1998年8月12日 早朝 『帝都』東京 霞ヶ関 某所
各省庁が立ち並ぶ官公庁街の一角、目立たぬ背の低い建物の一室に複数の男達が集まっていた。
部屋の調度は機能的を通り越して、殺風景と言っても良い。 唯一、壁に立てかけられた大時代的な大時計だけが、奇妙な存在感を出している。
「・・・いかんな、このままでは」
背広をきちんと着込んだ、見るからにキレ者と言った印象の男が、手にした資料の束を見つめて呟いた。
男の周囲に居る同様の印象を受ける複数の者達も、一様に頷く。 商工省から来ている高級官僚の一人が、呻くように言う。
「阪神の重工業地帯を失うのは痛い、いや、帝国の重工業生産の15%を失う事になる、致命的だ。 既に九州と瀬戸内、併せて14%を失った」
「それに、既に兵庫県は播磨工業地帯も壊滅だ、阪神工業地帯は半数近くを失っている。 実質的に6.3%を失った、併せると今までに20%を失っておる」
帝国内の主な無重工業地帯は、京浜、中京、阪神、北関東、瀬戸内、東海、北陸、北九州。 この内、北九州と瀬戸内は全滅した。 阪神も4割を失っている。
総生産額7890億円(※)の内、実に1600億円相当、20%以上の国内生産拠点を喪失したのだ。 痛くない筈が無い。
商工省の官僚に続き、大蔵省の高級官僚も苛立たしげな声を上げる。 工業地帯と共に喪われた、地方自体にまで及んでいる。
「それだけではない、近畿以西の人口は帝国全体の4割に達する。 この地方から得られる所得税、消費税、法人税・・・ 一般会計歳入の15%が駄目になった」
「来年度の一般会計歳入は、大よそで35%の減収入だ。 翻って、一般会計歳出は今年度比で15%の増加・・・ 50%もの財政赤字だ!」
「国債は? 市場状況はどんな様子だ?」
大蔵官僚の吐き捨てる言葉に、内務省の官僚が確認する。 その質問に商工省の官僚が答えた、自虐気味だった。
「芳しくないな、格付けがS&P(スターズ&プアーズ)で、AAからBBBに2段階落ちた。 ムーディーズではBaaにまで落とされている。
売りが入っているよ、外国市場は元々発行額が比較的小さいが、国内市場で売りの気配が濃厚だ」
「拙いぞ、それは拙い。 国債での公債金収入は、最早半分近く―――昨年度で48%に達する。 このままでは・・・」
「デフォルトか? その前に国が破産して、戦争を継続できんな。 戦おうにも、武器弾薬に食料、衣料品・・・ 物はあっても、国家がそれを調達出来ない、資金が無い」
内務省、大蔵省、商工省、それぞれの官僚が顔を見合す。 その表情は暗い。
その時、それまで黙っていた外務省の官僚が隣に座る人物に声をかけた。 軍服を着て、参謀飾緒をぶら下げた将官―――陸軍准将だった。
「・・・軍としては、どうなのかね? 阪神の工業地帯を、守り抜けるのか?」
「これ以上、BETAに言い様にやられて見ろ、市場は完全に帝国を見放す。 国債だけでは無い、企業の株価―――日経平均株価も、大幅な下落状況なのだ」
「この辺で、何かしらの成果を見せておかないと。 本当に帝国はBETAに滅ぼされる前に、借金で国が潰れる」
「この所、ウォール街が活発な動きを示している。 帝国企業の株を積極的に買い漁り始めている」
相次いで、内務省、大蔵省、商工省の官僚も口を開く。 もう、半ば哀願状態だ。
そんな官僚たちを横目で見ながら、カミソリのような印象を受けるその軍人は、冷ややかな口調で言った。
「・・・そんな事は、言われずとも判っておる。 ふん、君等が怖がっているのは、『闇財布』―――特別会計に、手を付けられたくない為だろうが」
『特別会計』―――その言葉に、居並ぶ高級キャリア官僚たちが押し黙る。
お互いを探るような視線で伺う様は、『生き馬の目を抜く』以上の陰湿で激烈な競争(愛の引っ張り合いと押し付け合い)を生き抜いてきた、帝国官僚団の姿を物語っている。
その様子を見た参謀准将―――国防省の、どこぞの部長クラスか―――が、更に冷ややかな視線を向けて言い放った。
「何が、『借金で国が潰れる』だ。 特別会計収入は、一般会計収入の約4倍だ。 今年度は一般会計収入3200億に対し、特別会計収入1兆3200億。
特別会計の歳入と歳出との差額は、想定で897億円の黒字だろう? 本年度の国防予算は430億円、その約2倍だ。 どこが『金が無い』と言うのだ?
