<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.20924の一覧
[0] 優しい光【禁書目録再構成】上条当麻×御坂美琴【完結】[スネーク](2014/08/09 22:35)
[1] 第1話 妹達編・その後①[スネーク](2010/09/04 05:45)
[2] 第2話 妹達編・その後②[スネーク](2010/09/04 05:45)
[3] 第3話 御使堕し編①[スネーク](2010/09/04 05:47)
[4] 第4話 御使堕し編②[スネーク](2010/12/27 04:59)
[5] 第5話 御使堕し編③[スネーク](2010/09/04 05:49)
[6] 第6話 御使堕し編④[スネーク](2010/09/04 05:53)
[7] 第7話 御使堕し編⑤[スネーク](2010/09/12 02:13)
[8] 第8話 御使堕し編⑥[スネーク](2010/09/12 02:16)
[9] 第9話 御使堕し編⑦[スネーク](2013/10/20 21:03)
[10] 第10話 御使堕し編⑧[スネーク](2013/10/20 21:04)
[11] 第11話 御使堕し編⑨[スネーク](2010/09/26 22:00)
[12] 第12話 御使堕し編⑩[スネーク](2012/04/30 21:01)
[13] 第13話 御使堕し編⑪[スネーク](2010/10/16 16:08)
[14] 第14話 御使堕し編⑫[スネーク](2010/10/16 16:18)
[15] 第15話 御使堕し編⑬[スネーク](2010/10/24 21:50)
[16] 第16話 御使堕し編⑭[スネーク](2010/11/14 17:46)
[17] 第17話 御使堕し編⑮[スネーク](2010/12/06 00:54)
[19] 第18話 御使堕し編⑯[スネーク](2010/12/06 00:53)
[20] 第19話 御使堕し編⑰[スネーク](2010/12/06 00:59)
[21] 第20話 御使堕し編⑱[スネーク](2010/12/05 22:47)
[22] 第21話 御使堕し編⑲[スネーク](2010/12/19 20:24)
[23] 第22話 御使堕し編⑳[スネーク](2010/12/19 20:26)
[24] 第23話 御使堕し編21[スネーク](2010/12/27 05:01)
[25] 第24話 御使堕し編22[スネーク](2010/12/31 19:53)
[26] 第25話 御使堕し編23[スネーク](2010/12/31 21:00)
[27] 第26話 御使堕し編・その後①[スネーク](2011/02/05 00:59)
[28] 第27話 御使堕し編・その後②[スネーク](2011/02/19 02:06)
[29] 第28話 御使堕し編・その後③[スネーク](2011/03/04 23:43)
[30] 第29話 八月三十一日①[スネーク](2012/08/18 00:02)
[31] 第30話 八月三十一日②[スネーク](2011/11/22 23:18)
[32] 第31話 八月三十一日③[スネーク](2011/03/10 01:13)
[33] 第32話 八月三十一日④[スネーク](2011/03/21 00:42)
[34] 第33話 八月三十一日⑤[スネーク](2011/03/25 23:33)
[35] 第34話 八月三十一日⑥[スネーク](2011/03/25 23:37)
[36] 第35話 八月三十一日⑦[スネーク](2011/04/09 06:52)
[37] 第36話 八月三十一日⑧[スネーク](2011/04/10 00:28)
[38] 第37話 八月三十一日⑨[スネーク](2011/04/16 03:00)
[39] 第38話 八月三十一日⑩[スネーク](2011/04/29 22:13)
[40] 第39話 八月三十一日⑪[スネーク](2011/05/03 22:48)
[41] 第40話 八月三十一日⑫[スネーク](2011/05/03 22:51)
[42] 第41話 八月三十一日⑬[スネーク](2011/05/08 18:10)
[43] 第42話 八月三十一日⑭[スネーク](2011/05/22 00:03)
[44] 第43話 八月三十一日⑮[スネーク](2011/05/28 23:42)
[45] 第44話 八月三十一日⑯[スネーク](2011/06/05 01:07)
[46] 第45話 八月三十一日⑰[スネーク](2011/06/10 00:53)
[47] 第46話 八月三十一日⑱[スネーク](2012/10/28 23:27)
[48] 第47話 八月三十一日⑲[スネーク](2011/06/19 00:14)
[49] 第48話 八月三十一日⑳[スネーク](2011/06/25 01:54)
[50] 第49話 八月三十一日・その後①[スネーク](2011/07/16 01:08)
[51] 第50話 八月三十一日・その後②[スネーク](2011/08/11 23:45)
[52] 第51話 八月三十一日・その後③[スネーク](2011/07/23 00:35)
[53] 第52話 八月三十一日・その後④[スネーク](2013/08/04 01:38)
[54] 第53話 八月三十一日・その後⑤[スネーク](2011/08/05 22:46)
[55] 第54話 八月三十一日・その後⑥[スネーク](2011/08/27 21:08)
[56] 第55話 姉と妹①[スネーク](2011/08/27 21:09)
[57] 第56話 姉と妹②[スネーク](2011/08/27 21:15)
[58] 第57話 姉と妹③[スネーク](2011/11/22 23:20)
[59] 第58話 姉と妹④[スネーク](2011/09/19 20:15)
[60] 第59話 姉と妹⑤[スネーク](2011/11/22 23:23)
[61] 第60話 姉と妹⑥[スネーク](2011/11/22 23:41)
[62] 第61話 姉と妹⑦[スネーク](2011/11/22 23:42)
[63] 第62話 姉と妹⑧[スネーク](2011/12/18 22:27)
[64] 第63話 姉と妹⑨[スネーク](2011/12/29 21:27)
