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No.20268の一覧
[0] リリカルポイント【転生×仮面ライダーディケイド】 再投稿 チラシの裏から[昆虫採集](2012/02/03 19:46)
[1] 現状[昆虫採集](2012/02/07 16:37)
[2] 介入[昆虫採集](2010/08/18 22:50)
[3] 紹介[昆虫採集](2010/08/18 22:46)
[4] 初陣[昆虫採集](2010/08/18 22:48)
[5] 無力[昆虫採集](2010/08/17 18:26)
[6] 捜索[昆虫採集](2010/08/17 18:35)
[7] 体験[昆虫採集](2010/08/19 13:46)
[8] 煩悶[昆虫採集](2010/08/18 12:05)
[9] 遭遇[昆虫採集](2012/02/11 19:04)
[10] 接見[昆虫採集](2010/08/17 20:47)
[11] 暴走[昆虫採集](2010/08/17 21:09)
[12] 対話[昆虫採集](2012/02/07 16:28)
[13] 掌握[昆虫採集](2014/03/31 23:09)
[14] 変身[昆虫採集](2010/08/18 12:23)
[15] 日常[昆虫採集](2010/08/19 23:30)
[16] 再現[昆虫採集](2010/08/17 23:22)
[17] 襲来[昆虫採集](2010/08/18 10:32)
[18] 実戦[昆虫採集](2010/09/19 08:53)
[19] 陰謀[昆虫採集](2010/10/21 13:30)
[20] 三巴[昆虫採集](2011/09/03 20:09)
[21] 居候[昆虫採集](2012/04/30 20:41)
[22] 息抜[昆虫採集](2011/01/31 09:24)
[23] 邂逅[昆虫採集](2012/04/23 17:14)
[24] 敗走[昆虫採集](2011/04/04 20:08)
[25] 秘密[昆虫採集](2012/02/08 16:54)
[26] 欲望[昆虫採集](2011/04/30 23:48)
[27] 成長[昆虫採集](2012/04/08 15:17)
[28] 奇縁[昆虫採集](2011/08/20 16:12)
[29] 来訪[昆虫採集](2011/08/20 16:20)
[30] 交錯[昆虫採集](2012/02/03 20:42)
[31] 進捗[昆虫採集](2012/08/07 12:11)
[32] 錯綜[昆虫採集](2013/08/08 12:16)
[33] 撃滅[昆虫採集](2013/08/28 00:18)
[34] 執念[昆虫採集](2013/12/11 14:35)
[35] 怒涛[昆虫採集](2014/04/02 14:32)
[36] 混戦[昆虫採集](2014/06/15 01:02)
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[20268] 三巴
Name: 昆虫採集◆de9a51bc ID:cb8982dc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/03 20:09
 どうしてこうなった?

 原作通りにフェイトとアースラ組の引っ越しも転入もつつがなく終えて、原作通りに破損したレイジングハートとバルディッシュも来週までに修理が終わるとのこと。全ては順風満帆、問題なく原作通り……そのはずだったんだ。

「なのになぜ、自分は結界の中に隔離されているのだろう?」

 病院からの帰り道だった。傷を診てもらい、包帯を変えてもらて、病院ではやてや守護騎士と遭遇などというイベントも発生せず、夕陽を眺めながらのんびりまったり家に向けて歩いていた。そして何事もなくいつも通りに1日を終えられると思っていたのだが……
 まあなんだ、世の中そうそう思い通りにいかないし、バラエティで報じられるような、信じられない出来事だってないわけじゃあない。もしかしたら突然恐竜帝国が地球侵略に現れるかもしれないし、オトナ帝国が珍奇な作戦に乗り出すかもしれない。宇宙人か未来マンか異次元人か蝶能力者が現れることだってあっても不思議ではない。魔法が実在する世界なのだから。
 クロノに言わせれば「世界はいつだってこんなはずじゃないことばかり」だろうし、どこぞの絶望教師ならば「何を言っているんですか世の中そんなことばかりですよ」と言うだろう。
 はぁ…………うまくもないネタに走って現実逃避するのもこの辺にしておいて……

「えっと、どちら様ですか?何か自分にご用でしょうか?」

 視線の先、電柱の天辺には真っ赤なフリフリのドレスに同色のベレー帽、手には長柄の戦槌を携えた少女。燃えるような朱色の髪は2本の三つ編みに括られている。
 彼女は闇の書の守護騎士ヴォルケンリッターの1人、鉄槌の騎士ヴィータである。
 こちらの問いかけには答えないが、聞くまでもなく魔力の蒐集以外にあるまい。ところでザフィーラの姿が見当たりませんね。アニメだといつも一緒に行動してたと思うんだけど。

