サクラは瀑布が織りなす水壁を一歩一歩踏みしめながら、着実に登っていくが、重度の負荷をかけられた肉体が悲鳴をあげる。
両手首と両足首に装着された枷の重量は実にサクラの体重を越えている。足を上に動かすたびに太股の筋肉が軋む。滝と直角に立つサクラは重力を諸に受け、それを支えているのは腹筋だ。腹の中にマグマがぶち込まれたような気だるい灼熱感が圧し掛かる。身に覚えのありすぎるこの感覚は、ナルトとサスケに腹筋を強要されていたときのことを思い出させる。あれはあれで役に立っていたのか、と思うと何だか遣る瀬無い気持ちになるが。やはり、感謝できない。憎らしい。
チャクラが揺らぐ。
精密なコントロールを要される【滝登りの行】は、少しでも集中力を欠くとすぐに地面へと落下してしまう。当然命綱などなく、落ちたらただでは済まない。
飛沫で身体中濡らしながら、ついでに冷や汗を流して、下をちらりと見た。地面が遠く、少なく見積もっても火影の顔が刻み込まれた岩壁よりもなお高いだろう。落ちたらどうなるのかなど想像しただけでも超怖い。おそらくはトマトがひしゃげて潰れたような感じに出来上がるのだろう。食欲が減退する光景だ。
絶対に落ちないぞ。何度も自分にそう言い聞かせながら、震える身体を気力で奮い立たせて、再び滝を登り始める。
針の穴に糸を通すような神経を削る作業。たった一歩踏み出すだけで精神力が根こそぎ奪われるなど理不尽極まりないことではあるが、サクラは決して遥か彼方にある水面にダイブなどしたくないので、チャクラコントロールに全身全霊を捧げていた。
しかし、とうとう集中力が切れたのか、滝の中に足が喰い込んだ。
「あ……?」
身の毛がよだつほどの恐怖がサクラを襲う。
風が下から吹きつけてくる感覚。自分が尋常ではない速度で湖へと向かって落下しているせいで、強風がサクラに纏わりつく。
このままでは死ぬ。
何もしなければ死ぬのはわかりきっていること。サクラは足掻くことを決めた。
(滝に糸は無理。湿ってない岩盤を狙う……)
ありったけのチャクラを糸に込めて、性質を全て吸着力と伸縮性に回す。ひたすら太く、頑丈に。
生成された糸は視認できるほどに張りつめられたものであり、それは凄まじい速度でもって岩盤を貫いた。
貫いたのだ。
「うっそーっ!!」
吸着させるつもりが破壊してしまい、急いで糸の性質を変化させる。
太くしすぎた糸を枝分かれさせ、岩盤を削って速度を減らしていくが、それでも止まらない。サクラが重すぎるのだ。いや、この言い方は正しくない。サクラのつけている重りがあまりに重すぎるのだ。
糸を縮こませ、サクラは何とか岩壁に足が触れる。
しかし、あまりにも勢いよく岩壁に激突したせいで、身体が凍りつきそうなほどの痛みが走る。しかし、死ぬよりはマシだ。歯を食い縛って岩を削りながら速度を落としていく。
「ぐぐぐぐ……っ!」
全てのチャクラを糸と足に回す。
肉体活性をするほどの余裕がないせいで、耐久力は極めて低い。自重に耐えられる筋力もなく、筋繊維が千切れていく激痛がサクラを蝕む。
痛い痛い痛い痛い、と小さく呟いている。水滴か汗か涙かが区別がつかないほどに濡れた顔は引き攣り、愛らしい顔立ちのはずなのに、今は修羅のようであった。背筋をくの字に曲げ、糸と足で岩を削りながら減速する姿は、決して可愛らしいとは言えないであろう。
次第に足が震え出し、糸を握りしめる握力が失われてきた。
一際競り出した岩があり、それに気付かず――
「がっ……!」
思い切り尻が当たり、そのまま宙へと投げ出された。
じんじんと痛むケツを擦りたい衝動に駆られるが、手足が言う事を聞かない。
「ぐぅっ!」
背中から湖面に突っ込み、肺の中にある空気を全て吐き出すほどの衝撃に見舞われる。残酷なまでの激痛。
身体に穴があいたのではないかと錯覚するほどの苦痛は、水中で冷えた身体にはとてもきつい。腹の底からかじかむ冷たさから逃れるように水上へと上がろうとするが、重りが邪魔をする。