[65] 第64話 姉と妹⑩[スネーク](2011/12/29 21:41)
[66] 第65話 姉と妹⑪[スネーク](2013/08/24 00:15)
[67] 第66話 姉と妹⑫[スネーク](2012/02/05 17:27)
[68] 第67話 姉と妹⑬[スネーク](2012/02/18 23:56)
[69] 第68話 姉と妹⑭[スネーク](2012/02/19 00:00)
[70] 第69話 姉と妹⑮[スネーク](2012/03/18 21:24)
[71] 第70話 姉と妹⑯[スネーク](2012/03/18 21:30)
[72] 第71話 姉と妹⑰[スネーク](2012/04/15 22:56)
[73] 第72話 姉と妹⑱[スネーク](2012/04/15 23:00)
[74] 第73話 姉と妹⑲[スネーク](2012/04/30 21:33)
[75] 第74話 姉と妹⑳[スネーク](2012/05/27 22:11)
[76] 第75話 姉と妹21[スネーク](2012/05/27 22:20)
[77] 第76話 姉と妹22[スネーク](2012/06/10 22:05)
[78] 第77話 姉と妹23[スネーク](2012/07/08 00:22)
[79] 第78話 姉と妹24[スネーク](2012/07/08 00:30)
[80] 第79話 姉と妹25[スネーク](2012/08/05 01:40)
[81] 第80話 姉と妹26[スネーク](2012/08/06 22:05)
[82] 第81話 姉と妹27[スネーク](2012/08/18 01:12)
[83] 第82話 姉と妹28[スネーク](2012/09/01 00:53)
[84] 第83話 姉と妹29[スネーク](2012/09/16 02:12)
[85] 第84話 姉と妹30[スネーク](2012/11/18 22:38)
[86] 第85話 姉と妹・その後①[スネーク](2012/12/03 03:27)
[87] 第86話 姉と妹・その後②[スネーク](2013/07/20 22:08)
[88] 第87話 姉と妹・その後③[スネーク](2012/11/18 22:45)
[89] 第88話 姉と妹・その後④[スネーク](2013/03/03 01:01)
[90] 第89話 姉と妹・その後⑤[スネーク](2012/12/17 00:05)
[91] 第90話 大覇星祭編①[スネーク](2013/01/02 00:33)
[92] 第91話 大覇星祭編②[スネーク](2013/01/27 01:30)
[93] 第92話 大覇星祭編③[スネーク](2013/03/03 00:58)
[94] 第93話 大覇星祭編④[スネーク](2013/04/01 00:58)
[95] 第94話 大覇星祭編⑤[スネーク](2013/04/01 00:58)
[96] 第95話 大覇星祭編⑥[スネーク](2013/04/01 01:00)
[97] 第96話 大覇星祭編⑦[スネーク](2013/04/14 00:20)
[98] 第97話 大覇星祭編⑧[スネーク](2013/04/27 22:20)
[99] 第98話 大覇星祭編⑨[スネーク](2013/05/12 21:55)
[100] 第99話 大覇星祭編⑩[スネーク](2013/05/26 22:40)
[101] 第100話 大覇星祭編⑪[スネーク](2013/08/24 00:22)
[102] 第101話 大覇星祭編⑫[スネーク](2013/06/23 00:20)
[103] 第102話 大覇星祭編⑬[スネーク](2013/07/07 20:50)
[104] 第103話 大覇星祭編⑭[スネーク](2013/08/24 00:27)
[105] 第104話 大覇星祭編⑮[スネーク](2014/01/19 17:34)
[106] 第105話 大覇星祭編⑯[スネーク](2013/08/24 00:38)
[107] 第106話 大覇星祭編⑰[スネーク](2013/09/21 22:25)
[108] 第107話 大覇星祭編⑱[スネーク](2013/10/06 21:21)
[109] 第108話 大覇星祭編⑲[スネーク](2013/10/06 21:25)
[110] 第109話 大覇星祭編・その後[スネーク](2013/11/03 21:48)
[111] 第110話 誰が為に①[スネーク](2013/11/03 21:50)
[112] 第111話 誰が為に②[スネーク](2013/12/01 21:40)
[113] 第112話 誰が為に③[スネーク](2013/12/16 01:14)
[114] 第113話 誰が為に④[スネーク](2013/12/31 21:42)
[115] 第114話 誰が為に⑤[スネーク](2014/01/19 17:37)
[116] 第115話 誰が為に⑥[スネーク](2014/01/19 17:42)
[117] 第116話 誰が為に⑦[スネーク](2014/02/02 19:55)
[118] 第117話 誰が為に⑧[スネーク](2014/02/16 21:41)
[119] 第118話 誰が為に⑨[スネーク](2014/03/23 20:03)
[120] 第119話 誰が為に⑩[スネーク](2014/03/23 20:05)
[121] 第120話 誰が為に⑪[スネーク](2014/05/05 22:45)
[122] 第121話 誰が為に⑫[スネーク](2014/06/01 23:33)
[123] 第122話 誰が為に⑬[スネーク](2014/06/01 23:35)
[124] 第123話 誰が為に⑭[スネーク](2014/06/15 21:21)
[125] 第124話 誰が為に⑮[スネーク](2014/07/20 22:19)
[126] 第125話 誰が為に⑯[スネーク](2015/02/22 20:26)
[127] 最終話 巡る季節[スネーク](2014/08/09 21:38)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[20924] 第3話 御使堕し編①
Name: スネーク◆d7bf9510 ID:d6e05f02 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/04 05:47

