1.
木の葉隠れの里の中心地にはショッピングモールがある。
ここにはありとあらゆるものが流通しており、何でも揃っていることから色んな職種のものが集う。
もっぱら若者のデートに使われることも多く、服飾品や流行りの料理店なども置かれていることから、雑然とした様相を呈していた。
ショッピングモールの中でも殊更目立たない、 太陽の光すらまともに浴びれない路地裏にひっそりと佇んでいる店がある。
ここは忍具専門店。
多くの忍者が愛用しているここの入り口には黒塗りの看板が立て掛けられており『ニングー!』と白文字で刻まれている。ちょっとお茶目だ。
ウィンドウケースの中には流行りの苦無や手裏剣、最新型の起爆札などが入れられている。
店の中には『売れ過ぎランキングー!』というものがあり、「売れ筋ランキングではないのか」と利用客は訝しむが、未だ店長に突っ込んだものはいない。ナルトもその一人である。
ナルトは本日、忍具専門店へと足を運んでいた。
手には超大な剣――【首斬り包丁】を持っており、口寄せの術の契約をするために来たのだ。店長から口寄せ専用の巻物を購入すると、お任せコースでそのまま【首斬り包丁】の契約を済ませてもらっている。終わるまで暇なので、のんびりと店内をうろついていたのだが……
「あ、ナルトくん……」
カランカランと店の扉が開く音ともに入ってきた人影に名前を呼ばれ、振り向いた。
白いコートで身体を覆って、両手をもじもじとしているオカッパ娘――ヒナタである。相も変わらず、真っ白な瞳が印象的であり、曖昧な笑みを浮かべているところも以前と変わらない。
「奇遇だな。何か買うのか?」
びくついたまま視線を合わそうとしないヒナタを不思議に思いながら、ナルトは話しかける。
ことさらびくんと背筋を伸ばし、おどおどと視線を泳がせる。かなり挙動不審だ。ナルトが目を細めてしまうのも仕方ないだろう。
「く、苦無の新調に来たの……」
一息どころではなく、十息ほどついて返ってきた言葉だ。
一瞬何を言われているのかわからないナルトであるが、質問したのは自分だったことを思い出す。無視されていたわけではないようだ。
それにしても、イラつく。言葉のキャッチボールが軽快にできないことはナルトにとって嫌なことだ。サスケやサクラなどは反応がとても良く、常にそういう仲間とつるんでいるからだろう。
ナルトにとって、ヒナタは未知の人種と言える。それに、まだあまり話したことはないからかもしれない。慣れていないのだ。
「相変わらず変な喋り方だな。ハキハキできねーのか?」
「変な喋り方!?」
「そんなんじゃ男にモテないぞ。やっぱり活発な女の子のほうがモテるしな。まぁヒナタは可愛いからそんな心配いらないか」
ガシッと肩を掴まれた。
小動物によく似た動作をするヒナタらしくなく、肉食動物のように俊敏に、ナルトの肩を鷲掴みにしたのだ。
「ど、どうした?」と少し驚いてナルトはヒナタを見るが、獲物を見るかのような攻撃的な視線が返ってくるだけ。
沈黙。
口寄せの契約は終わったのか「兄ちゃん、お勘定ー」としわがれた老婆の声が聞こえてくるが、なんとなくヒナタから目を逸らすことが憚られたので、「ちょっと待っててくれ」と大きな声で返事をしてから、じっと見つめ合った。
その間、実に六十秒。
無言の睨み合いは確実にナルトの精神を削っていき、「こいつは何がしたいんだろう?」と困惑する。
「私に何て言ったの……?」
ぷっくらと膨れた形の良い唇が小さく動いた。
ナルトは聞き逃してしまったので「え?」と答えてみるが……
「何て言ったの!?」
叫ぶような声が耳朶を打った。
肩を思い切り引っ張られ、今にも鼻と鼻がぶつかりそうな距離で、ヒナタは顔を真っ赤に染めている。
