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No.20307の一覧
[0] 白い月・蒼い月・黒い月[新](2010/07/25 18:31)
[1] 白い月・蒼い月・黒い月[新](2010/10/31 03:30)
[2] 白い月・蒼い月・黒い月[新](2010/12/03 00:30)
[3] 白い月・蒼い月・黒い月[新](2011/02/01 22:00)
[4] 白い月・蒼い月・黒い月[新](2011/06/15 00:35)
[5] 白い月・蒼い月・黒い月[新](2011/09/05 02:00)
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[20307] 白い月・蒼い月・黒い月
Name: 新◆2249bfd3 ID:f7214a3f 次を表示する
Date: 2010/07/25 18:31
{月姫×空の境界×Faet}
序章1
ガタン、ガタン。
規則的に響く重い低音の中、瞳を開ける。開けた視界を染めるのは秋の山々の様に温かい茜色だ。 
暮れの太陽が注ぐ長い波長の光の帯は薄く開けた眼球をやさしく焼いた。
眠りの後の霞が視界を覆い、未だに朧げな意識は瞼を閉じ光源へと視線を向けた。
けれど、視線が外を流る赤色に染まる集落を捉えることはなく、その視線は何時もの白いセーターと紺のロングスカートを着てかわいい顔で寝息を立てている金の髪のお姫様を捉えた。肩に落ちた髪が寝息と共に揺れるのを眺める男-遠野志貴-は、
呆れたように息を吐き、自然と頬と唇が上がっているのを自覚しながらお姫様-アルクェイド・ブリュンスタッド-を見つめていた。



「志貴、どっか行こう!」
そう開口一番に問われたことに志貴は眉間にしわを刻んだ。
夏の暑さも残りわずかとなり学生の本分が追い打ちを掛けてくる頃、志貴は束の間の休息と彼女の御機嫌取りのためにアルクェイドの部屋へと来ていた。
「今日は映画だろう。前から見たいのがあるって言ってたじゃないか」
「今日は映画よ。誰も今日のことなんて言ってないわよ」
「…じゃあ、なんだよ。あんまり変こと言うなよ」
そう身構えながらアルクェイドの言葉を待った。
(そんなに変な要求でもないのに、言葉が足りないのかそれだけ聞くとだいぶおかしなこと言うからな~)
「旅行に行こうよ、志貴。私、京都に行きたい」
それほどおかしなことでもなかったが、それを実現させるための長い長い道のりを想像し即答した。
「だめだ」
その一言がもとでアルクェイドと喧嘩。
半日ほどの売り言葉に買い言葉の応酬により、結局志貴が折れることでお開きに。
その後、二人で予定の映画を見に行ったが志貴はそれどころではなかった。
けれど、映画の感想を笑顔で話すアルクェイドが見れたことはささやかな報酬だろう。
その後、秋葉の冷たい視線に山の様な小言とシエル先輩の呆れた視線に滝の様な説教に耐え、ついてこようとする翡翠とレンを説き伏せ、琥珀さんとの隠しカメラと盗聴器での情報戦を暴ききりアルクェイドとの一泊二日の京都旅行を実現させたのだ。
ちなみに、どうして京都旅行だったのかと言うと前日のテレビで京都の特番を見たからだそうだ。



レールと車輪の摩擦が生む心地よい揺れが二日間の疲れを浮きあげ二人を眠りに誘ったのは三十分前。
隣のお姫様の寝顔に志貴の霞がかかった意識が視線を奪われたのが十分前。
ふと、のどの渇きを覚えた志貴が喉を鳴らしたのが五秒前。
(そういえば、何も飲んでなかったけ。)
旅行中、志貴は一日目と二日目の午前中を観光地巡りでアルクェイドに引っ張り回され、午後を秋葉たちのおみあげを買いに店々を何十軒とはしごし、最後に予約していた電車に乗り遅れるそうになるといった経験を経る。そして、二人して間に合った電車の扉に背を預けて笑いあったのが四十五分前。
席に向かう中、遅れそうになった店での行動や観光地での思い出の一言一言に喜怒哀楽の笑顔を浮かべるアルクェイドを見て同じように笑う志貴は旅の成功を実感する。
席に着き、荷物を上げていた志貴はおみやげのごたごたで昼から何も口にしていないことを思い出す。