死んだかなぁ……、とサクラは考えたが、死にたくないという思いのほうが強かった。
最後のチャクラで細い糸を生成し、地面のあるだろうところへ投げつける。
もしなかったら死ぬ。糸が切れても死ぬ。なんかもう考えるだけでげんなりとしてしまうが、どうやら最後の一本は身を結んだらしい。
のろりのろりと糸を手繰り、じんわりと地面へと近づいていき……
「ぷはぁっ!!」
湖から出た瞬間、うなじにぴったりと纏わりつく鬱陶しい髪を振り払い、サクラは空気を暴飲する。
空気ってこんなに美味しいのか! とちょっと感動していたりしてのだが、隣でパックンがげらげらと笑っている。ブス犬がぁ! とサクラの怒りが沸点に達するが、身体を動かす気力もなく、べちゃりと地面へと倒れ込んだ。
うつ伏せに寝そべって惰眠を貪りかけていたのだが、しかし、一瞬で目が覚めた。
◆
「……まだまだぁっ!」
身体中の関節がギシギシと悲鳴をあげる音を無視しながら、サスケは写輪眼を駆使してカカシの動きを完全に模倣していた。
理に叶った、自分の扱う体術とは住む位階が違う洗練された技術だ。まだ完全には出来上がっていないサスケの身体で使うのは厳しいものがある。しかし、サスケはどうしてもこの力が欲しいと思った。
手枷と足枷がサスケの体力を根こそぎ奪っていく。水の上で戦うせいか、重りのせいでチャクラコントロールが上手くいかない。時折、水の中に足が突っ込むこともあるが、すぐに姿勢を立て直す。
これは生まれもったサスケの天性の才だ。
どんな体勢からでも攻撃を繰り出すことができる足腰の強さ、それを為せるだけのバランス感覚、ひたすらに攻撃を繰り返すことのできる体力――そして、根っからの負けず嫌い故に、攻め手を緩めない精神性。これがサスケの強さの根源であった。
とはいっても、サスケはあくまで下忍。しかも、自分の体重よりも重い枷をつけられているせいか、体術に躍動感がなく、手足に振り回されているようだ。
致命的な隙。
そのたびに急所を狙ったカカシの一撃がサスケを襲う。
「がッ……!」
水月を狙って右拳――それがサスケを穿った。
腹の中にたまった酸素を全て絞り出すかのような一撃は絶妙な力加減でサスケを貫き、根こそぎ気力を奪った。
萎える気力をあらわすかのようにサスケの写輪眼が薄らいでいき、普通の目へと戻っていく。写輪眼にチャクラを回すだけの余裕がないのだ。
膝が折れる。
「どうした。終わりかー?」
間延びした声に緊張感はない。だが、のんびりとした表情から放たれる言葉はサスケの心を抉る。
「そんなんじゃナルトに勝てないよ。何せ自来也様は四代目火影の師匠だからねー。どれほど強くなって帰って来るか……」
「終わりじゃない……ッ!」
生まれたての小鹿のように震える足を強靭な精神力でねじ伏せ、気炎を吐き出しながらサスケは立ち上がる。
ナルト――アカデミーでは見向きもしなかった存在であったが、次第に自分の背に追いついてきた。修行で組手をしたとき、何度も組み伏せて土をつけているのにも関わらず、決して折れずに立ち向かって来た。
今なら言える。『好敵手』であると。
そのナルトが今よりももっと強くなって帰って来るのに、サスケが強くなっていなかったら会わせる顔がない。
サスケにとってナルトは、絶対に負けたくない相手なのだ。
電流のように身体を駆け巡る苦痛をねじ伏せると、サスケは勢いよくカカシのほうへと飛び出した。
目に浮かぶのは写輪眼。
ふんだんに詰め込まれた意志は負けん気だけ。気力だけで無理やり身体を動かし、カカシの動きを真似する。だが、洗練された身のこなしを阻害するのは手足に嵌められた重り。舌打を鳴らしそうになる自分を抑え、サスケはカカシに拳を放つ。
爪先から腰、腰から肩、肩から拳へと余すことなく伝えられた力は途中途中で増幅され、無駄のない動きでカカシへと突き出される。
激突。
耳を劈く硬質な音が鳴り響く。
打撃の応酬。
目にもとまらぬ速度で交錯する拳と拳。それは拮抗しているように見える。しかし、実のところはサスケの放った白打は全てカカシの拳によって叩き落とされているだけに過ぎない。
