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No.20954の一覧
[0] 禁魂 (銀魂×とある魔術の禁書目録)【完結】[カイバーマン](2012/04/19 12:46)
[1] 第零訓 とある戦場の出逢い[カイバーマン](2010/12/20 09:26)
[2] 第一訓 とある侍の人間賛歌[カイバーマン](2011/03/05 00:26)
[3] 第二訓 とある少年少女の終業式[カイバーマン](2010/09/30 00:01)
[4] 第三訓 とある暇人の昼食時間[カイバーマン](2011/03/05 00:24)
[5] 第四訓 とあるジャンプ読者のジャンプ談義[カイバーマン](2010/08/26 12:53)
[6] 第五訓 とあるデパートの変態諸君[カイバーマン](2010/09/08 10:39)
[7] 第六訓 とあるトリオのキノコ狩り[カイバーマン](2010/09/08 10:37)
[8] 第七訓 とある男女の分岐道[カイバーマン](2010/09/14 06:29)
[9] 第八訓 とある苦悩の超能力者[カイバーマン](2010/09/17 16:58)
[10] 第九訓 とある運命の歯車回転[カイバーマン](2010/09/19 22:31)
[11] 第十訓 とある波乱の夏休み[カイバーマン](2010/10/17 23:47)
[12] 第十一訓 とあるお人好しの世話焼き[カイバーマン](2010/10/05 10:25)
[13] 第十二訓 とあるダメ教師のただれた恋愛[カイバーマン](2010/10/10 15:53)
[14] 第十三訓 とある女達の鉄拳制裁[カイバーマン](2010/10/23 23:19)
[15] 第十四訓 とある泥沼の修羅場地帯[カイバーマン](2010/12/20 22:30)
[16] 第十五訓 とある二人の友人作り[カイバーマン](2010/12/20 22:32)
[17] 第十六訓 とある因果の成り行き[カイバーマン](2010/12/20 22:33)
[18] 第十七訓 とある四人の追走劇[カイバーマン](2010/11/15 14:12)
[19] 第十八訓 とある空腹者の速攻解決[カイバーマン](2010/11/22 00:50)
[20] 第十九訓 とある女好敵手の誕生[カイバーマン](2010/12/20 22:34)
[21] 第二十訓 とある一同の夜中解散[カイバーマン](2010/12/20 22:36)
[22] 外伝Ⅰ とある五人目の主人公[カイバーマン](2010/12/24 23:36)
[24] 外伝Ⅱ とあるクリスマスイブの珍道中[カイバーマン](2010/12/24 23:35)
[25] 幕間 とある禁魂の新章突入[カイバーマン](2010/12/30 18:28)
[26] 第二十一訓 とある異界の来訪者[カイバーマン](2011/01/06 12:49)
[27] 第二十二訓 とある教師達の世間話[カイバーマン](2011/01/31 23:57)
[28] 第二十三訓 とある不穏の殺意[カイバーマン](2011/02/07 23:56)
[29] 第二十四訓 とある各々の衝突合戦[カイバーマン](2011/02/13 10:35)
[30] 第二十五訓 とあるシスターの山崎ぱん祭り[カイバーマン](2011/02/26 07:38)
[31] 第二十六訓 とある淑女のティータイム[カイバーマン](2011/02/26 07:36)
[32] 第二十七訓 とある秘密の憎悪[カイバーマン](2011/03/25 20:40)
[33] 第二十八訓 とある道化の目的地[カイバーマン](2011/03/17 15:20)
[34] 第二十九訓 とある銭湯の常識違反[カイバーマン](2011/03/25 20:41)
[35] 第三十訓 とある愛の形[カイバーマン](2011/04/03 17:58)
[36] 第三十一訓 とある江戸っ子の引っ張りだこ[カイバーマン](2011/04/08 15:47)
[37] 第三十二訓 とある熱中内の公開処刑[カイバーマン](2011/04/19 19:16)
[38] 第三十三訓 とある犬猿の実態[カイバーマン](2011/04/27 19:14)
[39] 第三十四訓 とある鍵の道しるべ[カイバーマン](2011/05/02 02:52)
[40] 第三十五訓 とある神の使い達[カイバーマン](2011/05/06 15:30)
[41] 第三十六訓 とある私の嫌いな奴[カイバーマン](2011/05/10 07:14)
[42] 第三十七訓 とある長所の短所[カイバーマン](2011/05/22 16:25)
[43] 第三十八訓 とあるリーダーのちびっこ部隊[カイバーマン](2011/06/12 22:17)
[44] 第三十九訓 とある思いやりの勘違い[カイバーマン](2011/06/12 21:55)
[45] 第四十訓 とある守護者の狂信者[カイバーマン](2011/06/17 20:43)
[46] 第四十一訓 とある異能の力[カイバーマン](2011/07/02 20:01)
[47] 第四十二訓 とある広場の縮小戦争[カイバーマン](2011/07/22 23:19)
[48] 第四十三訓 とある右手の幻想殺し[カイバーマン](2011/07/22 23:20)
[49] 第四十四訓 とある一つの世界変動[カイバーマン](2011/08/02 14:15)
[50] 第四十五訓 とある過敏の保護者[カイバーマン](2011/08/02 13:59)
[51] 第四十六訓 とある貴様の大切な存在[カイバーマン](2011/08/11 11:24)
[52] 第四十七訓 とある山崎のシスター祭り[カイバーマン](2011/08/25 21:44)
[53] 最終訓 とある物語の終着地点[カイバーマン](2011/08/25 21:46)
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[20954] 第二十七訓 とある秘密の憎悪
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/25 20:40
一方通行は番外個体と共に隣に住んでいる芳川の所に上がっていた。
必要最低限の物しか置かれてない殺風景な部屋で二人はくつろいでいる。
キッチンで彼女が鍋を掻き混ぜて、“ナニか”を作ってる様を眺めながら。

