魔法学院から王都トリスタニアへ向かう街路の上空、大きな触手竜とそれに曳かれる楕円形の竜籠、そしてそのさらに後ろを風竜の幼生が飛んでいる。 触手竜の鞍上ではルフト・フゥラー・リッターのルネ・フォンクが手綱を握っている。 風竜の幼生シルフィードの上には、青い髪の美少女と、赤い髪の美女が乗っている。ルイズの同級生のタバサとキュルケだ。 触手竜ヴィルカンが曳いている反射光軽減用の塗装が施された竜籠は、全体的に空気抵抗の少ないカプセル状の形をしており、底面は着地用に平らになっている。 その側面には出入り用のハッチらしき継ぎ目がある。そこにタラップが内蔵されているのかどうか、外観からは不明だが、ひょっとすれば魔法による乗り込みを前提として、省略されているのかもしれない。 カプセル状の竜籠の側面と上面からは姿勢安定用の水平翼と垂直翼が伸びており、それぞれの先端に衝突を防止するための相互視認用の赤い光を発する『ライト』の魔道具が組み込まれて光っている。 この竜籠は触手竜ヴィルカンのうねうねした背中に乗るのを渋った乗客のために、ルネがマジックカード経由の『錬金』の魔法によって即席で造り上げたものだ。竜籠の設計図や原材料の細かい指定は、クルデンホルフ大公国製のマジックアイテム経由でダウンロードしたものだ。 ルネが大公姫であるベアトリスの護衛に就くにあたり、彼にも国外でのマジックカードの使用が一部許可されている。全機能の限定解除はベアトリスの許可が必要なことになっている。今回の竜籠の建造はベアトリスに許可をもらっておこなった。 また建造にかかった経費(材料『錬金』及び成形『錬金』魔法使用料金、設計図ダウンロード代金)はベアトリスが持ってくれることになっている。「まあこれからも竜籠を使う機会はいくらでもあるでしょうし、竜籠一つ分程度のお金は持ちますわ」 とのことである。ちなみにこの竜籠、材料の『錬金』からシームレス成形まですべて含めると、豪華な土地付き屋敷が買えるくらいの金額がかかっている。それをポンと出せるあたり、さすが実家が金持ちなだけはある。 ヴィルカンに曳かれる竜籠の中に乗っているのは、サイトとギーシュとレイナールである。 彼ら三人は、快気祝いと、地獄の訓練をこれからも乗り切っていくための景気付けとして、王都へと繰り出そうとしているのだ。 彼らの乗る竜籠は、四人乗りであり、狭いながらも空調付きの快適な空間となっている。 竜籠は組み込まれた『レビテーション』の魔道具によって自力で浮遊しており、急停止や急旋回の慣性変化をできるだけ乗客に伝えないようになっている。 座席もふかふかだ。まるで生きているかのように蠢いて、座る者の身体にジャストフィットするように変形する。 ……簡単なインテリジェンスアイテムくらいは組み込んであるかもしれないが、座席自体が生きているなんてことは無い、筈である。ある意味信頼と実績のシャンリット製の設計図がベースなので、一概に否定できないのが怖いところではある。 そしてヴィルカンの後ろを飛行しているのは、雪風のタバサの使い魔である風竜シルフィードだ。 シルフィードの上にはタバサとキュルケが乗っている。彼女らもたまたま王都に行く用があったらしく、成り行きでヴィルカンの後ろを飛行しているのだ。 当初はシルフィードがヴィルカンとの並列飛行をかなり渋った(涙目でいやいやと首を横に振っていた)が、主人であるタバサが、「今日はキュルケとお買い物。本とか服とか色々見たいから早く行きたい。他の竜の後ろを飛んだほうが速いし、あなたも楽なはず」 と諭して、何とか一緒に飛ぶ運びとなった。タバサの使い魔はずいぶん賢く理知的な竜らしい。 実際、千年以上生きる触手竜であるヴィルカンは、その気になれば音速超過で飛べるくらいに力強いし、彼のスリップストリームに入れれば、シルフィードの飛行は格段に楽になるはずである。 だがそれとは別の心理的な面で、シルフィードはヴィルカンとのランデヴーを拒んでいた。 触手竜という種族は、千年前に造られた人工種族であり、とある地底魔蟲と竜のキメラなのだが、そのベースとなった魔蟲が、シルフィードの種族の天敵なのだ。 シルフィードはタバサの召喚に応じた時からずっと、天敵のオーラを感じ取って、非常に居心地の悪い思いをしている。 タバサとしては、シルフィードの感じている居心地悪さを解消するために、この機会にシルフィードをヴィルカンに慣らしてやりたいと思っているが、なかなか難しそうだ。【おーおー、怯えとる怯えとる】「ヴィルカン様、そうやって威圧するからなおさらに怯えるんです。