ふん―――そろそろ、首が危うくなってきているのではないかな? このご時世だ、やり過ぎは身を滅ぼすぞ?」
誰も、何も言わない。 言えば、その言葉に責任が付いて回る。 官僚とは、省利省益を確保する場合以外に、絶対に余分な言葉を言わないものだ。
軍の方も、その様な事は判っている。 大体が、軍自体が帝国で最大にして、今や最強の官僚組織なのだから。
「阪神は、防衛して見せよう。 軍としてもこの先、BETAの動向は不明だ、軍需生産拠点はなるべく確保したい。
それとは別にだ―――特別会計、国防省にも『事業特別会計』の枠を振り分けろ。 内務省や商工省、農林水産省、法務省・・・ 美味しい思いをしてきたのだろう?」
各省庁の官僚達が、顔を見合わせる。 その様子を余所に、准将は言葉を続けた。
「見た目は確かに、ウォール街の介入―――ホワイトハウスの介入は頂けない。 それは理解した、軍としても国家統制には協力しよう」
今更、ペンタゴンの完全な従属下に入る事は出来ない。 それでは軍内部が、特に皇道派の馬鹿共が、完全に暴走してしまう。
(ふむ・・・ ここはひとつ、『国連派』の連中を引き込むのも手か。 親米派と言うより『知米派』、親欧派と言うより『知欧派』なのだ。 防波堤位にはなろう)
多くを望みはしない、第一、帝国の舵取りは我々が行う。 政府も政党も、結局は党利党益に走る輩だ。
今の首相は多少骨があるが・・・ 選挙で負ければ、その座も霧散する。 政党の大綱には反対できない。
いっその事、帝国全土に対する戒厳令を前倒しで出すか。 そう思った。 進言してみるのも良いだろう。 今回の会合の結果を見れば、いずれ国家統制は必要なのだから。
首相は抵抗するだろうが、構わん。 今や軍の意向に逆らってまで、この難局を乗り切ることなど不可能なのだ。 京都が良い見本になる。
(・・・京都か)
「その前に、京都だな・・・ 何時まで居座るつもりなのか、あの小娘は」
そう思った矢先、内務官僚が忌々しげに呟いた。 内心の驚きを隠し、ポーカーフェイスで周りを見渡す。
「お陰で、大規模な避難計画が実施できん。 京都の民間人移送の為に、客車ダイヤを大幅に振り分けねばならん」
「当初の予定では、兵站物資を運んだコンテナ車輌に詰め込む、だったか? 窒息死せんか?」
大蔵官僚が、准将に聞いてきた。 詐欺じみた数字の操作には天才的な才を発揮する大蔵省だが、こう言った事はからきしなのだ。
相変わらず表情を崩さずに、准将は言い放った。 内心で、少しは過去の事例位調べておけ、そう毒づきながら。
「扉を開けておけばいい。 この季節だ、凍死する心配は無い。 脱水症状は起こすだろうがな―――何、既に前例を作った国がある」
「どこだ?」
「ナチス・ドイツと、スターリン統治下のソ連」
その例えに、並居る官僚達がバツの悪そうな、しかし罪の意識すらない笑みを浮かべる。
その笑みを自覚したからだろうか、自分を大きく見せようと思ったからだろうか、一斉に京都への批判を口にし始めた。
「計画では、既に最終段階に移行出来ていたのだ、それを・・・」
「ふん、『民の安全を、最大限に保証せよ』か! よりによって、陛下へ奏上するとは! 政府も政府だ、腰砕けな!」
「周りの国を見てみろ、そんな甘い態度で国土を守れた国家があるか!?」
そんな官僚団の様子を、最後まで冷ややかな表情で見つめていた准将が、最後に言い放った。
「だからこそ、だ。 政府も政党も、ましてや元枢府など、頼るに及ばん。 この国は、我々が守る」
軍部統制派高級将校団と、各省庁の実務キャリア官僚団。
帝国において真に国政を動かすのは、政威大将軍でも元枢府でも、政府でも政党でも無い事を自覚しているのは彼らだった。
国防省への帰途、車中から新しい『帝都』の様子を眺めていた准将が、不意に副官に確認した。
「・・・中部軍集団へは、命令は出したのか?」
「はい、閣下。 本日、軍務局より数名派遣されております」
「そうか・・・ ならば、良し」
それっきり沈黙してしまう。 しかし内心では反対に、様々な事案に対する思考を展開させていた。
(・・・今更、政治的な駒には成り得ぬとは言え、見捨てるには国内の影響は大きいからな、あの殿下は。
