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No.20629の一覧
[0] 俺と鬼と賽の河原と。生生世世 (ほのぼのラブコメ)[兄二](2010/08/02 00:00)
[1] 其の二 俺とどうかしてる日常。[兄二](2010/07/29 22:08)
[2] 其の三 俺とメイドと妙な気配。[兄二](2010/08/01 23:57)
[3] 其の四 俺とニート二人について。[兄二](2010/08/07 22:44)
[4] 其の五 俺と私の八月七日。[兄二](2010/08/10 22:44)
[5] 其の六 俺と身長。[兄二](2010/08/10 22:44)
[6] 其の七 俺と笑うあの人。[兄二](2010/08/13 22:36)
[7] 其の八 俺とこの時期。[兄二](2010/08/23 11:01)
[8] 其の九 俺とアホの子とアホ。[兄二](2010/08/20 23:19)
[9] 其の十 俺と新聞と猫。[兄二](2010/08/23 22:03)
[10] 其の十一 俺と買い物。[兄二](2010/08/27 21:56)
[11] 其の十二 俺とそろそろ――。[兄二](2010/08/31 01:05)
[12] 其の十三 俺と太陽。[兄二](2010/09/02 21:56)
[13] 其の十四 掌を太陽に。[兄二](2010/09/05 21:17)
[14] 其の十五 俺も周りも落ち着いて。[兄二](2010/09/09 22:14)
[15] 其の十六 いつも通りと変わった一日。[兄二](2010/09/15 21:33)
[16] 其の十七 俺と午睡。[兄二](2010/09/15 21:31)
[17] 其の十八 俺とお前。[兄二](2010/09/23 22:16)
[18] 其の十九 俺と勉学。[兄二](2010/09/23 22:12)
[19] 其の二十 俺と煙草。[兄二](2010/09/26 22:39)
[20] 其の二十一 俺と甘いお菓子。[兄二](2010/10/03 21:51)
[21] 其の二十二 俺と秋空。[兄二](2010/10/03 21:54)
[22] 其の二十三 俺と彼女の評価について。[兄二](2010/10/06 22:36)
[23] 其の二十四 俺と鯖。[兄二](2010/10/09 22:23)
[24] 其の二十五 俺と手袋。[兄二](2010/10/13 21:41)
[25] 其の二十六 俺と炭水化物。[兄二](2010/10/17 23:17)
[26] 其の二十七 俺とメイドの空模様。[兄二](2010/10/20 22:27)
[27] 其の二十八 俺と秋と言えば。[兄二](2010/10/30 22:51)
[28] 其の二十九 俺と小さいあの人。[兄二](2010/10/30 22:26)
[29] 其の三十 俺と月見草。[兄二](2010/11/03 23:35)
[30] 其の三十一 俺と動かない銀子。[兄二](2010/11/06 22:34)
[31] 其の三十二 俺と答案。[兄二](2010/11/10 22:41)
[32] 其の三十三 俺と手袋とマフラー。[兄二](2010/11/13 22:37)
[33] 其の三十四 俺とロマンスはスコープの輝き。[兄二](2011/01/29 20:37)
[34] 其の三十五 俺と不調。[兄二](2010/11/21 23:05)
[35] 其の三十六 俺と隣の家事情。[兄二](2010/11/27 22:58)
[36] 其の三十七 俺とこたつより。[兄二](2010/11/28 22:14)
[37] 其の三十八 俺と学校の怪談再来。[兄二](2010/12/01 22:21)
[38] 其の三十九 俺と厄日。[兄二](2010/12/05 22:23)
[39] 其の四十 俺と誕生日。[兄二](2010/12/08 22:04)
[40] 其の四十一 俺と風邪。[兄二](2010/12/11 22:12)
[41] 其の四十二 俺と手加減。[兄二](2010/12/19 00:54)
