<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.20952の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 第2部[samurai](2016/10/22 23:47)
[1] 序章 1話[samurai](2010/08/08 00:17)
[2] 序章 2話[samurai](2010/08/15 18:30)
[3] 前兆 1話[samurai](2010/08/18 23:14)
[4] 前兆 2話[samurai](2010/08/28 22:29)
[5] 前兆 3話[samurai](2010/09/04 01:00)
[6] 前兆 4話[samurai](2010/09/05 00:47)
[7] 本土防衛戦 西部戦線 1話[samurai](2010/09/19 01:46)
[8] 本土防衛戦 西部戦線 2話[samurai](2010/09/27 01:16)
[9] 本土防衛戦 西部戦線 3話[samurai](2010/10/04 00:25)
[10] 本土防衛戦 西部戦線 4話[samurai](2010/10/17 00:24)
[11] 本土防衛戦 西部戦線 5話[samurai](2010/10/24 00:34)
[12] 本土防衛戦 西部戦線 6話[samurai](2010/10/30 22:26)
[13] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 1話[samurai](2010/11/08 23:24)
[14] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 2話[samurai](2010/11/14 22:52)
[15] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 3話[samurai](2010/11/30 01:29)
[16] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 4話[samurai](2010/11/30 01:29)
[17] 本土防衛戦 京都防衛戦 1話[samurai](2010/12/05 23:51)
[18] 本土防衛戦 京都防衛戦 2話[samurai](2010/12/12 23:01)
[19] 本土防衛戦 京都防衛戦 3話[samurai](2010/12/25 01:07)
[20] 本土防衛戦 京都防衛戦 4話[samurai](2010/12/31 20:42)
[21] 本土防衛戦 京都防衛戦 5話[samurai](2011/01/05 22:42)
[22] 本土防衛戦 京都防衛戦 6話[samurai](2011/01/15 17:06)
[23] 本土防衛戦 京都防衛戦 7話[samurai](2011/01/24 23:10)
[24] 本土防衛戦 京都防衛戦 8話[samurai](2011/02/06 15:37)
[25] 本土防衛戦 京都防衛戦 9話 ~幕間~[samurai](2011/02/14 00:56)
[26] 本土防衛戦 京都防衛戦 10話[samurai](2011/02/20 23:38)
[27] 本土防衛戦 京都防衛戦 11話[samurai](2011/03/08 07:56)
[28] 本土防衛戦 京都防衛戦 12話[samurai](2011/03/22 22:45)
[29] 本土防衛戦 京都防衛戦 最終話[samurai](2011/03/30 00:48)
[30] 晦冥[samurai](2011/04/04 20:12)
[31] それぞれの冬 ~直衛と祥子~[samurai](2011/04/18 21:49)
[32] それぞれの冬 ~愛姫と圭介~[samurai](2011/04/24 23:16)
[33] それぞれの冬 ~緋色の時~[samurai](2011/05/16 22:43)
[34] 明星作戦前夜 黎明 1話[samurai](2011/06/02 22:42)
[35] 明星作戦前夜 黎明 2話[samurai](2011/06/09 00:41)
[36] 明星作戦前夜 黎明 3話[samurai](2011/06/26 18:08)
[37] 明星作戦前夜 黎明 4話[samurai](2011/07/03 20:50)
[38] 明星作戦前夜 黎明 5話[samurai](2011/07/10 20:56)
[39] 明星作戦前哨戦 1話[samurai](2011/07/18 21:49)
[40] 明星作戦前哨戦 2話[samurai](2011/07/27 06:53)
[41] 明星作戦 1話[samurai](2011/07/31 23:06)
[42] 明星作戦 2話[samurai](2011/08/12 00:18)
[43] 明星作戦 3話[samurai](2011/08/21 20:47)
[44] 明星作戦 4話[samurai](2011/09/04 20:43)
[45] 明星作戦 5話[samurai](2011/09/15 00:43)
[46] 明星作戦 6話[samurai](2011/09/19 23:52)
[47] 明星作戦 7話[samurai](2011/10/10 02:06)
[48] 明星作戦 8話[samurai](2011/10/16 11:02)
[49] 明星作戦 最終話[samurai](2011/10/24 22:40)
[50] 北嶺編 1話[samurai](2011/10/30 20:27)
[51] 北嶺編 2話[samurai](2011/11/06 12:18)
[52] 北嶺編 3話[samurai](2011/11/13 22:17)
[53] 北嶺編 4話[samurai](2011/11/21 00:26)
[54] 北嶺編 5話[samurai](2011/11/28 22:46)
[55] 北嶺編 6話[samurai](2011/12/18 13:03)
[56] 北嶺編 7話[samurai](2011/12/11 20:22)
[57] 北嶺編 8話[samurai](2011/12/18 13:12)
[58] 北嶺編 最終話[samurai](2011/12/24 03:52)
[59] 伏流 米国編 1話[samurai](2012/01/21 22:44)
[60] 伏流 米国編 2話[samurai](2012/01/30 23:51)
[61] 伏流 米国編 3話[samurai](2012/02/06 23:25)
[62] 伏流 米国編 4話[samurai](2012/02/16 23:27)
[63] 伏流 米国編 最終話【前編】[samurai](2012/02/20 20:00)
[64] 伏流 米国編 最終話【後編】[samurai](2012/02/20 20:01)