「ふう」

湯船に肩まで浸かると、そんな息が自然と洩れた。
十人くらいが入れる湯船に、十人くらいが座れる洗い場。
小さな銭湯って感じのお風呂場には私以外、誰もいない。
まあ、当然か。今年は太平洋沿岸で巨大クラゲが大量発生したって言うし。
猛暑なのに海の客足がゼロに等しいって話も肯ける。


そう、海だ。
ここは常盤台の学生寮じゃない。
学園都市の中ですらない。
神奈川県の某海岸。海の家『わだつみ』の一階奥にある、お風呂場なのだ。


ホントに“外”まで来ちゃったんだなあ、私。


学園都市最強の超能力者である『一方通行(アクセラレータ)』を倒したアイツと一緒に。
濡れた前髪を指でいじりながら、ちょっと物思いに耽ってみたりする。


だってさ、仕方ないじゃない。
アイツ、いきなり一時避難を言い渡されたのよ?
あれはもう、ほとんど強制退去だった。
しばらく学園の外で大人しくしていろ、だなんて。


だからさ、仕方ないじゃない。
アイツに借りがある身としては、避難先までついていくのが筋ってもんでしょ。
インデックスにだって、アイツのことを頼まれてるし。
べ、別にアイツの傍にいたかったワケじゃないんだからね!


ああ、ダメだ。少しのぼせたみたい。
貸し切り状態だからと言って、ちょっとばかり入り過ぎたか。
そろそろ出ようかな。


私、長風呂派だから部屋で待ってて。


そうは言っておいたけど、アイツのことだ。
きっと入口の辺りで私のことを待ってくれているんだろう。
上条当麻とは、そういう奴だ。
頭に超が付くほどのお人好しで。
困っている人がいたら、何としてでも力になろうとして。
諦めるって言葉を知らなくて。


あの夜、私達姉妹を救うために、アイツは必死で戦った。
絶対無理なのに。明らかに不可能なのに。それでも、アイツは諦めなかった。
ボロボロになりながら、それでも、アイツは戦い続けた。
あの姿が、ずっとどこかに残ってる。あの姿に、後押しされてる。


