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No.20852の一覧
[0] HOTD ガンサバイバー(学園黙示録 オリキャラ)[ゼミル](2014/03/09 11:15)
[1] HOTD ガンサバイバー 2[ゼミル](2010/08/12 11:49)
[2] HOTD ガンサバイバー 3[ゼミル](2010/08/15 10:16)
[3] HOTD ガンサバイバー 4[ゼミル](2010/08/22 12:00)
[4] HOTD ガンサバイバー 5[ゼミル](2010/09/01 11:47)
[5] HOTD ガンサバイバー 6[ゼミル](2010/09/04 00:48)
[6] HOTD ガンサバイバー 7[ゼミル](2010/09/08 11:32)
[7] HOTD ガンサバイバー 8[ゼミル](2010/09/12 11:27)
[8] HOTD ガンサバイバー 9[ゼミル](2010/09/17 00:10)
[9] HOTD ガンサバイバー 10[ゼミル](2010/11/12 00:13)
[10] HOTD ガンサバイバー 11(唐突に復活)[ゼミル](2010/11/22 00:46)
[11] HOTD ガンサバイバー 12[ゼミル](2010/11/22 00:56)
[12] HOTD ガンサバイバー 13[ゼミル](2010/12/11 00:31)
[13] HOTD ガンサバイバー 14[ゼミル](2010/12/25 13:30)
[14] HOTD ガンサバイバー 15[ゼミル](2010/12/30 22:53)
[15] HOTD ガンサバイバー 16[ゼミル](2011/02/15 00:00)
[16] HOTD ガンサバイバー 17[ゼミル](2011/03/15 10:44)
[17] HOTD ガンサバイバー 18[ゼミル](2011/07/22 23:38)
[18] HOTD ガンサバイバー 19[ゼミル](2011/08/01 00:29)
[19] ガンサバイバー 20[ゼミル](2012/06/03 22:45)
[20] ガンサバイバー 21[ゼミル](2012/06/06 00:58)
[21] ガンサバイバー 22[ゼミル](2013/07/02 00:36)
[22] ガンサバイバー 23[ゼミル](2013/07/07 11:20)
[23] ガンサバイバー 24[ゼミル](2014/02/26 23:24)
[24] ガンサバイバー 25[ゼミル](2014/03/09 11:15)
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[20852] HOTD ガンサバイバー 19
Name: ゼミル◆d3473b94 ID:caf7395d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/01 00:29
※バイト首になったぜひゃっほい!(ヤケクソ
※理由:「体調不良で休み過ぎなんだから学生なんだしまず体治しなさい」デブオタで病弱気味とかないよなー・・・orz
※で結局原作どうなってるんですか佐藤先生ー!!


















――――『先客』の中の1人であるお婆さんの持病の治療の為に近所の病院に薬を手に入れに行く事になった。

向かうメンバーは小室・平野・あさみさん・田丸さん、そして俺の5人。

小室と平野は持ち前のおせっかいな性格と危険を冒す事へのデメリットを理解してても良心が咎めてたりして悩んでた辺りに騒ぎを聞きつけて目覚めたありすちゃんの鶴の一声が理由っぽい。

あさみさんの場合は警察官の使命どうのこうのとかいう職業意識からで、田丸さんは・・・・・・何で一緒に来たんだろうか。

まあ、それぞれの理由なんて俺にとっちゃどうでもいい事で。

勿論俺が立候補した理由は、死と隣り合わせでしか感じられないスリルを、<奴ら>相手の暴力の快楽をまた楽しめる絶好の機会だったからなのは、言うまでもない事である。












「ここまでは順調に来れましたね」

「そうですねぇ、<奴ら>の姿も比較的少なくて何とか避けて来れましたし」


曲がり角ごとに壁に張り付いて<奴ら>の姿を確認しながら進むせいで、最初に聞いた普通に歩いた場合の所要時間よりも数倍ぐらい掛けて(どの時計もぶっ壊れてるのしか見当たらないから実際どれだけかかったのか分からないけど)、ようやく目的地が見えてきた。

