2000年・1月15日--- 第二帝都城・とある一室 「ふぅ…本当に凄い機体ね…不知火・改」「本当だよねぇ~♪」シミュレーター訓練を終えて、ドリンクを飲んで休憩する千鶴・美琴・慧の三人現在、彼女達の戦術機の腕を向上させる為の秘密訓練がされていた。 通常のシミュレータールームとは違い、地下のとある一室に作られた特別なシミュレータールームが作られていた。 このシミュレータールームは、機密性の高い時に使う特別なシミュレータールームで、現に純夏やクリスカ・イーニァなどが使っていた機密情報の高い場所だった。 最近はタケルやまりもが武御雷の改良機のテストパイロットに使ってたりしていたが、今回は彼女達の存在が機密性の高さ故にこの部屋を使用していた。 「ハイ、お疲れ様~☆榊さん、不知火・改はどうだったかな?」モニター室から出て来た純夏が、千鶴達の下にやって来る 「凄い…その言葉しか出てこないわ…性能も武御雷に匹敵するし、機動力に関しては、それすら超えるわ。」「そうでしょ♪あっ、ちなみに途中から現れたCPUの不知火・改がいたでしょ?アレね…実はタケルちゃんと冥夜のデータなの。」「嘘っ!?あの途中から現れたCPUって、タケルと冥夜さんのデータなのっ!?」「…ヤッパリね…なんとなくそんな感じしてたわ…」「…気づいてたの?」「勿論よ。一応私も白銀や御…冥夜と一緒に訓練兵から居たもの。白銀や冥夜の癖や動きの特長を知ってるから、出て来てすぐに解ったわ。」「流石は榊さんだねぇ~。伊達に第207Bの分隊長やヴァルキリーズの中隊長にもなっただけあるね~…」千鶴に関心する純夏達護衛に付いていた静も関心するように驚いていた。 「それは凄い。あの伊隅大尉率いるヴァルキリーズの中隊長に付くとは…」「ヴァルキリーズの中隊長に関しては、あくまでも緊急の臨時ですよ。白銀は凄乃皇に搭乗してたからなれなかったし、冥夜が中隊長になってもおかしくはなかったし…伊隅大尉や速瀬中尉達に比べたら、私なんてまだヒヨッコですよ。」己の力量を驕らず、未だに中隊長として未熟と口にする千鶴 尊敬するヴァルキリーズの先任達を思い出し、ギュッと拳を握り締める 「それでも千鶴殿がヴァルキリーズの中隊長になった事には変わりはない。それに緊急の臨時とはいえ、その経験は貴女の良い経験となる。今はただひたすらに精進有るのみですよ。」「ありがとうございます、静さん」静のアドバイスを聞き、少し肩の力を抜く千鶴 「そういえば、タケルも中隊長なんだよね~?」「…突撃前衛長兼中隊長…」「なによそれ…無茶苦茶じゃない…」「けど…事実なんだよね…」呑気に美琴がタケルも中隊長だという事を口にすると、慧・千鶴・純夏が呆れ顔で様々な感想を呟く。 「しかし、タケルも中隊長として日々成長してます。最近の作業を見ますと、とても努力をなさってます。突撃前衛長に関しては、元々その適性値が非常に高かった事は事実ですしかといって冥夜を突撃前衛長にするには経験が足りないですから、仕方ないかと…」「ほぇ?静さん、タケルちゃんの事知ってるんですか?」「ハイ、勿論知ってます。タケルがループしたその日からずっと知ってました。初めてこの世界に来た時も、私は謁見の間で父と一緒に隠れて殿下を護衛してましたし、その時に話も聞きました。そして、タケルが一人で出歩く際や椿や沙耶と一緒に任務をしていた時も、影で私が護衛に付いてました。」「へぇ~…そうなんだ…ところでタケルちゃんはその事知ってるの?」「ハイ、知ってます…とはいえ、タケルが知ったのは、無現鬼道流を習い始めた頃ですけどね。」静が影でタケルの護衛をしていた事に驚く純夏達「それじゃあ、白銀の護衛が居ないんじゃ…」「それならば大丈夫ですよ、千鶴殿普段は部隊のみんながそばに居ますし、もし単独で行動する際は、私の部隊の者に頼んでますのでご安心を。」「そうでしたか…」静の説明を聞いてホッとする千鶴達 「但し、タケルが重要な任務の際、命に危険があると考えられる場合のみ、私が護衛にまわりますので、その際は千鶴殿の護衛を一時的に離れますので御了承下さい。