「……やべェな……成り行きで連れてかれちまったがコイツが目的だったか……」
「やばいってなにが? アンタの顔?」
「顔面ミンチにされてェのかクソアマ、オマエアイツが今何やってるかわかンねえのか?」
「料理作ってんでしょ、お腹空いてるミサカの為に」

座布団の上で伸びをしながら座って呑気な事を言っている番外個体に、隣で座ってちゃぶだいに頬杖を突いていた一方通行がだるそうに答えた。

「ちげェよバカ、ありゃあ“兵器作ってンだ。俺達を抹殺する為に兵器作ってンだよ」
「え、なに? あの女料理作ってる振りしてミサカ達を殺そうとしている魂胆? なにそれ凄い燃えてくるんだけど」
「そりゃ燃えるだろうな、胃の中が灰になるまで燃え尽きるわ。口に含んだ瞬間爆発する可能性もあるかもしれねェな」
「あなた達さっきからなに失礼な事言ってるの?」

グツグツと煮えたぎる鍋を掻き混ぜながら、後ろで物騒な会話を始めている二人に芳川が振り向いた。

「あの時から何年経ってると思ってるのよ、私は私でちゃんと料理の練習してるの。もうあなた達に核兵器だのバイオテロだのクラスターボムなど言わせないわ」
「そう言って何度俺とアイツを病院に搬送させやがった、こちとら何度も生死彷徨ってンだよ誰かのおかげで」
「だからあの時はまだ未熟だったのよ……今は大丈夫だから、私を信じなさい」

澄んだ瞳でそう断言する芳川に一方通行はますます不安な気持ちになる。自分で大丈夫だと言う奴に限ってロクな事にならないのだ……。

「おいバカ女、アイツがなンか出して来たらまずオマエが最初に食え」
「え、食べていいの?」
「毒見しろ」
「あ~別にいいけど~? こう見えて毒の耐性は普通の人間より高く設定されてるし~。フグでもハブでも平気で食べれるから」

彼のあんまりな命令に対しても番外個体は余裕そうにうすら笑みを浮かべながら傍にあったスプーンに手を伸ばす。もうなんでも来いといった臨時態勢だ。

するとタイミングよく。

「おまたせ」

芳川がキッチンから何かが盛られた皿を持ってやってきた。
ちゃぶ台にコトンと置かれたそれを一方通行と番外個体は同時に覗きこむ。

「おい芳川……なンだ“コレ”……! 何処の星から生まれた物体だ……!」
「ビーフシチュー、会心の出来でしょ」
「うわ~凄いキレイな色~。死ぬほど臭いけど」
「ライトグリーンに輝くビーフシチューなンて聞いた事ねェよ! オマエやっぱ何も変わって……てかクセェンだけどマジで!」

ちゃぶ台の真ん中に置かれたソレを一方通行はビシッと指差した。
一般のビーフシチューなら本来シチューは茶色だが、彼女が作ったコレはエメラルドの様に光り輝いている合成着色料をふんだんに使ったとしか思えないカラフルな色だ。湯気が紫なのも意味不明。
しかもコレまた臭いもキツイ。腐ったドブ川の臭いと寂れた便所の臭いと足して10でかけたような臭いだ。つまり下手すれば致死量に至るぐらい酷い。

「やっぱなにも変わってねェしむしろレベル上がってンじゃねェかオマエ! バイオテロどころかバイオハザード起こすぞコイツは!」
「ほう、だったら食べてみなさい、同じ事が言えるかしら?」
「そのドヤ顔、スッゲームカつく!!」

満足げな芳川に一方通行が荒くなっていると。
番外個体は一人果敢にもこのビーフシチュー(自称)に持っていたスプーンを伸ばし始めたのだ。

「じゃあ一口いただき~」
「あァ!? オマエそれ食うとか正気か!? 食らったら人体が内部から破裂するかもしれねェンだぞ!?」
「私の料理を北斗神拳みたいに呼ばないで、傷付くわ」
「別に見た目も臭いも最悪だけどさ~。一応味付け出来てんならミサカは余裕で食べれるから、言ったでしょ毒でもなんでも胃の中に入れるって」

