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No.19794の一覧
[0] 天河くんの家庭の事情(逆行・TS・百合・ハーレム?)[裕ちゃん](2010/07/24 18:18)
[1] 天河くんの家庭の事情_00話[裕ちゃん](2010/07/23 17:46)
[2] 天河くんの家庭の事情_01話[裕ちゃん](2010/06/26 12:59)
[3] 天河くんの家庭の事情_02話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[4] 天河くんの家庭の事情_03話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[5] 天河くんの家庭の事情_04話[裕ちゃん](2010/06/24 07:54)
[6] 天河くんの家庭の事情_05話[裕ちゃん](2010/07/10 22:31)
[7] 天河くんの家庭の事情_06話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[8] 天河くんの家庭の事情_07話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[9] 天河くんの家庭の事情_08話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[10] 天河くんの家庭の事情_09話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[11] 天河くんの家庭の事情_10話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[12] 天河くんの家庭の事情_11話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[13] 天河くんの家庭の事情_12話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[14] 天河くんの家庭の事情_13話[裕ちゃん](2010/06/26 02:01)
[15] 天河くんの家庭の事情_14話[裕ちゃん](2010/06/26 11:24)
[16] 天河くんの家庭の事情_15話[裕ちゃん](2010/06/26 23:40)
[17] 天河くんの家庭の事情_16話[裕ちゃん](2010/06/27 16:35)
[18] 天河くんの家庭の事情_17話[裕ちゃん](2010/06/28 08:57)
[19] 天河くんの家庭の事情_18話[裕ちゃん](2010/06/29 14:42)
[20] 天河くんの家庭の事情_19話[裕ちゃん](2010/07/04 17:21)
[21] 天河くんの家庭の事情_20話[裕ちゃん](2010/07/04 17:14)
[22] 天河くんの家庭の事情_21話[裕ちゃん](2010/07/05 09:30)
[23] 天河くんの家庭の事情_22話[裕ちゃん](2010/07/08 08:50)
[24] 天河くんの家庭の事情_23話[裕ちゃん](2010/07/10 15:38)
[25] 天河くんの家庭の事情_24話[裕ちゃん](2010/07/11 07:03)
[26] 天河くんの家庭の事情_25話[裕ちゃん](2010/07/12 19:19)
[27] 天河くんの家庭の事情_26話[裕ちゃん](2010/07/13 18:42)
[29] 天河くんの家庭の事情_27話[裕ちゃん](2010/07/15 00:46)
[30] 天河くんの家庭の事情_28話[裕ちゃん](2010/07/15 14:17)
[31] 天河くんの家庭の事情_29話[裕ちゃん](2010/07/16 17:35)
[32] 天河くんの家庭の事情_30話[裕ちゃん](2010/07/16 22:08)
[33] 天河くんの家庭の事情_31話[裕ちゃん](2010/07/17 01:50)
[34] 天河くんの家庭の事情_32話[裕ちゃん](2010/07/21 01:43)
[35] 天河くんの家庭の事情_33話[裕ちゃん](2010/07/21 23:39)
[36] 天河くんの家庭の事情_34話[裕ちゃん](2010/07/22 04:13)
[37] 天河くんの家庭の事情_35話[裕ちゃん](2010/07/24 18:16)
[38] 天河くんの家庭の事情_小話_01話[裕ちゃん](2010/06/25 20:30)
[39] 天河くんの家庭の事情_小話_02話[裕ちゃん](2010/07/07 03:26)
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[19794] 天河くんの家庭の事情_29話
Name: 裕ちゃん◆1f57e0f7 ID:326b293b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/16 17:35
習熟訓練初日。
もうそろそろ訓練開始の時間となるのに案の定ミスマル・ユリカ艦長は来ていない。

「遅いねぇ、かんちょ~」
「そうですね~」

ミナトは爪の手入れに精をだしメグミは漫画を読んでいた。
そののんびりとだらけた雰囲気はまさにナデシコであろう。

「ダイア、間に合いそう?」
『車があと5分で到着するので走ればギリギリです』
「もしかしてジュンが全部運転してる?」
『まず間違いないですよ』
「うん、わかった。ありがとね」

アオとルリ、ラピスは軍事シミュレーションで三つ巴の艦隊戦を行っていた。
遊びではあるのだが、そのレベルはフクベ提督でさえ唸るレベルになっている。
その為、フクベ提督にムネタケ副提督、プロスとゴートの4人はお茶を飲みながら先程から観戦していた。