勿論代わりに私の部隊の者や、場合によっては父が護衛につきますのでご安心下さい。」「わ、わかりました。」(…紅蓮大将が護衛か…違う意味で危険な気がする…)タケルに護衛が付いてる事を聞いて安心する千鶴しかし、純夏は千鶴に紅蓮大将が護衛に付く可能性がある事に対して、『はっちゃけて色々と大変そうだ…』と不安が募る。ぶっちゃけ、まさしくその通りだったりする。 後に千鶴は語る…『もう…紅蓮大将が護衛に付く事は…ハアァァァ~…』…だそうだ。 「そういえば純夏さん、タケルはどうしたの?」「タケルちゃん?タケルちゃんは今日は忙しいから来れないんだって。」「ええぇ~!?」「……何故?」タケルに会えない事に本気で残念がる美琴そして何故来れないかを聞くと--- 「今日からまた教官職始まるんだって。今日は『入隊式』だから朝から早くに出てったよ。」「し、白銀が教官!?」「あ~…そういえばそんな事やってたねぇ~。」「しばらくやってなかったから…忘れてた。」タケルが教官職をやってた事に驚く千鶴美琴・慧に関しては、しばらくやってなかった為忘れていた。 「なんでも今回のメンバーには風間少尉や、あの真那さんの部下だった神代さん達が居るらしいよ?」「か、風間少尉が!?」「ああ~…あの月詠さんの下にいた三人組だよね、確か。」風間少尉や神代・戎・巴少尉を教官する事に驚く千鶴美琴も『三人組のメイドさんだよね~♪』と一人で納得するが、他の者達はそんな事知らない為『メイドさん?』と頭を傾げる。 一方、時を同じくタケルは--- 「ハァ…全く…先生ときたら…」「まさか今日が入隊式とは…予定外だったわ…」ガックリと頭を下げながら荷物を運ぶタケルとまりも今日は遂にやってきた入隊式だったのだが、例の如く香月博士のイタズラによって、大慌てに用意をする事になる。 「大丈夫ですよ、大尉一応時間迄には間に合いますし」「助かったよ、みんな」「いえ、当然の事です。」今回は第四中隊のみんなの協力もあり、何とか用意が間に合った。 「突然朝っぱらから電話が来たかと思えば、『今日入隊式だから、早めに来てね~♪』…だもんな…」「……タケルから話を聞いた時は背筋がゾワッて来たわ…。」「……ご愁傷様です、大尉」タケルとまりもに襲いかかって来た突然のイタズラに対して唯依達が深く同情してくる。「それにしても、なんか懐かしい感じがしますね…。つい数ヶ月前まで通ってたこの廊下を通ると、訓練兵の頃に戻った感じがしますね。」「うん、その気持ち良くわかる♪」「今他のみんなが居ないのが残念だけどね。」「ウム…全くだ。」訓練兵時代の事を懐かしく思い出す正樹・まりか・佳織・唯依 純夏や美冴達と共に学び、あの騒がしかった日々を懐かしい廊下を歩きながら笑みを浮かべながら思い出す。 今となっては、良き思い出の一つしかし、その思い出は---とてもたいせつで、かけがえのない、かがやかしいものがたりのひとつだった---「さて着いたぞ、懐かしき我が教室に」タケルが冗談っぽく口にするが、タケルやまりもも久し振りの教室に笑顔を浮かべていた。 「ん、んん。ヨシ、入りますよ、まりもちゃん」「ええ。」先程の笑みから『教官』としての顔に変わるタケルとまりもそしてガララッとドアを横に開け、教室にタケルとまりもだけが入室する。 「起立!!…敬礼っ!!……着席!!」教官最初の命令を出すまりもその姿は『鬼軍曹』に相応しい姿へと変わる。 「只今より、衛士訓練学校第207訓練中隊の入隊式を行う。私は貴様達の教官をする『白銀まりも軍曹』だ。厳しく鍛えてやるから、覚悟しておけっ!!」威厳のある言葉と険しい表情に数人程が一瞬怯む。 「そして此方の方が斯衛軍から来て頂いた白銀武大尉だ。白銀大尉は私と共に貴様達の教官として接するが、普段の授業は私が、戦術機関連に関しては白銀大尉がみっちりと鍛え上げてくれる。感謝しろよ?白銀大尉は日本でも十指に入る程の衛士だ。