[65] 伏流 帝国編 序章[samurai](2012/02/28 02:50)
[66] 伏流 帝国編 1話[samurai](2012/03/08 20:11)
[67] 伏流 帝国編 2話[samurai](2012/03/17 00:19)
[68] 伏流 帝国編 3話[samurai](2012/03/24 23:14)
[69] 伏流 帝国編 4話[samurai](2012/03/31 13:00)
[70] 伏流 帝国編 5話[samurai](2012/04/15 00:13)
[71] 伏流 帝国編 6話[samurai](2012/04/22 22:14)
[72] 伏流 帝国編 7話[samurai](2012/04/30 18:53)
[73] 伏流 帝国編 8話[samurai](2012/05/21 00:11)
[74] 伏流 帝国編 9話[samurai](2012/05/29 22:25)
[75] 伏流 帝国編 10話[samurai](2012/06/06 23:04)
[76] 伏流 帝国編 最終話[samurai](2012/06/19 23:03)
[77] 予兆 序章[samurai](2012/07/03 00:36)
[78] 予兆 1話[samurai](2012/07/08 23:09)
[79] 予兆 2話[samurai](2012/07/21 02:30)
[80] 予兆 3話[samurai](2012/08/25 03:01)
[81] 暗き波濤 1話[samurai](2012/09/13 21:00)
[82] 暗き波濤 2話[samurai](2012/09/23 15:56)
[83] 暗き波濤 3話[samurai](2012/10/08 00:02)
[84] 暗き波濤 4話[samurai](2012/11/05 01:09)
[85] 暗き波濤 5話[samurai](2012/11/19 23:16)
[86] 暗き波濤 6話[samurai](2012/12/04 21:52)
[87] 暗き波濤 7話[samurai](2012/12/27 20:53)
[88] 暗き波濤 8話[samurai](2012/12/30 21:44)
[89] 暗き波濤 9話[samurai](2013/02/17 13:21)
[90] 暗き波濤 10話[samurai](2013/03/02 08:43)
[91] 暗き波濤 11話[samurai](2013/03/13 00:27)
[92] 暗き波濤 最終話[samurai](2013/04/07 01:18)
[93] 前夜 1話[samurai](2013/05/18 09:39)
[94] 前夜 2話[samurai](2013/06/23 23:39)
[95] 前夜 3話[samurai](2013/07/31 00:02)
[96] 前夜 4話[samiurai](2013/09/08 23:24)
[97] 前夜 最終話(前篇)[samiurai](2013/10/20 22:17)
[98] 前夜 最終話(後篇)[samiurai](2013/11/30 21:03)
[99] クーデター編 騒擾 1話[samiurai](2013/12/29 18:58)
[100] クーデター編 騒擾 2話[samiurai](2014/02/15 22:44)
[101] クーデター編 騒擾 3話[samiurai](2014/03/23 22:19)
[102] クーデター編 騒擾 4話[samiurai](2014/05/04 13:32)
[103] クーデター編 騒擾 5話[samiurai](2014/06/15 22:17)
[104] クーデター編 騒擾 6話[samiurai](2014/07/28 21:35)
[105] クーデター編 騒擾 7話[samiurai](2014/09/07 20:50)
[106] クーデター編 動乱 1話[samurai](2014/12/07 18:01)
[107] クーデター編 動乱 2話[samiurai](2015/01/27 22:37)
[108] クーデター編 動乱 3話[samiurai](2015/03/08 20:28)
[109] クーデター編 動乱 4話[samiurai](2015/04/20 01:45)
[110] クーデター編 最終話[samiurai](2015/05/30 21:59)
[111] 其の間 1話[samiurai](2015/07/21 01:19)
[112] 其の間 2話[samiurai](2015/09/07 20:58)
[113] 其の間 3話[samiurai](2015/10/30 21:55)
[114] 佐渡島 征途 前話[samurai](2016/10/22 23:48)
[115] 佐渡島 征途 1話[samiurai](2016/10/22 23:47)
[116] 佐渡島 征途 2話[samurai](2016/12/18 19:41)
[117] 佐渡島 征途 3話[samurai](2017/01/30 23:35)
[118] 佐渡島 征途 4話[samurai](2017/03/26 20:58)
[120] 佐渡島 征途 5話[samurai](2017/04/29 20:35)
[121] 佐渡島 征途 6話[samurai](2017/06/01 21:55)
[122] 佐渡島 征途 7話[samurai](2017/08/06 19:39)
[123] 佐渡島 征途 8話[samurai](2017/09/10 19:47)
[124] 佐渡島 征途 9話[samurai](2017/12/03 20:05)
[125] 佐渡島 征途 10話[samurai](2018/04/07 20:48)
[126] 幕間~その一瞬~[samurai](2018/09/09 00:51)
[127] 幕間2~彼は誰時~[samurai](2019/01/06 21:49)
[128] 横浜基地防衛戦 第1話[samurai](2019/04/29 18:47)
[129] 横浜基地防衛戦 第2話[samurai](2020/02/11 23:54)
[130] 横浜基地防衛戦 第3話[samurai](2020/08/16 19:37)
[131] 横浜基地防衛戦 第4話[samurai](2020/12/28 21:44)
[132] 終章 前夜[samurai](2021/03/06 15:22)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[20952] 佐渡島 征途 2話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:ad831188 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/12/18 19:41
2001年12月25日 0856 日本帝国 佐渡島沖 南南西20海里(約37km) 富山舟状海盆洋上