遠目にはパッと見大きめの一軒家に見えるけど、昔小室も通った事のある病院だそうな。


「でも油断できませんよ。ちょっと騒いだだけで<奴ら>はあちこちから集まってきますからね。民家の中に潜んでるだけかもしれません」

「銃も弾もあるけど当たらなきゃ意味無いしな・・・・・・これ、音が小さめなのは凄いありがたかったけどショットガンよりも当てにくかったし」

「そりゃそうさ。散弾と違ってそれは精密射撃向けなんだから。だから特殊部隊で使われてるのさ」


隠密行動メインという事で持ってきた銃も大半がサイレンサー付きだ。小室とあさみさんはMP5SD6、田丸さんは宮本から借りた銃剣付きのモスバーグM590。平野はお気に入りの1つであるVSSヴィントレスで俺は愛用のM4のサイレンサー装着仕様。

サブの銃器として4人とも暗殺仕様のスタームルガー・MkⅡ。俺だけがこっちもサイレンサーを取りつけたP226Rを使い続ける事にした。これぐらいこだわったって構うまい。

銃以外ではあさみさんが警察用の特殊警棒で小室と平野は俺が見つけたアックスを装備している。それから手榴弾も幾つか。

銃以外にも田丸さんとあさみさんも余っていた装備を身に着けさせたけど、田丸さんは東欧辺りの民兵みたいで婦警の制服の上から着こんだあさみさんの方は――――ぶっちゃけ着られてるって感じで全然似合っていないし、小柄だから里香とは別の意味でサイズも合っていない。胸囲的な物も含めて。


「小室、それからあさみさんもよく聞いて。2人の銃のセレクターはセミオートにセットしてある。つまり1発1発にしか弾は出ないから、むやみに弾を消費する心配は無いよ。撃つ時は両手とストックを使って銃を固定してから、一呼吸置いて落ち着いて冷静に狙って。カバーは僕と真田に任せればいいから」

「ああ、分かった」

「はい、了解しました!よろしくお願いしますね、コータさん!」

「え、ええ、任せて下さい!」


平野だけかよ、と内心思ってしまっていると何故かちょいちょいと田丸さんが俺の肩を突いてきた。


「なあなあ、何気にあの2人いい雰囲気じゃね?」

「今はほっとくとして、田丸さんのだけは撃ったら嫌でも響き渡りますから、いざって時以外は出来るだけ銃剣で突き刺すか殴るかルガー使う様にして下さい」

「おkおk、それぐらい心得てるって。言われた通り薬室には装填してないしな」

「それから小室、サイレンサーのお陰でそれなりに音は小さくなるって言っても、そのMP5の銃声は電話の鳴った時ぐらい大きいからもっと静かに倒したい時はもっと静かなルガーかアックスを使った方が良いぞ」


これで1回ポンプアクションで弾丸を送り込まない限り暴発の心配はない。下手にビビって不用意に引き金を引いても弾も出ないし。

・・・・・・そろそろ潮時だろう。


「小室、ここいらで一旦様子を見よう。少し離れた所で1発鳴らして隠れてる<奴ら>を誘導してみる」

「よし、それじゃあ僕も援護についていくから、平野達はここで待っててくれ」


俺のリュックには作ったばかりのガスボンベ爆弾が数個突っ込んであった。

小室を伴い、早足で病院とは別方向の路地へ向かう。これぐらいで十分かと思った所で足を止め、ライターとボンベ爆弾をリュックから引っ張り出した。


「上手くいってくれるかな?」

「それは見てのお楽しみさ」


曲がり角でコンクリ製の塀に張り付きながら爆竹の導火線に点火すると、すぐにそれをサイドスロー気味に角の先の道に投じた。燃焼音を立てながらボンベが10mほど先まで飛んでから放置されていた自動車にぶつかり、車体の上を跳ねて更に転がっていく。

鳴り響いた爆発音は手榴弾よりも若干高いパァン!!というものだった。同時に中身のプロパンガスが燃焼して人1人分ぐらいの火柱が立ち上がったかと思うとすぐ消えさる。

予想以上に強烈な炸裂音だった。見てみると衝撃で車のガラスも砕けている。そして何処からともなく早速聞こえ出す墓場から響くような微かな呻き声。


「結構凄かったな」

「ああ、予想以上だ。それよりも今ので<奴ら>が集まってくる。早く平野の所に戻ろう」

「分かってるさ。それにしても何処に隠れてたんだろ」

「住宅地なんだ、隠れる場所はそこら中にあるに決まってるだろ」


言ってる傍から塀の向こうに<奴ら>が動く気配がしてるし。平野達の元に戻る途中でも、門の隙間からとか<奴ら>の姿が見え隠れしていた。

戻ってからさっきまで居た辺りを振り向いてみると、あっという間に数十体の<奴ら>がのそのそ向かっていく姿が見えた。こっちの存在に気付いた様子は無いけどいきなり集まり出した<奴ら>の大群にあさみさんも田丸さんも顔をハッキリ蒼ざめさせている。