「もらうぞ…お前の魔力」

 ボソリと呟くとグラーフアイゼンを振りかぶり、一直線に突っ込んできた。

「ちょ、わっ!?」

 慌てて急ごしらえの障壁を展開し防御を試みる。障壁越しに迫るグラーフアイゼンを見てはたと思いだす。彼女はなのはの強固の魔力障壁を破ったのだ。背中に冷たいものが走り、反射的に身を屈める。
 ヴィータはスピードを緩めず、目の前に現れた壁にグラーフアイゼンを叩きつけた。衝撃に耐えきれなかった障壁は呆気なく砕け散り、戦槌が頭上を通過していった。
 ヒッ、と息を飲み、後ろに飛び退く。恐る恐る頭頂部に手を伸ばすと柔らかくしなる感触。無事なアホ毛の姿がそこにあった。

「ちょ、ちょっと待って下さい!?今の当たったら死んでましたよ?殺す気ですか!?」
「殺しゃしねーよ。言ったろ、魔力をもらうって」

 嘘だっ!A's1話でもなのはに問答無用で殴りかかり、今しがたこちらの頭を粉砕せんとごつい凶器をスイングしたくせにどの口が殺さないなど言えたのか。むしろ殺る気満々としか思えない。

「だいたいなんでこんなピンポイントで狙われるんですか!?この間だって盾の人に追い回されるし!」
「ザフィーラのことか?お前、ザフィーラが取り逃がしたって奴か。どうやって逃げおおせたか知らねーが、ちょっとばかり本気になった方が良さそうだな」

 何やらやる気になっているようだが、魔力も命も渡す気はない。ではこの局面をいかにして切り抜けるか?
 にわか仕込みの魔法ではまず勝ち目はないだろう。せめてデバイスが欲しいところだ。
 逃げる?「しかしまわりこまれてしまった!」そんな未来が容易に想像できる。

 ならば答えは一つしかない。ダンゴムシの時も、ついこの間襲われた時も、自分の意志で出せたんだ、このピンチに現れなければ嘘だろう。以前呼び出したときの感覚を思い浮かべ、ディケイドライバーを強く求める。

 来い……来い……来い…………来いっ!

「なんだそれ。それがお前のデバイスか?」
「ええ、まあそのようなものです」

 手の中に現れた白いバックルを腰に押し当て、ベルトが固定されたことを確認。バックルを展開しライドブッカーからカードを引き抜く。そのカードを正面にかざし、およそ40年にわたって連なる正義の系譜を想起し、初めてそのフレーズを口にする。 

「変身!」

 手指の動きでカードを裏返し、ディケイドライバーに挿入する。

《 KAMENRIDE DECADE 》

 自分を中心に光と影が交錯し、一瞬の後にディケイドへと姿を変える。

「初めて見る甲冑だな……つーか、ダセえ」

 慣れれば……慣れればそれ程気にならなくなるから、それまでの辛抱です。

「今日はザフィーラさんは一緒じゃないんですか?」
「お前に教えてやる義理はねーよ。お喋りはそこまでだ」

 質問はすげなく切り捨てられ、彼女はグラーフアイゼンを構える。しかし、もとよりこちらに戦う気はない。さっさとインブジブルなりクロックアップなりで速やかに退散──
 その時、自分と彼女の間に異なる世界をつなぐ橋、グレーのオーロラが現れる。即座にオーロラから離れ、敵の出現に備える。反対側のヴィータは様子を窺っているようだ。
 間もなくオーロラの中から姿を現したのは異なる3つの人影。それらは皆一様に腕などから紐状の何かが垂れ下がっている。

「なんだこのウネウネ軟体コンボ」

 まず正面に向かって佇んでいる白っぽい人影は仮面ライダーブレイドに登場した怪人、不死の生命体アンデッド。中でもイカの始祖たるスキッドアンデッドだ。その右隣、赤い体色の怪人は仮面ライダーアギトに登場したロード怪人の1体、オクトパスロード。そして反対には、丸い傘のような頭部に全身が青色基調のステンドグラスのような模様をしている怪人は仮面ライダーキバに登場したファンガイア。クラゲをモチーフとしたシームーンファンガイアである。