弱い者いじめはしないで下さい」【別に弱い者いじめなどしてないさ、ルネ坊。向こうが勝手に怯えとるだけだ。取って喰おうとも思わんし、ましてやあんなガキに欲情している訳でもない】 ヴィルカンは六枚の膜翼を使って羽ばたき、シルフィードに合わせて彼なりにゆっくりと飛んでいる。しかしそれでも幼い風竜にとってみれば十分な速さである。うまくヴィルカンと竜籠の生み出すスリップストリームに入っているから良いものの、そうでなければとっくに息切れしているだろう。 ルネはヴィルカンの首の後ろあたりに付けられた鞍に座っている。それより後ろの背中部分からは何本もの触手が伸び縮みしている。途中からY字に分かれて膜翼になっている一際太い六本の触手たちが生えている様子は、まるでひっくり返した昆虫の脚ように見える。サイトなど「まるでゴキブリの裏側みたいだ……」と言っていた。わしゃわしゃ。 竜籠を用意したのは、サイトたちがヴィルカンの背中に乗るのを嫌がったからである。そのことに対して、ルネは特に思うことはない。ルネだって、初めて触手竜を見たときは、狼狽したものだ。今では慣れてしまっているが。「お嬢様たちは別ルートで向かってるから、護衛に気を使わなくても平気だし。今日は楽できるかな」【道中はあの女郎蜘蛛がついておるから、ベアトリス嬢たちは問題なかろう。街中で問題があっても、私たちが街まで急降下突撃する訳にはいくまいし】「というか護衛の必要は無いですよね、お嬢様たち」 ベアトリスもルイズも、その辺の傭兵メイジを相手にしても、そう簡単に負けるわけはない。『赤槌』のシュヴルーズの指導は伊達ではないのだ。 そんなわけで、最近、護衛としての自分の存在意義に疑問を感じつつあるルネであった。 軽く落ち込む騎手をヴィルカンが励ます。【ならもっと精進することだな、ルネ坊】「それしかないですね。頑張ります!」 ただのアッシーに留まるつもりは無いルネ・フォンク。 尊敬するお嬢様(ベアトリス)の盾となり矛となり、行く行くはハルケギニア中に名前を轟かせる竜騎士になるのだ。 そのためには、日々鍛錬、鍛錬、鍛錬! グッと手を握りしめて志しを新たにするルネに、ヴィルカンが提案する。【その意気だ。さて、では今日は待機時間中は高速高機動(ハイスピード・ハイマニューバ)飛行の訓練を行おうか】「え゛」 慣性制御や重力偏向の魔法を使いこなすことは、触手竜の騎士(ルフト・フゥラー・リッター)の第一条件である。乗騎と呼吸を合わせ、触手竜の持つ本来の性能以上の高速飛行や高機動飛行を可能にするためである。 触手竜騎士の専らの攻撃手段は、竜の背中から生えた無数の触手の先から発射されるドラゴンブレスであり、騎士に求められるのは、竜の機動を魔法で的確にサポートすることだ。 他のハルケギニア諸国の竜騎士では、騎手は乗騎に指示を出したり、敵に攻撃魔法を放つなどの役割が求められており、戦闘の主導権は騎士にある。 しかし触手竜騎士では、戦場の判断も攻撃も機動も乗騎である竜が行うため、騎士にはそのサポートを行うことが求められているのだ。【なんだその声はぁ? さっき精進すると言ったばかりだろう! やるといったらやるんだ! 覚悟を決めろ!】 なので必然、竜の方が立場が上になる。ルネに拒否権はない。◆◇◆ 触手竜ヴィルカンに牽引される竜籠の中は、外の大気の影響を受けないようになっており、快適な気温、気圧、湿度に保たれるようになっている。 『レビテーション』を発生させる魔道具によって慣性が制御される上に、外殻部分と内装部分はサスペンションを介して繋がっているため、揺れも少ない。 そんな中でサイト、ギーシュ、レイナールの三人は今日の行動の予定を確認していた。「じゃあ先ずは秘薬屋に行ってレイナールの用事を済ませてしまって、そのあとは初王都のサイトの為にトリスタニアの主だった場所を回りつつナンパ。夕飯は『魅惑の妖精亭』で食べて、その後はまたルネに送ってもらうってことで良いかい?」「おう、それでいいぜ」「うん。ナンパ、ってのが予定に入ってるのは気になるけれど」 ギーシュが残り二人に確認し、サイトとレイナールが了承の旨を返す。 レイナールは初めてのナンパに対して尻込みしているようだ。 しかしそれに対してギーシュは、分かってないなぁとでも言いたげに肩をすくめて見せる。「男三人で王都を回るより、女の子と一緒のほうが楽しいものだよ?」「そういうものかな。じゃあ、女の子と言えば、後ろの二人はどうなんだい? ギーシュのクラスの、トライアングルの、キュルケとタバサを誘ったりはしないのか?」「ふむ、なんだかんだでお目が高いじゃないか、レイナール。