仕方有るまい、京都市内の民間人脱出までの時間は、呉れてやろう。 それで満足しろ。 その為には・・・)
現在の戦況では、南の大阪方面―――琵琶湖運河の淀川水道の防衛が、ジリ貧状態だ。 手を拱いていては、いずれ突破される。
予定では、南から誘引して北の京都へ誘い込む。 そのまま、市内と市郊外に多数設置させた定点型のS-11を複数、指向性を持たせて起爆させる。
京都は盆地だ、爆発エネルギーは開けた場所以上に、相互干渉して破壊力を増すだろう。 千年の都は灰燼に帰すだろうが、国を守る為だ、犠牲になって貰う。
だが、流石に軍上層部―――軍政・軍令の実権を握る統帥派将校団でも、数十万の民間人を諸共に吹き飛ばすのは躊躇した。
国内への影響が大き過ぎる。 それに未だ影響力を喪失していない、武家社会全般を敵に回す事にもなる―――政威大将軍も未だ、残っているのだ。
何よりも、陛下―――皇帝陛下は、お許しになられないであろう。 政治の実権は内閣に帰する立憲君主国家である帝国だが、陛下の『御不興』と言うのは政治的に非常に拙い。
その為の時間を、何としても作らねばならなかった。 狭隘な地形故にBETAの活動が不活発で、地形利用の防衛戦闘が機能している京都方面はまだいい。
では、より地形的に不利な阪神方面で時間を作る。 南の崩壊を少しでも先に引き延ばす(いや、崩壊させるのは元も子もないが)
要は、北方への誘因作戦、このタイムスケジュールを引き延ばす。 その為に、阪神防衛線を少しでも押し戻させる。
その後は、阪神に展開する第2軍をこぞって防衛線の枠内に吸収する。 守りを固め、打って出る事はしない。
ああ、一部部隊を使って誘引さす事は必要だが。
国家戦略を論じる者に、現場は見えない。 只の駒に過ぎないからだ。
逆に現場からは、国家戦略を論じる者など見えはしない。 動かされる駒であるが故に。
1998年8月12日 0830 大阪市内 第9軍団司令部
子の字型に配置された作戦室の座席。 最前列に各師団長や師団参謀長、その背後に参謀や連隊長、大隊長。 最後列に中隊長や参謀大尉。
離れた前方に、軍団長や軍団参謀長、そして軍から派遣された高級参謀と、本土防衛軍総司令部辺りから来たと言う参謀大佐。
作戦室内は殺気とも言うべき、一種異様な熱気に包まれている様に感じる。 無理も無い、ここにいる将校は、下は大尉から上は少将まで、つい先ほどまで最前線に居たのだから。
やがて、軍団作戦主任参謀の藤田伊与蔵大佐が立ちあがり、作戦内容を説明し始めた。
「ここに参集頂いた諸官には、今までの奮戦敢闘、誠に感謝に堪えぬ所で有ります。 ついては、今後の軍集団方針に伴う、我が第9軍団作戦方針をご説明する」
プロジェクターに映し出された戦略地図、そこに比我の戦力位置や動向、被害状況、勢力状況が追加されてゆく。
それを見れば一目瞭然だった、我が軍は押し込まれつつある。 既に第2防衛線は半ば以上の範囲で差し込まれ、個々の部隊間の協同が困難になりつつある。
南部―――大阪市北部沿岸地帯は、いよいよ琵琶湖運河の淀川水道前面近くまで、BETA群に押し込まれている。
第9軍団3個師団に増援の3個師団、海軍2個師団と中韓4個旅団。 海上からは第1艦隊の一部が対地攻撃を開始した。 それで何とか阻止している所だ。
北部―――京都の西、亀岡盆地からの突破阻止に必死の第1師団や禁衛師団も、被害大にして、一部の小型種を後ろに逸らす場面が多発していた。
京都市内の民間人脱出は、まだ完全に終っていない。 残す所、あと10万人程は残留していると見られている。 侵入した小型種BETAの脅威は、斯衛軍が掃討戦を展開中だ。
中部―――淀川水道沿いの京阪間は、山岳戦が展開されている。 兵庫から浸透してくる、主に戦車級以下の小型種の淀川到達の阻止。
ここの戦区は結果として最も薄く・最も広く、部隊が展開せざるを得なかった。 少しずつ、しかし確実に戦力を消耗し続けている。
現状の戦力配置は、北から第1軍の第1軍団(第1師団、禁衛師団、第3師団、斯衛第1、第2聯隊戦闘団)が京都北部から亀岡の北東側に展開。
北部山岳地帯からの浸透阻止、及び東の比良山系への突破阻止に加え、西の亀岡盆地北東からBETA群に打撃を加えるという、困難な3方面作戦を強いられている。
