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No.19794の一覧
[0] 天河くんの家庭の事情(逆行・TS・百合・ハーレム?)[裕ちゃん](2010/07/24 18:18)
[1] 天河くんの家庭の事情_00話[裕ちゃん](2010/07/23 17:46)
[2] 天河くんの家庭の事情_01話[裕ちゃん](2010/06/26 12:59)
[3] 天河くんの家庭の事情_02話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[4] 天河くんの家庭の事情_03話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[5] 天河くんの家庭の事情_04話[裕ちゃん](2010/06/24 07:54)
[6] 天河くんの家庭の事情_05話[裕ちゃん](2010/07/10 22:31)
[7] 天河くんの家庭の事情_06話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[8] 天河くんの家庭の事情_07話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[9] 天河くんの家庭の事情_08話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[10] 天河くんの家庭の事情_09話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[11] 天河くんの家庭の事情_10話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[12] 天河くんの家庭の事情_11話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[13] 天河くんの家庭の事情_12話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[14] 天河くんの家庭の事情_13話[裕ちゃん](2010/06/26 02:01)
[15] 天河くんの家庭の事情_14話[裕ちゃん](2010/06/26 11:24)
[16] 天河くんの家庭の事情_15話[裕ちゃん](2010/06/26 23:40)
[17] 天河くんの家庭の事情_16話[裕ちゃん](2010/06/27 16:35)
[18] 天河くんの家庭の事情_17話[裕ちゃん](2010/06/28 08:57)
[19] 天河くんの家庭の事情_18話[裕ちゃん](2010/06/29 14:42)
[20] 天河くんの家庭の事情_19話[裕ちゃん](2010/07/04 17:21)
[21] 天河くんの家庭の事情_20話[裕ちゃん](2010/07/04 17:14)
[22] 天河くんの家庭の事情_21話[裕ちゃん](2010/07/05 09:30)
[23] 天河くんの家庭の事情_22話[裕ちゃん](2010/07/08 08:50)
[24] 天河くんの家庭の事情_23話[裕ちゃん](2010/07/10 15:38)
[25] 天河くんの家庭の事情_24話[裕ちゃん](2010/07/11 07:03)
[26] 天河くんの家庭の事情_25話[裕ちゃん](2010/07/12 19:19)
[27] 天河くんの家庭の事情_26話[裕ちゃん](2010/07/13 18:42)
[29] 天河くんの家庭の事情_27話[裕ちゃん](2010/07/15 00:46)
[30] 天河くんの家庭の事情_28話[裕ちゃん](2010/07/15 14:17)
[31] 天河くんの家庭の事情_29話[裕ちゃん](2010/07/16 17:35)
[32] 天河くんの家庭の事情_30話[裕ちゃん](2010/07/16 22:08)
[33] 天河くんの家庭の事情_31話[裕ちゃん](2010/07/17 01:50)
[34] 天河くんの家庭の事情_32話[裕ちゃん](2010/07/21 01:43)
[35] 天河くんの家庭の事情_33話[裕ちゃん](2010/07/21 23:39)
[36] 天河くんの家庭の事情_34話[裕ちゃん](2010/07/22 04:13)
[37] 天河くんの家庭の事情_35話[裕ちゃん](2010/07/24 18:16)
[38] 天河くんの家庭の事情_小話_01話[裕ちゃん](2010/06/25 20:30)
[39] 天河くんの家庭の事情_小話_02話[裕ちゃん](2010/07/07 03:26)
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[19794] 天河くんの家庭の事情_14話
Name: 裕ちゃん◆1f57e0f7 ID:326b293b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/26 11:24
11月に入り、既に地球の国民は火星陥落のショックから抜け出していた。
実際に親族がいる者が多い訳でもなく、どこか対岸の火事といった様相であった。
その上地球への被害がまだないので、実感どころか忘れかけている様子ですらあった。
だが、そんな中危機感を募らせる者達もいた。
地球連合軍である。
主力艦隊をひとつ当てたにも関わらず、敵に対して被害を与える事も出来ず壊滅したのである。
しかし、受けている危機感の内容は人それぞれである。
上層部では責任問題に危機感を募らせ、地球への対応など少しも考えようとしていない。
それどころか、無能呼ばわりされている自分達の地位向上の為どうするかという議論ばかりである。
そんな中でこのままでは地球が危ないという真っ当な危機感を抱く者ももちろんいた。
そんな真っ当な軍人である二人の男がその部屋で苦い顔をしていた。