 およそ10年ぶりに見るその姿に思わず懐かしさがこみ上げる。だが目の前に存在している怪人はスーツでもアクターでもない。本物なのだ。

「あんだてめーら?邪魔すんなら容赦しねーぞ」

 ヴィータはすでに臨戦態勢だ。さて、どうしたものだろうか。戦いなんて、命のやりとりなんて進んでやりたくはないのだが、この状況を放置するわけにもいくまい。僕が逃げて怪人も消えてくれるのなら良いが、置き去りにされた怪人達が無差別に暴れないとも限らない。

「とにかく、退治してやりますか」

 パンパンと手をはたき、まずは敵の出方を待つ。3対1で突撃するような度胸は持ち合わせていないし、無謀なつもりもない。少林寺にも守主攻従と言ってだ──
 その時、1番に動いたのは怪人達を挟んで反対にいたヴィータだった。唐突に宙に飛び上った彼女の五指の間には4つの鉄球。

《 Schwalbe fliegen 》

 鉄球を放り上げ、グラーフアイゼンのひと振りでまとめて強打する。打球は赤い光を纏い、猛スピードで4体の目標(僕+怪人×3)に向かって飛来する。

 でも、これくらいなら……

 迫り来る鉄球を見据え、強化された感覚で精確に捉える。眼前に迫ったその瞬間、白羽取りの要領で両手で挟みとった。と思ったら鉄球は手の中で潰れ、砕けてしまった。合わせた手の間から欠片がこぼれ落ちる。
 怪人に向かった鉄球の行方を追うと、それぞれの怪人の触手が機敏に動き狙い過たず叩き落とし、あるいは払い飛ばした。
 攻撃を受けたことでディケイドを狙ってきたであろう怪人達は彼女も敵と判断したのか、オクトパスロードがヴィータに狙いを定め、こちらにはスキッドアンデッドとシームーンファンガイアが矢のような速さで無数の触手を伸ばす。

 × × ×

 「お前ら、なんなんだ?あいつの仲間でもなさそうだし、関係ない奴がしゃしゃり出てくんじゃねーよ」

 眼下のオクトパスロードに鋭い眼光を飛ばす。傍からは苛立っているように見えるが、その実彼女は冷静に戦略を思案していた。相手の攻撃手段はさっきも見たとおり両腕の触手。自分の愛機では切断も防御も難しいだろう。

 「なら、こいつでどうだ」

 どこからともなく彼女の手に現れたのは、先ほどよりも格段に大きいソフトボール大の鉄球。軽く放られたそれは重力に逆らいその空間に停滞する。

《 Komet fliegen 》
「ふんっ!」

 グラーフアイゼンを真上から振り下ろし鉄球を強打。打ち出された鉄球は凄まじい速度で地上のオクトパスロードに迫る。だが相手もただ突っ立ているだけのカカシではない。今度は受けきれないと判断したのか、意外にも機敏に飛んでかわしてみせる。鉄球は何もない空間を空しく素通りしていく。ところが鉄球は弧を描いて反転すると再度オクトパスロードに襲いかかる。背後から突き飛ばされたオクトパスロードの身体が倒れこむ。地に伏した相手にさらにたたみかけるべくヴィータはグラーフアイゼンを振り上げ急接近する。っ!?
 射程圏内に入るその直前、彼女の騎士としての勘が危険を察知した。突如ガバと顔を上げたオクトパスロードが口から何やら黒い液体を吐き出した。

「くっ……!」

 急制動、急旋回をかけて怪しい液体を紙一重で回避するが、避けきれなかった飛沫がドレスの裾に付着した。するとどういうことか、針の穴ほどの染みが見る間に握り拳ぐらいにまで広がり、グズグズに崩れ落ちた。
 欠損したドレスを見たヴィータは憤怒を露わにして身を震わせる。その騎士服は自分の敬愛する主、はやての考案した大事な品。魔力で構成されたいるから修復は可能だが、それでは怒りがおさまらない。

 「よくも、やってくれたなぁ!!」
《 Explosion 》

 グラーフアイゼンに内蔵されたギミックが稼働し、ハンマーの頭が持ち上がりまた収まる。その途端、ヴィータの体から膨大な量の魔力が溢れ出す。それはベルカ式カートリッジシステム。魔力を込めた弾丸を消費することで一時的に魔力を上乗せする機能である。