同じ第1軍の第2軍団(第2師団、第6師団、増援の第37、第51師団)は、亀岡盆地の出口に陣取り、BETA群の京都市内突入を阻止している真っ最中だ。
北東から第1軍団の支援を受けてはいるが、狭い地形での1点集中突破を仕掛けて来るBETA群に対し、かなりの損害を出していた。
吹田、摂津、高槻、茨木、京都の長岡京市、向日市にかけての範囲に、長く広く展開しているのは、第2軍の第7軍団(第5、第20、第27、第40師団)
この第7軍団には、大東亜連合から派遣されたインドネシア軍第2師団、米陸軍第25師団が協同部隊として共に戦線を形成している。
この方面の特徴は、小型種BETAの比率の高さだ。 山間部を縫う様に、小集団に分かれて浸透してくるBETA群に対し、最大で大隊単位、下手をすれば小隊単位で対応している。
そして大阪市北部沿岸地帯の前面。 兵庫県尼崎の杭瀬付近を最前線とし、大阪市の北部・淀川区、西淀川区の攻防戦を展開中なのが第2軍の主力である第9軍団。
現在は本来の3個師団(第14、第18、第29師団)に加え、増援3個師団(第31、第38、第49師団) それに海軍連合陸戦第1、第3師団と中韓4個旅団。
最大戦力を抱え込む戦区だが、同時に最大規模のBETA群と対峙している戦区でも有る。 既に何度か神崎川(淀川同様、拡張されている)を越されたが、何とか撃退した。
「・・・このままでは、ジリ貧だ。 海上支援は、どこまで受けられるのだろうな?」
隣に座っている師団の参謀大尉(名前は失念!)が、小声で聞いてきた。 俺が知る訳が無い、階級は同じでも向うは司令部の参謀大尉だ。
その彼が知らない情報を、前線の野戦将校である俺が、持っている訳無いだろう。 が、向うもそれは承知だろう、結局は苛立っているだけだ、それはお互い様だが。
「さあね・・・ 第1艦隊は、戦力を分けたと聞いたが?」
こちらも小声で、囁くように言う。 この場で大尉など、只のお供に過ぎない。 発言権も無ければ、ただ神妙に聞いているしかないのだから。
「・・・第2戦隊(戦艦『信濃』、『美濃』)の2隻を、伊勢水道から琵琶湖に入れたらしいよ」
反対側の隣から、一緒に上官の『お供』で来ていた源さん(源 雅人大尉)が、これまた囁くように言う。
その話だと、大阪湾に突入してきたのは第1戦隊(戦艦『紀伊』、『尾張』)と、第3戦隊(戦艦『大和』、『武蔵』)の4戦艦。
他には巡洋艦戦隊の第7、第9、第11、第14戦隊当りか? これだけで、イージス巡洋艦が7隻と、打撃巡洋艦(ミサイル巡洋艦)が6隻になる。
「いや・・・ 大阪湾へは第7と第9戦隊が入ったらしいよ。 第11と第14戦隊は、第2戦隊のお供で琵琶湖に居るらしいね」
源さんの情報―――大阪湾には、戦艦が4隻とイージス巡洋艦4隻、打撃巡洋艦4隻。 琵琶湖には、戦艦2隻とイージス巡洋艦3隻に、打撃巡洋艦2隻。
他の戦力はどうなったのだろう? 第1艦隊は、帝国海軍最強の艦隊だ。 規模だけで言えば、世界最強の米第7艦隊にも匹敵する。
「・・・航空戦隊(母艦戦術機部隊)は、和歌山沖に第1、第2航戦(戦術機母艦『大鳳』、『海鳳』、『飛龍』、『蒼竜』)が展開中だ。 1駆戦(第1駆逐戦隊)がお供している。
他に伊勢湾に第3航戦(戦術機母艦『雲龍』、『翔龍』)が展開している。 こっちには3駆戦が付いている・・・」
参謀大尉が答えてくれた。 第1艦隊は、大阪・京都両方面への支援を可能にする展開をしたと言う訳か。
玉虫色だが、仕方が無い。 どちらか一方では無く、両方面とも今は支援が必要なのだ。 その結果、支援が薄くなってしまい危険が大きいが。
「そういえば参謀、若狭湾はどうなった?」
参謀大尉に聞いてみる。 生き残った海軍連合陸戦第4旅団が、舞鶴から福井県の小浜まで後退して、北陸への防衛線を張っている筈だった。
「あそこは、今は開店休業状態だ。 BETAは、ほぼ全てが南下したからな。 今は東海軍管区の45師団(金沢)と共同で、防衛線の構築作業中だ」
小康状態、そう言って良い様だ。 少しホッとした。 若狭湾には、東北の大湊から急行した第3艦隊が展開している。
第3艦隊の主力、戦艦『駿河』艦長は、俺の叔父・周防直邦海軍大佐だ。 叔父の性格からして無茶な戦はしないだろうが、いざという時にはどうなるか判らない。