ああ、だからかな。
だからこんなに、気になるのかな。


……好きに、なっちゃったのかな。












脱衣所を出ると、やっぱりと言うか、アイツがいた。

「よう」

わざとらしく言ってきた。

「やあ」

私もわざとらしく言ってやった。
それから二人して笑った。笑い合った。
何かいいな、こういうの。すごく楽しい。

「じゃ、行くか」
「うん」

肩を並べて、私達は歩き出した。
居間に向かって歩き出した。

「あー、お腹減った」

今日は食べるぞー、なんて気合いを入れていると、隣からは何故か溜め息。

「先に言っとくが、御坂」
「何?」
「晩飯、あんまり期待するなよ」
「え?何で?」
「海の家のレパートリーはラーメン、焼きそば、カレーの三つだけと相場が決まっている」

ええ、と非難するような声を上げる。

「これだけ海が近いんだし、お刺身の一つくらい……」
「それすら出ないのが、海の家の性ってヤツでしてね」

う、嘘だ。
海が目と鼻の先にありながら、海の幸にありつけないなんて。
すっかり意気消沈した時、気づいた。
食堂も兼ねた居間が、妙にざわついていることに。


あれ?おかしいな。
ここの宿泊者って、今日は私達だけのはずなのに。
コイツの両親も、明日の朝まで合流出来ないって連絡あったし。


思い出して、急に頬が熱くなった。
そうだ、コイツの……上条当麻の両親に会うんだ。
とは言っても、外出する際の保証人として同行してもらうだけ。
特別な意味なんてない。全然ない。
ない、んだけど……。
なのに、ひどく緊張してしまうのは何でだろう?


緊張の正体が分からないまま、居間に辿り着く。
しかし、私達は立ち止まった。
居間は人で溢れ返っていた。
乱立している丸テーブル、いや、ちゃぶ台かな?
とにかく、それらはどれも満席状態だった。


え?何?この人達。
一体どこから、こんなに湧いてきたの?

「お、丁度良いところに」

唐突に聞こえてきた声に、唖然としたまま振り返る。
“大漁”と達筆な字で書かれたTシャツを颯爽と着こなすオヤジさんが立っている。『わだつみ』の店主さんだ。

「あの、この人達は一体……?」
「悪いねえ。この兄ちゃん達、テメエの車で本州一回り、なんて無茶してる連中らしいんだけど」

それはまた酔狂な。
そんな時間とお金があるってことは、この人達、大学のサークル仲間とかかな?

「どうも揃ってガス欠になっちまったらしくてな。この辺にはガソリンスタンドもねえし、夏とは言えもう日も暮れる」

というワケで、と両手を合わせるオヤジさん。
何だろう。イヤな予感しかしないんですけど。

「アンタらに、ちーっとばかし頼みがあるんだが」












日のすっかり落ちた夜。
六畳一間の和室を照らすのは、古めかしい電灯カバーの付いた蛍光灯の明かり。
ボロボロの畳が張られた床。
プラスチックのボディが黄色く変色した、エアコン代わりの扇風機。


まあ、別にこの程度の環境は何の問題にもならない。
事前に話も聞いていたし、こんなものは余裕で許容範囲だ。
でも、そんな心の広い私にも苦手な環境というものはある。
例えば、気になっている異性と同じ部屋に泊まると言うような、精神に対する圧迫だ。
頼んでもいないのに、二枚の布団はピッタリとくっついている。


ちょっ、何のジョークよ、これは。まるで新婚初夜じゃない。


全く、あのオヤジさんは何を誤解してくれてるんだろう。
部屋が足りなくなったから、今日は二人一緒の部屋で寝てくれだなんて。
あの人絶対、私達が恋人同士だと勘違いしている。


むう、と唸る。
困った事態になった。
その、カ、カップル扱いされたことは別に不満じゃないけど。
で、でもこの状況はさすがにマズイというか……。


今現在、私は究極の二択を迫られていた。
現状を受け入れて素直に布団に入ってしまうか。
拒否して布団を思いっきり離してしまうか。


どうする自分。どうする美琴。
こんなチャンスは二度とないような気がする。
でも、どう考えても早い。早過ぎる。
どうしたらいいんだろう。


迷いに迷っていたその時、コンコンとノックの音。

「おーい、まだかー?」

あっと、いけない。
着替えるから、廊下に出てもらってたんだっけ。

「どうぞー」

ドアを開けて、アイツが入ってきた。へえ、と唸った。

「お前、そういうの着るんだ」

しきりに感心している。


今、私が着ているパジャマ。
それはいつも寮で着ているパジャマじゃない。
以前、初春さんと佐天さんの二人と一緒に行った洋服店『セブンスミスト』
そこで見かけた花柄の、可愛らしいパジャマを着ているのだ。