そうだね、彼女らは綺麗所だし……。予定があるようだったから望み薄だと思うが、誘うだけ誘ってみるか」 ギーシュは薔薇の杖を振って、空調の吸排気口を通じて、後ろを飛ぶ二人へと声の伝わる道を作るために『伝声』の魔法を使う。 『伝声』とは見えない糸電話のような効果を持つ魔法である。空気の繋がっている場所へと相互の声を届ける効果がある。 トライアングルメイジであるタバサが張った風避けの障壁を越えるのに手間取ったが、タバサのほうがギーシュの魔法に気が付いて、その部分だけ障壁を薄くしてくれたので、なんとか通話できるようになった。「あーあー、もしもし? 聞こえているかい?」『なぁに? 何か御用かしら?』 少しくぐもった艶っぽい声が聞こえる。キュルケだ。 ギーシュ本来の系統でないためか若干音質が悪い。通話にはぎりぎり支障ない程度だ。 だがその状態もすぐに改善された。風メイジのタバサが、向こうの方から『伝声』の空気管のラインを繋ぎ直してくれたのだ。「ああ、もし良かったら王都を巡るのにご一緒できないかと思ってね。是非とも君たちみたいな美しい女性と一緒の時間を過ごしたいんだよ」『んー、どうしようかしらねぇ。タバサはどうしたい?』『昼食奢り、なら』 控えめな声がする。タバサだ。『だそうよ? ギーシュ。私たちは午後はブティックや本屋を巡る予定だから、昼食までは一緒にいてあげてもいいわ。もちろん荷物持ちをしてくれるって言うんなら午後も歓迎だけど。あなた達の予定はどうなの?』「僕らは今日は秘薬屋に行って、あとは大まかなトリスタニアの名所をサイトに案内するつもりなんだよ」『トリスタニア名所、ねえ。じゃあ午後は別行動かしらね。秘薬屋は付き合ってあげてもいいわよ。私もフレイムのための虫下しの原料を買わなきゃならないし』 キュルケは自分の使い魔のために虫下しを作るつもりだ。 野生動物には寄生虫が多くついている。それを取り除いてやらないと、本来のスペックを発揮できないこともある。逆に共生生物がいる場合もあるから、その場合はそちらは殺さないようにしなくてはならない。 予め寄生虫だけ殺す薬のレシピはモンモランシーとルイズに聞いているらしく、秘薬屋に寄るなら、ついでに揃えてしまうつもりらしい。「そうかい、じゃあ、午前中は秘薬屋に行ったり、そちらの用事にも付き合うよ。もちろん昼はこちらが持とう。なにか好みがあれば、それに合わせて雰囲気のいい店を選ぶけれど」『たくさん食べられるところがいい』 タバサは随分たくさん食べるつもりらしい。 そういえば人間溶鉱炉のような底なしの健啖家マリコルヌとタメを張れるくらいには、あの雪風は大食漢なのだった。見かけに似合わず。 それなら、と、ギーシュは昼食バイキングをやっているお店を幾つか脳内のお店マップから呼び出す。「ん、わかったよ。食べ放題をやってる美味しいと評判の店があるんだ。そこに案内しよう。それで良いかい?」『ええ、いいわよ』『楽しみ』 『伝声』の魔法が切断され、通話が途切れる。 ギーシュがサイトとレイナールに目線を送る。どんなもんだい。「やるじゃん、ギーシュ」「いや、今回は君がいたからね。懐が温かいと、こちらも誘いがしやすい。あと、君の故郷の話も期待しているよ。キュルケもタバサも、好奇心や知識欲は人一倍だから、君の話を喜んで聞いてくれるはずさ」「なんだよ、俺の財布が頼りかよ。まあ美人と食事できるならいいけど」 昼食代はサイトがかなりの部分を持つことになりそうだ。50エキューを初任給としてもらったことはすでにギーシュたちには話してしまっている。 だがまあ、あれだけレベルの高い美少女ペアと食事ができるなら、多少の出費は許容範囲だ。サイトには他に買い物する予定もないことであるし。 レイナールは軽い気持ちで「後ろの二人を誘ったら」と言ったのが、実際に食事することにまでなるという急展開についていけないでいる。「え……っと、まずはみんなで秘薬屋に行くってことでいいのかい?」「そうだね。僕も愛しいヴェルダンデのために、虫下しをモンモランシーに調合してもらおうかな」 ギーシュは秘薬調合を機にモンモランシーとのヨリを戻すつもりなのだろう。 頭の中で使い魔のジャイアントモールのことを考えつつ、モンモランシーのご機嫌取りのために何をプレゼントしようかと悩み始める。やはり水精霊の涙か、それとも秘薬の原料にもなる綺麗な花が良いか……。 うんうん唸り始めたギーシュをさておいて、サイトはレイナールに話題を振る。「レシピは分かんのかよ? ギーシュ。って聞いてねえな、こりゃ。……そうだ、使い魔と言えば、レイナールは新しい使い魔は召喚したのか?」