「これは素晴らしいのう。ムネタケ副提督もこれを見てよく勉強しなさい」
「わ、わかったわ」
「それにしても、見事ですなぁ...」
「年齢的に厳しいが、3人共に艦長としても逸材だ」

そんな感じでさっきから仕切りに唸ってばかりいる。
ムネタケ副提督は父親からの再教育の影響からかアオの前では借りて来た猫のように大人しくなっていた。
【アオへ逆らう=強制送還+再教育】と叩き込まれているのがその原因なのだが、どんな教育をしたのかはアオでさえ教えて貰えなかった。
それから5分後、アオの眺めるウィンドウの右下にダイアからのウィンドウが小さく開いた。

『アオさん、車が到着しました。2-3分でブリッジへ到着します』
「うん、ダイアありがとね。訓練開始2分前か、本当にギリギリだね...」
「アオさん、中断してやり直しますか?」
「そうだね、ラピスもまた後で続きやろうね」
「うん、わかった」

ユリカが到着した連絡を受けたアオはシミュレーションを中断して、習熟訓練をする為の準備をする。
とはいっても用意は終わっており、ダイアに頼むだけなのでここまでのんびりとしていた。
そしてブリッジの扉が開いた瞬間、濃い藍色の髪をした艦長服に身を包んだ女性が元気に飛び込んできた。
その後ろには徹夜の運転で顔が青白い、ともすれば女性にも見えそうな柔らかい雰囲気の男性もついている。

「みなさん、初めまして!私が艦長のミスマル・ユリカです!ぶい!!」
「申し訳ありません。急いできたんですが、ギリギリになってしまいました。
えっと、副艦長のアオイ・ジュンです。よろしくお願いします」

その二人を見てアオとルリはとても懐かしそうに目を細めている。
ラピスは興味津々に二人の様子を観察していた。
それ以外の全員が唖然として一つの事を頭に思い浮かべていた。

(大丈夫かな、この艦?)

そんな中いち早く復帰したプロスが場をまとめ始める。

「さて皆さん。これで、ブリッジのメンバーが全員揃ったという事でまずは自己紹介と参りましょう。
立場が上の者からがいいでしょうから、フクベ提督、アオさんと続けていきましょう」

まずはフクベ提督が立ちあがった。
白い髭をさすりながらブリッジの全員を見まわす。

「この艦の提督を務めるフクベ・ジンだ。ある者との約束を果たすのが目的でこの艦に乗っておる。
お飾りではあるが、老兵は老兵なりにこの艦を第一に考え助言をしていこうと思うのでよろしく頼む」

次にアオが立ち上がる。
ユリカとジュンはアオの制服だけ色が違う事と何故少女が?という疑問があからさまに顔に出ていた。

「統括官のテンカワ・アオと申します。権限としては提督とほぼ同程度と考えて頂ければ結構です。
基本的には艦内を見回って各所の潤滑油としての役割を行う事になります。
ただ、有事の際には私の判断でオペレーター、パイロットから対人の鎮圧、生活班の補助までやらせて頂きます。
要は何でも屋さんです」

そのアオの自己紹介に既に知っている者以外はかなり驚いていた。
オペレーターに加えパイロットもやると言われて驚かない方がおかしいだろう。

「それについては私共の方から保証させて頂きますよ。では、次はムネタケ副提督ですな」
「わかったわ。副提督のムネタケ・サダアキよ。やるからには全力で務めるわ。
どこかの誰かにまた送り返されたくはないからね」

思い切りアオを意識して厭味ったらしく言うものだから、アオは苦笑が止まらなかった。
それでも以前のように喚き散らす事がないだけでもかなりよくなっているだろう。

その後もユリカ、ジュンと自己紹介が続いていった。
ユリカに関してはアキトとの接触がまだないためか、至極まともだった。
そして、そんなユリカの様子にアオとルリは逆に驚いていた。

「普段のユリカってこんなんだったんだ...」
「私もびっくりです...」

ジュン以降の自己紹介も問題なく終わると、習熟訓練へと入っていく。
そこでもアキトと関わっていないユリカは淡々と的確な指示を飛ばしていく。
まだ大学を卒業したばかりとは思えない堂々としたそれはみんなに安心感を与える程のものであった。

