初めて投稿させて頂きます。
まだ需要があるかわかりませんが、ヒカ碁です。
読んだのがずいぶん昔のため、設定が曖昧かもしれませんがご容赦。
読んで頂ければ幸いです。
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・・・聞こえますか?
・・・私の声が聞こえますか?
むー、頭痛てぇ。
ガンガンしてグラグラしてギンギンしてアレだ。
酒の諸症状が俺の体を蝕んで、末期症状で手遅れだ。
・・・ようやく起きて頂けましたか。
私のことが見えますか?聞こえますか?
オマケに幻聴まで聞こえてきやがる。
「誰?」
なんつって幻聴に答えてる時点で人として終わってるな、我ながら。
TVに向かって話し掛ける老人に向かって一直線だ。
聞こえるのですね?
ようやく、ようやくまた巡り会えた。
おお、神よ感謝致します。
私の名は藤
う、、、幻聴が酷くなってきてるが、とりあえず
「うヴぁおエェェェーー!!」
ビチャビチャビチャビチャ。
ちょ、お待ちなさい!
あ、あ、碁盤にかかってるって!
まて、コラお前!やめなさい!
小一時間程してようやく吐き気も収まってきたよ。
やー、新歓コンパだからってハッチャけ過ぎたらいかんね。
なんて反省をしつつ現状を確認。
・・・えー、隊長!我が後方に、烏帽子被った幽霊が、恨めしそうにこちらを睨んでいるのを目視確認しました!ヨーソロー!
・・・どこかで見たことあるような気がします!どこかとか誤魔化しナシで言うと、漫画で見たことがあります!
・・・ついでに周辺の地理にはまったく心当たりがありません!つーか、蔵ん中っぽいです!サンダース軍曹、指示を、指示を!
さらに一時間後。
「・・・さっきはごめんなさい。」
(まったく、100年振りに目覚めたとたん、反吐ぶちまけられるとは思わなかったですよ!)
ムカムカしてやった。
場所はどこでもよかった。
今は反省している。
(貴方の考えていることも聞こえてくるのですよ!)
う、そういう設定だったっけ。
(意味がわかりませんよ。ま、いいですけどね。私の名は藤原佐為。悠久の時を超え、神の一手を探すために再び現世に舞い戻って来た碁打ちです。)
「つーか、なんで俺に?人を間違ってない?」
(私も間違いだと信じたいですが、貴方に私が見える以上、責任を取ってもらいます!)
ちょ、、おま、、出来ちゃった婚を迫る年増みたいな言い方だなソレ。
つーか、責任っつっても俺なんもしてねーし。
(だから、考えてることも聞こえてくるのですよ!年増とはなんですか!それに私を反吐まみれにしたことは、私は一生忘れません!接吻すら経験のない私に、よりによって反吐とは!)
「なんかその言い方、まるで女みたいだな。佐為って男だろ?」
(誰が男ですか!その役に立たない眼球くり抜いて、代わりに碁石でも詰めておきなさい!)
あれ?佐為って女だったっけ?読んだの昔だし、あんまり覚えてねーんだよな。
(なにがですか?)
「いや、なんでもない。それより、ここ人ん家だし、警察呼ばれる前にとっとと出てくぞ。」
(異存はありませんが、移動するなら碁盤は持っていって下さいね。)
「つーかこれ、人ん家のモノだから。お前は俺を窃盗犯にするつもりか?」
(大事の前の小事です。)
タチの悪い幽霊だな。いっそ碁盤燃やしてやれば、成仏するんかなぁ?
(・・・貴方、万に一つでもそのようなことを行えば、末代まで呪いますよ?)
うーん、ホントにタチが悪い。
ていうかコレ、ゲロまみれなんですけど。
(誰のせいですか!)
「なぁ、コレお前の直垂(ひたたれ)で拭けない?」
(・・・今すぐに呪って差し上げましょうか?)
そんなこんなでクソ重い(そして臭い)碁盤をえっちらおっちらと担いで、近所の公園まで来たわけだが、さてこれからどうしよう。
確か漫画だと、ヒカル君(苗字失念)に取り憑いた幽霊が碁を打ってライバルのおかっぱ君(名前も失念)と一緒にプロ試験受けて青春って感じだったよな。
その幽霊が、今まさに俺に憑いている。
てーことはだよ。
俺、タイトル総ナメ?億万長者?ウハウハ?