「ああ、それなんだけどね、学院代表で様子を見に来てくれたミス・ロングビル――学院長秘書ね――彼女に聞いたんだけど、あの〈解放の仮面〉さ……」「なんだよ、あのしっとマスクがどうしたって言うんだ。……あ、まさか」 言いよどむレイナール。 それにツッコミを入れていたサイトは、レイナールの言わんとしていることを悟る。 〈解放の仮面(しっとマスク)〉は魔道具である。生物と違って唯一無二のものではない。つまり――「あれ、まだ予備があるらしいんだ」「あー、じゃあ、このまま召喚したら、しっとマスク弐号が誕生するだけか……」「そうなるね。ミス・ロングビルによると心境の変化によっても呼び出される使い魔は変わるらしいから、僕に恋人が出来たら、再召喚しようと思ってる。もう進級試験は通過してるから召喚を焦ることもないしね」「それがいいな」 レイナールとサイトは笑い合う。 その後二人が好みの女性のタイプはなどと話し始めたり、現実に戻ってきたギーシュが細かく昼食の場所の説明をしたり、レイナールとサイトにギーシュが恋愛指南(ギーシュの父や兄の受け売りが多々あり)をしたりしている間に、目指す王都トリスタニアが見えてきた。 竜籠の二重窓から、外の景色が見える。一行はトリスタニアの貴族向けの竜の発着場に向かって高度を下げていく。 王都上空を哨戒する竜騎士が、簡単な検問を行おうと近づいてくる。ルネはそれに対して軽くクルデンホルフ式に敬礼し「うしろのお嬢様方の分もだ」と言って、数枚の金貨を投げる。するとトリステインの検問担当竜騎士は、大層上機嫌に「問題なし、着陸を許可する!」と敬礼までして見送ってくれた。 ゆっくりと旋回しながら、城下をパニックに陥らせないように慎重に一行は高度を下げる。サイトに良く景色を見せようというルネの配慮もあるのだろう。「ほら、サイト、これがこの水の国の王都、トリスタニアさ」 中心に大きな川が流れており、小高くなっている場所に大きな城が見える。王城だ。サイトは「おおー、ほんとに城だー」と感動している。 王城を中心とした貴族街、川を挟んで低くなっている方が平民街、さらに市街地を囲む城壁の外が貧民街や農地になっている。 目をキラキラさせて見入るサイトに、地獄の訓練を通じて息のあったギーシュとレイナールが、仲良く同時に言葉を掛ける。◆◇◆ 蜘蛛の巣から逃れる為に 10.ようこそ王都(トリスタニア)へ!◆◇◆ トリステインの路地裏、看板のない店のオーク材の重厚な扉が開く。向かいに秘薬屋があるせいか、辺り一帯に不思議な匂いがしている。そしてそれらに紛れて、微かに、火薬や機械油の匂いもする。火薬や油も一種の秘薬なので、秘薬屋が扱っていても不思議ではないのだが。 厳つい如何にも口の悪そうなオヤジの満面の笑みに見送られて、看板のない店から出てきたのは、三人の少女だ。ピンクブロンドの長髪、金髪のツインテール、漆黒の肩まで切り揃えられた髪、三者三様の少女たちだ。店主のオヤジが「お嬢様がた、気をつけてくださいまし。最近は浮浪者の死体が消えるとか、水路近くで化物が出るとか何とかいう噂があるんでさあ」などと言って見送り、軽く頭を下げて扉を閉める。 黒髪の少女は前の二人の従者なのか、荷物を持って一歩退いて歩いている。しかし、黒髪の少女はなにやら興奮した様子であった。「すごいです! 学院からここまでホンの十数分で着くなんて! それに学院の地下からここまで道が繋がっているなんて知りませんでした! さっきの列車、しゅごーって、もう、すんごいですね!」 彼女らは、王都に買い付けに来たルイズとその自称義妹ベアトリス、ルイズの侍女シエスタの一行である。 彼女らが今しがた出てきた秘薬屋の向かいの建物は、トリステインで唯一の銃火器屋(ガン・スミス)である。実際は火器以外にもなんでも商う店であるが。ルイズたちはここで必要なものの手配をしてきたところだ。夕方には全て揃えられるということだったので、時間を潰すために王都へと繰り出したのだ。それに服くらいは実物を見て選びたいし。 この店の看板が出ていないのは、法に触れるような過剰な威力の銃火器や魔道具を扱っているためであるし、この店がトリステインでは忌み嫌われているアトラナート商会(蜘蛛商会、クルデンホルフ大公国で一番規模が大きい商会)の店舗だからでもある。各地と一瞬で繋ぐ〈ゲートの鏡〉があるため、商品のお取り寄せなどもその日のうちに対応してくれる。「知らないのも無理は無いわ、シエスタ。さっきの地下通路が使われたのは、おそらく実に千年以上ぶりのはずだから。維持管理は自律型の魔道具によって行われていたようだけれど」「確かにそうですわ。