『―――国連軌道艦隊、所定軌道周回中』

『―――第2艦隊、真野湾沖10海里(約18.5km)、オン・ステージ』

作戦指揮所内に、オペレーターたちの抑揚を抑えた報告が飛び交う。 作戦指揮艦『千代田』の作戦指揮所は、艦橋構造物の後方にある。 巨大な箱型で、上甲板で大きな面積を占める。 
多数のオペレーター席と状況を示す大型のモニター群。 その後方、一段上がった場所に設けられた司令部スタッフ用のスペース。 正面席は作戦総指揮官の嶋田陸軍大将。

『―――『SLUGGER(スラッガー)』より入電、『ALL OK』です』

『SLUGGER』―――コードネーム『スラッガー』

甲21号作戦の地上作戦、真野湾・両津湾上陸作戦『ネプチューン作戦』 BETAをハイヴから引き離し、かつ佐渡島東岸への別働上陸後に兵站線の確立を目指す『エプソム作戦』
フェイズ4でのオービットダイバーズ(ORVIT DIVERS:第6軌道降下兵団)と、帝国陸軍突撃大隊群のハイヴ突入作戦、『グッドウッド作戦』
そして最後に・・・ハイヴ最深部を目指し、そしてハイヴ内兵站・通信網を確立しつつ、ハイヴ内の攻略を進める『トータライズ作戦』

これら4つの地上作戦に全責任を負う、地上作戦担当副司令官・国連軍のロブリング米陸軍大将。 その将軍が座乗する、アメリカ級強襲揚陸艦『ブーゲンビル』のコードである。

その『スラッガー』・・・ロブリング大将から、地上作戦の開始が完了したと伝えられた。

『―――『ATLAS(アトラス)』より入電。 『攻撃準備、宜し』です』

尚、海上作戦・・・真野湾・両津湾への対地攻撃作戦『決捷一号作戦(フォーティテュード作戦)』、地上軍上陸後の支援砲撃作戦『決捷二号作戦(オリンピック作戦)』
島の東岸への上陸支援砲撃作戦『決捷三号作戦(チャンネル・ダッシュ作戦)』、そして国連軍の特務作戦『A-00作戦(オルタネイティヴⅣA)』

これら一連の海上作戦と特務作戦は、海上作戦に全責任を負う、海上作戦担当副司令官の、日本帝国海軍の小澤海軍大将が全責任を担う。 
作戦指揮座乗艦は、洋上作戦指揮艦である大型重巡洋艦(イージス巡)『最上』 コードネームは『ATLAS(アトラス)』

『国連軌道艦隊の突入弾分離を確認!』

『佐渡島のBETA群、レーザー照射迎撃を開始!』

ややあって、モニター越しにも外の状況が分かった。

『重金属雲発生! 重金属雲発生!』

時は2001年12月25日 0900・・・

「・・・発令。 甲21号攻略、開始せよ」

「はっ! 通信! 達する! 甲21号攻略作戦、開始せよ!」

総司令官・嶋田大将の静かな声色の命令を受け、参謀長がスタッフに命じた。

『―――達する! 『KING(キング)』より『SLUGGER(スラッガー)』へ! 『オペレーション・サドガシマ』発令! 『オペレーション・サドガシマ』発令!』

『―――『KING(キング)』より『ATLAS(アトラス)』へ! 『甲21号作戦』発令! 繰り返す! 『甲21号作戦』発令!』

その命令は瞬く間に陸海の各級司令部に通達され、そして・・・

『第2艦隊、艦砲射撃開始しました! 目標、河原田一帯!』

真野湾口の洋上に布陣していた帝国海軍聯合艦隊第2艦隊。 その水上打撃部隊である第1戦隊の戦艦『紀伊』、『尾張』、第2戦隊の『信濃』、『美濃』、第3戦隊の『出雲』、『加賀』
6隻の戦艦群が45口径20インチ砲3連装4基、50口径18インチ3連装3基、50口径18インチ砲3連装4基の巨砲群から、猛烈な砲撃を加え始めた。