そう言って番外個体はケラケラと笑い飛ばした後、スプーンで一口すくってパクッと口の中に入れてしまった。

すると

「うぐ!」

口にソレを含んだと同時に彼女はバタッとちゃぶ台の上に倒れた。










「……オイ」

うつ伏せになって倒れた番外個体を一方通行は恐る恐る揺すってみる。ウンともスンとも言わない。
そして全く反応なしと見るやいなや芳川は一人ボソッと

「かかったわね……バカな子」
「は!?」

計画通りだと言う風に呟く彼女に一方通行は番外個体の頭を揺すりながらバッと顔を上げる。まさか彼女は元々……。

「安心しなさい、この料理は元々私が“こうなるよう”に調理したのよ」
「はァァァァァ!? つう事はオマエ確信犯だってェのか!」
「しょうがないじゃない……。だってあなたにはまだ男女の交際を覚えるのは早いと思ってるし、それにこんな品の無い子と……許さないわよ、あの人が許しても私は許さないわよ」
「だからそれ誤解だっつってンだろうが! そンな下らねェ事で毒殺してンじゃねェ!」

罪悪感の欠片も無い様子でぶっちゃける芳川に一方通行は頭を手で押さえながら首を横に振る。まあさすがに死んではないが……一応呼吸はしている様だ。

彼が一人うなだれていると、芳川はライトグリーンの物体を皿ごと持って、キッチンの流し台に捨てた。それでもまだキツイ匂いが完全に消えたわけではないが……。

「さすがにもうこんな失敗はしないわよ。あなた達に散々言われてたのが悔しくてね、料理はちゃんと覚えて来たのよ。基礎を覚えたし味付けも覚えた、今ならあの人より上手く作れる自信があるわ」
「ウソくせェ……」
「ほら、あなた用に作った料理はちゃんとここにあるから見てみなさい」
「ざけンな、誰が食うかそンなも……ン?」

キッチンに置いてあった別の皿を芳川が自信ありげに持ってくる。
一方通行は思いっきりしかめっ面を浮かべてどうやって立ち去ろうか考えていたが、目の前に出されたそれを見て目を丸くした。
見た目はちゃんとして臭いも無い、紛れも無いビーフシチューだったのだ。

「……アイツが作ってたのか?」
「あなたいい加減にしなさい、どうしてそう人を信じる事が出来ないの?」
「いやオマエだけは特別信用出来ねェンだよ、料理に関しちゃ。つーかマジで作ったのかコレ、オマエが? まごう事無きノーマルじゃねェか、いつものオマエはどうした?」
「だから言ってるじゃない もうあなた達に文句付けられたくないの、これが私の全力全開よ」
「オマエの全力全開か……当てにならねェな……」

ちゃぶ台に置かれるはごく普通なビーフシチュー。いつまで経っても疑ってくる一方通行にそろそろ芳川がイラつき始めていると、彼は置かれていたスプーンを取って遂に食べる態勢に入った。

「まあいい、オマエのまともに食えるようになったかどうか。ここで見極めてやる」
「なんか欲しい調味料あるかしら? ソースとかマヨネーズみたいな、そういうの入れると美味しくなるって聞いたわよ」
「じゃあ解毒剤よこせ」
「そろそろ怒るわよ」

自分の向かいに立って睨みつけてくる芳川を気にせずに一方通行は恐る恐る彼女が作ったというビーフシチューに手を伸ばしてスプーンで一口すくってみる。
色合いもいい、臭いも無い。何処からどう見てもまともなビーフシチューだ。

「……普通だな」
「見とれてないで食べなさい」
「見とれてねェ、ヤバいかどうか確かめてェンだ」

一口取ったビーフシチューを一方通行はしげしげと眺めた後、覚悟を決めたかのように口に入れた。
そして口の中でクチャクチャ噛みながら芳川に向かって。

「まあアレだな、オマエが料理をまともに出来りゃあアイツもオマエの事……」

一方通行が彼女になにか言おうとしたその時。

「ぐは!!」

低い呻き声を上げたと思ったら、番外個体と同じ様にガタン!とちゃぶ台の上に顔をつっ伏した。

















「あ、あら?」

目の前で死んだように気絶した一方通行を見て、一人ポツンと立たされた芳川が困惑の色を浮かべる。

「お、おかしいわねこんな筈じゃ……」

結局彼女はなにも……。


変わっちゃいなかった。






























第二十七訓 とある秘密の憎悪
























そろそろお昼の時間に達している頃、坂田銀時はひょんな所で拾った白井黒子と共に自宅のアパートの前へと来ていた。

「学園都市にもこんなボロっちい物件があったんですわね……」
「おーおー、ガキのクセにませた女子寮に住んでる奴に比べればそりゃボロっちいよなぁ」
「誰から見てもボロっちいですわよ、まごう事無きボロアパートですわ」

目の前に佇む老朽化したアパートを見上た後、黒子は顔をしかめっ面で隣にいる銀時に振り返る。

「もっと良い場所があったのではなくて? 常盤台の教師がこんな所に住んでるなんてわたくしとしては恥ずかしい思いですの」
「何処の学校の教師やっても安月給には変わらねえんだよ。金がねえんだよ、泣きたくなるぐらい金がねえんだよ」
「別に安月給でも一人暮らしでしたらもっとまともな所に住めるのではなくて?」
「あん? 誰が一人暮らしつったんだ」
「ん?」

黒子と会話をしながらスクーターを階段の下に置くと、銀時は一人さっさと2階へと上がる階段を昇り始める。

「ガキと二人で暮らしてんだ、お前よりちょっと年上のガキ」
「うげ! あなたまさかの子持ちだったんですの……!? しかも二人暮らしという事は奥方には逃げられ……」
「ちげぇよバカ、拾い子だ」
(拾い子?)