[42] 其の四十三 俺と悪魔祓い。[兄二](2010/12/28 22:39)
[43] 其の四十四 俺と悪魔祓いというか。[兄二](2010/12/23 22:14)
[44] 其の四十五 俺と奴の誕生日。[兄二](2010/12/25 21:04)
[45] 其の四十六 俺と年の瀬。[兄二](2010/12/28 23:11)
[46] 其の四十七 明けましておめでボグシャア。[兄二](2011/01/01 22:12)
[47] 其の四十八 俺と大人の色香について。[兄二](2011/01/05 22:21)
[48] 其の四十九 俺と彼女の家。[兄二](2011/01/08 22:36)
[49] 其の五十 働く俺。[兄二](2011/01/11 22:00)
[50] 其の五十一 俺と悪魔。[兄二](2011/01/14 22:27)
[51] 其の五十二 俺と日常。[兄二](2011/01/17 21:31)
[52] 其の五十三 俺と狭き世界の日常。[兄二](2011/01/20 22:42)
[53] 其の五十四 俺と閻魔の休日の過ごし方。[兄二](2011/01/23 22:13)
[54] 其の五十五 俺と死亡遊戯。[兄二](2011/01/29 20:36)
[55] 其の五十六 俺とお前の遠距離恋愛。[兄二](2011/01/29 20:34)
[56] 其の五十七 俺とシュークリーム。[兄二](2011/02/01 23:18)
[57] 其の五十八 俺と節分。[兄二](2011/02/04 23:32)
[58] 其の五十九 俺と鎧。[兄二](2011/02/08 21:49)
[59] 其の六十 俺とあの日の少し前。[兄二](2011/02/12 23:23)
[60] 其の六十一 俺と奴の命日。[兄二](2011/02/14 22:46)
[61] 其の六十二 俺と奴の命日は終わったはずだ。[兄二](2011/02/17 22:28)
[62] 其の六十三 俺と弦楽器。[兄二](2011/02/20 22:04)
[63] 其の六十四 俺と心は侍。[兄二](2011/02/23 22:33)
[64] 其の六十五 じゃら男には友達が少ない。[兄二](2011/02/26 22:56)
[65] 其の六十六 俺と紅茶。[兄二](2011/03/04 21:49)
[66] 其の六十七 俺と小豆洗い。[兄二](2011/03/04 21:48)
[67] 其の六十八 俺と百合。[兄二](2011/03/10 22:55)
[68] 其の六十九 俺と妾。[兄二](2011/03/10 22:55)
[69] 其の七十 俺と手繋ぎ日常。[兄二](2011/03/13 17:12)
[70] 其の七十一 俺と貴方の近距離恋愛。[兄二](2011/03/16 21:49)
[71] 其の七十二 俺と日記。[兄二](2011/03/19 22:17)
[72] 其の七十三 絶対霊障祟神[兄二](2011/03/21 21:47)
[73] 俺と鬼と賽の河原と。絶対霊障祟神「一」[兄二](2011/03/23 21:01)
[74] 俺と鬼と賽の河原と。絶対霊障祟神「二」[兄二](2011/03/25 21:05)
[75] 俺と鬼と賽の河原と。絶対霊障祟神「三」[兄二](2011/03/29 22:29)
[76] 俺と鬼と賽の河原と。絶対霊障祟神「祓」[兄二](2011/04/01 22:35)
[77] 其の七十四 俺と事件の裏側で。[兄二](2011/07/17 15:56)
[78] 其の七十五 俺と手繋ぎ。[兄二](2011/04/07 23:19)
[79] 其の七十六 俺と構ってにゃん子。[兄二](2011/04/10 21:41)
[80] 其の七十七 俺と婆。[兄二](2011/04/14 23:01)
[81] 其の七十八 俺と更に。[兄二](2011/04/18 00:46)
[82] 其の七十九 俺と睡眠。[兄二](2011/04/20 22:28)
[83] 其の八十 俺とツンデレ。[兄二](2011/04/23 21:44)
[84] 其の八十一 俺と未知との遭遇。[兄二](2011/04/27 22:02)