《 Gigant form 》

 ハンマーの頭が光を放ち形状を変える。丸い口をしていたハンマーがより巨大に、重厚な四角形へと変化する。そして出来上がるは、砕けぬものはないという鋼鉄の大槌。某勇者王の黄金鉄槌に似ていると言えば分りやすいだろうか。
 ドラム缶ほどもあるグラーフアイゼン ギガントフォルムを頭上に掲げてオクトパスロード目がけて吶喊する。時に行くてを触手や溶解液が阻むが、長年の戦闘経験と機動力をもってかわしていく。
 避けきれないと判断したのか、オクトパスロードは手近な家の車を持ち上げヴィータの行くてを阻む。

「そんなのまとめてぶち抜くだけだ!!」

 グラーフアイゼンを力の限り振り下ろす。目の前の車に戦槌は勢いよく吸い込まれ、車体ごとオクトパスロードを叩き潰す。車体がひしゃげ、粉々に砕け散り金属とアスファルトの粉砕する轟音が響き渡った。

「ふん」

 もうもうと立ち込める粉塵の中、ガシャコン、とギミックが開閉し空薬莢を排出する。不機嫌そうに鼻を鳴らしグラーフアイゼンを肩に担ぎ上げる。多少は気が晴れたが、そもそもの目的は魔力の蒐集。頭を切り替え、例のピンクの鎧を探して視線を巡らせるが、突如現れた触手に拘束されてしまった。

「なっ――!?」

 見ると、潰したと思ったはずのオクトパスロードが背後にたち、触手を伸ばしていた。

 「くそっ、あの車は盾じゃなくて目眩ましかよ」

 自分の失態に悔しさと更に激しい怒りが起こる。
 抜け出そうにも触手は万力のような力で締め付け、もがけばもがくほどきつく締め上げる。

 その時、不意に響いた銃声と、触手の力が緩んだのはほぼ同時だった。反射的に、緩んだ隙間に防御結界を展開し隙間をこじ開け脱出する。
 敵の体には何ヵ所か穴があいていて、銃声のした方を見るとピンクの怪人が手にしている奇妙な形の銃から煙がもれていた。

 助けて、くれたのか?

 どういうつもりか知らないが、ひとまずの難を逃れた。オクトパスロードに向き直ると、相手は銃撃を受けて怯んでいる。一撃を見舞う絶好のチャンスだ。

「アイゼン!!」

 愛機の名前を叫ぶ。
 主人の声に応え、再度カートリッジをロード。再度ギガントフォルムへ変化を果たす。

「これで――」

 大きく振りかぶる――

「終わりだぁぁぁ!!!!」

 怪人の醜悪な顔面にグラーフアイゼンを叩きつける。オクトパスロードの体はハンマーと大地の間に挟まれ、無残な姿となって押しつぶされた。宙をさまよっていた触手はビクリと震え、地面に落ちるとわずかに蠢動するがやがて動かなくなった。

「カートリッジを無駄に使っちまったな。ったく手こずらせやがって」

 さて、あの野郎はどこに行った?

 蒐集対象の姿を探すと、拘束され動けない鎧の姿がそこにいて
 白っぽい怪人が怪しく光る巨大な拳を振りかざして迫っている

 瞬間、飛び出した

 × × ×

 地を這い、空気を切り、上下左右から変幻自在に迫る触手はあたかも一つ一つが違う意思で動いているかのようだ。
 ブッカーに手を伸ばす間もなく、後退しつつ接近する触手を迎撃する。しかし、柔軟に曲がりくねる触手は打っても払ってもダメージを与えることができず、幾度となく襲いかかる。そして目の前の触手にばかり気を取られていた僕は、足元に忍び寄る影に気づかなかった。

「わっ!?」

 突然、何かに足を掬われて転倒する。慌てて自分の足を見ると、道の側溝から伸びる1本の触手が右足に絡みついていた。その途端、それまで防いでいた触手が殺到し左足から胴体までをびっしりと覆い尽くす。

 ひぃっ、気持ち悪っ!