階段をカツンカツンと昇りながら後ろから驚いた表情でついて来る黒子に銀時はだるそうにツッコむ。

「あんな憎たらしいガキが俺の遺伝子を受け継いでるわけねえだろ。俺のガキだったらもっとまともないい子に育ってる筈だわ」
「しかし驚きまわしたわね……あなたにそんな人物がいたとは。一度その者の顔を拝んでみたいものですわ」
「どうせあの色白は家にいるから普通に拝めるだろ、ここ来れば年がら年中24時間ツラ拝めまくれるわあんな奴」
「なんですの、もしや複雑なお子さんで?」
「複雑も複雑、思春期まっただなかの引きこもりだよ。ったく少しは家出ろっての……あ、でも最近はよく家出てるな、もしかしたらアイツも遂に外に興味を持ち始めたか? いや嬉しいね全く、これでダチの一人や二人家に連れて来たら赤飯でも炊いてやるか」

髪をボリボリと掻き毟りながら銀時がそんな事を言って二階に上がると。

「フゥ~……我ながら自分のダメさには絶望するわね……」
「……なにしてんだお前?」

アパートの手すりにもたれ、タバコを吸いながらたそがれている芳川がいた。
銀時が呼びかけると彼女はやるせない表情でこちらに振り返る。

「ちょっと失敗しちゃって……」
「レンタルビデオ店で借りたビデオが、近い内にお茶の間のテレビで放送されるんだと知った時ぐらい落ち込んでるじゃねえか」
「まさかもののけ姫があんな頻繁にテレビでやるとは思いも……いやそうじゃないわよ、なに言わせんのよ」

芳川がタバコを咥えながら律義にノリツッコミをしていると、銀時の後ろから黒子が顔を覗かせて来た。

「どうしたんですの、さっさと前行って下さいまし」
「あら? なにこの子、あなたまさかあの女と既に子供を……」
「末恐ろしい事考えてんじゃねえよ」

目を細めて黒子をしげしげと観察し始める芳川に銀時は死んだ目をしながら唸る。

「コイツはアレだ、ウチの学校のガキ」
「学校……ああ、そういえばあなた今先生やってるのよね、てことはあなたの生徒さん?」
「まあな、クソ生意気なガキだからクリフト並に扱い辛いけどよ、モンスター見つけたら即ザラキ連射するからたまんねえよ」
「初めまして、白井黒子ですの」

銀時と芳川の会話に割り入り、黒子は銀時の前に出て彼女に挨拶する。
それに芳川もタバコの煙を吹きながら軽く頭を下げた。

「芳川桔梗よ、よろしくね。学校ではこの人ちゃんとやってる?」
「いえ全く、学校だろうが何処だろうが好き勝手暴れて周りに迷惑掛ける事しかやってませんのよこの男は」
「そう、何も変わって無いようで安心したわ」
「いや変わってもらわないとこちらは困りますの」

何故か安堵する芳川にブスっとした表情でツッコミを入れると、黒子は銀時の方へ小さな声で尋ねる。

「……この方はあなたとどんな関係ですの?」
「……まあ昔から俺と馴染みの深い女だ」
「ふむ……」
「お前にはどうでもいい事だよ、じゃ、俺着替えて来るわ」

顎に手を当て考察する黒子を尻目に銀時は芳川をすり抜けて自分の部屋のドアを開けて中に入った。
着替えたらまず黒子の話を聞いて、その後黄泉川の探索を始める。今日も今日で忙しい一日になりそうだ。

「ちょっとそこで待ってろ、パパっと着替えてくるから」
「了解ですの」
「覗くなよ」
「死にたいんですの」

ドアの隙間からこちらに目を出しながら何を言うかと殺意のこもった言葉を黒子が放つと銀時はドアをバタンと閉める。
アパートの廊下にいるのは今黒子と芳川だけになった。

「……あなたはあの男の事をよく知っているんですの?」
「そうね、一緒に住んでた時があるから大体は知ってるわ、大体はね」
「ほ~……い、一緒に住んでた!?」

タバコの火を手すりにすり潰して消しながらあっけらかんとぶっちゃける芳川に黒子は目を丸くする。

「一緒に住んでたとは一体どういう事ですの!? まさか……!」
「まあ一時期“そういう関係”だったって事」
「な、なんですと~……」

思わぬ情報に黒子は開いた口が塞がらない。あの万年ちゃらんぽらんな人間にもまさか“男女の関係”という物が存在していたとは……。

「あの男と交際してた上に同棲までしていたんですか……。よく耐えられましたわね……」
「そうね、でも意外に悪くなかったわよ。彼といると退屈しないし、それにあの子もいた」
「あの子?」
「今思えばあの人と一緒に住んでた時期が多分一番幸せだったのかもしれない。ま、もう遅いかもしれないんだけど……」
「……」

遠い昔でも思い浮かべるかのようにしみじみと語り出す芳川に黒子は考察するように目を細める。

「そういやさっきあの男が言ってましたわね。拾い子とかなんとかと一緒に住んでいると……」
「あら? 彼にあの子の事は聞いてるの?」
「さっきちょこっと教えてもらっただけですの、よければ詳しく教えてもらえないでしょうか」
「別にいいけど……どうしてそんな事を聞きたいのかしら?」