そしてもう一人、兄の周防直武海軍主計少佐は、第1艦隊の打撃重巡『青葉』の主計長として、今は大阪湾に展開中の艦に乗り組んでいる。
こちらはかなり心配だ。 打撃重巡―――戦艦と組んで対地攻撃の主役を張る艦だが、戦艦程には対レーザー防御力は高く無い。
下手な場所に喰らったら、一撃轟沈と言うケースも考えられるのだ―――自分がBETAとの戦闘の最前線で対峙すると言うのに、身内の心配かと言われそうだが。
そんな下っ端の勝手な想いを余所に、会議はいつの間にか佳境に達していたようだ。
部隊に帰ってから、何も聞いていませんでした、では済まない。 意識を会議に集中しよう・・・
「・・・最終的に、京都放棄後の防衛線の死守が絶対条件となる。 しかしその前に南部が蹂躙されては、その条件が根底から崩れる事となる」
藤田大佐の説明が続く。 確かに、京都放棄の代償は大阪湾沿岸、いや、西日本に最後に残った重工業地帯の確保だ。
国家としての継戦能力を確保する為にも、ここの重工業地帯は是が非でも確保しなければならない―――政治都市・京都は工業地帯で無いが故に。
「最終目標、琵琶湖運河の淀川水道の死守。 だが現状況では、何時防衛線が破られるか予断を許さぬ状況だ。
同時に、あと数日は何としても現状況を確保せねばならない」
場がざわめく、大半が不満の声だ。 中には小声で罵倒する声も聞こえる。 聞こえている筈だが、藤田大佐は聞こえていない素振りで話を続ける。
「最終段階への移行は、最短でもあと3日。 あと3日は何としても持ち堪える必要がある。 そこで―――本作戦を敢行する」
作戦概要がプロジェクターに映し出される。 それを目にした瞬間、各級部隊指揮官達から怒声が巻き起こった。
「作戦主任参謀! 藤田大佐! この作戦は一体どう言う事だ!?」
「馬鹿な! 今でさえ、戦線を支えるのが精一杯だ! それを、神戸まで押し戻せ、だと!?」
「そんな戦力が、一体どこに有ると言うのか!? 軍団司令部には、明確な説明を頂きたい!」
「いや、それよりもだ。 苦労して神戸まで戦線を押し戻したとしてだ、結局は数日後には放棄する。 一体、部下達の戦意をどうやって保たせればよいのだ!?」
「現実を見ろ! 先日、大阪湾で兵站物資を満載した輸送船団が沈められたお陰で、特に弾薬備蓄量は危機的な状況だ! 間引き砲撃すら制限中だぞ!」
「・・・一体、どうやって。 いや、軍集団上層部は何を考えている・・・?」
「今すぐにでも、最終段階への移行を進言する! もう、各戦線は限界だ!」
会議室内は更に混沌としてきた。 師団長の中には、藤田大佐に掴みかからんとする人も居た程だ。
大佐と言えば―――苦渋の表情で顔を歪め、無言で罵声を受け止めている。 軍団長の安達二十蔵中将、参謀長の久世四朗少将も、同様の表情で敢えて何も言わない。
「・・・宜しいか?」
中ほどの席から、挙手と共に立ちあがったのは第31師団長の佐倉幸徳少将。 どうぞ―――藤田大佐の声に頷き、ゆっくりと発言する。
「我々は帝国軍人である。 命令には忠実に従い、その責務を完遂する事がその本分である。 その点に於いて、我々は戦う事に恐れを為すのではない。
しかし、聞かせて欲しい。 今のこの状況下で―――BETAの大群に圧迫され、残り少ない兵站物資を遣り繰りしながら、それでも最前線の部下達は必死になって戦っている。
神戸までBETAを押し戻す! 大いに結構!―――それが、戦線を好転させるのであれば! しかし、数日後には放棄される? 全く無意味だ、本作戦の意味は?」
佐倉少将の発言を受け、主に師団長級の将官の発言が続く。 第39師団長の佐々助三少将が立ちあがった。
「第39師団長、佐々です。 只今、31師団・佐倉少将の仰った事は、この場の全員が理解している所である。
増援部隊である我が師団は、まだ損失は少ない方だ。 だが、第14、第18、第29師団に至っては、継戦能力の限界に近い。
成程、確かに未だ戦力の70%前後を確保してはいる。 しかし、軍事上30%の損失は『全滅判定』ではなかったか?」
続いて、第49師団長・竹原季三郎少将。
「我々の増援3個師団だけでは、攻勢に出るなど夢のまた夢だ。 一体、軍司令部は第9軍団前面のBETA群の数を把握しているのか?