最も小さい『信濃』、『美濃』の18インチ砲弾でさえ、全長2,055mm 砲弾重量1,560kgに達する。 『紀伊』、『尾張』の20インチ砲弾は全長2,230mm、砲弾重量1,980kgに達する。
どの艦も度重なる近代化改修の結果、主砲も換装されていた。 『信濃』、『美濃』、『出雲』、『加賀』の50口径18インチ砲では、初速は830m/sに達している。
『紀伊』、『尾張』の45口径20インチ砲は初速790m/s これは砲身長(50口径と45口径)の違いから生じる初速の差だ。

砲弾が生み出すエネルギーは、『信濃』、『美濃』、『出雲』、『加賀』の50口径18インチ砲で537.3MJ、『紀伊』、『尾張』の45口径20インチ砲で617.8MJ
これは例えば、陸軍の最も標準的な野戦重砲である155mm榴弾砲を例にすれば、そのエネルギーは、およそ30MJ前後である。 陸軍野戦重砲の実に18倍から20倍のエネルギー。
これが各艦、それぞれ9門から12門を搭載している。 『信濃』1隻で50口径18インチ砲9門、その全力斉射のエネルギーは4,836MJに達し、155mm榴弾砲161門分であった。

陸軍の砲兵部隊は、1個砲兵中隊で6門、1個砲兵大隊で24門を装備する。 161門とは6.7個砲兵大隊・・・2個から3個師団の砲戦力に匹敵する。
戦艦1隻でそうなのだ。 今、第2艦隊の戦艦群が叩きつけている、鉄と炎と爆風の暴力は、実に陸軍師団砲撃力全力の、12個から18個師団分に相当する。

地上からは盛んにレーザー照射での迎撃が為されているが、発生した重金属雲の濃度が高まるにつれ、レーザーが拡散される。 直撃を得る砲弾の数が飛躍的に多くなった。
1発着弾するごとに、一瞬地表付近がブレる錯覚に陥る。 次いで衝撃音、そして巨大な爆炎と黒煙が吹きあがり、衝撃波が収まった後には大きなクレーターが現れる。

そのクレーターの底には、赤黒い『何か』が点々とこびりついていた。 固い装甲殻を有する突撃級BETAでさえ、巨大な戦艦の主砲段の直撃はおろか、至近弾でも爆散する。
6隻の戦艦の全力斉射による、全くの無慈悲な艦砲射撃。 更にその後方の巡洋艦群からは、VLSから対地ミッション用のトマホーク巡航ミサイル(RGM/UGM-109H)が発射される。
主砲弾より遥かに低速であるが(880km/h≒244.4m/s)、重金属雲と言う『スクリーン』上空を飛翔して(何割かはレーザーで迎撃されるが)後方の光線属種BETA群に降り注ぐ。

『―――河原田一帯の面制圧進捗、80%を超しました』

『―――『ATLAS(アトラス)』より通信、『スティングレイ』発進します!』

0905時、砲撃開始より5分後、真野湾海中を進む、帝国海軍聯合陸戦隊の強襲上陸専門部隊『強襲上陸大隊(スティングレイ)』の4個大隊が、『崇潮』級強襲潜水艦から続々発進した。

「よし! 『SLUGGER(スラッガー)』に通信! 『ウイスキー』上陸に備えよ!」

『―――『KING』より『SLUGGER』、『ウイスキー』上陸、スタンバイ!』

艦内が更に慌ただしくなる。 いよいよ―――いよいよ、悲願の佐渡島上陸・・・佐渡島奪回作戦が開始されるのだ。





0915―――旧河原田一帯、面制圧完了。 第2戦隊、旧八幡新町に艦砲射撃継続。

0918―――第2艦隊戦術機母艦群、艦載戦術機甲部隊(『飛鷹』、『隼鷹』、『瑞龍』、『神龍』戦術機甲隊)を発艦させる。 広域面制圧攻撃開始。

0920―――『スティングレイ』上陸開始。 0932、上陸地点確保。

0935―――ウイスキー上陸部隊第1派(聯合陸戦第1、第2師団)、強襲上陸開始。 第2艦隊、支援砲撃続行。

0942―――『ウイスキー』各機甲師団上陸開始。 戦術機甲師団、各隊順次発進開始。

0948―――真野湾沿岸部に重光線級出現(ポイントS-52-47) スティングレイより支援砲撃要請。 最初のレーザー照射被弾・沈没艦(戦術機母艦『高尾』)





73分後―――2001年12月25日 1005 佐渡島海峡南東海上15海里 ウイスキー上陸第2派別働部隊 日本帝国軍第15師団第151戦術機甲大隊 戦術機揚陸艦『松浦』


「・・・叩かれているな」

第151戦術機甲大隊長の周防直衛少佐が、ポツリと呟いた。

「ええ・・・」

先任中隊長の最上英二大尉が同意する。

待機中の戦術機母艦の衛士待機室。 未だ経験の浅い少尉から、古参の大尉まで。 そして部隊長の周防少佐も居る。 出撃命令が出るまでの間、全衛士が待機していた。
艦内放送での戦況中継は、周防少佐から艦長に願い出て遠慮してもらった。 どうせ聞いても地獄の釜が開いた状況なのだ、今から若い連中を不用意に緊張させる事は無い。