 焦燥と不快感に駆り立てられまとわりつく触手を引き剥がそうとするが、ヌメヌメブヨブヨするイカとクラゲの触手は上手く掴むことができない。
 スキッドアンデッドとシームーンファンガイアはこちらの体を高々とさし上げると、猛烈な勢いで地面に叩きつけた。成す術もなく地面と激突しアスファルトに体がめり込む。
 気持ち悪い。頭がグラグラする。心臓の音がうるさい。肩の傷が痛い。苦痛にうめき声をもらす間もなく体が浮かび上がり、また急降下する。4,5回繰り返すと遊び飽きた人形のように放り投げられ、受け身を取ることもできずグシャリと無様に落下する。

「ゲホッ、ゲホッ……ハァ……」

 ようやく解放されたが手足には力が入らず体の節々に鈍痛が走り、荒い呼吸を繰り返すことしかできない。いつの間にかすぐ側まで来ていたシームーンファンガイアが足を上げ、動けないこちらの胸目掛けて振り下ろす。

「かふっ」

 胸に鉄塊でも打ち込まれたかのような重圧。こちらの体を押し潰さんとさらに重くのしかかる。どうにか逃れようともがくが思うように力が入らない。咄嗟にブッカーガンを引き抜き、揺れる視界の中で敵がいるであろうおおよその位置目掛け、やたらめったらに乱射した。
 放った光弾のいずれかが命中したらしく、胸を踏みつけられていた重圧がゆるんだ。その隙に身を起こし、ふらつく頭を押さえながら辺りを見回すと体の各所に負った銃創から煙を上げるシームーンファンガイアの姿が目に入った。さらに攻撃を加えるべくブッカーガンを構えようとするが、その腕にまたも白い触手が絡みつく。触手をたどるとスキッドアンデッドの左腕から伸びている。

「ふぬっ…くっ」

 ギリギリと腕を締め上げ、引き寄せようとするスキッドアンデッドに負けじと踏んばる。おもむろに相手の右腕に垂れ下がっていた触手が己の腕にまとわりつき、棍棒のような形を成す。何をするつもりかと怪訝に思っていると、触手を纏って肥大化した腕が青白い光を放ち始めた。徐々に膨れ上がる光に言い知れぬ迫力と恐怖を感じる。

 ちょっ、何その必殺技っぽいの!?

 我知らず体が震え、あれは危険だと本能が告げる。触手を振りほどこうとひと際力を込めて腕を引いた瞬間、狙い澄ましたかのようなタイミングで触手が解かれ、バランスを崩してしまう。
 しまったと思ったときにはもう遅い。すかさずスキッドアンデッドが肉迫し、不気味な光を帯びた剛腕を振りかぶる。

 やられる──

 来るべき衝撃に心の中で身構える。歯を食いしばり、視線は目前に迫る拳から決して離さない。いや、離せない。視界が拳で埋め尽くされ、衝突するかと思われた。
 しかし、期せずして現れた救い主によりその危機を免れた。突如乱入した赤い影がスキッドアンデッドを殴り飛ばしたのだ。入れ替わりに目の前に現れたのは言わずもがな、ヴィータである。

「あ、ありがt…「勘違いすんなよ。お前に死なれちゃ困るんだよ」……」

 ビッとグラーフアイゼンを突きつけぶっきらぼうに言い放つ。まあ魔力を奪いに来たのだからそれは当然のこと。ともあれ危ういところを助けられたことだし、少しダルさが残っているものの症状もだいぶ落ち着いてきた。右肩の傷がひきつるが今は我慢だ。
 溜息をひとつついて立ち上がり、両手をはたいて気合いを入れなおす。

「そういえばタコ男?はどうしたんですか?」
「あ?あんなもんアタシとアイゼンの敵じゃねーよ。タコならもっとでかい化け物だって仕留めたことあんだぞ」

 ああ、魔力を持った野生動物相手にリアルモンスターハントしてたのだったか。あるいはもっと古い過去の記憶かもしれない。

「具体的には?」
「ペシャンコにしてやった」

 地味にグロかった。そんなやりとりをしている間にシームーンファンガイアもスキッドアンデッドも立ち直り、ジュルジュルと気味の悪い音を鳴らして触手をうねらせる。

「残りもアタシが片づけてやっから、それまで大人しくしてろ。結界の中だから逃げても無駄だかんな」

 ムッ。さすがに今の言い草にはカチンときた。醜態を晒した揚句助けられたことは今更変えようのない事実だが、役立たずは引っ込んでろと言わんばかりの冷たい物言いに込み上げる憤りを抑えられない。
 前に立つヴィータを押しのけ、ズイと前に出る。

「いいでしょう。今度こそ自分の実力をご覧にいれて見せますよ」

 そうとも。今度こそ仮面ライダーディケイドの真の力を見せてやろうじゃなイカ!!