アルクェイドに何かいるかと尋ねるため、目を向けるとそこには既に寝息を立てているお姫様がいた。
呆れながら鞄から先程買ったばかりの猫の顔のイラストが多数描かれた大きめのタオルを取り出し掛ける。ちなみに、これはアルクェイドがレンのおみやげとして選び自身も気にいったからと言って購入したものである。
自分の席に座った志貴は、眠ったお姫様にもう一度呆れたように視線を向け自分も寝ようかと思い瞼を閉じる。
静かな揺れと隣から聞こえる小さな寝息に誘われるようにして意識を手放したのが三十分前。
志貴は先程横を通り過ぎた移動販売所を追いかけるために夕日に焼かれ火照った体を起きあげる。その反動で軋む座席に合わせるようにアルクェイドから声がもれた。
起こしたかなと、目を向けるが今だにかわいらしく寝息を立てている。 
それを確認した志貴は早く戻ってこようかと思い、早足に歩き出した。



二両先の車両で移動販売を見つけた志貴はそこでお茶を二本購入。
手にひんやり冷たいのを感じながら志貴は来た道を戻り始めた。
扉を開け、車両と車両の接続部を通る。すると前の方からも女性が一人扉を開けて進んできた。
赤い髪に眼鏡をかけた、近所の世話好きのお姉さんのような雰囲気の女性に志貴は一目見て、女性の邪魔にならないよう横にそれた。
(きれいな人だな。優しそうでもあるし)
隣を通る女性に視線を向けないまま、女性-自身の周りにはあまりいない-の雰囲気の感想を考えていた。
「待ちな、坊や」
突然、その場に響いた声に志貴は全く聞き覚えがなかった。耳をよく通る凛とした声。一度聴いたら忘れることは無いだろうと思うその声に心当たりなどなかった。
けれど、志貴はそれが自分に向けられたものだと感じた。確かに、二人としていないこの場所で坊や呼ばれるのが自分しかいないとわかっていても、それは聞き覚えのない自分には知らない声だった。
それが、相手から明らかに何らかの意思を込めた呼びかけがなされた。
こっちを向けと、話があるとそう言って呼びかけられた。
浮かんできた感情は、疑問。突然呼ばれた驚きや焦りではなく疑問が志貴の心を占めた。それが、呼ばれた事へのものか。また、相手から向けられる意思の事へのものか。それとも、疑問以外の感情が浮かんでこなかった事へのものだったのか。
それに、明確な答えをださぬまま、志貴は声の方へと振り向いた。

志貴は声を上げた。先程のように疑問という単一の感情だけが占めているのではなく、驚愕も焦燥も疑問も合わせて混沌とした声を上げた。
「え」
視界に先程すれ違った女性がいた。
けれど、違っている処ですれ違う時していた眼鏡をしていない、また、優しそうな雰囲気が今では噛みつかれそうなほど険しくなっていることである。
それから、女性の方からこちらへの距離を急速に縮め、体に隠すように左手を振りかぶっていた。
女性が一歩前に出る。そして、隠していた左手を振り抜くのと予備動作を行っていない右手が突き上がってきたのが同時。
志貴は顔へと向かってくる左手と胸を目がけて上がってくる右腕を左方向へ半歩づつ、合計一歩分の移動で回避。
それに、相手は右手の裏拳で追撃。志貴は左右と前方向への逃げ場がないために後方へと飛ぶ。と同時に胸の前と腕を組み、相手の右の裏拳を利用しての後ろ蹴りを
防ぐ。踏ん張りのきかなかった体はそのまま扉へと激突。
背中に走る痛みに息を洩らしながら逃げようと扉に掛けた手に力を入れる。
「無駄だ」
逃がしはしないと、左回し蹴りが迫る。それを右へ流れ込むようにして避けた。
蹴りの衝撃に扉が大きく鳴った。
(壊れてないといいけど)
避けた勢いそのままに志貴は相手の横をすぎていく。視線は相手からはずさない。横をすぎる左足に、こちらに向けられている背中に腰 、表情を覗うことのできない横顔、攻撃の期軸となった右足。それらを一瞥し、志貴は逃走のために視線を前へと向けた。
「え」
本日二度目となる混沌としたその声は視界に浮かぶ光源へと放たれた。
志貴は刹那にその情報を集める。視覚がほぼすべてを占める初見での考察は直線と曲線を用いた何かの文字であるということしかわからなかった。
(なんで文字が?)