「どう思うかね?」
「間違いなく裏はあるでしょうな。なにしろ名指しでお呼びですからな」
「色々噂は聞いておるが、何が目的なのか見当もつかんな」
「出来る男らしいですな。スカウトでもされるのかもしれませんな」
「笑えぬ冗談だ」
「まったくですな」

見詰めていた書面にはネルガル会長との会合と書かれていた。

その日、一人の少女がネルガルの会長室を訪れる。
艶やかな黒髪に一目見たら忘れられそうにない程綺麗な顔立ちの少女である。
顔パスなのか、入口から会長室のカウンターですら呼びとめられる事がない。
そんな彼女、テンカワ・アオというIFS強化体質という特異な彼女は扉を開けると軽い口調で呼びかけた。

「やほ、ナガレ、エリナ」
「早いね。こんなに急いでくれるなんて、ボクにそんなに会いたかったのかい?」
「こんにちは。そんなに急いでも相手は来てくれないわよ?」

そんな軽い口調で答える軽薄そうな長髪の男が一大複合企業であるネルガルの会長であるアカツキ・ナガレだ。
実は彼は目の前の少女にご執心なのだが一向に相手にされていない。
むしろ気付いてもらえてすらいない。
そして、アカツキの傍に立っているのが会長秘書であるエリナ・キンジョウ・ウォンである。
かなり辣腕ではあったのだが、最近丸くなってきたと評判である。
その大きな原因の一つに今いるアオが入っていたりする。

「早めにこっちの目処付いたから来ただけだよ。それで、アポ取れたんだって?」
「あぁ、あと1時間程したら来る予定さ」
「久しぶりに会うなぁ~」

そんな事を言いながら、アオは背伸びをする。
会長秘書であるエリナが選んだドレスである。
ゴスロリっぽいのだが、アオが広がったスカートを嫌がるのでフリルも多くなくスマートな印象を受ける。
黒の手袋とドレスの間に見える白いうなじと脇にそそられない男はいないだろう。
案の定アカツキが食い入るように見つめていた。

「無防備すぎるのも考えものよ?そこの男が獲物を見るような目で脇を見てるわよ?」
「ナガレだし別に構わないよ。私なんかに襲いかかってくる事ある訳ないし」

エリナの忠告に答えるアオだが、それは信頼というよりも男として見てないという返答だ。
そんな返答にアカツキはうなだれて涙を流している。
それからしばらく近況報告ついでに談笑を続けていた。

そしてお客が来るという1時間後まであと15分という所だった。
アカツキの座るデスクにある内線が鳴る。
繋がった相手は会長室前のカウンターにいる秘書である。

「どうした?」
「はい、地球連合宇宙軍極東方面提督ミスマル・コウイチロウ様と参謀ムネタケ・ヨシサダ様がいらっしゃっています」
「聞いてるからそのまま応接室へ通してくれるかな。すぐに向かうと伝えておいてくれ」