しかし、そんな中でアオは表情を厳しく変えていた。
その雰囲気に気付いたルリはIFSを介して話しかけた。

『アオさん、どうしたんですか?』
『うん、気になる事が出来てね...ルリちゃんには後で話すね』
『あ、はい。わかりました』

アオからそう言われてしまうとどうしようもない。
ルリは話しかけるのを止めると訓練へと集中していった。

それから休憩も挟みつつしっかり8時間程習熟訓練を行った。
初めての場所、初めての相手との訓練になり、全員気を張っていた為か終わった後はかなりぐったりとしていた。
特に顕著なのは徹夜で車を運転して来たジュンだろう。いつ倒れてもおかしくないような顔をしている。
そんな中、アオは席から立つとユリカとジュンの傍までやってきた。

「フクベ提督。今日の総括は私がさせて頂いてもいいですか?」
「あぁ、構わんよ」
「はい。それでは...」

そこで一つ咳払いをすると、全員へ聞こえるような声量で言葉を発していく。
元々透る声なので、張り上げなくても自然と耳に入る。その上柔らかい喋り方のせいで総括とは言いつつも場が和んでいく。

「訓練としてですが、及第点...で収めたい所ですが、花丸あげちゃいます。大変よく出来ました。
初日でこれくらい出来るならぶっつけ本番でもなんとかなってた気もしてくるくらいです」

アオとルリが知ってる限りはほぼぶっつけ本番でなんとかなっていたので確かにその通りである。
だが、アオが厳しい顔をしていたのには理由があった。

「ただ、問題はあります。みなさん技術的には大丈夫なんですが、精神面での心構えがまだ出来ていませんね。
艦長と副艦長からして遅刻ギリギリ、その上副提督も遅刻はしませんでしたが昨日は近くのホテルでしたっけ?」

アオがキッとサダアキへ刺すような目線を向けるとビクリと身体を揺らした。
確かに強制ではなかったが、万全を喫して前日には乗艦して下さいねと連絡はいっていたはずなのだ。

「ナデシコに乗艦した中で実際に無人兵器との戦いをした事があるのは数人しかいないのでしょうがないかもしれません。
それに言葉で言ってどうにかなる物ではありませんがこの艦は戦艦です。
そして戦争に参加するという事を頭の隅ででもいいから少し考えてみて下さいね」

その言い聞かせるような物言いに聞いてた全員がそんなに心構え出来ていないのかなと考えさせられる事になった。
アオの雰囲気と話し方は正に子供へ言い聞かせるような柔らかい物言いだった為に自分ってそこまで...?と思ってしまうものだったのだ。
だからといって、一朝一夕で心構えが出来るのなら苦労をする事がない。それもアオは重々承知していた。
そうして総括が終わったアオは、まずジュンへと顔を向け声をかけた。

「え~っと、ジュンさんでいいかな?お疲れ様でした。それで、書類整理はいいから今日はすぐ寝なさいね」
「あ、テンカワ統括官。了解しました、ありがとうございます。それとジュンで大丈夫です」
「それじゃ、私もアオでいいからね。それと命令と取って貰ってもいいからすぐ寝なさい?」
「ではお言葉に甘えさせて頂きます」

疲れと眠気の為か締りのない敬礼をしたジュンはアオからの寝ろという命令を喜んで受け、部屋へと戻っていった。
そしてアオは残ったユリカへ向き直る。

「ユリカさんでいいかな?」
「はい。問題ありません」
「じゃあ、私の事もアオって呼んでね。それで、ユリカさん。
あんまりジュンさんに甘えないようにしなさいね。倒れそうだったじゃない?」
「え、あの...すいません...」

甘えてる訳じゃない。そう言おうとしたが、アオの強い視線に晒されたユリカは俯く事しか出来なかった。

「今日の訓練で能力は十分だという事はわかったから、自分の仕事にはちゃんと責任持つようにね。
緊急時でもないのにあまり部下を扱き使ってると愛想尽かされて艦長から下ろされかねないよ?」
「ジュン君はそんな事...」
「公私混同はしない方がいいわよ?普段のジュンさんがどうあれ、副艦長が艦長の解任権を有してる事は事実なんだから」
「...はい」