何故か若干警戒する目つきになる芳川だが黒子は動じずに真顔で口を開く。

「あの男は謎が多過ぎるんですの、ですから少しでも情報が欲しいんですわ。あの男が一緒に住んでいる人物の事も知りたいんです」
「それなら本人に直接聞いたらどう?」

芳川の尋ねに黒子は顔をしかめて彼女から目を背ける。視線の先は銀時がいる部屋のドアだ。

「あの男が正直に喋るなんて思えませんの……」
「それはどうかしら、あなた直接本人にそういう話を聞こうとした事ある?」
「どうせ無理だとわかってますし、時間の無駄ですわ。はぐらかせられるのがオチですの。口を開けばロクでも無い事しか言いませんしねあの男は」
「はぁ……」

キッパリと言う黒子を見て芳川は深くため息。全く信用されていない銀時に対してでもだがこのツインテールの少女に対しても少々呆れているのだ。

「ダメ元でもいいから一度聞いてみなさい。あの人は答える気があるならちゃんと答えて上げるわ」
「何処まで答えてくれますの?」
「あなたがどれぐらいあの人に信用されているかによるわね、あの人があなたの事を深く信頼しているんだったら。きっと色々と語ってくれると思う」
「うげ……」

芳川の回答に黒子は口をへの字にして頬を引きつらせる。普段からぶつかり合ってる仲である自分と彼にそんな信頼関係など欠片も無い。こっちも彼の事を信用していないし、あちらも自分の事を信用しているわけではない。これはかなり時間が必要か……。
黒子が頭を悩ませていると芳川の方からふと質問が飛んでくる。

「そういえば……あなたはどうしてあの人の事を知りたがっているの」
「え? ああまあ……ただ気になってるんですのよ」
「気になってる?」
「実はわたくしが心から愛してやまない崇高なる先輩がおられるのですが、その御方とあの男はとても良好的な間柄なのですの……ホントお姉様はどうしてあんなバカ天然パーマと……」
「へぇ……(お姉様? てことは女性よね? この子まさか同性相手に……いや聞かないでおきましょう、愛の形は人それぞれだし)」

彼女の話を聞きながら芳川は心の中で深く頷く。野暮な事は聞くものでない、彼女なりの気遣いだ。

「ま、たまに喧嘩しているのを目撃しますが。一切人を寄せ付けないあのお姉様にあそこまで近づけるのを許されているのは異例中の異例、下手すればわたくしよりもあの男はお姉様と親しい間柄なんですの……自分で言っておいて腹立ちますわね実際……」
「あの人、一応仲のいい生徒がいたのね、良かった」

イラっとしている黒子をよそに芳川は口もとに小さな笑みを浮かべてみせる。
さすがに生徒全員に対し目の前の少女の様な険悪な関係では無いのか……。
芳川が少しホッとしていると、黒子はジト目でまた話を続ける。

「噂によればわたくしが入学する前の年で、ある昼休みの時に学校のグラウンドに二人で落とし穴を掘り、常盤台の女王様として君臨されている心理掌握≪メンタルアウト≫を突き落として、穴底に落ちた彼女を見下ろしながら二人揃って腹かかえてゲラゲラ笑ってたのを見たと学校の先輩から」
「完全に悪ガキの発想ね……子供と一緒になにやってんのよあの人……」

余談だがその後、心理掌握はそれがトラウマとなり、己の保身の為に護衛と称して一日中多くの取り巻きを従わせるようになったとか……。
ホッとしたのも束の間、芳川がまた深く呆れていると黒子は彼女の隣に移動して手すりにもたれながらポツリと呟く。

「ですが、わたくしの知る限りそんな活発的で自由奔放なお姉様を見た事は一度もありませんの。それどころかわたくしに対しては“なにか隠してる”所もありますし、悩みの一つも打ち明けない、わたくしに気を使ってる節がありまして……」
「……」
「お姉様はわたくしの事を大切な友達と言ってくれますが……」

おもむろに黒子は顔を上げて真上に昇っている太陽に目を細める。

「わたくしに対してお姉様はなんらかの壁を作っている、それだけは確実ですわ」
「……“その壁”が、その子とあの人の間には無いって事ね」
「あの男は一年前、お姉様のクラスの担任だったらしいんですの。でもそれだけで教師と生徒がそこまで仲良くなるわけが……それにあのお姉様があんな無法者の類人猿と」
「なんであの男があの人に自分よりも深く信頼されているのか、それを知りたいって事でよくて?」
「……そんな感じですわ」

上を見上げるのを止めてこちらに振り返って来た黒子に、芳川は白衣のポケットから新しいタバコを取り出しながら結論を答えた。

「それ、単なる嫉妬かもしれないわね。あなたがあの人に」
「……そうかもしれませんわね」
「自覚はしているのね……」
「自覚しているからこそ一層この現状が腹立たしいんですわ……」
「そう」

