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No.20619の一覧
[0] 星は夢を見る必要はない(クロノトリガー)【完結】[かんたろー](2012/04/28 03:00)
[1] 星は夢を見る必要はない第二話[かんたろー](2010/12/22 00:21)
[2] 星は夢を見る必要はない第三話[かんたろー](2010/12/22 00:30)
[3] 星は夢を見る必要はない第四話[かんたろー](2010/12/22 00:35)
[4] 星は夢を見る必要はない第五話[かんたろー](2010/12/22 00:39)
[5] 星は夢を見る必要はない第六話[かんたろー](2010/12/22 00:45)
[6] 星は夢を見る必要はない第七話[かんたろー](2010/12/22 00:51)
[7] 星は夢を見る必要はない第八話[かんたろー](2010/12/22 01:01)
[8] 星は夢を見る必要はない第九話[かんたろー](2010/12/22 01:11)
[9] 星は夢を見る必要はない第十話[かんたろー](2011/08/02 16:03)
[10] 星は夢を見る必要はない第十一話[かんたろー](2011/01/13 06:26)
[11] 星は夢を見る必要はない第十二話[かんたろー](2011/01/13 06:34)
[12] 星は夢を見る必要はない第十三話[かんたろー](2011/01/13 06:46)
[13] 星は夢を見る必要はない第十四話[かんたろー](2010/08/12 03:25)
[14] 星は夢を見る必要はない第十五話[かんたろー](2010/09/04 04:26)
[15] 星は夢を見る必要はない第十六話[かんたろー](2010/09/28 02:41)
[16] 星は夢を見る必要はない第十七話[かんたろー](2010/10/21 15:56)
[17] 星は夢を見る必要はない第十八話[かんたろー](2011/08/02 16:03)
[18] 星は夢を見る必要はない第十九話[かんたろー](2011/08/02 16:04)
[19] 星は夢を見る必要はない第二十話[かんたろー](2011/08/02 16:04)
[20] 星は夢を見る必要はない第二十一話[かんたろー](2011/08/02 16:04)
[21] 星は夢を見る必要はない第二十二話[かんたろー](2011/08/02 16:05)
[22] 星は夢を見る必要はない第二十三話[かんたろー](2011/08/02 16:05)
[23] 星は夢を見る必要はない第二十四話[かんたろー](2011/08/02 16:05)
[24] 星は夢を見る必要はない第二十五話[かんたろー](2012/03/23 16:53)
[25] 星は夢を見る必要はない第二十六話[かんたろー](2012/03/23 17:18)
[26] 星は夢を見る必要はない第二十七話[かんたろー](2011/08/02 16:06)
[27] 星は夢を見る必要はない第二十八話[かんたろー](2011/08/02 16:06)
[28] 星は夢を見る必要はない第二十九話[かんたろー](2011/08/02 16:06)
[29] 星は夢を見る必要はない第三十話[かんたろー](2011/08/02 16:07)
[30] 星は夢を見る必要はない第三十一話[かんたろー](2011/08/02 16:07)
[31] 星は夢を見る必要はない第三十二話[かんたろー](2011/08/02 16:08)
[32] 星は夢を見る必要はない第三十三話[かんたろー](2011/03/15 02:07)
[33] 星は夢を見る必要はない第三十四話[かんたろー](2011/08/02 16:08)
[34] 星は夢を見る必要はない第三十五話[かんたろー](2011/08/02 16:08)
[35] 星は夢を見る必要はない第三十六話[かんたろー](2011/08/02 16:07)
[36] 星は夢を見る必要はない第三十七話[かんたろー](2011/08/02 16:08)
[37] 星は夢を見る必要はない第三十八話[かんたろー](2011/08/02 16:07)
[38] 星は夢を見る必要はない第三十九話[かんたろー](2011/08/02 16:06)
[39] 星は夢を見る必要はない第四十話[かんたろー](2011/05/21 01:00)
[40] 星は夢を見る必要はない第四十一話[かんたろー](2011/05/21 01:02)
[41] 星は夢を見る必要はない第四十二話[かんたろー](2011/06/05 00:55)
[42] 星は夢を見る必要はない第四十三話[かんたろー](2011/06/05 01:49)
[43] 星は夢を見る必要はない第四十四話[かんたろー](2011/06/16 23:53)
[44] 星は夢を見る必要はない第四十五話[かんたろー](2011/06/17 00:55)
[45] 星は夢を見る必要はない第四十六話[かんたろー](2011/07/04 14:24)
[46] 星は夢を見る必要はない第四十七話[かんたろー](2012/04/24 23:17)
[47] 星は夢を見る必要はない第四十八話[かんたろー](2012/01/11 01:33)
[48] 星は夢を見る必要はない第四十九話[かんたろー](2012/03/20 14:08)
[49] 星は夢を見る必要はない最終話[かんたろー](2012/04/18 02:09)
[50] あとがき[かんたろー](2012/04/28 03:03)
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[20619] 星は夢を見る必要はない第十話
Name: かんたろー◆a51f9671 ID:423dceb7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/02 16:03
 鼠から得たパスワードを入力し、大型コンピューターまでの道を作る。最初はルッカに頼んだのだが、少し前まで冷たい反応を返していたせいかむくれて俺の言うことを聞かなかった。さっき土下座したのにその掌の返しようは何ですか。驚いて噴出しましたよ。
 扉を開けた先にはまた鼠が徘徊しており、四本足の蜘蛛のような形をした機械や脚部に車輪のついた一つ目の機械が我が物顔で歩いていた。思ったんだけど、この鼠たちは何を食べて生きてるんだろうか? 実は他に食料保存庫があってそこから食べ物を調達してるんじゃないか?
 俺たちは見つからないようにこそこそと移動を開始した。止むを得ず戦闘になった時、ルッカとマールの連携が炸裂した。ルッカの銃で敵の気を逸らし、後ろからマールが撃つ。またはマールが持ち前の運動量で辺りを跳ね回りルッカの脅威のハンマー捌きが敵を葬る。俺はといえば後ろのほうで女の子怖え……と恐怖しているだけだった。
 今更だけど、あのリーネ王妃の血を継いでいるだけあってマールの体の動かし方は素人のそれではない。素手の勝負なら前衛の俺でも敵わないかもしれない。ここに男女の力の差など存在しないのだ。いや、俺が情けないんじゃないよ? ここに集う女の子二名が異端なんだよ。今なんか蜘蛛型メカの足をマールが蹴りでふっ飛ばしましたよ? 鉄の機械を生身の足で壊すってどういうことだよ、元気いっぱいの可愛い女の子かと思えばその正体はオランウータンか何かの変化だったとはな、全く騙された。場末のメイド喫茶くらい騙された。
 大方スムーズに戦闘が進むが、途中一つ目メカの撃ちだすマシンガンに俺の足が撃たれるという事件があった。
 半ば以上本気で泣いた俺にマールが子供をあやすように治癒をかけてくれたが、完治した後ルッカに怖い顔で睨まれて「あんまりマールを疲れさせないでよ、何度も治癒を使えばマールが疲れて動けなくなるでしょ!」と怒られた。おかしいからね、銃で撃たれた人間に説教とか。特に役に立ってない俺だから言い返すことは出来ないけどさ。