疑問が感情を占めるも答え導けないまま、時は進む。文字はただ浮かぶだけ。
志貴は体を止めることも忘れ、前へ。浮かぶ文字へと進む。
そうして、志貴は浮かぶ文字と激突した。
額に衝撃が走る。見えない壁に阻まれた志貴の体はそこで停止。
予期していなかったことに志貴は行動と思考に一瞬の硬直を許した。
(しまった)
意思が警告を発するのと首に手を掛けられたのは同時。
そのまま壁へ押しつけられ、胸に手を置かれる。それが、相手からの王手であると感じた志貴は抵抗をやめた。
「動くなよ、坊や。聞きたいことがある」
そう声を掛けられ、手に力が込められあごをあげられる。
志貴は視線を向け、女性の顔を見た。赤髪に赤味がかった瞳の女性をやはり志貴は知らなかった。けれど、敵意を滲ませる瞳を見つめながら志貴はふと、感じた。
(どこかで、あったかな?)
「…坊や。正直にいいな」
女性はそう、ねんを押すようにいった。
「その眼鏡を誰からもらった」
重い声が響いた。そして、志貴は今まで隠しきられていた殺気を感じる。
だが、志貴はその言葉によって女性への疑問が氷解し、そのことに笑みを浮かべた。
(ああ、なんだ。この人は)
安堵の笑みを浮かべた志貴だが、女性は更に強くを首を締めあげていく。
「…答える気がないなら殺すよ」
突然、笑いだした志貴に勘違いをしたのだろう。目はつり上がり、殺気はその密度を上げている。
物騒だなと思い女性の様子を見ていると、知っている気配が近づいてくるのを感じた。
「…殺すなよ。アルクェイド」
そう呟いた時には、視界に女性の姿はすでになく、代わりに金色の髪に赤い瞳のお姫様の姿があった。
「志貴。大丈夫」
そう覗き込んで尋ねてくるアルクェイドに志貴は軽く手を振る。
「ああ、大丈夫だよ。…それより殺してないだろうな」
周りを見ながら志貴は聞く。それにアルクェイドは笑いながら答えた。
「大丈夫よ。志貴が殺してないのに私が殺せるわけないでしょ」
「…」
後半の言葉を聞き流しながら女性へと視線を向ける。女性は脇腹を抑え、こちらを見上げていた。その視線には既に殺気はなくただ警戒心を強めてこちらを睨みあげていた。
「…貴様。何者だ」
(まぁ、無理もないか)
女性の様子に軽く同情を感じながら志貴は女性へと手を差し出した。
「遠野 志貴といいます。蒼崎さん...ですよね」



「ふーん。あいつがね」
その後、お互いの自己紹介を行い、話をするために志貴たちの席へと場所を移していた。窓側にアルクェイドが座り、女性-蒼崎 橙子さん-は志貴の向いの席に座っている。先程までここに座っていた男性はアルクェイドの魔眼によって今頃電車内を歩き回っているだろう。
「はい、今の自分があるのはあなたたちのおかげです。ありがとうございます。」
そうして、志貴は頭を下げた。
「ああ、止してくれ。私は何もしていないよ。…ところで、あいつとの馴れ初めは分かったが、どうして君の隣に真祖の姫君がいるのか教えてもらえないかね。」
「えー。私は志貴の恋人なんだから当たり前じゃない」
そう言って、志貴の腕にアルクェイドは自分のをからめ、それに志貴は顔を赤める。
「そんな事は分かっている。私が聞きたいのは君たちが知り合ったかだ」
橙子は、呆れたようにアルクェイドに返す。
その様子を見ながら、橙子さんもだいぶアルクェイドに慣れてきたのだと思い志貴は知らずに笑みを浮かべる。
「へへ。ちょっと志貴に殺されちゃって」
とアルクェイドが恥ずかしそうに笑いながら答える。
それに志貴はいろいろな意味で慌てていると、橙子が大きく溜息を吐いた。