事実、アオの知っている歴史ではユリカの身を案じナデシコを止めようとした。
今回は艦長の解任をしてユリカをナデシコから下ろすと言い出さないとは限らないのだ。
解任権の事はユリカも知っているのか、渋々とだが頷いていた。
とはいえ、こんな事を言うアオ自身でもジュンがユリカの経歴に瑕が付くような事をするとは到底思っていなかった。

「先日卒業したばかりで責任感を持てというのも酷かもしれないけど、ユリカさんは200名の人員を預かっているのよ。
痛い目を見てからでは遅いから、その事実を早く自覚しなさいね?」
「...わかりました」
「じゃあ、ユリカさんも着いて早々の訓練で疲れたでしょうから今日は休みなさいな」
「はい、ありがとうございます」

そうしてユリカもブリッジから退室した。
そして次にブリッジ全体へ解散と告げるとミナトとメグミも思い思いに身体を解しながらブリッジを退室していった。
しかし、ルリやラピスを始めフクベ提督にプロスとゴート、何故かサダアキもその場に残っていた。

「あら、ムネタケ副提督も残ったんだ。ホテルに泊ったとは思えない程熱心ですね」

そんなサダアキにアオは思い切り厭味を言い放つ。
それを受けて冷や汗を流しながらもサダアキは言い訳をした。

「き、強制じゃなかったわ!何より近くにいたのだから問題はないじゃない!」
「フクベ提督、ムネタケ副提督は私達なんかに挨拶する程の価値もないってお考えらしいですよ」
「そうじゃな。ヨシサダ君に君の息子は上官をないがしろにしていると伝えねばならんな...」
「ま!待ち...待って下さい!申し訳ありませんでした!わたしの怠慢でした!」

父親へ報告されると強制送還を喰らってしまう。
それだけはなんとか阻止しないとならなかったサダアキは見栄やプライドなどとうの昔に捨て去っていた。

「まぁ、いじめるのはこのくらいにしますか。それで、フクベ提督の目にユリカさんはどう映りました?」
「ふむ...」

しばし髭を撫でていたフクベはちらりとアオを見るとおもむろに口を開いた。

「確かに優秀じゃな。統合的戦略シミュレーション無敗じゃったか。それも十分頷ける。
だが、まだまだ青い。何事にも我を通しすぎる嫌いがあるのがその証拠じゃ」
「...やっぱりそうですよね。挫折らしい挫折を経験した事がない。
でもなまじ才能がある上にクルーの能力も高いから、かなり無理が通っちゃうのが難しいですね」

アオとフクベ提督がどうしたものかと顔を天井に向け悩んでいた。
しかし、二人以外の者には何故そんなに悩んでいるのかわからなかった。
そんな二人へルリが声をかけた。

「あの、アオさんとフクベ提督。何をそんなに悩んでるんですか?
特にアオさんは訓練の途中から厳しい顔をしてましたし...」
「そうだ、後で話すって言ってたね。えっと、ユリカさんの能力が凄い高いのはわかるよね?」
「はい」
「特にルリちゃんならわかると思うけど、そこにクルーの能力が合わさると大抵の無理はなんとかしてしまえるのよ」
「それもわかります」

ルリは実際にナデシコに乗ってそれを経験しているのだからわかりやすい。
単艦で地球連合軍vs木蓮のただ中に突っ込んで遺跡を奪取出来たのだからその無理の通せるレベルは恐ろしく高い。
ラピスやフクベ提督、プロスとゴートは未来の事を知っているので想像しやすい。
サダアキだけは蚊帳の外だが、先程の訓練の様子からおおまかに予想出来たのか納得していた。

「でも、ユリカさんの甘えを取るなら一度大きな挫折をして貰わないといけないのよ。
出来るなら実戦の中ではなくてこの訓練中に。でもね~、パッと浮かんでこないんだよねこれが...」

そうしてアオとフクベはまた悩みだした。
それにみんなも加わってしばらく頭を捻っていたが妙案は浮かんでこずに一度解散という事になった。

それからアオはルリとラピスを連れて食堂まで来たのだが、そこには先客がいた。
本日休業中の看板が立つ食堂の入口で途方に暮れている彼女にアオは思わず声をかけていた。

「え~、まだ食堂は空いてないの?」
「あれ、ユリカさん?」
「はれ、アオ統括官?」
「食堂は明日にならないと無理みたいよ?」
「あれ、そうなんですか...どうしようかな...」
「あぁ、折角だし弟に会っていかない?」
「え?弟さんいらっしゃるんですか?」
「えぇ、テンカワ・アキト。確か幼馴染よね」
「え?え?」