その代り、部隊長(大隊長級以上)級が受信できる、コペルニクスC4Iコンセプトを用いた、CEC(共同交戦能力:Cooperative Engagement Capability)
その作戦指揮系(OPS)の共通作戦状況図(COP)、ないし共通戦術状況図(CTP)を、部下の大尉達へ転送して、戦況の情報共有を行っていた。

「轟沈81、うち戦術機母艦49。 大破52、うち戦術機母艦31・・・凄まじいな、1時間と少しでこれか・・・」

「都合、戦術機母艦80隻がオシャカっすか・・・戦術機母艦1隻で、最低でも1個中隊12機。 改良型だったら、最大で1個大隊、40機ですぜ」

「平均して26~28機として、それでも搭載する戦術機の数は2000機に達します。 その全てが失われた訳でないでしょうけれど・・・」

3人の中隊長たち、最上英二大尉、八神涼平大尉、遠野万里子大尉も、表情を歪める。

当然ながら、戦術機が発艦した後にレーザー照射を受けて轟沈、或は大破した艦の方が圧倒的に多い。 『高尾』が撃沈されるや、上陸第1派は一斉に戦術機を無理やり発進させた。
純粋な『戦術機母艦』ではなく、実を言えば『戦術機揚陸艦』、或は『戦術機運搬艦』である。 しかし、それでも1時間と少しの交戦で、合計80隻が撃沈・大破された事は衝撃だ。

今回の作戦、戦術機揚陸艦は『大隅』級10隻、『渡島』級60隻、『天草』級90隻。 この160隻の他に、より簡易な特設戦術機運搬艦が200隻以上投入された。
他の支援艦艇を含めれば、実に2000隻を超す。 撃沈破133隻は、損耗率6.65%に達する。 作戦遂行が困難になるには未だ速いが、無視できない速度だった。
(戦術機揚陸艦・戦術機運搬艦に限れば、その損耗率は22.2%に達する。 通常ならば作戦遂行を、早々に諦めるレベルの数字だった)

「ウイスキー上陸第1派は、旧八幡新町、旧河原田本町を確保・・・部隊損耗7%ですか・・・」

「エコー揚陸部隊第1派は、両津港跡に向け最大戦速で南下中。 ウイスキーアルファは旧高塚まで南下、戦線を維持中・・・」

「甲21号よりの師団規模BETA群が、ウイスキー本体を目標に南下中・・・」

大隊副官兼第2係主任(情報・保全)の来生しのぶ大尉、第1係主任(人事・庶務)の大内和義大尉、第3係主任(運用・訓練)の牧野多聞大尉も厳しい顔だ。
何と言っても、70分ほどでウイスキー上陸第1派の損耗率が、7%に達した事だ。 と言う事は、純粋な戦闘部隊の損耗率は最低でもその3倍になる・・・20%を超す損耗率だ。

「戦闘部隊で言えば、恐らく2割ほど・・・戦術機甲部隊じゃ、1個連隊120機の内、2個中隊が喰われていますよ」

第4係主任(兵站・後方)の宮部宗佑大尉が、艦上の無い声で言う内容を、他の大尉達が内心で怖気を振う気分で聞いた。

『部隊』は戦闘部隊・・・戦術機甲部隊、機械化装甲歩兵部隊、機甲部隊、機動高射部隊、砲兵部隊などだけではない。 それを支援する『後方支援部隊』の方が多いのだ。
故に、部隊損耗率とは、純粋に戦闘部隊の損耗率に換算すれば、凡そ3倍の数字となってしまう。 為に、師団の場合、攻勢では部隊損耗15~20%で『攻勢限界』と言われる。

その『攻勢限界』の損耗率に、すでに半分近くまで達しているのだ。

その時、周防少佐の網膜投影スクリーン上に、CECから新たな情報が入った(閲覧制限情報だったので、大尉達は見れなかった)

『―――作戦総司令部発令。 『フェイズ3に移行』・・・』

無意識に身を固くする周防少佐。 フェイズ3―――出番だ。

「・・・大隊、即時発進準備。 5分やる、急げ!」

「「「「「ッ! 了解!」」」」」

慌ただしく部下達を追い立て、戦術機ハンガーへ走り出す最上大尉、八神大尉、遠野大尉。 そして慌ただしく、緊張しながら走り出す衛士たち。
来生大尉は第2係主任(情報・保全)を兼ねる為に、大隊のCPオフィサーたちと共に、戦術管制ヘリ(アグスタウェストランド AW101)に搭乗する。
大隊幕僚の大内大尉、牧野大尉、宮部大尉も別のヘリに乗り込んだ。 大隊本部を構成するのは、2機のヘリと本部管理中隊を含む機材を搭載した73式中型トラック5輛。
トラックなどの車輌は、橋頭堡を確保した後に揚陸される。 それまで大隊幕僚たちは、搭乗した改造ヘリの中から、大隊の後方支援を行うのだ。