「……思ったんだけど、私がクロノに近づくと、ルッカ怒るよね。もしかしてクロノのこと好きなの?」


 その様子を不思議そうに見ていたマールさんが核弾頭を落としてくれた。俺からすれば「え? それマジ話?」である。


「ちちち違うですたいよマール! わた、私どっちかって言うとクロノのこと嫌いだし! ランク付けするとスイカの皮の次くらいの好感度だから!」


 ルッカよ、お前幼馴染よりもクワガタの餌の方が好きなのか……知りたくなかったその事実に俺は膝を抱えたくなった。


「え? え? 何でそう思ったの? そんなに分かり易いの私?」

「分かり易い? ってルッカ、それ認めちゃってるよ。それとあれで分からないのはクロノくらいだよ」

「そ、そっか。クロノにはバレてないんだ。良かった……待って、そんなこと聞くって事は、マールも……?」

「ん? 私はちょっと違うなあ。異性の対象として見るとかよく分からないし、考えたこと無いや」

「そ、そう。なら良いんだけど……それと、私別にクロノのことなんて好きじゃないわよ! 勘違いしたら駄目だからね!」


 何やら二人で俺に聞こえないように内緒話を始める。あれだろ? どうせ「クロノってウコンみたいな臭いがするのよねー」とか「飲み物で例えればタ○マン」とか言ってるんだろ? タフ○ン舐めるな! 意外と美味いんだからな! ○フマン!


 無駄すぎるやり取りを経て、俺たちはドンたちの言っていた大型コンピューターのある部屋に辿り着いたのだった。


「凄い、こんな設備が揃ってるなんて、昔ここは相当重要な施設だったのね……」


 ルッカが部屋中に転がっている機械を見て周り感嘆の声を出した。
 俺とマールには何が凄いのかよく分からず、部屋の中央でルッカの行動を目で追うことしかできなかった。ふむ、確かにルッカの家の中よりも凄い機械設備があるというのは分かる。部屋の奥にあるモニターなんかヤクラくらいの大きさがあるんじゃないか?
 ちょっと触ってみたいという欲求から機械に手を置こうとした瞬間ルッカの銃弾が頬を掠めた。やりませんよやりません、下手に素人が触ったら大変ですもんね、持ち主に非があったら保険ききませんしね。でもマールが触ろうとしたら親切に説明してるのは何でなんですか? 俺の中でルッカ×マール説がどんどん濃厚になってきてるんですけど。


「……食料の場所は検索できなかったけど、この世界には私達が来たところ以外にもゲートがあることを確認できたわ。モニター画面を見て」


 ルッカの言うとおり画面を見ると、そこには俺たちの通ってきた廃墟やアリスドームが映っていた。


「ここが私達のいるアリスドームね。ここからこの廃墟を抜けて……」


 画面が東に移動して、ルッカの言う廃墟を越えた先にあるアリスドームに似た形の建物を映し出すと、そこで画面移動が終わった。


「ここ。このプロメテドームにゲートがあるわ」


「凄いね! そんなことも分かっちゃうんだ! ……じゃあ、このボタンを押せばどうなるのかな?」


「あ、こらマール勝手にいじっちゃ……」


 マールが丸い大きなボタンを押すと、画面にノイズが走り、もう一度映像が戻ると、廃墟は無く、ドームも崩れていない、太陽の光に当てられた景色が見えた。


「A.D.1999?『ラヴォスの日』記録……? どういうことよこれ?」


 画面は何度もノイズが混じり、俺たちは画面から目を離さなかった。
 ……何だ? 地面が赤く染まり、ひび割れていく……


「……ねえ、ルッカ……あれ、なに?」


 マールの問いにルッカは答えられない。そりゃあそうだ、あれは、この世に存在しない、存在して良いものじゃない。
 大きく裂けた大地が高く浮かび上がり、地面の下から赤い、きっとこの世界のどんなものより赤い、巨大な化け物が姿を現していた。そいつは地上に顔を出した途 端、背中から無数の針のような物を空に向け発射する。
 その針の雨は地上に降り注ぎ、爆発する。大地は砕け、人間の建造物を粉々に粉砕し、森林を消滅させ、大量の砂埃を空中に巻き上げる。
 砂埃は高く舞い上がり、太陽を覆い隠し、世界は暗闇に包まれた。
 ……この惨状で、生きている者などいるのだろうか? 海も空も大地も赤く染まり死んでいく光景に、俺たちは息を呑み、画面がぶつりと消えた後もしばらく声を出せなかった。


「な……何、これ」


 マールの、誰に向けたとも分からない疑問の声を、ルッカがかろうじて拾う。


「ラヴォスって……これが私達の世界をこんなにした大災害のこと!?」


「……らしいな。正直、こういう風に見せられても、本当にあったことなのか、信じ難いけど……」


「じゃあ、やっぱり……やっぱりここが私達の未来なの!? 酷い、酷いよ! こんなのってない! これが……私達の未来だなんて……」


 長い髪を振り乱し、頭を抱えて狂ったように泣き叫ぶマール。その姿は痛々しく、この世界の悲しみを一身に背負っているかのようだった。


「クロノ……そ、そうだよ! 変えちゃおう! クロノが私を助けてくれたみたいに! ね、ルッカ。ね、クロノ!」


 未来を変える……? ……うん、それは良い考えだな、マール。でもな……


「ルッカ、俺たちの時代って、何年だっけ?」


「? リーネ広場のお祭りが建国千年記念のお祭りだって知ってるでしょ? つまり、A.D.1000年よ」


 だよな。それってつまり、少なくとも俺の生きている間はこんなことに巻き込まれるって事は無いんだろ? だったら可哀想とは思うけど、別に良いんじゃないか?


「……クロノ、あんたまさか」


 俺の考えていることが分かったのか、ルッカが俺を驚いた目で見る。……え? 俺の考えてることおかしいか? どう考えてもあんな化け物に俺たちが勝てるわけ無いだろ?


「……クロノ? どうしたの?」


 不安げに俺を見つめながら俺の手を握るマール。……え? 俺がマイノリティなのか? 俺の意見が間違ってるのか? たかだか警備ロボット相手に手こずる俺たちに何ができるって言うんだよ。


「冷静になろうぜ、お前ら。俺たちだけが未来を知った。それだけでちょっと英雄気分になってるだけなんだって。ほら、今でも増えすぎた人間の数が問題視されてるんだぜ? 多分こうして滅びるのも仕方ないと言わざるを得ない感じでして……あのマールさん? 何故に拳を引いて俺に照準を付けて……えぶうっ!!」


 数百キロのメカをもぶっ壊すマールの拳が俺の顔に突き刺さる。痛いなんてもんじゃねえ、もっと恐ろしい激痛の片鱗を感じたぜ……


「クロノ……それ、本気で言ってるの? 自分には関係ないから、だから世界がこんなになっちゃって良いの? おかしいよ! ドンや皆はクロノの事をあんなに慕ってたじゃない! そんな彼らを見捨てることができるの!? ねえ!」