私も、トリステイン魔法学院に転入する際に、関連する過去のあらゆる資料を調べてみて、それで初めて、地下の抜け道や、ウード教師長が学生時代に使っていたという研究室の存在を知ったくらいですもの」「オールド・オスマンなら知ってそうだけど」「それよりは秘書のミス・ロングビルのほうが知ってそうですわ。さっきの店主、というか、あの店自体が、学院までの地下道も含めて、彼女のお仲間(インテリジェンスアイテム)みたいでしたし」 適当に言葉を交わし合う二人の会話に混ざっていた単語に、シエスタが反応して驚く。「ええっ!? ミス・ロングビルってインテリジェンスアイテムだったんですか!?」「50年も老けない女が人間な訳ないでしょう」 言われてみれば、たしかに使用人の間でもそんな話を聞いたことがある。 シエスタは仕事に就いてすぐだったので、あまり実感がないが、結構長く働いているメイド長よりもロングビルの方が先輩だというのを耳に挟んで、ありえないと思ったことはある。 だがロングビルが、人間ではなくて魔道具やガーゴイルの類だというなら納得だ。「魔法で永遠の若さを、ってのは出来ないんですか?」 絵本なんかでは、魔法使いは何でもできる存在として描かれている。 だから不老不死の魔法というものも存在しているとシエスタは思っていた。 存在してなくとも、新しい雇用主であるルイズ様なら何とかしてしまいそうだけれど。「シエスタ、魔法もそこまで便利じゃないわ。まあ、邪道外法の限りを尽くせば、延命や若返りの手段なんて幾らでもあるけれど」「邪道外法……」 やっぱり手段があるにはあるんだ、とシエスタは思う。「特殊な儀式を施した人肉を食べたりとか、邪神と契約したりとかね。少し前の文献では、『よく動くゴーレムの作り方』なんかに、平気で『人間のミイラの粉を使って云々……』って出てくるんだから」 魔法なんて碌なもんじゃない。と、シエスタの持っている魔法に対する万能で神聖なイメージを、ルイズは叩き壊す。 魔法は手段に過ぎない、とルイズは考えている。“貴族は魔法をもってその精神とする”というのは実に結構だが、結局、問題はその魔法を以て何を成すのかということなのだ。 魔法それ自体が尊いのではない。手段を目的にしてはならない。 だが一方で、目的のために手段は正当化される。 ハルケギニア人の命運を蜘蛛の連中の巣から引きちぎって取り返すためならば、ルイズは、使える手段ならば邪道外法でも何でも使うつもりであった。 それこそ連中の用意するものであろうが何であろうが、だ。例えるならば、不思議のダンジョン内で、店の商品を使って店主を殺して泥棒するようなものだろうか。 幸い、と言っていいのか、彼ら蜘蛛の眷属はルイズの思惑を知っていつつ、彼女を泳がせているようだ。 シャンリット特製の汎用マジックカードの使用権限は取り上げられていないし、アトラナート商会のサービスも利用出来る状態のままだ。 何らかの対策は練られているだろうが、彼らからは、ルイズの反逆すらも観察対象として心待ちにしているかのような雰囲気が感じられる。 不気味な相手だ、とルイズは思う。千年教師長、狂人ウード・ド・シャンリット。ルイズが挑むべき蜘蛛の寵児。「延命法といえば、例えば、わたくしの実家の千二百年前の先祖ウード・ド・シャンリットは、自分の魂をインテリジェンスアイテムに移し替えることで、事実上不老不死になって、今なお学術都市に君臨していますし」「ふえぇ~、すごいですねぇ。『千年教師長』というお伽話に書いてあった話はホントだったんですね」「感心している場合じゃないわ、シエスタ。私の侍女になるということは、最終的にはその『蜘蛛の頭領』ウード・ド・シャンリットと戦うということなんだから」「……え?」 ルイズの言葉に固まって歩みを止めるシエスタ。 いま、このちいさなおんなしゅじんは、なんといっただろうか? 止まってしまったシエスタの方をルイズとベアトリスが振り返る。「ハルケギニアでは、ここ千年間、飢饉や疫病の大流行は起こっていないわ。調べてみれば分かるけれど、それらの兆しが見えたときには、それとなくアトラナート商会やクルデンホルフ大公国の介入があってるの」「え、でも、クルデンホルフは鎖国主義なんじゃ……」「表向きはそうですが、実際はそんなことはありませんわ。『蜘蛛のキャラバン』というのを聞いたことはありません? 学術都市シャンリットは、キャラバンを通じて積極的にさまざまな研究資料たる文物、自然物や労働力――つまり人間そのもの――を輸入していますの。飢饉や疫病の際には、その買取代価が、金貨ではなく小麦や薬になるだけですわ」 人買いのアトラナート商会。