軍団司令部は、それを理解して作戦を立案しているのか?―――理解に苦しむ!」
師団長達の『弾劾』は続いた。
「第29師団長、神村利道少将です。 一言・・・ クソ喰らえ! 以上!」
遂には俺の師団の師団長、森村有恒少将まで顔を主に染めて、立ち上がった。
「・・・私は、1万名以上の部下将兵の命を、陛下よりお預かりしている。 なればこそ、私の判断一つ間違えれば、無為に部下を死なせる事を承知している。
その判断を下す大元、根源たる事項が、非常に不明瞭極まる! 指揮が出来ぬ指揮官とは、是即ち単なる大量殺人者に過ぎぬ!」
その声は壇上の藤田大佐では無く、ましてや安達軍団長や、久世参謀長に対して向けられた声ではなかった。
脇に控え、先程から冷笑している参謀飾緒をぶら下げた高級将校―――『帝都』から来た、参謀大佐に向けられていた。
その、見た目にいやらしい感じのする参謀大佐が、藤田大佐の代わりに壇上に立った。 ゆっくり周囲を見渡し、傲岸さを湛えながら言い放つ。
「・・・是非とも、諸官には御理解頂きたい。 これは近畿防衛のみならず、帝国全体の防衛、ひいては帝国の浮沈に関わる作戦なのですぞ」
皆が一瞬にして判った。 この大佐、軍集団の所属じゃない。 前線の参謀将校に、こんなタイプはいられない。
いや、本土防衛軍総司令部の所属でも無い。 恐らく統合幕僚総監部か、国防省の統制派高級将校だ。
皆の嫌悪の表情を余所に、その大佐の『演説』が続く。
「一局面の戦闘には、それを統括する戦術作戦があり、その戦術作戦の上位にはその戦域の戦略作戦がある。
然るに、戦略作戦の上位には全体を見通す大戦略が存在する。 その大戦略とは、国家戦略策定に従属するものであります。
今回の『作戦』とは実に、この国家戦略に基づいた結果、策定された戦術作戦である事を、諸官には帝国軍人として自覚して頂きたい」
―――説明になっていない。 全く、何も説明していないに等しい。
流石に腹が立ってくる。 何か言ってやりたいが、場の最下級者としては何も言えない、腹立たしい。
「・・・あ~、第14師団、福田です」
第14師団長・福田定市少将が立ち上がった。 相変わらず、緊張感と言うものを表さない人だ。
「ちょっと聞きたいんでっけどね。 軍団長、軍団長は本件、承認されはったんでっか? 参謀長、軍団司令部は彼我の戦力差、判っとって言うてはるんでっか?」
お国言葉丸出しも、相変わらずだ。
「・・・軍団司令部としては、充分に検討を重ね・・・」
「悪いけどな、君に聞いてへんねん、藤田君」
以前、藤田大佐は福田少将の指揮下で戦術機甲連隊長をしていた。 昔の上官・部下の間柄で無意識に割って入ったのか、それとも意識して自分に目を向かせようとしたか。
しかし福田少将は、そんな藤田大佐の思惑を一言で切り捨てた。
「軍団長、安達閣下、どないです? 参謀長、久世君、どないや?」
この場に居る少将達の最先任者から、こう言われては軍団長とて無視はできない。
ましてや、この南部戦線で最初から奮戦している第14師団長の言葉とあっては。
「・・・軍団としては、作戦の大綱に従うも、より損失の少ない方法を選択する」
苦渋に満ちた声色で、安達中将が腹から絞り出すような口調で、口を開いた。
「防衛戦力が枯渇してしまっては、元も子も無い事は重々承知の上だ。 最後の引き際については、私が判断する」
「安達閣下、それは聞いておりませんぞ!」
「軍司令官閣下、嶋田大将(嶋田豊作第2軍司令官)も、承認して頂いておる! 現場レベルの指揮系統に、君の様なスタッフが口を出す事では無い!」
横合いから不満を入れようとする参謀大佐に、安達中将がそれを許さない。
当然だ、統合幕僚総監部だろうが、国防省だろうが、参謀はラインでは無い、スタッフだ。 スタッフに指揮命令権は無い。
「・・・宜しいでしょう、しかしご承知置き下さい、本作戦は軍集団司令官、大山閣下もご承認頂いた作戦で有ると言う事を。
国家戦略に従属した、戦術作戦であると言う事を。 重々、ご承知置き下さい、軍団長閣下。 宜しいですな?」
「―――くどい」
全く釈然としないまま、作戦会議が閉会した。 結局俺の様な下っ端は、始終腹にすえかねる想いで悶々としながらも、無言で居るしかなかった。
「・・・胃に悪いね、こういう場は」
横を歩く源さんが、辟易した表情で言う。 一緒に会議室を出た141連隊の三瀬大尉(三瀬麻衣子大尉)と、同期の永野(永野蓉子大尉)も似たような表情だ。
それぞれ、連隊長のお供として幕僚の他に大隊長1人と、中隊長が2人同行していた。 ウチからは広江中佐が、141は早坂中佐が出席していたが、2人とも苦虫を潰していたな。
「でも、現実問題として、どこかで打撃を加えない事には、ジリ貧なのは確かなのよね・・・」
三瀬さんが溜息をつく。 判る、確かに打撃を加えない事には、この『圧力』は止まない。 しかし、その為の戦力が十分ではないのだ。