硬い拳をぶつけられ、サスケは苦痛に顔を歪め、一瞬だけではあるが、痛みに怯んで攻撃の手を緩めてしまった。
その隙を見逃すカカシではない。拳を押さえて唸るサスケに対し、蹴足を放つ。狙いは米神。人体急所の一つを狙い打ち無慈悲な追撃。喰らえば失神するであろうことは間違いないそれをサスケは屈んで避けた――わけではなく、偶然膝が折れて避けただけだ。
霞む視界。
おぼろげにしか思考できない。
だが、確かにサスケは蹴りを避けられたせいで死に体を晒すカカシを見た。
闘争本能に火がつく。
流麗とすら言えるほどの性質変化。右手には雷を帯び、まるで千の鳥が囀るかのようなけたたましい鳴き声が耳に届く。
瞬間、サスケはチャクラを爆発的に高めていく。
己が身が焼け焦げるほどの電熱は必殺の威力を持つ。
身体は弓で、思い切りしならせ――
「あぁぁぁぁぁっ!!」
咆哮とともに、右手の矢を放つ。
雷光の如く。それはまさに地面に水平に落ちる神鳴だった。
人の身で防ぐこと敵わず、人知を超えた速度を持って、サスケの右手に纏う轟雷はカカシに襲い掛かるが――二の腕を掴まれ、寸でのところで受け止められた。
「今のは良い攻撃だった。けど、甘いね」
カカシもサスケと同様に、写輪眼を持っている。
凡人とは一線を画す血継限界。力の流れを見切ってしまう写輪眼からすれば、一直線の攻撃を見切るなど造作もないこと。
「くそ……」
雷鳴は止み、発光していた右手には焼け焦げた皮膚だけが残る。
諦めたように項垂れ、そして、顎を思い切り蹴りあげられた。
宙で弧を描き、サスケは滝壺へと舞い落ちる。
「サスケくんっ!?」
遠くで観戦していたサクラが悲鳴をあげる。
空高く飛んでいったサスケは水飛沫をあげて湖の中に落ち、重りのせいで浮かぶことなく水底へと沈んでいく。
サクラは絶叫をあげながら糸を紡ぎ、ドザエモンとなったサスケは命からがら引き揚げた。
◆
陽の光を遮るほどの色濃く茂る緑葉樹の下、サスケを横たわらせたサクラは放心状態となっていた。残り少なかったチャクラと体力を極限まで酷使した結果、疲れきって動けないのだ。まるで身体が鉛になったかのように重く、鈍い。
もう動けない。水に濡れたせいで冷えた身体を震わせながら、サクラは膝を抱えて座り込んだ。
だが、悪魔は決して見逃さない。無垢なる羊に牙を剥くことこそが本業なのだから。
「サスケは寝ちゃったし、サクラのほうでも見ようかな」
サクラは呆然としたままカカシを見上げると、「え、えへへへ」と乾いた笑いをあげる。壊れた人形もかくやというほどに不気味な笑い声だった。
そんなサクラを見下ろすカカシも同様ににっこりと笑う。ひくり、とサクラの笑みが引き攣った。
「なんでそんなに嬉しそうに笑ってるんだい?」
「嬉しそうに見えますか」
「ま! そこは気にしちゃダメだよね!」
気にしてよ、とこっそりと思ったが言いはしない。
「……先生、なんでいきなりこんなに厳しい修行を課し始めたんですか? サスケくんが死んじゃう」
私も死んじゃう、とアピールしたかったけど、サクラはそんな無粋な真似をしない。
「事情があってね。じゃあ、登ろうか」
登ろうか。
その言葉に反応し、のろのろと滝を見上げた。
頂上が見えないほどの絶壁から流れ落ちる滝は恐ろしさすら感じるほどの威容を誇っている。人の身など軽く捻り潰すことができるだろう圧倒的な大自然に勝てる道理などあるはずもなく、サクラは折れた自分の心を必死に自己弁護していた。
だって、痛いの嫌だし。というより、死ぬのが嫌だし。
何度か落ちてわかったことであるが、重りのせいで湖に落ちると普通に死ねるのだ。人間の身体は水に浮くのようにできているものなのだが、おそらくは金属であろう高質量の枷は水に浮かない。沈むだけ。しかも、落ちたら落ちたで枷のせいで身体が動かしにくく、死ぬ確率が鰻登りである。
軽く死ねる厭らしい修行。サクラは【滝登りの行】をそんなふうに評価していた。
「返事は?」