「か、可愛いって言ったけど?」
「そ、そう……」
ヒナタはナルトの肩から手を放すと、振り向いて小さく肩を揺らした。こっそりガッツポーズをしたのである。
ナルトからすればヒナタの行動は完全に理解の外なので、考えることを止めた。
(女の子ってのはときどき変なことをするよなぁ)
サクラの黒歴史を知ってしまったナルトからすれば、多少変な行動をされたとしても驚くに値しない。ベッド下には魔物が住んでいるのだ。ナルトは身を持って経験している。実に怖い経験であった。
思い出し泣きをしそうになり、そっと目頭を押さえると、ナルトは自制心で自分というものを取り戻した。
「あ、ところでナルトくんは何を買いにきたのかな?」
「起爆札やら巻物を少々――でかい任務をこなしたから報酬がけっこう出てさ。ストックを買いに来たんだ」
手提げ鞄に入っている新品の忍具を見せる。
【首斬り包丁】のことは内緒だ。仮に友達だとしても、共同戦線を張る仲間以外に奥の手を見せるほど、ナルトは解放的な性格ではない。
「そうなんだ……」
「お、おう」
話が途切れる。
黙り込んだままヒナタは忍具を物色し始めるのを目にし、ナルトも奥に行って、店長から口寄せの巻物を購入する。八百両となかなかの出費だが、持ち運びが便利になるので贅沢は言えない。
巻物をジャンパーの前ポケットにある収納用ポケットに突っ込んで、ナルトは何とはなしにヒナタを見た。時折、視線をこちらに向けてくるヒナタが気になったのだ。
ふむ、と考え込む。
ナルトは友達が少ない。致命的に少ない。交友関係がほとんどない。とても狭い世界に生きている。
友達を増やしてもいいのではないだろうか? と少しだけ思ったのだ。
思ったら吉日。ナルトは極めて素直なので、思ったことを率直に言う。
忍具を手に取りながら、ナルトのことを気にしているヒナタに歩み寄り、声をかけた。
「あぁ、そうだ。ヒナタはこれから暇か?」
「うん。今日は任務明けだから……」
「じゃあさ。昼飯食べに行こうぜ。前会ったときは一緒に食べれなかったしさ」
「え……?」
ヒナタが硬直する。手に持つ苦無を握る力すら失って、足元へ落ちた。ナルトは持ち前の反射神経で地面に落ちる前の苦無を掴み取り、一息吐く。
店長がぎらついた視線をヒナタに送っているので、自分が変わりに謝って、苦無を商品棚に戻した。商品を手荒に扱われたらそりゃ怒るだろう。
「嫌か? 奢るつもりだけど」
「あ、行く……行くよ!?」
ヒナタは頷く。
そんなに強く振ったら折れるのではないかと邪推してしまうほどに細い首をナルトは心配そうに見つめ、何となくヒナタの頭に手を乗せた。
かぁっとヒナタの頬が朱に染まる。気付かず、ナルトはヒナタの髪を指で遊び――
「じゃあどこへ行こうかな。とりあえずそこらへんをぶらぶらしながら探そうぜ」
「うん!」
店を出た。
ちなみにヒナタは苦無を新調するのを忘れている。
◆
今日は祭りでもあるのか、と思わずにはいられないほどにショッピングモールには多くの人が歩いている。
忍者もいれば職人もおり、家族で来ているものいれば、恋人と一緒に歩いているものもいる。
私たちは他の人から見ればどういうふうに見えるのかなぁ? とヒナタは妄想に耽ったりしながら、にへらとだらしなく笑う。
ヒナタは隣を歩く人物にひっそりと恋心を抱いていた。
太陽の光を浴びて黄金に輝く髪がとても綺麗だし、覇気を感じさせる青空のような双眸も美しい。
自分にはない心の強さを持つナルトに、ヒナタは心惹かれていた。