「神崎川から押しだすのは、31、39、48師団に、海軍の聯合陸戦第1、第3師団。
これに呼応する形で、14、18、29師団の戦術機甲戦力が六甲山系を北から迂回して、神戸の後ろに逆落とし。
隙間を抜き出てきた連中には、中韓4個旅団が始末する。 東西から挟撃をかける、か・・・ 源平の合戦じゃないのですけどね」
永野が頭の中で戦況地図を思い描きながら、歎息する。 形としては、大昔に実際に行われた戦闘と同じだ―――源平の合戦、そのひとコマ『一ノ谷の戦い』
「・・・とんだ、九郎判官だな」
「BETAが平氏ほど物分かり良く撤退してくれれば、助かるけどね・・・」
俺の歎息に、源さんも自嘲気味に合わすしか無い様だ。
歩を進めていると、その内にトンでも無い場面に出くわした。 廊下の突き当たり、人の動線から外れた一角で、中佐が大佐の胸倉を掴んでいた。
その内、当の中佐が相手の大佐に平手を喰らわして―――拙い、巻き込まれるぞ、このままじゃ。 と思っている内に、見つかった。
「―――ッ! 源! 周防! さっさと隊に戻るぞ! いつまでタラタラしている!?」
「了解です、中佐」
「今すぐに」
触らぬ女神に祟りなし―――向うで苦笑(自嘲か?)している大佐に敬礼し、慌てて広江中佐の後を追った。
本部ビルを出て、高機動車に乗り込む。 もう一台には連隊長と連隊幕僚が、他にも師団長の車や他連隊の車が数台。
走り出し、暫くしてから恐る恐る中佐に話しかけた―――さっきから、源さんにつつかれていたのだ。 全く、こう言う時に都合よく先任風をしないで欲しい。
「・・・あの、中佐、先程の『アレ』は一体・・・?」
「・・・あれ?」
「藤田大佐と・・・」
そう言った瞬間、睨まれた。 いやもう、『夜叉姫』の異名通りの迫力で。
「・・・その名を口にするな! 離婚だ、離婚! 今度こそ離婚だ!」
り、離婚!? なぜそうなる!?
「今度こそ、あの優柔不断さには愛想が付きた! 私は指揮官だぞ!? 大隊長として、部下の命を預かる身だぞ!? それを、それを・・・ッ!」
―――藤田大佐、奥様に何を言ったんだ?
「何と言ったのです? 大佐は?」
み、源さん、そこで火に油を注ぐか!?
「何と言ったか、だと!? ああ、教えてやる! こう言ったのだ、あの馬鹿者は!―――『せめて、君だけでも助かってくれ。 最悪、後退してでも』 どう思う!?」
ああ―――軍団作戦主任参謀としてではなく、夫として妻にそう言いたかったのだな、藤田大佐としては。
だけど、時と相手が悪かった。 今のこの状況で、『広江中佐』に言うセリフとしては・・・ 最悪だな。
常日頃、部下に対して『諦めるな、足掻け、諦めず足掻いて戦い、そして生き抜け』、そう言っている中佐にとって、侮辱されたに等しい。
「軍団作戦主任参謀としてではなく、夫として言いたかったのではないですかね? 藤田大佐としては」
「・・・周防?」
まだまだ声に怒気がある。 俺はハンドルを握り運転席に座っている為、後部座席から恐ろしい声色が襲いかかって来る。
横の助手席に座っている源さんが、さっきから首を竦めっぱなしだ。
「軍人としては、言えませんよ。 それこそ、先の会議での大佐がそうでしょう。 本音は・・・ 言えませんよ、あの場じゃ」
「・・・私に、生き残れ、と言う事がか?」
・・・物分かり悪いなぁ、いや、わざとか。 拗ねているな、これは。
「広江直美中佐に対してでは、ありませんよ。 奥さんである、『藤田直美』さんに対して、でしょう? 旦那さんが奥さんに、不自然じゃないでしょう、本音としては」
「・・・あの場で、言う事か?」
「もしかしたら、あの場が最後かもしれませんし・・・」
戦線崩壊ともなれば、多分軍団司令部もBETAに対して突撃を敢行するだろうな。 そうなったら誰も生き残れない。
改めて思う、誰だって建前と本音の乖離に苦しんでいるのだ。 だけど、戦争だ、戦争なのだ。 生き残る為に、敢えて本音を潰す時だってある。
ああ、そうか―――だったら、俺は祥子の負傷を飲み込もう。 俺は本音を言えたのだ、彼女がどう受け止めたか、彼女の本音は聞けなかったけれど。
建前を押し立てて戦う為に、その儀式は済ませているのだから。
「多分、大佐は作戦遂行上、その様な行動を絶対に許可しないでしょう。 例え、中佐が戦死しようとも。
でもその前に、個人として言っておきたかった―――そんな所じゃないですかね? 源さん?」
唐突に、源さんに話を振ってやる―――最後まで、我関せずを決め込ませてなるものか。
突然の指名に、キョトンとした顔をしていた源さんが、やがて苦笑しつつ口を開いた。
「・・・以前、遼東半島で負傷した時ですが。 三瀬に怒鳴りました、『僕の事は放っておけ、さっさと前線に戻れ』と」
遼東半島撤退戦の時か。 確かあの時に源さんは、機体をレーザー照射が掠って大破させた。 自身も重傷を負った。
三瀬さんが自分の機体で抱えて、後方の母艦まで連れて行ったのだったな―――確か、三瀬さんの機体も損傷していた筈だが?