 いや……正直見捨てられるけどさ、それ今言ったら第二弾が来るんでしょ? 衝撃のぉぉぉ! セカンドブリットォォォ! が。


「ルッカ! ルッカは違うよね! こんな未来は嫌だよね!」


「え? ……あ、うん。勿論よマール」


 嘘だっ! あいつ絶対俺の意見に賛成派だ! 今マールに逆らうと痛くされちゃうから従っただけだ! 何が他の女の子に負けるわけにはいかないだ! 戦う前から降参してるじゃねえか! そういう風にころころ自分の意見を変える奴が一番男に嫌われるんだ! ……まあ女の子内のコミュニティはそういうルールが暗黙の了解としてあるらしいけど。


「わ、分かったよマール。うん、よしやろう! 俺たちの手で人造人間を倒すんだ!」


「分かってくれたのね! ……人造人間って?」


 ロマンチックを貰いに玉を捜してインフレする漫画を知らないとは、流石お姫様。君にZ戦士の資格は無い。
 ルッカの目が「何で止めないのよ!」と語っている。自分に出来ないことを相手に押し付けるとは、バブル世代で碌に仕事が出来なくても昇進していった上司みたいな奴だ。まあそういう人たちはリストラの対象に入れられるので可哀想ともいえる。


「はああ……まあ、私達はゲートを使って時代を超えられるんだから、まあ、ちょっとは頑張ってみても良いのかもしれない事も無いのかもしれないわね。それじゃ早いトコ現代に戻ってラヴォスについて調べないと。行くわよ! プロメテドーム!」


「おー!」


 小さな手を握り締めて頭上に掲げるマール。俺はおざなりに手を上げながら、苦笑をもらした。苦手なんだよな、こういう皆で何かやるぜ的な雰囲気。文化祭のノリは特に嫌いなんだ。男女の仲が悪くなるから。






「おお、クロノ! どうじゃった? 何か成果は?」


 地上に戻ってきた俺たちをドン達が俺の名前のみ呼んで近づいてくる。ほらマール、お前が救いたいと言ってるこの世界の住人はお前のことが嫌いっぽいぞ? それでもいいのか?


「ここは……私達の未来なの!」


「「「「「はあ?」」」」」


 アリスドームの住人一同は怪訝そうに首を傾げて、俺の前に出たマールを見つめる。マールさん、いきなり過ぎる発言に皆引いてるから、ちょっと落ち着こうぜ、ジャスミンティーでも飲んでさ。そんな洒落たもんねーけど。


「それより、食料は? 他に見つからなかったのか?」


「……地下の大型コンピューターで調べてみたけど、無かったわ……そこにあるエナ・ボックスもいつまで動くか分からない。その食料保存庫にいた男が持っている種子、その種子を育ててみてください」


「とにかく生きて! 頑張って! 私達もやってみるから!」


 なんだかなあ、後ろからルッカやマールの姿を見てると、分かるんだよな、勢いで元気付けて昨日の自分達の失言や鼠狩りを手伝わなかったことをうやむやにしようって魂胆が。この世の善意と見られる行動は全て私欲で構成されているのか。




 それからドン達にプロメテドームに行きたいと伝えれば、32号廃墟に置いてあるバイクのキーを貸してくれた。若い頃に乗り回していたらしい。……? バイクって何だ?
 他には……そうだな、マールの元気という言葉をドンが気に入ったらしく、アリスドーム内で流行した。今年の流行語大賞は元気になりそうだ。
「元気? 聞いたことの無い言葉じゃな」というドンの台詞には驚いた。あんたくらい元気な老人は現代にはいな……大臣くらいしかいないのに。
 未来に来てすぐの頃は、人々は暗いし、マールとルッカは喧嘩するしで良い事なんか全く無かったが、このアリスドームに着いてからドラバタして疲れたし、体中ボロボロになったりしたが……うん、楽しかった。ここの人たちにはまた会いに来たいな。
 後ろ髪引かれる思いでアリスドームを出ようとすれば、ドン達が何やら騒いでいる。耳を傾けてみるとドンが大声で「この種子が早く育つように、女は皆祈祷を捧げるのじゃ! 男はこのような日のために暖めていたとっておきの創作ダンスを披露するのじゃ!」と住人達に命令していた。……うん、元気なことは良いことだよね。全然気持ち悪いとか思ってないよ。
 さよならアリスドーム、また50年くらいしたら来るよ……
 俺たちは清清しい顔でアリスドームを出た。








「見た感じ、これがドンの言ってたバイクなのかしら?」


「そうみたいだね、他に何にもないし。大きいな、私達三人とも乗れそうで良かったよ!」


 アリスドームから東北に歩いていくと、遠目から見ても16号廃墟とは比べられないほどに大きな、32号廃墟の入り口に着いた。これは乗り物でもないと越えられそうにないな、助かるぜドン。しばらくは会いたくないけども。
 入ってすぐの場所に置かれていた鉄で出来た機械。見た目は自転車のタイヤを大きくして、前方部分にガラスの付いたような代物だった。これがバイクで間違いはないんだろうが……ふうむ。


「んー、しかし動かし方が分からんな、この鍵どこで使えばいいんだ?」


 バイクの周りを一周すると、前方部分のメーターやらなんやらがごちゃごちゃついている部分に鍵穴を見つけた。……多分、ここに差し込むのが正解なんだよな? 自爆装置関連とかじゃないよな? そんなB級な展開は待ってないよな?


 鍵穴にキーを入れた途端、バイクが振動を始めて、辺りからアラームの音、音、音! あ、これマジで自爆します的な? 今シルベスタスタローンの気持ちがよく分かるよ。


「クロノ敵よ! 気をつけて!」


「敵か!? 本当に良かった!」


 俺の言に首を傾げるルッカはこの際放置! だって説明したら一人で想像して一人で怖がったなんて馬鹿を知らさなければならないし。そんなの誰が得するんだ。


 アラームを鳴らしながらアリスドームで見た一つ目メカが四体現れ、俺たちの周囲を囲む。俺は刀を抜き払い、ルッカがエアガンの引き金に指をかけて、マールが背中から弓を取り出す。
 一つ目メカの瞳がギラッ、と光り、俺たちにダッシュをかけてくる……その時だった。


「待チナ!」


「ア、アニキ! ウホッ!」


 一陣の風がメカと俺たちの周囲を駆け抜けて、たまらず目を閉じる。……目を開けるとそこには今までに見たことが無かった三輪車みたいな形のロボットが妙に格好つけて俺たちを見据えていた。ウホッてなにさ。
 二の足にホイールの付いた形から驚くような速さで人型になり立ち上がったそいつは頭髪を逆立てて、シャープなサングラスを掛け、腰の部分に煙の出る筒をつけた男……筒とそこから出る煙を無視すれば、人間だと言われても信じそうな外見のロボットに無骨な一つ目メカが敬意を払っていた。


「俺ノ名ハジョニー。コイツラノ頭ダ。テメエラムコウノ大陸ニ行キタイノカ? ソレナラコノ先ノハイウェイ跡デ勝負シナ……俺ニ勝テタラトオシテヤルヨ……ソコノ『ジェットバイク』ヲ使ワセテヤル」