「な、なあ。早く薬手に入れて戻ろうぜ!」

「あ、あさみも賛成です!!」

「それじゃあ今の内に早く終わらせましょう。集まった<奴ら>がこっちに戻ってくる前に」


抜き足差し足でも早足で自然コソコソした身のこなしになりながら病院の入口まで辿り着いた。

入口から覗いた限りでは<奴ら>の姿は無いが、当たり前だけど油断は出来ない。血痕が残されてる辺り、この病院も<奴ら>に襲われた可能性は大きい。というか、病院なんだからむしろ<奴ら>が集まっててもおかしくないんじゃなかろうか?

先頭に立った田丸さんがゆっくりと突き出した銃剣の先を器用に扉に引っかけて開けていってたその時、おもむろに小室が田丸さんに聞いた。


「・・・・・・ちょっと聞いていいですか?」

「短く頼む」

「何であなたまで来たんです?」


田丸さんの返答は噴出混じりの苦笑だった。


「・・・・・・そういえば何でかな?」


これには俺達も笑うしかない。それでも緊張感は適度に保たせながらそっと病院内への侵入を開始した。

町医者にしては待合室はそれなりの広さを誇っていたけれど、こんな状況で診察待ちの患者が呑気に居座ってる筈もなく人っ子1人いない。<奴ら>の姿も無し――――今の所。

足元には血痕以外に大量のマンガが散乱していて、小室と田丸さんが此処の先生は大のマンガ好きだったとかなんとか言ってたのを思い出す。

俺達が侵入しても<奴ら>が現れる気配は無い、無いんだけど・・・・・・


「あのさ平野」

「何?」

「さっき鳴らした時、此処から出てく<奴ら>は見たのか?」

「――――いいや、1体も出てきてない筈だよ」


その場合、答えは2択になる。

最初から<奴ら>はこの病院には居なかったか――――それとも<奴ら>がこの建物の中に潜んだまんまか、だ。

答えがどっちなのかを証明する為に俺はハンドサインで皆を止めてその場で警戒する様指示すると、腕の中のM4をひっくり返すとストックで手近な壁を強めに叩いた。どん、と鈍い音が鳴る。

効果は覿面だった。次の瞬間、まさしくホラー映画のお約束宜しく<奴ら>が受付窓口を仕切るガラスを、診察室の扉を半ば突き破る形で一斉に飛び出して来たのだ。

情けない悲鳴を上げて蒼ざめたあさみさんが震えながら銃を構えようとしたが、それを我らがリーダー小室が押さえる。


「まだ撃たないであさみさん!これぐらいなら銃を使わなくてもまだ何とかなります!」

「オイオイマジかよ!?銃使った方がよっぽど手っ取り早いだろ!」

「僕は平野や真田ほど銃に自信がありませんからね。まだコッチの方が確実ですよ」


右手にアックスを握り締め、薄く笑みを浮かべながら奴らに接近していく小室に、後方の警戒は平野に頼んでその後を俺が続く。するとああクソ、などと呻ききながらも田丸さんまで槍代わりのショットガンを構えて追っかけてきた。

俺は小室が無視した受付窓口から身を乗り出してこようとしている女の<奴ら>のすぐ横まで近づくと、小室と同じように右手に持ったアックスを<奴ら>の首元に叩きつけた。

鎌型の細く突き出たピックが<奴ら>の延髄部分に半分ぐらいまで埋まる。延髄を破壊して脳にも達しているだろう、数回痙攣しただけでその<奴ら>はあっさりと2度目の死を迎えた。

診察室から現れた数体の<奴ら>の方は小室と田丸さんが相手取り、小室が横殴りにアックスを叩き込んで比較的薄い側頭部ごと脳までピックを突き刺し、宮本ほど綺麗に型にはまった物じゃないけど勢い良く田丸さんの突き出した銃剣が顔面から後頭部まで<奴ら>の頭部を串刺しにして撃破。