アカデミー時代から、ナルトの反骨心を何度も見てきた。そのたびに募る想いが何なのかはいまいちわかっていなかったが、卒業してから会った日のこと。自分を激励してくれた月夜から、ヒナタは自覚したのだ。ナルトが好きなのだ、と。
それからは悶々とした夜を過ごしたものだ。
ナルトがどこで何をしているのかは白眼を使えばすぐにわかる。とても優れた血継限界の前ではプライベートなどあってないようなものだ。
使いたい。けど、使ってはいけない。凄まじい葛藤だった。自戒するということはこれほどまでに大変なことだったのだと初めて知った。
「そういえばさ。ヒナタっていつもそのコート着てるけど、何か願掛けでもしてるのか?」
考え事をしているとき、しかもやましい事を考えているときに声をかけられたらだいたいの人は同じ反応をとる。
気まずそうに曖昧な笑みを浮かべるのだ。
ヒナタも例に漏れず、びくりと反応する。いつものことだから不審に思われないのは喜んでもいいのか、悲しむべきなのか、複雑なところではある。
「これしかなくて……」
「可愛いんだからさ。色んな服着たほうがいいぞ。主に俺が喜ぶ」
「よ、喜ぶ!?」
喜ぶとはどういう意味だろうか。
あらゆる妄想がヒナタの脳裏を駆け巡り、ショート寸前になりつつある。
「あぁ、やっぱり女の子が色々な服を着ているのを見るのは楽しいしな」
「え、えと……その……」
爆発寸前だ。
心臓の機能が危うい。
バクンバクンと大きく鼓動するそれは、いつナルトの耳に届くのかわからないほど。息苦しく、死にたくなる。だけど、この幸せを捨てて死ぬのは嫌だ。
ヒナタは必死に自分に言い聞かせる。「落ち着け、落ち着け」と何度も何度も……ちなみに効果はなかった。真顔で褒めてくるナルトの言葉は効果が抜群すぎたのだ。
ナルトはサクラと喋ることが多いので、ある意味では女の子相手に免疫があるからこそできる芸当ではあるのだが――自覚がないだけに恐ろしいものである。
「まぁその服が気にいってるのならいいけどな……っと、あそこの店でいいか? 最近話題の麺料理らしいぜ」
指差した先にあるのは小洒落た洋風の店であった。
「パスタっていうらしいんだけどよ。サクラが美味しいって絶賛してたから興味あってさ」
パスタ専門店『カナトゥール』。
雑誌に取り上げられたりと流行りの店である。
ヒナタとしても一度食べてはみたいと思ったが、サクラという人名が出た瞬間、表情が翳る。
「あそこでいいか?」
「うん……」
すぐに笑顔を取り戻し、ちょっとひくつきながらもナルトの後に続いて『カナトゥール』の中へと踏み入れた。
「いらっしゃいませー!」と店員が元気に挨拶をしてくる。実に活気のある店だ。
繁盛しているようで、ほとんどの席に人が座っている。カウンター席も埋まっており、空いているのは奥まった場所にある小さなテーブル席だけであった。
「奥のテーブル席へどうぞー」
テーブル席の上にはメニューが広げられており、『当店オススメ!』といくつかがピックアップされているものもあった。
席に着き、よく冷えた水を呷りながら、ナルトはメニューを見る。ヒナタも同じようにメニューを開いた。
しばらくメニューと睨めっこをしていると「お決まりですかー?」と先ほどの元気な店員が愛想よく近づいてくる。
ナルトは面を上げると、ヒナタを見て。
「俺はパスタデラックスとやらにするけど、ヒナタは何にする?」
「あ、私もナルトくんと一緒で……」
「パスタデラックス二つで」と注文し、メニューを店員に手渡した。
がやがやと騒がしい店の中、しんと静まり返ったナルトの座る席。
息苦しい。
俯いたまま、居心地が悪そうに身体をくねらせているヒナタに何を話しかければいいのかわからず、ナルトは逡巡する。
あっ、と思いつくと、それからは早い。共通の話題を見つけたのだ。