(さっきから訳のわからないことを。いいですか、そもそもそんな不純な考えで碁を打つのは、全ての碁打ちに対して失礼でありですね、それに)
うっさい。
お前はギブ&テイクを知らんのか!
なに、知らない?そっか、外来語か。
アレだよ、見返りと報酬?ご恩と奉公?
つまり、お前は碁を打ちたい、俺はハシャぎたい。
そういう持ちつ持たれつな関係なんだ、理解したか?
よっしゃ、まずはプロになろう!
そんで、俺様無敗伝説だ!ガハハハ!
・・・ところで俺、戸籍は?
お世辞にも快適とは言えない目覚め。
公園のベンチで一夜を明かした体が、俺に抗議するかのようにボキボキと音を立てる。
さて、昨日の酔いも完全に抜けたところで、もう一度整理しよう。
今、俺は漫画の世界に来ている。
寝て起きたら愛しのスイート6畳間かと思いきや、くっさい碁盤が俺に現実を教えてくれている。
衣食住なんもない。身分証すらない。
昨日は浮かれてプロの碁打ちになってやるだの言っていたが、住所不定無職ではそれもままならない。
例えプロになれたとしても、訳のわからんオセロもどきを一日中眺めて暮らす生活はごめん蒙りたい。
(そんなことはありません!碁はとっても面白いのです!)
「じゃ、俺が碁を覚えたら、俺が他の奴と打ってもいいのか?」
(う、、、それは、、、)
「ほらみろ、覚えなきゃ覚えないでつまらなそうだし、覚えたら覚えたでお前に打たせてもらえなくてストレスが溜まりそうだし。」
(むー。)
「大体だな、今日の飯にも困ってる俺に、碁を打つゆとりなんかねぇよ。」
(そんな!じゃあ私は、いつになったら神の一手を極めることが出来るのですか!)
「うるさい、喚くな!」
(うう、酷い。100年振りの現世なのに、、、)
「知るか。」
(私の純潔を奪ったくせに、、、)
「人聞きの悪いこと言うな!つーかお前、そんなキャラだっけ?」
(ふふふ、私は神の一手を極めるためなら、天使にでも悪女にでもなりますよ。)
「神の一手ねぇ。ようわからんけど、そんなに凄いもんなんか?」
(そんなことを聞かれても、私にはわかりませんよ。わからないから探しているのです。)
「ていうか、待て!今気が付いた!それがもしかしてクリア目標か?お前、神の一手を見たら、成仏すんだよな?てことは、もう俺には用はないわけだ。そしたら俺も帰れるのかも!」
(なんだかわかりませんが、協力してくれるのですか?)
「まぁ、しょうがねぇ。現状ではそれだけが唯一の希望だ。んで、どうなんだ?神の一手、明日くらいになんとかなんねぇか?」
(貴方はアホですか!明日なんとかなるのなら、1000年も探しません!)
「そりゃそうだ。とりあえず、まずは衣食住の確保。そいで、碁の相手探しだな。」
(はい、よろしくお願いします!)
とは言うものの、とにかく住むところがないのがキツイ。
住み込みで働くにも、身分証がねぇし。
ていうか、財布がねぇから履歴書もねぇよ。
どこで落としたんだ、財布。
ついでに携帯もねぇ。
・・・はぁ、コレ、自殺したら現実に戻れたりしねぇかな。
(勇者よ!死んでしまうとは何事ですか!)
もう、コイツにツッコむ気力もねぇ。
今俺は、棋院の前にいる。
というのもつい先ほど、起死回生のグッドアイデア、まさしく神の一手たる手段を思いついたからだ。
碁を打ちつつ、且つ衣食住を確保する。
そう、つまり、どっかのプロに住み込みで弟子入りをするのだ。
一石二鳥!まさに神の一手!
あぁ、これで帰れたりしねぇかなぁ。
(二兎追うものは一兎も得ず、とも言いますけどね~。)
「誰の為だと思ってやがる!」
(自分のためじゃないですか。大体、私の力なくして飛び込みで弟子入りなんて出来ないでしょう。さぁ、佐為お姉様と呼ぶのです!)