[85] 其の八十二 俺と白いワンピース。[兄二](2011/04/30 23:59)
[86] 其の八十三 俺とお悩み相談。[兄二](2011/05/03 22:49)
[87] 其の八十四 俺と父親度。[兄二](2011/05/06 22:19)
[88] 其の八十五 俺と謎の李知さん。[兄二](2011/05/09 22:16)
[89] 其の八十六 俺と覇気。[兄二](2011/05/13 21:46)
[90] 其の八十七 如意ヶ嶽由壱は焦らない。[兄二](2011/05/16 22:07)
[91] 其の八十八 俺とお前の恋の駆け引き。[兄二](2011/05/20 22:33)
[92] 其の八十九 俺と死亡遊戯弐。[兄二](2011/05/22 22:29)
[93] 其の九十 俺と鍛錬。[兄二](2011/05/25 22:08)
[94] 其の九十一 俺と厠を行ったり来たり。[兄二](2011/05/29 22:01)
[95] 其の九十二 俺と山崎春の山崎祭り。[兄二](2011/06/02 21:44)
[96] 其の九十三 俺と既知との遭遇。[兄二](2011/06/05 21:58)
[97] 其の九十四 Dances Under The Half Moon.[兄二](2011/06/09 21:29)
[98] 其の九十五 Dances Under The Full Moon.[兄二](2011/06/12 21:42)
[99] 其の九十六 Dog Fight.[兄二](2011/06/16 21:54)
[100] 其の九十七 俺と狐に化かされて。[兄二](2011/06/19 22:41)
[101] 其の九十八 俺と死亡遊戯参。[兄二](2011/06/24 21:17)
[102] 其の九十九 俺と贈答品。[兄二](2011/06/27 22:04)
[103] 其の百 俺とあの子。[兄二](2011/07/03 20:23)
[104] 其の百一 山崎愛の一人劇場。[兄二](2011/07/07 21:41)
[105] 其の百二 俺と飼うとか飼われるとか。[兄二](2011/07/17 15:55)
[106] 其の百三 俺と道端の煙草。[兄二](2011/07/14 22:14)
[107] 其の百四 俺と年上の女性。[兄二](2011/07/17 22:27)
[108] 其の百五 俺と二重衝撃。[兄二](2011/07/21 22:13)
[109] 其の百六 私と夏。[兄二](2011/07/24 23:01)
[110] 其の百七 ああ素晴らしき夏。[兄二](2011/07/27 20:38)
[111] 其の百八 俺と写真機という名のカメラ。[兄二](2011/07/31 21:23)
[112] 其の百九 俺と祭る夏。[兄二](2011/08/04 22:02)
[113] 其の百十 俺とフワジャン。[兄二](2011/08/07 22:24)
[114] 其の百十一 俺とエプロン。[兄二](2011/08/17 22:40)
[115] 其の百十二 夏は甘くない。[兄二](2011/08/17 22:39)
[116] 其の百十三 俺とひんやりとした。[兄二](2011/08/17 22:38)
[117] 其の百十四 俺とぬか喜び。[兄二](2011/08/21 23:12)
[118] 其の百十五 俺の知らないところで千日手。[兄二](2011/08/25 22:10)
[119] 其の百十六 俺と愛沙と閻魔。[兄二](2011/08/29 22:31)
[120] 其の百十七 俺と不真面目な件について。[兄二](2011/09/01 22:09)
[121] 其の百十八 俺とSとM。[兄二](2011/09/04 21:45)
[122] 其の百十九 俺と敗北。[兄二](2011/09/11 22:27)
[123] 其の百二十 なんと単純な。[兄二](2011/09/15 21:47)
[124] 其の百二十一 しろがねの錬金術師[兄二](2011/09/18 22:20)
[125] 其の百二十二 快速スタンピード[兄二](2011/09/23 22:19)