最後に、部下達の背中を見守った周防少佐が、衛士待機室を後にする。 微かに目を閉じ、小声で呟いた。

「・・・生き残る」






『攻撃隊、発進準備。 攻撃隊、発進準備。 搭乗員(衛士)、搭乗開始せよ』

来た、出撃命令だ。 ハンガー脇の衛士待機室から飛び出した第151戦術機甲大隊の面々は、自らの『愛機』に駆け寄る。 その愛機の前には、それぞれの機附き整備員たちが居た。
機附き整備員たちが機体の状態を素早くレクチャーする。 その情報を確認し、整備に口々に礼を言って管制ユニットに搭乗する衛士達。 それを見上げ、見送る機付き整備員たち。
機附き整備員たちも戦っているのだ。 ネジの1本の緩みも、オイルの一滴たりとも漏らさない、システム調整は万全である。 衛士の生還、それこそが彼ら整備員たちの勝利だ。

94式『不知火』壱型丙Ⅲ(壱型23型)―――壱型丙Ⅰ(壱型21型)、壱型丙Ⅱ(壱型22型)と、帝国陸軍技術陣が四苦八苦し続けた『不知火壱型』の性能向上型。
壱型丙Ⅰの様に扱い辛くなく、壱型丙Ⅱの様に極端に燃費が悪くない。 操縦性も機動特性も壱型甲同様の、素直な操縦特性に戻った―――『武人の蛮用』に耐える機体。

日本帝国の官民の科学技術陣が、やっとのことで実用化・汎用化、そして量産化に成功させた『ダイヤモンド半導体(Diamond Semiconductors)』の技術。
従来のシリコン半導体に比べ、数十倍から数百倍とも言われる大幅な高速化が可能なばかりか、基本性能自体も高く耐熱性なども極めて優れ、過酷な環境下でも動作する。
そして従来から実用化・量産化させていた『球面半導体(Ball Semiconductors)』 平面の半導体基板ではなく、半導体基板を球面にし、その容量を数倍にする技術。 
真球形状が難しかったが、何とか数年前に実用化した。 この2つの技術の確立によって、従来では困難だった大容量・高速化の演算が、普通に可能なCPUが搭載可能となった。 

もっとも、『横浜』の試作する(噂では量子コンピューターの超小型化)ワンオフ品には劣るが。

その結果として、制御ソフトウェアと演算装置のアンマッチ(演算が追い付かない)と言う『壱型丙』シリーズの欠点を、ほぼ回復できたのが『壱型丙Ⅲ(壱型23型)』だ。
『弐型』の開発が、日米両国の官民の思惑が複雑に絡まり、不透明さを増している現状では、『壱型丙』シリーズのバージョンアップで乗り切らねばならないのが実情だ。


衛士用リフトでパレットに乗り上がり、戦術機ガントリーに固定され直立させた状態の機体の管制ユニットに乗り込む。 1機当たりの格納スペースはかなり狭い。
やがて戦術機を乗せた大型リフトが、上甲板(発進甲板)まで上げられる。 外の世界は、うす暗い穴倉から、弱々しい冬の陽が照りつける、真冬の日本海だ。

『ゲイヴォルグ・マムよりリーダー! 敵情は備附山から外山ダム跡付近に、連隊規模BETA群が約3000! 他に小規模の集団複数を確認! 約600!
2航戦(『飛龍』、『蒼龍』)から第201、第202戦術機甲隊が侵入を開始! 続いて3航戦(『雲龍』、『翔龍』)から第301、第302戦術機甲隊発進! 
備附山から外山ダム跡一帯の、広域面制圧攻撃を開始します。 ゲイヴォルグは2航戦、3航戦の広域面制圧攻撃と連携し、アレイオン(第152戦術機甲大隊)と海岸線に突入!』

通信管制小隊を率いる、大隊チーフCPの長瀬恵大尉(ゲイヴォルグ・マム)から、直近の戦況ブリーフが入った。 悪くはないが、良くも無い。

「ゲイヴォルグ・ワン、了解。 リーダーより『ゲイヴォルグ』各中隊、発進開始。 目標は赤泊北北西方面、天狗塚付近のBETA群2000。 残りはアレイオン(第152)に任せろ。
海軍機の面制圧攻撃終了と同時に、三益、旧諏訪神社跡から左に迂回して連中の側面を叩く。 『ドラゴン(第1中隊)』、当番(先鋒部隊)。 
右は『ハリーホーク(第2中隊)』、左は『クリスタル(第3中隊)』だ。 八神(第2中隊長)、アレイオン(第152戦術機甲大隊)との距離に気を付けろ。 遠野(第3中隊長)・・・」