アオはそう言うとユリカの手を引いて看板の脇を通り食堂へ入っていった。
その行動にはユリカだけじゃなくルリとラピスも驚いていた。
ブリッジではアキトの事に全く触れもせず、紹介する気がないのかと思う程だったのにここに来て紹介する意図が掴めなかった。
そうして入った食堂だが、アキトが手伝ったおかげか予定よりも早く片付いていて、外から見る限りはいつでも営業を始められそうだった。
アオ達は食堂のカウンターまで歩いていくと、倉庫の方へ向けて声をかけた。

「ホウメイさ~ん。ちょっとだけアキト貸してもらえませんか?」
「アオちゃんかい、いいよ?アキト、ここはあと少しで終わるから行っておいで」
「あ、はい!」

倉庫からホウメイの声とアキトの威勢のいい返事が聞こえた後ぱたぱたと小走りに走る音が聞こえてきた。
そして厨房の中にひょこっとアキトが顔を出した。

「訓練終わったからどんな調子か見に来たの。それで、入口で彼女に会ったからついでに引っ張ってきちゃった」
「ん、彼女?」

そうしてアキトは見覚えのない女性の顔をまじまじと見つめた。
しかし、どうにも見覚えがないがどこかで見たような気もする。
女性の方も同じなのかアキトの顔をまじまじと見つめながら『アキト...アキト...』と呟いていた。

「あれ、わかんない?彼女はミスマル・ユリカさん。幼稚園で同じちゅーりっぷ組だったでしょ?
それとユリカさん。この子がテンカワ・アキト。私の弟ですよ」
「「.....ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

同時に思い出したのか二人してお互いを指差して大声を上げる。
その声にびっくりしたのか『どうしたんだい?』とホウメイも顔を覗かせた。

「アキト!アキト!アキトぉ!!どうしてここにいるの?なんで連絡くれなかったの?今まで何してたの?」
「ユリカ?な、な、なんでお前ここに居るんだよ!!それになんだその格好は!?」

カウンター越しに飛び付こうとするユリカを避けつつアキトは質問を投げかける。
しかし、ユリカも質問で返すので埒が明かない。
そんな二人を見兼ねてアオは拍子を打って気を向かせるとが声をかけた。

「はいはい。そんな二人して取り乱してもどうにもならないでしょう?
私がしっかり質問に答えるから少しは落ち着きなさい。二人ともいい歳してるんだからみっともないよ?」
「「うっ...」」

アキトはともかく、ユリカもアオには逆らえないのか窘められると聞いてしまう。
そうして6人テーブルへ移動するとアキトの両隣りにアオとルリ、ユリカの両隣りにラピスとホウメイが座る形になった。
ラピスはアオ側じゃないのでかなり不満顔をしている。
そしてユリカはお見合いっぽい雰囲気に一人頬を染めて舞い上がっていた。

「質問に答えるといっても私の説明をした方が早いから、それを教えるね。
話せる事、話せない事があるからそこはわかって貰えると嬉しいかな」
「は、はい」

アオの言葉にユリカが頷くとアオは話し始めた。

「まず、ユリカさんが私の事を知らないのは当然です。アキトも私の事を知ったのは1年前だからね。
色んな事が重なった結果なんだけど、私の事は両親でさえ知りません。ですが、正真正銘アキトとは血の繋がった姉弟です」
「「えっ!!」」
「詳しい事はお伝え出来ません。そうそう他人に話す事でもないし、そういう事があった程度で収めておいて下さい」

いきなりとんでもない事を言い出したアオにユリカとホウメイは絶句した。
両親にさえ隠されたまま生みだされ、1年前まで知らされない人生がどんなものか想像もつかないのだ。

「それで、1年前にようやく会う事が出来て地球に来てからこのプロジェクトに関わらせて貰ったの。
その際に私に似た境遇のルリちゃんとラピスと仲良くなってね、今一緒に住んでるんですよ。
ただ、アキトにもプロジェクトに関わって貰いたかったからコック志望なのに無理を言ってパイロットも兼任して貰ってるのよ」
「アオちゃんが年齢よりも大人びた眼をするのにはそんな訳があったんだね」
「へぇ~~...」