 使ワセテヤルも何もこれお前らのものじゃないだろーが、ドンの所有物なんだよ。何で不良って拾ったものは自分のものだと思うのか。道徳の時間寝てたからか。俺もだ。
 しかし、勝負だと? あれか? レース勝負ってことか? 面倒くさいなあ、ここで戦ったほうが話が早いんじゃないか? ……駄目だ、こいつらの頭ってことは強いに決まってる。俺は怪我をせずに生きていきたい平和主義者なんだ。


「勝負? いいわよかかってらっしゃい!」


 出たよルッカの勝負好き。こいつ幼稚園くらいの女の子とドッチボールしてもおもくそ顔面にボール投げるからね。なんでこいつが町で人気があるのか分からん。そして何で俺が嫌われるのか分からん。不条理こそ抗えぬ現実だ。


 楽しそー! とマールが喜んでいる中、俺はジョニーにバイクの運転の仕方を教えてもらった。「これな……こうすんねん」と教えてくれるジョニーには感謝ではなく、お前普通に喋れるんかいという想い、素だと結構おとなしい声なんだというちょっとした失望だった。






「ゴールラインハズット先ニアル青イテープガ目印ダ! 一緒ニ風ニナロウゼベイベー!」


 スタートラインでスタンバイし、ジョニーの合図でグリップを廻し、加速した。スタートはやや俺が遅れたか。練習無しにしてはよく出来たほうだな。
 テクニックは圧倒的に俺が劣るが、期待の性能は俺のジェットバイクに分がある。しかし、直線の多いこのレース場で勝負を仕掛けたということは、ジョニーは自分の足に相当の自信があるようだ。
 直線で差を縮めていくが、レース中にあるコーナーで一気に離される。こちらが三人乗りというハンデを無視しても、そのコーナーリングは素晴らしい。あんた鈴鹿にでも行けばいいじゃない。参加できるかどうかは別としても。


「ク、ク、クロノ! もうちょっとスピード落として! マールもはしゃいで動かないで!」


「いや無理だって、ここでスピード落としたら絶対追いつけないぜ?」


「わー涼しい! 楽しーい! 風の上に乗ってるみたいだね!」


 ちなみに運転しているのが俺、俺に捕まってるのがマール。最後尾にルッカという乗り方である。俺が運転するのは決定だったが、俺に捕まるのが誰かで二人が揉めていた。マールが後ろだと前の景色が見えないから嫌だと言っていたのでそういう理由だろう。
 あれだけ勝負に乗り気だったくせに、ルッカは何気にスピード恐怖症だったのか、自分が捕まってるマールがふらふら動いたり立ったりを繰り返すからか、恐怖で声が震えていた。マールはスピード狂、と。とはいえ、俺も同じ部類かもしれない、この風を切って走るこの感覚はやみつきになるかも……いやもうなってるな。下手したら今まで生きてきて一番楽しいかもしれない。
 バイクかー、現代に帰ったらルッカ作ってくれないかな? そんな風に、俺は初めての体験に浮かれていた……そして悲劇は起こったのだ。


 ジョニーと俺のレースも中盤に入った頃だろう、ジョニーが俺の方を見てヤバイですよみたいな顔をしていた。何だ? ガソリンでも切れたのか? お前が燃料で動いてるとは思えないが。


「ね、ねえ、クロノ……」


「ああ!? 風の音でよく聞こえないよ! もうちょっと大きな声で喋ってくれマール!」


 何事かを伝えようとマールが俺に話しかけるが、声が小さすぎて何も聞こえない。怒鳴るくらいじゃないと風の音が邪魔をして届かないのだ。


「……ルッカが……落ちた。ぽてっ、て」


「………………全然聞こえないや、風の奴、今度叱ってやらないと」


「へ、ヘイブラザー。ユーノオ仲間ノハニー、遠ク後ロデ転ガッテ……」


「聞こえねー! 今俺が何か音を拾うとしたら世界破滅のラッパくらいのもんだぜはっはー! あー、バイク楽しいなっ!」


 無理やりテンションを上げて叫ぶ。良いね! このハングオンがまた良いぜ! もう本当に! ハングオンとかよく分からんけどっ!


「ク、クロノのせいだよね、私悪くないよね、うん。クロノが悪いで判決完了」


「いやいやマールがぶんすか動くからじゃんか! 何責任転嫁してんだよ!」


「全然聞こえてるじゃん! それに私ぶんすか動いてないよ! ぴょんぴょん跳ねただけだもん!」


 バイクの運転中に跳ねるな! そりゃあルッカも落ちるわ!


「……ヘイブラザー、ユーノオ仲間ノハニー……何カ凄イスピードデ走ッテキテナイカ……?」


 ……え? ちょっと待って、ジョニーお前何言って……


「「追いかけてきてるー!!!」」


 体中砂だらけで服が所々破れているルッカが背中にブースターのようなものを背負いそこからロケットみたいに火を噴きながら前傾姿勢で走ってくる。もうお前なんでもありだな。そしてお前の鞄なんでも入ってるんだな。どうみてもそのブースター鞄に入る大きさじゃないけど、それはどこの狸に貰ったのか。
 青いハリネズミみたいな速さで俺たちとの距離を詰めてくるルッカ。正に音速(ソニック)。


「謝れ! ルッカに謝れマール! もしくはバイクから飛び降りてルッカの足止めをしろ!」


「私悪くないもん! ていうか私が悪いとしても私が悪いと認めたら私が殺されるから私のために私は逃げることをお勧めするわっ!」


「私私って我が強過ぎるだろ! どんだけ自己アピールしたいんだよ! 最近の中高生か! そして自己防衛本能旺盛過ぎる! 人に迷惑が掛かる前にちゃんと謝ることはしろ! 誰に迷惑が掛かるって間違いなく俺なんだから!」


「…………ヘイブラザー、ユーノオ仲間ノバケモノ……俺ノ見間違イカモシレナイガ……何カ飛ンデナイカ?」


 おいおいジョニー。人は翼を持ちたいと願うけれど、何故願うか知ってるか? 人は飛べないから翼を望むのであって……


 バックミラーで背後を伺うと、ルッカが両手を腰に当てて頭を前に突き出しながら飛んでいた。


「「舞空術だーっ!!!」」


 さっきといい今といい、俺とマールの奇跡のシンクロ。シンクロ率が高いのは俺とマールなのに暴走してるのはルッカという皮肉。


「マール、後ろの、後ろの悪鬼をその弓で撃て! そして討て!」


「嫌だよそうしたら完全に標的が『マール』になるもん! それなら今の見敵必殺モードの方がまだマシだよ!」


 くそっ! 騙された! 今まで元気いっぱいで天然の入ってる可愛く優しい女の子だと思ってたが違った! マールの奴は筋肉たっぷり空気の読めない根性が醜い汚い女だった! この売女が!