[126] 其の百二十三 ハートフルボッコ。[兄二](2011/09/28 21:00)
[127] 其の百二十四 大体三十九度。[兄二](2011/10/02 22:09)
[128] 其の百二十五 俺と飲まれないでくれ本当に。[兄二](2011/10/05 22:24)
[129] 其の百二十六 俺とハニーバイト。[兄二](2011/10/09 21:20)
[130] 其の百二十七 俺と飲まれないでくれ本当に2。[兄二](2011/10/13 22:14)
[131] 其の百二十八 俺とベアー。[兄二](2011/10/18 23:24)
[132] 其の百二十九 俺と女子力。[兄二](2011/10/24 22:37)
[133] 其の百三十 俺と温かい手。[兄二](2011/10/28 21:34)
[134] 其の百三十一 生温ハロウィン。[兄二](2011/10/31 22:36)
[135] 其の百三十二 俺と熱と看病と。[兄二](2011/11/04 23:23)
[136] 其の百三十三 俺と回転。[兄二](2011/11/09 22:16)
[137] 其の百三十四 俺と赤い青い。[兄二](2011/12/04 22:27)
[138] 其の百三十五 俺と呪いの藁人形。[兄二](2011/12/04 22:27)
[139] 其の百三十六 俺と思い出の地。[兄二](2011/12/04 22:26)
[140] 其の百三十七 俺とサービス過剰。[兄二](2011/12/04 22:26)
[141] 其の百三十八 俺と飲まれないでくれ本当に3。[兄二](2011/12/04 22:26)
[142] 其の百三十九 俺と生首と事件。[兄二](2011/12/04 22:25)
[143] 其の百四十 俺と女の強さについて。[兄二](2011/12/08 20:53)
[144] 其の百四十一 乙女と言う名の男前。[兄二](2011/12/12 22:42)
[145] 其の百四十二 俺と首。[兄二](2011/12/15 21:51)
[146] 其の百四十三 俺と長さ約10.6メートル、幅約30センチメートルの布。[兄二](2011/12/23 22:44)
[147] 其の百四十四 俺と家事手伝い兼湯たんぽ。[兄二](2011/12/28 01:00)
[148] 其の百四十五 俺と聖誕祭。[兄二](2012/01/03 21:40)
[149] 其の百四十六 俺と大掃除。[兄二](2011/12/31 10:34)
[150] 其の百四十七 俺と彼女は店主。[兄二](2012/01/03 22:05)
[151] 其の百四十八 俺と怒り変換。[兄二](2012/01/09 22:25)
[152] 其の百四十九 俺というべきか私と言うべきか。[兄二](2012/01/15 22:34)
[153] 其の百五十 俺か私か、それともわたしか。[兄二](2012/01/19 21:44)
[154] 其の百五十一 彼女と俺の平行線。[兄二](2012/01/23 22:30)
[155] 俺と彼女の恋の行方。[兄二](2012/01/25 22:21)
[156] 其の百五十二 俺と棒が。[兄二](2012/01/29 22:24)
[157] 其の百五十三 俺とまさかの客。[兄二](2012/02/04 01:24)
[158] 其の百五十四 俺と襟巻き。[兄二](2012/02/05 22:41)
[159] 其の番外編「馬鹿」[兄二](2011/01/01 22:08)
[160] 其の番外編「身勝手だからこそ」[兄二](2011/01/01 22:05)
[161] 人物設定[兄二](2010/09/02 21:53)
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[20629] 其の二十四 俺と鯖。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:ee3a1201 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/09 22:23
俺と鬼と賽の河原と。生生世世