アカツキはそう秘書へ伝えると内線を切る。

「アオ君。来たそうだよ」
「うん、聞いてた。頑張りますか」

アオはそう言ってグッと気合いを入れる。
アカツキは楽しそうにそれを眺めるとエリナへと視線を向けた。

「エリナ君は大丈夫かい?」
「私にも関係してるもの。何回でも付き合うわよ」

そう答えるとエリナは肩をすくめた。
アカツキはそうかいと答えると会長室から出て行った。
アオがその後に続き、エリナは最後に会長室から出て行った。

アオ達が応接室の前につくと、丁度カウンターの秘書が中から出てくる所だった。
彼女は3人に気付くとそのまま扉を開け二人を通し、通った事を確認するとお辞儀をしてゆっくりと扉を閉める。
中へ入った後、アカツキとアオはソファーの方へと歩いて行き、エリナはお茶を用意しに向かった。

「初めまして、ネルガル取締役会長アカツキ・ナガレです。突然お呼び出しして申し訳ない」
「初めまして、テンカワ・アオと申します。この度ご同席させて頂く事になりました」

コウイチロウとヨシサダはアカツキはともかくアオの姿を見て驚いていた。
それでも表面上には全く出していない所は流石である。

「こちらこそ初めまして、地球連合宇宙軍極東方面提督ミスマル・コウイチロウと申します」
「初めまして、同参謀ムネタケ・ヨシサダと申します」

そうしてそれぞれ握手を交わすとソファーへと腰掛けた。
エリナがお茶を用意し終わり4人へ出すのを見ると、アカツキが口を開いた。

「お呼び出しした用件についてなのだが、実は用があるのはボクじゃない。
ボクの横に座っている彼女が貴方方へ用があるんでね。今回お呼び出しした次第さ」
「はい。彼にお願いでもしない限り貴方方とこうして会う事など出来ませんから。
ご無礼かとは思いますがお付き合いをお願い致します」

コウイチロウもヨシサダも余りに場違いなアオの存在に何かあるとは思っていたが、まさか用件があるのは彼女だとまでは考えが及んでいなかった。
この場に来て冗談な訳もなく、むしろアカツキを動かせる程の存在である彼女への興味が湧いてきた。

「ふむ。何か事情がありそうですな。話して頂ける分には存分に相手しよう」
「そうですな。何をするにしても話を聞かないと判断すらつけられません」
「こんな非常識な行動にも関わらず聞いて頂ける事に感謝致します」

そう言って、アオはソファーへ腰をかけたままお辞儀をする。
物言いと所作から見た目通りの年齢ではないのかもしれないと考えつつコウイチロウは髭を撫でる。

「まず、用件の概要についてですが、いくつかあります。
それは、火星の事。地球と木星の戦争の事。そして、ミスマル提督の娘であるユリカさんとムネタケ参謀の息子さんであるサダアキさんに関係があります」

その言葉に思わず二人の視線が鋭くなる。
自分の家族にこの戦争が関係しているという穏やかでない内容は看過されるものではなかった。

「ユリカさんとサダアキさんに今すぐ何かあるという訳ではありません。それはお約束します。
ですが、このままだと取り返しのつかない事態になってしまう。その事について説明する事が用件です」
「では、その説明をして頂こうか」
「そうですな。穏やかな話題ではありませんからな」
「えぇ、私もその積もりです。ですが、口頭でお話してもすぐには信用して頂けないと思うので映像をお見せします。
これは私の記憶を映像化したもので、総て私が経験した事であると最初に伝えておきます。
この内容についてこちらのアカツキ会長とエリナ会長秘書は既に知っていますので一緒に見て頂きます」

アカツキとエリナは知っているという言葉に二人の眉が引き攣ったが、気持ちを抑え了承した。

「了承して頂けたようなので、流し始めます」

そうしてアオがテンカワ・アキトだった頃の記憶を吸い出して作った映像を流す。
過去へ来て何度この映像を見たのだろう。
何度見ても見慣れる事がない映像。
つかの間の幸せとそれに続く血の歴史を繰り返し繰り返し見続ける。
自分の原点はこれだという事を忘れないように、自分はこの未来を絶対に認めないと改めて誓うように。
そうして総て流れ切る。