「彼女の機体も、中破していた事は知らなかったのですが・・・ それでも、母艦に収容されるまで、彼女に言い続けました、『僕を置いて行け』と。
本音は・・・ 嬉しかったですよ、本当は。 でも、言えませんよね。 それに、もしあの時に彼女が本当に僕を置いて、前線に戻ったとしても恨みませんよ。
一瞬でも、彼女の本音を知る事が出来ましたし。 多分、その事に感謝して死んだと思います」
―――ここまで、惚気るとは想定外だ。
バックミラーで中佐を見ると・・・ 珍しい、顔を赤くしている。
「・・・くそっ、部下が成長するのは喜ばしいが、変な後知恵まで身につけるのは、考えものだな。
貴様等、何時の間に一端な言葉を吐くようになって・・・ 可愛くない」
中佐の不貞腐れ顔に、源さんと顔を合わせて小さく笑い合う。 ああ、笑えたな、俺。
1998年8月12日 1030 西太平洋上 第7艦隊第70任務部隊(CTF-70) 第5母艦打撃群(CSG5)戦術機母艦『カール・ヴィンソン』
アイランド・デッキから見下ろすフライト・デッキには、様々な要員が動いているのが見える。
ジョージ・M・バートン米海軍中将は、何時も外界が見えるこの場所が好きだった。 薄暗いCICなど、気が滅入るだけだ。
先月に入って急遽、艦隊の出撃準備が進められた。 第7艦隊は大半が真珠湾に停泊していたが、一部艦艇がサン・ディエゴの工廠に入っていた。
その為、全艦艇の合流・訓練の最終仕上げなどで、日本への出撃がつい先日となってしまった。 今頃は第3艦隊もサン・ディエゴから出港している筈だ。
洋上、遥か彼方に2個の空母打撃群が居る筈だ。 『ドワイト・D・アイゼンハワー』母艦打撃群(CSG7)、『セオドア・ルーズベルト』母艦打撃群(CSG9)の2群。
空母打撃群を構成する巡洋艦に駆逐艦。 他に水陸両用任務部隊である第76任務部隊は、艦隊の後方1日半の場所を航行中だ。
「司令官、USPACOM(合衆国太平洋軍)司令部から入電が入りました、日本の戦況詳細です」
情報参謀からレポートを受け取ったバートン中将は、その内容を一瞥し、傍らに控える参謀長に囁いた。
「・・・どうやら、向うに着いた途端にパーティー会場は乱痴気騒ぎの様だ。 ドラ猫共と、レザーネックのスズメバチ共に、牙と毒針を磨かせておけ」
「イエス・サー。 所で、ライス将軍の通信ですが・・・」
「本当の様だ、残念だ、我が国は重要な同盟国を喪おうとしている―――彼ら自身の傲慢によって」
手元の別のレポートを眺める。 国連軍太平洋方面第11軍司令官、アルフォンス・パトリック・ライス米陸軍大将(兼在日米軍司令官)からのレポートだ。
1文が記されている、『第2師団壊滅原因は、日本軍の背信行為による』と。 内容は怒りと不信に満ちた内容だ。
『三田事件』―――指揮権の二元化が引き起こした悲劇。
三田市を確保しようと戦い続ける米第2師団の側面に居た、日本軍第7軍団が上級司令部の命令により、一部部隊を転出させた。
その結果、第2師団の側面はがら空きとなり、BETA群1万以上に側面から急襲され、米第2師団は壊滅状態に陥ったのだ。
在日米軍司令官、ライス大将はこれに激怒し、本国政府に対して国連安保理での指揮権一元化を要求する騒ぎに発展した。
短いが、激しく深刻なロビー活動の結果、僅差で日本帝国軍独自の指揮権は保証された。 だが、これが米議会の反日感情に火を付けた。
現在、下院では米日安保の継続か、破棄かの議論が激烈に展開されていると聞く。
「まあ、外交はポトマック河畔の連中に任せておこう。 我々は星条旗の元、合衆国軍人として戦う、それだけだ」
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1ドル=2円50~60銭で設定(現実の円想定で、1旧円=280~290円位)