キレのある命令にサクラは条件反射で「はいっ!」と勢いよく返事をしてしまう。しまったぁ! と凄い後悔したが、後の祭り。
まさに恐怖政治というべきなのだろうか。サクラとサスケはカカシの過度なまでに高密度な修行のせいで、カカシに逆らえなくなってしまった。正しく調教である。
前門の滝、後門のカカシ――どちらも勝ち目がなさそうではあるが、まだ滝のほうが救いがある。重りがなしのときではあるが、一度はクリアしたことのある課題なのだ。問題ない。私はやれる。サクラちゃんならきっとやれちゃうんだぞっ! と己を鼓舞しながら雄叫びをあげて滝へと突進した。
「こら」
勢いに乗った瞬間のことである。
サクラはカカシに襟元を掴まれ、「むぎゅっ」と可愛らしい悲鳴をあげて、気管が絞まったせいで咽んだ。げほげほと苦しそうに咳込みながら、恨めし気にカカシを睨みつけている。「いきなり何してくれんのよ、このクソカカシ!」と掴みかかりそうな形相だ。
だが、サクラは賢い。勝ち目のない戦をしない主義だ。
自分を落ち着かせるために深く深く呼吸をすると、頭に昇った血を下げていく。そして、キッと鋭い視線をカカシに向けた。
「いきなり首が絞まるようなことしないでくださいっ!」
「誰が走っていいって言ったのかな?」
「へ?」
意外な言葉に硬直する。
いや、まさか、そんな、ありえないと願いたい。けれど、この後に続くカカシの言葉を何となくサクラは察してしまった。
「歩いて登りなさい」
「あ、歩いて……?」
湖面に叩きつけられる瀑布から飛び散る水飛沫で描かれる虹から、滝を見上げる。虹がかかるほどの滝壺を見て、泣きそうな顔でカカシを見つめる。
こくりと頷かれた。
「そ、そんなのできるわけ……!」
「サスケはずっと俺と殴り合いしてるわけだけど、一度も弱音を吐いていないなぁ……」
ちらちらと限界まで修行をこなし、倒れてしまったサスケを見やる。
交互にサクラとサスケに視線を移すカカシから与えられるプレッシャーに耐え切れず、サクラは嫌々叫んだ。
「や、やればいいんでしょっ! やればっ!」
「うんうん、その意気だよ」
滝の麓まで歩き、サクラはげんなりと溜め息を吐いた。
(あ、歩いて登るわけ……?)
凄まじい勢いで降りそそぐ滝に足を添えたところ、潰された。
湖の中に放り出され、がぼがぼと気泡を吐き出しながら、カカシに対して脳裏でありったけの語彙を駆使した罵詈雑言を吐き出しまくる。主に「クソ野郎」「ウンコ野郎」などといった貧弱な語彙で、だ。悪口はあまり言わないほうなので、かなり貧弱な語彙力しかなかったりする。
浮かびあがる体力もなく、何だか絶望に襲われてきて、サクラは静かに目を閉じた。
そんなとき、誰かに服を掴まれた。
水底にたゆたうサクラに手を差し伸べたのはカカシ。今回の『弟子に湖へ投身自殺させた主犯』である。サクラの中ではカカシはそうなっている。
流麗な動きで水をかき分け、カカシは水上に出ると、サクラを地面へと放り投げた。
受け身すらとれず、サクラは――
「きゅ~」
――気絶した。
◆
少し時間が経ち、空が夕暮れ色に染まってきたときのことだ。
はっと目が覚めると、未だに眠り続けるサスケと、一人黙々と修行をこなすカカシの姿があった。
鮮烈な赤光で照らしだされるカカシの横顔は、今まで見た中で一番美しく見えたのは、おそらく覆面を外していたからだろう。鼻から下を覆っていたそれは今はなく、カカシの美貌をあますことなくさらけ出していた。それが物憂げな表情と相まって、とても格好良く見える。
片腕で倒立腕立て伏せをしていたカカシはサクラに気付くと身軽に跳躍し、両足で着地した。そして、にこりと笑う。
口元が見えるだけで今までの胡散臭さは消え去っているのだから不思議なものだ、とサクラは思った。
「まぁ、サスケと違って何を目的にこの修行をしてるのかわからないだろうから、やる気も出ないだろうね」
不意に、カカシが口を開いた。
「サクラ、糸を出してみろ」
「? はい」
「あの木に巻きつけてみるんだ」