お互い忍者であることを思い出したのである。
「ヒナタってどんな任務やってるんだ?」
「うぇ!?」
急に話を振られて、ヒナタは飲んでいた水を吐き出しかける。
咽るヒナタに「大丈夫か?」と申し訳なさそうにナルトは謝るが、ヒナタは「大丈夫、大丈夫」と大丈夫じゃなさそうな顔色で答える。
平静を取り戻したヒナタにナルトは再び質問をする。
「他の班はどういう任務やってるのかなぁってさ。やっぱりCランク任務か?」
「ほ、ほとんどDランクかなぁ……まだCランクは受けたことないかも」
「なるほど……そうなのか」
「逃げ出した猫を捕まえたり、家の裏にできた蜂の巣を採ったり……芋堀りとかもやったのかな? 雑用ばっかりだよ」
「大変だなぁ」
「ナルトくんはどんなのをやっているの? あ、迷惑じゃなければいいんだけど、嫌なら教えてくれなくていいから……」
「何でそんな卑屈になるんだよ?」
「あ、あのその……」
「最初の数回だけDランクをやって、それからはずっとCランクだな。サスケとサクラが優秀なおかげで良い経験をさせてもらってる」
「ナルトくんも優秀だよ!?」とヒナタが立ち上がる。ガタンと音を立てて椅子が地面へ激突した。
店内に静寂が落ちる。
何をしでかしてしまったのかをヒナタは察し、凄く恥ずかしそうに俯くが「お、おう……ありがとう。とりあえず座れ」というナルトの言葉に自分を取り戻し、椅子を立て直して座り込んだ。今にも爆発しそうなくらいに顔が赤くなっている。
「あー、パスタまだかな」
「そ、そうだね」
沈黙。
「当店オススメのパスタデラックス二人前になりまーす! 美味しく召し上がれっ!」
「あ、ども」
「ありがとうございます」
店員が片腕で器用に二つの大皿を持ってきて、ようやく言葉を発することができた。
大皿に盛り付けられているのは湯がかれた麺――パスタだ。
その上にチーズやトマト、キノコ類などふんだんに乗せられており、ゴージャスの一言である。
ナルトはお行儀悪く、「いただきます」と手を合わせてから、初めて使うフォークの感触に戸惑いを覚えつつ、パスタを掻き込み始めた。
犬のような食べ方をするナルトを見てヒナタは苦笑しながら、行儀良くちまちまとパスタを食べ始める。フォークを使うのは慣れているのか、ナルトと違って上手い。
喋ることなく食に集中すること数分、二人は食事を終えていた。
結構な量なのに完食できるあたり、ヒナタもなかなかの大食漢なのか――さすがは肉体労働専門の忍者であると言えよう。
「けっこう腹いっぱいになるもんだな」
「そ、そうだね」
ナルトは会計をするので、ヒナタは一足先に店を出た。
すると、そこにはよく見知った顔が三つあった。
昼時真っ盛りのせいか『カナトゥール』は行列ができており、そこに並んでいたのである。
「ヒナタじゃねェか!! こんなところでどうしたんだ!?」
「あ、キバくん。それにシノくんも……」
犬塚キバ、キバの頭に乗っている子犬の赤丸、油女シノ――ヒナタの所属する八班の仲間である。
いつものように大声でヒナタに話しかけているのはキバの方だ。
大きな声が苦手なヒナタは少し委縮すると、おどおどと視線を泳がせる。
「待たせたな、ヒナタ。じゃ、帰ろうぜ……って、キバとシノか」
会計を済ませたナルトが店から出てきた。
キバとシノと鉢合わせになり、キバの形相が歪んでいく。
この二人、結構仲が悪いのだ。
真面目に授業を受けていたナルトは、授業をいつもサボっているキバのことが嫌いだった。
いや、嫌いという言葉は正しくない。軽蔑していたと言ったほうがいいだろう。
キバも同様に、軽蔑されていることをわかっているのか、ナルトのことを毛嫌いしている。