ホウメイも今の話を聞くのは初めてだったが、ホウメイなりにアオが何か普通とは違う所を感じていたのかすぐに納得していた。
ユリカについてはただただアオの話に感心するばかりだった。

「それで、ユリカさんはこの艦の艦長をして貰ってます。まだまだ学生気分が抜けてないけど、結構優秀なのよ?」
「お前が艦長って信じられないけど、姉さんがこう言ってるんだからそうなんだろうなぁ...」
「そうなんです、優秀な艦長さんなんですよ、えっへん!」

学生気分が抜けていないという忠告が聞こえていないのは流石ユリカである。
その事に苦笑しつつも話を続けていく。

「それで、何でここに居るのかについてはわかって貰えた?」
「「あ、はい」」
「後聞きたい事はある?」
「あ、はいはい。アキト、なんで連絡くれなかったの?」

アオが促すとユリカは元気に手を上げてアキトに質問をした。
しっかりと立ち上がる所は本当に学生っぽい...むしろ学童っぽい。

「だって、お前の住所なんて知らなかったぞ?」
「え、私ちゃんと手紙送ってたよ?」
「俺、お前と別れてすぐのテロで両親亡くなってから孤児院暮らしだったんだが、知らなかったのか?」
「あ...」

アキトの両親が亡くなった事は知っていた。
だが、その頃まだ小さかったユリカにはその事が原因で起こる事まで考えが回らなかったのだ。
そして連絡が帰ってこないという事だけを気にしてしまったユリカには自分の失敗には気付けなかった。
もっとしっかり自分の行動を見直してみればと後悔したような表情を浮かべた。
そのユリカに向かって、アキトは厳しい表情を浮かべていた。

「で、俺は逆にお前に聞きたい事があるんだが?」
「え、なに、アキト?」
「お前なら俺の両親が死ん...」
「あ...アキト、ごめん」
「え、姉さん?」

アキトが両親の死んだ理由、殺された理由をユリカへ問い詰めようとした途中でアオは声を上げた。
アオは顔を手で覆って、完全に忘れてたっと呟いていた。

「うん。それ全部知ってる。ほんとにごめん、後でもいいかな?」
「え?知って...?え?あ、話してくれるなら...」

アオが知っているとは思っていなかったアキトは呆気に取られつつも話してくれるならと了解した。
ホウメイとユリカは全く話についていけずに二人のやり取りを眺めている事しか出来なかった。
それからは世間話に加えて、アキトはユリカと別れてからどんな生活をしていたか話していった。
そして逆にユリカはアキトと別れてからの事を話していく。
アオはこの1年の事を話していったのだが、ルリとラピスについての話になるとユリカは驚いていた。

「えええぇぇぇぇぇ!?ピースランドのお姫様!?」
「艦長。あんた見てわからなかったのかい?」
「どこかで見た事あるなって思ってましたけど...」

ホウメイは既に気付いていたようで、特別驚いたりはせず、逆に気付かなかったユリカを窘めていた。
それからしばらくそれぞれの話に花を咲かせていたのだが、ホウメイ達の邪魔をするのも悪いという事になり解散となった。
部屋へと戻る途中、ユリカはもじもじとしながらアオへと話しかけていた。

「あ、あの、アオさん。アオさんってアキトさんのお姉さんなんですよね。それなら、私もおねえ...」
「ダメ」

アオをお姉さんと呼ぼうとしたユリカは一言で切り捨てられた。
その返答にうるるると涙を流す。

「ど、ど~してですか?」
「私が貴女を認めてないからよ」
「え~~~!だってだって優秀な艦長さんだって...」
「話はしっかり全部聞きなさい。能力だけはと言ったのよ?まだまだ学生気分抜けてないし、精神的にも幼い。
公私混同もするし、人の話もしっかり聞いてない。そして遅刻しそうにもなる。このままだったら10年経っても認めない」
「はぅ!!」

ずばずばと切り捨てられたユリカはその場に崩れ落ちた。
アオはそれをフォローするように声をかける。

「逆に私が認められるようになれれば、むしろアキトとの仲を応援してあげるわよ?
点数はかなり厳しいから内面も含めてかなりしっかり鍛えないと無理だけどね」
「わかりました!やります!!」
「ちなみに、貴女以外にもアキトを狙ってる人は私の知る限り2人いるわよ。
そのどちらも今の貴女では足元にも及ばないくらい私の点数は高いから精々頑張ってね?」
「えええぇぇぇぇぇぇ!!!」