「お前は女だから顔面陥没くらいで許される! 俺は男だから冥府の奥底に叩き込まれるのは間違いないんだ! さながらキャンサーとピスケスのように!」


「顔面陥没なら大丈夫とか、女の子に言う言葉じゃないよ! クロノなら冥府からでも生き返られるでしょ! さながらフェニックスのように!」


 俺たちが言い合っている間にもルッカはぐんぐん近づいてくる。もうマールと話している余裕は無い……ただ、前を向いてアクセルを握り締めるのみ!
 ジェットバイクの最高速度を出してルッカからの逃亡を試みる。死ねぬ、俺はまだ、生きていたいんだ!
 冷静になれ、冷静になれ、と頭の中で念じていると後ろから「ひっ!」というマールの短い悲鳴が聞こえた。「どうした?」と問おうとすると、世にも恐ろしい笑顔でルッカがマールの肩を掴んでいた。……冷静? なれるかどあほう!


「うおぉぉぉおおぉぉお!!!」


 ジョニーに教えてもらったジェットバイクの機能、ターボを使い、ルッカとの距離を離す。体が引きちぎられるほどの風圧を耐えて、空気の壁を越えて、音の壁を追い抜く。
 何も言わずにターボを行ったのでマールが途中で後ろに飛ばされたが、大丈夫、無問題。むしろ軽くなって有難い限りだ。今度線香でも上げてやるさ。


「ハーッハッハッハ!! マールという重りを捨て、俺は風となった! 俺を捕まえることは例え神とて不可能! 何故? 俺は今生きている! ああ、ああ、生きているということは何故こんなに嬉しいんだ! どうして大地は暖かいんだ!? ハレルヤ! グローリー! デウス! ハレルヤアンドマリア!」


「……テンションノ上ガッテイルトコロ悪イガ……ソレデ良イノカ? ブラザー……」


「ジョニーよ、メカのお前には分からないかもしれないが俺たち人間は生存本能というものがあってな? 俺はそれに従っただけだ。そしてルッカという俺の命を脅かすものから逃げるために俺は最善の行動を行った! 誰にも、それこそ神にも俺を罰する権利など無い!」


「ソ、ソウカ。シカシマア、コレデヨウヤクマトモナレースガデキルナ! 何処マデモ走リヌケヨウゼベイベー!」


「ああ! 俺とお前で地平線の果てまで……」


 ジョニーの顔を見ようと左を向いた時、低く飛びながらマールを肩車しているルッカの姿。上に乗ったマールは今までに無い程冷たい顔で俺に弓の照準を合わせていた。


「「フュージョンなさったー!!!」」


 俺とジョニーの叫びは遠く、アリスドームの人々にも届き、今年の流行語大賞は『元気』か『フュージョン』で揉めに揉めたそうな……










 星は夢を見る必要は無い
 第十話 永劫の闇の中から世界を救えと神から啓示を賜った彼の名前は












 ジョニーとのレースはどっちが勝ったかという枠を越えて、ゴールラインを過ぎ去り32号廃墟を出たところで、俺が捕まりその幕を閉じた。
 俺は有難いことにロープでジェットバイクと結び引き回しされながらマールの弓を避けるという優しい罰ですんだ。勿論終わってもマールの治療はされない。おや? もしかして俺の右腕折れてない? 動かそうとすると凄い痛むんだけど、これ気のせい?


「生キテレバイイコトガアル、ソウ思ッテレバ願イハ叶ウサ……頑張リナ、ブラザー」


 別れ際のジョニーの言葉を胸に、俺は二人の鬼の後ろを歩いている。後ろから首を跳ね飛ばしたら俺はこの先幸せに生きることが出来るんじゃないか? ……落ち着けよ俺、勝てるもんか勝てないもんか、心でなく魂が知ってるじゃないか……



 それから特に問題も無く無事プロメテドームに到着した俺たちは中にいたロボットを鼻歌交じりにぶっ壊す。鼻歌を歌っていたのは、マールだ。最近この子のキャラが分からない。
 中で見つけたエナ・ボックスに入り(何処にでもあるのな、この便利マシン)右腕を治療する。治療中、敵にやられるダメージよりも仲間にやられるダメージの方がでかいんじゃないかなと黄昏てしまう。
 そこから先に進むと、奥に扉があり、通せんぼするみたいに扉の前でやけに大きなロボットが座り込んでいるのを発見する。刀を抜いて警戒しながら近づくも、そのロボットは沈黙したままだった。


「な、何これ?」


「壊れてるみたい……けど凄い、完全な人型のロボット…………これ、直せるかもしれないわ」


 まじまじと見つめていたルッカが、急に頭の悪いことを言い出した。いやいや、意味無いし、さっさとゲートを探そうぜ? お前はどうか知らんが、俺の胃はさっきのエナ・ボックスの治療で暴れだしてんだよ、お腹と背中がくっつくを越えて重なりそうな気分なんだよ。


「え? ……直すって、また他のロボットたちみたいに襲ってきちゃうよ!」


「勘弁してくれよ、こんな所でも自分の能力を自慢しようとするの。そういうルッカの自慢癖にはもう食傷気味なんだから」


 次の瞬間俺の顔が凹む。何故俺だけ殴られる。


「そうしないように直すの。ロボットたちは自分の意思で襲ってきてるんじゃないのよ……人間がそういう風に作ったの。ロボットたちの心をね……」


「……ルッカにはロボットの心が分かるんだね……」


 ルッカの言葉に心なしか感動しているマール。
 ……でも、ルッカは機械が嫌いなはずだろ? なんで一々直してやったりするんだよ。
 俺の目を見て、ルッカが首を振って否定を示す。流石幼馴染、言いたいことは目を見れば分かるってか。


「私は確かに機械は嫌い。でも、その私が機械を使って誰かの役に立たせることが出来るなら、それは贖罪になるんじゃないかなって思うの」


「……ルッカがそう思うなら、俺は反対しないよ、そのロボットを直すことに、さ」


 マールが何の話か分からず目を丸くして俺たちを見ている。わざわざ聞かせるような話じゃないし、これでこの場は終わりだ。俺はその場で座り込み、ルッカは鞄や服の裏から修理用の工具を取り出し壊れたロボットの近くに座った。


「じゃあ、とりかかるわ」





 二時間程経って、ルッカは額から汗を流しながらまだ修理に集中している。ルッカが決めたことに口を挟む気は無かったが、ロボットの状態よりも俺の腹具合を気にして欲しい。もうそろそろひもじさで泣きそうなんだ。というか数回泣いた。その度にマールが頭を撫でてくれた。その度にルッカの手元から破壊音が聞こえた。お前確かそのロボットを直すんだよな?


「扉、開かないみたい」


 暇をもてあましたマールがぽつりとこぼして、ルッカの修理音しか聞こえなくなる。ごめんなマール、相手してやりたいけど、俺もう動けないし喋れないや。今はカロリーを一切消費したくない。


「うーん、おかしいわね……」


「? どうしたのルッカ?」


 難しそうに唸るルッカに、マールが話しかける。珍しいな、ルッカが何かの修理中に行き詰るなんて。ルッカと言えど、流石に未来の技術は理解できないか?