“悪い子はアトラナート商会に買い取ってもらうから”というのは、このハルケギニアでは誰でも子供の時に聞いたことのある躾文句だ。 何でも、それこそ道端の犬の糞であろうがなんだろうが買い取ってくれるという、アトラナート商会の行商隊(キャラバン)は、様々な場所を巡って、各地の特産品や珍品を集め、またその時々に辺境の村が必要とするものを売ったり、物々交換したりする。 彼らのキャラバンが買取る品目としては、人間そのものも含まれている、らしい。シエスタは幸いにして、子供が買われていくところは見たことがなかったが、キャラバンそのものはタルブ村に居た頃に何度も見たことがある。「彼らは、私たちハルケギニア人のことを、まるで何とも思っていない。ただ、『6000年続いているのが滅びるのは勿体無いから』という理由で、小麦も秘薬も与える。私にはそれが我慢ならないのよ」「ええ、その通りです、お姉さま!」 ルイズの言葉にベアトリスが同調する。いやまあベアトリスがルイズに反対することは先ずないのだが。 シエスタは目を白黒させながら、ソロリソロリと荷物を持ってない方の手を挙げて、轟々と決意の炎を燃え上がらせる二人に尋ねる。「え、っと、でも、どうやって、です?」 いつの間にか二人で手を取り合って、なんか背景に炎でも出そうな勢いだったのが、そろってシエスタの方に振り向く。ちょっと怖い。 でも故郷の弟妹たちのためにも、こんなに高待遇のところを辞めるわけにはいかない。 一度引き受けたことは投げ出すなと、曽祖父も言っていた。シエスタはお祖父ちゃんっ子だった。ここは覚悟の決めどきかもしれない。我れ知らず、荷物を握る手に力がこもる。「それは――」 ルイズが口を開こうとしたところで、二人の後ろから近づいてきた男が、よそ見でもしていたのかそのままルイズとベアトリスにぶつかった。「きゃ!?」「あんっ!?」「ルイズ様! ベアトリス様!」「おっと、すまない」 華奢な二人はぶつかられた勢いで転びかけるが、そこはさすがに鍛えていので、たたらを踏んでなんとか転倒はこらえた。 どちらも特に怪我はないようだ。シエスタはほっと心中で溜息をつく。これでもしルイズが傷ついていたら、ベアトリスがどんな暴走をするか分かったものではなかったからだ。 ベアトリスが眦を吊り上げて元凶の男を睨みつける。ルイズもその男の顔を見遣る。「『おっと、すまない』じゃありませんわ! この無礼者! タダで済むと――」「ストップ、ベアトリス」 ルイズが怪我していなくても、ベアトリスは充分に怒っていた。 だが、男の顔を見てルイズが何かに気づいたのか、ヒートアップしたベアトリスを止める。 ルイズと男の声が重なる。 ぶつかってきたのは魔法衛士隊の制服を着た、灰色の髭が特徴的な男だ。腰にはレイピアのような剣杖を差している。「ひょっとして貴方は――」「おや、君は――」◆◇◆ ほぼ同時刻、ルイズたちが蜘蛛商会のガン・スミスから出てくる直前に、サイトたち一行は、ガン・スミスの向かいの秘薬屋『Piedmont(山辺)』に入っていっていた。 超ニアミスであった。まあ別に合流するとか言う取り決めがあるわけではないので、特に問題はないが。「ごめんくださーい」 もはや常連のレイナールが、気さくに奥にいる店主に声をかける。 秘薬屋の中は、案外整理されていた。小さな引き出しがついた棚が所狭しと並んでいる。 漢方薬の店や、調香師の仕事場が、ひょっとしたらこんな感じかもしれない。少量多品種を扱うのを目的とした店作りである。かと思えば上に竜の頭蓋骨らしきものが吊り下げてあったりする。よく分からない店だ。 中に入ってみると、先客がいるのが見えた。紅い長髪の女性だ。「あれ、ミス・ロングビル?」 レイナールの問い掛けに、女性が振り返る。 どうやら学院長秘書のロングビルという女性らしい。「レイナール君ではありませんか。それにギーシュ君にサイト君も。傷はもういいのですか?」「はい、おかげさまで」 レイナールとロングビルが色々と話し込む。 その間に他の面々は、適当に秘薬が置かれている棚を見ている。 サイトも、移植されたルイズの左眼から流入する知識によって、秘薬の知識はかなりのものがある。そのため秘薬そのものの実物の他にも、その分類方法やディスプレイ方法を興味深く見ていた。(んー、これは何だ? 効能別に分けてあるのか? 系統分類順?) サイトが興味深く店の中を見て回っているうちにも、他の面々はめいめい自由に店内を見て回ったり、店員を捕まえたりしている。店員は、初老の店主の他に、見習いか家族らしき若い店員が男女二名ずついるようだ。