「いかがでしたか?」
「...そうか、テンカワというのはそういう事だったのだな。アキト君」
「確か、提督のお知り合いの息子さん...でしたな」
「はい。未来ではミスマル提督を義父さんと呼んだ事もありました。
ですが、今の私はアキトではありませんよ。私は姉のアオです」
「ふむ。色々と信じられない事が多いが、娘の為に出来る事はなんでもしよう」
「息子に関しては再教育をせねばなりませんな。その機会を頂けた事に感謝しますよ」

かなり衝撃を受けているはずなのに飄々とした雰囲気で二人は答えている。
アカツキはそんな二人を本当に手強いと考えつつ眺めていた。

「お願いしたい事はいくつかあります。ですが、個人的に一番大きなお願いがあります。
まず、ミスマル・コウイチロウ提督」
「なにかね?」
「ユリカの再教育をお願いします。ユリカに甘すぎです。少しは叱って下さい。
貴方がそんなだからあんな人の話を聞かないやつに!私がそれでどれだけ苦労をしたか...」
「何を言うかね!いくら未来で旦那だったとはいえ初対面で言われる筋合いではないわ!
片親だからとわしがどれだけ苦心したと思ってるのかね!」

いきなり始まった口喧嘩にアカツキとエリナは唖然としていた。
ただ、この中でヨシサダだけはユリカの甘やかされ具合とコウイチロウの親馬鹿具合を良く知っている。
アオが本当に苦労したんだろうと心の中で涙を流していた。
そして口喧嘩はまだ続いている。
しかもいつの間にか二人は立ち上がって激しく意見をぶつけ合っていた。

「言わせて頂きますが、提督。片親だからと叱ってはいけないという事はないんです!むしろ叱るのも親の仕事です!
貴方はいつもユリカのわがままに付き合ってばかりだったから彼女は人の話を聞かないままに育ってしまいました!
ユリカがナデシコで私にばかり構っていたせいで犯した失敗がいくつあると思いますか?
その遠因に貴方の責任がある事を自覚して下さい!まだ1年ありますし少しは矯正出来るはずです!
それと、未来で私に告げた言葉を聞かせて差し上げます!
『ごめんね、アキト。奥さんが旦那様を信じられなかった。
拒絶しようとした。私は!アキトの事を!見れて...いなかった.....!』
この言葉をもう一度ユリカから言わせたいんですか!?」
「...」

コウイチロウが言い負けていた。
ヨシサダは彼が言い負かされたことにかなり驚いていた。
彼は普段はとても厳格で聡明なのだが、娘が関わると周りの意見をほぼ聞かなくなるという困った人なのだ。
そんなコウイチロウが言い負ける事を見たのは付き合いの長いヨシサダにとって初めての事だった。

「こちらに来る前にユリカと会って話をしました。そこでユリカに『過去の私の性根を叩き直してね』と頼まれました。
だから、ミスマル提督...いえ、未来で義父であったコウイチロウさん。
どうか協力して下さい、よろしくお願いします」

アオはコウイチロウへ深く頭を垂れた。
本気で娘を想っての言葉、そして未来の娘自身の言葉を受けてコウイチロウは心を動かされた。

「わかった。不出来な親で至らぬ所ばかりだが出来る限りの事はすると約束する。
しかし、どうすればいいのかわからないのも正直な所なのだ。
アオ君の手を煩わせる事になるかもしれんが、その時はよろしく頼みます」

コウイチロウも同じくアオへと深く頭を垂れた。
そんな彼に向ってアオは笑顔を向ける。

「いえ、わかって頂けた事自体が前進ですから少しずつでいいんです。
この身になってからは、私がユリカの母親代わりになって叩き直そうと考えてましたから」
「そうか。そう言って頂けて何よりだ。だが、自分の娘を他人任せきりという訳には参りませんからな」
「はい。お互い頑張りましょう」