「このロボットなんだけど、中央部分に溶接された鉄で囲まれた部分があるの。どうしてもその中が覗けなくて……まるでこの形状、中に人が入るためのような……それをこの外側の機械で保護しているみたいな……」


「うーん、よく分からないけど、直せないの?」


「動かすことは出来ると思うけど、うーん……」


「とりあえずやるだけやってみたら? 分からないことは後回しにしちゃって」


 楽天的なマールの言葉に頷き、ルッカは六角レンチを握り再度修理を再開する。未来でも六角レンチは使うのか、知らなくても良かったけど、ちょっとしたトリビアにはなった。
 ……早くしてくれよルッカ、俺、もうその六角レンチが食べ物に見えてきた。フランクフルトに見えてきた。もう六角レンチでもいいからそれ食べちゃ駄目かな? 駄目だろうな……
 幻覚が見え始めた俺の限界は、もうすぐそこだった。




「……これでよし! 動かすわよ!」


 それからさらに一時間、ルッカが汗を拭いながら修理完了を教えてくれる。マールはワクワクして見ているが、正直俺はどうでもいい。いっその事息もしたくないくらいダルイ。


 ルッカが背中のボタンを押すと、ロボットが痙攣を始めて、体から電流が走り、目の部分に光が点った。
 座った上体から勢い良く立ち上がり、両手を上げてぐるぐる回りながら部屋の中をうろつき始める。……本当に直ったのかそのぽんこつ。
 しばらくロボットの様子を見ていると、脈絡無く奇怪な動きが止まり、その場に立ち尽くす。


「お……おはよう!」


 ロボットにおはようって、別に良いんだけど、やっぱりずれてるよなマールって。
 ビビッ! と目玉が光り、マールの方を向いておじぎをするロボット。


「お……おはようゴザイマス、ご主人様、ご命令を」


「私はご主人様じゃなくて、マール! それにクロノと、貴方を直したルッカよ!」


 俺とルッカを手を伸ばして紹介するマール。にしても凄いなルッカ、本当に未来の技術で作られたロボットを碌な道具も無く修理したのか。 現代の大臣とはえらい差だな。


「了解シマシタ。ワタシを直して下さったのはルッカ様ですね?」


 そう言ってルッカにも頭を下げるロボット。おいそこのぽんこつ、俺には挨拶も無しかい。


「ルッカでいいのよ」


「そんな失礼なことはデキマセン」


「様付けで呼ぶ方が失礼な時もあるのよ。ねえマール?」


 えへへ、と照れくさそうに笑うマール。いやだからさ、俺のことは無視なのかよ?


「了解シマシタ、ルッカ」


 以外に素直なんだな、俺をシカトする所以外はまともそうな奴に見える。本当に、俺を無視する以外は。いい加減にしないと、起きたばかりでまた眠ってもらうことになるぞこの野郎。


「よーし、で、貴方の名前は?」


「名前? 開発コードの事デスネ。R66-Yデス」


「R66-Yか……イカスじゃない!」


「えー? ダメよそんな可愛くないの! ね、クロノ。もっといい名前、つけてあげようよ! 何がいいかしら?」


「スクラップでいいんじゃないか? もしくはげろしゃぶとか」


 俺の目を見ようともしない失礼な奴にまともな名前なんかつけてやるもんか。捨てちまえそんな動く粗大ごみ。
 吐き捨てるように呟いた言葉を聞いたそのロボットは右腕を俺に向けて、その右腕から火花をとばし俺にパンチを発射した。すこぶる痛いっ!


「申し訳アリマセン、そこのお方から敵性を感知シマシタ」


 感知シマシタじゃねえ、ちょっとカッコいい能力なのに、無駄に俺を標的にするなくそが! あ、目を光らせて俺に腕を向けないでください。ちゃんと考えますから、ね?


「……ロボットだからロボ、なんてどうかな? ……あああ安易ですよね! ちゃんと考えるからその物騒な右腕を俺に向けないで……」


「ロボ……ロボか! 悪くないね!」


「エエ、ワタシも大変気に入りマシタ」


 いいか、お前が俺に対して注意を外したときがお前の最後だ鉄クズ……!!
 俺が必殺の誓いを立てていると、今まで黙っていたルッカが、組んでいた腕を外してくそったれメカに話しかける。


「ねえロボ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」


「……コレは、どうしたのデショウ? このプロメテドームには多くの人間やワタシの仲間がいたはずデスガ……」


 ルッカの質問には答えず、ロボは周囲を見渡して呆然とした声を出す。まあ機械的な声だから呆然としてるかどうかはっきりとは分からないけど。


「言いにくいんだけど……ロボ、貴方が倒れている間に、ここにいた人たちは、もう……」


「……ソウデスカ……では、アナタ方は何故ここに?」


 それから、マールとルッカが交代しながら今までの経緯を話した。喋りたくないから別にいいんだけど、俺にも話す機会を与えてもいいんじゃないか? ロボとのコミュニケーションが殴られただけって、バイオレンスな関係にも程がある。とりあえず仲間としてカテゴリーはされない。


「ふむ、現代に帰りたいけれど、この扉が動かないので立ち往生していると……」


 言いながらロボは扉の前に立ち、扉を押したり引いたり叩いたり蹴ったり爆発させたり(爆発?)したが、一向に開く気配は無かった。


「どうやら、ココの電源は完全に死んでしまっているようデスネ。北にある工場に行けばここに連動する非常電源がありマス。ワタシなら工場のセキュリティを解除できマス」


「ホントー?」


「修理して下さったのデス。今度はワタシがお役に立ちマショウ。しかし、いつまで非常電源が持つかワカリマセンので、ドナタかここに残って、電源が入ったらすぐにドアを開けないと……」


 胸を叩いて頼もしさアピールをするマメなロボット。いやに人間臭いな、本当にロボットか?
 ……にしても誰が残るかだと? 今の全員の状態を見ろ、俺が残るしか選択肢が無えだろうがボケ。


「じゃあ私かマールが残るわ。どっちが残るべきか決めてクロノ」


「何でだよ!? どう考えても俺が残るべきだろーが! もう一歩も動きたくねえんだよ!」


「何言ってんのよ、工場にはきっと暴走したロボットもいるでしょうし、男のあんたが行かないでどうすんの」


「ふざけろ! ルッカもマールもゴリラ並に、いやそれ以上に強いんだから女とか、いやメスだからとかが理由になるかこの筋肉おん」


 結局もう一度エナ・ボックスを使った後俺とルッカとロボが工場に行くこととなった。ねえねえ、脳みそ耳から出てない? マールのこめかみパンチではみ出した気がするんだ、後俺の名前クロノで合ってる? 微妙に自信ないんだが。


 ルッカを選んだ理由として、機械関連に強いルッカがいた方が工場でも役に立つかな? という理由だった。俺が行く理由はあれだよ、か弱い女の子だけを危険に晒す訳にはいかないからだよ。そう言わないと俺が死ぬからとかそういうワイルドな理由じゃないんだよ。








「へえ、これが工場跡……人間がいなくなっても作動しているなんて、ここはまだ電源が生きてるってことね」


 工場跡の中は電気が付いていて明るかった。空気も空気清浄作用が働いているためか、清清しく、久しぶりに深呼吸ができる。床の色は淡い肌色、天井にはクレーンが置かれ、忙しなく動きコンテナ等を運んでいる。少し奥に入っていけば、前や後ろに動く床があり、ルッカがそれを見て「ベルトコンベアって言うのよ」と説明してくれた。これの用途は主に荷物や機材を運ぶために使われるらしい。未来とは俺の予測も付かない程進んだ技術が開発されてるんだな。