客はロングビルとサイト一行の他には居ない。 レイナールとロングビルは相変わらず話し込んでいる。聞こえてくる内容によると、ロングビルは、先日『闇の跳梁者(劣化版)』が召喚された際に気が狂れた(ふれた)生徒たちのための精神作用系の魔法薬を受け取りに来たらしい。 キュルケは若い男性の店員を捕まえて、使い魔のサラマンダーの虫下しを作るのに必要な材料を注文している。色仕掛けでまけさせようとしているようだ。若い店員の鼻の下が伸びている。ただでさえ色香が強いキュルケが色仕掛けをすれば、それは効果は抜群だろう。 一方ギーシュは若い女の店員を捕まえて、ジャイアントモールのための薬などが無いかどうか聞いている。だが、同時にその女性店員の知識を褒めそやして、ご機嫌をとっている。早速ナンパか、やるなあ、ギーシュ。 タバサはサイトと同じように棚を見て回っている。見て回っているが、その対象は、薬というよりも毒物、劇物に偏っているように思われる。今彼女が見ている植物は、そう、暗殺者が使うような、一撃必殺の毒の材料になるはずだ。誰か殺したい相手でもいるのだろうか。 色々と興味深く見ているうちに時間が過ぎ、それぞれ必要な秘薬を買い込んだり、手配してもらったりした。ロングビルとはそのまま秘薬屋『Piedmont』で別れた。ギーシュが軽く誘っていたが、すげなく断られたようだ。乳臭いガキに付き合う時間はないということを、職業倫理上の問題に絡めて懇切丁寧に諭されたそうだ。 次は書店や古書店巡りとなり、それぞれが気に入った本を買ったりした。途中でタバサが分厚い本を山と積んで「“おにいちゃん、この(背表紙が)あつくて、(表紙が)くろくて、(積み重ね的に)ふといの、ちょうだい”」とサイトにおねだりするというハプニングもあった。誰の仕込みだ、キュルケか。グッジョブ。もちろんサイトは言われるままにタバサに本を買ってやった。 ギーシュは彫金のデザイン本を、キュルケは流行りの恋愛小説を、レイナールは秘薬調合の実践本を、タバサは様々な魔法理論の本(黒くて太くてあつくて中身が白い)を買っていた。 サイトはとりあえずハルケギニアの歴史の入門本を買った。異なる文化に対するバックグラウンドの理解は、会話やより深い相互理解に必要なのだ。インプリンティングされた知識は必要に応じて脳裏に浮かび上がるが、体系的に本を読むとまた別な角度で脳に植えつけられた知識が馴染むことを、サイトはレイナールとの共同秘薬調合実験の手引書を読んだ際に実感していた。それは目の前の霧が晴れるような、虫の視点から鳥の視点になったような、爽快な感覚であった。 そして、昼食。 ギーシュが選んだビュッフェ方式の店は、なかなか雰囲気も良く、味も良く、価格も良心的であった。 皆の話題はサイトの故郷の話や、ギーシュの使い魔自慢から、ハルケギニアの各生物の話に及び、それぞれの生息地やハルケギニアの地理、さらには最近の国際情勢にまで広がった。レイナールは博物学的な話題に詳しく、キュルケは世俗の事情に詳しかった。国際情勢では、軍事的な見地からの意見をギーシュが述べていた。時々タバサが言葉少なながらも辛辣で的確なツッコミを入れる。サイトは最初の自分の世界の話以外では専ら聞き手、聞き出し手に回っていた。「アルビオンでは内乱が本格化しているらしいね」「王弟派と現王家派に別れて、らしいね。ここまでならよくある継承争いだけど、王弟派はレコンキスタを名乗ってるんだっけ。『聖地奪還のためにハルケギニア一団となって立ち上がるべし』と言っているそうだね。勢いづいてハルケギニア統一に乗り出したら、トリステインにも戦火が及ぶかも知れない、と父上は頭を痛めていたよ」「男の人は戦争が好きよねえ。ウチの国の皇帝閣下は、そんなトリステインの弱みにつけ込んで、アンリエッタ姫を手に入れるつもりらしいけれど」「うーむ、ゲルマニア皇帝のハーレム(後宮)に、我らが姫を渡したくはないが、これは政治的な問題だからなあ。姫様は乗り気じゃないそうだが、ゲルマニアに頼らねば、トリステインの先は暗い。マザリーニ枢機卿の他にまともな政治家が居ればなあ」「……もぐもぐ。そう言って無いものねだりをする間に、あなたたちが政治家になればいい」「ミス・タバサ、そうは言うけど、そう簡単に若造が発言権を得られる訳ないよ」「……むしゃむしゃ。全面的な戦争になれば、混乱に乗じてのし上がることも可能。レコンキスタに着くのも一つの手」「まさか! トリステインを裏切れというのかい!?」「……もっしゃもっしゃ。仮定の話。