沈んだ表情を浮かべ心中を吐露する黒子を隣に、芳川は口に咥えたタバコに火を付け、フゥ~と煙を吐く。

「あの人がその子と壁が無いのは、あの人がもうとっくにその子の作った壁をぶち壊したんでしょうね」
「それをどうやったのかを、わたくしが知りたいんですわ」
「あの人ってそういう人なのよ」

芳川は淡々と口を開いていく。

「いくら壁を作っても作っても、あっという間に壊していって、最後にはもう目の前に立っている。そしていつの間にか手を取って道を示してくれる、あの人はそういう事を平気でやっちゃう人」
「……」
「あなたもいつか、あの人と一緒にいればわかってくるわ」

タバコを口に咥えたまま芳川は、銀時いる部屋の隣にある部屋のドアをガチャリと開ける。
そして最後に手すりに背を預けている黒子に振り返り。

「侍はまだ死んでないって事をね」

そう言葉を残し。

芳川はドアを開けて部屋の中へと消えた。

黒子は彼女が最後に言った言葉の意味がわからない。

「……」
「おい」

彼女が消えて数秒後、彼女の隣の部屋にいた銀時がドアを開けて出て来た。
服装はいつもの空色の着物の着流し。

「待たせたな、まあ話は中でしようや。こっちも後があるから手短にしろよ」
「わかってますの……」

黒子は珍しく素直にそう返事をすると、銀時はまた部屋の中へと戻る。彼女もまたドアを開けてその中へと入っていった。










そして思わぬ光景に目を丸くする。

「あなたの事ですからどうせ部屋の中も散らかってるとは予想していましたが……」

玄関で立ちすくみながら黒子は唖然とした表情を浮かべた。

銀時の部屋はかなり小さな部屋だが、あちらこちらに乱暴に物が散乱しており足の踏み場もない。しかも何故か部屋の真ん中に一本のネギが畳に突き刺さっているのが不気味だ。

「まさかコレほどとは……」
「アイツなに散らかしてんだか、しかもいねえし。ホント最近よく出かけるなアイツ……俺に隠れてなんかしてんじゃねえか?」
「それとなんでネギが刺さってますの?」
「生えて来たんじゃね? ウチってたまにキノコ生えるからネギも生えるんだろ」

呑気に銀時はそんな事を言いながら部屋の奥へと進んでいく。黒子もそれに便乗して靴を脱いで彼と共に部屋へと入っていった。

「失礼しますわ」
「何処にでも座って構わねえぞ」
「ネギが生えるぐらいの悪環境の中で何処に座れと?」

そう言いながら黒子は渋々一番散らかってない部分を物色してその辺に腰を下ろしてきちんと正座する。
銀時も彼女の向かいにあぐらを掻いて座った。

「で? お前の話ってなに?」
「それより客人に茶の一杯でも出せませんの?」
「悪いな、客には出すが生意気なチビガキにはウチの茶は飲ませねえって決まってんだ」
「あ~そうですの、じゃあ結構ですわこのファッキン野郎」

平然と悪態を突いた後黒子は真正面に座っている銀時をジーッと観察してみる。
やはりどう考えてもこの人物に人を惹きつける能力があるとは思えない。しかし……。

「お姉様がなんであなたなんかと……」
「で? あのガキの話だろ。アイツなんかあったのか?」
「……ああそうですわね」

イライラした様子で呟く黒子の一言に気付かなかった様子で銀時が尋ねて来る。
彼女はいよいよ本題に入った。

「実は今朝、お姉様が真撰組という組織の一人に身柄の拘束を要求されたんですの」
「真撰組? 確か最近こっちに来た幕府直属の警察組織だっけか?」
「ええ、武装警察真撰組、抵抗されば斬り捨て御免もいとわない最低野郎共ですわ」
「おいどういうこったそれ、アイツがなんでそんな連中から目ぇ付けられたんだよ」
「それが……」

珍しく真剣な表情で尋ねて来る銀時に黒子は神妙な面持ちで事の核心を伝える。

「お姉様は……「攘夷浪士である桂小太郎と繋がっている」という疑惑がもたれている様なんですの……」
「……は?」

それを聞いて銀時は眉間にしわを寄せて腕を組んだ。彼にとっては予想外の出来事だったらしい。
黒子は彼の態度を見ながら話を続ける。

「お姉様自身はそんな事は絶対に無いと断言してましたわ。わたくしもそれを信じています。所詮真撰組など頭が空っぽの侍の集団、下らない戯言ですの」
「あいつが……」
「まさかあなた、お姉様が桂と繋がっていると思っていますの」
「……」

今度は黙ったまま何も言わない。それに対し黒子は若干苛立ちが募っていく。
しばらくして銀時は重い口を開いた。

「無くはねえかもな……」
「な! あなた正気ですの!?」
「まさかアイツが攘夷志士と繋がっているとは思ってねえよ、けどアイツが危ない橋渡ってる可能性はあるかもしれねえ」
「……それはどういう意味ですの……」

予想外の答えに黒子は戸惑った表情を見せる。今目の前にいる男はいつもみたいにボケてもないしふざけてもいない、真剣な顔を浮かべる彼の顔を見てそれはわかる。

「アイツは昔からある奴を探してる、俺と会う前から、俺と会った後もな。そいつに会う為ならアイツは平気でテメーの命も賭けるのもいとわねえ」
「!?」
「例え危険分子と言われている人物と干渉してもだ。前にアイツとメシ食った時、そんな事言ってた」
「どういう事ですのそれ……! 一体お姉様はなにをそこまで探そうとしていますの!?」