「何言ってるのよ、ベルトコンベアなんて私の家にも実装されてるわよ?」


「……お前の家ってやっぱり22世紀のロボットが住んでるだろ? でなきゃ説明つかねえぞ、それとも俺の想像以上にお前とタバンさんは凄い奴なのか?」


「私と父さんが凄いのよ、あんたじゃ想像もできないくらいにね……あれ、赤外線バリアがある。ロボ、これ解除出来る?」


「お任せ下さい。この機械にパスコードを入力スレバ、バリアは解除できマス」


 アリスドームの地下にあったような機械を動かして、目の前の画面に見たこともない文字が並んでいく。少しの時間でロボは赤外線バリアとやらを消すことに成功した。


「セキュリティシステム00アンロックシマシタ」


 中々やるじゃねえか、とロボに声を掛けようとすると、頭上から何か見たこともないゲル状の生き物が落ちてきた。頭の上に落ちてきたそれを振り払い、刀で切りかかるが、硬すぎて刀にヒビが入った。嘘だろ、巨大ロボですら切り裂ける切れ味なのに!


「コイツらはアシッド! 並の武器では歯が立ちマセン! ワタシに任せて下さい!」


 前に出るロボの背中がひどく頼もしく見える! 頼むぜロボ! さっきまで腐り落ちろとか思ってたけど、それについては謝るぜ!


「行きマスヨ! 回転レーザー!!」


 ロボの体から全方位に向けたレーザーが放たれて、周りの床、壁、天井に一筋の線を作り出す! ……ていうか、これ俺たちも危なくね?


「「うわわわわあぁぁ!!!」」


 俺とルッカが転がって、または跳んでそのレーザーの束を避ける。なんかこれバイオハ○ードの映画でこんなのあったぞ! てか止めろこのスクラップ以下の鉄屑そして役立たず! アシッドとやらには全然当たってねえじゃねえか! ずっとニヤニヤ笑ってこっちを見てるぞ! 見世物扱いだ!


 ルッカが鎮静用のハンマーを投げてロボを止めた後、苦戦したが俺とルッカの長期戦でアシッドを倒した。やばいな、白銀剣の刃こぼれが凄い、後何回戦闘に耐えれるか……
 にしても、問題はロボだ。ここまで戦闘に使えないとは……
 それからバリアを越えて先に進むと、エレベーターという階を移動する機械があり、それを使って工場の中にあるだろう非常電源を付ける場所を探した。
 それからもロボの馬鹿は色々とやってくれた。レーザーが当たらないだけでなく、近づいてパンチするもそれがミスるミスる。酷いときなんか戦闘中俺にパンチをかました時もあった。何で俺にはパンチが当たるんだよ。
 他にもマールのように治癒効果がある光を出せる、と胸を張って言うので、俺に使用させると光に当たった右手を火傷した。途中の宝箱でミドルポーションを見つけていたから良かったものの、こいつに何かやらせると悪いことしか起こらないというのは明確になった。
 しかし、ここに来て悪いことばかりではなかった。モンスターとの戦闘で今まで使っていた白銀剣が折れてしまったのだが、新しく雷鳴剣という刃に電流がほとばしる剣を手に入れたのだ。さらにルッカの使えそうなプラズマガンという強力な銃を見つけたことで、ルッカの攻撃力が跳ね上がった。今まで敵の気を逸らす程度のことしか出来なかったルッカが一撃必殺の活躍を見せることになり、ルッカが喜んでいた。
 ああ、ロボも新しい武器を手に入れたんだが、その凶悪な攻撃は俺にしか当たらなかったので俺の判断で捨てた。常時メダパニのかかったお前に武器を持たせては駄目なんだ。馬鹿に刃物を持たせてはいけない。
 マールの使えそうな武器もあったのだが、ロボに「戦闘が不得意なら、荷物持ちくらいやれ」と俺が持たせて十歩も歩かないうちに落として壊しやがった。なあなあお前何が出来るの? どんなことなら人並にこなせるの? ロボットの癖にその不器用さはなんなのさ?
 ロボが役に立ったのは道を遮る防護システムを解除するだけだった。いつも中途半端に失敗してモンスターを出現させるのはもういい。お前ならそんなもんだろ。







「はあ、はあ、はあ……」


「オオ! ココです! ココで非常電源を付ける事が出来マス!」


「な、長かったわね……特に戦闘が中々上手くいかなくて、随分苦戦したわ……」


「ルッカ、お前本当にちゃんと直したのか? あいつ、役に立たないどころか俺たちの足、むしろ体全体を引っ張ってたぞ……」


 自信無いかも……と少し意気消沈しているルッカ。可哀想だが、少しくらい当たらせてくれ、一番被害を被ったのは俺なんだから。ああ、まだあいつに後ろから殴られた背中が痛む。あいつ実は俺を殺そうとしてるんじゃないかと思ったことは一度や二度ではない。戦闘の度に感じたものだ。工場を制覇する頃には俺は敵よりもロボに注意を向けていた。何がムカつくってロボは敵の攻撃は避けないくせに俺がキレて切りかかったら素晴らしいカウンターを見せるところだ。
 ロボが大きな柱に組み込まれたパスコード入力装置を操作している間、俺とルッカは後ろに立って肩で息をしていた。ルッカの奴、自分で直したから怒ってないが、ロボが人間だったら銃を乱射してるぞ、絶対。


 壁にもたれて座っていると、壁から点灯ランプが飛び出してきて、赤い光が点りサイレンが鳴り始める。……おいおいまさか、こんな最後の場面でも失敗するなんてことは……


「非常事態デス! セキュリティが暴走してマス! 早く脱出しなくテハ!」


 あ、やっぱり? もう驚かないよ俺。期待して無いと腹も立たないや。ただ、お前と話すのはもう嫌だ、知ってるか? 好きの反対は嫌いじゃなくて無関心なんだぜ。


 ロボを置いて俺とルッカは来た道を走って入り口を目指す。ロボの奴逃げ遅れてくれないかな、そしたら俺家に帰った時とっておきのシャンパンを開けるぜ。


 逃げている間も隔壁が閉まっていき俺たちの退路を防ごうとする。
 俺とルッカが最後の隔壁を閉まる前に抜けて、ほっと一息。ルッカはまだ逃げ切れていないロボを急かしているが、俺はもう来なくていいよアイツ、閉じ込められるか壁に潰されればいいんだ、と暗い念を送る。
 すると、願いが通じてロボが最後の隔壁に挟まれて心の中でソーラン節を踊っていると、ロボが奇妙な動きで脱出する。こいつ俺を攻撃する時と自分を助ける時には良い動きするね。よくいるんだ、こういう人を陥れる時や保身のためなら火事場のくそ力を発揮する奴。