 まずこちらの腕は2本しかないのに大量の触手と正面からわたり合おうとしたことが間違いだったのだ。わずかな黙考の末、1枚のカードを取り出しドライバーに挿入する。

《 KAMEN RIDE SUPERONE 》

 体が光に包まれ、たちどころに姿が変わる。その身を彩るのは眩いばかりの銀色。スズメバチを彷彿とさせる仮面に真っ赤な複眼がきらめき、赤いマフラーが風にはためく。
 それは本来戦闘用ではなく惑星開発用に人の手で生み出された改造人間。仮面ライダースーパー1の姿だ。

 押し寄せる触手を睨みつけ、新たなカードを行使する。

《 ATTACK RIDE REINETSUHAND 》

 両腕のグローブが銀から緑色に変わり、その上部から手の甲にかけて何かの装置が取り付けられている。

「これでも喰らえっ!」

 左腕を正面に構え、装置から白銀の煙にも似たものが噴出する。その正体は何物をも一瞬で凍らせてしまう超低温冷凍ガスだ。ガスを浴びた触手はたちまち凍りつき、怪人の動きを束縛する。さらにガスは怒濤の勢いで2体の怪人をも飲み込み、凄まじい速度で凍てつかせる。ガスの噴出を止め、白いもやが晴れた後には物言わぬ氷の彫像と化したスキッドアンデッドとシームーンファンガイアが静かに佇んでいた。
 テクテクと歩み寄り、観察すること数秒。

「せいっ、やっ」

 拳骨をそれぞれ1発ずつ叩き込むと氷の象は呆気なく砕け、粉々になって崩れ去った。ディケイドの姿に戻り、パンパンとお馴染みの仕草で手をはたく。

「ま、自分がその気になればこんなもの──!?」

 言いつつヴィータの方に振り向こうとした、その目に飛び込んできたのはグラーフアイゼンを振り上げるヴィータの姿。紙一重で反応し、バットのようスイングされたグラーフアイゼンを這いつくばるようにかわす。
 頭上をブォン!と恐ろしい唸りを上げて通過した音が耳に届き肌が泡立つ。そのままシャカシャカと後退して距離をとり、跳ねるように立ち上がった。

「な、な、いきなり何をするんですかあなたは!?」
「だーから、何度も言わせんなよ。お前の魔力をもらいに来たって言ったじゃねーか。邪魔者もいなくなったし、なんかおかしいか?」
「不意打ちは卑怯だと思います!」
「油断大敵って知ってるか?この世界の言葉なんだろ」
「ぐっ…………わかりました。そちらがそういうつもりなら自分も遠慮なく行きますよ!」

 苛立ちもあって荒っぽく声を張り上げる。ブッカーから黄色いカードを取り出し、躊躇いなくドライバーにねじ込む。

《 FINAL ATTACK RIDE DECADE 》

 金色に輝くカードを模したホログラムが並び立ち、それは天空へと続いていく。ブッカーガンをホログラムにかざし引き金を引く。放たれた破壊エネルギーの奔流はホログラムを次々に貫いて突き進み、やがてある1点に到達すると何もない空間にぶつかり、空に大穴を開けた。
 その途端にそれまで辺りに漂っていた閉塞感が消え、家屋や街灯に光がともる。

「てめぇ、結界を……!」
「ええ、そしてさようならです」

《 ATTACK RIDE INVISIBLE 》

 電子音声が鳴ると共にディケイドの姿から色彩が抜けるように透けていき、その場から消え失せる。

「なっ、逃げるのか卑怯者!」
「逃げるが勝ちって知ってますか?」

 怪人は撃退し、あとは彼女から逃げれば魔力の収集からも免れる。
 全力で駆け出そうとする僕の耳にヴィータの叫び声が届く。

「くそっ!でもお前のツラは覚えたからな、すぐに探し出して、次は絶対にぶっ潰してやるからな!!」















プレビューが表示されない。思ったより前の投稿から随分間が空いてしまいました。まあ着実に空気作品と化してますが、書きたいように書いてるので気にしない。
魔導師と怪人のパワーバランスが難しくて、とりあえず攻撃を受けたらミンチかなと思ってパンチやキックは当たらないようにしました。溶解液など原作になかったものは独自設定です。イカが迫る場面で作者の頭にあったのはガタック爆死の場面。

そろそろ原作キャラ達との日常っぽいのを書きたいと思っていますが、何気ない会話とか、日常とか、難しいですね。なにか心温まる小話でも書けないかな……

誤字を発見・修正


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