長く、長刀の半分の長さ』が特徴で、長さも…そうだな…分かり易く言うとカタールみたいな剣と思えば良いですよ。」「随分と短い長刀だな?」「ハイ、だから『特殊近接戦闘短刀』なんです。通常の長刀と違って、リーチは短くなりましたが、その代わりに使い易さと、剣の厚みを少し増やしたおかげで、切れ味等の耐久力も上がりましたよ。」タケルの説明を聞いて、『…欲しいな』と呟く孝志二刀流の使い手として少し興味を持つ。 「ああいう風に逆手に持てば戦術的にも幅は広がりますし、接近戦が得意な人にしたら、使い易い武器だと思いますよ?」「…だからさっきから、奇襲攻撃が上手くいってたのか…」「まりもちゃんの場合…ステルス機能も有りますからね…更に鬼畜度は上がりますよ。」「成る程…」後に全員が呟く事になる。『あの人にステルス機能付ける事自体鬼畜だろっ!?』ステルス機能を付けた事により、更に『狂犬』として磨きを上げてしまう結果になったと皆は呟く…。 『こんのぉぉぉっ!!』『そんな攻撃じゃ、当たらないわよ、速瀬。お仕置きとして…これでも喰らいなさい☆』『『----へっ?』』すると、天狼の背中から右肩へ、スナイパーライフルのような長い砲身が現れ、なにやら青白い光を銃口で輝き--- 『ファイヤッ!!』『『なっ---!?』』蒼い閃光が放たれ、速瀬機の機関部を貫く!! 「……アレ…電磁投射砲…だよな?」「ですねぇ…あれは流石にオレも知らないです。」「…香月博士と結城開発部長は何を考えてるんだ…?」「さぁ…?」流石に今回の電磁投射砲については、タケルも知らない装備だった為、唖然としていた。 勿論、こんな腹黒い事をする人物は、心当たりが有りまくるので、被害者の水月と遙に南無南無…と合掌する。 そして、タケルの心の中では『アレ…ガンキ○ノンですか?』と呟いたとか… 『フフフッ…♪あ・と・は・伊隅だけね?』『あああ……っ!!』ガシャン…ガシャン…と、死のカウントダウンのように聞こえる天狼の足音に、ビクビクと生まれたての小鹿のように震えるみちる。 撃破されたヴァルキリーズメンバーも、モニター越しでその恐怖に震えていた。 『やっぱり伊隅が残ったわね…私は嬉しいわ☆』『あああ…有り難う御座いますっ!!』『本当に嬉しいわ…私のエモ…教え子として誇らしいわよ?』『今エモノと言おうとしましたねっ!?』『………………………………………………………気のせいよ?』『間が長いっ!?』本音がポロリと言ってしまうまりもに激しく動揺するみちるその後の間の長さに更に恐怖度は上がる。 『伊隅…貴女の腕がどれだけ上がったか…見定めてアゲル♪』『それは良いんですが………その短刀で恐怖度煽るのはやめて下さいっ!!』マトモな言葉が出たかと思えば、シャリンシャリン…と短刀の刃と刃を擦って鳴らす仕草を見せて、恐怖度を格段と上げる。 『伊隅…私から言える事はひとつ…私 の 為 に 逝 っ て ☆』『いやぁぁぁぁっ!!!?』 まりもの死刑宣告を告げられ、恐怖をさらけ出すみちる。 ……誰だって、あんなセリフ吐かれれば、脅える。 『ンフフ~☆タケルと温泉旅行に…2人っきり…☆』『それが原因っ!?』どうやら今日のまりもの上機嫌は、例の如く『誰かさん』の仕業だった…『ちょっと…みちる助けてくる。』『……前島大尉…まぁ……気をつけてな…』本来ならば、訓練とはいえ、敵を助ける行為は『緊急時以外』は認められないのだが…みんな、その事に責める者は居なく、そっと正樹の勇気ある行動に敬礼する。 『ウフフ…これでトドメ…何?』『えっ?』伊隅機を追い込む天狼だが、味方機である前島機からの妨害を受け、難を逃れる伊隅機 『みちるっ!!オレが大尉を引きつけるから、その間に倒せっ!!』『正樹…貴方…』正樹の勇気ある行動に心を打たれ、好感度がキュンキュン急上昇するみちる 「ああ~…伊隅大尉?」『な、なんだ白銀…?』突然のタケルの通信に戸惑うみちるだが--- 「まりもちゃん倒したら、豪華な『結婚式』用意しま『絶対だぞっ!!白銀っ!!』…頑張って下さい。」タケルの一言でどん底まで下がってた士気が、限界値突破する程上昇するみちる…愛の力は偉大だ…。 『面白くなったわね…来なさい、伊隅!!』『勝ってみせるっ!!』先程の一方的な戦いとは一変し、嘘のように激しいバトルを繰り広げていた。 若干、正樹はテンションは下がるが、みちるのサポートをしながら、激戦に参加していた。 そして--- 「……………結局はドローですかい…。」「「はうぅぅ…。」」シミュレーター訓練を終える両チーム達 結果は第四中隊の勝利だったが、乙女の戦いはドローだった。 優勢はやはり天狼だったが、自己犠牲覚悟の突撃で天狼を拘束する前島機の不知火・改そして長刀でトドメを刺しに向かう伊隅機だったが、『リヴァイヴ・ボックス』のキャニスター弾で反撃するまりも結果、天狼を貫く結果にはなったが、超接近からのキャニスター弾だった為、お互いに撃破される。 拘束していた前島機も二機分の爆発を受け、結果大破判定を貰い、戦闘不可能になる。 結果、乙女の戦いは引き分けになった。 「トホホ~…温泉旅行が~…」「ハイハイ、今度都合の良い時に行きましょうね。」「ほ、本当っ!?」「本当本当。但し、みんな一緒ですよ?」「うん、それでも良いわっ!!」パァ~…☆っと落ち込んでいた雰囲気から一転、タケルの一言で復活するまりも「ハイハイ、伊隅大尉も元気出して。ドローですから結婚式は無理ですが、『新婚旅行』ぐらいなら用意してあげますから。」「ほっ、本当っ!?」「本当ですって。あくまでも国内限定ですよ?」「それで充分よっ!!」みちるも現金な事に復活する事になる。みちるの後ろに居たまりかも『新婚旅行…正樹と新婚旅行…☆』と呟くが、仲間達は華麗にスルーする。 「しばらくはっちゃけなかったから油断していた…。」今回の黒幕の所業に果てしなくヘコむタケルだった…。あとがき--- しばらくぶりです、騎士王です。 今回の新開発中の電磁投射砲ですが…ガンキャ○ンです。通常時は長刀と同じように銃口を真下に向けてしまってますが、使用時は270度反転し、ガン○ャノンモードになります。 背中にはバックコンテナ(弾倉)が装備されて、その横に砲身が専用のガンマウントで繋がってる状態です。