「サア、早くココから脱出しましょう!」


「ええ! 急ぐわよクロノ!」


「ああ……ちっ」


 誰にも聞こえないように舌打ちをかまして、ルッカたちの後ろを走る。この流れだとこれから先もロボと旅するんだろうな……嫌だなあ、ポンコツと旅するの。俺のたんこぶがどれだけ増えるか分かったもんじゃない。


 赤い光に包まれた廊下を走りぬけ、エレベーターが使えないので非常用の梯子を使い脱出を目指す。もう大分入り口に近づいたな、モンスターも暴走したロボットもいないし、無事逃げられるか? と気を抜いていたときだった。
 床下から点滅した光を放つ廊下を走っているとき、左の壁にあるダストシュートに似た形の穴から、ロボの全身がカーキ色というのに対し、全身青い色という相違点はあれど、他はロボとそっくりのロボットが六体落ちてきた。……うわ、こいつと同類の機械? じゃあ全部馬鹿なんだろうな。


「オ…………オオ。皆ワタシの仲間デス! R-64Y,R-67Y,R-69Y! 生きていたのか、良かった!」


 近づいて握手を求め右手を差し出すロボ。エセロボたちは自分からは近づかずに、差し出されて手を見つめて、次の瞬間鉄の腕を振りかぶりロボの頭部を殴りつけた。隣でルッカが悲鳴を上げてるけど、エセロボA!展開は分からんがよくやった! 感動した!


「な……何を……」


 殴られて倒れたロボは困惑した声を上げて、エセロボAを見る。きっとお前は友達だと思ってか知らんが相手はそうじゃなかったんだよ。よくあることさ、もう一回殴られて俺の溜飲を下げろ。


「ケッカンヒンメ、オマエナドナカマデハナイ」


「……!? ケッカンヒン……」


 エセロボが実に正しいことをロボに言い放つ。ロボ、驚いてるけどさ、俺も全く同じ意見だ。あれだけドジこかれたらフォローできんよ。


「ソウダ、ケッカンヒンダ」


「ケッカンヒン……ワタシは……ケッカンヒン……」


 ロボが頭を押さえて苦悩している。欠陥品って、あいつらそれでも大分優しい言い方してると思うぜ? だってお前を形容する的確な言葉っつーか悪口、もう俺の頭では思いつかないもん。


「ワレワレノ、ニンムヲワスレタノカ? コノコウジョウニフホウシンニュウスルモノハマッサツスルノダ!」


「!! ワタシはそんな事をする為に作られたと?」


「キエロ、ワレワレノツラヨゴシメ!」


 エセロボが言い終わると、全員のエセロボたちがロボにリンチを始める。殴る、蹴る、体当たり、ジャイアントスイング、パイルドライバー、みちのくドライバー。バリエーション豊かだな、こいつらプロレス好きか?


「あ、あんた達ー!!」


 その光景を見てルッカがキレてプラズマガンをエセロボたちに向ける。
 だが、その引き金が引かれる前に、ロボ自身からの制止の言葉が飛ぶ。


「やめて下さい……このロボット、私の仲間デス……」


 ……おい、何で助けを求めないんだよお前。あれだけ戦闘ができないくせに、これだけボコボコにされてるくせに……
 バキバキと部品が飛ばされ、鉄の体に傷やへこみ、さらには腕や足が飛んでも、ロボは自分の仲間へ攻撃することを許さなかった。その仲間たちから壊されようとしているのに。
 頭部の右半分はひしゃげて、右目の部分から赤い眼球が床に転げ落ちた。胴体の部品もぼろぼろ床に飛び散り、飛ばされていない左足もなんとかくっついているが、それも時間の問題に見えた。
 ……確かに……確かにロボにはムカついてるし、二、三発殴り飛ばされるなら良い薬とも思ってたが……


「これは、やり過ぎだろうが……!」


 仲間と言えるほどロボが活躍したわけじゃない。足を引っ張ったし、ロボのせいでモンスターに見つかったのは数え切れない。
 腹が立つし、右腕を焼かれたりしたけれど、かつての仲間達にここまでやられる程か? これだけ仲間を思ってるのに、その仲間達に体を破壊されるのは、一体どういう気分なんだろうか……?


「クロノ……私、もう我慢できない……出来ないよ……ロボが、ロボが壊されちゃうよぉ……」


「……俺もだルッカ、これはお仕置きにしても度が過ぎる、行くぞルッカ! 後でロボに恨まれようが関係無え! 全部ぶっ壊してやる!」


 俺は雷鳴剣を鞘から抜き、ルッカはプラズマガンの狙いをつける。
 一太刀目でまず一体、そのままの勢いで二体、それから先は……そのとき考える!!


 腰を落として走り出すために後ろ足に力を込めて、目標をエセロボの一人につける。まずは……テメエからだ!


 ドカッ!!!


 ……え? 俺、まだ何もしてないよ?


 ロボを袋にしていたエセロボたちが四方に飛ばされて、壁に叩きつけられる。ルッカが何かしたのかと振り返れば、ルッカは目を見開いてロボが倒れている場所に視線を注いでいる。
 ──そう、ロボが倒れている筈の空間に。


「どうやら、少し調子に乗ったみたいだね、君たち……それも、、僕が永劫の闇の中から神の啓示を賜った闇と光の力を併せ持つ選ばれたエデンの戦士とは知らなかったからだろうけど……」


 ロボの体から、小学生くらいの、銀の髪をたなびかせ、右手で左目を隠した男の子が立っていた。






 ────このロボットなんだけど、中央部分に溶接された鉄で囲まれた部分があるの。どうしてもその中が覗けなくて……まるでこの形状、中に人が入るためのような……それをこの外側の機械で保護しているみたいな……────





「……まさか、本当に人が入ってたのか? 人間がいた頃から、ずっとロボの体の中に……?」


 俺の声を聞いて、ロボの体から出てきた男の子は首を曲げて俺の方を向く。
 瞳の色は深い青色、顔の造詣は女と間違えそうな、美少年を体現したルックスだった。


「違うよ、僕は人間じゃない。デウス・エクス・マキナに選ばれたアンドロイドだよ、このボロボロになった機械は僕の強すぎる力を抑えるための、枷のようなものさ。……こうでもしないと、僕の力は世界に与える影響が強すぎる……全く、自分の力ながらに恐怖するよ、流石神に選ばれた、いや、選ばれてしまっただけのことはあるね……ふふ、悲しい宿命だよ……」


 ……やばいぞ、こいつの力量もロボの体に入っていた経緯も話し方や雰囲気が違う理由もさっぱり分からないが……一つ分かったことがある。隣で口を開けたまま動かないルッカもきっと共通の意識を持っている筈だ、証拠に、俺と同じようにいきなり出てきた少年を指差している。


「ちなみに、僕の左目には邪気が封印されている。正式な名称は邪気眼って言うんだけどね……」


 もう間違いない。おかしな単語の用い方、頭の悪いその台詞……こいつは、このガキは……


「「中二病だーっ!!」」


 俺とルッカの渾身の叫びは遥か遠くプロメテドームまで届き、ドアを開けた後寝ぼけて船を漕いでいたマールを起こし「たっ! 食べてないよ! ちゃんとクロノの分も残してあるよっ!?」という微笑ましい寝言を呟かせたという……


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