そうして二人は握手を交わす。
それからソファーへ座ると、アオはヨシサダへと身体を向けた。

「実はムネタケ参謀へのお願いも同じ事でして」
「そうですな。常々話は入ってきてはいるのですよ。ただ、どこまで手を出していいのやらと悩んでいたのです。
ですが、先程の映像を見て確信しました。呼び出してこってりと絞ってやりますよ」

サダアキは家系が軍人という事もあるのだが、父を抜かしてやりたいという目標で軍隊へ入っている。
だが、どれだけ頑張っても親の七光りという言葉が付いて回り、それを見返そうとする余り当初の目的を見失ってしまった。
その挙句が点数稼ぎやおべっかに繋がり、成功は総て自分の物なのに失敗は総て部下のせいという典型的な嫌われ者である。

「あのままだといつか味方から殺されそうですから。しっかり絞ってやって下さい」

アオはヨシサダへも頭を垂れる。
ヨシサダはこちらこそ教えて頂いてありがとうと頭を垂れると握手を交わした。
そうして、アオ、コウイチロウ、ヨシサダがソファーへ落ち着き三人三様にお茶を飲み一息つく。
そこで呆れた顔をしたアカツキが言葉を挟んだ。

「アオ君。今のが一番大事なのかい?」
「そうなの。後のお願いは映像見るくらいで大体把握してそうですし」
「本当かい?」

アカツキは軍人があれだけで把握するものなのか?と訝しげな目で二人を見る。
そのアカツキに向かって、そんな疑わなくてもとアオは肩をすくめる。

「あの二人は稀代の名将だもの。私がここにいる事とさっきの映像...」
「お褒めに預かったので後はわたしが引き受けましょう」

そう口にしたのはヨシサダだった。

「まずは、アオ君が未来から来た事。
そして一大複合企業でありクリムゾンと並ぶ軍需企業でもあるネルガルの会長と会議に臨まれた事。
そしてご挨拶の際に伺った【火星の事、地球と木星の戦争の事】というお話。
更には火星での出所不明な隕石情報、これは詳細に過ぎた事が気になりました。
そして火星会戦時に起きた突然の通信途絶、こちらは艦隊が火星圏を出てすぐでタイミングが良すぎました。」

ヨシサダが言葉を受け継ぐとそこまで答えていき、一度言葉を切った。
そしてアオとアカツキを一度確認すると更に言葉を重ねる。

「この事からアオ君が火星に対して既に何かを行っているという予測がつきますな。
そしてネルガルとの付き合いがある事と火星と地球の通信を途絶した事から水面下で軍備を整えている可能性がある。
ですが、軍備を整えるだけでは意味がない。そこで火星では一定数以上の人が生き残っているという事が考えられますな。
だからといって、映像から木星に力を貸そうとは考えないでしょう。そうなると狙うのは火星の自立ですかな?」
「さすがムネタケ参謀ですね」
「あれだけヒントを与えて下さいましたからな」
「いや、大したもんだね。正直驚いたよ」

アカツキは素直に驚いていた。
特に火星会戦の際に錯綜した情報の中でアオが行った隕石の情報、そして通信途絶をピンポイントに取捨選択した事だ。
彼が知る軍人は地位や名誉、金といった物ばかりに夢中な無能と呼ばれる者が多かったためここまでの人物だとは思っていなかった。
アオからこの二人を呼んで欲しいと言われた時は正直不安だったが、彼女を信じて間違いはないと改めて感じていた。

「そうですね。では、協力をお願いする前に今の火星の状況や私達が進めている事をお教えします」

アオがそう言うと説明を始めた。
火星の住民がまだ1000万人以上生き残っている事から始まり、現在進めている事とその現状。
そして目的なども詳細に語っていく。

「ふむ。提督どうですかな?」
「うむ。まずはアオ君は我らにどうして欲しいのだ?」
「出来ればこちらへ協力をして頂きたいです。お二人が信頼出来る方を引き込んで下されば助かります。
でなければ、どうか今までの話はお忘れ下さい。交換条件はユリカさんとサダアキさんの事、命を取らない事です」