「にゃん子、にゃん子」

「んー?」

「人間状態で変則土下座みたいな伸びをしたり、階段の手すりにほお擦りしたりするのはやめたほうがいいのではないかと思う」

「なんでかにゃー?」

「奇矯なおっさんに連れて行かれかねん」

「ご主人のこと?」

「おっさんと言われた俺の心は粉砕寸前である」

「おじさんどころじゃないじゃん、ご主人」

「それもそうなんだが。まあ、とりあえず俺じゃない」

「えー、攫ってよ、オ、ジ、さ、まっ」

「やめろ」













其の二十四 俺と鯖。













 畳の上に転がって、寝ながら本を読んでいると、にゃん子がふと俺の隣に座る。

 そして、座るなり、口を開いた。

 それはもう、藪から棒に。


「ご主人ご主人。さば食べたい」

「やだ」

「なんで?」

「鯖嫌いだから」

「やっぱり天狗だから?」

「いや、なんか普通に嫌いだ」

「さば食べたい」

「会話が一回転したな。だが断る」

「なんで普通にお魚食べれるのにさばはダメなの? ご主人」

「鯖が……、鯖が憎いんだっ……。俺の妹を奪って行った鯖が……!!」

「妹いたの? ご主人」

「どーだかな」

「で、なんで嫌いなの?」

「鯖? 鯖ってなんかあれだろ。魚面だし」

「普通じゃん」

「鱗あるし」

「普通じゃん」

「鯖だし」

「存在全否定だにゃー」

「第一にゃん子さんよー。なんで鯖なんだ」

「えー? さばってなんかあれじゃん。魚面だし」

「魚なら標準装備だな」

「鱗あるし」

「魚なら標準装備だな」

「さばだし」

「鯖だもんな」

「さばだもんね」

「第一俺じゃなくて藍音に頼んでくれたまえよ」

「頼んだけど」

「けど?」

「藍音もさば嫌いだってにゃー」

「そーなのかー。食卓にも話題にも出さんから知らんかった」

「やっぱ天狗だから? って聞いたら、ご主人が食べないから余るって主婦みたいな理由で断られたー」


 俺は、長時間同じ体制で本を読んでいたため、体勢を変えんと身を起こす。

 その背に、にゃん子は額をこすりつけてきた。


「買ってよー」


 俺はつっけんどんに首を横に振る。


「いやだ。鮭ならいいが鯖はダメだ」

「さけもさばも変わんないにゃー。ちょっと点が付いて、右下の方が輪になってるだけだって」


 それなら鮭でもいいじゃねーか、とは言わないことにした。


「その違いは大きい。濁点は重要だ。さはにさげだぞ。意味わからん」

「そんなことよりもさばー」


 拗ねたような声を上げるにゃん子。

 俺はもう無視することにした。


「……」

「うにー」

「おいにゃん子」

「にゃん?」

「指を噛むな」

「ひいひゃん。へふもんひゃはいひ」

「減るんだ。しゃぶるな。吸うな」

「んーっ」


 俺の指はふやけた。























 そして、次の日がやってくる。


「……なにやってるんだ、にゃん子」

「にゃんとなく」


 そこには、洗濯物の籠に尻を入れて、身体全体で見るとはみだし気味に固定されたにゃん子の姿があった。


「ぬけにゃい」


 かなり間抜けな姿である。


「そうか」


 俺は、そこを立ち去ろうとする。

 にゃん子のお楽しみを邪魔しちゃいけない、と早足になるのだが、


「あ、まってまってっ。抜いてってよご主人」

「なんかいやだ」


 ちょっと焦った声に途中で止められる。

 俺は振り向いて半眼でにゃん子を見た。

 やっぱり嵌っている。

 間抜けな姿だ。


「にゃー……、にゃー……」


 儚げににゃーにゃー言うにゃん子に、俺は溜息を吐いた。


「……ほら」


 溜息と共に手を差し出す。

 にゃん子は、その手を取り、立ち上がろうとするが、籠ごと持ち上がってしまった。


「にゃー、取ってー」


 俺は、溜息をもう一つ。

 尻を持ち上げた体勢で四つんばいになったにゃん子の籠を掴んで引き抜く。

 やっと開放されたにゃん子は嬉しげに立ち上がりにこにことしていた。


「ったく、なんでこんなことになってたんだか」


 呆れたように呟けば、にゃん子はしれっと言ってのけた。


「籠とか鍋とか。猫が鍋に入ってるんじゃなくて、鍋に入ってるのが猫なんだよっ」

「じゃあ……、俺が前食った寄せ鍋は――ッ」

「そう……、猫だったんだよ」

「……いや、ないわ」

「うん。でさ、ご主人」

「ん?」


 不意に、にゃん子は言った。