『―――クリスタル・リーダーよりシックス(指揮官)、海岸付近の残存BETA、特に光線属種の確認は、クリスタルが行います』

第3中隊長―――遠野大尉の報告に、ふと以前の事を思い出した周防少佐。 中隊長になりたての頃、己の部隊指揮の手腕に随分悩んでいた遠野大尉だったが・・・

「・・・ゲイヴォルグ・ワンよりクリスタル。 任せた」

『―――任されました。 クリスタル、アウト!』

周防少佐が麾下中隊へ指示を終えた丁度その時、発艦命令が出た。

「よし、ゲイヴォルグ、全機発艦する。 続け!」

2基の跳躍ユニットからアフターバーナーの焔をなびかせ、まずは大隊長機が発艦していった。





灰色の情景。 そこにBETAの死骸の赤黒、そして曳光弾と爆炎と・・・詰まる所、ゲーテの『神曲』、その煉獄を現実にした光景だった。

群がってきた小型種BETAの小集団を、56mmリヴォルバーカノンの斉射で掃討する。 36mmより装弾数が少ないため、あまり小型種相手にばらまくのは下策だが。

「最上、そのまま背後まで抜けて群れを削り続けろ! 八神、右翼を押さえろ! その300、小型種は全て殲滅しろ! 遠野、左翼! 海岸線に抜ける200を叩け!」

噴射パドルを一瞬だけ吹かして距離をとる。 急迫してきた要撃級BETAの前腕による打撃を、寸前で回避しつつ、空いた側面に56mm砲弾を数発、まとめて叩き込み黙らせる。

大隊は現在、揚陸地点確保のためにやや内陸に入った場所で、拡張戦闘を行っている。 大量の物資を揚陸させるには、相応の広さと比較的安全を確保された場所が必要だ。
第151戦術機甲大隊の任務は、僚隊の第152戦術機甲大隊とともに、上陸地点の確保と、その戦果拡大。 後続する4個戦術機甲大隊に『引き渡す』為のスペースの確保。

要撃級を先頭に、1000体程のBETA群が大隊の正面に流れて来た。 周防少佐は第1中隊を群れの中に突き入れ、分断すると半包囲陣形を敷き、未だ残る地形を利用して砲戦で削る。
小佐渡山地は低いながらも未だ山地で、天然の要崖になっている。 BETA群は平地が有る限り、より平坦な地形を突き進む。 天狗塚から海岸線に抜けるルートは包囲した。

『萱場! 長機の背後を! 宇嶋! ついて来い!』

そして周防少佐を含めた指揮小隊の4機のうち、小隊長の北里彩弓中尉他3機は、時折紛れて浸透してくる小型種への応戦をしつつ、大隊長機の安全を確保している。
戦車級の群れが10数体、大隊の包囲網を突破して本部指揮小隊近くまで浸透してきた。 指揮小隊長の北里中尉が、4番機の宇島少尉を引き連れ前方に出る。
36mm突撃砲弾を浴びせかけ、戦車級BETAの群れを赤黒い『何か』に変える。 同時に周防少佐機のバックアップをしていた萱場少尉機が、数体の戦車級BETAに36mm砲弾を叩き込んだ。

その時、周防少佐機が目前に迫った1体の要撃級BETAに向けて、BK-57ⅡB近接制圧砲の57mm高初速砲弾を1秒間だけ放つ。 36mm突撃砲より重々しく、若干遅い発射音。
それでも発射速度を600発/分に設定にしているから、10発の57mm砲弾が命中した。 新型装薬と長砲身化で初速の上がった57mm砲弾は、瞬く間に要撃級の前腕を粉砕した。 

残る砲弾が胴体部に吸い込まれ、要撃級BETAは赤黒い体液を噴出して倒れる。

「長瀬、戦況の様子は?」

大隊CPオフィサーの長瀬大尉に問いかける。 網膜スクリーン上に小さくポップアップした長瀬大尉の姿は、少しの間、何かを検索していて、そして・・・

『ゲイヴォルグ・マムよりゲイヴォルグ・ワン。 現在のところ順調です。 上陸地点から備附山までで確認されたBETA群、約4600体。 うち、3000体が南下しました。
この内、約600体が母艦艦載戦術機甲隊の広域面制圧で殲滅されました。 大隊正面には1300体、第152大隊の正面に1100体が南下。 
現在の残存BETA数は、大隊正面に310体、第152正面に300体。 海岸線は艦砲射撃との共同制圧で、約1000体を潰した模様です』

大隊CP・長瀬大尉の情報では、南下したBETA群は既に、5分の1程まで減らされた様だ。 光線属種が思ったより少なかったのが助かった。
海軍機の長距離誘導弾攻撃と、艦隊の支援艦砲射撃で、レーザー属種BETAの注意がミサイルと砲弾迎撃に向いている間に、最上大尉の1個中隊を送り込め、短時間で殲滅できた。
1300体のBETA群と言えど、その比率からいけば大型種(突撃級・要撃級)の数は300前後。 残りは戦車級や闘士級、兵士級を主体とする小型種ばかりだ。
それに今回は、光線属種の注意が逸れていた。 その間に群れのど真ん中(BETA群の後方)に1個中隊を送り込んで殲滅できた。 光線属種は20体ほどだった。