こちらに身を乗り上げてきた黒子に銀時は答えない。しばらくして髪をボリボリと掻きながら彼女から目を逸らして

「わりぃな、こっから先は他言無用だってアイツにきつく言われてるんだわ」
「……!」

ソレを聞いて黒子はキッと唇を噛む。
つまりコレ以上聞くなという事だった。
この男と彼女だけの秘密。何も知らない自分には関係ない……。
だからかかわるなと……

「ふざけないで下さいまし……!」
「あん?」
「あなたはお姉様に信頼されているようですが、元よりわたくしだってお姉様と何処までもついて行く覚悟を持っていますの……! お姉様の過去を一つや二つ知ろうともわたくしがお姉様から離れるとでも思ってますの……!?」

ワナワナと震えながら黒子は銀時を睨みつける。この男はいつも彼女に特別視されている、それはわかっているし理解している。
だからこそ、自分も彼の様に彼女の心を知りたい。彼女の隣に立ちたい。
黒子の啖呵を黙って聞いていた銀時は小指で耳をほじりながら彼女の目を見る。

「それ本気で言ってんのか?」
「はん、お姉様をあなた以上に愛し尊敬の念を抱いているこの白井黒子に対してよくもそんな事ほざけますわね。少々わたくしよりもお姉様との付き合いが長いからって調子に乗ってるんじゃありませんのことよ」
「へ……」

挑発するように笑って見せる黒子に銀時はニヤリと笑みを返す。

実の所、彼は彼女の事を唯一信頼している所がある。

それは彼女の御坂美琴に対する想いだ。

「ホントテメェはクソ生意気なチビだわ……ま、アイツのダチなら当然か」
「ゆくゆくは恋人になる運命ですの」
「あ~そうかいその辺は応援しねえけど頑張ってくれや」

今度は企み笑みを浮かべた黒子に銀時は気のない返事を送るとハァ~とため息を突いた。

「アイツの約束破る事になるけど仕方ねえか……」
「ええ、最初からそうしろですのこのすっとこどっこい」
「言っとくがお前もコレ聞いたら絶対に周りに話すんじゃねえぞ」
「わかってますの」

銀時が最後に念を押すと黒子は軽く頷いて了承する。
そして銀時は、ゆっくりとその話を始めた。

彼女の。御坂美琴が隠す過去を

「7年前、この都市で大規模なテロがあったのを知ってるか?」
「ええよく存じて上げてますわ、その時は私もまだ幼かったですが。ジャッジメントの支部でその事件の経緯を読んだ事がありますの」

銀時が言っているのは過去に起こった有名なテロ事件。その時黒子はまだ幼稚園に通ってた年だが彼女はその事件の事をよく知っている。

なにせこれは学園都市で起こった“最初の攘夷テロ事件”であり、過去最大級の被害をこうむった恐ろしい虐殺ショーだったのだから。

「攘夷戦争で負けたばかりの攘夷浪士達が突如この街の中心部にあるターミナルを武装して襲撃。狂気に駆られ、捨て身の覚悟で攻めて来た彼等によってその場にいた多くの人間や天人の命が奪われたと」
「おまけに連中は最後の最後で天人とターミナルを道連れにせんと自爆テロまで起こしやがった。ま、それでも一年後にはターミナルはあっという間に修復されて、天人も今の所わらわらとこっち来てやがる。結局なにも変えられなかったんだ、ただテメーが満足する為に暴れただけ。胸糞悪ぃ事件だよホント」

ターミナル襲撃事件。これが学園都市で最初に起こった忌々しい攘夷志士のテロだ。
戦に負けた彼等は天人に屈服した幕府によって犯罪者として扱われた上に生きる目的さえも失い、追い込まれた彼等はなにを思ったのか同じ星を故郷とする人間達にまで牙を向けた虐殺事件。
犠牲者は天人や人間を含み過去最多。その場に偶然いただけの一般人までもが巻き込まれ、多くの血が流れたという話である。

「しかしその事件とお姉様になんの関係がありますの?」
「あいつがここに来たのが何年前か知ってるか?」
「……いえ、お姉様はわたくしに対して昔の話は絶対にしないので……」
「7年前だ」
「! それって……!」

7年前という事はさっきの事件と重なる。それはつまり……

「そん時あいつは小学校に上がりたての年、当時は今と違って簡単に気軽に人と話す事が出来たとか言ってったけな? クラスの奴等とすぐ友達になれたとか」 
「……」
「学園都市に来て数カ月目。学園都市に慣れさせる為、我が子を預けて不安に思っている親の為に、アイツのいる学校は保護者同伴である場所へ研修見学に行く事になった」
「ある場所……」

銀時の話に震える声で黒子は呟くだけ、次に彼が何を言うのか大体予想は出来ているからだ。7年前、そこで血の惨劇が繰り広げられたあの場所。

「天人と江戸を結び、学園都市を作る種となった巨大建造物、ターミナルだ」
「……なんて事……!」
「よもやその日に攘夷志士が学園都市の心臓部であるターミナルに襲撃に来るとは夢にも思わなかっただろうよ」