サクラは言われた通りに糸を木に巻きつけた。
「切り裂けるか?」
「できないですけど……」
その木はサクラが両腕を広げても抱え込めないであろう太さである。切り裂けるはずもない。そもそも、この糸はそのような使い方を考慮していないのだから。
「できるようになれば、その糸は必殺の武器になる。そのためにはサクラのチャクラコントロールの技術では足りない」
それなのに、「やれるようになれ」とカカシは暗に示している。
疑問符を浮かべるサクラにカカシは苦笑を零すと、そうだなぁ、と髪を弄りながら考えて――何か思い浮かんだようだ。ぴんと人差指をサクラの目の前で伸ばすと、胸を張って語り出す。
「性質変化――知ってる?」
「はい、チャクラの性質を変えるんですよね」
「そう、木登りなどでも教えたと思うけど、チャクラの性質を変化させて、木に吸着させるんだ。同様に、だ。サスケのようにチャクラを炎に性質変化させて吐き出したり、ナルトのように土を操るための性質に変化させたりと、実に多種多様だ」
基本中の基本だ。それくらいサクラでも知っている。
しかし、話はこれだけでは終わらない。
「吸着。糸でもやってるでしょ? 対象の身体に吸着させて、苦無にも吸着させて、一気に縮ませて攻撃したりとかね」
「よくやりますけど……」
「どれもこれも練度が低い」
少しだけむっとする。
自分が弱いという自覚があっても「お前は弱い」と言われれば、誰しも腹を立てるというもの。それに、チャクラコントロールに関してはサクラが七班で一番秀でている。つまり、自信があったのだ。それを否定されれば気分が良いはずもない。
「例えばだ。滝の中にある岩盤に吸着させたりはできないでしょ?」
「はい……」
「もしそれができるようになれば何でもくっつけられる」
「そりゃ……まぁ……」
無理に決まっているだろう、とサクラは思う。
だが、カカシはそうは思わない。
そして、
「一番足りないのが切れ味だ」
切れ味。糸による斬撃。
もしこれが可能になれば、サクラは飛躍的に強くなるだろう。
可能か不可能か、現時点ではそれすらもわかっていないわけだが。
「サクラには攻撃の手札が少なすぎる。援護に徹している姿勢はわかるけど、今回のように一対一の勝負では決め手に欠ける。
負けることはないかもしれないけど、勝つこともできないだろうね。せっかく良い技を持っているのに……。
言っておくけど、チャクラで糸を作るなんて誰でもできるような簡単なものではない。それは才能だ。強みは徹底的に伸ばしたほうがいい」
落とされ上げられ、何だかよくわからない気分になる。
つまり、カカシはこう言いたいのだ。仲間に頼りきった戦いは止め、自分一人でも戦えるだけの力をつけろ、と。そうしなければ、次の試験で戦うリーに勝てるはずがない。
いや、糸の能力を上げたとしても勝てるかどうかわからないほどの強者だ。わかっていることは、今の強さでは確実に倒されるということくらいか。
「……そのための滝ですか?」
納得はした。けれど、滝だ。
「工夫しろ。俺は走るな、とは言ったけど、糸を使うなとは言ってない。工夫に工夫を重ねて挑戦するんだ。絶対にできるから」
「やってみます」
「あぁ、頑張れ」
強くなれる。
強くなる道筋さえわかれば、多少はやる気が出るというもの。
「はいっ!」
元気印の返事をすると、サクラは滝へと向かっていく。
【アトガキ】
サクラ強化イベント!
思うに、私の書く二次創作ではサクラが一番チート化してると思うんだ。もう既にかなり強いんだぜ……
ところで、原作ではナルトが人柱力の強さを使い始めましたね。あれ強すぎるだろ……!とは思いますが、敵のスペックを考えるとあれでも足りないのかもしれない。
原作が面白くなってきたあああああああああああ!
そしてさりげなく40話突破。
褒めてもいい。
さて、次は試験に行くか……それとも大蛇丸のベールを剥がすか……悩みどころです。
でも、そろそろ大蛇丸の正義を主張しなきゃいけないし、大蛇丸書こうかな。