『白銀の守護者』と言えば貴様達とて噂程度には聞いた事もあろう。」『し、白銀の守護者!?あ、あの人が噂のっ!?』『は、初めて見た…』まりもの自己紹介で一気に注目を浴びるタケル『白銀の守護者』の渾名が一般人にまで噂が広がっていた事に驚くタケル勿論まりもや教室の外で話を聞いていた真耶達も内心その事に嬉しく思っていた。 「では、白銀大尉みんなに自己紹介をお願いします。」「ハイ。日本帝国斯衛軍第17戦術機甲大隊・第四中隊長を勤める白銀武大尉だ。貴様達の入隊を心から歓迎する。」敬礼しながら自己紹介をするタケルやはりタケルはタケルらしく、柔らかな態度で訓練兵達に接する。 「先程まりも軍曹が言った通り、俺の担当は戦術機関連を教える事になる。勿論時折他の授業を教える事もあるが、その時は厳しくいくぞ。」此処までは普通に進むタケルしかし、まりもや教室の外で待機する真耶達は、この後に起ころう出来事に不安を持っていた。 「あと授業中や訓練中はダメだが、休憩時間やプライベートな時は『白銀』でも『タケル』でも呼んでかまない。あと、固っくるしい態度も休憩時間やプライベートの時は禁止なあっ、だけどあくまでもこの部隊内だけな。他に人が居た場合は一部除いて駄目な。」やりやがった。予想通りに『馴れ馴れしく行こうZe☆』と宣言したタケルに唖然とする新生訓練兵達隣にいたまりもは勿論、教室の外に居た唯依や真耶が頭を抱え込んで『ヤッパリやったか…』と呟く正樹達に関しては、笑い声を抑えながらも、目尻に涙を溜めながらこらえていた。「あ、あの…質問宜しいでしょうか?」「許可する、なんだ?」タケルの言葉に戸惑い、『神代 巽(たつみ)』が挙手し、質問する。 「何故…と聞いて宜しいでしょうか…?白銀大尉は私達の上官であり、教官です。例え休憩時間やプライベートの時とはいえ、何故そのように呼ぶ事を許可するのですか…?」巽の質問に『ヤッパリか…』と予想していたタケル「まあ、確かにその通りだ。まあ、これはオレの個人的な『頼み』でもあるし、これからの事を考えた理由でもあるんだ。」「理由…とは?」「まずひとつは…まあ、オレの個人的な理由だが…オレは固っくるしいのは苦手でな、せめて休憩時間やプライベートの時は、固っくるしいのは無しにして欲しいんだ。」「「「はっ?」」」訓練兵全員が唖然とする。あまりにも予想外な一言にポカンと口を開けて茫然とする。 「次の理由は…香月博士にある。あの人は更に固っくるしいのが大の苦手でな、もし香月博士を前にして固っくるしい態度を貫いたら………まあ、可哀想な結末が待っている。」「…確かに」「「「ええっ!?」」」再び予想外の理由で驚愕する。前回同様に『国連軍じゃない私達には関係無いのでは…?』と呟こうとすると…「…今貴様達が考えてる事…博士には通用しないわ。無事に衛士になりたいのなら、白銀大尉の言うことを聴いた方が賢明よ…。」「「「ええっ!?」」」まりもの一言で『白銀大尉の冗談ではない』と理解する訓練兵達「最後の理由は、お前達と『絆』を深める為だ。訓練兵と教官という立場では、どうしても『壁』が出来てしまう。お前達だって、オレが『教官』として接し続けてれば、必ず『壁』を作り、悩みや本音を打ち上げる事が出来ない。勿論此処は軍隊だ、甘えなどは許される場所ではないが、それでも悩みなどを抱え続け、部隊に影響が出てからでは遅いんだ。」タケルの言葉を聞き、驚愕しつつ、何処か納得してしまう自分に戸惑う訓練兵達「ならば、休み時間やプライベートの時ぐらい、固っくるしいのは無しにすればいい。オレだってお前達の事をもっと知りたいし、理解したい。そしてお前達が悩み苦しんでる時に、背中を押す程度ぐらい力を貸してやりたいんだ。その為、お前達との『絆』を深める為、休憩時間やプライベートの時だけでも良いから、固っくるしい態度は止めて欲しいんだ。」「「「………」」」流石に今まで出会った厳しい教官達とギャップが違った為、全員が唖然とするしかし、最後の理由については、確かに納得出来る理由だった為、『成る程』と納得する者もいた。 (ヤッパリ唖然としてるな三バカの奴等も阿呆ヅラしてらぁ♪)そして、馴染みのある三人・神代 巽 巴 雪乃 戎 美凪を見て、心の中でニヤニヤするタケルしかし、なんだかんだ言っても『前の世界』の三人は信頼せし真那の部下だったし、『元の世界』では、マヌケでアホなキャラだったが、何処か憎めない奴等だった故に、再び出会った事に嬉しさを感じる(そして---風間少尉お久しぶりです…)そして『前の世界』ではヴァルキリーズのメンバーであり、部隊の中で潤滑油のような存在だった『風間祷子』に出逢う。 そして心の中でタケルは祷子に対し、『これから宜しくお願いします』と呟く 「さて、これからお前達の教材や軍服などを配布する名前を呼ばれた者は前に出て、取りに来い。」「「「ハッ!!」」」「それじゃ…みんな待たせて済まないな。荷物を中に入れてくれ」教室の外で待っていた冥夜達が荷を持って封を開ける。 (あれが冥夜様…)(綺麗です~☆)(頑張ってあの方に仕えるに相応しい衛士になってみせる!!)巽・雪乃・美凪の三人は冥夜を見て魅了され、いずれ仕える事に意欲を燃やし、強い決意を見せる。「次、風間祷子」「ハイ」まりもに呼ばれ、教材や軍服を取りに行く祷子その向かう途中--- 「えっ…きゃあっ!?」「危ないっ!!」偶々床板から飛び出ていた釘に躓き、転倒しそうになる祷子だが、そばにいた正樹やまりかがとっさに助け、大事に至らなかった。 「大丈夫?」「ハイ、おかげ様で…どうもありがとうございます、少---ッ!!」助けてくれたまりかや正樹にお礼を言おうとする祷子顔を上げて二人に礼の言葉を口にすると---硬直する「ありゃ…床から釘が飛び出てますね、大尉」「危ないな…正樹、済まないけど、其処の戸棚の中にカナヅチあるから打ち込んでくれ。」「了解」祷子から離れ、戸棚からカナヅチを取り出して飛び出ていた釘を打ち込む正樹 そして何故かぽ~っと正樹を追うように視線を追う祷子 「ん?」そしてその視線に気付くまりかそして乙女の警報がブンブン鳴り響きだす。 「ゴホン!!風間訓練兵!!」「あっ、ハイ、スミマセンでしたっ!!」ワザとらしく咳を出し、名前を呼ぶまりかそしてやっと正気に戻った祷子は、頬を赤らめながら教材等を受け取る「全く…正樹ったら…」ブツブツと小さな声で呟くまりか先程の祷子の様子を見て『ライバルが増えたっ!!』と悟る「大尉、終了しました。…けどなんで、あんな所から釘なんか飛び出てたんですかね…?」「まあ…多分アレだ。去年お前達が使ってた時に出たんだろ?…主に純夏の『どりるみるきぃ』な時とか…」「ああ…そうかも知れませんね…。」釘が飛び出てた原因を予想するタケル過去に純夏が教室で男子達に『どりるみるきぃぱんち』を出した事が何度かあり、それが原因と考えると、唯依・佳織が納得するように苦笑いする。 その後、全員に教材等を配り終わると、冥夜達は教室から退室する 「さて、次は各所属の小隊長を決める。」そしてまりもが今回の各所属の小隊長の名前を呼び出す。 「まずは…斯衛軍所属…神代巽訓練兵!!」「ハッ!!」「貴様は只今を持って、『第207訓練中隊・A小隊』の小隊長を命じる。」「ありがとうございます!!」斯衛軍所属の方は巽が選ばれるそして次に帝国軍所属の小隊長が呼ばれ、最後に国連軍所属の小隊長の名前が呼ばれる 「国連軍所属・第207訓練中隊・C小隊の小隊長は---『ナスターシャ・イヴァノワ』訓練兵!!」「ハッ!!」「只今を持って、貴様は第207訓練中隊・C小隊長を命じる。」「ありがとうございます!!」(ナスターシャ・イヴァノワか…ロシア辺りの奴みたいだけど---)国連軍所属の小隊長に任命されるナスターシャタケルはナスターシャの名前を見て、『ロシア系か?』と考えると---(なんだろ?なんか訓練兵にしては『不自然』だな…?)ナスターシャに対して疑念を抱くタケルだった…