「・・・お前、ちょっとキャラ変わり過ぎだから。」
(ふふふ、神の一手を極めるためなry)
トリップしているコイツはほっといて、ここで重要なのは誰に弟子入りをするかだ。
当然強いやつじゃないといかん。
それに、飛び込み弟子を速攻で取るような破天荒なやつ。
なにせこちとら今晩の宿もないからな。
つまり、俺の(というか、佐為の)棋力に魅了されちゃうような碁バカじゃないといけないわけだ。
漫画キャラでいうと、まずあのおかっぱの父、コーヨー先生。
うーん、碁バカだけど、常識がありそうな感じだったよな。
イキナリ今晩から内弟子にしてくれる印象はまるでない。
後は、、、思いだせん。
顔さえ見りゃ、なんとなく印象も出てくるんだけどなぁ。
こんなことなら、あの漫画を熟読しておくべきだった。
む、あの白スーツ!
なんか漫画に出てきた気がする!
確か強かった!9段だか10段だか!そして一人モノのオッサンだった!あと、眼鏡だった!名前はわからん!よし、アイツだ!
「10段!」
振り返る白スーツ。
よかった、多めに言っといて正解だった。
スラッとした長身!
人を射抜くような眼光!
そして、人を弾き飛ばすかのような二つの膨らみ!
・・・あれ、この人、オサーンじゃなかったっけ?
「なんだ?」
つーか、でかっ!
なんか拝みたくなってくるな。
「おい。」
むー、何カップなんだろう。
この戦闘力、まさか!新宿の掲示版に書くと街ハンターが呼べちゃうくらいにXYZ!?
スカウターを、俺に巨乳スカウターを!早く!
「おい!人に呼びかけておいて無視か!」
「いや、スカウター、じゃなくて、10段!」
「だから、なんだと聞いている。」
「俺と一局打って下さい!そして、俺が勝ったら(弟子にして下さい)ひとつ願い事を叶えて下さい!」
あれ?
弟子にして下さいって言おうとして、言い間違えた。
まぁ問題ない、勝った願い事で弟子を希望すればいいんだ。
決してそのオパーイでアレコレ遊ばせて下さいなどと言うつもりは」
「アホが、途中から口に出てるぞ!」
げ、しもた!
これで勝負を避けられたら、今夜の寝床が!
「まぁいい、そこまで言うからには、私が勝ったらお前がどうなるのか、覚悟は出来ているんだろう。打とうじゃないか、面白い。」
・・・佐為、マジで信じてるぞ!
棋院がざわめきに包まれる。
そう、俺達の(というか、佐為の)勝利がこのざわめきの元凶だ。
最初に
(コミってなんですか?)
などとほざいてきた時には、コイツを殺して俺も死ぬ、むしろ10段(未だに名前がわからず)に俺が秒殺される(碁でもリアルでも)かと慌てたが、始まってしまえばさすが中国4000年の歴史の25%!
まったく危なげなく、かどうかはさっぱりわからないが、とにかく勝ったわけだ。
佐為の力もそうだが、俺もかなりがんばった!
なにせ指示通りに置かなきゃいけないんだ、10段の眼光という名のプレッシャー、ボインという名の威圧に打ち勝って。
なにはともあれ、オパーイゲッツ!
お父さん、お母さん、ぼく、今日大人になります!
(弟子入りですよ!弟子入りですからね!)
む、そういえば、遠い過去にはそんな話もあったようななかったような、なかったことにしたかったような、、、
(ダメです!私はこの者が気に入りました!毎日この者と打つんです!)
いや、よく考えれば弟子入りも悪くない。
若い男女が一つ屋根の下、身も心も一つになり一心同体で紡ぎあう愛の奇跡!
10段!
ダメ、まだ昼よ!
なんつって、ああ!青春!ヒデキ感激!」
(ちょ、ばか!また口に出してますよ!)
「お前の下種な欲求の相手か。くっ、今まで生きてきて、これほどの屈辱を受けたのは初めてだ。・・・だが、勝負師として一度受けた約定は果たす。好きにしろ。」
うわ、10段、顔色が蒼白を通り越してて、鬼気というのに相応しいオーラ出してる。
しまった、オッパイオッパイと調子に乗りすぎたな、こりゃ。
10段の家に居座るにしろ、四六時中この調子じゃ、小動物なら3日で昇天してしまう。
俺でも一週間が限界だ。
よし、もうエロとかオパーイとかは置いといてここはひとつ、今からでも紳士っぷりをアピールして、なんとか快適ライフをゲットせねば。
「10段、俺を貴方の(弟子にしてください)ヒモにして下さい!」
アレ?