『大隊長、50下がって下さい! 萱場! 宇嶋! 右翼からの戦車級の群れ、50! 阻止する!』

第3中隊の前面で削られたBETA群の一部の小型種BETAの群れが、指揮小隊の方向へ突進して来た。 すかさず北里中尉が迎撃指示を出す。

『了解です! 宇嶋、私の左に!』

『了解!』

周防少佐が何も言わずに噴射パドルを逆噴射させて、機体をやや後方に持って行く。 それと同時に指揮小隊の3機の戦術機がトライアングル・フォーメーションで前面に出た。

『萱場、宇嶋、私の後ろに付け! 行くぞ!』

実戦経験の浅かった宇嶋少尉(宇嶋正彦少尉、27期A)も、何度かの実戦を経験した事で先任の萱場少尉(萱場爽子少尉、26期A)の機動に合わす事が出来るようになった。
小隊長の北里中尉(北里彩弓中尉、24期A)が先頭となり突進する。 そしてBETA群と接触する直前に、3機はやや間隔を開けて、お互いの射線が広く交わる様な射角をとった。

『今だ―――撃て!』

北里中尉が突撃砲の36mm砲弾を薙ぎ払う様に射撃して、戦車級の群れを赤黒い霧に変えてゆく。 同時に第2分隊である萱場少尉と宇嶋少尉が、側面に高速移動。
側面から兵士級・闘士級BETAの横面に、36mm砲弾を散々叩き込んで粉砕した後、3機で押し包んで残るBETA群を、36mm砲弾を浴びせかけて始末した。

―――その間、大隊長の周防少佐は、機体を全く機動させていない。

「・・・部下の成長は頼もしいが、だんだん俺は自分が案山子になっていく気がするな・・・CP、長瀬、残りのBETAの数は?」

『マムよりリーダー、残存BETA数、約150体―――大隊長機が最前面でダンス(近接戦闘)などと。 『自重』と言う言葉を覚えて下さい、綾森少佐に言いつけますよ?』

「貴様は・・・貴様も含めて、大隊のCP連中は、そうか・・・くそ。 ふん、あと150程か。 前方、備附山の残りの1600は、荒蒔さん達に任せるか」

『奥様には、今でも良くして頂いていますから・・・後続部隊、発進準備完了の報告です』

長瀬大尉を含め、大隊のCP将校たちは、衛士をリタイアした後に通信将校となった周防少佐夫人の『教え子』達だ。 大隊長より夫人の方に忠実な面がある―――頭の痛い事に。

『―――ドラゴン(第1中隊長)よりシックス(大隊長)、殲滅完了予定、5分後』

先任中隊長の最上大尉から通信が入った。 共通作戦状況図(COP)、そして共通戦術状況図(CTP)でも確認できた―――上陸作戦、その諸端は成功した様だった。

「ゲイヴォルグ・ワンよりカク、ダメージ・リポート」

『―――ドラゴンよりシックス。 損傷1機、衛士は無傷。 予備に乗り換えさせます』

『ハリーホークです。 シックス、損傷無し』

『クリスタル・リーダーよりシックス。 中破1機、衛士負傷1名。 申し訳ありません、最初の段階でレーザーが擦過しました。 衛士負傷』

大隊で損傷2機。 うち1機は衛士も負傷し後送。 実質は1機の減・・・定数40機で、残存39機。 上陸作戦の先鋒部隊としては、奇跡的な損害の少なさだった。

「ゲイヴォルグ・ワン、了解した。 クリスタル、負傷者は速やかに後送しろ。 本部より1機送る―――北里」

『はい、大隊長。 遠野大尉、北里です。 指揮小隊より1機・・・宇嶋少尉を充当させて頂きます。 宇嶋、貴様はこれより第3中隊の指揮下に入れ。 萱場、私とエレメントを』

今後を考える。 兵站線を確立し、島中央部への兵站路を繋げる。 そして真野湾と両津湾のラインを確保・・・場合によってはその後、ハイヴ内の兵站線も確保せねばならない。
第15師団だけではないが、それだけの任務を考えた場合、損耗率は兵站線確保までに20%前後に抑えたい。 真野湾=両津湾のライン確保には、最低でも30機以上欲しい。

「・・・ゲイヴォルグ・ワンよりカク。 国府川到達までに許容される損耗は各中隊2機、最大でも3機までとする」

『・・・ドラゴン、了解』

『ハリーホーク、ラジャ』

『―――クリスタル、了解しました』

3人の中隊長達も声も少しだけ堅い。 損失は出なければ、出さない方が良いに決まっている。 しかし『戦争』で損失が出ないという事は絶対に無い。

周防少佐は実際の所、大隊長になってから、これまでと異なる感情に、未だ完全に慣れないでいた。 中隊長の頃までは、仲間や部下の生死は身近だった。
少佐に進級し大隊を指揮してからは、無論、部下の生死も直近で見ている。 大隊長は自身も戦場で戦うのだ。 そして同時に、『大隊』は陸軍で最小とは言え、戦術単位でもある。
詰まる所、部下の存在、その生死を、『戦術単位の駒』として認識せねばならない―――その存在と生死を身近に感じながら。 その矛盾に、未だ完全には慣れないでいた。




前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.052241086959839