 それはもう、やっぱりやぶから棒だった。


「釣りに行こうよ」


 俺は固まる。


「……なんだって?」


 対して、にゃん子はぴょんぴょんと飛び跳ねた。


「釣りー」

「なんでやねん」

「だって誰もさばくれないもん」

「それで何で釣り」

「新鮮なお魚でがまんするから、一緒に行こうよ」

「あー……」

「お願いっ」


 見上げながら言われ、俺はとっとと折れることにした。
















 猫状態のにゃん子を頭に乗せて、歩き続けること四半刻と少し。

 飛んでいくのは風情に欠けると、俺は下詰から借りた道具を担ぎ、肩を揺らしていた。


「にゃんっ、にゃんっ」


 上機嫌なにゃん子は、たしたしと俺の頭を肉球で叩く。

 そして、やってきたのは港だ。

 地獄に海と呼べる海は存在しない。代わりにあるのは巨大な湖だ。

 海水浴場も、港だろうと、なんだろうと、湖なのだ。そんな港。


「いい天気だな」


 呟いて、波止場に腰を下ろす。

 にゃん子もまた、軽やかに俺の隣に降り立った。

 そして、人間状態になり、隣に座る。


「うんっ」

「ま、成果は期待すんなよ」

「うんっ」


 嬉しげにこくこくと頷くにゃん子。


「いや、期待してないことに関してそう元気よく頷かれると困るんだが」

「ふにゃ? うんっ」


 上の空なくらい元気に頷いてにゃん子はにこにこと波止場から垂らした足をぱたぱたとせわしなく動かしていた。

 その尻尾もまた、ゆらゆらと揺れている。

 俺は楽しそうだしまあいいか、と適当に釣り具を用意。餌を付けて、糸を垂らす。

 ルアーで釣るなんぞできるわけもない。


「にゃー、にゃー」


 にゃん子はゆっくり左右に揺れながら、まるで歌でも歌うように揺れている。

 俺は胡坐を掻いた膝の上で頬杖突いて、片手で竿を下げた。


「ご主人」

「なんだ?」

「ご主人ご主人っ」

「なんだよ」

「んー、呼んでみただけ」

「変な奴だな」


 呼ばれて、横にいるにゃん子を見るが、なんでもないと言われ、俺は水面に視線を戻す。

 なにが楽しいのかはわからないが、やっぱり楽しそうだった。


「ごしゅじーん」

「なんだ、また呼んだだけか?」

「んー、だいすきっ」

「そーかい。ありがとさん」


 楽しげに、にゃん子は自分の額を俺の肩に擦り付ける。

 俺は、ちらりとにゃん子を見て、やっぱり水面に視線を戻した。

 のどかで実にいいことだ。

 そうして、ゆったりと時間が流れる。

 魚は釣れない。

 にゃん子が声を上げた。


「釣れるまでがんばろーねっ」

「努力はする」

「どうせなら、釣れなければいいんじゃないかにゃー?」


 悪戯っぽく、にゃん子は笑った。

 俺は呆れた声を上げる。


「お前さんが魚食いたいってったんだろーが」


 すると、にゃん子は、笑ったまま、しれっと言うのだ。


「うん、でもねっ。やっぱり夕ごはんまで粘りたいもん」


 日は高い。

 ということは、これから三時間か四時間粘ると。


「長いな」

「ダメ? ご主人……、こういうのキライ?」


 にゃん子の不安に揺れる瞳に、俺はぼんやりと呟いた。


「ま、たまにはこんな日も悪くねー」

「うんっ」


 秋の空は青く。夏のように暑くもなく、冬のように寒くもない。


「すきすきっ、だいすきっ」

「おー、そうかい。嬉しいね」


 俺は釣りをしていて、隣にゃ猫。

 ま、悪くない。

















「んー、でもやっぱりご主人の膝が落ち着くー」

「やり難いんだが」


 結局、魚の一匹も連れなかった。

 ただし、にゃん子は終始楽しそうだった。
































―――
今度こそ薄いっ、間違いない……、はず。
砂糖を控えて、ほのぼのマックス。会話文も増量気味。
ただし自分の感覚ほど当てにならないものはない。










返信。

怜様

昼寝する子供はとても可愛いと思います。そして、ここのところほのぼのマックスに行きたい気分です。
多分あれですね。憐子さんとかの破壊力が高かったからですね。ほのぼの分が欲しくなったんです。
それにしても、久々の録音です。薬師の基本武装の一つではありますが。錫杖、鉄塊、高下駄、スーツ、ボイスレコーダーです。
あと、薬師が見てしまったのは、絶対的乙女聖域です。語ったが最後、彼の頭部が潰れトマトになることでしょう。