ガクッと落胆する黒子に銀時は壁にもたれながら眉間にしわを寄せる。
偶然が重なって生まれた惨劇、その時、御坂美琴の歯車が大きく狂い始めたのだ。

「お姉様もそこに行ってしまわれたのですか……」
「予定通りクラスの連中と親と一緒に行った」
「……」
「そん時クラスの中で生き残ったガキは、アイツ一人だ」
「……え?」
「……他のガキはみんな殺された、目の前でその光景を見たってアイツが言ってた」
「く……!」
「幸いアイツは親に連れられて死の物狂いでターミナルから逃げだせたらしいけどな。そりゃあ地獄見たいな光景が目に広がってたんだとよ」
「天人よりもよっぽどクズ野郎ですわ、攘夷浪士って連中は……!」
「……」

黒子は怒りで震えながら頭を手で押さえ、冷静になって落ち着こうとする。
だがこの腹の中で煮えくりかえる様な憎しみは治まりようがない。
攘夷浪士は……罪のない女子供さえも殺したというのか……。
銀時は彼女を何処か遠い目で見つめた後、ボリボリと後ろ髪を掻く。

「……お前、アイツがなんでレベル5を目指していたのか知ってるか?」
「いえ……」

彼の問いに黒子はうつむきながら首を横に振る。そんな事一度も聞いて無いし聞かされてもいない。
銀時はあぐらを掻いた状態で膝に頬杖を突きながら、ふとこんな事を彼女に聞いた。

「あの7年前のターミナル襲撃事件、まだ首謀者は特定されてないらしいな」
「ジャッジメント支部の事件経歴にもそう載ってましたわね、首謀者は多くの同胞が自爆テロで死んでいくのを背におめおめと逃げたという情報だけ……迷宮入りとなり捜査もとっくのとうに打ち切られているとか」
「……なんでアイツがレベル5になっちまったのか、それはな……」


おもむろに銀時はスクッと立ち上がる。そしてこちらを見上げる黒子に。

銀時は静かなトーンで告白した。














「そいつを“殺す”為だ」


























御坂美琴は今、海原と共に人ごみを掻き分けながら街中を歩いていた。

「おかしいわね、黒子にはこの辺だって言われてたんだけど……携帯も通じないしなにやってのかしらあの子」
「それにしてもたくさん買いましたね、コレ全部食べるんですか?」
「足りないよりましかな?と……すみません荷物持たせちゃって」
「いえいえ、こんな事朝飯前です、今は昼飯前ですが」
「あ~もうそんな時間なのか……」

海原の両手には大量の菓子やらアイスが入ったビニール袋が握られている。美琴の右腕にもそれが一つ。どうやらコンビニで必要以上に差し入れを買って来てしまったようだ。

「まあ黒子なら食べ切りますよ、あの子、甘い物好きですし」
「その子が御坂さんのお友達で?」
「ええ、私なんかと友達になってくれた大切な……」

海原の問いに美琴が答えようとしたその時。

「!!」
「どうしたんですか?」

突如彼女はバッと後ろに振り返る。
後ろには自分と同じ学生がわいわいと騒いでいるだけ。
だが美琴は感じたのだ。

背中にナイフを突き立てるような、禍々しい“殺気”のこもった視線を

(……誰?)

隣に海原が心配そうにしているのもよそに美琴はキョロキョロと後ろの通行人一人一人を観察していく。
あの人でもないこの人でもない。一体どこから、なにを目的で自分を……。

(“あの人”だわ……)

そこで美琴は遂にその人物を捉える。
それはさっきからこちらを眺めながら一人人ごみの中をずっと立っていた。

高校の制服からして男性であろう、おかしなことに雨でも降って無いのに傘を差し、そのおかげで顔はよく見えない。
だが顔の下半分は一瞬だが見えた、その男は

笑っていた。

(なによアレ……)

その笑みを見た途端美琴は背後からゾクッと恐怖感を覚える。

(あんな男、私は知らない……なんで私を)
「御坂さん」
「え?」 
「誰か知り合いでもおられたんですか?」
「ああすみません! ただの見間違いでした……ハハハ」

鋭い視線に変わっていた美琴に海原が話しかけると彼女はいつもの彼女に戻った。
海原の方に向き直ってまた前に向かって歩き出そうとする。
そしてチラリと顔だけ、あの男がいた背後に振り返る。

男の姿はもうどこにも無い












あとがき
どうも、先日買った「侍道4」で、剣術のテクニックより先に「夜這い」のテクニックをマスターしてしまった作者です。こっちの刀よりあっちの刀が暴れまくり。ごめんなさい

今回はおまけの一方さんと美琴。銀さんと黒子の話でした。
なんかめちゃくちゃ久しぶりにシリアス書いた気がします、最初のギャグから急転直下。まあこうしないと物語進まないからしゃーないんですけどね。
ブログでも言ってましたがそろそろ禁書の新刊発売ですね、表紙に出ていたフレンダ似の女の子がいったい何者なのか早く知りたいです。

P・S 「聖☆おにいさん」を知ってる人が結構いてくれて何故か嬉しかったです。
これはアレか? どさくさに出しても……いやすみません


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