アオは真剣な目で二人を見つめる。
しばし目線を交わしていたが、コウイチロウとヨシサダの顔が幾分和らいだ。

「どうですかな、提督。乗れば反逆罪ですぞ?」
「軍法裁判。その場で極刑は免れんな。この際火星へ逃げてしまうのも面白いとは思わんかね?」
「そうですな。どうせ逃げるのでしたら、より効果的な案を練りたいものです」
「うむ。という事でいかがかな、アオ君」
「...ありがとうございます」

その言葉に、アオは深くお辞儀をする。
アカツキも肩から緊張を取り、息を吐いた。
それから4人は立ち上がると握手を交わしていった。
これで、軍への大きなパイプが出来る事となった。
4人はもう一度座ると詳細な事を話し始める。
そんな中アオがコウイチロウへと声をかけた。

「あの、ミスマル提督。フクベ提督が戻られた時にお会いしたいのですが、お願いしてもいいですか?」
「ふむ?どうしたのかね」
「えぇ、あの方は輸送船を助けた結果ユートピアコロニーへチューリップを墜落させてしまいました。
今は帰路の途中ですが、悔い悩まれてると思います。ですので自棄にならないよう目的を差し上げたいなと」
「火星にいた君の言葉なら届くか...わかった、アオ君の望むようにしよう」
「ありがとうございます」

そうして、話し合いが終わるとそれぞれ席を立ちもう一度握手を交わした。
その後出て行くコウイチロウとヨシサダを見送ったアオ、アカツキ、エリナはぐでっとソファーへと沈んだ。

「疲れた...」
「あぁ、疲れたね」
「しんどいわ」

3人共とてもだらしがない。

「アオ君。なんで君が連れてくる人はみんな揃いも揃ってああなんだい?」
「なんでだろ~。とはいってもナガレも十分その中に入ってる気がするんだけど」
「あそこまで老練してないさ。自分がまだまだだって思い知らされるよ」
「いいんじゃないですか?その年で達観されても困りますから」
「せいぜ~がんばるさ~」

アカツキはやる気なさそうにエリナへ手を振っている。
普段なら怒るエリナも疲れ切っててそんな気力がない。
そんな中ソファーの肘掛を枕代わりにこてんと横になってるアオが何かを考えるように真剣な目をしていた。
正面にいたエリナがいち早くアオの目に気付いた。

「アオ、どうしたの?」
「ん?ユリカの事考えてたんだけどね?いくら考えてもね。コウイチロウさんだから無理としか出てこないの...」

そこまで言うとよよよと泣き出してしまった。
アカツキとエリナはあの親馬鹿振りを引き継いだ娘か...と考えると、アオに同情の目線を注ぐ。

「でもアオ、更生...させるんでしょ?」
「うん、曲がりなりにも未来で一緒に住んでたから性格は知ってるし、色々案は考えてあるけどね。
多分嫌われちゃうな...」

寂しそうにアオが言った。
アカツキはアオにそんな寂しそうな顔をさせる相手に思わず嫉妬するが、気を取り直すと声をかける。

「アオ君、叱る前からそんな顔をする親はいないんじゃないか?言ってたじゃないか、母親代わりになると。
君ならいい親になれるさ。そしていい親は子供から好かれるもんだ。」
「そう?」
「あぁ。これでも一会長だ。人を見る目はあると思っているが?」
「そか、ありがとね。ナガレ」
「感謝してくれるなら今度デートでもして欲しいんだけどね」
「いつも言ってるのに、ルリちゃんとラピスも一緒ならいいよって。私と二人じゃつまらないよ?」

相変わらずなアオにアカツキは力をなくしたようにうなだれた。
そんなアカツキを不思議そうにみつめるアオとその二人を楽しそうに眺めるエリナの姿がそこにあった。


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