子供っぽいって二人が口を揃えて言うもんだから、その時は買わなかった。
だけど、どうしても欲しくて、着てみたくて。我慢出来ず、とうとう買ってしまったのだ。


ちなみに、このパジャマ姿をお披露目するのは今日が初めて。
黒子には見せてない。
このパジャマの存在すら知らない。
バカにされると分かってて、誰が見せてやるもんか。


ああ、でもでも。


思い切って着てみちゃったけど、コイツはどう思うかな。
そんな少女趣味の持ち主だったのかって、コイツも笑うのかな。
可愛いなって、言ってくれたりしないかな。
この朴念仁に、そんな甲斐性はないかな。
どうなのかな。
ああ、やっぱりよく分かんないや。

「何よ」

私をじっと見つめていたアイツの肩が、ビクリと震えた。
急に、その視線を外した。

「あぁーっと、そのー」


何?この曖昧な喋り方は?


どういうワケか、その視線が泳ぎまくっている。
一瞬だけ目が合ったけど、すぐに逸らされた。

「まあ、何と言うかだなー」
「はあ?」
「これはあくまで、俺個人の感想なんだがー」
「何?何が言いたいの?」

戸惑っていると、アイツは頭をバリバリと右手で掻き回した。

「お前、こんなに可愛かったっけ?」

そして、小声で言った。
言葉の意味を理解するのに、たっぷり五秒は必要だった。
次に、顔がボッと熱くなった。


か、可愛い?可愛いって、言ってくれた?


どうしよう。すごく、すごく嬉しい。
聞き間違いじゃないよね?
確かに、そう言ってくれたよね?

「あの」

確認のため、声をかけようとした。
刹那、アイツは逃げるように布団に潜り込んでしまった。
恥ずかしいのはお互い様、ということらしい。


私はクスリと笑みを洩らすと、部屋の明かりを消した。
布団を被って横になった。アイツの隣で。お互いの布団をピッタリとくっつけたままで。

「……ねえ……」

ふと、声をかけてしまった。
自分らしくもない、勢いに欠ける声。

「ん?」
「いや、その……」

何となく良い雰囲気だったから声をかけたんだけど、話題が無い。
いくら考えても、良い言葉が全く出てこない。
散々悩んだ末、口から出てきたのは、

「美琴って呼んで」

なんて言葉だった。


何でそんなことを言ったんだろう?
何かを誤魔化すためだったのか。思わず本音が洩れてしまったのか。
今でもよく分からない。でも、確かにそう言った。

「どうしたんだよ、急に?」
「だって……いつまで経っても名前で呼んでくれないし」

一度言ってしまうと、もう止まらなかった。

「なんか他人行儀って感じがするし」

そういうの、なんか寂しいし。

「お前が先に言うんなら考えなくもないな」

あ、何よそれー。

「強情」
「お互い様だろ」
「意地っ張りー」
「うっせ」

ふーん、意地でも自分からは呼ばないってワケね。
分かったわ。上等よ。
お望み通り、私から呼んでやろうじゃない。
名前ぐらい楽勝よ。

「と……」

なんて思ったのに。

「……とう……」

言い切るより先に顔中が熱くなった。


うわあ、ダメじゃん私。
人のこと言えないじゃない。

「お前だって人のこと言えないだろ」

得意げな声。
その一言に、カチンときた。

「当麻当麻当麻当麻当麻っ!」

狂ったように連呼してやる。
顔が熱くってしょうがないけど、知ったことか。

「当麻当麻当麻――」
「美琴」

それは突然だった。不意打ちだった。

「……ずるい」
「悪いかよ」
「悪い」

いきなりなんてずるい。

「もう一回」

そんなの、呼んだことにしてやらない。

「ちゃんともう一回呼んで」

しばらくの沈黙。
それから、当麻の唇が動いた。
美琴、と動いた。
胸がキュンと鳴った。

「名前で呼ばれると新鮮だね」
「そっか?」
「そうだよ」

そのあと、ちょっと信じられないことが起きた。
布団の外に出していた私の左手に、当麻が自分の右手を重ねてきたのだ。
そして、ぎゅっと握ってきた。
何故か自然に手が動き、私はそんな当麻の手をしっかりと握り返した。

「だったらいつでも呼んでやるよ」

ああもう、どうしよう。
幸せ過ぎる。
今夜はずっとずっと起きていたい。
思わずそう願ってしまった。
そうすれば、当麻の温もりをいつまでも感じていられる。

「お休み、美琴」
「うん。お休み」

温もりを感じたまま。
当麻と手を繋いだまま。
私は緩やかに眠りに落ちていった。










前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.035820007324219