泥濘の日常は燃え尽きた
魔術師による聖杯戦争
運命の車輪は回る
最も弱き者よ、剣を鍛えよ
その命が育んだ、己の命を試すために
残り 128人
≪1回戦 1日目≫
目が覚めた直後、自分が今どこで寝ているのか理解できなかった。
あのアカイ光景を夢だと認識するまでに数秒。
それから周囲が白いことに気付いた。
どうやら保健室らしい。
いつの間に倒れたのだろう。
それから、倒れる直前に見たあの光景を思い出す。
行き止まりのはずの廊下。
扉の先に広がる世界。
行く手を阻む、意味不明の人形。
そして、サーヴァント……。
サーヴァント、と聞いて思い出すのはあの騎士王である少女。
半人前以下の魔術師に剣を捧げ、付き添ってくれた女の子。
彼女と出会えなければ、己は何度も死んでいた。
……いや、彼女がいても何度も死にかけた。
紅の槍を持つ青い軽鎧を着た男には心臓を貫かれた。
灰色の益荒男はその腕力のみで人を握りつぶすことが可能だろう。
花鳥風月を愛する寺の門番は騎士王と競い合った。
神代の魔術師はたったひとことで人を殺すことができる。
紫の女性は学校の生徒、教師全員から生気を吸い上げた。
あの英雄王だって、簡単に人を串刺しにする。
そして、あの赤い男は……。
そんなことをぼんやりと考えてから、ベットから起き上がる。
どこにでもあるような保健室だが、どこか異質だというのを肌で感じる。
「やれやれ、ようやくお目覚めか。随分とのんびりしたものだな」
どこかで聞いたことのある声がした。
傍らに立つのは真紅の外套を着た、浅黒い肌の男。
1番見たくない男だ。
「……アーチャー……何でお前がいるんだ……」
すると男……アーチャーは嫌な笑みを浮かべた。
「ほう……もしやと思うが、私の真名を知っているのか?」
「……ああ、知ってるよ」
そう吐き捨てる。
「エミヤシロウ。俺の未来の可能性の1つ、だろ?」
そう言うと、アーチャーは少しだけ怪訝そうな顔をした。
「……確かに、私が人間だった頃はエミヤシロウと呼ばれていたが……私が生きていたのはこの時代から30年ほど前のことだぞ」
「え……?」
なんでさ?
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Fate/EXTRAの主人公が衛宮士郎だったら、という話です。
男主人公の名前が思いつかなくて、衛宮士郎と入力していたことからのネタ。
続くかどうか分かりません。