SEVEN様

そう、つまり、まあ、ええ。なんら一切手の加えられていない未開拓の丘が見えまして――、窓を誰かが叩いています。
そして、薬師のくせに分かっている発言を吐いてましたね、前回。薬師のくせになまいきだ。
ただ、やっぱり大人の女性が恥じらいたっぷりでロリだからいいんです。顔をまっかにして怒ってくれないと面白くないんです。
まあ、なんというかもう、薬師は既に逮捕されてもいい気がしてきますが。波止場から落ちてしまえこの野郎。

光龍様

東京ですか。私は道産子の田舎もんなんで、その辺りの都会も一度は拝んでみたいですね。
ただ、田舎者としてはテレビなんかに映るあの人ごみの中で生きていける気がしないです。そんな田舎でもない気がしてましたが結局田舎は田舎です。
さて、季知さんですが、この人が一番純情ではある気がします。だからいじられ役なんですね。打てば響くから。
そして、憐子さんのうっかりにより、下着はナッシング。目撃してしまったのが薬師じゃなかったらもっと気まずいでしょう。


奇々怪々様

うさ耳なんです。なぜかうさ耳。私も変な気がします。猫耳キャラが完全に定着したんですかね。おかしいなぁ。
そして、薬師は基本的に何も考えてないと言うことが前回で発覚しました。奴の脳内は七割がたまあ、いっかで構成されております。
で、まあ、話題の存在しないヴェールの内側ですが、やはりあれですよ。隠されてるから萌えるんです。スカートの中に隠されてるのと、普通に見えてるのでは違うんです。
あと、やっぱり猫耳ですよね。うさ耳はどちらかと言うと大人状態でバニーやってほしいです。


アンプ様

むしろあれです。季知さんはにゃん子の被害を最低限に抑える役割をしているのです。彼女がいないと無秩序に猫耳ロリが量産です。
そして憐子さんは、パンツという存在そのものに思い当たらなかったという猛者っぷりです。
玲子さんに関しては、一応プールに行ってるので、コンプリートです。後は翁、じゃら男とかそんな感じの人々です。
メインがラブコメだからなかなかタイミングがないんですよね、特に翁は。後は……ないです、とくに。


通りすがり六世様

本人は自分をノーマルだと信じてるから手に負えないんですね。どう考えても変態で、人が恥ずかしがったり、おろおろするのを見て楽しむサディストです。
それはさておき、季知さんは、やっぱりいじられ役なんです。その真面目に取る態度をどうにかしないとずっとこのままなのに、それを真面目に受け取って直そうとすると矛盾する不思議。
そして、身体の大きさとか、コンプレックスがちらほらあるので、攻めは遠慮気味です。代わりに薬師が攻めますが。
ちなみに、狐耳は出現する予定があったりします。新キャラじゃなくて既存の人ですが。


志之司 琳様

馬鹿で非常識な人々としては、真面目な季知さんが可愛くて仕方ないんですね。年齢的にも実は結構年下だったりして。
結局、眺めるに徹して一番楽しむ薬師が一番鬼畜なんですよね。一人一人の罪は軽いが、全体的に関わっている薬師が一番酷い。
そして、憐子さんは和服内に下着は邪道派で、あと、窮屈だとか云々のほか、寝るときは全裸だの、基本的に和服だので基本的にノーパンスタイリストです。結果があれです。
で、まあ。薄かったと思ったんですけどね。ええ。味の濃いものを食べ過ぎると味覚障害になると言うね。あれです。まあ、百八回くらいは萌え殺していきたいと思ってますが。


春都様

放っておけないとか、いじったら楽しいとか、大人気です季知さん。見た目的には上位なのに、年下として可愛がられてます。
そして、そうそうたるメンバーに支援を受けた結果が桃色ゴスロリリボンうさ耳です。というか位置的には由美と季知さんは薬師の家で同じ格付けです。
で、ついでに、由壱はきっとみんなの中で、兄に似ないで健やかに育って欲しいと思われてることでしょう。
しかし、今ひとつ自分じゃ分からないんですけど、破壊力高いんですかね。自分では抑え目にしてる気がしないでもないんですが。







最後に。

ここ最近長らく猫と接していなかったせいで、野良猫を発見するなり全力疾走しました。もう末期です。


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