後詰めの平野から警告が飛ぶ。


「6時方向、<奴ら>が集まってきたよ!」


振り向くと入り口近くに早くも何体かが近づいてきているのが目に飛び込んできた。それに対する小室の反応も素早い。


「僕と真田で押さえる!皆は血漿を!」

「Yes,Sir!」


室内の捜索という事で長物のVSSから振り回しやすい拳銃に持ち換えながら病院の奥に向かう平野と入れ違いに、俺と小室は扉に手をかけようとしていた<奴ら>の1体を蹴り倒しながら外に出る。

倒れた<奴ら>の顔面をアックスで中身諸共カチ割ると返り血が顔に飛んだ。そういえば噛まれたら<奴ら>になるのは分かってるけど返り血とかが身体の中に入ったらどうなるんだろう?


「本当にどっから湧いてきたんだよ!?」


小室の叫びも御尤も、外に出た俺達が見たのは道の両側を埋め尽くす<奴ら>の姿だった。数は少なくとも片方の集団だけでも1クラス分は居てて、現在進行形でなおも増加中。

さっき陽動に引っ掛かって集まった連中かもしれない。まだどっちも家数軒分の距離はあるけど、元来たルートを通って戻る事が不可能になったのは疑いようが無い。

・・・・・・今の俺達の役目は病院の探索が終わるまでの<奴ら>の足止めだ。それぐらいならまだ何とかなるだろう。


「とにかく今は<奴ら>の侵攻を出来る限り足止めしよう。小室もこれを使ってくれ」


予備のライターとボンベ爆弾を幾つか手渡す。


「これを手近な家の方に投げ込むんだ。<奴ら>の中に放り込んだって威力は期待できないしな、とにかく病院とは別の方向に<奴ら>の気が惹かれるようにするんだ」

「あ、ああ分かった」


ボンベ爆弾はそれなりに嵩張るから大量に持ってこれてはいないから、これが無くなれば後は地道に倒していくしか手は無い・・・・・・別に俺はそれでも構わないけども。

もはや誇張抜きで道を埋め尽くしている<奴ら>。その先頭の頭上越しに、点火したボンベ爆弾を塀の向こう側の民家の庭先に放り込む。

破裂音と共に火柱の頂点が塀越しにチラリと覗いた。途端に<奴ら>は向きを変えて塀の方へ進路を変える。勿論壁にぶつかりゃそこでストップなんだけど、塀の存在にすら気付いていない様子であーうー言いながら身体をコンクリートの塀に擦りつけるばかりだ。

でもそれが続いたのもいいとこ数秒。というか、道の反対側で小室が投じたボンベ爆弾が炸裂するやいなやまたこっちの方を向き直って病院への侵攻を再開しだした。こりゃヤバい。


「小室、タイミングを合わせて投げてくれ!かたっぽずつだと陽動の効果が薄い!」

「わ、分かった!」


今度はお互い相手に気を配りながら同時に投擲。前後で同時に爆発音が起きるとさっきよりも長い時間壁の方に集まるようになったけど、数秒が十数秒になった程度だった。気がつけばあっという間に手持ちのボンベ爆弾は無くなっていた。