まさに犬猿の仲と言えよう。
「ナルト!? 何でこんなところにいるんだよ!! それにヒナタと……!?」
「うっせぇな。少し静かにできないのか」
「んだよ! なんでテメェがヒナタと一緒にいんだよ!?」
「ワン!!」
「友達と一緒に昼飯食べるのがそんなに変か?」
友達という言葉にがっくりと肩を落とすヒナタ。
「キバ、俺たちは邪魔者だ」とキバの肩に手を置くが、キバは怒りに任せて振り払う。
「邪魔者ってなんだよ!?」
一触即発の雰囲気に、行列を作りあげている人たちが嫌そうな視線をナルトたちに向ける。喧嘩ならよそでやれよ、ということだろう。
ナルトは察した。
「あー、用がないなら行くぜ? 俺だって暇じゃねぇんだし……ヒナタ、行こうぜ」
「え? えと……」
「あぁ、そういえばヒナタはそいつらと一緒の班なんだっけ。じゃあここで別れるか?」
ヒナタは少しだけ考えるように視線を落とすと、「ごめんなさい」と小さく謝ってナルトの背中にぴっとりとくっついた。
「……ナルトくんと一緒に行く」
「おう。じゃあな、お前ら」
当然、こんなことで治まるはずもない。
「待てや!!」
「なんだよ? 俺に用なんてないだろ?」
キバが一足飛びでナルトに掴みかかるが、するりと避けた。身体を泳がしたキバのことを冷然と見下ろしている。
怒りのあまり、キバは烈火の如く顔を豹変させる。キレかけだ。
「前からお前の事は気に食わなかった!!!」
「いきなり嫌いって言われてもなぁ……お前に嫌われても何も思わんぞ」
「うっせーよ! お情けで卒業させてもらっただけの癖によ!!」
「……何て言った?」
ドスの利いた低い声で、ナルトは囁くように呟いた。
ナルトの背中を弱弱しく引っ張りながら、ヒナタは「ナ、ナルトくん……キバくんもやめなよ……」と懇願するが。
「分身の術もろくにできねぇくせによ!! 女といちゃいちゃ遊んでんじゃねーや!!」
キバの声で掻き消される。
そのとき、ナルトはにやりと嫌らしく笑った。悪魔のような微笑みである。相手の弱みを見つけたときの、邪な笑みだ。
「あー、そういうわけね。なるほど、なるほど……気に食わない理由はわかった。小さい男だな、お前」
「あァ!?」
キバは動揺し、声を荒げるが……
「はっきりしろよ。拳で喧嘩したいのか? それとも、口で喧嘩したいのか? どっちでもいいぜ、俺はな」
「……プッツンきたぜ」
「キバ、やめておけ。それよりも俺は腹が減っている」
シノが口を開いた。
だが、キバを止めるには力が足りない。
「お前のことなんか知るかよ! ナルト、拳で喧嘩だ!!」
「オッケー。じゃあ、場所を変えようぜ。ここでやるわけにはいかんだろ」
獰猛に笑うナルトはさきほどまで一緒にご飯を食べていたときとは別人のようだ。
戦闘を楽しみにしている――悪ガキのような笑い方をヒナタは初めて見る。どちらかというと、こちらが本性だったりするのだが。
ナルトは止められそうにないと確信したヒナタは「キバくん!」と非難の声をあげたが――
「許せ、ヒナタ……男には退けないときがある」
「意味わからないよ!? 喧嘩なんてやめなよ……っ!」
理解できない言葉が返ってくる。どういう意味だろうか。
ナルトはにんまりと口元に孤を描く。
「想い人がそう言ってるぜ? 結局どうすんだ?」
「……ぶっ殺してやる」
「知ってるか。小さな犬ほど吼えるんだぜ?」
場が凍りつく。
射殺すようにキバはナルトを見据えており、頭の上に乗っている赤丸も体毛を逆立てながらナルトを見下ろしている。
「どういう意味だよ……」
「さァてね。どういう意味だろうな」
くつくつと笑うナルトは――とても性格が悪そうに見えた。