「分かった分かった。惚気話はそれぐらいでいいよ」
志貴は苦笑を浮かべながら質問に答えた。
「三咲町の吸血鬼事件で知り合ったんです。出会ったのは俺が原因ですが知り合ったのはこいつのおかげです。」
「…そうか。よくわかったよ」
そういった橙子さんはなにを思ったのか身を乗り出しこちらに手を差し伸べてきた。
「よかったら見せてくれないか?あいつの腕がどんなものかも知りたいしな」
志貴はいいですよ。と眼鏡を渡す。視界は一瞬で線と少しの点で満たされるが最近は慣れたものだ。
それを橙子は手に取り調べ始めた。
「ほぉ、あいつにしては良くできている。できそこないから良くやったものだな。まぁ、あれも、名前がついてなかっただけでほとんど完成していたんだがな」
ありがとう。と言って橙子さんが眼鏡を返してきた。志貴はそれを受け取り掛け直す。するとアルクェイドが橙子さんへと質問した。
「橙子から見てどうだったのそれは」
「そうだな。あいつ独自の理論も入っていて燃費も良くなっているし。まぁ、少々荒いところもあるがまあまあの出来だよ」
だがね。と橙子はそこで言葉を切った。
それに、アルクェイドがなにを思ったのかこう聞き返した。
「どうしたの。ブルーの作ったこれに何か問題でもあった?」
先生が聞いたら問答無用で魔法が飛んできそうな事を言う。
「いや。さっきも言ったが作りに問題はないよ。ただ、それは持って後二・三年といったところだろうな」
え。と二人の言葉が重なる。それを一瞥して橙子は話を続けた。
「なに。単純な耐久年数の問題だよ。長期使用は念頭に置いていたが直死の魔眼の相手だ。良く持った方だと思っているよ」
そう言われ納得した。八年間馴染んだ眼鏡に手をやる。
(そうだよな。お前には感謝してもしきれないんだよな)
「まあ、それが使い物にならなくなったら私のところに来い。同じものとは言わないが似たようなものは作ってやろう」
橙子がそう言い、その一言に一早く反応したのは俺ではなくアルクェイドだった。
「本当!」
「ああ、格安にしといてやる。...ただでやってもいいがこっちも財政難でね」
「いえ、構いませんよ。ありがとうございます」
「ええ、お金ならあるんだから、最高のを作ってくれればいいわ」
と言って、アルクェイドが抱きついてくる。
「へへ。志貴、よかったね」
「ああ」
アルクェイドの横顔を見ながら呟いた。それに自分は幸せだなと思う。
「なら、私はこれで失礼させてもらうよ。そろそろ目的地なんでね」
「はい、分かりました。いろいろありがとうございます。橙子さん」
「なに、約束はしたがまだやってないんだ。礼を言うのはまだ早いよ」
そうですねと言い志貴は笑った。
(これは先生の時とはまるで逆だな)
「ん。そうだ、これを渡しておかないとな」
そうして、橙子は、紙を取り出し何かを書いて渡してきた。
志貴がそれを確認するとそれは簡単だが特徴を捉えた分かりやすい地図だった。
「ありがとうございます」
「それを見てしっかり探せ」
志貴の礼に橙子はそう笑いながら返し、席を立つ。
そうやって橙子と別れ、しばらくすると地図を見ていたアルクェイドが子供のように目を輝かせながら言った。
「ね、志貴。今度橙子の事務所に遊びに行かない?」
志貴は考えとくよ。と苦笑を浮かべながら答える。
そして、そのまま目を閉じて残りの時間を睡眠にあてることにした。
橙子の事務所にアルクェイドと行くことを思いながら。


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