国ごと家門が滅ぶよりは良いはず」(ファンタジー世界もいろいろ大変なんだなあ) 和やかに楽しい昼食の時間は過ぎていく。そして食べ放題を選んだギーシュの慧眼は褒められるべきだろう。 タバサがもりもり食べたため、次回以降はこの店が使えないのが残念である。 食べ過ぎて出入り禁止を食らってしまった。タバサ禁止。使える店が減ったとギーシュは力なく笑った。 そしてサイトたち男子組と、キュルタバコンビは、名残惜しみつつも、それぞれ別れて、市内を回ることになった。 男子組は王都観光、女子組はブティック巡りである。嵩張る荷物は、いつの間にかギーシュがまとめて学院への配送を手配していた。なかなか気がきく男である。細やかな気遣いは見習いたいと、レイナールがこぼす。レイナールは昼食のときの会話で、多少は女性との会話に喜びを見出したらしい。自分を変えたいという彼の思いは、どうやら本物らしい。 というわけで、時間が流れて、いま、サイトとギーシュとレイナールは、王城の前に居た。「……なんか、ピリピリしてねぇか?」「うーん、確かに、ちょっと様子がおかしいね」 王城前の衛兵は、油断無く周囲を見回しているが、撒き散らす雰囲気が何故か刺々しい。 チラリと見えた城内でも、多くの人が走りまわっている。「見つかったか!?」「いや、北側には居らっしゃらなかった」などという声が聞こえる。 ギーシュとレイナールも首を傾げている。何度か王城前を通ったこともあるが、こんな雰囲気ではなかったはずだ。王城がこのように浮ついているべきではない。トップはどっしりと構えているべきなのだ。「今は取り込み中みたいだから、違うところを回ろうか」「そうだね、トリスタニアの名所はここだけじゃないし。折角だからレイナールのためにも、おすすめのデートスポットを紹介して回ろうか」 レイナールの提案にギーシュが同調する。ギーシュはレイナールをプレイボーイに仕立て上げるつもりなのだろう。 男とは概して教えたがりであるし、レイナールは真摯で真面目な良き生徒であるから、ギーシュとしても教え甲斐があるのだろう。 今まで父や兄に教えられるばかりだったのが、教える側に回れて得意になっている部分もありそうだ。「あー、まあそっちの方が役立ちそうだな。でも、男だけで回るのか?」 デートスポットに男だけなど、居た堪れない。「当然ナンパするに決まってるじゃないか! 是非とも頑張ろうじゃないかね、諸君。さっきのキュルケやタバサ程とはいかなくても、可愛い娘を捕まえたいものだね」 気炎を上げるギーシュと、初ナンパということで肩に力が入るレイナール。 サイトはやや呆れつつ、若さの勢いって素晴らしい、と眩しい物を見る思いであった。 平賀才人22歳。まだ老けこむには早いと思うのだが。◆◇◆「あのさあ」 曲がり角の影に隠れて周囲を伺いつつ、うんざりした様子でサイトが呟く。彼の手には土魔法で作られたコンパウンドボウ(化合弓)が握られており、背には矢筒を背負っている。「俺たち、王都に観光とナンパに来たんだよなあ?」「その通りだとも、サイト。ほら、その成果が、こちらの姫君であらせられる。なんとも光栄なことじゃないか」 ギーシュとレイナールも杖を片手に周囲を伺っている。軽口とは裏腹に、彼らの頬を冷や汗が伝う。 一人の女性を中心に、サイトたちは三人で取り囲むようにして、周りを警戒している。 囲まれている女性は、町娘のような格好の上に、暗渠の冷気を遮るためのローブ(ギーシュが作ったもので、裾に薔薇のワンポイントがあしらわれている)を羽織っている。髪は肩口くらいまでの栗色で、手入れがいいのか、枝毛などはない、艶やかな色合いである。きっと高貴な身分の出なのだろう。顔立ちからも生来の高貴さが滲み出している。震える彼女の手には水晶が嵌めこまれた高価そうな杖が握られている。「あ、あの、みなさん、ごめんなさい。こんなことに巻き込んでしまって」 女性が小さくなって、サイトたちに謝る。「何をおっしゃいます! 女性を守るのは男の勤め! そして、姫君を守るのは、トリステイン臣民の義務でありますれば!」「ギーシュの言うとおりです。安心してください、アンリエッタ姫殿下。必ずや無事に送り届けますので」 そう、守られている女性は、トリステインが誇る可憐なる白百合、誰あろう、アンリエッタ・ド・トリステイン姫殿下であった。=================================キャラクターが増えると話が進まない。王都探訪編は典型的なハック&スラッシュになるはず。……あれ、なんで王都でそんな話に? ほのぼの日常編じゃなかったっけ? ってのは作者自身不思議に思ってます。2011.02.05 初投稿