「爆弾が無くなった。小室そっちは」

「僕の方もさっき無くなった所だ。この先は銃を使わなきゃならないだろうな」


既にボンベ爆弾の囮の効果から覚めた数体の<奴ら>がこちらに接近しつつある。まだ病院の探索は終わらないのか。


「小室さん、真田さん、終わりましたよ!!」


わざわざ外に出てきてまで教えてくれたあさみさんには多分悪気はなかったんだろうけど、タイミングと音量が悪過ぎた。

―――――ほら、まだ壁の方に夢中になってた連中まで一斉にこっち向いちゃったじゃねぇか。


「ひ、ひっ、何時の間にこんなに一杯・・・・・・!?」

「じょ、冗談はよしこちゃんにも程があるだろこの数は!?」

「もうこっちからは通れません。庭を通って、裏から出ましょう!」


小室の指示に従い、建物の外側を通って裏手の道に出ようと試みようとするが、


「ダメだ小室、こっちにも一杯居る!」

「クソ、何時の間に!」


庭先にも結構な数の<奴ら>が侵入していた。小室の言う通り、一体どっから湧いて来たのやら。

やがて小室はこっちにも聞こえるぐらいの音量で喉を鳴らしてから覚悟の籠もった強い声色でこう言い放った。


「――――平野!真田!<奴ら>を撃ちまくれ!でも無駄弾は使うなよ!」

「冗談、誰に言ってるのさ小室!」


平野と同意見だ。少なくとも小室よりはよっぽど上手いっての。

さあリーダーからの御許しも出た。M4の安全装置解除。仕込まれた通りに1秒で安定した射撃姿勢を取って『標的』に照準。

超音速のライフル弾じゃサイレンサーを使っても効果はたかが知れている。サイレンサー下での5.56mmNATO弾の銃声はシパァン!と鞭で地面を叩いた音にも似たかなり鋭い音だった。でもこう乱戦になった以上、M4の場合もうサイレンサーの意味無い気がしないでもない。

平野はVSSではなくMkⅡを使って丁寧に1射1殺を繰り返していた。.22LR弾とサイレンサーの組み合わせは抜群との評判だけあってこっちはかなり静かで、銃声が銃声とは思えない。ボルトの作動音まで聞き取れるぐらいの静音性だ。流石殺し屋お気に入りと称されるだけある。

ただし威力も銃声に比例するかのように、中身諸共後頭部を突き抜けていく俺のM4とは対照的に平野が撃った<奴ら>は額にポツリと新たに小指の直径よりも小さそうな穴が生じている以外は全く変わりない。多分後頭部を貫通すらしてないんじゃなかろうか。

小室もスライドストックを伸ばしたMP5SD6を構えて射撃を加えていたけど精度は俺と平野ほどじゃない。5発撃ってちゃんと頭に当たるのは1発、上半身に当たるのが2発で残りの2発は外れ。

でも反応が遅れて銃を向けるのも手間取っていたあさみさんと田丸さんよりはよっぽどマシだ。


「2人共落ち着いて対処して下さい!」

「わ、悪ぃ」

「でも小室、数が多いよ!この分だと多分裏の道も<奴ら>で埋まってるんじゃ」

「どうやら見えない所でも陽動におびき寄せられたみたいだな。これは失敗したかも―――っと」


回れ右して表の方からも迫ってきていた<奴ら>に銃撃を加える。こういう時は頭よりも脚を撃つべきだ。倒れると後続の<奴ら>も引っかかって転倒するから足止めしやすい。

でもちょっとこれは数が多過ぎる。


「そこの窓から中に!」


小室が言うが早いか指差された窓めがけ掃射した。銃弾が窓ガラスを砕き窓枠に足を乗せて病院の中に戻る。

探索時に平野達が掃討したらしい<奴ら>の肢体を踏み越えて一目散に唯一の出口である扉を開けた。待合室の方を除いてみると殆どが庭の方に流れたのか、ありがたい事に最初に来た時同様待合室に<奴ら>の姿はない。

でもまだこっちに気付いていないとはいえ、玄関前には大量の<奴ら>がたむろしている。


「廊下はまだ安全だけど玄関から先は塞がれてる」

「2階に逃げよう。廊下の突き当たりに階段がある!」


小室が続いて窓枠から侵入を果たし、先に入った平野の助けを借りてあさみさん、そして田丸さんが窓枠に足を乗せて―――――


「んなぁっ!?」

「きゃうっ!!?」


いきなり田丸さんが前のめりにバランスを崩し、診療室への床へと倒れ込んだ。<奴ら>の伸ばした手が田丸さんのズボンの裾にでも引っ掛かったのか。

巻き込まれたあさみさんを平野が助けようと駆け寄り、田丸さんが呻き声を漏らしながら仰向けになったその時。

1体の<奴ら>が窓枠に残ったガラス片を身体中に突き刺したまま俺達の後を追う様に侵入してきて、未だ立ち上がれていない田丸さんに覆い被さった。


「田丸さん!」

「だ、だい、大丈夫だ、大丈夫だよな俺!?」


圧し掛かられはした。が、田丸さんに<奴ら>の顎(あぎと)は届いていなかった。

田丸さんが咄嗟に腰溜めに構えていたM590の先端に備えた銃剣。その切っ先が<奴ら>の喉元に食い込み、すんでの所で田丸さんの身を<奴ら>の魔の手(口?)から守っていた。