そしてまたがっくりと膝をついた。
しかし、すぐに立ち直るとアオへキッと凛々しい目線を向けて宣言した。

「わかりました!近い将来アオさんの方から妹になってと言わせて見せますから覚悟して下さい!!」

ユリカはそう叫ぶと自分の部屋へと走り去っていった。
その後ろ姿を見送ったアオはクスクスと笑っている。
そんなアオにルリは疑問に感じていた事を聞いてみた。

「アオさん、これが狙いだったんですか?」
「ううん。最初は本当になんとなくだったよ。お姉ちゃんとしてアキトには合わせてあげたかったしね。
ただ、話してる内にうまく発破かければ誘導できそうだなぁって。こんなにうまくいくとは思わなかったけどね?」
「アオ、楽しそう」
「そうね、ラピス。アオさん楽しそう」
「ん、ラピスにもルリちゃんにもわかっちゃう?」
「それだけ嬉しそうにしてれば誰だってわかりますよ」
「アオが楽しいと私も楽しい」

そして3人は仲睦まじく部屋へと戻っていった。
その夜の事、夕飯も終わりリビングでアオとルリ、ラピスに加えアキトものんびりとしていた。
そこでアオはアキトへと声をかける。

「さてと、アキト。夕方の事、ちゃんと説明するね?」
「あぁ、わかったよ」

アオとルリ、ラピスはアキトとテーブルを挟むように座った。
そしてアオはウィンドウを出して通信を繋げる。

「え、なんでウィンドウが?」
「うん、一応関係者だからね。というよりもその息子になるんだけど...」

そうしてウィンドウに現れたのはアカツキだった。

「あれ、アカツキ?」
「アオ君にアキトか。それにルリ君とラピス君まで...どうしたんだい?」
「えっとね、ナガレ。私が思い切りアキトに説明するの忘れちゃってたんだけどね。
お父さんとお母さんの事説明してくれる?」

アオの言葉を聞いたアカツキは大きく目を見開いた。
そして納得したように目を瞑ると真剣な目をアキトへと向けた。

「そうだね、これはネルガルの仕出かした事だから、ボクが責任を持って説明するよ。
単刀直入に言う、アキトの両親を殺したのはネルガルとしての判断であり俺の父親の差し金だ」
「なっ...!」
「アキト!」
「...ぐっ」

アカツキの言葉にアキトは感情を爆発しそうになる。
だが、アオの叱責で訓練中常にアオから言われてる『感情に流されずに総ての状況を見て判断しなさい』という言葉を思い出した。
そして自分の感情を抑え込んだ。
目線は依然厳しいままだったが、沸騰しそうになる頭で今の状況を一所懸命考えているようだった。

「姉さんが忘れていたって言うくらいだから、かなり前からこの事は知ってたんだよな?」
「えぇ、私がいた研究所は両親の研究を盗んだ人が所長だったし、アキトの事はいつも見てたからね」
「ネルガルっていうんだから、アカツキが知ってたのはわかる。それが親の差し金って事は何かネルガルに取って不利益があったのか?」
「そういう事になるね。ボソンジャンプ技術の公開をしようとしたアキトの両親は、独占を狙っていた父には邪魔でしかなかったんだろうね」
「今のお前の判断はどうなんだ?」
「今すぐ公開する事はしない。今の段階でそれをすると逆に危険すぎるというのがボクの見解でもあるしアオ君と相談して決めた事だからだ。
だが、研究も進んで来てるし技術的にもかなり成熟してきているから戦争が終結してすぐに公開する事になるよ。
ネルガルとしては下手に独占して自分以外総て敵よりはパテント公開して使用料を貰った方がよっぽど利益になるという判断もあるけどね」
「.....そうか」

そしてしばしの間アキトは目をつぶって考えをまとめていた。
以前のアキトでは考えられないこの行動はしっかりと精神的にも成長した証拠だろう。
決して表情には出さないが、アオはその事を内心とても喜んでいた。

「やり切れないし、ぶつけられない感情のやり場にも困るけど、納得は出来たよ。
アカツキには関係ない事だし、今のネルガルにもぶつけてもしょうがないんだな」
「ボクとしてはぶつけて貰った方がいいんだけどね。昔がどうあれネルガルとしての判断だった事は確かだからね」
「それなら、しっかりと姉さんの助けになってくれ。俺としてはその方がよっぽど嬉しいさ」
「.....そうかい、わかった。その希望僕の全身全霊を以って全うしようじゃないか」
「もし姉さんを裏切ったら...わかってるな?」
「僕がそんな事をすると思うのかい?」

ようやくそこでアキトに笑顔が見えた。
しかし、その笑顔はどこか【黒い皇子様】の時にアカツキと交わしていた物に似ていた。
その笑顔を見たルリとラピスは思わず胸が跳ね上がる。
そして、そんな二人に気付いたアオには二人の反応が面白くなく、表情が変わる。

「...で、アキトはそれでいい訳ね?」
「うん、それで大丈夫だよ?」
「じゃあ、ナガレもそういう事で、いきなり呼び出してごめんね?」
「あぁ、気にしないでくれ。それよりアオ君、機嫌悪くなってないかい?」
「なってないよ~大丈夫だよ~、じゃあまたね」
「え、アオ君!?ち...」

アカツキはその変化に気付いたようだが、下手な事を言った為に速攻でアオにウィンドウを消されてしまった。
そして半眼の表情のままアキト達へ向き直ると声をかける。

「それじゃ、今日はもう遅いし寝ましょう。ルリ、ラピス、行くよ」
「あ、あの、アオさん!?」
「アオ、どうしたの!?」

ルリとラピスはいきなり機嫌が悪くなった理由がわからず慌ててアオの後を追っていった。
そしてリビングにはアキトが一人取り残される形になった。

「え...もしかして、俺のせい?」

その通りなのだが、いくら考えてもアオがルリとラピスの事でアキトに嫉妬したとは考え付かないだろう。
そしてその日アキトは寝つけず、ほぼ徹夜してしまう事になる。

一方アオ達の部屋ではルリとラピスが涙目になりながらアオに理由を聞いていた。
そのアオはさっさとベッドに潜り込み布団を被っていた。
ルリとラピスはベッドの横で膝立ちになりしきりにアオへと声をかけている。

「あの、アオさん。私達が何かしたのなら謝ります」
「アオ、どうしたの?私何か悪い事した?」

アオに取ってはアキトに嫉妬したなどとは言いたくないのだが、アキトに見惚れた二人を前にすると感情が揺れてしまう。
何よりアオ自身、自分がこれだけ独占欲が強かった事に戸惑っているのだ。
しかし、これ以上放っておいて二人を落ち込ませるなんて事はアオ自身が嫌だった。
そうしてアオはため息を吐くとベッドに座り込み、二人を自分の前に座らせた。

「...ふぅ。ルリ、ラピス。さっきの事なんだけどね?」
「「...はい」」
「あんまり言いたくないけど、アキトに見惚れたでしょ?」
「...!!」

アオの言葉が自然と硬くなる。
そしてルリとラピスはそれを気付かれているとは思っていなかった為思い切り動揺してしまった。

「確かにアキトは成長してる。肉体的にも精神的にも比べ物にならないくらいね」

半眼のまま二人を見据えるアオの視線にルリとラピスは唇を噛み締めただ俯いていた。
自分の前で昔の男に見惚れてしまったようなものなのだ、そしてアオに取っては過去の自分なのだから更に性質が悪い。
納得できる部分もあるのは事実だが、それ以上に今ではアオはアオであるという意識の方が強い。

「そうね、わからなくもない...でもね、わかりたくないのよ...我侭だというのは重々承知してる。
だから渡したくないのよ。自分自身でもこんな事を心の底から想っている事に驚いてるんだからね?」

アオはそう言って唇を歪めた。
そして彼女のそれは皮肉にもアキトと同じく【黒い皇子様】を彷彿とさせるものだった。
その笑顔を向けられた二人は金縛りのように見惚れてしまう。

「ルリとラピスがアキトに見惚れるっていうのなら、私だけしか見えないようにしてしまえばいいのよね」
「あ、あの...アオさん、何を?」
「アオ...?」

いかにも愉しげにアオはクスクスと笑いつつルリとラピスを見据えて二人へと近づいていく。
ルリとラピスは何をされるのかと問いかけるが、返ってくるのはそんなアオの嗤い声だけだった。


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