噛まれていなくても危うく喰いつかれる所だった田丸さんの精神状態は勿論まともとは言い難く、半狂乱で喚き散らしながら何度もモスバーグの引き金を引いていた。でも弾は出ない。

当たり前だ。暴発防止の為にわざと薬室に装填させてなかったんだから。


「田丸さん、薬室に弾が送り込まれてないんです。棹桿を動かして!」

「わ、わ、わ、わ」


平野の警告にまともな言語で返事も出来ない状態で、銃身に平行して並ぶマガジンチューブに備えられたレシーバーをせわしなく前後させてから、再度田丸さんが無我夢中といった体で引き金を引く。

<奴ら>の頭部が消失した。正確には原形を留めない位木端微塵に吹き飛んだ。残骸の大半が散弾共々天井へとへばりつき、一部が田丸さんにも降りかかる。

それがどうやら田丸さんの理性の糸を断ったとみえる。


「うあ、うわああああああああああああああああああああああああああ!!!」


立ち上がった田丸さんが雄叫びを上げながら獲物を求めて窓から腕を突き出してくる<奴ら>に向け、ショットガンを連射した。

田丸さんの腕が前後してポンプアクションが着実に作動する度、散弾が骨を砕き肉片を撒き散らす。庭先はとっくに<奴ら>で埋め尽くされてるから散弾の1発たりとも外れちゃいないだろう。


「落ち着いて!落ち着いて下さい田丸さん!それ以上は弾の無駄です!」

「ハァ、ハッ、ハアッ、そ、そうか、悪ぃ」


一声かけられてすぐ我に返った田丸さんも中々だけど小室も中々シビアな事を言う。やっぱりコイツはリーダー向きの人間だと、こんな時でも思ってしまう。


「んで平野とあさみさんは何で赤い顔で見つめ合ってんだ?」

「「ふあい!?」」


青春するには場所考えろと流石の俺も突っ込んでやりたいけど、やっぱり状況が許してくれそうになく、そうこうしている内に貴重な時間を消費してしまっていた。


「拙いぞ、玄関近くに居た連中もさっきの銃声で待合室に入ってきてる」

「急いで上に上がろう!屋根伝いに外に逃げれば何とかなる!」


頼もしいお言葉で。一目散に皆して廊下の奥へと向かうが、その前に診察室の扉を閉めてから鍵をかけるのも忘れない。これでまあ時間稼ぎにはなるだろう。

続いて待合室側の<奴ら>の内先頭の数体を撃ち倒して後続を足止めし、手榴弾を手に取ると軽く渋滞しだした<奴ら>の大群に手榴弾を投げ込む。

爆発する前に俺も階段を上る。爆発音と共に爆風が狭い通路を駆け抜けるのを背中に感じながら無事に2階へ到達。俺が来た所で小室と平野が手当たり次第に物を積み上げてバリケードを拵えた。

・・・・・・ようやく一息つける。


「大丈夫ですか、田丸さん・・・・・・」

「あ、ああっ、何とかな・・・・・・でも代わりにお気に入りの靴を片方持ってかれちまったよ」

「あはは、それは災難でしたね。無事に戻ったら新しい靴探さないと」


そんな会話を余所に2階の間取りをチェックしていく。どうやら居住空間としてではなく物置きとして使われてる様子だ。


「ここにも薬のストックがあるみたいだな」

「よし、それじゃあここからも出来る限りの物を貰って行こう。まだリュックに余裕はありますよね?」

「ああ、まだ入るぜ」

「よし、僕が階段を見張ってますからどんどん入れちゃってって下さい」


小室に言われた通り、部屋に積んである段ボールの山を崩しながら―――ショッピングモール内の薬局には置いてなさそうな専門的な品々を手当たり次第に突っ込んでいく。

下から聞こえてくる何重にも重なる足音と呻き声にもなるべく気を払いつつ、あっという間に全てのリュックがパンパンに膨らむまで医療品を詰め込んだ。


「終わったよ小室!早く退散しよう!」

「よし、窓から屋根伝いに!」









脱出はまあ、そんな感じで比較的簡単に安全圏まで辿り着けたのだった。








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